(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221215BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20221215BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20221215BHJP
H01M 50/169 20210101ALI20221215BHJP
H01M 10/058 20100101ALN20221215BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/169
H01M10/058
(21)【出願番号】P 2019044732
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 健幸
(72)【発明者】
【氏名】鹿田 勝也
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064361(JP,A)
【文献】特開2014-127400(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158998(WO,A1)
【文献】特開2011-164253(JP,A)
【文献】特開2016-173927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 50/103
H01M 50/15
H01M 50/169
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、内部に電極体を収容した箱状のケース本体と、該開口部を塞ぐ蓋体とを、治具にセットした状態で該開口部の周縁を溶接することで、密閉された電池を形成する工程と、
前記ケース本体と蓋体とからなる電池ケースおよび前記治具の少なくともいずれかを清掃対象とし、外周面にブラシ毛を備えた回転ブラシを用いて前記清掃対象を清掃する
、清掃工程と、
を含む電池の製造方法であって、
前記回転ブラシは、
中空の内部空間を形成し、且つ、前記外周面のうち前記ブラシ毛が設置された領域の間から前記内部空間に貫通する通気孔を有するブラシ基部を備え、
前記清掃工程において、
前記回転ブラシを回転させながら前記清掃対象に接触させると共に、前記通気孔を通じて前記ブラシ基部の前記内部空間に気体を吸引させることで、前記清掃対象を清掃することを含み、
前記清掃工程が実行されていない間に、前記ブラシ基部の前記内部空間から前記通気孔を通じて外部に気体を噴射させ
、前記気体の噴射中の少なくとも一部で前記回転ブラシを回転させることを特徴とする、電池の製造方法。
【請求項2】
前記密閉された電池を形成する工程の後、前記清掃対象は、搬送機構によって予め定められた清掃位置に搬送され、
前記回転ブラシは、制御部と電気的に接続されており、
前記制御部は、前記清掃対象が清掃位置に搬送されたと判断したときに前記回転ブラシを回転させながら前記清掃対象に接触させて前記清掃工程を実行する、
請求項1に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接によって生じた異物を清掃する工程を含む電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池のような比較的高電圧で高容量の電池は、パソコンや携帯端末等のポータブル電源、あるいはEV(電気自動車)、HV(ハイブリッド自動車)、PHV(プラグインハイブリッド自動車)等の車両駆動用電源として広く用いられている。この種の電池を製造する際に、開口部を有し、内部に電極体を収容した箱状のケース本体と、該開口部を塞ぐ蓋体(以下、ケース本体と蓋体を合わせて「電池ケース」という。)を、治具にセットした状態で該開口部周縁を溶接することで、密閉された電池(セル)を形成する場合がある。溶接の種類として、例えばレーザ溶接、アーク溶接、ガス溶接等の種々の溶接が知られているが、多くの溶接では、溶けた金属がスパッタとして飛散してしまう。スパッタ等の異物が電池および治具に付着した状態のまま放置すると、例えば、治具に付着していた異物が溶接時に電池ケース内部に混入する不具合、および、電池ケース内部に収容された電極体の表面に配置されている絶縁シートが異物によって破損する不具合等が生じ得る。