(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-13
(45)【発行日】2022-12-21
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、仮固定材、及び、電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20221214BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20221214BHJP
C08G 73/12 20060101ALI20221214BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20221214BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20221214BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221214BHJP
C08K 5/02 20060101ALI20221214BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20221214BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20221214BHJP
C07D 207/452 20060101ALI20221214BHJP
C07D 209/48 20060101ALI20221214BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20221214BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20221214BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20221214BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221214BHJP
C09J 179/04 20060101ALI20221214BHJP
C09J 179/08 20060101ALI20221214BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C08L79/08 Z
C08G73/10
C08G73/12
C08F2/44 C
C08F290/06
C08K3/013
C08K5/02
C08K5/3415
C08L83/04
C07D207/452
C07D209/48
C07D487/04 137
C09J7/30
C09J11/04
C09J11/06
C09J179/04 B
C09J179/08 Z
H01L21/304 622J
(21)【出願番号】P 2022508852
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2021034853
(87)【国際公開番号】W WO2022065376
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2020159179
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020159180
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020159181
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 駿夫
(72)【発明者】
【氏名】七里 徳重
(72)【発明者】
【氏名】林 聡史
(72)【発明者】
【氏名】大同 和泉
(72)【発明者】
【氏名】星野 文香
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-132881(JP,A)
【文献】特開2013-079360(JP,A)
【文献】特開平05-032946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 73/00-73/26
C08F 2/00-2/60
C08F 290/00-290/14
C07D 207/00-207/50
C07D 209/00-209/96
C07D 487/00-487/22
C09J 7/00-7/50
C09J 179/00-179/08
C09J 11/00-11/08
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド基を有する反応性化合物(1)と、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)とを含み、
前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)である
ことを特徴とす
る硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
5%重量減少温度が350℃以上であることを特徴とする請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つは、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することを特徴とする請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)は、ビスマレイミド化合物(1-I)、又は、マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビスマレイミド化合物(1-I)は、2つのマレイミド基と、ダイマージアミンに由来する脂肪族基とを有する化合物であり、前記ダイマージアミンに由来する脂肪族基は、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項4記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
一般式(4-1)~(4-4)中、R
1~R
8及びR
13~R
20はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。
【請求項6】
前記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)は、下記一般式(1a)で表される構成単位、下記一般式(1b)で表される構成単位、及び、下記一般式(1c)で表される構成単位を有し(ただし、s>0、t≧0、u≧0)、両末端がそれぞれX
1及びX
2で表される化合物(1-ii)であることを特徴とする請求項4記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】
一般式(1a)~(1c)中、P
1、P
2及びP
3は、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Q
1は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Q
2は、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表し、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の脂肪族基又は芳香族基を表す。X
1、X
2及びX
3からなる群より選択される少なくとも1つは、マレイミド基含有基を表す。
【請求項7】
前記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)は、下記一般式(1d)で表される構成単位、及び、下記一般式(1e)で表される構成単位を有し(ただし、s>0、t≧0)、両末端がそれぞれX
4及びX
5で表される樹脂(2-i)であることを特徴とする請求項
1、2、3、4、5又は6記載の硬化性樹脂組成物。
【化3】
一般式(1d)~(1e)中、P
4及びP
5は、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Q
3は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Q
4は、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表す。X
4及びX
5は、マレイミド基を含有しない基を表す。
【請求項8】
イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、重量平均分子量(Mw)が2万以上であることを特徴とする請求項
1、2、3、4、5、6又は7記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の含有量が、20重量部以上、80重量部以下であることを特徴とする請求項
1、2、3、4、5、6、7又は8記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)の含有量が、20重量部以上、80重量部以下であることを特徴とする請求項
1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
更に、重合開始剤を含有することを特徴とする請求項
1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記重合開始剤は、光重合開始剤であり、前記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項
11記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
更に、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含むことを特徴とする請求項
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
更に、無機充填剤を含むことを特徴とする請求項
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
前記無機充填剤の平均粒子径が5nm以上20μm以下であることを特徴とする請求項
14記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
前記無機充填剤の含有量が、前記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と前記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に対して1重量部以上、20重量部以下であることを特徴とする請求項
14又は15記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
更に、気体発生剤を含有することを特徴とする請求項
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
前記気体発生剤は、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定にて窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下であることを特徴とする請求項
17記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項19】
請求項
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有することを特徴とする仮固定材。
【請求項20】
請求項
17又は18記載の硬化性樹脂組成物からなる第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有することを特徴とする仮固定材。
【請求項21】
前記第1の接着剤層は、硬化後のゲル分率が50重量%以上であることを特徴とする請求項
20記載の仮固定材。
【請求項22】
更に、基材を有し、前記基材の両面にそれぞれ第1の接着剤層及び第2の接着剤層が積層されていることを特徴とする請求項
20又は21記載の仮固定材。
【請求項23】
硬化後かつ300℃10分加熱後の25℃における対ガラス粘着力が1.5N/inch以下であることを特徴とする請求項
19、20、21又は22記載の仮固定材。
【請求項24】
請求項
