(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】外側シャフトに電極器具を有するレゼクトスコープ
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2021530213
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019082476
(87)【国際公開番号】W WO2020109257
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】102018129904.4
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ブロックマン
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-519875(JP,A)
【文献】特表昭58-500594(JP,A)
【文献】実公昭61-43452(JP,Y2)
【文献】特開昭63-286132(JP,A)
【文献】米国特許第5807240(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 ― 1/32
A61B 18/00 ― 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長いシース管(14)、及び前記シース管(14)内に配置され
た洗浄液を供給するために用いられる洗浄管(16)、並びに
ロッド状の光学系(18)、及び電極器具(20)を有する管状のシャフト(12)を備える内視鏡外科用レゼクトスコープ(10)において、
前記光学系(18)及び前記電極器具(20)が前
記洗浄管(16)の外
壁と前記シース管(14)の内壁(26)との間に配置され、
前記洗浄管(16)を通して患者の体内に供給された洗浄液が前記シース管(14)を通して再び体から導出可能であり、
前記洗浄管(16)は、凸状に湾曲した区分(28)と凹状に湾曲した区分(30)とを有する断面を具備することを特徴とする、レゼクトスコープ(10)。
【請求項2】
前記凸状に湾曲した区分(28)は、前記シース管(14)の前記内壁(26)に隣接することを特徴とする、請求項1に記載のレゼクトスコープ(10)。
【請求項3】
前記洗浄管(16)は、その遠位端領域にノズル(32)を有し、前記ノズルによって、遠位方向に流れる液体流を誘導及び/又は加速させることができることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレゼクトスコープ(10)。
【請求項4】
前記洗浄管(16)は、その遠位端領域にディフューザ(34)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のレゼクトスコープ(10)。
【請求項5】
前記電極器具(20)は、径方向に支持するための1つ又は複数の保持要素(36)を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のレゼクトスコープ(10)。
【請求項6】
前記1つ又は前記複数の保持要素(36)は、前記シース管(14)の前記内壁(26)に隣接することを特徴とする、請求項5に記載のレゼクトスコープ(10)。
【請求項7】
前記1つ又は前記複数の保持要素(36)は、前記ロッド状の光学系(18)の外壁(24)に隣接することを特徴とする、請求項5に記載のレゼクトスコープ(10)。
【請求項8】
前記洗浄管(16)は、前記シャフト(12)の長さの少なくとも60%、殊に少なくとも70%に、大きさ及び形状が一定の断面を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のレゼクトスコープ(10)。
【請求項9】
前記洗浄管(16)内に挿通器具、特に電極器具(20)及び光学系(18)は配置されないことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のレゼクトスコープ(10)。
【請求項10】
