(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】有機物を酸化するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C07C 407/00 20060101AFI20221214BHJP
B01J 10/00 20060101ALI20221214BHJP
C07C 409/08 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C07C407/00
B01J10/00 104
C07C409/08
(21)【出願番号】P 2021519772
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2019086440
(87)【国際公開番号】W WO2020133872
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】201811603256.6
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516296371
【氏名又は名称】万華化学集団股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WANHUA CHEMICAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.17, TIANSHAN ROAD, YEDA, YANTAI CITY,SHANDONG PROVINCE, CHINA.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】劉鵬
(72)【発明者】
【氏名】孫犀▲さん▼
(72)【発明者】
【氏名】朱発明
(72)【発明者】
【氏名】叢振霞
(72)【発明者】
【氏名】喬小飛
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101704742(CN,A)
【文献】特開平06-285364(JP,A)
【文献】特表2008-511587(JP,A)
【文献】特開昭51-128931(JP,A)
【文献】特開平06-072911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチルベンゼンを酸素含有ガスと接触させてエチルベンゼンヒドロペルオキシドを調製することに用いる方法であって、
前記方法に用いる装置は、縦型バブリング反応器と、前記縦型バブリング反応器の反応生成物出口に接続された横型バブリング反応器とを含み、前記横型バブリング反応器内に、その軸方向に沿って配置された多段階反応隔室が設けられ、隣接する反応隔室間に液相通路が設けられて
おり、
前記縦型バブリング反応器の出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度を0.5%~1.5%に制御する、ことを特徴とする
方法。
【請求項2】
前記縦型バブリング反応器は、前記縦型バブリング反応器の下部に設けられた液体入口及びガス入口と、前記反応器の上部に設けられた液体出口及びガス出口とを含み、前記縦型バブリング反応器内に、縦方向に沿って流体の通過を容許する案内筒が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記案内筒の高さは前記縦型バブリング反応器の高さの10~90%であり
、前記案内筒の横断面積は反応器の横断面積の5~60%を占
めている、ことを特徴とする請求項2に記載の
方法。
【請求項4】
前記案内筒の高さは前記縦型バブリング反応器の高さの20~80%である、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記案内筒の高さは前記縦型バブリング反応器の高さの40~70%である、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記案内筒の横断面積は反応器の横断面積の10~25%を占めている請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記縦型バブリング反応器内に、前記ガス入口に接続された第1のガスディストリビューターがさらに設けられ、前記第1のガスディストリビューターの分布孔は、前記案内筒の内部又は前記案内筒と縦型バブリング反応器の内壁の間の環状隙間に分布されている、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の
方法。
【請求項8】
前記縦型バブリング反応器の内壁に、液体出口に位置する縦型反応器出口溢流堰が設けられ、且つ前記案内筒の上端は前記縦型反応器出口溢流堰の上端よりも低い、ことを特徴とする請求項2
又は3に記載の
方法。
【請求項9】
前記横型バブリング反応器の軸方向の両端に、反応液入口及び反応液出口がそれぞれ設けられ、各階段反応隔室の下端に反応ガス入口、上端に反応ガス出口、内部に反応ガス入口を接続する第2のガスディストリビューターが設けられ、
前記反応隔室は、前記横型バブリング反応器内に設けられた仕切り板により仕切られ、前記液体通路は前記仕切り板に開設された液相通路で
ある、ことを特徴とする請求項2
又は3に記載の
方法。
【請求項10】
前記液体通路は前記仕切り板の底部に開設された液相通路である、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記反応隔室内に、通常の操作での液体の流れ方向に沿って設けられた、少なくとも1つの垂直のバッフルが設けられ、前記バッフルの底部は所在する反応隔室の第2のガスディストリビューターよりも高くな
い、ことを特徴とする請求項
10に記載の
方法。
【請求項12】
