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特許7194229異方性導電フィルムの製造方法、及び異方性導電フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】異方性導電フィルムの製造方法、及び異方性導電フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/00 20060101AFI20221214BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20221214BHJP
   H01R 11/01 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
H01R43/00 H
H01B13/00 501P
H01R11/01 501C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021085711
(22)【出願日】2021-05-20
(62)【分割の表示】P 2017085492の分割
【原出願日】2017-04-24
(65)【公開番号】P2021122027
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2016092832
(32)【優先日】2016-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳一
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-060151(JP,A)
【文献】特開2010-033793(JP,A)
【文献】特開2014-060025(JP,A)
【文献】特開平07-247467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/00
H01R 11/01
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、前記開口部に導電粒子を保持させる保持工程を有し、
前記導電粒子の粒径に対する前記開口部の開口径の比が、1.1~2.0であり、
前記開口部に保持された導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項2】
複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、前記開口部に導電粒子を保持させる保持工程を有し、
前記開口部の開口の深さに対する前記導電粒子の粒径の比が、0.4~3.0であり、
前記開口部に保持された導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項3】
複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、前記開口部に導電粒子を保持させる保持工程を有し、
前記開口部の開口径が、全開口部の60%以上が同じ大きさであり、
前記開口部に保持された導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項4】
複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、前記開口部に導電粒子を保持させる保持工程を有し、
前記導電粒子の粒径に対する前記開口部の開口径の比が、1.1~2.0であり、
前記保持工程にて供給される導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有する異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項5】
複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、前記開口部に導電粒子を保持させる保持工程を有し、
前記開口部の開口の深さに対する前記導電粒子の粒径の比が、0.4~3.0であり、
前記保持工程にて供給される導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有する異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項6】
複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、前記開口部に導電粒子を保持させる保持工程を有し、
前記開口部の開口径が、全開口部の60%以上が同じ大きさであり、
前記保持工程にて供給される導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有する異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記保持工程において供給される複数の導電粒子の表面が、絶縁体によって被覆されている請求項1乃至のいずれか1項に記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項8】
複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程を有し、
前記フィラーの粒径に対する前記開口部の開口径の比が、1.1~2.0であり、
前記開口部に保持されたフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となるフィラー配置フィルムの製造方法。
【請求項9】
複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程を有し、
前記開口部の開口の深さに対する前記フィラーの粒径の比が、0.4~3.0であり、
前記開口部に保持されたフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となるフィラー配置フィルムの製造方法。
【請求項10】
複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程を有し、
前記開口部の開口径が、全開口部の60%以上が同じ大きさであり、
前記開口部に保持されたフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となるフィラー配置フィルムの製造方法。
【請求項11】
複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程を有し、
前記フィラーの粒径に対する前記開口部の開口径の比が、1.1~2.0であり、
前記保持工程にて供給されるフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有するフィラー配置フィルムの製造方法。
【請求項12】
複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程を有し、
前記開口部の開口の深さに対する前記フィラーの粒径の比が、0.4~3.0であり、
前記保持工程にて供給されるフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有するフィラー配置フィルムの製造方法。
【請求項13】
複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程を有し、
前記開口部の開口径が、全開口部の60%以上が同じ大きさであり、
前記保持工程にて供給されるフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有するフィラー配置フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、導電粒子を含有する異方性導電フィルムの製造方法、及び異方性導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICチップなどの電子部品を実装する異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)が知られている。また、近年、複数の開口部を有する型を用いて、異方性導電フィルム内の導電粒子を隣接する導電粒子と個々に独立させるように離間させる、もしくは配列させることが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-060151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の開口部を有する型に用いられる導電粒子は、異方性接続に支障を来たさないよう粒子径分布がシャープになるよう、分級がなされており、製造コストが高い。