電気外科システム(38)において、請求項1~9のいずれか1項に記載のレゼクトスコープ(10)と、前記レゼクトスコープ(10)の洗浄管(16)と接続されている洗浄液供給装置(40)と、を備えることを特徴とする、電気外科システム(38)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の種類のレゼクトスコープ、及び請求項10の前提部に記載の種類の電気外科システムに関する。
【背景技術】
【0002】
属性的に対応する種類のレゼクトスコープは、とりわけ泌尿器科学において膀胱及び尿道の外科的作業で使用される。レゼクトスコープは、通例、組織、例えば下部尿路の組織を切除及び蒸散するために使用される。そのために、レゼクトスコープは、長手方向に摺動可能な電気外科挿通器具を備え、レゼクトスコープの挿入後、電気外科挿通器具の遠位作業端をレゼクトスコープのシャフト管の遠位端から押し出すことができる。電気外科挿通器具は、その遠位作業端に、例えばループ(環)又はプラズマボタンの形式の電気外科電極を備え得る。この種の器具は、例えばOES PRO レゼクトスコープ(Olympus)又はIgresias式の他の持続灌流式レゼクトスコープ(Dauerspuel-Resektoskope)である。
【0003】
器具は光学系を含み、手術中、光学系によって手術箇所を監視することができる。目視下の解剖学的構造を拡大するため、手術中に生じる局所的出血を洗浄除去するため、及び高周波電気外科の適用による熱損傷から組織を守るために、レゼクトスコープは、遠位シャフト端の前に位置する組織の周りを持続的に洗浄する洗浄装置を備えている。通例の洗浄装置では、内側シャフトに洗浄液が継続的に通され、洗浄液はレゼクトスコープの遠位端から流出する。洗浄液の逆流は、大抵の場合、内側シャフトと外側シャフトとの間の隙間を通って起こる。そのために、外側シャフトは液体を収容するべく多数の洗浄孔を有している。
【0004】
現在のレゼクトスコープでは、電気外科挿通器具及びロッド状の光学系は、洗浄液の供給にも使用される内管を通って延びる。この種のシステムは、とりわけ電極が直接流入通路に設けられ、それによりシャフトから洗浄液が流出する直前に洗浄液に乱流を生じさせ得ることから、洗浄流を導くのに最適でないことが明らかになった。この種の乱流は、手術領域の視界を著しく妨げ得る。さらに、通例、逆流のために利用される内管とシース管(外管)との間の環状隙間には、壁摩擦効果にもとづいて小さい逆流速度しか生じ得ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、流入洗浄液の不都合な渦流が回避又は低減され、かつ逆流速度が可変であるシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、請求項1の特徴を有するレゼクトスコープ、及び請求項10の特徴を有する電気外科システムによって解決される。特に、上記課題は、電極器具及びロッド状の光学系を、洗浄液供給のために利用される内管(洗浄管)に対して平行に、すなわち内管の外側に案内することによって解決される。したがって両方の挿通器具(電極器具及び光学系)がもはや内管内に案内されない。このようにすることで渦流の発生が回避される。さらに、外管(シース管)の内部空間の残り全部を、患者の体から汚れた洗浄液を導出するために利用することができる。
【0007】
したがって、第1の態様では、本発明は、細長いシース管、及びシース管内に配置された洗浄液を供給するための洗浄管、並びにロット状の光学系、及び電極器具を有する管状のシャフトを備える内視鏡外科用レゼクトスコープにおいて、光学系及び電極器具が洗浄管の外壁とシース管の内壁との間に配置されていることを特徴とする、レゼクトスコープに関する。外壁と内壁との「間」に配置とは、本発明によれば、前述の要素間に他の分離要素は配置されないということを意味する。特に、電極器具及び光学系はシース管のみによって包囲され、別の内管によって包囲されない。
【0008】
本発明によるレゼクトスコープは、内視鏡外科、特に電気外科手術における種々の手術に適している。したがってレゼクトスコープを、例えば、特に激しい出血が起き得る前立腺切除術のために使用することができる。しかし同時に、レゼクトスコープを、例えば膀胱切除術など他の多くの手術にも用いることができる。
