(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】リニアスライドレールの状態を検出するための装置と方法
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20221214BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20221214BHJP
G01M 13/04 20190101ALI20221214BHJP
【FI】
G01H17/00 D
G01M99/00 Z
G01M13/04
(21)【出願番号】P 2021071659
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2021-04-22
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】596016557
【氏名又は名称】上銀科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】李柏霖
(72)【発明者】
【氏名】陳賢佑
(72)【発明者】
【氏名】楊純明
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-138817(JP,A)
【文献】特開2020-106035(JP,A)
【文献】特開2018-109538(JP,A)
【文献】特開2019-174470(JP,A)
【文献】特開2017-138115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 17/00
G01M 99/00
G01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダー及びスライドレールを備え、前記スライダーは前記スライドレールを収容するための凹部を含み、前記スライダーは前記凹部内に対向する2面の側面をさらに含み、前記スライドレールは対向する2面の側面を含み、前記スライダーの2面の前記側面は前記スライドレールの2面の前記側面にそれぞれ対応する、リニアスライドレールの状態を検出するための装置であって、
前記スライドレールの前記側面に対応している位置に位置し、前記スライドレールの振動を検出し、検出信号を生成するために用いられている少なくとも1つのセンサーと、
前記少なくとも1つのセンサーに通信接続し、前記検出信号のレベル及び少なくとも1つの閾値に基づいて異常の発生を判定する分析プロセッサと、を備え、
前記少なくとも1つのセンサーの数量は2つであり、2つの前記センサーは前記スライドレールの2面の前記側面にそれぞれ位置するか隣接し、2つの前記センサーが前記スライドレールの振動を検出することで生成するこれら前記検出信号は第一検出信号及び第二検出信号と定義し、前記第一検出信号のレベル及び前記第二検出信号のレベルの差異が第一閾値より大きいかまたは等しい場合、前記分析プロセッサが異常が発生したと判定することを特徴とする、
リニアスライドレールの状態を検出するための装置。
【請求項2】
前記第一検出信号の前記レベル及び前記第二検出信号の前記レベルの差異が前記第一閾値より小さい場合、前記分析プロセッサが前記第一検出信号の第一特性数及び前記第二検出信号の第二特性数と第二閾値とをさらに比較し、前記第一特性数及び前記第二特性数が全て前記第二閾値より大きいかまたは等しい場合、前記分析プロセッサが前記第一検出信号のレベル及び前記第二検出信号のレベルと第三閾値とをそれぞれ比較し、前記第一検出信号及び前記第二検出信号の前記レベルが前記第三閾値より大きいかまたは等しい場合、前記分析プロセッサが異常が発生したと判定し、前記第一特性数は、
前記第一検出信号の特性周波数の数量であり、前記第二特性数は、第二検出信号の特性周波数の数量であることを特徴とする請求項1に記載のリニアスライドレールの状態を検出するための装置。
【請求項3】
前記第一特性数または前記第二特性数が前記第二閾値より小さい場合、前記分析プロセッサが前記第一検出信号及び前記第二検出信号に対しそれぞれフィルタリングを行って第三検出信号及び第四検出信号を生成し、且つ前記分析プロセッサが前記第三検出信号の第三特性数及び前記第四検出信号の第四特性数と前記第二閾値とを比較し、前記第三特性数及び前記第四特性数が全て前記第二閾値より大きいかまたは等しい場合、前記分析プロセッサが異常が発生したと判定することを特徴とする請求項2に記載のリニアスライドレールの状態を検出するための装置。
【請求項4】
スライダー及びスライドレールを備え、前記スライダーは前記スライドレールを収容するための凹部を含み、前記スライダーは前記凹部内に対向する2面の側面をさらに含み、前記スライドレールは対向する2面の側面を含み、前記スライダーの2面の前記側面は前記スライドレールの2面の前記側面にそれぞれ対応する、リニアスライドレールの状態を検出するための装置であって、