【0005】
また、粒子径が大きく異なる導電粒子が面視野で配置された異方性導電フィルムは、押圧時に導電粒子の押し込み不足が発生し、導通不良の原因となる。
【0006】
本技術は、前述した課題を解決するものであり、製造コストを削減することができる異方性導電フィルムの製造方法を提供する。また、製造コストを削減することができるフィラー配置フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術に係る異方性導電フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、前記開口部に導電粒子を保持させる保持工程を有し、前記導電粒子の粒径に対する前記開口部の開口径の比が、1.1~2.0であり、前記開口部に保持された導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる
本技術に係る異方性導電フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、前記開口部に導電粒子を保持させる保持工程を有し、前記導電粒子の粒径に対する前記開口部の開口径の比が、1.1~2.0であり、前記保持工程にて供給される導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有する。
【0008】
本技術に係る異方性導電フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、前記開口部に導電粒子を保持させる保持工程を有し、前記開口部の開口の深さに対する前記導電粒子の粒径の比が、0.4~3.0であり、前記開口部に保持された導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる
本技術に係る異方性導電フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、前記開口部に導電粒子を保持させる保持工程を有し、前記開口部の開口の深さに対する前記導電粒子の粒径の比が、0.4~3.0であり、前記保持工程にて供給される導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有する。
【0009】
本技術に係る異方性導電フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、前記開口部に導電粒子を保持させる保持工程を有し、前記開口部の開口径が、全開口部の60%以上が同じ大きさであり、前記開口部に保持された導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる
本技術に係る異方性導電フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、前記開口部に導電粒子を保持させる保持工程を有し、前記開口部の開口径が、全開口部の60%以上が同じ大きさであり、前記保持工程にて供給される導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有する。
【0010】
本技術に係るフィラー配置フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程を有し、前記フィラーの粒径に対する前記開口部の開口径の比が、1.1~2.0であり、前記開口部に保持されたフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる
本技術に係るフィラー配置フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程を有し、前記フィラーの粒径に対する前記開口部の開口径の比が、1.1~2.0であり、前記保持工程にて供給されるフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有する。
【0011】
本技術に係るフィラー配置フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程を有し、前記開口部の開口の深さに対する前記フィラーの粒径の比が、0.4~3.0であり、前記開口部に保持されたフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる
本技術に係るフィラー配置フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程を有し、前記開口部の開口の深さに対する前記フィラーの粒径の比が、0.4~3.0であり、前記保持工程にて供給されるフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有する。
【0012】
本技術に係るフィラー配置フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程を有し、前記開口部の開口径が、全開口部の60%以上が同じ大きさであり、前記開口部に保持されたフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる
本技術に係るフィラー配置フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程を有し、前記開口部の開口径が、全開口部の60%以上が同じ大きさであり、前記保持工程にて供給されるフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有する。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、複数の開口部を有する部材を用いて導電粒子又はフィラーの選別を行うことにより、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、複数の開口部を有する部材上に導電粒子が供給された状態を模式的に示す断面図である。
図2図2(A)は、開口部に供給される導電粒子の粒子径分布を模式的に示すグラフであり、図2(B)は、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布を模式的に示すグラフである。
図3図3は、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布の他の例を模式的に示すグラフである。
図4図4は、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布の他の例を模式的に示すグラフである。
図5図5は、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布の他の例を模式的に示すグラフである。
図6図6(A)は、開口部に供給される粒子径の下限側を選別した導電粒子の粒子径分布を模式的に示すグラフであり、図6(B)は、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布を模式的に示すグラフである。
図7図7は、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布の他の例を模式的に示すグラフである。
図8図8は、転写工程において接着フィルムを対向させた状態を模式的に示す断面図である。
図9図9は、本実施の形態に係る接続体の製造方法を模式的に示す断面図であり、図9(A)は、配置工程(S1)を示し、図9(B)は、硬化工程(S2)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術の実施の形態について、下記順序にて詳細に説明する。
1.異方性導電フィルムの製造方法
2.異方性導電フィルム
3.接続構造体の製造方法、及び接続構造体
4.フィラー配置フィルムの製造方法、及びフィラー配置フィルム
5.実施例
