IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サントリーホールディングス株式会社の特許一覧

特許7194298ピリジンを含有する容器詰めコーヒー飲料
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】ピリジンを含有する容器詰めコーヒー飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
A23F5/24
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022027759
(22)【出願日】2022-02-25
【審査請求日】2022-03-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】丸山 達也
(72)【発明者】
【氏名】谷 鷹明
(72)【発明者】
【氏名】三橋 守男
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-020526(JP,A)
【文献】特開2005-040068(JP,A)
【文献】特表2016-540512(JP,A)
【文献】特表2018-502560(JP,A)
【文献】AROMA RESEARCH,2010年,Vol.11, No.1,pp.58-64
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアイアコールの含有量が10~100ppbであり、ピリジンの含有量が150~10000ppbであり、グアイアコールの含有量に対するピリジンの含有量の重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])が4以上であり、フルフラールの含有量が1000ppb以上である、容器詰めコーヒー飲料。
【請求項2】
グアイアコールの含有量が10~80ppbである、請求項1に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器詰めコーヒー飲料に関し、より具体的には、苦味が抑制されており、かつ連続して飲用した場合にもすっきり感のある容器詰めコーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー飲料は嗜好品として広く愛好されており、その需要もますます増大すると共にニーズの多様化が進んでいる。特に近年においては、中容量(350~650ml程度)のコーヒー飲料を仕事中や休憩中に少量ずつ長時間かけて飲むスタイル(「チビダラ飲み」とも称する)が広く見受けられるようになっている。このようなコーヒー飲料は、小容量(200ml程度)のコーヒー飲料とは異なり、チビダラ飲みに適した香味、すなわち、苦味が抑えられており、かつ飲み続けても飽きのこないすっきりとした味わいが好まれる。
【0003】
コーヒー飲料の苦味を抑える方法は従来にも報告されており、例えば、コーヒー飲料においてフルフリルメチルスルフィド等の化合物を所定の濃度に調整することにより、コーヒー飲料中のグアイアコールを低濃度に設定することができる技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-216743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、コーヒー飲料の苦味改善技術は以前から知られていたが、コーヒー飲料中のグアイアコールの濃度が低すぎると、苦味自体は抑えられるものの、連続して飲用するとコーヒーの渋味が口内に溜まることですっきり感が欠けてしまい、チビダラ飲みのような飲用スタイルに適した創味設計が難しいという問題があった。そこで、本発明は、苦味が抑えられており、かつ連続して飲用した場合にもすっきり感のあるコーヒー飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、コーヒー飲料において、所定量のグアイアコールとピリジンとを含有させることで、コーヒー飲料の苦味が抑えられ、かつ連続して飲用した場合にもすっきり感のある飽きのこないコーヒー飲料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、これらに限定されないが、以下のものに関する。
(1)グアイアコールの含有量が10~100ppbであり、ピリジンの含有量が150~10000ppbである、容器詰めコーヒー飲料。
(2)グアイアコールの含有量が10~80ppbである、(1)に記載の飲料。
