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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】端子、コネクタ、およびコネクタ構成体
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20221215BHJP
   H01R 31/08 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01R13/11 C
H01R31/08 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019044608
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2020149812
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 新史
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-089927(JP,A)
【文献】特開平09-129317(JP,A)
【文献】特開平07-288147(JP,A)
【文献】特開2007-184171(JP,A)
【文献】特開2005-158453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 1/00-43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方端子が挿入される筒部と、前記筒部に配設された弾性変形可能な弾性片と、を備え、
前記弾性片は、前記筒部の内部に位置して前記相手方端子と接触する内接点と、前記筒部の外部に位置して前記相手方端子と異なる導体と接触する外接点と、を有し、
前記弾性片は、前記相手方端子が前記筒部に挿入された状態で前記相手方端子の側方に位置する迂回部を有する、端子。
【請求項2】
前記迂回部は、前記筒部内に挿入された状態の前記相手方端子の両側方に配されている、請求項に記載の端子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の端子と、
前記端子を収容する複数の収容部を有するハウジングと、を備え、
前記複数の収容部は並んで配されており、前記複数の収容部には、隣り合う前記複数の収容部を連通する窓部が貫通されており、
前記端子が前記複数の収容部のそれぞれに収容された状態で、前記弾性片のうち前記外接点を含む部分が前記窓部を貫通しており、
複数の前記端子のうち一の端子の前記外接点によって、前記一の端子と、前記一の端子と隣り合う他の端子が電気的に接続されているコネクタ。
【請求項4】
前記金属ランスが前記収容部に向けて突出して前記収容部に係合されることにより、前記収容部内に、前記端子が後方へ抜け止め状態で保持される請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のコネクタと、
前記コネクタと嵌り合う相手方コネクタと、を備えたコネクタ構成体であって、
前記相手方コネクタには前記相手方端子が収容されており、
前記コネクタと前記相手方コネクタとが嵌り合った状態で、前記相手方端子は、前記弾性片の前記内接点と接触して前記弾性片を変形させることで、前記一の端子と、前記一の端子と隣り合う前記他の端子の電気的な接続を解除するようになっている、コネクタ構成体。
【請求項6】
前記相手方コネクタには、前記コネクタと前記相手方コネクタとが嵌り合った状態で、前記一の端子の前記外接点と、前記一の端子と隣り合う前記他の端子との間に介在する絶縁性の絶縁部を有する、請求項5に記載のコネクタ構成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子、コネクタ、およびコネクタ構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-56369号公報に記載された短絡端子付きコネクタが知られている。この短絡端子付きコネクタは、複数の端子を収容可能な複数の端子収容室を有するコネクタハウジングと、少なくとも一つの端子収容室に装着され、収容された少なくとも二つの端子と接触することにより、二つの端子を短絡状態にする短絡端子と、を備える。
【0003】