【0016】
<1.異方性導電フィルムの製造方法>
本実施の形態に係る異方性導電フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径の導電粒子を供給し、開口部に導電粒子を保持させる保持工程(A)と、開口部に保持された導電粒子を接着フィルムに転写する転写工程(B)とを有する。以下、保持工程(A)、及び転写工程(B)について説明する。
[保持工程(A)]
【0017】
(開口部材)
図1は、複数の開口部を有する部材上に導電粒子が供給された状態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、部材10は、所定の開口径又は開口幅の開口サイズSを有する開口部を有する型である。型としては、例えば、ステンレスなどの金属材料、ガラスなどの透明無機材料、ポリ(メタ)アクリレートや結晶性樹脂等の有機材料が挙げられる。開口形成方法は種々公知の技術によって形成させることができる。例えば機械加工によって設けてもよく、フォトリソグラフィを利用してもよく、印刷法を利用してもよく、特に限定はない。また、型は、板状、ロール状等種々の形状をとることができ、特に制限はされない。
【0018】
開口部は、その内部に導電粒子を収容するものであり、開口の形状としては、円柱状、四角柱等の多角柱状、円錐状や四角錐等の角錐状等を例示することができる。開口部の部材上の位置、即ち異方性導電フィルムに平面視で配置される導電粒子の位置は、特定の形状を有して規則性を持っていることが好ましく、格子状、千鳥状等の規則的な配列とすることが好ましい。格子状としては、斜方格子、六方格子、正方格子、矩形格子、平行体格子等が挙げられる。また、フィルムの長手方向に対して所定の配列形状で規則性を持っていてもよい。
【0019】
開口サイズSは、異方性導電フィルムに配置する導電粒子の粒径に基づいて設定することができる。例えば求める導電粒子の粒径に対する開口径の比(=開口の径/導電粒子の粒径)は、導電粒子の収容のしやすさ、絶縁性樹脂の押し込みやすさ等のバランスから、好ましくは1.1~2.0、より好ましくは1.3~1.8である。また、例えば開口の深さに対する導電粒子の粒径の比(=導電粒子の粒径/開口の深さ)は、転写性向上と導電粒子保持性とのバランスから、好ましくは0.4~3.0、より好ましくは0.5~1.5である。なお、開口の径と深さは、レーザー顕微鏡で測定することができる。製造工程に用いる導電粒子の平均粒子径は、画像型ないしはレーザー式の粒度分布計により測定することができる。尚、画像型の粒度分布計を用いる方が、正確な粒子の大きさ(粒子径)が得られるため好ましい。画像型の粒度分布測定装置としては、例えばFPIA-3000(マルバーン社)が挙げられる。
【0020】
また、開口サイズSは、全開口部の60%以上が同じ大きさであることが好ましく、全開口部の80%以上が同じ大きさであることがより好ましく、開口部の全てが同じ大きさであることがさらに好ましい。開口部の大きさが異なることで、複数の導電粒子径のいずれかが保持されやすくなり、また開口部の大きさが同じになることで、得られる異方性導電フィルムの粒子径が均一になりやすい。また、何れにせよ開口部より著しく大きい導電粒子は、実質的には開口部に保持されないことになる。これにより、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状を得ることができる。
【0021】
開口部に対して著しく小さい導電粒子がある場合、複数が開口部に保持されることが懸念されるが、下記に記載の導電粒子の収容手法によって不要な導電粒子はかき出されることになる。かき出されない場合、微小な導電粒子が一つの開口部、もしくはその近傍に連結もしくは近接して存在することになるが、接続には寄与しないか影響が小さいことがわかるため無視してもよい。これは、接続時の樹脂流動によりバンプの接続方向に重畳することはほぼなくなるためである。また、接続に寄与する大きさの比較的小さい導電粒子が存在している場合、導通性能の向上が見込まれる。これは導電粒子でありながら、端子に挟持される場合において、これよりも大きい導電粒子のスペーサーとしても働く効果が期待できる。即ち、接続に寄与する大きさの比較的小さい導電粒子は、挟持の状態は不十分であるかもしれないが、導通点となるため導通性能の向上が見込まれ、且つこれよりも大きい導電粒子の挟持を一定の範囲で制御できることから、良好な接続状態を得易くなることが期待できる。これは金属被覆樹脂粒子であれば、圧縮されることから、圧縮状態を制御できることになり、より効果が期待できるため好ましい。また、圧縮硬さを低くして、比較的小さい導電粒子を異方性接続の目的とする大きさに設定することも可能になる。このように、導電粒子の圧縮硬さの調整で、導通性能を得るための選択肢が増えることになる。
【0022】
また、全開口部の一部において開口サイズSが異なる場合、規則性を持たせてもよい。例えば、前述した開口径の比の上限ないし下限の大きさの開口サイズSを有する開口部が隣接するようにしてもよく、上限もしくは下限の大きさの開口サイズSを有する開口部が異方性導電フィルムの長手方向となる方向に周期的に設けられてもよい。この周期性の繰り返し単位は、バンプの幅とバンプ間スペース(L/S)から設定してもよい。バンプの幅とバンプ間スペースを加味してバンプに導電粒子が存在するように開口部の配置を設定すれば、バンプに挟持される位置に導電粒子を確実に配置させることができる。開口部間の距離は適宜設定できるが、配置させる目的の最大の導電粒子径の0.5倍以上が好ましく、等倍以上となるように設定することができる。尚、比較的小さい導電粒子が存在することを加味すれば、開口部間の距離は配置させる目的の最大の導電粒子径の1.5倍以上、好ましくは2倍以上としてもよい。これは導電粒子の大きさと用いられる導電粒子に小さい粒子径のものがどの程度の大きさで、どの程度の割合で存在するかで、適宜設定できる。
【0023】
また、接続構造体の生産不良を生じ難くし、且つ導通を確実にするためには、最小と最大の開口部がペアになって繰り返されるようになればよい。もしくは最大と最小の間の大きさの開口部を同時に複数設けてもよい。この場合、いずれかの大きさの導電粒子が異方性導電フィルムに配置されればよく、いくつかは配置されなくてもよい。即ち、何れかが抜けたとしても、もう一方が存在すれば導通を満足することができる。一例として、それぞれ5個以上ずつが好ましく、10個以上ずつがより好ましく、12個ずつが更により好ましい。導電粒子間の距離は、最大の導電粒子径の0.5倍以上が好ましく、より好ましくは等倍以上である。配置は、フィルムの長手方向と直行する方向に概ね存在するになることが好ましい。一つのバンプへの補足を満足させるためである。このように導電粒子が配置されれば、実用上いずれかが接続時に補足されるため、導通不良の発生が回避できる。例えば、端子の接続面(例えば、ICチップのAuバンプの接続面)が平滑ではない凹凸形状を不定期に有している場合において、このようなペアがあれば何れかの導電粒子が適切に補足されることが期待できる。バンプが平滑ではないことが許容できれば、バンプ製造時における歩留まりの向上や設計品質の許容範囲の拡大など、接続体を得ることのコストメリットを受け易くなる。またAuバンプの場合、Auの使用量そのものを削減できる効果も期待できる。また、端子の接続面が平滑ではない凹凸形状を不定期に有している場合も、導電粒子が金属被覆樹脂粒子であれば、圧縮されるので、圧縮硬さの調整で対応が可能だと考えられる。尚、このような凹凸形状を不定期に有している場合、表面積が増えることから、導電粒子の大きさが異なるものが存在すれば単一の大きさのものよりも、接続面と導電粒子との接点が増えると推察される。端子の接続面が平滑である場合は、粒子径と圧縮硬さの調整によって、上述したような効果が期待できる。以上のような効果は、最大と最小の導電粒子径の差分や、導電粒子の硬さ(圧縮硬さ)の他に、導電粒子の配置位置や個数密度などを調整することで不具合は回避もしくは許容範囲内にすることを前提としたものである。
【0024】
開口部に導電粒子を収容する手法としては、特に限定されるものではなく、公知の手法を採用することができる。例えば、乾燥した導電粒子粉末またはこれを溶媒中に分散させた分散液を部材10の開口形成面上に散布または塗布した後、ブラシ、ブレードなどを用いて開口形成面の表面をスキージすることにより、開口部に導電粒子を収容することができる。