(3)フルフラールの含有量が1000ppb以上である、(1)又は(2)に記載の飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、苦味が抑えられており、かつ連続して飲用した場合にもすっきり感のあるコーヒー飲料を提供することができる。また、本発明の技術を利用することにより、時間をかけて少量ずつ飲むスタイルであるチビダラ飲みにも適した容器詰めコーヒー飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の容器詰めコーヒー飲料について、以下に説明する。なお、特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ppm」、「ppb」、及び「重量%」は、重量/容量(w/v)のppm、ppb、及び重量%をそれぞれ意味する。
【0010】
本発明の一態様は、グアイアコールの含有量が10~100ppbであり、ピリジンの含有量が150~10000ppbである、容器詰めコーヒー飲料である。かかる構成を採用することにより、コーヒー飲料の苦味を抑えることができ、かつ連続して飲用した場合にもすっきり感を感じさせることができる。ここで、コーヒー飲料の「苦味」とは、コーヒー飲料を飲用した直後に舌に感じる苦味を意味する。また、「連続して飲用する」とは、300~600ml程度のコーヒー飲料を1時間ほどかけて継続的に飲み続けることを意味し、「すっきり感」とは、コーヒー飲料の飲用中に渋味が口内に溜まらずにすっきりとした感覚が感じられることを意味する。
【0011】
(グアイアコール)
本発明のコーヒー飲料は、グアイアコールを含有する。グアイアコールは、フェノール類の一種であり、化学式Cで表される有機化合物である。グアイアコールは、別名として2-メトキシフェノールやo-メトキシフェノールとも称され、そのCAS登録番号は90-05-1である。グアイアコールは、コーヒー特有の苦味に寄与する成分であることが知られている。本発明のコーヒー飲料に用いられるグアイアコールの由来は特に限定されず、合成品であってもよいし、植物などの天然原料に由来するものであってもよい。
【0012】
本発明のコーヒー飲料におけるグアイアコールの含有量は10~100ppbである。グアイアコールの含有量が上記の範囲より少ないと、コーヒー特有の苦味が感じられずコーヒーらしさを有しなくなり、一方で、グアイアコールの含有量が上記の範囲より多いと、口内で感じられるコーヒーの苦味が飲料の飲みやすさに影響する可能性がある。本発明のコーヒー飲料におけるグアイアコールの含有量は、好ましくは10~80ppb、より好ましくは20~80ppb、さらに好ましくは30~70ppbである。
【0013】
本発明において、コーヒー飲料中のグアイアコールの含有量は以下の方法により測定することができる。試料5gを水で希釈して20mlに定容し、これにヘキサン10mlと塩化ナトリウム8gを添加し、10分間振とうする。次いで、遠心分離を行い、ヘキサン層を分取し、以下の条件にてGC-MSを用いて分析を行う。
機種:7890B/5977B [Agilent Techno1ogies,1nc.]
カラム:DB-WAX UI [Agilent Techno1ogies,1nc.] φ 0.25 mm×30m、膜厚 0.25μm
注入方法:スプリットレス
温度:試料注入口 220℃、カラム→80℃(1 min保持)→10℃/min昇温→220℃(7 min保持)
ガス流量:ヘリウム(キャリヤーガス) 1 mL/min
イオン源温度:230℃
イオン化法:EI
設定質量数:m/Z 124
【0014】
(ピリジン)
本発明のコーヒー飲料は、ピリジンを含有する。ピリジンは、複素環式芳香族化合物の一種であり、化学式CNで表される有機化合物である。ピリジンのCAS登録番号は110-86-1である。ピリジンは、一般的には腐った魚のような異臭を有することが知られている。本発明においては、ピリジンは、コーヒー飲料を連続して飲用したときに感じる渋味の抑制効果を有する。なお、本発明においてピリジンは、口に含んだ直後に感じる渋味に対する抑制効果は有さない。本発明のコーヒー飲料に用いられるピリジンの由来は特に限定されず、合成品であってもよいし、植物などの天然原料に由来するものであってもよい。
【0015】