前記スライドレールの前記側面に対応している位置に位置し、前記スライドレールの振動を検出し、検出信号を生成するために用いられているセンサーと、
前記センサーに通信接続し、前記検出信号のレベル及び少なくとも1つの閾値に基づいて異常の発生を判定する分析プロセッサと、を備え、
前記検出信号の前記レベルが第一閾値より大きいかまたは等しい場合、前記分析プロセッサが異常が発生したと判定し、前記検出信号の前記レベルが前記第一閾値より小さい場合、前記分析プロセッサが前記検出信号の第一特性数と第二閾値とをさらに比較し、前記第一特性数が前記第二閾値より大きいかまたは等しい場合、前記分析プロセッサが前記検出信号の前記レベルと第三閾値とを比較し、前記検出信号の前記レベルが前記第三閾値より大きいかまたは等しい場合、前記分析プロセッサが異常が発生したと判定し、前記第一特性数は、
前記検出信号の特性周波数の数量で
あることを特徴とするリニアスライドレールの状態を検出するための装置。
【請求項5】
前記第一特性数が前記第二閾値より小さい場合、前記分析プロセッサが前記検出信号に対しフィルタリングを行って他の検出信号を生成し、前記分析プロセッサが前記他の検出信号の第二特性数と前記第二閾値とを比較し、前記第二特性数が前記第二閾値より大きいかまたは等しい場合、前記分析プロセッサが異常が発生したと判定
し、前記第二特性数は、前記他の検出信号の特性周波数の数量であることを特徴とする請求項4に記載のリニアスライドレールの状態を検出するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関し、更に詳しくは、リニアスライドレールの状態を検出するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリニアスライドレールの状態を検出するために応用されている検出メカニズムとして、例えば、特許文献1には、センサーをスライドレールの末端の上面に装設し、センサーの信号により異常が発生したかどうかを判断するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来技術は、単純に時間領域信号に基づいて異常があるかないかを判断するのみであり、異常の判断メカニズム(例えば、閾値)が周囲の環境の影響を受けやすく、本来あるべき感知精度が失われていた。
【0005】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に至った。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リニアスライドレールの状態を検出するための装置を提供することにある。すなわち、本発明によれば、先行技術では異常の判断に環境の影響を受けやすいという問題を克服し、検出感度を高める。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明のある態様のリニアスライドレールの状態を検出するための装置は、スライダー及びスライドレールを備えている。前記スライダーは前記スライドレールを収容するための凹部を含み、前記スライダーは前記凹部内に対向する2面の側面をさらに含み、前記スライドレールは対向する2面の側面を含み、前記スライダーの2面の前記側面は前記スライドレールの2面の前記側面にそれぞれ対応している。前記装置は、前記スライドレールの前記側面に対応する位置に位置し(即ち、前記スライドレールの前記側面に対向し、且つ前記スライドレールの前記側面に貼設するか前記スライドレールの前記側面と距離を隔てる)、且つ前記スライドレールの振動を検出し、検出信号を生成するために用いられている少なくとも1つのセンサーと、センサーに通信接続し、前記検出信号のレベル及び少なくとも1つの閾値に基づいて異常の発生を判定する分析プロセッサと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るリニアスライドレールの状態を検出するための装置と方法は、前記第一検出信号及び前記第二検出信号を比較する方式により異常の有無を判断し、環境の干渉を受ける程度が低く、検出感度が大幅に向上する。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリニアスライドレールの状態を検出するための装置の機能を示したブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る2つのセンサーがリニアスライドレールに装設されている概略構成図である。
【
図4】
図2の部分拡大図であって、2つのセンサーがリニアスライドレールの後端の対向側に配置されている。
【