【0025】
開口部に導電粒子を収容する際、図1に示すように、開口サイズSより小さい導電粒子20a、20bは、開口部に収容されるが、開口サイズSより大きい導電粒子20cは、開口部に収容されず、粒子径の大きい導電粒子を除く、選別を行うことができる。これにより、製造コストを削減することができる。また、スキージ後の導電粒子を回収して再利用することにより、コスト削減を図ることができる。
【0026】
(導電粒子)
導電粒子としては、公知の異方性導電フィルムにおいて使用されているものを適宜選択して使用することができる。例えば、ニッケル、銅、銀、金、パラジウムなどの金属粒子、ポリアミド、ポリベンゾグアナミン等の樹脂粒子の表面をニッケルなどの金属で被覆した金属被覆樹脂粒子等を挙げることができる。配置される導電粒子の大きさは、一例として0.5~50μmであることが好ましく、1~30μmがより好ましい。
【0027】
保持工程(A)において供給される導電粒子の平均粒子径は、製造時の取り扱い性の観点から、0.5~50μmの粒子径が全粒子量の90%以上を占めることが好ましい。尚、1μm未満、30μmより大きい導電粒子は保持工程で除かれることが好ましい。平均粒子径は、前述したように、画像型粒度分布計により測定することができ、保持工程後に面観察(面視野観察)から計測してもよい。
【0028】
また、導電粒子の表面は、絶縁体によって被覆されていることが好ましい。導電粒子の表面に絶縁コートや絶縁粒子処理など、表面にはがれ易く且つ異方性接続に支障をきたさない表面被覆が存在することにより、開口サイズSが導電粒子よりも若干大きくても、導電粒子を開口部の内部に収容し易くなる。このような表面被覆の厚みは、接続対象物によって異なるため、接続に支障を来たさない限り特に制限はない。
【0029】
また、導電粒子の突起が表面に設けられている場合、その突起は最小の導電粒子径の20%以内、好ましくは10%以内の大きさであることが好ましい。個数については特に制限はなく、全面に均一に設けられていてもよく、まばらに設けられていてもよい。
【0030】
また、導電粒子は、粒子径の異なるものが混在しているため、比較的圧縮性の高いものであることが好ましい。即ち、金属被覆樹脂粒子を用いることが好ましい。硬さは接続対象によって変更されるため、特に制限はないが、一例として20%変形時の圧縮硬さ(K値)が1000~8000N/mm2の範囲であればよく、1000~4000N/mm2の範囲が好ましい。また、導電粒子は、硬さが異なるものが意図的に混在するようにしてもよい。
【0031】
ここで、20%変形時の圧縮硬さ(K値)とは、導電粒子を一方向に荷重して圧縮することにより、導電粒子の粒子径が元の粒子径に比べて20%短くなるときの荷重から次式(1)により算出される数値であり、K値が小さいほど柔らかい粒子となる。
K=(3/√2)F・S-8/2・R-1/2 (1)
(式中、F:導電粒子の20%圧縮変形時における荷重
S:圧縮変位(mm)
R:導電粒子の半径(mm) )
【0032】
(粒子径分布)
図2(A)は、開口部に供給される導電粒子の粒子径分布を模式的に示すグラフであり、図2(B)は、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布を模式的に示すグラフである。この粒子径分布グラフは、光学顕微鏡や金属顕微鏡の面視野観察で1000個以上、好ましくは5000個以上の導電粒子の最大長(粒子径)を測定した個数分布である。図2(A)に示すように、本法は、開口部に供給される導電粒子の粒子径分布が広くても(ブロードでも)よいことから、粒子径の下限側を分級したものを使用するなど、性能とコストのバランスを取り易くなる効果が期待でき、利用可能性の選択肢が増えるという利点がある。
【0033】
図2(A)に示すように、本実施の形態では、粒子径分布が広い導電粒子が開口部に供給されるものの、図2(B)に示すように、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)は、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる。特に、同じ大きさの開口部の割合が高いほど、傾きが実質的に無限大となるY軸に略平行な閾値Daを持つこととなる。粒子径分布において、傾きが実質的に無限大とは、Y軸と並行な直線を有する、という意味であり、Y軸と平行な直線に近似しているものも含む。また、粒子径分布において、傾きが実質的に無限大とは、垂直接線(vertical tangent)を有する、と言い換えることもできる。
【0034】
また、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布は、図2(B)に示すグラフ形状に限られるものではなく、例えば図3に示すように最大ピークの粒子径Dbで傾きが実質的に無限大となってもよく、図4に示すように傾きが実質的に無限大となる粒子径Dc以上の導電粒子が若干存在してもよい。これらのグラフ形状のように導電粒子の粒径に上限があり、上限付近の粒子数が多いことにより、押し込みが不足する導電粒子が相対的に減少するため導通不良の発生を抑制することができる。
【0035】
また、図5に示すように、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布は、ピークが複数存在する(ボトムがピーク間に存在する)形状になり、粒子径Ddで傾きが実質的に無限大となってもよい。ピークが複数存在する場合とは、例えば粒子径の異なる2種の金属被覆樹脂粒子を混合した場合などが挙げられ、金属被覆樹脂粒子の圧縮硬さの調整で接続面と導電粒子との接点を増加させ、導通性能を向上させることができる。
【0036】
また、供給される導電粒子は、粒子径の下限側を分級したものを使用することが好ましい。微小な粒子径の導電粒子は、接続に寄与しないため導通性への影響はあまりないため、コストとの兼ね合いになるが、導電粒子が比較的多く必要になる、COG接続などでは粒子径の下限側を分級したものを使用することにより、導電粒子の不要な重畳(厚み方向に導電粒子が重なること)などを抑制することができる。また、粒子径の下限側を分級したものを使用することにより、接続に寄与する大きさの比較的小さい導電粒子が開口部に保持されることが多くなり、接続に寄与する大きさの比較的小さい導電粒子よりも大きい導電粒子の挟持を一定の範囲で制御するスペーサーの効果などを調整し易くなることが期待できる。
【0037】
粒子径の下限側の分級方法としては、種々公知の技術を用いることができる。例えば、液体中の導電粒子に0.2~40μmの振幅を有する振動を与え、短径の標準偏差が10%以下の篩により行う湿式分級方法を挙げることができる(例えば、特開平11-319626が挙げられる)。
【0038】
図6(A)は、開口部に供給される粒子径の下限側を分級した導電粒子の粒子径分布を模式的に示すグラフであり、図6(B)は、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布を模式的に示すグラフである。図6(A)に示すように供給される導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子量)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径Deを有することが好ましい。これにより、図6(B)に示すように開口部に保持される導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)は、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径Dfを有するとともに、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径Dgを有することとなる。
【0039】
また、図7に示すように、開口部に保持される導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)は、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となるY軸に略平行な閾値Dhを有するとともに、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるY軸に略平行な閾値Diを有してもよい。