前記バッフルに複数の開孔が設けられ、且つバッフルの底部から前記横型バブリング反応器の内壁までの距離が50mmよりも小さくなく、前記バッフルの高さは前記横型バブリング反応器の高さの10~70%である、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バッフルの高さは前記横型バブリング反応器の高さの20~50%である、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記バッフルの側面に下向きに傾斜した複数の案内板が設けら
れる、ことを特徴とする請求項
11に記載の方法。
【請求項15】
前記バッフルの合計面積に対する前記複数の案内板の合計面積の比は0.01~0.15である、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記バッフルの合計面積に対する前記複数の案内板の合計面積の比は0.05~0.1である、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記案内板は舌状である、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記縦型バブリング反応器と前記横型バブリング反応器の内の気相空間の高さは0.5mよりも小さくない、ことを特徴とする請求項
1に記載の
方法。
【請求項19】
前記縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度
を1%~1.5%に制御する、請求項
1に記載の方法。
【請求項20】
N個の反応隔室を含む横型バブリング反応器の反応液出口で濃度がCのエチルベンゼンヒドロペルオキシドを得ると、その中の縦型反応器出口の過酸化物の濃度を
【数1】
の80%~95%に制御する、請求項
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物、例えば、エチルベンゼン又はクメン又はシクロヘキサンを酸化する方法に関し、特に、エチルベンゼンを酸素含有ガスと接触反応させてエチルベンゼンヒドロペルオキシドを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンオキシド(PO)とスチレン(SM)の併産法(即ち、PO/SM法)は、現在、プロピレンオキシドを生産する最適なプロセスの1つである。PO/SM法は主に3つのステップを含む。1.エチルベンゼンを空気と接触して酸化させてエチルベンゼンヒドロペルオキシド(EBHP)を生成すること、2.EBHPはプロピレンを酸化させてプロピレンオキシドになるが、自身がフェニルメチルアルコールに還元されること、3.フェニルメチルアルコールを脱水してスチレンを生成すること。その反応経路は式(1)で表すことができる。
【0003】
【0004】
ただし、エチルベンゼンを酸化させてエチルベンゼンヒドロペルオキシドを調製することは、PO/SM法のキーポイントである。エチルベンゼンを酸化させてEBHPを生成すると同時に、EBHPはさらに一連の副反応を引き起こし、EBHPの選択性を低下させ、したがって、工業過程におけるエチルベンゼンのシングルパス変換率は一般に10%未満である。
【0005】
現在、工業的に使用されているエチルベンゼン酸化反応器は、主に横型バブリング塔反応器である。米国出願US4066706、US4262143は、バッフルを用いて反応器を5~10個の領域に分割する横型反応器を開示しており、エチルベンゼン反応液は、一方の側から反応器に入り、各領域を順番に通過した後に、他方の側から排出され、空気は底部から対応する領域に吹き込まれ、エチルベンゼンと接触して反応させた後、頂部から排出される。
【0006】
上記の反応器は有機物の過酸化反応で広く使用されているが、それでもガスと液体の接触が不十分である問題がある。ロイヤルダッチシェルは、このタイプの反応器の一部の領域で酸素不足の現象があるため、機器の生産能力が低下することを公に報告していた(Chemical Engineering Science,62(2007)5495-5502)。
【0007】
また、有機物の酸化過程は一般にフリーラジカルメカニズムに従い、反応の初期で一定の開始時間が必要であり、横型反応器は、通常の操作過程において、ほとんど流体が水平方向に沿って流れ、液相の逆混合が少なく、この特徴は反応選択性の向上に役立ちが、同時に反応の初期の反応速度が低く、開始時間が長く、その結果、機器の生産能力が低下する。
【0008】
上記の横型反応器に存在する技術的問題について、従来の横型反応器の関連する問題を回避するように、エチルベンゼン酸化反応器の性能を改善するための新しいタイプの反応システムを探す必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、有機物を酸化する装置及び方法を提供し、特に液体エチルベンゼンを酸素含有ガスと接触反応させる装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的の一態様を達成するために、本発明は以下の技術案を講じた。
【0011】
有機物を酸化するための装置であって、縦型バブリング反応器と、前記縦型バブリング反応器の反応生成物出口に接続された横型バブリング反応器とを含み、前記横型バブリング反応器内に、その軸方向に沿って配置された多段階反応隔室が設けられ、隣接する反応隔室間に液相通路が設けられている、装置。
【0012】
