(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】電解液組成物及びこれを利用した二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20221214BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20221214BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221214BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2021529842
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 KR2019015857
(87)【国際公開番号】W WO2020111633
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0147739
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0090420
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514217912
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132,Yakchon-ro,Iksan-si Jeollabuk-do 570-977,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ソン,クァンウク
(72)【発明者】
【氏名】クム,ジュンハン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソンチョル
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ハン ヨン
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-157437(JP,A)
【文献】特開2006-004813(JP,A)
【文献】特開2013-089390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0207486(US,A1)
【文献】特開2016-048624(JP,A)
【文献】特開2012-248816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/0569
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される化合物、環状フルオロカーボネート系化合物、及び非水溶媒を含む電解液組成物
であって、
前記環状フルオロカーボネート系化合物は、電解液組成物の全体100重量%に対し、0.5~30重量%の量で含まれる電解液組成物。
【化1】
前記式中、
Rは、水素原子又はSi[(CH
2)
xCH
3]
y[(CH
2)
zCF
3]
3-yであり、
x、y及びzは、それぞれ独立して、0~3の整数である。
【請求項2】
Rは、Si[(CH
2)
xCH
3]
y[(CH
2)
zCF
3]
3-yであり、x、y及びzは、それぞれ独立して、0~3の整数である、請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項3】
前記化学式1で表される化合物は、下記の化学式2~9のいずれか一つで表される化合物である、請求項1に記載の電解液組成物。
【化2】
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物は、電解液組成物の全体100重量%に対し、0.05~5重量%の量で含まれる、請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項5】
前記環状フルオロカーボネート系化合物は、フルオロエチレンカーボネートを含む、請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項6】
前記化学式1で表される化合物と環状フルオロカーボネート系化合物との重量比は、1:1~1:20である、請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項7】
リチウム塩を更に含む、請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の電解液組成物を含む二次電池。
【請求項9】
当該二次電池がリチウム二次電池である、請求項
8に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液組成物及びこれを用いた二次電池に係り、より詳しくは、優れたSEI被膜形成能とHF除去能を有し、寿命特性や高温安定性が向上した電解液組成物、及びこれを用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車や携帯用電子機器の普及量の増大に伴い、高いエネルギー密度と作動電位を示し、且つ自己放電率の低いリチウム二次電池に対する需要が急増しつつある。
【0003】
リチウム二次電池の初期充電時にリチウム金属酸化物などの正極活物質から放出されたリチウムイオンは負極活物質に移動し、負極活物質の層間に挿入される。このとき、リチウムイオンは反応性が強いため、負極活物質の表面で電解液組成物と負極活物質を構成する物質とが反応して負極活物質の表面に一種の保護膜であるSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜を形成するようになる。
【0004】
SEI被膜は、電解液組成物中でリチウムイオンと一緒に移動する分子量の大きい有機溶媒分子が負極活物質の層間に挿入され、負極構造が破壊されることを防ぐ。これにより、電解液組成物と負極活物質との接触を防止することで電解液組成物の分解が発生することなく、電解液組成物中のリチウムイオンの量が可逆的に保たれ、安定した充放電が維持される。
【0005】