【0040】
また、粒子径の下限側を分級したものを使用した場合、圧着時の導電粒子の圧力を均一にするため、開口部に保持される導電粒子は、平均粒子径の±30%の範囲に全粒子数の90%以上が存在することが好ましく、平均粒子径の±20%の範囲に全粒子数の90%以上が存在することがさらに好ましい。このように予め粒子径の下限側を分級した導電粒子を使用することにより、バンプに捕捉される導電粒子の捕捉率を向上させることができる。
【0041】
なお、本技術は、図2~7に示す粒子径分布のグラフの形状に限られるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の形状をとることができる。例えば、図7に示すグラフ形状は左右対称の弾頭型であるが、左右対称でなくともよい。
【0042】
[転写工程(B)]
次の転写工程(B)では、先ず、図8に示すように、開口が形成された部材10表面に接着フィルム30を対向させる。
【0043】
接着フィルム30としては、公知の異方性導電フィルムにおいて絶縁性バインダー層として使用されているものを適宜選択して使用することができる。接着フィルム30の硬化型としては、熱硬化型、光硬化型、光熱併用硬化型などが挙げられる。例えば、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合性樹脂層、アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性樹脂層、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性樹脂層、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合性樹脂層等、又はそれらの硬化樹脂層を使用することができる。
【0044】
以下、一例として、アニオン硬化型の接着フィルムについて説明する。アニオン硬化型の接着フィルムは、膜形成樹脂と、エポキシ樹脂と、アニオン重合開始剤とを含有する。
【0045】
膜形成樹脂は、例えば平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000~80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂等の種々の樹脂が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂を好適に用いることが好ましい。
【0046】
エポキシ樹脂は、3次元網目構造を形成し、良好な耐熱性、接着性を付与するものであり、固形エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを併用することが好ましい。ここで、固形エポキシ樹脂とは、常温で固体であるエポキシ樹脂を意味する。また、液状エポキシ樹脂とは、常温で液状であるエポキシ樹脂を意味する。また、常温とは、JISZ 8703で規定される5~35℃の温度範囲を意味する。
【0047】
固形エポキシ樹脂としては、液状エポキシ樹脂と相溶し、常温で固体状であれば特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙られ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0048】
液状エポキシ樹脂としては、常温で液状であれば特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、フィルムのタック性、柔軟性などの観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0049】
アニオン重合開始剤としては、通常用いられる公知の硬化剤を使用することができる。例えば、有機酸ジヒドラジド、ジシアンジアミド、アミン化合物、ポリアミドアミン化合物、シアナートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物、カルボン酸、三級アミン化合物、イミダゾール、ルイス酸、ブレンステッド酸塩、ポリメルカプタン系硬化剤、ユリア樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0050】
また、必要に応じて、応力緩和剤、シランカップリング剤、無機フィラー等を配合してもよい。応力緩和剤としては、水添スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン-イソプレンブロック共重合体等を挙げることができる。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。また、無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を挙げることができる。
【0051】
この接着フィルム30は、上述したような樹脂を含むコーティング組成物を塗布法により成膜し乾燥させることや、更に硬化させることにより、あるいは予め公知の手法によりフィルム化することにより形成することができる。また、接着フィルム30の厚みは、好ましくは1~30μm、より好ましくは2~15μmである。なお、これらの厚みの絶縁性バインダー層を必要に応じて積層してもよい。また、接着フィルム30は、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム等の剥離フィルム40上に形成されていることが好ましい。
【0052】
剥離フィルム40側から接着フィルム30に対して圧力をかけ、開口内に絶縁性バインダー層を押し込んでも、絶縁性バインダー層の表面に導電粒子20を埋め込むように転着させてもよく、転写後に導電粒子を絶縁性バインダー層内に押し込んでもよい。これらの工程の前後で接着フィルム30を上述のように積層してもよい。これにより、絶縁性バインダー層の平面方向に導電粒子20が単層で配列された構造を形成する。なお、導電粒子は接着フィルム30の最外面に近しい位置にあることが、接続時の補足を満足させる上では好ましい。
【0053】
絶縁性バインダー層全体の最低溶融粘度としては、100~10000Pa・sが好ましい。この範囲であれば、絶縁性バインダー層に導電粒子を精密に配置することができ、且つ異方導電性接続時の押し込みにより樹脂流動が導電粒子の捕捉性に支障を来たすことを防止できる。この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instrument社製)を用い、昇温速度が10℃/分、測定圧力が5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用して求めることができる。
【0054】
<2.異方性導電フィルム>
本実施の形態に係る異方性導電フィルムは、フィルム状に形成された絶縁性バインダーと、絶縁性バインダーに面視野で配置される複数の導電粒子とを備え、導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となるものである。X軸の粒子径は、1~30μmの範囲であることが好ましい。この粒子径分布グラフは、光学顕微鏡や金属顕微鏡の面視野観察で1000個以上、好ましくは5000個以上の導電粒子の最大長(粒子径)を測定した個数分布である。
【0055】
また、導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)の形状は、ブロードである。ここで、ブロードの形状とは、累積分布において粒子径が小さい側からの個数累積10%の粒子径D10と個数累積90%の粒子径D90との差が1μmより大きいことを意味する。もしくは、ブロードの形状とは、累積分布において粒子径が小さい側からの個数累積10%の粒子径D10と個数累積90%の粒子径D90との差が平均粒子径の25%より大きいことを意味する。個数累積10%とは、計測した全粒子数を100%として大きさ(粒子径)の順に並べ替え、10%の個数における大きさ(粒子径)のことを指す。
【0056】