従って、電池ケース外面および治具に付着した異物が適切に清掃されることが望ましい。例えば、特許文献1に記載されている清掃装置は、凹凸を表面に備えるグラビアロールを使用して、電池ケースの外面に付着した異物を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異物の清掃にブラシを使用することも考えられる。ブラシを使用して異物を清掃すると、ブラシが備える多数のブラシ毛の間に異物が挟み込まれる場合がある。ブラシ毛の間に異物が挟み込まれたまま、次の清掃工程が実行されると、異物がブラシ毛から清掃対象(例えば、電池ケースおよび治具の少なくともいずれか)に移動してしまい、電池に異物が残存する可能性がある。ブラシを交換する頻度を増加させれば、ブラシ毛から清掃対象に異物が移動する可能性は低下するが、逆に作業工数が増加してしまう。
【0005】
本発明の典型的な目的は、電池に異物が残存する可能性を適切に低下させることが可能な電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を実現するべく、ここに開示される一態様の電池の製造方法は、開口部を有し、内部に電極体を収容した箱状のケース本体と、該開口部を塞ぐ蓋体とを、治具にセットした状態で該開口部周縁を溶接することで、密閉された電池を形成する工程と、上記電池ケース(ケース本体と蓋体)および上記治具の少なくともいずれかを清掃対象とし、外周面にブラシ毛を備えた回転ブラシを用いて上記清掃対象を清掃する工程と、を含む電池の製造方法である。上記回転ブラシは、中空の内部空間を形成し、且つ、上記外周面のうち上記ブラシ毛が設置された領域の間から上記内部空間に貫通する通気孔を有するブラシ基部を備える。そして、ここに開示される電池の製造方法では、上記清掃工程において、上記回転ブラシを回転させながら上記清掃対象に接触させると共に、上記通気孔を通じて上記ブラシ基部の上記内部空間に気体を吸引させることで、上記清掃対象を清掃することを含む。また、ここに開示される電池の製造方法は、上記清掃工程が実行されていない間に、上記ブラシ基部の上記内部空間から上記通気孔を通じて外部に気体を噴射させることを特徴とする。
【0007】
本開示に係る電池の製造方法によると、清掃工程では、スパッタ等の異物が回転ブラシによって清掃対象から除去されると共に、通気孔を通じてブラシ基部の内部空間に気体が吸引される。従って、ブラシ毛の間に挟み込まれた異物が、通気孔を通じてブラシ基部の内部空間に回収される。よって、ブラシ毛の間に残存する異物の量が減少する。回転ブラシによって清掃工程中に拡散される異物の量も減少する。さらに、異物の一部が、吸引によって回収されずにブラシ毛の間に残存してしまった場合でも、残存している異物は、噴射工程によってブラシ毛から除去され易い。従って、ブラシ毛に残存する異物の量が適切に減少する。その結果、電池の内部に異物が混入する可能性が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】気体の流れを説明するための、清掃装置1の一部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、各図における寸法関係は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0010】
まず、
図1および
図2を参照して、本実施形態に係る電池の製造方法で使用される清掃装置1の一例について説明する。本実施形態の清掃装置1は、溶接の対象たる電池(具体的には電池ケースの外表面)および治具5の少なくともいずれか(本実施形態では両方)を清掃対象とし、清掃対象に付着した異物を除去して清掃する。清掃装置1は、回転ブラシ10、主集塵部30、および吸引噴射制御部40A,40Bを備える。回転ブラシ10は、回転しながら清掃対象に接触することで、清掃対象に付着した異物を除去する。主集塵部30は、主に、回転ブラシ10によって清掃対象から除去された細かい異物を集塵する。吸引噴射制御部40A,40Bは、回転ブラシ10からの気体の吸引および噴射を制御する。
【0011】
回転ブラシ10について説明する。
図2に示すように、回転ブラシ10は、ブラシ基部11およびブラシ毛15を備える。ブラシ基部11は、中空の内部空間Sを形成すると共に、外周面12に複数のブラシ毛15を備える。本実施形態のブラシ基部11は略円筒状に形成されている。つまり、本実施形態のブラシ基部11には、軸方向に貫通する貫通孔13が形成されている。略円筒状であるブラシ基部11の軸は、回転ブラシ10の回転軸AXに一致する。