そこで、負極の表面に安定したSEI被膜を形成して寿命特性を改善するための添加剤についての関心が高まりつつある。特に、フルオロエチレンカーボネート(FEC)のような環状フルオロカーボネート系化合物は、負極の表面にSEI被膜を形成する能力に優れており、リチウムイオン電池の負極被膜形成剤として用いられ且つ共溶媒としても広く用いられる化合物である[大韓民国登録特許第10-0977973号参照]。
【0006】
しかし、FECは電解液中で分解されてフッ酸(HF)を生成し得る。このようなHFは充放電過程で分解されて水素ガスを放出し得る。特に、高温ではかかる現象が深化してスウェリング現象を引き起こすことがあり、ひどい場合は爆発を引き起こすこともある。また、HFは酸性で、電極の腐食などをもたらすこともある。
【0007】
そのため、SEI被膜を形成する能力を有し且つHF除去能に優れ、寿命特性や高温安定性が向上した電解液組成物についての開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一目的は、優れたSEI被膜形成能とHF除去能を有し、寿命特性や高温安定性が向上した電解液組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記電解液組成物を用いた二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一方で、本発明は、下記の化学式1で表される化合物、環状フルオロカーボネート系化合物、及び非水溶媒を含む電解液組成物を提供する。
【0011】
【0012】
前記式中、
Rは、水素原子又はSi[(CH2)xCH3]y[(CH2)zCF3]3-yであり、
x、y及びzは、それぞれ独立して、0~3の整数である。
【0013】
本発明の一実施形態において、Rは、Si[(CH2)xCH3]y[(CH2)zCF3]3-yであり、x、y及びzは、それぞれ独立して、0~3の整数であってよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、電解液組成物の全体100重量%に対し、0.05~5重量%の量で含まれてよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記環状フルオロカーボネート系化合物は、フルオロエチレンカーボネートを含んでよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記環状フルオロカーボネート系化合物は、電解液組成物の全体100重量%に対し、0.5~30重量%の量で含まれてよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物と環状フルオロカーボネート系化合物との混合比は、1:1~1:20であってよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記電解液組成物は、リチウム塩を更に含んでよい。
【0019】
他の一方で、本発明は、前記電解液組成物を含む二次電池を提供する。
【0020】
本発明の一実施形態において、当該二次電池は、リチウム二次電池であってよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電解液組成物は、環状フルオロカーボネート系化合物と特定の置換基で置換されたプロパンスルトン化合物とを共に含むことで優れたSEI被膜形成能を有し、電池への適用の際に常温寿命特性に優れ、且つ出力が向上され得る。また、本発明に係る電解液組成物は、優れたHF除去能を有し、高温でも寿命特性に優れ、且つ高温安定性が向上して耐久性を増進させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0023】
本発明の一実施形態は、下記の化学式1で表される化合物、環状フルオロカーボネート系化合物、及び非水溶媒を含む電解液組成物に関する。
【0024】
【0025】
前記式中、
Rは、水素原子又はSi[(CH2)xCH3]y[(CH2)zCF3]3-yであり、
x、y及びzは、それぞれ独立して、0~3の整数である。
【0026】
本発明の一実施形態において、Rは、Si[(CH2)xCH3]y[(CH2)zCF3]3-yであり、x、y及びzは、それぞれ独立して、0~3の整数であってよい。
【0027】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、下記の化学式2~9のいずれか一つで表される化合物であってよい。
【0028】
【0029】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、HFとの反応性に優れることで電解液組成物中に存在するHFを除去し、その結果、安定性、特に高温安定性を向上させる役割を果たし得る。特に、RがSi[(CH2)xCH3]y[(CH2)zCF3]3-yであり、x、y及びzがそれぞれ独立して0~3の整数である化学式1で表される化合物が、HF除去能の面から好ましい。
【0030】
前記化学式1で表される化合物は、市販中のものを入手して用いるか、又は当該分野で知られた方法にて製造して得たものを用いてよい。
【0031】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、電解液組成物の全体100重量%に対し、0.05~5重量%、好ましくは、0.05~3重量%の量で含まれてよい。前記化学式1で表される化合物が0.05重量%未満の量で含まれると、SEI被膜形成能が減少して高温安定性の上昇効果を期待することができず、また5重量%超の量で含まれると、抵抗を増加させて電池の寿命を短縮させることがある。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記環状フルオロカーボネート系化合物は、負極活物質の表面に安定したSEI被膜を形成し且つ共溶媒としての役割を果たす。
【0033】