19、20、21、22又は23記載の仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、
前記仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程と、
前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
前記仮固定材から前記電子部品を剥離する剥離工程とを含む
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項25】
請求項
20、21又は22記載の仮固定材を用いた電子部品の製造方法であって、
前記仮固定材の第1の接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程と、
前記仮固定材の第2の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程と、
前記第1の接着剤層及び前記第2の接着剤層を硬化する硬化工程と、
前記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、
前記第1の接着剤層から気体を発生させる気体発生工程と、
前記支持体と前記仮固定材とを剥離する剥離工程とを有する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体と支持体とを固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができ、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材、及び、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子部品の加工時においては、電子部品の取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、粘着剤組成物を介して電子部品を支持板に固定したり、粘着テープを電子部品に貼付したりして保護することが行われている。例えば、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研削して薄膜ウエハとする場合に、粘着剤組成物を介して厚膜ウエハを支持板に接着することが行われる。
【0003】
このように電子部品に用いる粘着剤組成物や粘着テープには、加工工程中に電子部品を強固に固定できるだけの高い接着性とともに、工程終了後には電子部品を損傷することなく剥離できることが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
高接着易剥離の実現手段として、例えば特許文献1には、ポリマーの側鎖又は主鎖に放射線重合性官能基を有する多官能性モノマー又はオリゴマーが結合された粘着剤を用いた粘着シートが開示されている。放射線重合性官能基を有することにより紫外線照射によりポリマーが硬化することを利用して、剥離時に紫外線を照射することにより粘着力が低下して、糊残りなく剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の電子部品の高性能化に伴い、電子部品に種々の加工を施す工程が行われるようになってきた。例えば、電子部品の表面にスパッタリングにより金属薄膜を形成する工程では、300~350℃程度の高温で加工を行うことにより、より導電性に優れた金属薄膜を形成することができる。
しかしながら、従来の粘着剤組成物や粘着テープを用いて保護した電子部品に、300℃以上の高温加工処理を行うと、高温加工処理中に電子部品を固定している支持体との間にボイド又は浮きが発生することがあり、また、接着亢進を起こして、剥離時に充分に粘着力が低下しなかったり、糊残りが発生したりすることがある。
特に近年、高い耐熱性を有する材料としてポリイミド樹脂が多くの電子部品に使用されるようになっており、ポリイミド樹脂からなる被着体を、ガラス等の無機材料からなる支持体に固定して種々の加工を施す工程が行われるようになってきた。被着体がポリイミド樹脂からなる場合に300℃以上の高温加工処理を行うと、被着体が無機材料からなる場合に比べて接着亢進が大きくなる傾向がある。このような場合にポリイミドからなる被着体の保護に用いられる粘着剤組成物や粘着テープには、ポリイミド樹脂からなる被着体との接着亢進の抑制が求められる一方で、支持体との間におけるボイド及び浮きの発生の抑制も求められる。
【0006】
本発明は、被着体と支持体とを固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができ、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材、及び、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、マレイミド基を有する反応性化合物(1)と、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)とを含む硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、マレイミド基を有する反応性化合物(1)と、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)とを含む硬化性樹脂組成物について検討した。本発明者らは、このような硬化性樹脂組成物であれば、被着体、特に、ポリイミド樹脂からなる被着体と支持体とを固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができ、高温加工処理を経た後には容易に剥離できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の硬化性樹脂組成物は、マレイミド基を有する反応性化合物(1)と、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)とを含む。
上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)を含むことにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱又は光の照射によりその全体が均一にかつ速やかに重合架橋し、弾性率が上昇することにより粘着力が大きく低下するため、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。
また、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、イミド骨格を有することによって極めて耐熱性に優れ、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても主鎖の分解が起こりにくい。このため、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を含むことにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。
【0010】
上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)において、マレイミド基は、置換されていてもいなくてもよい。
上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)は特に限定されないが、ビスマレイミド化合物(1-I)、又は、マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)が好ましい。これらのマレイミド基を有する反応性化合物(1)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
上記ビスマレイミド化合物(1-I)は、2つのマレイミド基を有する化合物である。
上記ビスマレイミド化合物(1-I)の分子量は特に限定されないが、5000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましい。
上記ビスマレイミド化合物(1-I)は、2つのマレイミド基と、ジアミン化合物に由来する脂肪族基とを有する化合物であることが好ましい。上記ジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン化合物又は芳香族ジアミン化合物のいずれも用いることができるが、脂肪族ジアミン化合物が好ましい。上記ジアミン化合物として脂肪族ジアミン化合物を用いることにより、硬化性樹脂組成物を用いて形成した接着剤層は、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。
【0012】
上記脂肪族ジアミン化合物のなかでも、柔軟性を高める観点、及び、上記ビスマレイミド化合物(1-I)の溶媒や他の成分との相溶性が増し接着剤層の形成が容易となる観点から、ダイマージアミンが好ましい。
上記ダイマージアミンとは、不飽和脂肪酸の2量体として得られる環式及び非環式ダイマー酸を、還元しアミノ化して得られるジアミン化合物であり、例えば、直鎖型、単環型、多環型等のダイマージアミンが挙げられる。上記ダイマージアミンは、炭素-炭素不飽和二重結合を含んでもよく、水素が付加した水素添加物であってもよい。
【0013】
上記ダイマージアミンに由来する脂肪族基として、より具体的には例えば、下記一般式(4-1)で表される基、下記一般式(4-2)で表される基、下記一般式(4-3)で表される基、及び、下記一般式(4-4)で表される基からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。なかでも、下記一般式(4-2)で表される基がより好ましい。
【0014】
【0015】
一般式(4-1)~(4-4)中、R1~R8及びR13~R20はそれぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表す。なお、*は結合手を表す。結合手*は、マレイミド基と直接結合していてもよいし、他の基を介して結合していてもよい。
【0016】
上記一般式(4-1)~(4-4)中、R1~R8及びR13~R20で表される炭化水素基は特に限定されず、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。なかでも、R1とR2、R3とR4、R5とR6、R7とR8、R13とR14、R15とR16、R17とR18、及び、R19とR20の炭素数の合計が7以上、50以下であることが好ましい。上記炭素数の合計が上記範囲内であることで、硬化性樹脂組成物を用いて形成した接着剤層がより高い柔軟性を発揮することができ、また、上記ビスマレイミド化合物(1-I)の溶媒や他の成分との相溶性も更に増す。上記炭素数の合計は、より好ましくは9以上、更に好ましくは12以上、更により好ましくは14以上である。上記炭素数の合計は、より好ましくは35以下、更に好ましくは25以下、更により好ましくは18以下である。
【0017】
上記一般式(4-1)で表される基、上記一般式(4-2)で表される基、上記一般式(4-3)で表される基、及び、上記一般式(4-4)で表される基において光学異性は特に限定されず、いずれの光学異性も含む。
【0018】
上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)を含有することにより、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)は、マレイミド基の官能基当量(重量平均分子量/マレイミド基の数)が4000以下であることが好ましい。上記官能基当量が4000以下であることにより、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。これは、化合物の分子中に一定以上の密度でマレイミド基を有することにより、架橋間距離が短くなることによって、接着亢進がより抑えられるためと考えられる。上記官能基当量は、3000以下であることがより好ましく、2000以下であることが更に好ましい。上記官能基当量の下限は特に限定されないが、実質的には600程度が下限である。
【0019】