【0012】
ブラシ基部11には複数の通気孔13が形成されている。通気孔13は、ブラシ基部11の外周面12のうち、ブラシ毛15が設置された領域の間(つまり、ブラシ毛15が植毛されていない領域)から、ブラシ基部11を内部空間Sまで貫通する。従って、気体および異物は、通気孔13を通じて、ブラシ基部11の外部と内部空間Sの間を移動する。なお、本実施形態の通気孔13の形状は円形であるが、通気孔13の形状を他の形状(例えば、直線のスリット状、またはスパイラルのスリット状等)に変更することも可能である。ブラシ基部11は、内部空間Sにおける気体の圧力変動に耐えるように、剛性を有する材質(例えば、金属または樹脂材料等)によって形成される。
【0013】
ブラシ基部11を軸方向に貫通する貫通孔13の両端の各々には、ブラシ基部11との間に隙間が生じないように中空シャフト17が装着される。中空シャフト17は筒状(本実施形態では円筒状)である。中空シャフト17の内部には、軸方向に貫通する貫通孔18が形成されている。気体および異物は、中空シャフト17の貫通孔18を通じて、ブラシ基部11の内部空間Sと吸引噴射制御部40A,40B(
図1参照)の間を移動する。
【0014】
なお、回転ブラシ10の構成を変更することも可能である。まず、ブラシ基部11の形状は略円筒状に限定されない。例えばブラシ基部11は中空の球状に形成されてもよいし、ブラシ基部11の外形が角柱状等に形成されていてもよい。また、詳細は後述するが、本実施形態では、2つの吸引噴射制御部40A,40B(
図1参照)の各々が、ブラシ基部11の貫通孔13の両端に接続される。従って、吸引噴射制御部が1つである場合に比べて、通気孔13から気体を吸引または噴射する際の圧力が高くなる。しかし、吸引噴射制御部は1つであってもよい。この場合、ブラシ基部11の形状は、例えば有底筒状等であってもよい。
【0015】
図1に示すように、回転ブラシ10の軸方向両端の各々に装着された2つの中空シャフト17は、ブラケット20によって、軸を中心として回転可能に支持される。回転ブラシ10は、モータ21が駆動されることで、回転軸AXを中心として回転する。
【0016】
主集塵部30について説明する。主集塵部30は、エアブローノズル31,32、集塵カバー33、集塵ダクト34、集塵用送風機35、および集塵機36を備える。エアブローノズル31は、清掃対象(
図1に示す例では治具5)に気体を送ることで、清掃対象から異物を除去する。エアブローノズル32は、回転ブラシ10に気体を送ることで、回転ブラシ10から異物を除去する。集塵カバー33は、清掃対象および回転ブラシ10等の周囲を覆うことで、異物が周囲に飛散することを抑制する。なお、
図1では、回転ブラシ10および集塵カバー33等の配置関係の理解を容易にするために、集塵カバー33の一部の図示を省略し、省略した部分の外形のみを破線で示している。集塵ダクト34は、集塵カバー33の下部に設けられており、異物を含む気体を集塵機36に排気する。集塵用送風機35は、ホース37によって集塵ダクト34に接続されると共に、ホース38によって集塵機36に接続される。集塵用送風機35は、異物を含む気体を、ホース37およびホース38を通じて集塵ダクト34から集塵機36へ送る。集塵機36は、ホース38を通じて送られた気体から異物を除去する。
【0017】
吸引噴射制御部40A,40Bについて説明する。なお、本実施形態の清掃装置1は2つの吸引噴射制御部40A,40Bを備えるが、2つの吸引噴射制御部40A,40Bの各々には同一の構成を採用できる。従って、以下では、2つの吸引噴射制御部40A,40Bについてまとめて説明を行う。吸引噴射制御部40A,40Bは、吸引圧発生源41A,41B、噴射圧発生源42A,42B、および電磁弁43A,43Bを備える。吸引圧発生源41A,41Bと電磁弁43A,43Bは、ホース45A,45Bによって接続されている。噴射圧発生源42A,42Bと電磁弁43A,43Bは、ホース46A,46Bによって接続されている。電磁弁43A,43Bと、回転ブラシ10に装着された中空シャフト17は、ホース47A,47Bによって接続されている。
【0018】
吸引圧発生源41A,41Bは、ホース45A,45B,電磁弁43A,43B,ホース47A,47B,および中空シャフト17を通じて、回転ブラシ10の内部空間S(