本発明は、縦型バブリング反応器と横型バブリング反応器との組み合わせにより実現され、まず、縦型バブリング反応器を含み、縦型は水平面に対して基本的に垂直であると理解すべきである。該縦型バブリング反応器は、前記反応器の下部に設けられた液体入口及びガス入口と、前記反応器の上部に設けられた液体出口及びガス出口とを含み、例えば、前記反応器の上部の側面に設けられた液体出口と前記反応器の頂部に設けられたガス出口とを含み、前記縦型バブリング反応器内に、縦方向に沿って流体の通過を容許する案内筒が設けられている。一実施形態において、案内筒は、案内筒の中心線が縦型バブリング反応器の軸線と重なる位置に設けられるほうがよい。前記案内筒は様々な形状を有し、例えば、前記案内筒は、円形、長方形、正方形、又は楕円形の断面を有してもよく、好ましくは、円形断面を有する管状の案内筒である。
【0013】
本発明の装置によれば、一実施形態において、前記案内筒の高さは前記縦型バブリング反応器の高さの10~90%であり、好ましくは20~80%であり、より好ましくは40~70%であり、例えば、50%又は60%であり、前記案内筒の断面積は反応器の断面積の5~60%を占め、好ましくは10~25%を占め、例えば、15%、20%又は40%を占めている。
【0014】
本発明の装置によれば、一実施形態において、前記縦型バブリング反応器内に、前記ガス入口に接続された第1のガスディストリビューターがさらに設けられ、前記第1のガスディストリビューターの分布孔は、前記案内筒の内部又は前記案内筒と反応器の内壁の間の環状隙間に分布されており、このような分布孔の配置方式により、案内筒内及び案内筒と反応器の内壁の間の環状隙間の領域の空気含有率に顕著な差異を示すことができ、これによる両領域の流体の密度差は流体が両領域間の環流運動の形成を促すことができ、この環流運動は、縦型バブリング反応器での液体の逆混合を強化し、反応開始に必要な時間を短縮することに役立ち。前記ガスディストリビューターは当業者に周知の任意の形態、例えば、環状のディストリビューター、分岐パイプ状のディストリビューター等であってもよい。
【0015】
本発明の装置によれば、一実施形態において、前記縦型バブリング反応器の内壁に、液体出口に位置する縦型反応器出口溢流堰が設けられ、且つ前記案内筒の上端は前記縦型反応器出口溢流堰の上端よりも低い。
【0016】
横型バブリング反応器については、横型水平は水平面に対して基本的に平行であると理解すべきである。前記横型バブリング反応器の軸方向の両端に、反応液入口及び反応液出口がそれぞれ設けられ、各階段反応隔室の下端に反応ガス入口、上端に反応ガス出口、内部に反応ガス入口を接続する第2のガスディストリビューターが設けられている。前記第2のガスディストリビューターは一般に多孔管であってもよく、開孔孔径は1~15mmを選択可能であり、好ましくは2~6mmであり、開孔率は0.01~10%を選択可能であり、好ましくは0.02~3%であり、例えば、1%、2%である。単一の反応隔室内に複数本のガス分布多孔管がある場合、前記多孔管は、反応器の底部の同じ水平面に均一に分布されるか、反応器の底部の弧線に沿って均一に分布されてもよく、好ましくは反応器の底部の弧線に沿って均一に分布される。
【0017】
前記反応隔室は、前記横型バブリング反応器内に設けられた仕切り板により仕切られ、前記液体通路は前記仕切り板に開設された液相通路であり、好ましくは前記仕切り板の底部に開設された液相通路であり、それは、反応器の底部で容易に現れる液体の流れの不感帯を回避し、エチルベンゼンヒドロペルオキシドを調製する過酸化反応を促進することができる。当業者は、前記液相通路の形状が、円形、長方形、弓形又は他の任意の形状であってもよく、好ましくは円形であることを理解している。
【0018】
本発明の装置によれば、一実施形態において、前記反応隔室内に、通常の操作での液体の流れ方向に沿って設けられた、少なくとも1つの垂直バッフルが設けられ、前記バッフルの底部は所在する反応隔室のガスディストリビューターよりも高くなく、例えば、各反応隔室は、通常の操作での液体の流れ方向に沿って設けられた、案内板を有した2つの垂直バッフルを含む。通常の操作で液体は横型バブリング反応器の一端から他端に流れ、したがって、バッフルは反応器の一端から反対端への方向に沿って設けられている。前記2つのバッフルは横型バブリング反応器の中心線に対して対称に設けられている。一実施形態において、前記バッフルに複数の開孔がさらに設けられ、且つバッフルの底部から前記横型バブリング反応器の内壁までの距離は50mmよりも小さくなく、前記バッフルの高さは前記横型バブリング反応器の高さの10~70%であり、より好ましくは20~50%であり、例えば、30%又は40%である。
【0019】
本発明の装置によれば、一実施形態において、前記バッフルの側面に下向きに傾斜した複数の案内板が設けられ、一実施形態において、バッフルの合計面積に対する前記複数の案内板の合計面積の比は0.01~0.15であり、好ましくは0.05~0.1であり、一実施形態において、前記案内板は舌状である。
【0020】
本発明の装置によれば、一実施形態において、過酸化物が気相と共に他の機器につれることを回避するために、前記縦型バブリング反応器と前記横型バブリング反応器の内に十分の気相空間を残すことができ、前記気相空間の高さは0.5mよりも小さくない必要があり、例えば、0.8m、1m又は1.2mであり、ただし、前記気相空間の高さとは、反応器のガス出口と下方の液面との間の距離を指す。
【0021】
本発明の装置によれば、一実施形態において、前記縦型バブリング反応器の異なる高さに他のスペア液体出口もそれぞれ設けられており、これらのスペア液体出口は、液位を制御して反応滞留時間を調整するために、必要なときに開くことができる。
【0022】
本発明の装置によれば、一実施形態において、本発明に係る有機物を酸化するための装置は、液体ディストリビューターをさらに含み、前記液体ディストリビューターは、前記液体入口から導入される原料を均一に分布するために、前記縦型バブリング反応器の下部、例えば、案内筒の下方に設けられている。
【0023】
上記目的の他の態様を達成するために、本発明は以下の技術案を講じた。上記した装置を、エチルベンゼンを酸素含有ガスと接触させてエチルベンゼンヒドロペルオキシドを調製することに用いる。
【0024】