上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)は、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)よりも重量平均分子量(Mw)が小さいことが好ましい。より具体的には、上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)は、重量平均分子量(Mw)が1000以上、2万未満であることが好ましい。上記重量平均分子量が1000以上であることにより、硬化性樹脂組成物の成膜が容易となるとともに、得られた接着剤層がある程度の柔軟性を発揮することから、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。上記重量平均分子量が2万未満であることにより、上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)の溶媒への溶解度を高めることができる。上記重量平均分子量は2000以上、1万未満であることがより好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。より具体的には、APCシステム(ウォーターズ社製、又はその同等品)を用いて、移動相THF、流量1.0mL/min、カラム温度40℃、サンプル濃度0.2重量%、RI・PDA検出器の条件で測定することができる。カラムとしては、HR-MB-M 6.0×150mm(品名、ウォーターズ社製、又はその同等品)等を用いることができる。
【0020】
上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)において、マレイミド基は側鎖又は末端のいずれにあってもよいが、両末端に存在することが好ましく、両末端に加えて更に側鎖にも存在することがより好ましい。上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)の両末端におけるマレイミド基は反応性が高く、加熱又は光の照射により硬化性樹脂組成物をより充分に硬化させることができる。この結果、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
更に、上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)の側鎖にマレイミド基があることにより、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。これは、架橋間距離が短くなることによって、接着亢進がより抑えられるためと考えられる。また、上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)の側鎖にマレイミド基があることにより、上記重量平均分子量を1000以上としながら、上記官能基当量を4000以下に調整することが容易となる。これにより、硬化性樹脂組成物が初期に充分な感圧又は感熱粘着力を有すると同時に、高温加工処理中はボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0021】
上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)としては、具体的には例えば、次の化合物が挙げられる。即ち、下記一般式(1a)で表される構成単位、下記一般式(1b)で表される構成単位、及び、下記一般式(1c)で表される構成単位を有し(ただし、s>0、t≧0、u≧0)、両末端がそれぞれX1及びX2で表される化合物(1-ii)が挙げられる。
【0022】
【0023】
一般式(1a)~(1c)中、P1、P2及びP3は、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Q1は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Q2は、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表し、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の脂肪族基又は芳香族基を表す。X1、X2及びX3からなる群より選択される少なくとも1つは、マレイミド基含有基を表す。
【0024】
上記一般式(1a)~(1c)中、P1、P2及びP3は、炭素数5~50の芳香族基であることが好ましい。P1、P2及びP3が炭素数5~50の芳香族基であることにより、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0025】
上記一般式(1a)中、Q1は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~100の脂肪族基であることが好ましい。Q1が置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~100の脂肪族基であることにより、硬化性樹脂組成物を用いて形成した接着剤層は、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。
また、Q1は、ジアミン化合物に由来する脂肪族基であることが好ましい。上記ジアミン化合物に由来する脂肪族基は、上述したようなビスマレイミド化合物(1-I)におけるジアミン化合物に由来する脂肪族基と同様のものであってよい。なかでも、柔軟性を高める観点、及び、上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)の溶媒や他の成分との相溶性が増し接着剤層の形成が容易となる観点から、Q1は、ダイマージアミンに由来する脂肪族基であることが好ましい。上記ダイマージアミンに由来する脂肪族基としても、上述したようなビスマレイミド化合物(1-I)におけるダイマージアミンに由来する脂肪族基と同様のものであってよい。
【0026】
上記一般式(1b)中、Q2は、置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であることが好ましい。Q2が置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であることにより、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0027】
上記一般式(1c)中、Rは、置換又は非置換の分岐鎖状の炭素数2~100の脂肪族基又は芳香族基であることが好ましい。Rが置換又は非置換の分岐鎖状の炭素数2~100の脂肪族基又は芳香族基であることにより、硬化性樹脂組成物を用いて形成した接着剤層は、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。
【0028】
上記一般式(1c)中、Rは芳香族エステル基又は芳香族エーテル基を有する芳香族基であって、Rにおける該芳香族エステル基又は該芳香族エーテル基はX3と結合していることが好ましい。
ここで、「芳香族エステル基」とは、芳香族環にエステル基が直接結合した基を意味し、「芳香族エーテル基」とは、芳香族環にエーテル基が直接結合した基を意味する。このようにエステル基やエーテル基に結合する部分を芳香族基にすることにより、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、高温加工処理中はボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。一方、X3が芳香族エステル基又は芳香族エーテル基を介してRに結合することにより、X3中の二重結合がRと共役することがないことから、加熱又は光を照射したときの重合架橋を妨げることがない。
【0029】
上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)中、マレイミド基含有基は、X1、X2及びX3からなる群より選択される少なくとも1つであればよいが、少なくともX3がマレイミド基含有基であることが好ましい。少なくともX3がマレイミド基含有基であることにより、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、高温加工処理中はボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
上記X1、X2及びX3のいずれかがマレイミド基含有基以外の官能基である場合、該マレイミド基含有基以外の官能基としては、それぞれ独立して、例えば、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、酸無水物、アミン化合物等が挙げられる。具体的には、上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)の原料となる酸無水物、ジアミン化合物の片末端未反応物が挙げられる。また、例えば、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基等の二重結合を有する官能基を含有する基であってもよい。
【0030】
上記一般式(1a)~(1c)中、s、t及びuは、上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)中における上記一般式(1a)で表される構成単位、上記一般式(1b)で表される構成単位、及び、上記一般式(1c)で表される構成単位それぞれの含有量(モル%)に対応するものである。
上記一般式(1a)で表される構成単位の含有量(s)は0モル%よりも大きく、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。上記一般式(1b)で表される構成単位の含有量(t)は0モル以上%、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。上記一般式(1c)で表される構成単位の含有量(u)は0モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。上記一般式(1a)~(1c)においてそれぞれの構成単位の含有量が上記範囲内であると、硬化性樹脂組成物は、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体との剥離時により容易に剥離することができる。
なお、上記一般式(1a)で表される構成単位、上記一般式(1b)で表される構成単位、及び、上記一般式(1c)で表される構成単位は、それぞれの構成単位が連続して配列したブロック成分からなるブロック構造を有していてもよいし、それぞれの構成単位がランダムに配列したランダム構造を有していてもよい。
【0031】
上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)を製造する方法は特に限定されない。例えば、ジアミン化合物と芳香族酸無水物とを反応させてイミド化合物を調製し、更に、該イミド化合物の官能基に、該官能基と反応する官能基とマレイミド基含有基とを有する化合物(以下、官能基含有マレイミド化合物という。)を反応させることにより得ることができる。また、例えば、ジアミン化合物と芳香族酸無水物とを反応させてイミド化合物を調製し、更に、該イミド化合物の末端に、例えば無水マレイン酸等を反応させることにより得ることもできる。
【0032】
上記ジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン化合物又は芳香族ジアミン化合物のいずれも用いることができる。
上記ジアミン化合物として脂肪族ジアミン化合物を用いることにより、硬化性樹脂組成物を用いて形成した接着剤層は、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。上記ジアミン化合物として芳香族ジアミン化合物を用いることにより、硬化性樹脂組成物の耐熱性がより向上する。また、上記ジアミン化合物として、官能基を有するジアミン化合物を用い、該官能基に上記官能基含有マレイミド化合物を反応させることにより、側鎖にマレイミド基を有する化合物(1-II)を製造することができる。
これらの脂肪族ジアミン化合物、芳香族ジアミン化合物及び官能基を有するジアミン化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、ダイマージアミン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノメンタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、ジアミノマレオニトリル、1,3-ジアミノペンタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ(5.2.1.02,6)デカン等が挙げられる。
【0034】