図2参照)に吸引圧を発生させる。吸引圧発生源41A,41Bには、吸引圧を発生させる種々の機器(例えば、送風機または真空ポンプ等)を使用できる。
【0019】
噴射圧発生源42A,42Bは、ホース46A,46B、電磁弁43A,43B,ホース47A,47B,および中空シャフト17を通じて、回転ブラシ10の内部空間S(
図2参照)に圧縮気体を送り込む。噴射圧発生源42A,42Bには、圧縮空気を発生させる種々の機器(例えばエアコンプレッサ等)を使用できる。
【0020】
電磁弁43A,43Bは、ホース45A,45Bおよびホース46A,46Bのうち、ホース47A,47Bに接続するホースを切り替える。その結果、回転ブラシ10の外部から内部空間Sへの気体の吸引(以下、単に「吸引」という)と、回転ブラシ10の通気孔14からの気体の噴射(以下、単に「噴射」という)が切り替えられる。
【0021】
また、清掃装置1は制御部を備える。制御部は、各種制御を司るコントローラ(例えばCPU)と、プログラムおよびデータを記憶する記憶装置を備える。コントローラは、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで、モータ21、吸引圧発生源41A,41B、噴射圧発生源42A,42B、および電磁弁43A,43B等の各種機器の動作を制御する。
【0022】
図3を参照して、吸引中および噴射中の各々における気体の流れについて説明する。
図3では、気体の流れの理解を容易にするために、正面から見た清掃装置1の一部を模式的に示している。
図3における回転ブラシ10は、回転軸を通過する断面における断面図である。また、
図3では、吸引中の気体の流れを太い点線Aで示し、噴射中の気体の流れを太い実線Jで示す。
【0023】
電磁弁43A,43Bによってホース45A,45Bがホース47A,47Bに接続された状態で、吸引圧発生源41A,41Bが駆動すると、回転ブラシ10による気体(異物を含む)の吸引が行われる。吸引中には、回転ブラシ10の外部の気体が、通気孔14、内部空間S、中空シャフト17、ホース47A,47B、およびホース45A,45Bを経て、吸引圧発生源41A,41Bに吸引される。なお、吸引圧発生源41A,41Bによって吸引された気体は、集塵機(例えば、主集塵部30の集塵機36等)に送り込まれる。
【0024】
また、電磁弁43A,43Bによってホース46A,46Bがホース47A,47Bに接続された状態で、噴射圧発生源42A,42Bが駆動すると、回転ブラシ10の通気孔14からの気体の噴射が行われる。噴射中には、圧縮気体が噴射圧発生源42A,42B、ホース46A,46B、ホース47A,47B、中空シャフト17、および回転ブラシ10の内部空間Sを経て、回転ブラシ10の通気孔14から外部に気体が噴射される。
【0025】
本実施形態に係る電池の製造方法について説明する。本実施形態の電池の製造方法は、(a)治具組付け工程、(b)溶接工程、(c)清掃工程、および(d)噴射工程を含む。
なお、(a)治具組付け工程よりも前の段階において、製造対象である電池(例えば密閉構造のリチウムイオン二次電池)の発電要素の主体たる正極および負極を備える電極体を予め用意しておくのであるが、かかる電極体の構成自体は、従来のものと同様でよく、本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。以下の説明は、電極体をケース本体に収容し、該ケース本体の開口部に蓋体が装着された状態の電池組立体を用意した後の製造プロセスについて説明する。
【0026】
(a)治具組付け工程では、電池ケースを構成するケース本体と蓋体が、互いに溶接されていない状態で治具5にセットされる。ケース本体は、開口部を有する有底箱状であり、内部に発電要素(正負極を備える電極体、電解質、等)を収容する。蓋体は、ケース本体の開口部を塞ぐ。なお、本実施形態の組付け工程では、開口部が下方を向いた状態で、ケース本体が治具5まで搬送される。従って、搬送の過程でケース本体の内部に異物が混入する可能性が低下する。
【0027】
(b)溶接工程では、ケース本体と蓋体が治具5にセットされた状態で、ケース本体と蓋体が溶接される。具体的には、ケース本体の開口部に蓋体を装着後、当該開口部周縁を溶接する。その結果、内部に電極体を密閉した電池が形成される。溶接には、種々の溶接(例えば、レーザ溶接、アーク溶接、ガス溶接等)のいずれかを採用すればよい。溶接工程が終了すると、電池ケースおよび治具5の少なくともいずれか(本実施形態では両方)が清掃装置1に搬送される。