本発明の方法によれば、エチルベンゼンを酸素含有ガスと接触させてエチルベンゼンヒドロペルオキシドを調製することに用いる場合、液体エチルベンゼンは縦型バブリング塔反応器の下部から該反応器に入り、酸素含有ガスも同様に縦型バブリング塔反応器の下部を通して入り、ガスディストリビューターを介して液体反応液に分散され、液体エチルベンゼンと酸素含有ガスは並流して前記縦型バブリング反応器を通過し、この過程に、エチルベンゼンと酸素含有ガスが接触反応してエチルベンゼンヒドロペルオキシドを生成し、気相物質は反応器の頂部から排出され、液体反応物は、反応器の上部の縦型反応器出口溢流堰を通して縦型反応器から流出する。
【0025】
本発明の方法によれば、縦型バブリング反応器から流出する液体反応物は、横型バブリング反応器の一端から前記横型バブリング反応器に入り、酸素含有ガスは、前記横型バブリング反応器の底部から、第2のガスディストリビューターを介して液体反応物に分散され、液体反応物と酸素含有ガスは、前記横型バブリング反応器内でクロスフローが形成され、この過程に、エチルベンゼンを酸素含有ガスと接触させて反応し続け、エチルベンゼンヒドロペルオキシドを生成し、気相物質は前記横型バブリング反応器の頂部から排出され、縦型バブリング反応器の気相物質と混合してから、後続きのエチルベンゼン回収工程に移行し、液体反応物は前記横型バブリング反応器の他端から排出された後、後続きの工程に移行する。
【0026】
一般的には、前記横型バブリング反応器に縦方向に沿って間隔を空けて複数の仕切り板が設けられることにより、前記横型バブリング反応器を横方向に配列された複数の独立した反応隔室に分け、そのうち、隣接する反応隔室間に、流体が1つの隔室から他の隔室に入り、反応し続けることができるように液相通路が設けられている。これらの独立した反応隔室は、例えば、反応温度、又は酸素含有ガス流量等の異なる条件で操作可能である。
【0027】
本発明の方法によれば、縦型バブリング塔及びその内部案内筒を設けることにより、液相逆混合を強化し、反応システムにおけるフリーラジカルの濃度を増加させ、壁効果によるフリーラジカル消滅を大幅に低減し、反応開始に必要な時間を短縮し、開始段階での副生成物の生成を減らし、EBHP選択性を向上させることができる。しかし、エチルベンゼン過酸化過程には一連の副反応が存在するため、EBHP濃度が高すぎると、EBHP選択性も低下し、したがって、最適な生成物選択性を得るために、反応開始段階のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度、即ち、縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度を制御すべきである。一実施形態において、前記縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度を0.5%~1.5%に制御し、好ましくは、1%~1.5%、例えば、0.6%、0.8%、0.9%、1.2%、1.3%又は1.4%に制御できる。
【0028】
一実施形態において、横型バブリング反応器がN個の反応隔室(即ち、横型バブリング反応器に実用される反応隔室)を含まれば、反応システム出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度はCであり、縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度を
【数1】
の80%~95%に制御すべきである。
【0029】
本発明は、案内筒を含む縦型バブリング反応器と整流バッフルを含む多隔室横型バブリング反応器とを巧みに組み合わせることにより、エチルベンゼン酸化反応の開始段階を強い逆混合条件下で行うが、従来の反応階段は、緩やかな冷却と弱い逆混合の条件下で行うと同時に、強い逆混合部分である縦型バブリング反応器内のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度を厳密に制御し、エチルベンゼン酸化反応の特性を満たす効率的な生産方法を構築し、反応効率と選択性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1はエチルベンゼンを酸素含有ガスと接触させてエチルベンゼンヒドロペルオキシドを調製するための方法の一実施形態の模式図である。
【
図2】
図2は横型バブリング反応器における案内バッフルの一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲が以下の実例に限定されると理解すべきではない。本発明の上記の方法・思想から逸脱することなく、本分野における一般的な技術的知識及び従来の手段に基づいて行われた様々な置換又は変更は、本発明の範囲に含めるべきである。
【0032】
図1に示すように、本発明に係る有機物を酸化するための装置は、縦型バブリング反応器1と、前記縦型バブリング反応器1の反応生成物出口に接続された横型バブリング反応器11とを含み、前記横型バブリング反応器11内に、その軸方向に沿って配置された多段階反応隔室21が設けられ、隣接する反応隔室21間に液相通路22が設けられている。本発明は、縦型バブリング反応器1と横型バブリング反応器11との組み合わせにより実現され、まず、縦型バブリング反応器1で反応開始を完成し、次に横型バブリング反応器11で従来の反応階段を行う。
【0033】
前記縦型バブリング反応器は水平面に対して基本的に垂直に設けられ、それは、反応器に設けられた下部シールヘッド2の液体入口8及びガス入口7と、前記反応器の上部の側面に設けられた液体出口10(即ち、反応生成物出口)と、前記反応器の頂部に設けられた気相出口9とを含む。
【0034】