図5】本発明の一実施形態に係るリニアスライドレールの状態を検出するための方法を示したフローチャートである。
【
図6】本発明の検証装置の概略図であって、3つのセンサーの配置位置を示す。
【
図7A】テストプログラムの信号図であって、左側のセンサーが初期状態でZ軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図7B】テストプログラムの信号図であって、左側のセンサーが異常状態でZ軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図8A】テストプログラムの信号図であって、上面のセンサーが初期状態でZ軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図8B】テストプログラムの信号図であって、上面のセンサーが異常状態でZ軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図9A】テストプログラムの信号図であって、右側のセンサーが初期状態でZ軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図9B】テストプログラムの信号図であって、右側のセンサーが異常状態でZ軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図10A】テストプログラムの信号図であって、左側のセンサーが初期状態でX軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図10B】テストプログラムの信号図であって、左側のセンサーが異常状態でX軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図11A】テストプログラムの信号図であって、上面のセンサーが初期状態でX軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図11B】テストプログラムの信号図であって、上面のセンサーが異常状態でX軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図12A】テストプログラムの信号図であって、右側のセンサーが初期状態でX軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図12B】テストプログラムの信号図であって、右側のセンサーが異常状態でX軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図13A】テストプログラムの信号図であって、左側のセンサーが初期状態でY軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図13B】テストプログラムの信号図であって、左側のセンサーが異常状態でY軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図14A】テストプログラムの信号図であって、上面のセンサーが初期状態でY軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図14B】テストプログラムの信号図であって、上面のセンサーが異常状態でY軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図15A】テストプログラムの信号図であって、右側のセンサーが初期状態でY軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図15B】テストプログラムの信号図であって、右側のセンサーが異常状態でY軸方向に沿ったスライドレールの振動の結果を検出する。
【
図16】本発明の一実施形態に係る周波数領域における検出信号を示す波形図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る挟持具を使用して2つのセンサーをリニアスライドレールに位置決めている概略図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る挟持具を使用して2つのセンサーをリニアスライドレールに位置決めしている概略図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係る挟持具を使用して2つのセンサーをリニアスライドレールに位置決めしている概略図である。
【
図20】本発明の一実施形態に係る挟持具を使用して2つのセンサーをリニアスライドレールに位置決めている概略図である。
【