前記環状フルオロカーボネート系化合物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,4,5-トリフルオロエチレンカーボネート、4,4,5,5-テトラフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,4,5-トリフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート又はこれらの組み合わせが挙げられ、特にフルオロエチレンカーボネート(FEC)がSEI被膜形成能の面から好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記環状フルオロカーボネート系化合物は、電解液組成物の全体100重量%に対し、0.5~30重量%、好ましくは、0.5~20重量%の量で含まれてよい。前記環状フルオロカーボネート系化合物が0.5重量%未満の量で含まれると、SEI被膜形成能が減少することがあり、また30重量%超の量で含まれると、駆動中に電解液中でHFが過量発生することがある。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物と環状フルオロカーボネート系化合物との重量比は、1:1~1:20、好ましくは、1:1~1:10、より好ましくは、1:1~1:5であってよい。前記化学式1で表される化合物と環状フルオロカーボネート系化合物との重量比が前記範囲であると、常温寿命特性、高温寿命特性、及び高温安定性をいずれも向上させるうえで特に有利である。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記非水溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動し得る媒質の役割をする。
【0037】
前記非水溶媒は、特に制限されず当該分野で通常に用いられるものを用いてよい。例えば、前記非水溶媒としては、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、又はその外の非プロトン性溶媒などを用いてよい。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いてよい。
【0038】
前記カーボネート系溶媒としては、鎖状カーボネート系溶媒、環状カーボネート系溶媒、又はこれらの組み合わせを用いてよい。
【0039】
前記鎖状カーボネート系溶媒は、例えば、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate、DPC)、メチルプロピルカーボネート(methylpropyl carbonate、MPC)、エチルプロピルカーボネート(ethylpropyl carbonate、EPC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate、EMC)、又はこれらの組み合わせが挙げられ、前記環状カーボネート系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate、BC)、ビニルエチレンカーボネート(vinylethylene carbonate、VEC)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ペンチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ブチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)、ギ酸メチル(methyl formate)、ギ酸エチル(ethyl formate)、ギ酸プロピル(propyl formate)などが用いられてよい。
【0041】
前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが用いられてよい。
【0042】
前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが用いられてよい。
【0043】
前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが用いられてよい。
【0044】
前記その外の非プロトン性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、1,2-ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリジノン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルなどが用いられてよい。
【0045】
本発明の一実施形態に係る電解液組成物は、リチウム塩を更に含んでよい。
【0046】
前記リチウム塩は、電池内でリチウムイオンの供給源として働き、正極と負極との間でのリチウムイオンの移動を促進する役割をする。
【0047】
前記リチウム塩の例としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO2C2F5)2、Li(CF3SO2)2N、LiN(SO3C2F5)2、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiI、LiB(C2O4)2(リチウムビス(オキサラート)ボラート(lithium bis(oxalato)borate)、LiBOB)、Li(CH3CO2)、Li(CF3SO3)、Li(FSO2)2N、Li(CF3SO2)3Cなどが挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いてよい。
【0048】
前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mであってよい。リチウム塩の濃度が前記範囲内であると、電解液組成物が適切な伝導度及び粘度を有し得る。
【0049】
本発明の一実施形態は、上述した電解液組成物を含む二次電池に関する。
【0050】
本発明に係る二次電池は、環状フルオロカーボネート系化合物と化学式1で表される化合物とを共に含む本発明の電解液組成物を含むため、最初の充電時(化成ステップ)に負極の表面に安定したSEI被膜が形成できて寿命特性に優れるだけでなく、電池駆動中に発生するHFが除去できて安定性、特に高温安定性に卓越している。
【0051】
本発明の一実施形態において、前記二次電池は、リチウム二次電池であってよく、例えば、リチウムイオン二次電池であってよい。
【0052】
前記リチウム二次電池は、正極、負極、及び上述した電解液組成物を含む。
【0053】
前記正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に形成される正極活物質層を含む。