上記芳香族ジアミン化合物としては、例えば、9,10-ジアミノフェナントレン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、3,7-ジアミノ-2-メトキシフルオレン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4-ジアミノベンゾフェノン、3,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノアントラキノン、2,6-ジアミノトルエン、2,3-ジアミノトルエン、1,8-ジアミノナフタレン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノナフタレン、1,2-ジアミノアントラキノン、2,4-クメンジアミン、1,3-ビスアミノメチルベンゼン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、2-クロロ-1,4-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジクロロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジメチルベンゼン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビストリフルオロメチルビフェニル、ビス(アミノ-3-クロロフェニ)エタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルジアミノフルオレン、2,3-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノフェノール、-5-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルフェニル)メタン、4,4’-ジアミノフェニルスルホン、3,3’-ジアミノフェニルスルホン、2,2-ビス(4,(4アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4’-オキシジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-オキシジアニリン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメトキシビフェニル、Bisaniline M、Bisaniline P、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、o‐トリジンスルホン、メチレンビス(アントラニル酸)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、4,4’-ジアミノベンザニリド、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ポリオキシアルキレンジアミン類(たとえば、HuntsmanのJeffamine D-230、D400、D-2000およびD-4000)、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0035】
なかでも、上述したように、脂肪族ジアミン化合物が好ましく、柔軟性を高める観点、及び、上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)の溶媒や他の成分との相溶性が増し接着剤層の形成が容易となる観点から、ダイマージアミンがより好ましい。
【0036】
上記官能基を有するジアミン化合物としては、例えば、水酸基を有するジアミン化合物、カルボキシル基を有するジアミン化合物、ハロゲン基を有するジアミン化合物等が挙げられる。
上記水酸基を有するジアミン化合物としては、例えば、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、3,5-ジアミノフェノキシエタノール、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシン2塩酸塩、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。上記カルボキシル基を有するジアミン化合物としては、例えば、3,5-ジアミノ安息香酸等が挙げられる。上記ハロゲン基を有するジアミン化合物としては、例えば、2,4-ジアミノクロロベンゼン等が挙げられる。
【0037】
上記芳香族酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、4,4’-スルホニルジフタル酸、1-トリフルオロメチル-2,3,5,6-ベンゼンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、2,3,2’,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フェナンスレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、チオフエン-2,3,4,5-テトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,2’,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)-ビス(フタル酸)等が挙げられる。
【0038】
上記官能基含有マレイミド化合物としては、上記イミド化合物の末端又は側鎖の官能基に応じて選択して用いる。例えば、上記イミド化合物の末端又は側鎖の官能基が水酸基の場合には、カルボキシル基を有するマレイミド化合物が挙げられる。該カルボキシル基を有するマレイミド化合物としては、例えば、酢酸マレイミド、マレイミドプロピオン酸、マレイミド酪酸、マレイミドヘキサン酸、trans-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸、19-マレイミド-17-オキソ-4,7,10,13-テトラオキサ-16-アザノナデカン酸等が挙げられる。
【0039】
上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)の含有量は特に限定されないが、上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める好ましい下限は20重量部、好ましい上限は80重量部である。上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)の含有量がこの範囲内であると、硬化性樹脂組成物は、被着体との剥離時により容易に剥離することができる。剥離性を更に高める観点から、上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は70重量部である。
【0040】
上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂であれば特に限定されないが、上記マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)よりも重量平均分子量(Mw)が大きいことが好ましい。より具体的には、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、重量平均分子量(Mw)が2万以上であることが好ましい。上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の重量平均分子量が2万以上であることにより、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の重量平均分子量は5万以上であることがより好ましい。上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の重量平均分子量の上限は特に限定されないが、溶媒への溶解度の観点から、好ましい上限は15万、より好ましい上限は10万である。
【0041】
上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)は、マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)であることが好ましい。
上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)としては、具体的には例えば、下記一般式(1d)で表される構成単位、及び、下記一般式(1e)で表される構成単位を有し(ただし、s>0、t≧0)、両末端がそれぞれX4及びX5で表される樹脂(2-i)が挙げられる。
【0042】
【0043】
一般式(1d)~(1e)中、P4及びP5は、それぞれ独立して、芳香族基を表し、Q3は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族基を表し、Q4は、置換又は非置換の芳香族構造を有する基を表す。X4及びX5は、マレイミド基を含有しない基を表す。
【0044】
上記一般式(1d)~(1e)中、P4及びP5は、炭素数5~50の芳香族基であることが好ましい。P4及びP5が炭素数5~50の芳香族基であることにより、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、高温加工処理中はボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0045】
上記一般式(1d)中、Q3は、置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~100の脂肪族基であることが好ましい。Q3が置換又は非置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数2~100の脂肪族基であることにより、硬化性樹脂組成物を用いて形成した接着剤層は、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。
また、Q3は、ジアミン化合物に由来する脂肪族基であることが好ましい。上記ジアミン化合物に由来する脂肪族基は、上述したようなビスマレイミド化合物(1-I)及びマレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)におけるジアミン化合物に由来する脂肪族基と同様のものであってよい。なかでも、柔軟性を高める観点、及び、上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)の溶媒や他の成分との相溶性が増し接着剤層の形成が容易となる観点から、Q3は、ダイマージアミンに由来する脂肪族基であることが好ましい。上記ダイマージアミンに由来する脂肪族基としても、上述したようなビスマレイミド化合物(1-I)及びマレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)におけるダイマージアミンに由来する脂肪族基と同様のものであってよい。
即ち、本発明の硬化性樹脂組成物においては、上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)からなる群より選択される少なくとも1つが、ダイマージアミンに由来する脂肪族基を有することが好ましい。
【0046】
上記一般式(1e)中、Q4は、置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であることが好ましい。Q4が置換又は非置換の炭素数5~50の芳香族構造を有する基であることにより、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、高温加工処理中はボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
【0047】
上記X4及びX5で表されるマレイミド基を含有しない基としては、それぞれ独立して、例えば、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、酸無水物、アミン化合物等が挙げられる。具体的には、上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)の原料となる酸無水物、ジアミン化合物の片末端未反応物が挙げられる。また、例えば、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基等の二重結合を有する官能基を含有する基であってもよい。
【0048】