【0009】
通例の形式では、レゼクトスコープは管状のシャフトを有する。レゼクトスコープは、このシャフト部材の他に、保持及び操作するために、通例2つのグリップ部材からなるグリップシステムを備えている。
【0010】
内視鏡シャフトは細長いシース管を備えている。シース管の内部には洗浄管(内管)、ロッド状の光学系、及び電極器具(電気外科挿通器具)が配置されている。光学系及び電極器具は、シース管の内部において径方向で洗浄管の隣に配置されている。換言すると、洗浄管、光学系、及び電極器具は相並んでシース管を通り抜ける。その場合、特に、洗浄管がレゼクトスコープの横断面(Transversalebene)の下方に配置されることが念頭におかれている。空間的方位では、シャフト管を長手方向に、及び水平に切る横断面と、横断面に対して垂直な矢状面(Sagittalebene)とによってレゼクトスコープをいくつかの領域に分割することができ、シャフト管の長手軸は矢状面及び横断面上に位置する。横断面は、シャフト管を左右に、かつレゼクトスコープが使用ポジションにあるときに水平の向きで切り、矢状面は、シャフト管を上下に、及びレゼクトスコープが使用ポジションにあるときに垂直の向きで切る。矢状面は、例えばレゼクトスコープのスライダを操作するために互いに旋回可能にレゼクトスコープに支承されたグリップ部材の相対運動時に描かれる運動平面に対して特に平行に位置し得る。特に好ましい実施形態では、洗浄管は光学系の下方の6時位置に配置され、それにより洗浄管及び光学系の長手軸がレゼクトスコープの矢状面上に位置する。
【0011】
本発明によれば、この配置の結果として、光学系及び電極器具は洗浄管の外壁とシース管の内壁との間の空間に配置されている。しかしこの空間は、光学系と電極器具とによって完全に埋められず、それにより洗浄液を近位方向に返送するためにもこの空間を用いることができる。逆流用に企図された空間部分は、逆流速度を制限するため、及び流入流と流出流との速度差を大きくするために意識的に通例より大きくすることができる。レゼクトスコープの近位領域において、さらに、例えば狭窄によって流出流の体積流量を低減又は抑制することができる。本発明によれば、流入速度が流出速度より大きいことが好ましい。このようにすることで、とりわけ洗浄液が直接逆流することが阻止される。
【0012】
本発明によれば、シース管内に配置された洗浄管(内管)が洗浄液を供給するために用いられる。医療手術中、洗浄管を通して洗浄液を体内に導入することによって、光学系を介した処置中に、医療従事者が処置されるべき領域の遮られない視界を有することが確保される。この洗浄液によって、例えば切除鏡術中に解離される組織片を洗浄除去することができる。さらに、洗浄液は、例えば血液によって引き起こされる曇りを光学系の視野から除去するために用いられる。洗浄液が洗浄管を介して体内に導入されるのに対して、汚れた洗浄液の排出は、殊にシース管の内壁と洗浄管の外壁との間の空間を通して行われる。そのため洗浄管は、本発明によれば、洗浄液及び/又は体液が、殊に遠位方向に貫流し得るように形成されている。
【0013】
手術中の良好な視界条件のためには、洗浄液が体腔に流入した場合に、シャフトの長手軸又は光学系の光学軸に対して少なくとも略平行に延び、かつ繰り出される電極の目視でのコントロールを可能にする層流を形成することが重要である。洗浄液が層状に流れないか、又はそれどころか乱流で流れると直ちに、手術が実行可能でなくなるほど光学系の視界が悪くなり得る。このため、本発明によれば、洗浄管がその遠位端領域にノズルを有し、このノズルによって、遠位方向に流れる液体流を誘導及び/又は加速させることができることが企図され得る。ノズルは、洗浄管の狭窄によってその遠位端領域に形成されてもよいし、又は洗浄管の遠位端に配置される別個のノズル部材によってなってもよい。ノズルは、洗浄媒体を加速させて視野の中心へと誘導することができる。
【0014】
本発明によれば、洗浄管の遠位端におけるノズルが乱流のない流れを得るための好ましい変形形態であるのに対して、ディフューザによって類似のプラスの効果を得ることも本発明の範囲内で考えられる。したがって代替的実施形態では、洗浄管は、その遠位端領域にディフューザを有することができる。