前述の製造方法において、開口部に収容された導電粒子は、異方性導電フィルムに面視野で配置される導電粒子となる。すなわち、図2~7に示す粒子径分布グラフを用いて説明したように、本実施の形態に係る異方性導電フィルムは、粒子径の上限側を選別した導電粒子を配置しており、導電粒子の粒径に上限があり、上限付近の粒子数が多いことにより、導通不良の発生を抑制することができる。なお、微小な粒子径の導電粒子は、接続に寄与しないため導通性への影響はあまりない。また、粒子径分布が広い導電粒子、すなわち未分級もしくは最低限の分級をした比較的コストの低い導電粒子を利用することができるため、材料コストの削減に寄与できる。且つ、上述したように導電粒子の大きさや硬さ(圧縮硬さ)の調整により、導通特性の向上の効果が期待できる。
【0057】
導電粒子が未分級もしくは最低限の分級をしていない場合、異方性導電フィルムに配置された導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、ピークが複数存在する(ボトムがピーク間に存在する)形状になることもある。これは分級前の導電粒子径がどのように種々存在するか未定であるためであるが、接続時に厚み方向に重畳しない限り前述のように支障を来たさないため、特に問題はない。
【0058】
また、導電粒子の硬さが異なるものを混ぜ合わせた場合に、意図的にこのような形状とすることもできる。例えば、硬さが比較的硬いものを比較的小さい粒子径のピークにし、硬さが比較的硬くないものを比較的大きい粒子径のピークになれば、補足の効率が上がる効果が見込める。また、導電粒子の押し込みも調節でき、導通安定性に寄与する。この場合、保持工程前に予め導電粒子の粒子径をそれぞれ測定し、簡易的な選別をそれぞれに行って概ね適切なピークになるように調整してもよい。もしくは、それぞれで異なる粒子径分布を示すものを準備して、概ね適切なピークになるように混ぜ合わせてもよい。
【0059】
また、異方性導電フィルムに配置された導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径を有することが好ましい。これにより、図6(B)に示すように開口部に保持される導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)は、最大ピークの粒子径以下の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径Dfを有するとともに、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となる粒子径Dgを有することとなる。また、圧着時の導電粒子の圧力を均一にするため、平均粒子径の±30%の範囲に全粒子数の90%以上が存在することが好ましく、平均粒子径の±20%の範囲に全粒子数の90%以上が存在することが好ましい。このように予め粒子径の下限側を分級した導電粒子を使用することにより、バンプに捕捉される導電粒子の捕捉率を向上させることができる。
【0060】
ところで、前述の保持工程(A)において、部材の開口部が粒子径の大きな導電粒子で覆われると、その後のスキージにより取り除かれて、導電粒子を保持していない開口部が生じることとなり、異方性導電フィルムに導電粒子の「抜け」が生じる。この抜けは、異方性接続に支障をきたさない範囲であれば問題はない。
【0061】
また、接続対象物のバンプレイアウトによって異方性導電フィルムの抜け率の許容範囲は異なる。抜け率とは、フィルムの幅方向の長さと、長手方向の長さにおける導電粒子の個数の存在割合である。一例としてCOGのようにバンプが高密度に配置されているものであれば、抜け率は小さくする必要があり、一例としてFOGのように比較的バンプ面積が大きいものの場合は、抜け率は大きくても問題はない。
【0062】
また、抜けには偏りがないことが好ましい。この偏りは、上記同様の理由から、COGであれば小さいことが求められ、FOGであればある程度大きくても問題はない。
【0063】
ACFの1回当たりの使用長さおよび幅は接続対象によって様々であるが、一般的には最大で20mm×2mm程度が上限になる。そのため、導電粒子径が10μm以下であれば、40mmの2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍の連続した面積を異方性導電フィルムの全体の面積とし、この面積の中で任意に抽出した1mmと著しい違い(偏り)がなければ、接続に支障を来たさないことになる。この1mmはフィルム長手方向に50μm、フィルム幅方向に200μmの面積を抜き取り(連続しないで)で10箇所抽出することが好ましい。一般にフィルムの幅方向が異方性接続するバンプの長手方向になり、フィルムの長手方向がバンプの幅方向になるため、評価する面積はフィルムの長手方向が短い矩形状とすることが好ましい。
【0064】
導電粒子径が10μmより大きく30μm以下であれば、フィルムの全体の面積はそのままにして、抽出する面積のフィルム長手方向および幅方向をそれぞれ2倍にし、100μm×400μmの面積を連続しない10箇所を抽出して計4mmを評価すればよい。なお、フィルムの幅が400μm未満になる場合は、矩形の形状を適宜変更してもよい。
【0065】
抜けの偏りは、特定箇所の個数密度が小さくなるような、まとまった抜けが存在することは好ましくない。このような抜けは、上述した50×200μmもしくは100×400μmの10箇所の個数密度の最大値に対して最小値が50%以上であることが好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上であることが更により好ましい。
【0066】
抜けの偏りの一例として、上記全体の面積の導電粒子個数密度に対して、任意に抽出した面積の合計が(1mm)±30%の差異であることが好ましく、±20%の差異であればより好ましい。この数値範囲内であれば、コストと性能の両立が得られやすくなる。
【0067】
(フィルム巻装体)
前述した異方性導電フィルムは、電子部品の接続を連続して行うため、ロールに巻かれたフィルム巻装体であることが好ましい。フィルム巻装体の長さは、5m以上であればよく、10m以上であることが好ましい。上限は特にないが、出荷物の取り扱い性の点から、5000m以下であることが好ましく、1000m以下であることがより好ましく、500m以下であることがさらに好ましい。
【0068】
フィルム巻装体は、全長より短い異方性導電フィルムを繋ぎテープで連結したものでもよい。連結箇所は複数個所存在してもよく、規則的に存在してもよく、ランダムに存在してもよい。繋ぎテープの厚みは、性能に支障を来たさない限り特に制限はないが、厚すぎると樹脂のはみ出しやブロッキングに影響を及ぼすため、10~40μmであることが好ましい。また、フィルムの幅は特に制限はないが、一例として0.5~5mmである。
【0069】
このようなフィルム巻装体によれば、連続した異方性接続ができ接続体のコスト削減に寄与することができる。
【0070】
<3.接続構造体の製造方法、及び接続構造体>
本技術に係る接続構造体の製造方法は、フィルム状に形成された絶縁性バインダーと、絶縁性バインダーに面視野で配置される複数の導電粒子とを備え、導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる異方性導電フィルムを介して第1の電子部品と第2の電子部品とを配置する配置工程(S1)と、圧着ツールにより第2の電子部品を第1の電子部品に圧着させるとともに、異方性導電フィルムを硬化させる硬化工程(S2)とを有する。
【0071】
図9は、本実施の形態に係る接続体の製造方法を模式的に示す断面図であり、図9(A)は、配置工程(S1)を示し、図9(B)は、硬化工程(S2)を示す。なお、異方性導電接着フィルムは、前述と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0072】
[配置工程(S1)]
図9(A)に示すように、配置工程(S1)では、フィルム状に形成された絶縁性バインダーと、絶縁性バインダーに面視野で配置される複数の導電粒子とを備え、導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる異方性導電フィルム60を介して第1の電子部品50と第2の電子部品70とを配置する。
【0073】