上記一般式(1d)~(1e)中、s、及びtは、上記マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)中における上記一般式(1d)で表される構成単位、及び、上記一般式(1e)で表される構成単位それぞれの含有量(モル%)に対応するものである。
上記一般式(1d)で表される構成単位の含有量(s)は0モル%よりも大きく、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。上記一般式(1e)で表される構成単位の含有量(t)は0モル以上%、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。上記一般式(1d)~(1e)においてそれぞれの構成単位の含有量が上記範囲内であると、硬化性樹脂組成物は、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体との剥離時により容易に剥離することができる。
なお、上記一般式(1d)で表される構成単位、及び、上記一般式(1e)で表される構成単位は、それぞれの構成単位が連続して配列したブロック成分からなるブロック構造を有していてもよいし、それぞれの構成単位がランダムに配列したランダム構造を有していてもよい。
【0049】
上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)を製造する方法は特に限定されず、例えば、ジアミン化合物と芳香族酸無水物とを反応させることにより得ることができる。上記ジアミン化合物及び上記芳香族酸無水物は、上述したようなマレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)におけるジアミン化合物及び芳香族酸無水物と同様のものであってよい。
【0050】
上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の含有量は特に限定されないが、上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に占める好ましい下限は20重量部、好ましい上限は80重量部である。上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の含有量がこの範囲内であると、硬化性樹脂組成物は、高温加工処理中はボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体との剥離時により容易に剥離することができる。ボイド及び浮きの発生をより抑えるとともに剥離性を更に高める観点から、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は70重量部である。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、シリコーン化合物又はフッ素化合物を含むことが好ましい。
上記シリコーン化合物及びフッ素化合物は、耐熱性に優れることから、300℃以上の高温加工処理を経ても硬化性樹脂組成物の焦げ付きを防止し、剥離時には被着体界面にブリードアウトして、剥離をより容易にする。
上記シリコーン化合物は特に限定されず、例えば、シリコーンオイル、シリコーンジアクリレート、シリコーン系グラフト共重合体等が挙げられる。上記フッ素化合物は特に限定されず、例えば、フッ素原子を有する炭化水素化合物等が挙げられる。
【0052】
上記シリコーン化合物又はフッ素化合物は、上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)又は上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)と架橋可能な官能基を有することが好ましく、マレイミド基と架橋可能な官能基を有することがより好ましい。
上記シリコーン化合物又はフッ素化合物がマレイミド基と架橋可能な官能基を有することにより、加熱又は光の照射により上記シリコーン化合物又はフッ素化合物が上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と化学反応して上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)中に取り込まれる。このため、被着体に上記シリコーン化合物又はフッ素化合物が付着して汚染することを抑制することができる。上記マレイミド基と架橋可能な官能基は特に限定されず、例えば、ラジカル重合性の不飽和結合(例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、置換されてもよいマレイミド基)等が挙げられる。
なかでも、環境にやさしく、廃棄が容易であるという観点から、マレイミド基と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物が好適である。
【0053】
上記マレイミド基と架橋可能な官能基を有するシリコーン化合物としては、主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有するシリコーン化合物が好ましい。
上記主鎖にシロキサン骨格を有し、側鎖又は末端に二重結合を有する官能基を有するシリコーン化合物は特に限定されないが、下記一般式(I)で表されるシリコーン化合物、下記一般式(II)で表されるシリコーン化合物、及び、下記一般式(III)で表されるシリコーン化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。これらのシリコーン化合物は、耐熱性が特に高く、極性が高いために硬化性樹脂組成物からのブリードアウトが容易である。
【0054】
【0055】
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)中、X及びYは、それぞれ独立して、0~1200の整数を表し、Rは二重結合を有する官能基を表す。
【0056】
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)中、Rで表される二重結合を有する官能基としては、例えば、置換されてもよいマレイミド基、シトラコンイミド基、ビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。なかでも、より高い耐熱性が得られることから、置換されてもよいマレイミド基が好適である。なお、上記一般式(I)、一般式(II)及び一般式(III)において、Rが複数存在する場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
上記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)で表されるシリコーン化合物のうち市販されているものは、例えば、EBECRYL350、EBECRYL1360(いずれもダイセル・サイテック社製)等が挙げられる。更に、BYK-UV3500(ビックケミー社製)、TEGO RAD2250(エボニック社製)(いずれもRがアクリル基)等が挙げられる。
【0058】
上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量は特に限定されないが、上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に対する好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は20重量部である。上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量がこの範囲内であると、硬化性樹脂組成物が被着体を汚染することなく優れた剥離性を発揮することができる。汚染を抑制しつつも剥離性を更に高める観点から、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は10重量部である。
なお、本発明の硬化性樹脂組成物は耐熱性に優れることから、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物の含有量を比較的少なくしても充分な効果を発揮することができる。そのため、上記シリコーン化合物又はフッ素化合物による汚染の可能性をより一層少なくすることができる。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、重合開始剤を含むことが好ましい。上記重合開始剤は特に限定されず、熱重合開始剤であっても光重合開始剤であってもよいが、光重合開始剤が好ましい。
【0060】
上記光重合開始剤としては、例えば、250~800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられる。なかでも、上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)及び上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)の吸収波長と重なりにくく、硬化性樹脂組成物に光照射した際に充分に活性化されることから、上記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤を含有することが好ましい。上記光重合開始剤は、405nmにおけるモル吸光係数が200以上である光重合開始剤を含有することがより好ましく、405nmにおけるモル吸光係数が350以上である光重合開始剤を含有することが更に好ましい。上記405nmにおけるモル吸光係数が1以上である光重合開始剤の405nmにおけるモル吸光係数の上限は特に限定されないが、例えば2000、1500等が上限である。
上記光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物、フォスフィンオキシド誘導体化合物等が挙げられる。更に、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
上記重合開始剤の含有量は特に限定されないが、上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に対する好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記重合開始剤の含有量がこの範囲内であると、加熱又は光の照射により硬化性樹脂組成物の全体が均一にかつ速やかに重合架橋し、弾性率が上昇することにより粘着力が大きく低下して、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0062】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤を含んでもよい。上記気体発生剤を含有することにより、300℃以上の高温加工処理を経た後であっても、光を照射することにより発生した気体が被着体との界面に放出されることから、より容易に、かつ、糊残りすることなく被着体を剥離することができる。また、300℃以上の高温加工処理を行った後、薄い被着体を剥離する場合であっても、被着体の破損を防止することができる。
【0063】
上記気体発生剤は、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定にて窒素雰囲気下で30℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱したときの300℃における重量減少率が5%以下であることが好ましい。上記重量減少率が5%以下であれば、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても上記気体発生剤の分解が起こりにくく、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、高温加工処理中は剥がれをより抑えることができ、また、接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。
なお、TG-DTA(熱重量-示差熱分析)測定は、例えば、TG-DTA装置(STA7200RV、日立ハイテクサイエンス社製、又はその同等品)を用いて行うことができる。
【0064】
上記気体発生剤としては、例えば、加熱することにより気体を発生する気体発生剤、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤等が挙げられる。これらの気体発生剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、光を照射することにより気体を発生する気体発生剤が好ましく、紫外線を照射することにより気体を発生する気体発生剤がより好ましい。