前記縦型バブリング反応器1内に、縦方向に沿って流体の通過を容許する案内筒4が設けられ、好ましくは、通常の操作で縦型バブリング反応器1を通過する液体の流れ方向に沿って案内筒4が設けられている。通常の操作過程において、縦型バブリング反応器1を通過する液体の流れ方向は下部液体入口8から上部液体出口10への方向であるため、案内筒4は縦型バブリング反応器1の下部から上部へ設けられている。また、前記縦型バブリング反応器1の異なる高さに他のスペア液体出口もそれぞれ設けられており、これらのスペア液体出口は、液位を制御して反応滞留時間を調整するために、必要なときに開くことができる。一実施例において、案内筒4は、案内筒4の中心線が縦型バブリング反応器1の中心軸線と重なる位置に設けられるほうがよい。一実施例において、本発明に係る有機物を酸化するための装置は液体ディストリビューター(図示せず)をさらに含み、前記液体ディストリビューターは、前記液体入口8から導入される原料を均一に分布するために、前記縦型バブリング反応器の下部、例えば、案内筒4の下方に設けられている。
【0035】
前記案内筒4は様々な形状を有し、例えば、前記案内筒4は、円形、長方形、正方形、又は楕円形の断面を有してもよく、好ましくは、円形断面を有する管状の案内筒である。
【0036】
前記案内筒4の高さは大きな範囲内に変化可能である。一般的には、案内筒4の高さは縦型バブリング反応器1の高さの10~90%であってもよく、好ましくは20~80%であり、より好ましくは40~70%である。案内筒4の断面積も大きな範囲内に変化可能であり、一般的には、案内筒4の断面積は反応器1の断面積の5~60%を占めてもよく、好ましくは、10~25%を占めている。
【0037】
前記縦型バブリング反応器1の内壁に縦型反応器出口溢流堰6が設けられ、前記縦型反応器出口溢流堰6は反応器の内壁上の液体出口に固定され、当業者は、溢流を形成するように、その下端が前記液体出口よりも低く、上端が前記液体出口よりも高くなければならず、且つ前記案内筒の上端が前記縦型反応器出口溢流堰6の上端よりも低いことを理解している。
【0038】
前記縦型バブリング反応器1内に、前記ガス入口7に接続された第1のガスディストリビューター5がさらに設けられ、酸素含有ガスは縦型バブリング反応器1の下部から入り、第1のガスディストリビューター5を介して液体反応物に分散される。前記第1のガスディストリビューター5は当業者に周知のガスディストリビューター形態、例えば、環状のディストリビューター、分岐パイプ状のディストリビューター等であってもよい。
【0039】
前記第1のガスディストリビューター5の分布孔はすべて案内筒4内又は案内筒4と縦型バブリング反応器1の内壁の間の環状隙間に設けられ、好ましくは後者である。このような分布孔の配置方式により、案内筒4の内部及び案内筒4と反応器の内壁の環状隙間領域の空気含有率に顕著な差異を示すことができ、これによる両領域の流体の密度差は流体が両領域間の環流運動の形成を促すことができ、この環流運動は、縦型バブリング反応器1での液体の逆混合を強化し、反応開始に必要な時間を短縮することに役立ち。
【0040】
前記第1のガスディストリビューター5の開孔孔径は1~15mmを選択可能であり、好ましくは2~6mmであり、例えば、3、4又は5mmであり、開孔率は0.01~10%を選択可能であり、好ましくは0.02~3%であり、例えば、1%、2%又は2.5%である。
【0041】
前記横型バブリング反応器11は横型筒体構造であり、基本的に水平面に対して平行に設けられ、それは、反応器に設けられた左端シールヘッド12の反応液入口18と、右端シールヘッド13に設けられた反応液出口19と、該反応器の底部に設けられた反応ガス入口17と、該反応器頂部に設けられた反応ガス出口20と、複数の反応隔室21とを含み、そのうち、液体の流れ方向に沿った最末尾の反応隔室内の反応液出口19に横型反応器出口溢流堰16がさらに設けられてもよい。一般的には、前記横型バブリング反応器11には、前記横型バブリング反応器11を横方向に配列された複数の独立した反応隔室21に分けるように、縦方向に沿って間隔を空けて複数の仕切り板14が設けられ、そのうち、隣接する反応隔室21間に、流体が1つの反応隔室から他の隔室に入り、反応し続けることができるように液相通路22が設けられている。これらの独立した反応隔室21は、例えば、吸気温度及び組成を調節することにより、異なる条件下(例えば、反応温度又酸素含有ガス流量等)で操作することができる。
【0042】
当業者は、複数の反応隔室21を含む横型バブリング反応器11も、反応隔室21の総量を保証するために、1つ又は複数の反応隔室21を含む複数台の横型バブリング反応器11として同等に構成できることを理解している。
【0043】
前記液相通路22は前記仕切り板14に開設された液相通路であり、例えば、前記仕切り板14の頂部に位置する液相溢流型通路及び/又は前記仕切り板の底部に設けられた液相連通通路であり、特に好ましくは、前記液相通路22は前記仕切り板14の底部に設けられた液相連通通路であり、それは、反応器の底部で容易に現れる液体の流れの不感帯を回避し、エチルベンゼンヒドロペルオキシドを調製する過酸化反応を促進することができる。当業者は、前記液相通路22の形状が、円形、長方形、弓形又は他の任意の形状であってもよく、好ましくは円形であることを理解している。
【0044】
前記液相通路22の断面積は、一般に横型バブリング反応器11の断面積の0.5%~10%を占め、好ましくは、1~5%を占め、例えば、2%、3%又は4%を占めている。
【0045】
前記横型バブリング反応器11の各反応隔室の底部に第2のガスディストリビューター15が設けられている。前記第2のガスディストリビューター15は、一般に多孔管式ガスディストリビューターであり、開孔孔径は1~15mmを選択可能であり、好ましくは2~6mmであり、例えば、3、4又は5mmであり、開孔率は0.01~10%を選択可能であり、好ましくは0.02~3%であり、例えば、1%、2%又は2.5%である。
【0046】