短絡端子付きコネクタと相手方のコネクタハウジングとの嵌合時に、相手方のコネクタハウジングに設けられた短絡解除部材が短絡端子に接触して短絡端子を変形させることにより短絡状態が解除されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-56369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、二つの端子を短絡させるために短絡端子が別途必要となるので、部品点数が多くなるという問題がある。
【0006】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子同士を短絡させる技術に関し、部品点数を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、相手方端子が挿入される筒部と、前記筒部に配設された弾性変形可能な弾性片と、を備え、前記弾性片は、前記筒部の内部に位置して前記相手方端子と接触する内接点と、前記筒部の外部に位置して前記相手方端子と異なる導体と接触する外接点と、を有する端子である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、端子同士を短絡させる技術に関し、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1にかかる雄コネクタと雌コネクタとが嵌り合う前の状態を示す断面図である。
図2図2は、雌端子を示す斜視図である。
図3図3は、雌端子の筒部および弾性片を示す一部拡大切欠図である。
図4図4は、弾性片を示す一部拡大切欠図である。
図5図5は、雌端子に加工される前の金属板材を示す展開図である。
図6図6は、上側に配された雌端子の外接点と、下側に配された雌端子の筒部とが電気的に接続された状態を示す一部拡大斜視図である。
図7図7は、雄コネクタと雌コネクタとが嵌り合う工程を示す一部拡大断面図である。
図8図8は、雄コネクタと雌コネクタとが嵌り合った状態を示す一部拡大断面図である。
図9図9は、実施形態2にかかる雌端子を示す斜視図である。
図10図10は、弾性片を示す一部拡大切欠図である。
図11図11は、実施形態3にかかる雌端子を示す斜視図である。
図12図12は、弾性片を示す一部拡大切欠図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列挙されて説明される。
【0011】
(1) 本開示は端子であって、相手方端子が挿入される筒部と、前記筒部に配設された弾性変形可能な弾性片と、を備え、
前記弾性片は、前記筒部の内部に位置して前記相手方端子と接触する内接点と、前記筒部の外部に位置して前記相手方端子と異なる導体と接触する外接点と、を有する。
【0012】
端子は、外接点によって隣り合う他の端子と電気的に接続することができるので、短絡部材が不要となる。これにより部品点数を削減することができる。
【0013】
(2) 前記弾性片は、前記相手方端子が前記筒部に挿入された状態で前記相手方端子の側方に位置する迂回部を有することが好ましい。
【0014】
迂回部によって、弾性片と、相手方端子とが干渉することを抑制しつつ、外部領域を筒部の外部にまで導出することができる。
【0015】
(3) 前記迂回部は、前記筒部内に挿入された状態の前記相手方端子の両側方に配されていることが好ましい。
【0016】
迂回部は相手方端子の両側方に位置しているので、内接点に加えられる荷重、および外接点に加えられる荷重を、相手方端子の両側方に位置する迂回部で均等に受けることができる。これにより、内接点、および外接点の電気的な接続信頼性が向上する。
【0017】
(4) 本開示はコネクタであって、上記の端子と、
前記端子を収容する複数の収容部を有するハウジングと、を備え、
前記複数の収容部は並んで配されており、前記複数の収容部には、隣り合う前記複数の収容部を連通する窓部が貫通されており、
前記端子が前記複数の収容部のそれぞれに収容された状態で、前記弾性片のうち前記外接点を含む部分が前記窓部を貫通しており、
複数の前記端子のうち一の端子の前記外接点によって、前記一の端子と、前記一の端子と隣り合う他の端子が電気的に接続されている。
【0018】
窓部を貫通する外接点によって隣り合う端子同士が電気的に接続されるので、短絡端子が不要となり、コネクタを小型化できるとともにコネクタの製造コストを低減できる。また、短絡端子を変形させる必要がないので、コネクタと相手方コネクタとの嵌合力を低減できる。
【0019】
(5) 前記端子は、前記収容部に向けて突出して前記収容部に係合される金属ランスを有することが好ましい。
【0020】
収容部は窓部を有するので、端子を保持するための構造(例えば、ランス)を設ける場合に構造的に制約が生じうる。端子が金属ランスを有することにより、収容部には端子を保持するための特別な構造を設けなくて良いので、コネクタについて設計の自由度が向上する。