第1の電子部品50は、第1の端子列51を備える。第1の電子部品50は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第1の電子部品50としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、有機EL(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用途、タッチパネル用途などの透明基板、プリント配線板(PWB)などが挙げられる。プリント配線板の材質は、特に限定されず、例えば、FR-4基材などのガラスエポキシでもよく、熱可塑性樹脂などのプラスチック、セラミックなども用いることができる。また、透明基板は、透明性の高いものであれば特に限定はなく、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられる。
【0074】
第2の電子部品70は、第1の端子列51に対向する第2の端子列71を備える。第2の電子部品70は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第2の電子部品70としては、例えば、IC(Integrated Circuit)、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、テープキャリアパッケージ(TCP)基板、ICをFPCに実装したCOF(Chip On Film)などが挙げられる。
【0075】
[硬化工程(S2)]
図9(B)に示すように、硬化工程(S2)では、圧着ツール80により第2の電子部品70を第1の電子部品50に圧着させる。これにより、圧着ツール80により第2の電子部品が十分に押し込まれ、導電粒子61が端子間に挟持された状態で樹脂が硬化する。
【0076】
このような接続構造体の製造方法によれば、予め分級された導電粒子を含む異方性導電フィルムを用いた場合と同様に、優れた導通性を得ることができる。
【0077】
また、本技術に係る接続構造体は、第1の電子部品と、第2の電子部品と、第1の電子部品と第2の電子部品とが接着された接着膜とを備え、接着膜は、フィルム状に形成された絶縁性バインダーと、前記絶縁性バインダーに面視野で配置される複数の導電粒子とを備え、導電粒子の粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる異方性導電フィルムが硬化してなる。
【0078】
このような接続構造体によれば、予め分級された導電粒子を含む異方性導電フィルムを用いて接着した場合と同様に、優れた導通性を得ることができる。
【0079】
なお、本技術は、上述した接続構造体の製造方法への適用に限らず、ICチップやウェーハーをスタックして多層化する際にも適用することができる。
【0080】
<4.フィラー配置フィルムの製造方法、及びフィラー配置フィルム>
上述した異方性導電フィルムの製造方法は、導電粒子に代えて導電粒子と同様なフィラーを使用することにより、フィラーが面視野で配置されるフィラー配置フィルムを製造することができる。
【0081】
すなわち、本実施の形態に係るフィラー配置フィルムの製造方法は、複数の開口部を有する部材上に、複数の粒子径のフィラーを供給し、前記開口部にフィラーを保持させる保持工程と、開口部に保持されたフィラーを接着フィルムに転写する転写工程とを有し、開口部に保持されたフィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる。このように複数の開口部を有する部材を用いてフィラーの分級を行うことにより、フィラー配置フィルムの製造コストを削減することができる。また、本法は、開口部に供給されるフィラーの粒子径分布が広くても(ブロードでも)よいことから、粒子径の下限側を分級したものを使用するなど、性能とコストのバランスを取り易くなる効果が期待でき、利用可能性の選択肢が増えるという利点がある。
【0082】
フィラーとしては、フィラー配置フィルムの用途に応じて、無機フィラー、有機フィラーのいずれか一方、又は両者を用いることができる。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、マイカなどが挙げられる。また、有機フィラーとしては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリブタジエン樹脂などの公知の樹脂フィラーやゴム粒子などが挙げられる。
【0083】
例えば、フィラー配置フィルムをギャップスペーサーとして用いる場合、フィラーとしては、シリカ、炭酸カルシウムもしくは公知の樹脂フィラーやゴム粒子などが挙げられ、フィラー配置フィルムは、フィラーの粒子径が揃っているため、優れたギャップスペーサーとして機能する。また、例えば、フィラー配置フィルムを光拡散、つや消し、光沢などの光学部材として用いる場合、フィラーとしては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄もしくは公知の樹脂フィラーなどが挙げられ、フィラー配置フィルムは、フィラーが面視野で所定位置に配置されるため、優れた光学性能を得ることができる。また、例えば、フィラー配置フィルムを意匠部材として用いる場合、フィラーとしては、着色フィラー(無機物、有機物を問わない)が挙げられ、フィラー配置フィルムは、フィラーが面視野で所定位置に配置されるため、優れた意匠性を得ることができる。
【0084】
複数の開口部を有する部材、及び接着フィルムは、上述した異方性導電フィルムの製造方法で説明したものと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0085】
本実施の形態に係るフィラー配置フィルムは、フィルム状に形成された絶縁性バインダーと、絶縁性バインダーに面視野で配置される複数のフィラーとを備え、フィラーの粒子径分布グラフ(X軸:粒子径[μm]、Y軸:粒子個数)において、最大ピークの粒子径以上の範囲で傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となる。フィラー配置フィルムは、フィラーの粒子径分布において、大きい粒子径のものがカットされて面視野で配置されているため、例えば、導電粒子として公知の異方性導電フィルムの使用方法以外に導通部材として用いる用途や、ギャップスペーサー、光学部材、意匠部材などとすることができる。
【実施例
【0086】
<5.実施例>
以下、本技術の実施例について説明する。本実施例では、所定の比率(個数換算)で混合された導電粒子を、開口配列パターンが形成された樹脂型に供給して開口に導電粒子を保持させ、開口に保持された導電粒子を接着フィルムに転写することにより異方性導電フィルムを作製した。そして、異方性導電フィルムの分級評価を行った。また、異方性導電フィルムを用いて接続構造体を作製し、接続構造体の導通性評価、補足性評価、及びショート評価を行った。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。例えば、導電粒子に代えて樹脂粒子を使用したフィラー配置フィルムの製造方法およびフィラー配置フィルムの実施例についても、異方性導電フィルムの分級評価の結果と同様の効果が得られる。
【0087】
[異方性導電フィルムの作製]
(樹脂型の作製)
3μmの導電粒子が平面視において正方格子配列で格子軸と異方性導電フィルムの短手方向とのなす角度θが15°となり、粒子間距離が導電粒子の粒子径の2倍と等しくなり、導電粒子の個数密度が28000個/mmとなるように、上記配列パターンに則った凸部を有する金型を作製した。金型の凸部は3.3μm×3.3μmの正方形であり、この中心点におけるピッチが平均導電粒子径3μmの2倍となる6μmとした。また、凸部の高さ(即ち、開口の深さ)は3.5μmとした。この金型に、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で流し込み、冷やして固めることで、開口配列パターンが形成された樹脂型を形成した。得られた樹脂型の開口の深さは凸部の高さとほぼ同じであった。
【0088】
(絶縁性樹脂層A及び絶縁性樹脂層Aの作製)
下記配合の樹脂組成物Aをバーコーターでフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚さ4μmの絶縁性樹脂層Aを形成した。
【0089】
樹脂組成物A(絶縁性樹脂層A)