本発明のコーヒー飲料におけるピリジンの含有量は150~10000ppbである。ピリジンの含有量が上記の範囲より多いと、ピリジン由来の特異的な臭いによってコーヒー飲料が飲用しづらくなる可能性があり、一方で、ピリジンの含有量が上記の範囲より少ないと渋味の抑制効果が十分に得られなくなる可能性がある。本発明のコーヒー飲料におけるピリジンの含有量は、好ましくは300ppb以上、より好ましくは400ppb以上、さらに好ましくは500ppb以上、さらにより好ましくは600ppb以上である。また、本発明のコーヒー飲料におけるピリジンの含有量は、好ましくは6000ppb以下、より好ましくは4000ppb以下、さらに好ましくは2000ppb以下、さらにより好ましくは1500ppb以下である。本発明のコーヒー飲料におけるピリジンの含有量は、典型的には、好ましくは300~6000ppb、より好ましくは400~4000ppb、さらに好ましくは500~2000ppb、さらにより好ましくは600~1500ppbである。本発明において、コーヒー飲料中のピリジンの含有量はヘッドスペース-GC-MS法によって測定することができる。
【0016】
本発明の飲料において、グアイアコールの含有量に対するピリジンの含有量の重量比([ピリジンの含有量]/[グアイアコールの含有量])は、特に限定されないが、例えば2.5以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である。また、当該重量比は、例えば200以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。なお、前記の重量比は、グアイアコール及びピリジンの含有量をいずれも同一の単位としたときに算出される比である。
【0017】
(コーヒー飲料)
本発明の飲料は、コーヒー飲料である。本明細書において「コーヒー飲料」とは、特に断りがない限り、コーヒー分を原料として製造される飲料を意味する。コーヒー飲料の製品の種類や規格は、特に限定されないが、1977年に認定された「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」の定義である「コーヒー」、「コーヒー飲料」、及び「コーヒー入り清涼飲料」等が含まれる。また、コーヒー分を原料とした飲料においても、乳固形分が3.0重量%以上のものは「飲用乳の表示に関する公正競争規約」の適用を受け、「乳飲料」として取り扱われるが、これも、本発明のコーヒー飲料に含まれる。また、カフェインを90%以上除去したコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分のみを使用した「コーヒー入り清涼飲料(カフェインレス)」に関しても、本発明のコーヒー飲料に含まれる。本発明では、コーヒーの風味を十分に有するという点において、「コーヒー飲料」が好適である。
【0018】
本発明のコーヒー飲料におけるコーヒー分の含有量、すなわちコーヒー固形分は、特に限定されないが、例えば0.5~2重量%であり、好ましくは0.8~1.5重量%であり、より好ましくは0.9~1.3重量%である。本発明において「コーヒー固形分」とは、コーヒー分を一般的な乾燥法(凍結乾燥、蒸発乾固など)を用いて乾燥させて水分を除いた後の、乾固物の重量のことをいう。すなわち、コーヒー飲料におけるコーヒー固形分は、コーヒー飲料に含まれ得る可溶性固形分のうち、乳分、甘味成分、pH調整剤、香料等のコーヒー豆に由来しない成分を除いた固形分をいう。本発明では、コーヒー抽出液中のコーヒー固形分の含有量は、コーヒー抽出液のBrix(%)に相当し、当該Brixは、糖度計(糖用屈折計)を用いて測定することができる。
【0019】
本発明のコーヒー飲料に用いるコーヒー豆の栽培樹種は、特に限定されず、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などが挙げられるが、アラビカ種を用いることが好ましい。また、コーヒー豆の産地及び銘柄も特に限定されず、モカ、ブラジル、コロンビア、グアテマラ、ブルーマウンテン、コナ、マンデリン、キリマンジャロなどが挙げられる。コーヒー豆は1種のみを用いてもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。焙煎の度合い(浅煎り、中煎り、深煎りの順に基本的に3段階で表現される)についても特に限定されず、また、コーヒーの生豆も用いることができる。コーヒー豆の焙煎方法に関して、焙煎温度や焙煎環境に特に制限はなく、通常の方法を採用できる。さらに、その焙煎コーヒー豆からの抽出方法についても何ら制限はなく、例えば焙煎コーヒー豆を粗挽き、中挽き、細挽き等に粉砕した粉砕物から水や温水(0~200℃)を用いて抽出する方法が挙げられる。抽出方法は、ドリップ式、サイフォン式、ボイリング式、ジェット式、連続式などがある。
【0020】
本発明のコーヒー飲料には、必要に応じて乳、牛乳及び乳製品等の乳分を添加してもよいが、本発明の効果を顕著に知覚できることから、乳分を含まないブラックコーヒーであることが、好ましい。
【0021】
(容器詰め飲料)