本明細書に記載されるように、横型バブリング反応器11は複数の独立した反応隔室21を含み、この場合、各反応隔室21は独立したガス入口17とガスディストリビューター装置(第2のガスディストリビューター15)とが含まれるべきであり、即ち、それぞれの仕切り板14のそれぞれの側に少なくとも1本のガス分布のための多孔管が含まれるべきである。当業者は、必要なガス分布多孔管の本数が、ガス流量の大きさ及さらなるプロセス条件に依存することを理解している。
【0047】
本発明において、反応隔室21内の第2のガスディストリビューター15が複数本のガス分布多孔管を有するときに、前記多孔管は横型バブリング反応器11の底部の同じ水平面に均一に分布されるか、反応器の底部の弧線に沿って均一に分布されてもよく、好ましくは反応器の底部の弧線に沿って均一に分布される。
【0048】
前記横型バブリング反応器11における各反応隔室21は通常の操作での液体の流れ方向に沿って設けられた、2つの垂直バッフル24を含み、好ましくは、横型バブリング反応器11の軸線方向に沿って設けられている。通常の操作で液体は横型バブリング反応器11の一端から他端に流れ、したがって、バッフル24は反応器の一端から反対端への方向に沿って設けられている。前記2つのバッフル24は横型バブリング反応器11の中心軸線に対して対称に設けられており、各バッフル24にいずれも、例えば、2つ又は4つ、8つ等の複数の開孔が設けられ、開孔率が3%~8%であり、例えば、5%であり、各バッフルの側面に、各バッフル開孔で下向きに傾斜した2つの案内板25が設けられ、その傾斜角度(バッフルとのなす角度)は15~60°であってよく、例えば、30°又は45°である。
【0049】
前記バッフル24は、横型反応器内のガスの壁への傾向を顕著に改善し、ガス間の逆混合を大幅に低減し、反応器の中心部で酸素枯渇ゾーンの形成を回避することができる。このような設置は、エチルベンゼンヒドロペルオキシドの分解を効果的に弱め、反応選択性を向上させることができる。バッフル24上の案内板25は、バッフルの両側での流体の混合を促進し、ガスの逆混合を回避しながら、反応器隔室内の液体温度及び濃度の均一性を保証することができる。
【0050】
バッフル24の高さは大きな範囲内に変化可能であり、一般的には、バッフル24の高さは反応器直径の10~70%であり、好ましくは20~50%であり、例えば、40%である。バッフル24の底部は、隣接するガスガス分布多孔管よりも高くてはならず、且つ前記バッフルの底部から前記横型バブリング反応器の内壁までの距離は、50mmよりも小さくなく、例えば、80mm又は100mmである。
【0051】
前記バッフル24の案内板25は舌状構造であり、一実施例において、バッフル断面積に対する前記案内板の液体流通の断面積の比は0.01~0.15であり、好ましくは0.05~0.1である。
【0052】
前記縦型バブリング反応器と前記横型バブリング反応器の間には、縦型反応器出口の液体が重力によって横型反応器に流入できることを保証するように、一定の高度差があってもよい。過酸化物が気相と共に他の機器につれることを回避するために、前記縦型バブリング反応器と前記横型バブリング反応器の内に十分の気相空間を残すことができ、前記気相空間の高さは0.5mよりも小さくてはならず、例えば、0.8m、1m又は1.2mであり、そのうち、前記気相空間の高さとは、反応器のガス出口と下方の液面との間の距離を指す。
【0053】
エチルベンゼン過酸化反応を行うときに、液体エチルベンゼンは縦型バブリング塔反応器1の下部液体入口8から該反応器1に入り、酸素含有ガスは縦型バブリング塔反応器1の下部ガス入口7から入り、第1のガスディストリビューター5を介して液体反応液に分散され、液体エチルベンゼンと酸素含有ガスとは並流して前記縦型バブリング反応器1を通過し、この過程に、エチルベンゼンと酸素含有ガスが接触反応してエチルベンゼンヒドロペルオキシドを生成し、気相物質は反応器頂部の気相出口9から排出され、液体反応物は反応器の上部の溢流堰6を通して初期脱気した後、液体出口10によって縦型バブリング反応器1から流出し、案内筒4の内側と外側の空気含有量の差異は、反応器内の液体の混合を促進し、反応器の下部のフリーラジカル含有量を増加させ、反応開始に必要な時間を短縮することができる。
【0054】
縦型バブリング反応器1から流出する液体反応物は横型バブリング反応器11の一端の反応液入口18から前記横型バブリング反応器11に入り、酸素含有ガスは前記横型バブリング反応器の底部の反応ガス入口17から入り、第2のガスディストリビューター15を介して液体反応物に分散され、液体反応物と酸素含有ガスは、前記横型バブリング反応器11内でクロスフローが形成され、この過程に、エチルベンゼンを酸素含有ガスと接触させて反応し続け、エチルベンゼンヒドロペルオキシドを生成し、気相物質は前記横型バブリング反応器11の頂部の反応ガス出口20から排出され、縦型バブリング反応器1の気相物質と混合してから、気相メインパイプ23を通して後続きのエチルベンゼン回収工程に移行し、液体反応物は前記横型バブリング反応器11の他端から、横型反応器出口溢流堰16を流れた後、液体出口19から排出され、後続きの工程に移行する。
【0055】
最適な生成物選択性を得るために、反応開始段階のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度、即ち、縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度を制御すべきであり、例えば、その吸気温度及び/又は吸気量等を制御することで濃度の調節を実現すべきである。一実施形態において、前記縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度を0.5%~1.5%に制御し、好ましくは、1%~1.5%、例えば、0.6%、0.8%、0.9%、1.2%、1.3%又は1.4%に制御できる。または、一実施形態において、横型バブリング反応器がN個の反応隔室を含まれば、反応システム出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度はCであり、縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度を