【0021】
(6) 本開示は、上記のコネクタと、
前記コネクタと嵌り合う相手方コネクタと、を備えたコネクタ構成体であって、
前記相手方コネクタには前記相手方端子が収容されており、
前記コネクタと前記相手方コネクタとが嵌り合った状態で、前記相手方端子は、前記弾性片の前記内接点と接触して前記弾性片を変形させることで、前記一の端子と、前記一の端子と隣り合う前記他の端子の電気的な接続を解除するようになっている。
【0022】
相手方端子が、端子の内接点と接触することにより、隣り合う端子同士の電気的な接続が解除されるので、解除用の部材を別途設ける場合に比べて、コネクタ構成体の部品点数を削減できる。
【0023】
(7) 前記相手方コネクタには、前記コネクタと前記相手方コネクタとが嵌り合った状態で、前記一の端子の前記外接点と、前記一の端子と隣り合う前記他の端子との間に介在する絶縁性の絶縁部を有することが好ましい。
【0024】
コネクタと相手方コネクタとが嵌り合った状態において、絶縁部によって、隣り合う端子同士を確実に絶縁することができる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態が説明される。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0026】
<実施形態1>
本開示の実施形態1にかかるコネクタ構成体10が図1から図を参照しつつ説明される。以下の説明では、Z方向を上方とし、Y方向を前方とし、X方向を左方として説明する。なお、複数の同一部材については、一部の部材に符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0027】
[コネクタ構成体10]
図1に示されるように、コネクタ構成体10は、雌端子11(端子の一例)を有する雌コネクタ12(コネクタの一例)と、雄端子13(相手方端子の一例)を有する雄コネクタ14(相手方コネクタの一例)と、を備える。
【0028】
[雄コネクタ14]
雄コネクタ14は、絶縁性の合成樹脂を含む材料が射出成型された雄ハウジング15と、雄ハウジング15に収容される雄端子13と、を備える。
【0029】
雄ハウジング15は、複数の雄端子13が収容される雄収容部16を有する。雄収容部16は上下方向に並んでいる。雄収容部16内には前方から雄端子13が挿入される。雄収容部16の後端部には雄フロントマスク17が取り付けられており、雄フロントマスク17が雄端子13に後方から接触することにより、雄端子13が後方へ抜け止めされている。雄フロントマスク17は絶縁性の合成樹脂を含む材料が射出成型されることにより形成される。
【0030】
雄ハウジング15は後方に開口するフード部18を有する。フード部18の上壁の後端部には下方に突出するロック部19が形成されている。フード部18の内側には雌コネクタ12が嵌るようになっている。
【0031】
雄フロントマスク17には前後方向に貫通する複数の雄貫通孔20が形成されている。雄貫通孔20は雄収容部16と対応する位置に設けられている。雄貫通孔20内には雄端子13が挿入されている。雄フロントマスク17の後面には隣り合う雄貫通孔20の間の位置に、後方に突出する板状の絶縁部21が形成されている。
【0032】
[雄端子13]
雄端子13は金属板材が所定の形状にプレス加工されることにより形成される。金属板材を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、任意の金属を選択できる。雄端子13の後端部には後方に突出する板状をなす雄タブ22が形成されている。雄端子13の前端部には電線が接続される雄バレル23が形成されている。雄バレル23は電線24Aの外周に圧着しており、これにより電線24Aと雄端子13とが電気的に接続されている。
【0033】
雄タブ22は、雄フロントマスク17の雄貫通孔20から後方に突出して、フード部18内に位置するようになっている。雄タブ22の後端部は、絶縁部21の後端部よりも後方に突出している。
【0034】
雄端子13の側壁には側方に突出する金属ランス25Aが形成されている。金属ランス25Aが雄収容部16の内壁に係合されることにより、雄収容部16内に、雄端子13が前方へ抜け止め状態で保持されるようになっている。
【0035】
[雌コネクタ12]
図1に示されるように、雌コネクタ12は、絶縁性の合成樹脂を含む材料が射出成型された雌ハウジング26(ハウジングの一例)と、雌ハウジング26に収容される雌端子11と、を備える。
【0036】