本発明のコーヒー飲料は、任意の容器に充填された容器詰めコーヒー飲料である。本発明のコーヒー飲料が充填される容器としては、殺菌方法や保存方法に合わせて適宜選択すればよく、アルミ缶、スチール缶、PETボトル、ガラス瓶、紙容器など、通常用いられる容器のいずれも用いることができる。また、本発明のコーヒー飲料は、時間をかけて少量ずつ飲むスタイルであるチビダラ飲みに適していることから、再栓可能であり、かつ手軽に持ち運べる軽量容器であるPETボトルに充填されていることが好ましい。本発明のコーヒー飲料の容量は、特に限定されないが、中容量の飲料として連続して飲用した場合にもすっきり感が得られるという観点から、300~700mlが好ましく、より好ましくは400~650ml、特に好ましくは450~600mlである。
【0022】
また、本発明のコーヒー飲料を容器詰めする場合は、ホットパック充填法又は無菌充填法のいずれも用いることができるが、無菌充填法を用いることが好ましい。なお、ホットパック充填法は一般に、60℃以上に加熱された飲料を容器に充填後、直ちに密封する方法をいう。また、無菌充填装置とは一般に、高温短時間殺菌した内容物を滅菌済み容器に無菌環境下で充填、密封する装置をいう。
【0023】
本発明のコーヒー飲料の加熱滅菌処理の方法は特に限定されない。例えば、各地の法規(日本にあっては食品衛生法)に従って加熱滅菌処理を行うことができる。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。UHT殺菌法の場合、通常120~150℃で1~120秒間程度、好ましくは130~145℃で30~120秒間程度の条件であり、レトルト殺菌法の場合、通常110~130℃で1~30分程度、好ましくは120~125℃で3~20分間程度の条件である。
【0024】
(フルフラール)
本発明のコーヒー飲料において、フルフラールの含有量に特に制限はないが、フルフラールの含有量が500ppb以上である場合、コーヒー飲料を連続して飲用した場合にコーヒーのコクが感じられやすくなる傾向にある。フルフラールは、芳香族アルデヒドの一種であり、化学式Cで表される有機化合物である。フルフラールは、別名としてフラン-2-カルボキシアルデヒドとも称され、そのCAS登録番号は98-01-1である。本発明のコーヒー飲料に用いられるフルフラールの由来は特に限定されず、合成品であってもよいし、植物などの天然原料に由来するものであってもよい。
【0025】
本発明のコーヒー飲料におけるフルフラールの含有量は、好ましくは1000ppb以上であり、より好ましくは1000~10000ppb、さらに好ましくは1500~5000ppbである。フルフラールの含有量が10000ppbを超えると、コーヒーのコクが強くなりすぎて、コーヒーの飲みやすさに影響する可能性がある。本発明において、コーヒー飲料中のフルフラールの含有量はGC-MS法によって測定することができる。
【0026】
(その他の成分)
本発明のコーヒー飲料では、上記成分の他、本発明の効果を損なわない限りで、甘味料(ショ糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、パラチノース、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、還元デンプン糖化物、ステビア、グリチルリチン、タウマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテーム、サッカリン、アセスルファムK、スクラロース、ズルチンなど)、酸化防止剤(ビタミンC、エリソルビン酸ナトリウムなど)、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなど)、カゼインNa、香料(コーヒーフレーバー、ミルクフレーバーなど)等を適宜配合することができる。本発明のコーヒー飲料は甘味料により本発明の効果が損なわれる可能性があるため、甘味料を含有しないコーヒー飲料が好ましい。
【0027】
(pH)
本発明のコーヒー飲料は、所定の範囲内のpHを有することが好ましい。特に限定されないが、本発明のコーヒー飲料のpHは、4.0~7.0の範囲が好ましく、4.5~6.5の範囲がより好ましく、5.5~6.5の範囲がさらに好ましい。pHの調整には一般的なpH調整剤を使用することができ、そのようなpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基や、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、L-アスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸のナトリウム塩又はカリウム塩、及び、その他食品衛生法上使用可能なpH調整剤が挙げられる。また、pHの異なるコーヒー抽出液を混合することにより所定のpHに調整することも可能である。