【0015】
光学系の他に洗浄管をシース管に省スペース的に嵌め込むために、洗浄管が凸状に湾曲した区分と凹状に湾曲した区分とを有する断面、すなわち鎌形の断面を有することが好ましい。鎌形は、殊に丸みを付けた角又は先端を有する。その場合、凹状に湾曲した区分、つまり鎌形の内側は、好ましくは少なくとも部分的に光学系に隣接する。凸状に湾曲した区分は、好ましくはシース管の内壁に隣接する。
【0016】
洗浄液の流入時の渦流の危険をさらに低減するために、洗浄管がノズル/ディフューザを備える限りで、洗浄管は、その遠位端の前、又はその遠位端領域におけるノズル若しくはディフューザの前の可能な限り長い区分において、形状及び大きさが一定の断面を有する。したがって、例えば、洗浄管が、レゼクトスコープシャフトの長さの少なくとも60%、殊に少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%に大きさ及び形状が一定の断面を有することが好ましい。殊に、断面は、場合によっては存在するノズル又はディフューザを除いて、特にシャフトの遠位方向に60%、又は70%、又は80%において一定である。
【0017】
本発明によれば、さらに、洗浄管内に挿通器具、特に電極器具及び光学系が配置されていないことによって渦流がないことが確保される。通例のレゼクトスコープでは、洗浄流中にこれらの器具を配置することは、通常、洗浄流に妨害的な乱流を生じさせる。
【0018】
他の箇所で説明したように、シース管内には洗浄管の他に光学系及び電極器具が配置されている。配置するのに適した電極器具は当業者に知られている。電極器具は、通常、細長い器具シャフトと、遠位端領域に配置された少なくとも1つの電極を有している。電極は、例えばプラズマボタン、カッティングループ、又は他の電気外科的切断具として形成され得るが、カッティングループが好ましい。電極器具は、殊にバイポーラ器具である。しかし本発明によるレゼクトスコープにおいてモノポーラ電極器具を使用することも考えられる。
【0019】
電極器具は2つのフォーク管を有し得る。この種の構造は、多くの電極器具、特に、例えば遠位端にカッティングループを有するバイポーラ器具について知られている。通例、これらのフォーク管は、電極器具の近位及び中位のシャフト領域に比較的密に並んで延び、かつ電極器具の遠位端領域においてはじめて別れ、それによりフォーク管のこれらの遠位端は、例えばループ電極又はプラズマボタンの形式の電極を間に収容することができる。本発明によれば、シース管と洗浄管との間の空間に電極器具を配置し易くするために、電極器具のフォーク管が電極器具の近位端領域においてはじめて合流するか、又は全く合流しないことが企図され得る。このようにすることで、洗浄管のために利用可能な空間も最大化される。したがってフォーク管間の距離は、本発明によれば、電極器具の遠位端から、電極器具のシャフトの好ましくは少なくとも60%、殊に少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%で一定不変である。したがって電極器具のフォーク管は、例えばレゼクトスコープの送り装置(Transporteur)までまっすぐに(及び互いに平行に)延び、それにより洗浄管のために残される空間が最大化され、かつ液体流出の妨害箇所が回避される。フォーク管をこのように形成することには、組立コストが節減されるという付加的利点がある。
【0020】
電極器具、例えば2つのフォーク管を有する電極器具のフォーク管は、殊にシース管の内壁に沿って延びるが、その際、光学系が電極器具の2つのフォーク管間に配置されていることが特に好ましい。このようにすることで、シース管の内部空間において、洗浄管のために特に多くのスペースが提供される。例示的な電極器具の2つのフォーク管を、例えば9時位置と10時位置との間、及び2時位置と3時位置との間に配置することができる。
【0021】
本発明により使用される電極器具は、径方向に支持するための1つ又は複数の保持要素を有することができる。このようにすることで、手術中に電極の不都合な横への変位が阻止される。同時に、電極器具は軸方向に摺動可能である。それにより電極器具の遠位端に配置された電極を、例えば組織を摘出するために使用することができる。電極器具の軸方向の摺動性が保持要素によって妨げられることはない。