雌ハウジング26は複数の雌端子11が収容される雌収容部27(収容部の一例)を有する。雌収容部27は上下方向に並んでいる。雌収容部27内には後方から雌端子11が挿入される。雌収容部27の前端部には雌フロントマスク28が取り付けられており、雌フロントマスク28が雌端子11に前方から接触することにより、雌端子11が前方へ抜け止めされている。雌フロントマスク28は絶縁性の合成樹脂を含む材料が射出成型されることにより形成される。
【0037】
雌ハウジング26の上部には上下方向に撓み変形するロックアーム29が形成されている。ロックアーム29は雌ハウジング26の前端部から後方に片持ち状に延びている。ロックアーム29の上部には上方に突出するロック爪30が形成されている。雌ハウジング26のロック爪30と雄ハウジング15のロック部19とが係わり合うことにより、雌ハウジング26が雄ハウジング15のフード部18内に嵌った状態で保持されるようになっている。
【0038】
雌フロントマスク28には前後方向に貫通する複数の雌貫通孔31が形成されている。雌貫通孔31は雌収容部27と対応する位置に設けられている。雌ハウジング26と雄ハウジング15とが嵌り合った状態で、雌貫通孔31内には雄端子13の雄タブ22が前方から挿入されるようになっている。
【0039】
雌収容部27の下壁には、前端部寄りの位置に、上下に貫通する窓部32が形成されている。窓部32により、上下方向に隣り合う雌収容部27は連通している。
【0040】
[雌端子11]
図2に示されるように、雌端子11は金属板材を所定の形状にプレス加工して形成される。金属板材を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、任意の金属を選択できる。雌端子11の前端部には雄タブ22が前方から挿入される筒部33が設けられている。筒部33の内部には弾性変形可能な弾性片34が配されている。
【0041】
雌端子11の後端部には電線24Bが接続される雌バレル35が形成されている。雌バレル35は電線24Bの外周に圧着しており、これにより電線24Bと雌端子11とが電気的に接続されている(図1参照)。
【0042】
図3に示されるように、筒部33は前後方向に延びる角筒状をなしている。筒部33は上下方向についてやや扁平に形成されている。筒部33の側壁には側方に突出する金属ランス25Bが形成されている。金属ランス25Bは前方が先細り形状をなす三角柱状に形成されている。金属ランス25Bが雌収容部27の内壁に係合されることにより、雌収容部27内に、雌端子11が後方へ抜け止め状態で保持されるようになっている。
【0043】
図3および図4に示されるように、弾性片34は筒部33の下壁の前端部から後方に延びている。弾性片34は、筒部33の前端部から斜め下後方に延びる傾斜部36と、傾斜部36の後端に設けられて前後方向に延びる内接点37と、内接点37の後端部において内接点37よりもやや上方に設けられるとともに前後方向に延びる延長部38と、延長部38の左側縁から下方に延びる迂回部39と、迂回部39の下端から右方に延びる外接点40と、を有する。
【0044】
内接点37は筒部33の内部に位置している。迂回部39は筒部33の内部から外部へと延びており、迂回部39の下端部は筒部33の外部に位置している。これにより、外接点40は、筒部33の下壁よりも下方の位置であって、筒部33の外部に位置している。
【0045】
内接点37は筒部33内に挿入された雄タブ22と弾性的に接触するようになっている。内接点37は雄タブ22の上面に接触し、雄タブ22を筒部33の下壁に押圧する。筒部33の下壁には上方に突出する接触突部41が形成されている。雄タブ22は、内接点37と、接触突部41との間に挟まれることにより、雌端子11と電気的に接続される。
【0046】
図1に示されるように、雌端子11が雌収容部27内に収容された状態で、迂回部39および外接点40は、窓部32を上下方向に貫通するようになっている。
【0047】
図5には、上下方向に並ぶ1組の雌端子11が例示されることにより、雌端子同士の電気的な接続構造が示される。図5においては、雌ハウジング26等の、雌端子11と異なる部材は省略されている。上方に位置する一の雌端子11の筒部33から迂回部39が下方に導出されている。迂回部39の下端部に形成された外接点40は、一の雌端子11の下方に位置する他の雌端子11の筒部33の上壁に、上方から接触している。これにより、外接点40を介して、一の雌端子11と、一の雌端子11の下方に位置する他の雌端子11とが電気的に接続されるようになっている。この結果、雌ハウジング26に収容された複数の雌端子11は電気的に接続されている(図1参照)。