前記正極集電体としては、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されずに用いられてよい。具体的に、前記正極集電体としては、アルミニウム、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅又はステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてよく、特に、アルミニウムが用いられてよい。前記正極集電体は、ホイル、ネット、多孔質体などの種々の形態を有してよく、且つ表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の結合力を強化させてもよい。
【0054】
前記正極集電体の厚さは、3~500μmであってよい。
【0055】
前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー、及び選択的に導電材を含む。
前記正極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物を用いてよい。具体的に、前記正極活物質としては、コバルト、マンガン、ニッケル、アルミニウム、鉄、又はこれらの組み合わせの金属とリチウムとの複合酸化物又は複合リン酸化物のうちの一種以上を用いてよい。より具体的に、前記正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウム鉄リン酸化物などを用いてよい。
【0056】
前記バインダーは、正極活物質の粒子同士を互いに結合させ、正極活物質を正極集電体に付着させる役割をする。具体的に、前記バインダーとしては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリレイテッドスチレン-ブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを用いてよい。
【0057】
前記導電材は、電極に導電性を与えるために用いられるものであって、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば制限されずに使用可能である。具体的に、前記導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマーなどを用いてよい。
【0058】
前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に形成される負極活物質層を含む。
【0059】
前記負極集電体としては、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されずに用いられてよい。具体的に、前記負極集電体としては、銅、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅又はステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてよく、特に銅が用いられてよい。前記負極集電体は、ホイル、ネット、多孔質体などの種々の形態を有してよく、且つ表面に微細な凹凸を形成して 負極活物質の結合力を強化させてもよい。
【0060】
前記負極集電体の厚さは、3~500μmであってよい。
【0061】
前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー、及び選択的に導電材を含む。
【0062】
前記負極活物質としては、リチウムイオンの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープ及び脱ドープ可能な物質、遷移金属酸化物などを用いてよい。
【0063】
前記リチウムイオンの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションの可能な物質は、炭素系物質として、結晶質炭素、非晶質炭素、又はこれらを一緒に用いてよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、フレーク状(flake)、球状、又は繊維状の黒鉛が挙げられ、天然黒鉛又は人造黒鉛であってよい。前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン又はハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成コークスなどが挙げられる。
【0064】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、及びSnからなる群より選ばれる金属との合金が用いられてよい。
【0065】
前記リチウムをドープ及び脱ドープ可能な物質としては、Si、Si-C複合体、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる元素であり、Siではない)、Sn、SnO2、Sn-R合金(前記Rは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる元素であり、Snではない)などが挙げられ、また、これらのうちの少なくとも一種とSiO2とを混合して用いてもよい。前記元素Q及びRとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものを用いてよい。
【0066】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物又はリチウムチタン酸化物などが挙げられる。
【0067】
前記バインダーは、負極活物質の粒子同士を互いに結合させ、負極活物質を負極集電体に付着させる役割をする。具体的に、前記バインダーとしては、前記正極活物質層に用いられるものと同一のものを用いてよい。
【0068】
前記導電材は、電極に導電性を与えるために用いられるものであって、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば制限されずに使用可能である。具体的に、前記導電材としては、前記正極活物質層に用いられるものと同一のものを用いてよい。
【0069】
前記正極及び負極は、当該分野において通常知られている製造方法によって製造してよい。
【0070】
具体的に、前記正極及び負極は、それぞれの活物質、バインダー及び選択的に導電材を溶媒中で混合して活物質組成物を調製し、前記活物質組成物を集電体に塗布して製造する。
【0071】