【0022】
1つ又は複数の保持要素は、電極器具を径方向に支持し、シャフトの他の要素のうちの1つ、例えば光学系、洗浄管、又はシース管と接続することができる。この事例では、「接続」とは、保持要素がそれぞれの要素に径方向に隣接するが、さらに要素に対して軸方向に摺動可能であることを意味する。1つ又は複数の保持要素は、例えばロッド状の光学系の外壁に隣接することができる。代替的及び好ましい実施形態では、1つ又は複数の保持要素はシース管の内壁に隣接する。このために保持要素が円弧形状の断面を有することが好ましい。円弧形状の断面によって、1つ又は複数の保持要素が隣接する要素に対して相補形である。したがって、1つ又は複数の保持要素、殊に2つの保持要素は、例えば光学系をシャフト部材の一区分において円弧形状に包囲する。これに代えて、1つ又は複数の保持要素、殊に1つの保持要素は、シース管の一区分において、シース管の内壁に沿って円弧形状に延び得る。この事例では、例えば保持要素は、シース管の内壁に沿って一方のフォーク管からもう一方のフォーク管へ延び、かつフォーク管を安定させるように互いに接続し、それと同時に径方向に内壁に対して支持するように形成され得る。保持要素は、それぞれのフォーク管とシース管の内壁との間に配置され得る。
【0023】
シース管は、その遠位端領域に絶縁先端を有することができる。絶縁先端は、電極と、レゼクトスコープ、例えば洗浄管の近位に配置された、導電性の要素との間の短絡を阻止する。当業者には、この種の絶縁先端を形成するのに適した材料が知られている。したがって、絶縁先端は、例えばセラミック、プラスチック、又はガラスからなり得る。通例、及び本発明の範囲内でも絶縁先端を嘴形に形成することが考えられる一方で、本発明によれば、絶縁先端がその円周全体に沿って遠位方向に一定の長さを有することが好ましい。
【0024】
本発明のレゼクトスコープのシャフトに配置された光学系はそれ自体、レゼクトスコープシャフトを通り抜けるシャフト領域を有するロッド状の光学系である。光学系によって、手術場所、及び行われた電気外科手術を目視で監視することが利用者に可能にされる。光学系は、レンズベースの光学システム、又はファイバ光学系を含み得る。光学系は、その近位端領域に接眼レンズ、又はカメラヘッドとの接続部を備える。光学系は、その遠位端に、通常、同時にフィルタとして機能し得る保護ガラスによって保護されている。光学系は、手術場所の特に良好な目視を保証するために斜視光学系であり得る。
【0025】
第2の態様では、本発明は、本発明によるレゼクトスコープと、レゼクトスコープの洗浄管と接続されている洗浄液供給装置とを備える電気外科システムに関する。洗浄管との接続は、洗浄液が洗浄液供給装置から洗浄管を遠位方向に流れ得ることを確保する。したがってレゼクトスコープ又はシャフト、特に洗浄管の近位端に、洗浄液供給装置を割り当てることが可能である。洗浄液供給装置は、洗浄液を予め定めることが可能な圧力で体内に送ることができる。この目的で洗浄液供給装置は、例えば静水圧だけで作業することができ、すなわちレゼクトスコープの上方に配置されている液体リザーバを装備し得る。これに代えて、又はこれに加えて、洗浄液供給装置はポンプを備えることができ、このポンプによって洗浄管を通して洗浄液を体内に送液することができる。
【0026】
通常、余分な液体の排出は、洗浄管とシース管との間の空間を通って自発的に行われる。しかし、わずかな負圧をかけることによって排出を確保することも可能である。この目的で、電気外科システムは、さらに洗浄液排出装置を備え得る。
【0027】
図面において、本発明の実施例が模式的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明によるレゼクトスコープの模式的側断面図である。
【
図2】レゼクトスコープシャフトの遠位方向からの正面図であり、レゼクトスコープのシャフト要素のみが示されている。
【
図3】洗浄管がその遠位端にノズルを有する本発明によるレゼクトスコープの模式的側断面図である。