【0048】
図6に示されるように、折り曲げ加工される前の雌端子11は、細長く延びるキャリア42の側縁から側方(キャリア42の延びる方向と交差する方向)に延びている。折り曲げ加工される前の雌端子11は、キャリア42から近い順に、雌バレル35に加工される部分43、筒部33に加工される部分44、および弾性片34に加工される部分45を有する。図6に示された一点鎖線は、金属板材を折り曲げるための折り曲げ線を示す。
【0049】
弾性片34に加工される部分45は、筒部33に加工される部分44の先端部から延びて形成されている。弾性片34に加工される部分45には、筒部33に加工される部分44に近い順に、傾斜部に加工される部分46、内接点37に加工される部分47、および延長部38に加工される部分48が、キャリア42の延びる方向と交差する方向に沿って形成されている。
【0050】
延長部38に加工される部分48の側縁からは、迂回部39に加工される部分49と、外接点40に加工される部分50とが、キャリア42の延びる方向に沿って延びている。
【0051】
[コネクタ構成体10の組み立て工程の一例]
続いて、本実施形態にかかるコネクタ構成体10の組み立て工程の一例が説明される。コネクタ構成体10の組み立て工程は以下の記載に限定されない。
【0052】
金属板材が所定の形状にプレス加工されることにより雄端子13が形成される。絶縁性の合成樹脂を含む材料が射出成型されることにより雄ハウジング15と雄フロントマスク17が形成される。電線24Aが接続された雄端子13が雄ハウジング15の雄収容部16内に前方から挿入される。雄端子13の金属ランス25Aが雄収容部16の内壁に係合されることにより雄端子13が雄収容部16内に前方へ抜け止めされる。雄フロントマスク17が雄ハウジング15に後方から組み付けられることにより、雄端子13が雄収容部16内に後方へ抜け止め状態で保持される。これにより雄コネクタ14が完成する。
【0053】
金属板材が所定の形状にプレス加工されることにより雌端子11が形成される。雌端子11の雌バレル35が電線24Bに圧着される。絶縁性の合成樹脂を含む材料が射出成型されることにより雌ハウジング26と雌フロントマスク28が形成される。電線24Bが接続された雌端子11が雌ハウジング26の雌収容部27内に後方から挿入される。雌端子11の金属ランス25Bが雌収容部27の内壁に係合されることにより雌端子11が雌収容部27内に後方へ抜け止めされる。雌フロントマスク28が雌ハウジング26に前方から組み付けられることにより、雌端子11が雌収容部27内に前方へ抜け止め状態で保持される。上下方向に並ぶ雌収容部27内にそれぞれ収容された雌端子11は、各雌端子11に設けられた外接点40を介して電気的に接続される。これにより雌コネクタ12が完成する。
【0054】
続いて、雄コネクタ14のフード部18内に、雌コネクタ12が後方から嵌め入れられる。
【0055】
図7に示されるように、雄タブ22が筒部33内に前方から挿入される。雄タブ22が内接点37に下方から接触する。内接点37が上方に移動するように弾性片34が弾性変形する。外接点40が上方に移動することにより、上下方向に並ぶ雌端子11同士の電気的な接続が解除される。ロック爪30がロック部19に下方から接触することによりロックアーム29が下方に弾性変形する。
【0056】
図8に示されるように、更に雌コネクタ12が前方に押されると、内接点37が更に上方に移動するように弾性片34が弾性変形する。外接点40が更に上方に移動する。外接点40と、外接点40の下方に隣り合って位置する雌端子11の筒部33との間に、絶縁部21が挿入される。これにより、外接点40と、外接点40の下方に位置する雌端子11とが電気的に絶縁される。
【0057】
雄タブ22が筒部33内に挿入された状態で、迂回部39は雄タブ22の左方に位置するようになっている。これにより、雄タブ22の先端と弾性片34が前後方向について干渉することが回避されるようになっている。
【0058】
ロックアーム29が復帰変形し、ロック爪30がロック部19に前方から係わり合うことにより、雄コネクタ14のフード部18内に雌コネクタ12が後方へ抜け止め状態で保持される。これによりコネクタ構成体10が完成する。
【0059】
[実施形態の作用効果]
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態にかかる雌端子11は、雄端子13の雄タブ22が挿入される筒部33と、筒部33に配設された弾性変形可能な弾性片34と、を備え、弾性片34は、筒部33の内部に位置して雄タブ22と接触する内接点37と、筒部33の外部に位置して上下方向に並ぶ他の雌端子11と接触する外接点40と、を有する。