【数2】
の80%~95%、例えば、82%、85%、88%、90%又は92%に制御すべきである。
【0056】
反応時、液体エチルベンゼンと酸素含有ガスとの反応温度は一般に100~220℃であり、好ましくは120~160℃であり、例えば、130、140又は150℃である。温度が120℃よりも低いと、反応速度が低すぎる。温度が160℃よりも高いと、副反応の反応速度が顕著に加速し、これによりエチルベンゼンヒドロペルオキシドの選択性が低下する。ヒドロペルオキシドの選択性をさらに向上させるために、過酸化反応は段階的な冷却操作を採用することができ、それにより副生成物の生成を最小限に抑えることができる。したがって、反応の初期で過酸化反応の温度を150~160℃に制御し、即ち、縦型バブリング反応器の温度を150~160℃に制御でき、後期で反応温度を徐々に120~150℃に低減し、例えば、130又は140℃に低減し、即ち、横型バブリング反応器における異なる反応隔室の温度を液体の流れ方向に沿って徐々に低減するように制御でき、好ましくは、隣接する反応隔室の温度差が1~3℃である。エチルベンゼンと酸素含有ガスとの反応圧力は、該過程のキー要素ではなく、一般的に1~8barGで操作可能である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。
【0058】
(実施例1)
図1に示す装置を用いて、そのうち、縦型バブリング反応器1は直径が約0.8メートルで総高さが約3メートルであり、案内筒4は直径が0.3メートルで高さが1.2メートルであり、ガスディストリビューター5は環状パイプ状のガスディストリビューターであり、分布孔は案内筒と反応器の内壁の間に配置され、開孔孔径が2mmで開孔率が0.02%であり、横型バブリング反応器11は、直径が約1.6メートルで長さが約3.66メートルであった。3つの仕切り板14を用いて反応器を4つの反応隔室21に分け、仕切り板14の底部に直径が110mmの液体の流れ通路22を残した。各隔室21に4本のガス分布多孔管が含まれ、ガス分布多孔管は反応器の下弧線に沿って均一で対称に分布され、開孔直径が2mmで開孔率が0.05%であった。
図2に示すように、最も外部の2本のガス分布多孔管の内側に対称の2つの垂直バッフルが設けられ、バッフルの高さは横型バブリング反応器の直径の30%であり、底部から反応器の内壁までの距離は50mmであった。各バッフルに8つの長方形の液体の流れ開孔(開孔率5%)が設けられていた。
【0059】
本実施例の操作で、反応物は横型バブリング反応器の第1の隔室を避け、即ち、縦型バブリング反応器の排出液体は、直接に横型バブリング反応器の第2の隔室に進入した。液体入口8から1.6トン/時間の流量で0.02wt%のエチルベンゼンヒドロペルオキシドを含むエチルベンゼン反応液を上記反応器に加え、順に前記縦型バブリング反応器1及び横型バブリング反応器11の第2~第4の反応隔室を流れ、同時に酸素含有量が約15wt%のガス(酸素と窒素の混合物)をガス入口7及び17により反応器に通入し、合計ガス流量は約300キロ/時間であった。反応器の操作温度をすべて138℃、反応器の気相空間圧力を約3.5barGに制御した。
【0060】
上記条件を採用し、反応器の液相出口でエチルベンゼンヒドロペルオキシドの含有量が約7.5wt%の反応液混合物を取得でき、縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度は約1.39%であり、エチルベンゼンヒドロペルオキシドの合計選択性は約87.3%であった。
【0061】
(比較例1)
実施例1における縦型バブリング反応器を避け、即ち、0.02wt%のエチルベンゼンヒドロペルオキシドのエチルベンゼンを含む反応液を直接に横型バブリング反応器の反応液入口18から1.6トン/時間の流量で横型バブリング反応器の第1の隔室に進入した後、順に後続きの3つの隔室を流れ、他の条件は実施例1と同じであり、実施例1の実験を繰り返した。
【0062】
この条件で、反応器液相出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド含有量が約7.1wt%の反応液混合物は、エチルベンゼンヒドロペルオキシドの選択性が約87.4%であった。
【0063】
したがって、実施例1と比較例1で使用された反応器は体積が等しいが、比較例1と比較して、実施例1で使用された反応器の組合せはより高い反応変換率を取得できると同時に選択性に顕著な差異がなかった。
【0064】
(実施例2)
実施例1における案内筒4の直径を0.5メートル、案内筒の高さを1.0メートルに変更し、横型バブリング反応器におけるガスディストリビューターの開孔率を10%に変更し、実施例1における実験を繰り返し、縦型バブリング反応器の温度を138℃、横型バブリング反応器の第2の隔室の反応温度を136℃、第3の隔室の反応温度を135℃、第4の隔室の反応温度を134℃、反応器気相空間圧力を約3.5barGに制御した。
【0065】
上記条件を採用して実験を行い、反応器の液相出口でエチルベンゼンヒドロペルオキシド含有量が約7.3wt%の反応液混合物を取得でき、縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度は1.33%であり、エチルベンゼンヒドロペルオキシド選択性は88.4%であった。
【0066】
(比較例2)