【
図4】洗浄管がその遠位端にディフューザを有する本発明によるレゼクトスコープの代替的実施形態の模式的側断面図である。
【
図5】洗浄液供給装置を有する本発明による電気外科システムの模式的側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の他の利点、符号、及び特徴は添付の図面をもとにした以下の実施例の詳しい説明において明確になる。しかし本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
図1は、本発明によるレゼクトスコープ10の断面図を示す。
図2は、レゼクトスコープシャフト12の遠位方向からの正面図を示し、
図1からのレゼクトスコープ10のシャフト要素のみが示され、ハンドグリップ44の要素は示されていない。レゼクトスコープ10は、通例の形式では、ハンドグリップ44とシャフト12とを備えている。ハンドグリップ44は、レゼクトスコープ10を手に持つため、殊にシャフト12を通って延びる挿通器具を片手で操作するために形成されている。
【0031】
図示されたレゼクトスコープ10は、シャフト12の近位に配置されたグリップ部材46及び48が、ばねブリッジ(Federbruecke)52によって加えられるばね力に抗して相互に相対運動することによって、スライダ50が遠位の第1グリップ部材48に向かって遠位方向に摺動させられる受動的な送り装置を有する。スライダ50をグリップ部材48に向かって遠位方向に摺動させた場合、電極器具20が図示されない仕方で強制案内され、遠位に摺動させられる。ハンドグリップ部材46、48を解放した場合、ばねブリッジ52によって生成されたばね力がスライダ50を静止位置へ強制的に戻し、電極器具20が近位方向に引っ張られる。スライダ50が摺動して戻った場合、電極器具20により手術者の手の力なしに、すなわち受動的に電気外科的手術を行うことができる。
【0032】
レゼクトスコープ10のシャフト12はシース管14を備え、このシース管の内部には複数の長尺の挿通器具が延び、特に細長い光学系18、電極器具20、及び洗浄管16が延びる。
図1及び
図2において、洗浄管16の内部にはそれ以外の挿通器具が延びていないことが見て取れる。したがって、シース管14内には洗浄管16の他に、特に電極器具20及び光学系18が配置されている。その場合、安定させるために、電極器具20は保持要素36によって径方向の変位が防止されている。保持要素36は円弧形状の断面を有し、この円弧形状の断面は、ここに示される器具では、シース管14の内壁26に、内壁26の内周の略半分に沿って当接する。したがってこの事例では、保持要素36の断面が、
図2に見て取れるように略半円形状である。換言すると、保持要素36は、シース管14の内壁26と部分的に相補的な形状である。それによって、保持要素36は、シース管14の内部を軸方向に摺動可能である一方で、径方向に支持される。
【0033】
保持要素36は、シース管14の内周に沿って、電極器具の2つのフォーク管54、56を互いに接続する。保持要素36と2つのフォーク管54、56との接続は、通例のように、例えばレーザビーム溶接などで作成することができる。これに代えて、フォーク管54、56と保持要素36を一体型に製造することもできる。
【0034】
電極器具20は、その遠位端に電極を有し、この事例では電極は、ループ電極42又はカッティングループとして形成されている。器具は、バイポーラ器具として形成され、図示されない対向電極を備えている。ループ電極42によって、医療従事者は、外科手術時に手術箇所から組織を切除することができる。
【0035】
洗浄管16は、凸状に湾曲した区分28と凹状に湾曲した区分30を有する断面を具備し、すなわち、丸みを付けた先端を有する鎌形の断面を有する。凹状に湾曲した区分30、つまり鎌形の内側は、シャフト12の長さにわたって光学系18のシャフトに隣接する。凸状に湾曲した区分28は、シース管14の内壁26に隣接する。このようにすることで、シース管14の利用可能な内部空間が可能な限り省スペース的に利用され、洗浄管16の内部容積が最大にされる。洗浄管16を通して遠位方向に、洗浄液を手術箇所へ導くことができる。汚れた洗浄液の逆流は、シース管14の内部において、そこに配置された挿通器具の他に残った空き空間22、すなわち光学系18、洗浄管16、及び電極器具20の他に残った空間22を通して行われる。