上記気体発生剤としては、例えば、テトラゾール化合物又はその塩、トリアゾール化合物又はその塩、アゾ化合物、アジド化合物、キサントン酢酸、炭酸塩等が挙げられる。これらの気体発生剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、特に耐熱性に優れることから、テトラゾール化合物又はその塩が好適である。
【0065】
上記気体発生剤の含有量は特に限定されないが、上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に対する好ましい下限は5重量部、好ましい上限は50重量部である。上記気体発生剤の含有量がこの範囲内であると、硬化性樹脂組成物が特に優れた剥離性を発揮することができる。上記気体発生剤の含有量のより好ましい下限は8重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、無機充填剤を含んでもよい。
上記無機充填剤を含むことにより、硬化性樹脂組成物は、高温における弾性率の低下が抑えられることから、300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても高温加工処理中の剥がれをより抑えることができる。
【0067】
上記無機充填剤は特に限定されず、例えば、ケイ素、チタン、アルミニウム、カルシウム、ホウ素、マグネシウム及びジルコニアの酸化物、並びに、これらの複合物からなる群より選択される少なくとも1種からなる無機充填剤が挙げられる。なかでも、市販品で安価かつ入手が容易なことから、シリカやタルクが好ましい。
【0068】
上記無機充填剤は、表面修飾されていてもよい。上記無機充填剤を表面修飾する修飾官能基は特に限定されず、例えば、アルキルシラン基、メタクリロイル基及びジメチルシロキサン基等が挙げられる。なかでも、適度な疎水性を有することから、ジメチルシロキサン基が好ましい。
【0069】
上記無機充填剤の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は5nm、好ましい上限は30μmである。上記無機充填剤の平均粒子径がこの範囲内であると、硬化性樹脂組成物は、高温加工処理中は剥がれをより抑えることができ、また、剥離時にピール処理により剥離することができる。上記無機充填剤の平均粒子径のより好ましい下限は10nm、より好ましい上限は20μmであり、更に好ましい下限は15nm、更に好ましい上限は15μmである。
なお、上記平均粒子径は、数平均粒子径であることが好ましい。上記平均粒子径は、例えば、任意の無機充填剤50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各無機充填剤の粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。
【0070】
上記無機充填剤の含有量は特に限定されないが、上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)と上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)との合計100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。上記無機充填剤の含有量がこの範囲内であると、硬化性樹脂組成物は、高温加工処理中は剥がれをより抑えることができ、また、剥離時にピール処理により剥離することができる。上記無機充填剤の含有量のより好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は15重量部であり、更に好ましい下限は5重量部、更に好ましい上限は10重量部である。
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、光増感剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス等の公知の添加剤を含んでもよい。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物は、5%重量減少温度が350℃以上であることが好ましい。上記5%重量減少温度が350℃以上であることで、硬化性樹脂組成物は、より高い耐熱性を発揮することができる。即ち、高温加工処理中は支持体との間のボイド及び浮きの発生をより抑えることができ、また、被着体に対して接着亢進を起こしたり、被着体との剥離時に糊残りが発生したりするのをより防止することができる。上記5%重量減少温度は380℃以上であることがより好ましく、400℃以上であることが更に好ましい。上記5%重量減少温度の上限は特に限定されないが、実質的には600℃程度が上限である。
なお、上記5%重量減少温度は、次のように測定することができる。
硬化性樹脂組成物を硬化させた後にアルミパンに秤取し、アルミパンを装置にセットする。窒素雰囲気下、熱重量測定装置(STA7200(日立ハイテクサイエンス社製)又はその同等品)にて昇温速度10℃/分で測定サンプルを25℃から加熱し、5%重量減少する温度を測定する。なお、硬化条件は、硬化性樹脂組成物が光硬化型の場合、例えば405nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間照射することで硬化させることができ、硬化性樹脂組成物が熱硬化型の場合、例えば150℃のオーブン中で10分間加熱することで硬化させることができる。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層は、硬化後のゲル分率の好ましい下限が70重量%、好ましい上限が95重量%である。上記硬化後のゲル分率が上記範囲内であることで、硬化性樹脂組成物は、被着体との剥離時により容易に剥離することができる。上記硬化後のゲル分率のより好ましい下限は75重量%、より好ましい上限は90重量%である。
なお、上記硬化後のゲル分率は、光硬化型の場合は、硬化性樹脂組成物を用いて形成した接着剤層に超高圧水銀灯を用いて、405nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間照射することにより硬化した後、また、熱硬化型の場合は、150℃で10分間加熱することにより硬化した後、以下の方法により測定される。
接着剤層を50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製する。試験片をトルエン中に23℃にて24時間浸漬した後、トルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出する。なお、試験片には、接着剤層を保護するための離型フィルムは積層されていないものとする。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0074】
本発明の硬化性樹脂組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記マレイミド基を有する反応性化合物(1)、上記イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2)、及び、必要に応じて配合する添加剤を、ビーズミル、超音波分散、ホモジナイザー、高出力ディスパー、ロールミル等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0075】
本発明の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材もまた、本発明の1つである。このような仮固定材を、第1の本発明の仮固定材と呼ぶ。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物が上記気体発生剤を含有する場合、上記気体発生剤を含有する本発明の硬化型樹脂組成物からなる第1の接着剤層と、第2の接着剤層とを有する仮固定材もまた、本発明の1つである。このような仮固定材を、第2の本発明の仮固定材と呼ぶ。
第2の本発明の仮固定材において、上記第1の接着剤層は、上記気体発生剤を含有するものであり、気体を発生することのできる硬化型接着剤層である。
【0077】
上記第1の接着剤層は、硬化後のゲル分率の好ましい下限が50重量%である。上記硬化後のゲル分率が上記範囲内であることで、上記第1の接着剤層は、剥離時により容易に剥離することができる。上記硬化後のゲル分率のより好ましい下限は80重量%である。
なお、上記硬化後のゲル分率は、光硬化型の場合は、第1の接着剤層に405nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間照射することにより硬化した後、また、熱硬化型の場合は、150℃で10分間加熱することにより硬化した後、以下の方法により測定される。
第1の接着剤層を50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製する。試験片をトルエン中に23℃にて24時間浸漬した後、トルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出する。なお、試験片には、第1の接着剤層を保護するための離型フィルムは積層されていないものとする。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0078】
上記第1の接着剤層は、硬化後かつ300℃10分加熱後(加熱し冷却後)の25℃における対ガラス粘着力が1.5N/inch以下であることが好ましい。上記対ガラス粘着力が上記範囲内であることで、上記第1の接着剤層は、剥離時により容易に剥離することができる。上記対ガラス粘着力は1.2N/inch以下であることがより好ましく、1.1N/inch以下であることが更に好ましく、1.0N/inch以下であることが更により好ましい。
なお、上記対ガラス粘着力は、以下の方法により測定される。
第1の接着剤層を石英ガラス(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2 S9112)に100℃のラミネーター(ラミーコーポレーション社製「Leon13DX」、又はその同等品)にて加熱ラミネートする。加熱ラミネートとしては、温度設定値100℃、速度設定値5の条件で、一回ラミネートする。加熱ラミネート後、超高圧水銀灯を用いて、405nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間照射するか、又は、オーブン中にて150℃で10分間加熱することにより硬化した後、ガラス側から300℃のホットプレートで10分間加熱する。硬化後かつ300℃10分加熱後の第1の接着剤層に対して、25℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行い、粘着力を測定する。
【0079】
上記第1の接着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は5μm、好ましい上限は550μmである。上記厚みが5μm以上であれば、上記第1の接着剤層が初期に充分な感圧又は感熱粘着力を有することができる。上記厚みが550μm以下であれば、上記第1の接着剤層は、高い柔軟性を発揮することができ、凹凸を有する被着体に対して高い追従性を発揮できるとともに、剥離時により容易に剥離することができる。上記厚みのより好ましい下限は10μm、更に好ましい下限は20μm、更により好ましい下限は30μmである。上記厚みのより好ましい上限は400μm、更に好ましい上限は300μm、更により好ましい上限は200μm、一層好ましい上限は150μmである。
【0080】
上記第2の接着剤層は特に限定されず、上記第1の接着剤層と同様の組成、物性、厚み等を有する硬化型接着剤層を用いることができる。なかでも、熱硬化型接着剤層であることが好ましい。上記第2の接着剤層が熱硬化型接着剤層であることにより、光透過性の低い基材を用い、かつ、上記第1の接着剤層が光硬化型接着剤層であって上記第1の接着剤層側から光を照射する場合であっても、加熱により上記第2の接着剤層を充分に硬化することができる。
上記第2の接着剤層は、上記気体発生剤を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
【0081】