フェノキシ樹脂(YP-50、新日鉄住金化学(株)):30質量部、エポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株)):40質量部、カチオン硬化剤(SI-60L、三新化学工業(株)):2質量部、フィラー(アエロジルRX300、日本アエロジル(株)):30質量部
【0090】
下記配合の樹脂組成物Bをバーコーターでフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に厚さ14μmの絶縁性樹脂層Bを形成した。
【0091】
樹脂組成物B(絶縁性樹脂層B)
フェノキシ樹脂(YP-50、新日鉄住金化学(株)):30質量部、フェノキシ樹脂(FX-316ATM55、新日鉄住金化学(株)):30質量部、エポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株)):40質量部、カチオン硬化剤(SI-60L、三新化学工業(株)):2質量部
【0092】
(2層型異方性導電フィルムの作製)
導電粒子として、3μmの金属被覆樹脂粒子(積水化学工業(株)、AUL703、平均粒子径3μm、以下「3μm径粒子」と記す)と、5μmの金属被覆樹脂粒子(積水化学工業(株)、AUL705、平均粒子径5μm、以下「5μm径粒子」と記す)とを準備した。
【0093】
3μm径粒子が個数換算で80%、5μm径粒子が20%となるように容器に秤量し、十分に混合し、導電粒子Aを得た。混合の確認は、混合物を少量抜き取り、接着フィルム状に散布して金属顕微鏡で観察した。なお、3~10回これを繰り返し混合状態が均一であることを確認した。
【0094】
導電粒子Aを開口配列パターンが形成された樹脂型の凹みに充填し、その上に上述の絶縁性樹脂層Aを被せ、60℃、0.5MPaで押圧することで、導電粒子Aを絶縁樹脂層貼着させた。そして、樹脂型から絶縁性樹脂層Aを剥離し、絶縁性樹脂層A上の導電粒子を加圧(押圧条件:60~70℃、0.5Mpa)することで、導電粒子Aを絶縁性樹脂層Aに押し込み、導電粒子含有層を作製した。この導電粒子含有層の導電粒子Aが存在する面側に、絶縁性樹脂層Bからなる導電粒子非含有層を60℃、0.5MPaの条件で積層することで、厚さ18μmの異方性導電フィルムAを作製した。
【0095】
3μm径粒子が個数換算で75%、5μm径粒子が25%となるように混合された導電粒子B、3μm径粒子が個数換算で50%、5μm径粒子が50%となるように混合された導電粒子C、3μm径粒子が個数換算で40%、5μm径粒子が60%となるように混合された導電粒子D、3μm径粒子が個数換算で100%となる導電粒子Eについても、上述と同様に異方性導電フィルムB~Eを作製した。
【0096】
[異方性導電フィルムの分級評価]
異方性導電フィルムA~Eの導電粒子含有層のフィルム面を金属顕微鏡により観察することで、配列における粒子抜けを評価した。異方性導電フィルムA~Eの観察は、フィルム長手方向に50μm、フィルム幅方向に200μmの面積を、連続しない10箇所で行い、これを5箇所で繰り返し、合計5mmの面積を行った。
【0097】
その結果、異方性導電フィルムA~Dは、使用した導電粒子の3μm径粒子の個数比率が低いほど、配列に粒子抜けがあったが、後述するように3μm径粒子のみを使用した異方性導電フィルムEと同様の性能を示し、実用上問題ない範囲であった。
【0098】
また、異方性導電フィルムA~Eにおける導電粒子含有層の導電粒子の粒子径分布を、粒度分布測定装置(FPIA-3000(マルバーン社))を用いて測定した。
【0099】
その結果、異方性導電フィルムA~Eの導電粒子の全ての粒子径分布は、約3μmで傾きが実質的に無限大となるグラフ形状となり、最大ピークは、3μmより小さかった。すなわち、グラフ形状は、約3μmの粒子径においてY軸と並行な直線に近似していた。また、異方性導電フィルムA~Eの全てにおいて、導電粒子が平均粒子径の±30%の範囲に全粒子数の90%以上が存在していることが確認できた。尚、厳密には3μmより大きい導電粒子の存在により、X軸が3μmから3.3μmの間におけるY軸の値がゼロに近い部分(X=3~3.3で、Y=0よりも僅かだけ正の値側の部分)のグラフ形状は、図4に示されるようなわずかばかりだけショルダーのある形状となった。
【0100】
[接続構造体の導通性評価]
異方性導電フィルムA~Eを導通性評価用ICとガラス基板との間に挟み、加熱加圧(180℃、60MPa、5秒)して導通性評価用の接続構造体を作製した。そして、各接続構造体の導通抵抗を、接続後の初期、及び、温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間静置した信頼性試験後に測定した。
【0101】
その結果、異方性導電フィルムA~Eを用いた接続構造体の全てにおいて、初期の導通抵抗が0.5Ω未満、信頼性試験後の導通抵抗が5Ω未満であった。すなわち、異方性導電フィルムA~Dは、3μm径粒子のみを使用した異方性導電フィルムEと同様の性能を示し、実用上問題ないことが分かった。
【0102】
導通性評価用IC:
外形 1.8×20.0mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ30×85μm、バンプ間距離50μm、バンプ高さ15μm
ガラス基板(ITO配線):
ガラス材質 コーニング社製1737F
外径 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0103】
[接続構造体の補足性評価]
導通性評価用の接続構造体を用いて、導電粒子の捕捉状態について圧痕検査を行った。その結果、異方性導電フィルムA~Eの全てにおいて、バンプ1個当たり少なくとも3個以上の導電粒子が、各々独立した圧痕となっていることが確認できた。また、捕捉数については、3μm径粒子の混合比率が高いほど補足数が多い傾向となり、3μm径のみを使用した異方性導電フィルムEが最も捕捉数が多かった。
【0104】
[接続構造体のショート評価]
導通性評価用の各接続構造体について、バンプ間100個においてショートしているチャンネル数を計測し、ショート数とした。その結果、異方性導電フィルムA~Eを用いた接続構造体の全てにおいて、ショートしているものはなかった。
【0105】
また、異方性導電フィルムA~Eをショート発生率評価用ICと該評価用ICに対応したパターンのガラス基板との間に挟み、加熱加圧(180℃、60MPa、5秒)して導通性評価用の接続構造体を作製した。そして、バンプ間においてショートしているチャンネル数をショート数とし、「ショートの発生数/7.5μmスペース総数」で算出されるショート発生率を求めた。
【0106】
その結果、異方性導電フィルムA~Eを用いた接続構造体の全てにおいて、ショート発生率は50ppm未満であった。なお、ショート発生率が50ppm未満であれば実用上問題はない。
【0107】
ショート発生率評価用IC(櫛歯TEG(Test Element Group))
外形 1.5×13mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 金メッキ、高さ15μm、サイズ25×140μm、バンプ間距離7.5μm
【0108】
[総合評価]
異方性導電フィルムの分級評価、接続構造体の導通性評価、補足性評価、及びショート評価のいずれにおいても、本技術を適用させた異方性導電フィルムA~Dは、3μm径粒子のみを使用した異方性導電フィルムEと同等であり、実用上問題ないことが分かった。すなわち、本技術を適用することにより、粒子径分布がブロードな導電粒子を使用することができ、製造コストを削減することができる。また、異方性導電フィルムの分級評価の結果から、フィラー配置フィルムでも同様の効果が得られることが分かる。
【0109】
なお、上述した実施例では、大きな粒子径の導電粒子を除去することとしたが、小さな粒子径の導電粒子を公知の手法で予め除去するようにしてもよい。小さな粒子径の導電粒子を除去する方法としては、例えば、液体中の導電粒子に0.2~40μmの振幅を有する振動を与え、短径の標準偏差が10%以下の篩により行う湿式分級方法などが挙げられる。
【符号の説明】
【0110】
10 部材、20 導電粒子、30 接着フィルム、40 剥離フィルム、50 第1の電子部品、51 第1の端子列、60 異方性導電フィルム、61 導電粒子、70 第2の電子部品、71 第2の端子列、80 圧着ツール

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9