図21】本発明の一実施形態に係るリニアスライドレールの状態を検出するための方法を示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るリニアスライドレールの状態を検出するための装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1~4を参照しながら、本発明に係るリニアスライドレールをさらに詳しく説明する。
本発明の装置はリニアスライドレールの状態の検出に適用する。リニアスライドレール20はスライダー21及びスライドレール22を備えている。スライダー21はスライドレール22を収容するための凹部S1を含む。スライダー21は凹部S1内に対向する2面の側面211及び2面の側面211に連接している底面212をさらに含む。スライドレール22は対向する2面の側面221及び2面の側面221に連接している上面222を含む。スライダー21の2面の側面211はスライドレール22の2面の側面221にそれぞれ対応し、且つスライダー21の底面212はスライドレール22の上面222に対応している。スライダー21の2面の側面211はスライドレール22の対向する両側(即ち、2面の側面221)の間に少なくとも1つのローラー経路がそれぞれ設けられている。ローラー経路は上述の複数のローラーを収容するために用いられ、複数のローラーはローラー経路中でスライダー21及びスライドレール22に当接するように接触する。
【0013】
この装置は2つのセンサー11と、分析プロセッサ12と、表示装置13と、を備えている。分析プロセッサ12は2つのセンサー11及び表示装置13に通信接続している(需要次第)。本実施例では、2つのセンサー11は、例えば、分析プロセッサ12に有線接続しているが、しかしながら本発明はこれに限られない。他の実施例では、2つのセンサー11が分析プロセッサ12にワイヤレス接続するように改変してもよい。
【0014】
センサー11は速度センサー、加速度センサー、マイク等のスライドレール22の振動を検出可能なセンサーである。また、センサー11の配置は選択するセンサー11の動作原理に基づいて決定する。本実施例では、2つのセンサー11は加速度センサー等であり、スライドレール22に接触する方式で振動を検出するため、この2つのセンサー11はスライドレール22の端部223に貼付されるように配置されると共に端面224に近接し、特にこの端部223に位置している2面の側面221にそれぞれ貼付されている。当然ながら、他の実施例の各センサー11は端面224に近接させず、例えば、側面221のスライドレール22の軸方向に沿った中段箇所或いは任意の箇所に設置してもよく、これは需要に応じて決定する。センサー11をスライドレール22の端部223に貼付する方式は、ロック、接着、吸着、或いは挟持具による挟持等である。
図17を参照する。2つのセンサー11が挟持具により挟持される方式を例にすると、本実施例では、2つのセンサー11が挟持具30により2面の側面221にそれぞれ位置決めされ、挟持具30は接合部32及び接合部32の両端にそれぞれ連接している2つの挟持部34を備え、接合部32は端面224に対向し、2つの挟持部34は2面の側面221にそれぞれ対向していると共にスライドレール22の軸方向に沿って延伸している。各挟持部34の弾力により各センサー11が対応している挟持部34と対応している側面221との間に挟持され、センサー11を位置決めする目的を達成させている。本実施例では、各センサー11及び挟持具30は独立した2つの機構であるが、他の実施例では、各センサー11が各挟持部34と連結されて統合されてもよい。或いは、あるいくつかの実施例では(図示せず)、挟持具が本体部及び本体部の両端にそれぞれ連結されていると共に下向きに延伸している2つの挟持部を備え、本体部はスライドレール22の上面222の位置に位置し、固定部材(例えば、ネジ)により本体部が上面222の螺合孔225に位置決めするように螺合され、各挟持部が各側面221の位置に位置していると共にセンサー11が各側面221に位置決めするように挟持されている。しかしながら、本発明は上述の接触式の実施態様に限られない。他の実施例では、センサーはマイク等の非接触方式で振動を検出してもよく、よって、センサーを側面221に対向させると共に側面221とは距離を隔て、センサーを側面221に対応する位置に設置するのみでよい。
【0015】
本実施例では、スライドレール22の2面の側面221には凹部S2が各々凹設され、2つのセンサー11は2面の側面221にある凹部S2の底部にそれぞれ設置されている(
図3参照)。本実施例或いは他の実施例では、
図3と
図18に示されるように、センサー11の仕様及びサイズを選択することでセンサー11がスライドレール22の行程に占める割合を減らすことができる。
しかしながら、本発明はこの設置位置に限られない。他の実施例では、
図19と