前記溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などが用いられてよい。
【0072】
前記正極と負極とはセパレーターによって分離されてよい。前記セパレーターとしては、当該分野において通常用いられるものであれば特に制限されずに用いられてよい。特に、電解液組成物中でのイオン移動に対して低抵抗で且つ電解液組成物の含湿能力に優れるものが好適である。前記セパレーターは、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びこれらの組み合わせから選ばれる材質であってよく、不織布又は織布形態のものであってよい。前記セパレーターは、気孔径が0.01~10μmであり、厚さが3~100μmであってよい。前記セパレーターは、単一膜又は多層膜であってよい。
【0073】
前記リチウム二次電池は、当該分野において通常知られている製造方法によって製造してよい。
【0074】
具体的に、前記リチウム二次電池は、正極と負極との間にセパレーターを介在して積層体を得た後、前記積層体を巻き回すか又は折り畳んで電池容器に収容させ、前記電池容器内に電解液組成物を注入し封止部材にて封止して製造してよい。
前記電池容器は、円筒型、角型、薄膜型などであってよい。
【0075】
前記二次電池は、携帯電話、携帯用コンピューター、電気車両(Electric Vehicle)などに用いられてよい。また、前記二次電池は、内燃機関、燃料電池、スーパーキャパシタなどと結合してハイブリッド車両(Hybrid Vehicle)などにも用いられてよく、高出力、高電圧、及び高温駆動が要求される電気自転車、電動工具などにも使用が可能である。
【0076】
以下、実施例、比較例及び実験例によって本発明をより具体的に説明することにする。なお、これらの実施例、比較例及び実験例は、単に本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではないことは当業者にとって自明である。
【0077】
合成例1:化学式4で表される化合物の合成
反応溶媒としてのアセトニトリル中で化学式3で表される化合物1.4gと1,3-ビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン3.6gを25℃の温度で1時間反応させた後、真空蒸留にて精製して、化学式4で表される化合物2.8g(収率:98%)を収得した。
【0078】
【0079】
1H NMR(299.87MHz, CDCl3):δ=0.16-0.28(t,6H), 0.82-0.87(dt,2H), 2.01-2.14(m,2H), 3.14-3.18(dd,1H), 3.50-3.55(dd,1H), 4.20-4.24(dd,1H), 4.51-4.55(dd,1H), 4.83-4.89(qui,1H)ppm
実施例1:電解液組成物の調製
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:7の体積比で混合した混合溶媒に、LiPF6を1.0Mになるように添加した後、電解液組成物の全体100重量%に対し、下記の化学式2で表される化合物を1重量%の量で添加し、フルオロエチレンカーボネートを3重量%の量で添加して、電解液組成物を調製した。
【0080】
【0081】
実施例2:電解液組成物の調製
化学式2で表される化合物の代わりに下記の化学式3で表される化合物を用いることを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0082】
【0083】
実施例3:電解液組成物の調製
化学式2で表される化合物を0.05重量%の量で添加することを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0084】
実施例4:電解液組成物の調製
化学式2で表される化合物を3重量%の量で添加することを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0085】
実施例5:電解液組成物の調製
フルオロエチレンカーボネートを0.5重量%の量で添加することを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0086】
実施例6:電解液組成物の調製
フルオロエチレンカーボネートを20重量%の量で添加することを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0087】
実施例7:電解液組成物の調製
化学式2で表される化合物の代わりに下記の化学式4で表される化合物を用いることを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0088】
【0089】
実施例8:電解液組成物の調製
化学式2で表される化合物の代わりに下記の化学式5で表される化合物を用いることを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0090】
【0091】
実施例9:電解液組成物の調製
化学式2で表される化合物の代わりに下記の化学式6で表される化合物を用いることを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0092】
【0093】
実施例10:電解液組成物の調製
化学式2で表される化合物の代わりに下記の化学式7で表される化合物を用いることを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0094】
【0095】
実施例11:電解液組成物の調製
化学式2で表される化合物の代わりに下記の化学式8で表される化合物を用いることを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0096】
【0097】
実施例12:電解液組成物の調製
化学式2で表される化合物の代わりに下記の化学式9で表される化合物を用いることを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0098】
【0099】
比較例1:電解液組成物の調製
化学式2で表される化合物を添加しないことを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0100】