【0028】
(c)清掃工程では、回転ブラシ10を回転させながら、回転ブラシ10のブラシ毛15と清掃対象が接触される。その結果、清掃対象に付着している異物(例えば、溶接によって生じたスパッタ等)が、清掃対象から除去される。
【0029】
ここで、回転ブラシ10によって清掃対象の清掃を行うと、ブラシ毛15の間に異物が挟み込まれる場合がある。ブラシ毛15の間に挟み込まれた異物は、清掃対象に移動してしまう可能性がある。また、本実施形態では、回転ブラシ10を清掃対象の下側に配置した状態で、清掃対象が清掃される。従って、異物は清掃対象から落下してブラシ毛15の間に入り易い。また、本実施形態では、回転ブラシ10による清掃によって清掃対象が摩耗することを抑制するために、ブラシ毛15の材質にナイロンを使用している。従って、清掃中に静電気が発生し、金属であるスパッタがブラシ毛15に付着し易い。
【0030】
従って、本実施形態における清掃工程では、回転ブラシ10による清掃対象の清掃中に、回転ブラシ10の外部の気体が通気孔14を通じてブラシ基部11の内部空間Sに吸引される。従って、ブラシ毛15の間に挟み込まれた異物が、気体と共にブラシ基部11の内部空間に回収される。よって、ブラシ毛15の間に残存する異物の量が減少する。
【0031】
なお、本実施形態における清掃工程では、回転ブラシ10による清掃中に、常に吸引が実行される。従って、ブラシ毛15の間に残存する異物の量がさらに減少する。しかし、吸引は、清掃中の一部(例えば、一定時間毎、または、作業者の指示が清掃装置1に入力された場合等)に実行されてもよい。
【0032】
(d)噴射工程では、清掃工程が実行されていない間に、ブラシ基部11の内部空間Sから通気孔14を通じて外部に気体が噴射される。従って、清掃工程中の吸引によって異物の一部が回収されずに、ブラシ毛15の間に残存してしまった場合でも、残存している異物は、通気孔14から噴射される気体によって除去され易い。よって、ブラシ毛15の間に残存する異物の量が、さらに減少する。
【0033】
また、本実施形態の噴射工程では、通気孔14からの気体の噴射中の少なくとも一部で(本実施形態では、気体の噴射中に常に)、回転ブラシ10が回転される。その結果、ブラシ毛15に残存している異物には、通気孔14から噴射される気体の力に加えて、回転による遠心力も作用する。従って、ブラシ毛15の間に残存する異物の量が、さらに減少する。また、本実施形態の噴射工程では、エアブローノズル32によって、気体が回転ブラシ10に送られる。よって、異物はさらにブラシ毛15から除去され易くなる。
【0034】
本実施形態では、(c)清掃工程および(d)噴射工程は、清掃装置1によって自動的に実行される。詳細には、清掃装置1のコントローラは、清掃対象が清掃位置に搬送されたと判断すると、モータ21の駆動を制御して回転ブラシ10を回転させた状態で、回転ブラシ10を清掃対象に接触させる。コントローラは、回転ブラシ10による清掃中に、吸引圧発生源41A,41Bおよび電磁弁43A,43Bの駆動を制御して、通気孔14を通じて内部空間Sに気体を吸引させる。また、コントローラは、清掃工程が実行されていない時間帯が検出されている間に、噴射圧発生源42A,42Bおよび電磁弁43A,43Bの駆動を制御して、内部空間Sから通気孔14を通じて外部に気体を噴射させる。清掃工程が実行されていない時間帯をコントローラが検出する方法は、適宜選択できる。例えば、コントローラは、噴射工程中に飛散する異物が到達しない位置まで清掃対象を搬送するために要する時間(以下、「搬送時間」という)の情報を保持していてもよい。コントローラは、前回の清掃工程が終了した以後の経過時間が搬送時間よりも長くなった場合に、清掃工程終了したと判断してもよい。
【0035】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、(c)清掃工程および(d)噴射工程の少なくとも一部が、作業者によって手動で行われてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 清掃装置
5 治具
10 回転ブラシ
11 ブラシ基部
12 外周面
14 通気孔
15 ブラシ毛
41A,41B 吸引圧発生源
42A,42B 噴射圧発生源