図20に示されるように、2つのセンサー11が2面の側面221の凹部S2以外の領域R1にそれぞれ設置され、且つこの領域R1が端面224に近接するのみならず、スライドレール22のスライダー21に接触せずスライダー21から離間する表面226にもさらに近接する。センサー11がスライダー21の進行に干渉しない位置に設置されるため、スライドレール22上でのスライダー21の最大滑動距離がスライドレール22自体の長さとなる。
【0016】
上述のスライドレール22の対向する両側縁に設置される2つのセンサー11により、本発明の装置がスライドレール22の振動を検出し、リニアスライドレール20の動作に異常が生じていないかどうかを知ることができる。
【0017】
図5を参照する。この装置がリニアスライドレールの状態を検出する方法について説明する。まず、スライドレール22の両側に位置している2つのセンサー11によりスライドレール22の振動を検出し、2つの検出信号をそれぞれ生成し(即ち、第一検出信号及び第二検出信号)、ステップS501のように、2つの信号を分析プロセッサ12にさらに伝送する。分析プロセッサ12は信号処理回路121と、特性分析部122と、閾値供給部123と、状態分析部124と、を備えている。状態分析部124は信号処理回路121、特性分析部122、閾値供給部123、及び状態分析部124に電気的に接続している(
図1参照)。
【0018】
この際、分析プロセッサ12の信号処理回路121の変換回路により、2つの信号が、例えば、高速フーリエ変換により時間領域信号から周波数領域信号に変換される。次いで、信号処理回路121のフィルタリング回路により2つの信号に対し第一階段フィルタリングが行われ、例えば、ローパスフィルタによりカットオフ周波数以上の高周波成分を除去する(ステップS502参照)。
その後、分析プロセッサ12が特性分析部122により第一階段フィルタリングを行った後の第一検出信号及び第二検出信号に対し特性周波数の分析を行い、第一検出信号及び第二検出信号の特性周波数を取得する(ステップS503参照)。具体的には、特性分析部122は、例えば、サンプリング回路を含み、サンプリング回路により信号に対するサンプリングを行って少なくとも1つの信号サンプルを特性周波数として獲得し、例えば
図16の複数の特性周波数Fを獲得する。
【0019】
次いで、状態分析部124が閾値供給部123により第一閾値TH1を取得し、第一検出信号の特性周波数のレベル(ピーク値)Z1と第二検出信号の特性周波数のレベル(ピーク値)Z2とを比較し、レベルZ1及びZ2の差値(レベル差値)の絶対値が第一閾値TH1より大きいかまたは等しいかどうかを判断する(ステップS504参照)。
例えば、第一検出信号の第一特性周波数のレベルZ1及び第二検出信号の第一特性周波数のレベルの比較を行う。特性周波数のレベルとはエネルギー値を指し、dBを単位とする。本実施例では、第一閾値TH1はユーザー自身が3dBより大きいかまたは等しい値に設定する。他の実施例では、第一閾値TH1は、例えば、上述の差値の絶対値とレベルZ1またはZ2との差値である。具体的には、レベルZ1がレベルZ2より大きい場合、第一閾値TH1は上述の差値の絶対値とレベルZ2との差値となる。レベルZ1がレベルZ2より小さい場合、第一閾値TH1は上述の差値の絶対値とレベルZ1との差値となる。レベルZ1がレベルZ2に等しい場合、第一閾値TH1は上述の差値の絶対値とレベルZ1及びZ2のうちの何れか1つとの差値となる。
【0020】
ステップS504において、上述の差値の絶対値が第一閾値TH1より大きいかまたは等しい場合、状態分析部124はこの比較結果に基づいて、リニアスライドレール20の片側に異常が発生したと判定する(ステップS505参照)。
【0021】
ステップS504において、上述の差値の絶対値が第一閾値TH1より小さい場合、状態分析部124は閾値供給部123により第二閾値TH2を取得し、且つ第一検出信号の特性数P1(第一特性数、即ち、第一検出信号の特性周波数の数量)及び第二検出信号の特性数P2(第二特性数、即ち、第二検出信号の特性周波数の数量)と第二閾値TH2とをそれぞれ比較し、特性数P1及び特性数P2が共に第二閾値TH2より大きいかまたは等しいかどうかを判断する(ステップS506参照)。
第二閾値TH2は例えば2dBより大きいかまたは等しい値にユーザー自身が設定する。例えば、
図16に示されるサンプリング結果には8つの特性周波数Fを有する。
【0022】
ステップS506において、特性数P1及び特性数P2が共に第二閾値TH2より大きいかまたは等しい場合、状態分析部124が閾値供給部123により第三閾値TH3を取得し、且つ第一検出信号の特性周波数のレベル(ピーク値)Q1または第二検出信号の特性周波数のレベル(ピーク値)Q2が第三閾値TH3より大きいかまたは等しいかどうかを判断する(ステップS507参照)。本実施例では、第三閾値TH3がユーザー自身が設定し、例えば、初期値よりも3dB以上大きい値を設定する。
【0023】