【0036】
図3及び
図4は、
図1及び
図2に示されたレゼクトスコープの2つの異なった実施形態を示す。
図3に示されるレゼクトスコープ10は、上記の要素の他に、洗浄管16の遠位端にノズル32を有する。ノズル32によって、遠位方向に流れる液体流を手術箇所へと誘導することができる。いくつかの実施形態では、ノズル32が液体流を誘導する方向が手動又は自動で調節可能であり得る。このようにして、医療従事者は、手術中に液体流の方向を調整することができ、必要な場合に変更することができる。さらに、ノズル32は、液体流に対して加速するように作用し、それにより洗浄液が直接逆流することが阻止される。
【0037】
これに代わる
図4に示された実施形態では、洗浄管16は、その遠位端にディフューザ34を有する。遠位方向に流れる液体流をディフューザ34によって誘導し、液体流の速度を低下させることができる。ディフューザ34は、例えば、わずかな出血しか伴わない手術の場合に有用であり得る。液体流を減速させることによって、この実施例による手術は特に保全的になる。
【0038】
さらに、
図4におけるレゼクトスコープ10は、シース管14の先端に電気絶縁要素、セラミック先端として形成された絶縁先端58を有する。このようにしてループ電極42と洗浄管16の遠位端及び他の要素との間の短絡が阻止される。
【0039】
さらには
図4に示されるレゼクトスコープ10は、
図1~
図3に示されるものとは異なる保持要素36を有する電極器具20を具備する。ここに図示される電極器具20は2つの保持要素36を有し、
図4に2つのうちの1つのみが見て取れる。保持要素36は、電極器具20をシース管14の内壁26にではなく、光学系18の外壁24に支持する。2つの保持要素36の断面は、同様に円弧形状の断面を有するが、この断面は
図2に示される略半円形状の断面より小さい。保持要素36は、光学系18の外壁24に形状相補的に隣接し、残りの電極器具20と一緒に光学系18に対して平行に、すなわち軸方向に摺動可能である。
【0040】
図5は、洗浄液供給装置40を有する本発明による電気外科システムの模式的側断面図を示す。図示された実施形態では、洗浄液供給装置40は、液体リザーバ62と、洗浄液をレゼクトスコープ10の洗浄管16に流入させることができるホース64とを備えている。図示された実施形態では、洗浄液は、液体リザーバ62内の液体の静水圧によって洗浄管に流れ込む。レゼクトスコープ10に相対して液体リザーバ62の高さを変化させることによって、洗浄液の速度を適合させることができる。洗浄液は、手術箇所に達した後、シース管14の内壁26と、その中に配置された挿通器具との間の空間22を通って再び流出することができる。したがって、この事例では洗浄液排出装置60がホース66を備え、液体はこのホースを通って流出することができる。
【0041】
本発明は実施例をもとにして詳しく説明されたが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでなく、むしろ、添付の特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、いくつかの特徴を省略する、又は上記の個々の特徴の別様の組み合わせを実現することができる種々の変更が可能であるということは当業者に自明である。本開示は、上記の個々の特徴のすべての組み合わせを含む。
【符号の説明】
【0042】
10 レゼクトスコープ
12 シャフト
14 シース管
16 洗浄管
18 光学系
20 電極器具
22 空間
24 外壁 光学系
26 内壁 シース管
28 凸状に湾曲した区分
30 凹状に湾曲した区分
32 ノズル
34 ディフューザ
36 保持要素
38 電気外科システム
40 洗浄液供給装置
42 ループ電極
44 ハンドグリップ
46 グリップ部材
48 グリップ部材
50 スライダ
52 ばねブリッジ
54 フォーク管
56 フォーク管
58 絶縁先端
60 洗浄液排出装置
62 液体リザーバ
64 ホース
66 ホース