【0060】
雌端子11は、外接点40によって隣り合う他の雌端子11と電気的に接続することができるので、短絡部材が不要となる。これにより部品点数を削減することができる。
【0061】
弾性片34は、端子の雄タブ22が筒部33に挿入された状態で雄タブ22の側方に位置する迂回部39を有する。
【0062】
迂回部39によって、弾性片34と、雄タブ22とが干渉することを抑制しつつ、外接点40を筒部33の外部にまで導出することができる。
【0063】
本開示にかかる雌コネクタ12は、複数の雌端子11と、複数の雌端子11を収容する複数の雌収容部27を有する雌ハウジング26と、を備え、複数の雌収容部27は並んで配されており、複数の雌収容部27には、隣り合う複数の雌収容部27を連通する窓部32が貫通されており、複数の雌端子11が複数の収容部のそれぞれに収容された状態で、弾性片34のうち外接点40を含む部分が窓部32を貫通しており、複数の雌端子11のうち一の雌端子11の外接点40によって、一の雌端子11と、一の雌端子11と隣り合う他の雌端子11が電気的に接続されている。
【0064】
窓部32を貫通する外接点40によって隣り合う雌端子11同士が電気的に接続されるので、短絡端子が不要となり、雌コネクタ12を小型化できるとともに雌コネクタ12の製造コストを低減できる。また、短絡端子を変形させる必要がないので、雌コネクタ12と雄コネクタ14との嵌合力を低減できる。
【0065】
雌端子11は、雌収容部27に向けて突出して雌収容部27に係合される金属ランス25Bを有する。
【0066】
雌収容部27は窓部32を有するので、雌端子11を保持するための構造(例えば、樹脂ランス)を設ける場合に構造的に制約が生じうる。雌端子11が金属ランス25Bを有することにより、雌収容部27には雌端子11を保持するための特別な構造を設けなくて良いので、雌コネクタ12について設計の自由度が向上する。
【0067】
本開示にかかるコネクタ構成体10は、雌コネクタ12と、雌コネクタ12と嵌り合う雄コネクタ14と、を備えたコネクタ構成体10であって、雄コネクタ14には雄端子13が収容されており、雌コネクタ12と雄コネクタ14とが嵌り合った状態で、雄端子13の雄タブ22は、弾性片34の内接点37と接触して弾性片34を変形させることで、一の雌端子11と、一の雌端子11と隣り合う他の雌端子11の電気的な接続を解除するようになっている。
【0068】
雄端子13の雄タブ22が、雌端子11の内接点37と接触することにより、隣り合う雌端子11同士の電気的な接続が解除されるので、解除用の部材を別途設ける場合に比べて、コネクタ構成体10の部品点数を削減できる。
【0069】
雄コネクタ14には、雌コネクタ12と雄コネクタ14とが嵌り合った状態で、一の雌端子11の外接点40と、一の雌端子11と隣り合う他の雌端子11との間に介在する絶縁性の絶縁部21を有する。
【0070】
雌コネクタ12と雄コネクタ14とが嵌り合った状態において、絶縁部21によって、隣り合う雌端子11同士を確実に絶縁することができる。
【0071】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2にかかる雌端子60が図9から図10を参照しつつ説明される。本実施形態の雌端子60に形成された弾性片61は、延長部62の左側縁から下方に延びる第1迂回部63(迂回部の一例)と、延長部62の右側縁から下方に延びる第2迂回部64(迂回部39の一例)と、第1迂回部63の下端から右方に延びる第1外接点65(外接点の一例)と、第2迂回部64の下端から左方に延びる第2外接点66(外接点の一例)と、を有する。第1外接点65の端部と第2外接点66の端部は、左右方向から突き合わされた状態に形成されている。
【0072】
第1迂回部63および第2迂回部64の前後方向についての幅寸法は同じに設定されている。また、第1外接点65と第2外接点66の前後方向についての幅寸法は同じに設定されている。同じに設定されているとは、全く同じに設定されている場合を含むとともに、全く同じでなくとも実質的に同じと認定しうる場合を含む。
【0073】
雄タブ22が筒部33内に挿入された状態で、第1迂回部63は雄タブ22の左方に位置するようになっており、第2迂回部64は雄タブ22の右方に位置するようになっている。つまり、第1迂回部63および第2迂回部64は、雄タブ22が筒部33内に挿入された状態で、雄タブ22の左右両側にそれぞれ位置するようになっている。
【0074】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0075】