ステップS507において、レベルQ1またはレベルQ2が第三閾値TH3より大きいかまたは等しい場合、状態分析部124がこの比較結果に基づいてリニアスライドレール20の片側に異常が発生したと判定する(ステップS508参照)。反対に、レベルQ1またはレベルQ2が第三閾値TH3より小さい場合、状態分析部124がこの比較結果に基づいて、リニアスライドレール20現在正常に動作していると判定する(ステップS511参照)。
【0024】
ステップS506において、特性数P1または特性数P2が第二閾値TH2より小さい場合、信号処理回路121のフィルタリング回路が第一検出信号及び第二検出信号に対し第二階段フィルタリングを行い、例えば、バンドストップフィルタにより周波数60Hzの成分を除去する(ステップS509参照)。次いで、状態分析部124が閾値供給部123より第二閾値TH2を取得し、且つ特性数P3(第三特性数、即ち、第二階段フィルタリングを行った後の第一検出信号の特性周波数の数量)及び特性数P4(第四特性数、即ち、第二階段フィルタリングを行った後の第二検出信号の特性周波数の数量)が第二閾値TH2より大きいかまたは等しいかどうかを判断する(ステップS510参照)。
【0025】
ステップS510において、特性数P3及び特性数P4が全て第二閾値TH2より大きいかまたは等しい場合、分析プロセッサ12がステップS507を実行し、第一検出信号のレベル(特性周波数のピーク値)Q1及び第二検出信号のレベル(特性周波数のピーク値)Q2が第三閾値TH3より大きいかまたは等しいかどうかをそれぞれ判断する。
【0026】
ステップS510において、特性数P3或特性数P4が第二閾値TH2より小さい場合、状態分析部124がこの比較結果に基づいてリニアスライドレール20が現在正常に動作していると判定する(ステップS511参照)。
【0027】
最後に、状態分析部124の判定結果を表示装置13に伝送し、現場の操作員が参照するために提供する。これにより、現場の操作人員が異常の出現したリニアスライドレール20の動作を迅速に即時停止可能となる。
【0028】
図6至
図9Bはセンサー11の設置位置が検出結果に与える影響を検証したテストである。このテストでは、まず3つの同じセンサー11をスライドレール22の端部223に位置している2面の側面221及び上面222にそれぞれ貼設する。即ち、図面の左側に位置しているセンサー11、右側に位置しているセンサー11、及び上方に位置しているセンサー11である。その後、スライダーをスライドレール22上で滑動させ、同時に3つのセンサー11によりスライドレール22のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の振動の検出を行う。
図7A乃至
図9Bに示されるZ軸方向の振動の検出結果から分かるように、上方に位置しているセンサー11と比較すると、左右両側に位置しているセンサー11は初期状態及び異常状態における信号の差異が大きく、このため、より敏感に異常の発生を検出する。初期状態とは、新しく且つ正常なリニアスライドレールが動作を開始した際の状態を指す。
図10A乃至
図12Bに示されるX軸方向の振動の検出結果から分かるように、上方に位置しているセンサー11と比較すると、左右両側に位置しているセンサー11は初期状態及び異常状態における信号の差異が大きく、このため、より敏感に異常の発生を検出する。
図13A乃至
図15Bに示されるY軸方向の振動の検出結果から分かるように、上方に位置しているセンサー11と比較すると、左右両側に位置しているセンサー11は初期状態及び異常状態における信号の差異が大きく、このため、より敏感に異常の発生を検出する。よって、前述のテストプロセスから明らかなように、スライドレール22の両側に設置されているセンサー11はより敏感に異常の発生を検出する。
【0029】
上述の各実施例はスライドレール22の末端の対向する2面の側面221に2つのセンサー11がそれぞれ設置されている例に基づいて説明しているが、しかしながら本発明はこれに限られない。他の実施例では、スライドレール22の何れか1面の側面221にのみ1つのセンサー11を設置し、リニアスライドレール20の状態を検出してもよい。
【0030】
図21を参照しながら、この装置が
図2のリニアスライドレール20の状態を検出する方法について説明する。まず、ステップS2101を実行し、センサー11によりスライドレール22の振動を検出し、検出信号をそれぞれ生成する。
図1の分析プロセッサ12はこの検出信号を受信した後、信号を時間領域信号から周波数領域信号に変換する。次いで、ステップS2102及びS2103を実行する。ステップS2102及びS2103は
図5のステップS502及びS503にそれぞれ類似する。よって、ステップS2102及びS2103に関する説明は
図5のステップS502及びS503の関連説明をそれぞれ参照し、その説明を省略する。
【0031】