第1の本発明の仮固定材、及び、第2の本発明の仮固定材は、基材の一方又は両方の面に本発明の硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有していてもよく、基材を有していなくてもよい。
上記基材を有さない場合、光透過性と耐熱性とをともに有する基材を選定する必要がなく、仮固定材は、より安価かつ簡易な構成となる。また、上記基材を有さない場合、第2の本発明の仮固定材において、上記第1の接着剤層及び上記第2の接着剤層がいずれも光硬化型接着剤層である場合にも、光を照射する側とは反対の硬化型接着剤層にまで充分に光を到達させることができる。
上記基材を有する場合、第2の本発明の仮固定材は、上記基材の両面にそれぞれ上記第1の接着剤層及び上記第2の接着剤層が積層されていることが好ましい。即ち、上記第1の接着剤層、上記基材、上記第2の接着剤層の順に積層されていることが好ましい。
【0082】
上記基材としては、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシートが挙げられる。また、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート、ガラス等も用いることができる。
【0083】
上記基材の厚みは特に限定されないが、光透過性を高める観点、及び、柔軟性を高める観点から、好ましい下限は5μm、好ましい上限は150μmであり、より好ましい下限は10μm、より好ましい上限は100μmである。
【0084】
本発明の仮固定材は、硬化後かつ300℃10分加熱後(加熱し放冷後)、25℃における対ガラス粘着力が1.5N/inch以下であることが好ましい。上記対ガラス粘着力が上記範囲内であることで、仮固定材は、剥離時により容易に剥離することができる。上記対ガラス粘着力は1.2N/inch以下であることがより好ましく、1.1N/inch以下であることが更に好ましく、1.0N/inch以下であることが更により好ましい。
なお、上記対ガラス粘着力は、以下の方法により測定される。
仮固定材をガラス(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)に100℃のラミネーター(ラミ―コーポレーション社製、Leon13DX)にて加熱ラミネートする。加熱ラミネートとしては、温度設定値100℃、速度設定値5の条件で、一回ラミネートする。加熱ラミネート後、ガラス側から超高圧水銀灯を用いて、405nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間照射するか、又は、オーブン中にて150℃で10分間加熱することにより硬化させる。硬化後、ガラス側から300℃のホットプレートで10分間加熱する。加熱後室温になるまで放冷し、硬化後かつ300℃10分加熱後の仮固定材に対して、25℃、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行い、粘着力を測定する。
【0085】
本発明の硬化性樹脂組成物、第1の本発明の仮固定材、及び、第2の本発明の仮固定材は、初期に充分な感圧又は感熱粘着力を有し、高温加工処理中には支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができる。また、その一方、被着体に対して接着亢進を起こしたり、剥離時に糊残りが発生したりするのを防止することができ、被着体との剥離時に容易に剥離することができる。このため、本発明の硬化性樹脂組成物、第1の本発明の仮固定材、及び、第2の本発明の仮固定材は、300℃以上の高温加工処理を行う被着体、特に、ポリイミド樹脂からなる被着体の保護及び仮固定に好適に用いることができる。とりわけ、半導体等の電子部品の加工時において、電子部品の取扱いを容易にし、破損したりしないようにするために、硬化性樹脂組成物又は仮固定材を介して電子部品を支持板に固定したり、仮固定材を電子部品に貼付したりして保護するのに好適に用いることができる。
【0086】
第1の本発明の仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程と、第1の本発明の仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程と、上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、第1の本発明の仮固定材から上記電子部品を剥離する剥離工程とを含む電子部品の製造方法もまた、本発明の1つである。
第1の本発明の仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程は、本発明の仮固定材から上記電子部品を剥離する剥離工程の直前に行ってもよいが、第1の本発明の仮固定材に電子部品を仮固定する仮固定工程の後、上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程の前に行うことが好ましい。上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程の前に第1の本発明の仮固定材の接着剤層を硬化する硬化工程を行うことにより、仮固定材がより優れた耐熱性を発揮することができる。
【0087】
第2の本発明の仮固定材を用いた電子部品の製造方法であって、上記仮固定材の第1の接着剤層と支持体とを貼り付ける支持体貼付工程と、上記仮固定材の第2の接着剤層と電子部品とを貼り付ける被着体貼付工程と、上記第1の接着剤層及び上記第2の接着剤層を硬化する硬化工程と、上記電子部品に熱処理を行う熱処理工程と、上記第1の接着剤層から気体を発生させる気体発生工程と、上記支持体と上記仮固定材とを剥離する剥離工程とを有する電子部品の製造方法もまた、本発明の1つである。
上記硬化工程は、上記気体発生工程の直前に行ってもよいが、上記支持体貼付工程及び上記被着体貼付工程の後、上記熱処理工程の前に行うことが好ましい。上記熱処理工程の前に上記硬化工程を行うことにより、仮固定材がより優れた耐熱性を発揮することができる。
上記支持体としては、例えば、ガラス、石英基板等が挙げられる。上記被着体としては、例えば、シリコンウエハ等が挙げられる。
【発明の効果】
【0088】
本発明によれば、被着体と支持体とを固定した状態で300℃以上の高温加工処理(例えば300~450℃の加熱)を行う場合であっても支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができ、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材、及び、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0089】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0090】
(ビスマレイミド化合物(1-I)の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)56g(0.1モル)と、無水マレイン酸19.6g(0.2モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸5gを加えた。溶液を12時間還流した後、室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により塩を沈殿させ除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、茶色液状の、下記式(A)で表されるビスマレイミド化合物(1-I)を得た。
【0091】
【0092】
(マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)56g(0.1モル)と、無水ピロメリット酸19.1g(0.09モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、アミン末端のジイミドを形成した。反応物を室温以下に冷却後、無水マレイン酸12.8g(0.13モル)を加え、次いで、無水メタンスルホン酸5g(0.05モル)を加えた。混合物を、更に12時間還流した後、室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿させ除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、琥珀色ワックス状の、下記式(B)で表される両末端にマレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)を得た。
得られた化合物について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は5000であった。
【0093】
【0094】
(マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)の調製)
テフロン(登録商標)スターラーを入れた500mLの丸底フラスコに250mLのトルエンを投入した。次いで、トリエチルアミン35g(0.35モル)と無水メタンスルホン酸35g(0.36モル)を加えて攪拌し、塩を形成した。10分間撹拌後、ダイマージアミン(クローダ社製、プリアミン1075)31.9g(0.06モル)、Bis-AP-AF5.5g(0.015モル)及び4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物39g(0.075モル)をこの順に加えた。ディーンスタークトラップとコンデンサーをフラスコに取り付け、混合物を2時間還流し、室温に冷却し、トルエン300mLをフラスコに加え、静置により不純物を沈殿させ除去した。得られた溶液を、シリカゲルを充填したガラスフリット漏斗を通してろ過した後、溶剤を真空除去し、褐色固体状の、下記式(C)で表されるマレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)を得た。
得られた樹脂について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は72000であった。
【0095】
【0096】
(アクリル系反応性樹脂の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして2-エチルヘキシルアクリレート94重量部、官能基含有モノマーとしてメタクリル酸ヒドロキシエチル6重量部、ラウリルメルカプタン0.01重量部と、酢酸エチル80重量部を加えた後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.01重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後及び2時間後にも、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを0.01重量部ずつ添加し、更に、重合開始から4時間後にt-ヘキシルパーオキシピバレートを0.05重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から8時間後に、固形分55重量%、重量平均分子量50万の官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。
得られた官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、官能基含有不飽和化合物として2-イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させてアクリル系反応性樹脂を得た。
得られたアクリル系反応性樹脂について、溶出液としてTHF、カラムとしてHR-MB-M(品名、ウォーターズ社製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したところ、重量平均分子量は55万であった。
【0097】
(実施例1)
(1)仮固定材の製造
トルエン150mLに、マレイミド基を有し、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する化合物(1-II)を70重量部、マレイミド基を有さず、かつ、イミド骨格を主鎖の繰り返し単位に有する樹脂(2-I)を30重量部加えた。更に、シリコーン化合物として2官能シリコーンアクリレート(ダイセルオルネックス社製、EBECRYL350)を5重量部、光重合開始剤としてイルガキュア819(BASF社製)を2重量部加え、硬化性樹脂組成物のトルエン溶液を調製した。