【0028】
(製造方法)
ある態様では、本発明は容器詰めコーヒー飲料の製造方法である。より具体的には、本発明の一態様は容器詰めコーヒー飲料の製造方法であって、
飲料中のグアイアコールの含有量を10~100ppbに調整する工程、
飲料中のピリジンの含有量を150~10000ppbに調整する工程、及び
飲料を容器詰めする工程
を含む、上記製造方法である。
【0029】
本発明の容器詰めコーヒー飲料は、グアイアコール及びピリジン以外の上述した各種成分を適宜配合したり、飲料中のその含有量を調整したりすることによって製造されてもよい。すなわち、本発明の製造方法は、上述した成分を配合する工程や、飲料中の当該成分の含有量を調整する工程を含むことができる。また、本発明の製造方法は、飲料のpHを調整する工程や、Brix値を調整する工程等も含むことができる。本発明の製造方法では、上記の各工程をどの順序で行ってもよく、最終的に得られたコーヒー飲料における含有量などが所要の範囲にあればよい。なお、本発明のコーヒー飲料の製造における飲料中の成分の種類やその含有量等の各種要素については、本発明のコーヒー飲料に関して上記した通りであるか、それらから自明である。
【0030】
また、本発明のコーヒー飲料の製造方法においては、必要に応じて飲料を加熱殺菌する工程が含まれてもよい。加熱殺菌を行う条件は上記に説明した通りであるが、特に限定されるわけではない。
【実施例
【0031】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0032】
中煎りに焙煎したアラビカ種(産地:グアテマラ)のコーヒー豆(L値:24)を粉砕し、粉砕コーヒー豆の4倍の重量の湯を抽出湯として用い、抽出器で50℃にて抽出処理を行った。コーヒー豆量の約2倍の質量になったところで抽出を終了し、抽出液を20倍希釈して、ベース飲料を作製した。得られたベース飲料のグアイアコール含有量を測定したところ、10ppbであった。また、ベース飲料中のピリジン含有量は100ppbであり、フルフラール含有量は200ppbであった。このベース飲料に、グアイアコール、ピリジン及びフルフラールを添加して、飲料中のグアイアコール、ピリジン及びフルフラールの最終含有量が下表に示した量となるように各種飲料を調製した。また、得られた飲料は全て500mlのPETボトル容器に充填して、容器詰めコーヒー飲料とした。
【0033】
次に、各種飲料の官能評価を実施した。官能評価としては、専門パネラー3名にて、各種飲料を350ml飲用した後の苦味、渋味、及びコクに関する評価を行った。なお、官能評価は複数日にかけて行った。
【0034】
飲用直後の苦味の評価は、各専門パネラーがそれぞれ3点評価(〇:苦味を感じない、△苦味を少し感じる、×:苦味を強く感じる)を行い、全員の結果が一致する場合はその評価を、一致しない場合は協議にて評価を決定した。
【0035】
また、渋味の評価は、各専門パネラーが以下の基準に従ってそれぞれ5点評価を行い、その平均点を評価点とした。
1点:渋味を強く感じる(サンプル1と同程度又はそれよりも強い渋味)
2点:渋味を感じる
3点:渋味を少しだけ感じる(サンプル2と同程度の渋味)
4点:渋味をほとんど感じない
5点:渋味を全く感じない(サンプル3と同程度の渋味)
【0036】
また、コクの評価は各専門パネラーがそれぞれ3点評価(〇:コクを感じる、△コクをあまり感じない、×:コクを感じない)を行い、全員の結果が一致する場合はその評価を、一致しない場合は協議にて評価を決定した。
【0037】
【表1-1】
【0038】
【表1-2】
【0039】
評価結果は上記の通りとなった。グアイアコール含有量が20ppb、50ppb、80ppbでピリジン含有量が100ppbの飲料においては、苦味は感じないが渋味が生じるという課題があることがわかった。そして、これらの飲料にピリジンを添加してピリジン含有量が200~10000ppbとなるようにすると、渋味が抑制される傾向があることがわかった。さらに、フルフラール含有量が500~4000ppbとなるようにフルフラールを添加すると、コクが感じられることがわかった。
【要約】
【課題】苦味が抑えられており、かつ連続して飲用した場合にもすっきり感のあるコーヒー飲料を提供することを目的とする。
【解決手段】容器詰め炭酸コーヒー飲料において、飲料中のグアイアコールの含有量を10~100ppbに調整し、飲料中のピリジンの含有量を150~10000ppbに調整する。
【選択図】なし