実施例2における縦型バブリング反応器を避け、即ち、0.02wt%のエチルベンゼンヒドロペルオキシドのエチルベンゼン反応液を直接に横型バブリング反応器の反応液入口18から1.6トン/時間の流量で横型バブリング反応器の第1の隔室に進入した後、順に後続きの3つの隔室を流れ、他の条件は実施例2と同じであり、実施例2の実験を繰り返した。
【0067】
この条件下で、反応器液相出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド含有量が約6.9wt%の反応液混合物は、エチルベンゼンヒドロペルオキシド選択性が約88.3%であった。
【0068】
したがって、実施例2と比較例2で使用された反応器は体積が等しいが、比較例2と比較して、実施例2で使用された反応器の組合せはより高い反応変換率を取得できると同時に選択性に顕著な差異がなかった。
【0069】
(実施例3)
実施例1と同じ反応器構造を採用し、本実施例において縦型反応器から流出する液相は、直接に横型反応器の第1の隔室に進入した後、順に第2、第3、第4の隔室を流れた。本実施例において、反応器の液位を調節することで合計滞留時間を依然として実施例1と同じように保持した。他の反応条件はいずれも実施例1と同じであり、実施例1の実験を繰り返した。
【0070】
上記条件下で、反応器の液相出口でエチルベンゼンヒドロペルオキシド含有量が約7.2wt%の反応液混合物を取得でき、縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度は約1.21%であり、エチルベンゼンヒドロペルオキシドの合計選択性は約88.7%であった。
【0071】
(比較例3)
実施例3と同じ反応器構造を採用するが、実施例3における縦型反応器の液体滞留時間の30%まで縦型反応器における液体滞留時間を低減すると同時に、液体の合計滞留時間は実施例3と同じであると保証するように、横型反応器における液位を適当に向上させ、上記条件で実施例3の実験を繰り返した。
【0072】
上記条件下で、反応器液相出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシドの含有量は約6.77wt%であり、エチルベンゼンヒドロペルオキシド選択性は約88.9%であり、縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度は0.21wt%であった。
【0073】
実施例3と比較例3を比較すると、同じ反応条件下で、縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度が0.21wt%に減少すると、エチルベンゼンヒドロペルオキシドの選択性がわずかに増加(88.7%から88.9%に増加)するが、エチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度が大幅に下降(7.2wt%から6.9wt%に下降)し、その結果、反応器の生産能力が低下することを示した。
【0074】
(比較例4)
実施例3と同じ反応器構造を採用するが、縦型反応器における液体滞留時間を実施例3における縦型反応器液体滞留時間の120%に延長すると同時に、液体の合計滞留時間は実施例3と同じであると保証するように、横型反応器における液位を適当に低減させ、上記条件で実施例3の実験を繰り返した。
【0075】
上記条件下で、反応器液相出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシドの含有量は約7.4wt%であり、エチルベンゼンヒドロペルオキシド選択性は約86.1%であり、縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度は2.0wt%であった。
【0076】
実施例3と比較例4を比較すると、同じ反応条件下で、縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度を2.0wt%に増加すると、エチルベンゼンヒドロペルオキシドの濃度が増加(7.2wt%から7.4wt%に増加)するが、エチルベンゼンヒドロペルオキシド選択性が大幅に下降(88.7%から86.1%に下降)し、その結果、低付加価値の生成量が多くなり、デバイスの経済性が低下することを示した。
【0077】
(実施例4)
実施例2と同じ反応器構造を採用し、本実施例において縦型反応器から流出する液相は、直接に横型反応器の第1の隔室に進入した後、順に第2、第3、第4の隔室を流れた。縦型バブリング反応器の温度を138℃、横型バブリング反応器の第1の隔室の反応温度を137℃、第2の隔室の反応温度を136℃、第3の隔室の反応温度を135℃、第4の隔室の反応温度を134℃、反応器の気相空間圧力を約3.5barGに制御した。各反応領域の液位を依然として実施例2と同じように維持するため、実施例2と比較して、本実施例における液相滞留時間が約25%増加した。
【0078】
上記条件を採用して実験を行い、反応器の液相出口でエチルベンゼンヒドロペルオキシド含有量が約8.6wt%の反応液混合物を取得でき、縦型バブリング反応器出口のエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度は約1.4%であり、エチルベンゼンヒドロペルオキシド選択性は約86.9%であった。
【符号の説明】
【0079】
1.縦型バブリング反応器
2.下部シールヘッド
3.上部シールヘッド
4.案内筒
5.第1のガスディストリビューター
6.縦型反応器出口溢流堰
7.縦型反応器ガス入口
8.縦型反応器液体入口
9.縦型反応器気相出口
10.縦型反応器液体出口
11.横型バブリング反応器
12.左端シールヘッド
13.右端シールヘッド
14.仕切り板
15.第2のガスディストリビューター
16.横型反応器出口溢流堰
17.反応ガス入口
18.反応液入口
19.反応液出口
20.反応ガス出口
21.反応隔室
22.液流通路
23.気相メインパイプ
24.バッフル
25.案内板