得られた硬化性樹脂組成物のトルエン溶液を、片面離型処理の施された厚さ50μmのPETフィルムの離型処理面上に乾燥皮膜の厚さが40μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。その後、40℃、3日間静置養生を行い、接着剤層を有する仮固定材を得た。
【0098】
(2)5%重量減少温度の測定
得られた仮固定材の接着剤層について、接着剤層を硬化させた後にアルミパンに秤取し、アルミパンを装置にセットした。
窒素雰囲気下、熱重量測定装置(STA7200、日立ハイテクサイエンス社製)にて昇温速度10℃/分で測定サンプルを25℃から500℃まで加熱し、5%重量減少する温度を測定した。なお、硬化条件は、405nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間照射すること、又は、紫外線照射にかえて、150℃オーブン中で10分間加熱することで硬化させた。
【0099】
(3)硬化後のゲル分率の測定
得られた仮固定材の接着剤層に超高圧水銀灯を用いて、405nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間紫外線照射した後、以下の方法により測定した。
仮固定材を50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製した。試験片をトルエン中に23℃にて24時間浸漬した後、トルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出した。なお、試験片には、接着剤層を保護するための離型フィルムは積層されていないものとする。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0100】
なお、後述する実施例18においては、得られた仮固定材の第1の接着剤層に405nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間照射して、第1及び第2の接着剤層を硬化させた後、それぞれの接着剤層を秤取し、試験片とした。後述する実施例19においては、紫外線照射にかえて、150℃オーブン中で10分間加熱することにより第1及び第2の接着剤層を硬化させた後に、それぞれの接着剤層を秤取し、試験片とした。これらの試験片は基材を有さないため、W0は0であった。
【0101】
(実施例2~11、比較例1~4)
硬化性樹脂組成物の組成を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物及び仮固定材を得た。使用した材料を下記に示す。
・フッ素化合物(光反応性フッ素化合物、DIC社製、メガファックRS-56)
・気体発生剤(5,5’-Bi-1H-tetorazole disodium salt(BHT-2Na))
【0102】
(実施例12~17)
硬化性樹脂組成物の組成を表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物及び仮固定材を得た。使用した材料を下記に示す。
・無機充填剤(シリカ粒子、トクヤマ社製、MT-10、平均粒子径15nm)
・無機充填剤(シリカ粒子、龍森社製、5x、平均粒子径1μm)
【0103】
(実施例18)
(1)第1の接着剤層(気体発生剤含有硬化型接着剤層)の形成
トルエン300mLに、表3に示す反応性樹脂を100重量部、気体発生剤として5,5’-Bi-1H-tetorazole disodium salt(BHT-2Na)を30重量部、シリコーン化合物としてEBECRYL350を5重量部、光重合開始剤としてイルガキュア369(BASF社製)を3重量部加えた。これにより、5,5’-Bi-1H-tetorazole disodium salt(BHT-2Na)が分散した硬化性樹脂組成物のトルエン溶液を調製した。
得られた硬化性樹脂組成物のトルエン溶液を、セパレーターとして準備した表面が離型処理された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥皮膜の厚さが50μmとなるようにドクターナイフで塗工した。あらかじめ110℃に加熱しておいたオーブンを用いて、10分間加熱して塗工溶液を乾燥させ、第1の接着剤層(気体発生剤含有硬化型接着剤層)を得た。
【0104】
(2)第2の接着剤層の形成
トルエン300mLに、表3に示す反応性樹脂を100重量部、シリコーン化合物としてEBECRYL350を5重量部、光重合開始剤としてイルガキュア369(BASF社製)を3重量部加えた。これにより、硬化性樹脂組成物のトルエン溶液を調製した。
得られた硬化性樹脂組成物のトルエン溶液を、セパレーターとして準備した表面が離型処理された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥皮膜の厚さが50μmとなるようにドクターナイフで塗工し、あらかじめ110℃に加熱しておいたオーブンを用いて、10分間加熱して塗工溶液を乾燥させて、第2の接着剤層を得た。
【0105】
(3)仮固定材の製造
得られた第1の接着剤層(気体発生剤含有硬化型接着剤層)及び第2の接着剤層のそれぞれ接着剤層表面どうしをラミネートして、両表面がセパレーターで覆われた仮固定材を得た。
【0106】
(実施例19)
硬化性樹脂組成物の組成を表3に示すように変更し、また、下記に示すように基材を用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物及び仮固定材を得た。
即ち、第2の接着剤層を形成する際、得られた硬化性樹脂組成物のトルエン溶液を、片面にコロナ処理を施した厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産社製、カプトンフィルム)のコロナ処理面上に、乾燥皮膜の厚さが50μmとなるようにドクターナイフで塗工した。あらかじめ110℃に加熱しておいたオーブンを用いて、10分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。乾燥後、カプトンフィルムと反対側の接着剤層面にセパレーターとして準備した、表面が離型処理された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネートして、第2の接着剤層を得た。重合開始剤としては日油社製、パーブチルOを用いた。
【0107】
<評価>
実施例及び比較例で得た仮固定材について、以下の方法により評価を行った。結果を表1~3に示した。
【0108】
(1)ボイド及び浮きの評価
得られた仮固定材を1インチの幅にカットした後、ガラス板(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)に熱ラミネーター(Leon13DX)にて100℃、速度メモリ3で加熱ラミネートした。なお、実施例18及び19においては、第2の接着剤層側をガラス板に加熱ラミネートした。
ラミネート後、ガラス側から超高圧水銀灯を用いて、405nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間照射した。なお、実施例19においては、紫外線照射にかえて、150℃オーブン中で10分間加熱することにより第1及び第2の接着剤層を硬化させた。硬化後、仮固定材の離型PETフィルムを剥離し、ガラス側から300℃のホットプレートで10分間加熱した。
硬化後かつ300℃加熱後の仮固定材の外観を目視にて観察して、以下の基準により評価した。
〇:ガラス板との間にボイド及び浮きは認められなかった
×:ガラス板との間に微細なボイドが認められた、又は、ガラス板との間が一部浮いていた
【0109】
(2)硬化後かつ300℃10分加熱後の剥離性の評価
得られた仮固定材を1インチの幅にカットした後、感光性ポリイミド膜を有するウエハに100℃のラミネーターにて加熱ラミネートした。なお、実施例18及び19においては、第2の接着剤層側をウエハに加熱ラミネートした。
ラミネート後、仮固定材側から超高圧水銀灯を用いて、405nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間照射した。なお、実施例19においては、紫外線照射にかえて、150℃オーブン中で10分間加熱することにより第1及び第2の接着剤層を硬化させた。硬化後、仮固定材の離型PETフィルムを剥離し、感光性ポリイミド膜を有するウエハ側を300℃のホットプレートで10分間加熱した。
硬化後かつ300℃加熱後の仮固定材に対して、25℃、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行った。仮固定材を剥離した後の感光性ポリイミド膜を有するウエハ表面を目視にて観察して、以下の基準により評価した。
〇:糊残りは認められなかった
×:糊残りはないものの、剥離面に曇りが認められた
××:糊残りが認められた
【0110】
(3)硬化後かつ300℃10分加熱後の25℃対ガラス粘着力の測定
得られた仮固定材を1インチの幅にカットした後、1mm厚のガラス(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)に100℃のラミネーター(ラミ―コーポレーション社製、Leon13DX、速度メモリ5)にて加熱ラミネートした。ラミネート後、ガラス側から超高圧水銀灯を用いて、405nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間照射した。実施例19においては、紫外線照射にかえて、150℃オーブン中で10分間加熱することにより第1及び第2の接着剤層を硬化させた。硬化後、仮固定材の離型PETフィルムを剥離し、ガラス側から300℃のホットプレートで10分間加熱した。
硬化後かつ300℃10分加熱し放冷後の仮固定材に対して、25℃、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行った。
なお、実施例18及び19については、第1の接着剤層及び第2の接着剤層のそれぞれの面について測定を行った。第1の接着剤層の対ガラス粘着力については、300℃10分加熱し放冷後に、ガラス側から高圧水銀灯を用いて、254nmの紫外線を20mW/cm2の強度で、180秒間照射しガス発生させた後に、25℃、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行った。
なお、比較例1、2、4では、300℃10分加熱後にガラス板との間に浮きやボイドが生じたため、測定不可とし、比較例3では、300℃10分加熱後に固着し測定できなかった。
【0111】
(4)硬化後かつ300℃20分加熱後の剥がれ及び剥離性の評価
実施例2~4及び12~17で得られた仮固定材については、更に下記の評価を行った。
得られた仮固定材を1インチの幅にカットした後、1mm厚のガラスに熱ラミネーター(Leon13DX)にて100℃、速度メモリ3で1回加熱ラミネートした。ラミネート後、ガラス側から超高圧水銀灯を用いて、405nmの紫外線を20mW/cm2の強度で150秒間照射した。硬化後、離型PETフィルムを剥離し、ガラス側から300℃のホットプレートで20分間加熱した。なお、この試験を5回行った。
硬化後かつ300℃20分加熱後の仮固定材の外観を目視にて観察して、以下の基準により評価した。
剥がれあり:5回すべての試験において、ガラスとの間に剥がれが認められなかった
剥がれなし:5回のうち1回以上の試験において、ガラスとの間が一部浮いていた
【0112】
硬化後かつ300℃20分加熱後の仮固定材に対して、25℃、引張速度300mm/分の条件にて180°ピール試験を行った。なお、この試験を5回行った。仮固定材のピール性について、以下の基準により評価した。なお、剥がれの試験において浮きが生じたもの(剥がれあり)は評価を行わなかった。
◎:5回すべての試験において、剥離可能であった
○:5回のうち1~4回の試験において、剥離可能であった
×:5回すべての試験において、剥離できなかった
【0113】
【0114】
【0115】
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明によれば、被着体と支持体とを固定した状態で300℃以上の高温加工処理を行う場合であっても支持体との間のボイド及び浮きの発生を抑えることができ、高温加工処理を経た後には容易に剥離できる硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化性樹脂組成物からなる接着剤層を有する仮固定材、及び、該仮固定材を用いた電子部品の製造方法を提供することができる。