第1迂回部63および第2迂回部64は、筒部33内に挿入された状態の雄タブ22の左右両側方に、それぞれ位置しているので、内接点37に加えられる荷重、および第1外接点65及び第2外接点66に加えられる荷重を、雄タブ22の両側方に位置する第1迂回部63および第2迂回部64で均等に受けることができる。これにより、内接点37、ならびに、第1外接点65および第2外接点66の電気的な接続信頼性が向上する。
【0076】
<実施形態3>
次に、本開示の実施形態3にかかる雌端子70が図11から図12を参照しつつ説明される。本実施形態の雌端子70に形成された弾性片71は、延長部72の後端縁から斜め上後方に立ち上がる立ち上がり部73と、立ち上がり部73の上端部から後方に延びる外接点74と、を有する。
【0077】
立ち上がり部73には、前後方向に貫通する貫通孔75が形成されている。立ち上がり部73のうち貫通孔75の左側に位置する部分が左迂回部76(迂回部の一例)とされ、貫通孔75の右側に位置する部分が右迂回部77(迂回部の一例)とされる。
【0078】
雄タブ22が筒部33内に挿入された状態で、左迂回部76および右迂回部77は、雄タブ22が筒部33内に挿入された状態で、雄タブ22の左右両側方にそれぞれ位置するようになっている。左右方向について、左迂回部76の幅寸法と、右迂回部77の幅寸法とは同じである。
【0079】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0080】
左迂回部76および右迂回部77は、筒部33内に挿入された状態の雄タブ22の左右両側方に位置しているので、内接点37に加えられる荷重、および外接点74に加えられる荷重を、雄タブ22の左右両側方に位置する左迂回部76および右迂回部77で均等に受けることができる。これにより、内接点37、および外接点74の電気的な接続信頼性が向上する。
【0081】
<他の実施形態>
本開示は上記記述および図面によって説明された実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に開示された技術の技術的範囲に含まれる。
【0082】
(1)雌端子は左右方向等、任意の方向に並ぶ構成としてもよい。
【0083】
(2)弾性片は筒部と別体でもよい。弾性片は筒部の後端部から前方に折り返される構成としてもよい。弾性片は筒部の前端部または後端部から左右方向に延びる構成としてもよい。弾性片は、筒部の前後方向の中間位置から、筒部の内方に延びる構成としてもよい。
【0084】
(3)雌ハウジング26は、雌収容部27の内壁から内方に突出して、雌端子11を抜け止め状態で保持する樹脂ランスを有していてもよい。
【0085】
(4)雌端子の外接点は、隣り合う雌端子とは異なる導体と電気的に接続してもよい。
【0086】
(5)絶縁部21は省略してもよい。
【0087】
(6)雄タブ22が筒部33内に挿入された状態で、雄タブ22の先端を回避する位置にまで弾性片34が延びている場合には、迂回部は省略してもよい。
【0088】
(7)金属ランス25Bは、雌収容部27のうち窓部32が形成された壁に係合されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10: コネクタ構成体
11,60,70: 雌端子
12: 雌コネクタ
13: 雄端子
14: 雄コネクタ
15: 雄ハウジング
16: 雄収容部
17: 雄フロントマスク
18: フード部
19: ロック部
20: 雄貫通孔
21: 絶縁部
22: 雄タブ
23: 雄バレル
24A,24B: 電線
25A,25B: 金属ランス
26: 雌ハウジング
27: 雌収容部
28: 雌フロントマスク
29: ロックアーム
30: ロック爪
31: 雌貫通孔
32: 窓部
33: 筒部
34,61,71: 弾性片
35: 雌バレル
36: 傾斜部
37: 内接点
38,62,72: 延長部
39: 迂回部
40,74: 外接点
41: 接触突部
42: キャリア
43: 雌バレルに加工される部分
44: 筒部に加工される部分
45: 弾性片に加工される部分
46: 傾斜部に加工される部分
47: 内接点に加工される部分
48: 延長部に加工される部分
49: 迂回部に加工される部分
50: 外接点に加工される部分
63: 第1迂回部
64: 第2迂回部
65: 第1外接点
66: 第2外接点
73: 立ち上がり部
75: 貫通孔
76: 左迂回部
77: 右迂回部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12