比較例2:電解液組成物の調製
フルオロエチレンカーボネートを添加しないことを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0101】
比較例3:電解液組成物の調製
フルオロエチレンカーボネートを添加しないことを除いては、実施例2と同様にして電解液組成物を調製した。
【0102】
比較例4:電解液組成物の調製
フルオロエチレンカーボネートを添加しないことを除いては、実施例7と同様にして電解液組成物を調製した。
【0103】
比較例5:電解液組成物の調製
化学式2で表される化合物の代わりに下記の化学式aで表される化合物を用いることを除いては、実施例1と同様にして電解液組成物を調製した。
【0104】
【0105】
実験例1:
前記実施例及び比較例で調製された電解液組成物を用いて下記のように二次電池を製造し、このときの常温寿命特性、高温安定性、及び高温寿命特性を下記のような方法にて測定し、電解液組成物の保存後の変色特性を観察して、その結果を下記の表1に表した。
【0106】
<二次電池の製造>
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粉末、炭素導電材(Super-P;Timcal Ltd.)及びPVDF(polyvinylidene fluoride)バインダーを90:5:5の重量比で混合した混合物に、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を固形分の含量が60重量%となるように添加して正極スラリーを調製した。15μm厚さのアルミニウム箔の上に約40μmの厚さで前記正極スラリーをコーティングした。これを常温で乾燥し、120℃でさらに乾燥した後に圧延して、正極を製造した。
【0107】
負極活物質として人造黒鉛、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースを90:5:5の重量比で混合した混合物に、N-メチルピロリドンを固形分の含量が60重量%となるように添加して負極スラリーを調製した。10μm厚さの銅箔の上に約40μmの厚さで前記負極スラリーをコーティングした。これを常温で乾燥し、120℃でさらに乾燥した後に圧延して、負極を製造した。
【0108】
前記正極、負極、及び電解液組成物とポリエチレン材質のセパレーターを用いて二次電池を製造した。
【0109】
前記製造された二次電池を25℃で0.2Cの電流にて電圧が4.2Vに達するまで定電流で充電し、次いで、電圧が2.5Vに達するまで0.2Cの定電流で放電した。次いで、0.5Cの電流にて電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、放電時に電圧が2.5Vに達するまで0.5Cの定電流で放電した(化成ステップ)。
【0110】
(1)常温寿命特性
前記化成ステップを経た二次電池を25℃で、1.0Cの電流にて電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、放電時に電圧が2.5Vに達するまで1.0Cの定電流で放電するサイクルを300回繰り返した。
【0111】
それぞれの二次電池の300回目のサイクルにおける容量維持率(capacity retention ratio、%)を下記の数学式1で求めた。
[数学式1]
容量維持率[%]=[300回目のサイクルにおける放電容量/1回目のサイクルにおける放電容量]×100
(2)高温電圧保存安定性
前記化成ステップを経た二次電池を25℃で、1.0Cの電流にて電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、充電された二次電池を60℃で保管しながら24時間毎にmulti-meterを利用して電圧を測定して充電状態セルの高温での残留電圧を測定して、高温電圧保存安定性を測定した。
【0112】
それぞれの二次電池の15日目の測定時の電圧維持率(Voltage retention、%)を下記の数学式2で求めた。
[数学式2]
電圧維持率[%]=[15日目の開放電圧/初期開放電圧]×100
(3)変色特性
実施例及び比較例で調製された電解液組成物を60℃下で15日間保存後の色変化を観察し、下記の評価基準にて評価した。
【0113】
<評価基準>
○:色変化なし
×:色変化あり
(4)高温寿命特性
前記化成ステップを経た二次電池を45℃で、1.0Cの電流にて電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。次いで、放電時に電圧が2.5Vに達するまで1.0Cの定電流で放電するサイクルを300回繰り返した。
【0114】
それぞれの二次電池の300回目のサイクルにおける容量維持率(capacity retention ratio、%)を前記数学式1で求めた。
【0115】
【0116】
前記表1に表したように、本発明に係る化学式1で表されるプロパンスルトン化合物と環状フルオロカーボネート系化合物を含む実施例1~12の電解液組成物を用いて製造された二次電池は、比較例1~5の電解液組成物を用いて製造された二次電池に比べて、常温でより優れた寿命特性を有するだけでなく、高温でも優れた安定性や寿命特性を示すことを確認することができた。
【0117】
これは、本発明に係る電解液組成物中の環状フルオロカーボネート系化合物がSEI被膜を形成し、化学式1で表されるプロパンスルトン化合物が環状フルオロカーボネート系化合物によって生成され得るHFを除去しながら電気化学反応によって開環してSEI被膜形成に寄与するからであると考えられる。
【0118】
比較例5の電解液組成物は、一定時間の保存後に色変化を起こす結果を示した。
【0119】
以上、本発明の特定の部分について詳しく記述したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、このような具体的な記述は単に好適な具現例であるに過ぎず、これらによって本発明の範囲が制限されるものではないことは明らかである。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容を基に本発明の範疇内で種々の応用および変形を行うことが可能であろう。
【0120】
したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とその等価物によって定義されると言えよう。