その後、ステップS2104を実行し、状態分析部124が閾値供給部123により第一閾値TH4を取得し、この検出信号の特性周波数のレベル(ピーク値)Z3が第一閾値TH4より大きいかまたは等しいかどうかを判断する。例えば、検出信号の第一特性周波数のレベルZ3により判断する。本実施例では、第一閾値TH4は、例えば、ユーザー自身が3dBより大きいかまたは等しい値に設定する。
【0032】
ステップS2104において、レベルZ3が第一閾値TH4より大きいかまたは等しい場合、状態分析部124がリニアスライドレール20に異常が発生したと判定する(ステップS2107参照)。反対に、ステップS2104において、レベルZ3が第一閾値TH4より小さい場合、状態分析部124が閾値供給部123により第二閾値TH5を取得し、且つこの検出信号の特性数P5(第一特性周波数、即ち、この検出信号の特性周波数の数量)が第二閾値TH5より大きいかまたは等しいかどうかを判断する(ステップS2105参照)。第二閾値TH5は、例えば、ユーザー自身が2dBより大きいかまたは等しい値に設定する。
【0033】
ステップS2105において、特性数P1が第二閾値TH5より大きいかまたは等しい場合、状態分析部124が閾値供給部123により第三閾値TH6を取得し、且つ検出信号の特性周波数のレベル(ピーク値)Q3が第三閾値TH6より大きいかまたは等しいかどうかを判断する(ステップS2106参照)。本実施例では、第三閾値TH6は、例えば、ユーザー自身が初期値より3dB以上大きい値に設定する。
【0034】
ステップS2106において、レベルQ3が第三閾値TH6より大きいかまたは等しい場合、状態分析部124がリニアスライドレール20に異常が発生したと判定する(ステップS508参照)。反対に、レベルQ3が第三閾値TH6より小さい場合、状態分析部124がリニアスライドレール20は現在正常に動作していると判定する(ステップS2110参照)。
【0035】
ステップS2105において、特性数P5が第二閾値TH5より小さい場合、ステップS2108を実行し、第二階段フィルタリングを行う。ステップS2108は
図5のステップS509に類似する。よって、ステップS2108に関する説明はステップS509の関連説明をそれぞれ参照し、ここでは再述しない。
次いで、状態分析部124が第二階段フィルタリングを行った後の検出信号の特性数P6(第二特性数、即ち、第二階段フィルタリングを行った後の検出信号の特性周波数の数量)が第二閾値TH5より大きいかまたは等しいかどうかを判断する(ステップS2109参照)。
【0036】
ステップS2109において、特性数P6が第二閾値TH5より大きいかまたは等しい場合、分析プロセッサ12がステップS2106を実行する。反対に、ステップS2109において、特性数P6が第二閾値TH5より小さい場合、状態分析部124がリニアスライドレール20は現在正常に動作していると判定する(ステップS2110参照)。
【0037】
最後に、状態分析部124の判定結果を表示装置13に伝送し、現場の操作員が参照するために提供する。これにより、現場の操作員が異常の出現したリニアスライドレール20の動作を迅速に即時停止することができる。
【0038】
以上を総合すると、本発明の各実施例に係るリニアスライドレールの状態を検出するための装置と方法は、少なくとも1つのセンサーをスライドレールの末端の側縁に装設することで、着脱が便利になるのみならず、装置の検出感度も向上する。
また、この装置は複数の閾値により、2つのセンサーの検出信号を分析することでリニアスライドレールの異常が出現した可能性のある位置を判断し、且つノイズが検出結果に与える影響を低下させる。
このほか、センサーをスライドレールの末端の側縁に装設し、且つスライドレールのスライダーから離間する表面に近接させることで、スライダーがスライドレール全体の上を滑動可能になり、スライドレールの滑動可能な行程に影響を与えない。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0040】
11 センサー
12 分析プロセッサ
121 信号処理回路
122 特性分析部
123 閾値供給部
124 状態分析部
13 表示装置
20 リニアスライドレール
21 スライダー
211 側面
212 底面
22 スライドレール
221 側面
222 上面
223 端部
224 端面
225 螺合孔
226 表面
30 挟持具
32 接合部
34 挟持部
F 特性周波数
P1 特性数
P2 特性数
P3 特性数
P4 特性数
P5 特性数
P6 特性数
Q1 レベル
Q2 レベル
Q3 レベル
Z1 レベル
Z2 レベル
Z3 レベル
R1 領域
S1 凹部
S2 凹部
TH1 第一閾値
TH2 第二閾値
TH3 第三閾値
TH4 第一閾値
TH5 第二閾値
TH6 第三閾値
X X軸方向
Y Y軸方向
Z Z軸方向