(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/586 20210101AFI20221215BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20221215BHJP
H01M 50/528 20210101ALI20221215BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20221215BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20221215BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20221215BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20221215BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20221215BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20221215BHJP
H01M 4/13 20100101ALN20221215BHJP
【FI】
H01M50/586
H01M50/591 101
H01M50/528
H01M50/533
H01M50/534
H01M50/103
H01M50/15
H01M4/04 A
H01M10/04 W
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2019186940
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】原 哲男
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-227113(JP,A)
【文献】国際公開第2014/162437(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケースと、
正極および負極がセパレータで絶縁されて積層されてなる電極体と、
前記電池ケースと前記電極体とに接続されている集電部材と、
を備え、
前記正極は、
活物質層形成領域と、前記活物質層形成領域に隣接する絶縁層形成領域と、前記絶縁層形成領域に隣接する集電領域とを備える正極集電体と、
前記活物質層形成領域の表面に備えられ正極活物質を含む正極活物質層と、
前記絶縁層形成領域の表面に備えられた絶縁層と、
を備え、
前記集電部材は、
第一部分と、前記第一部分と連続しかつ前記第一部分に対して屈曲されている第二部分とを備え、
前記第一部分は、前記電池ケースに固定されており、
前記第二部分は、前記屈曲された部分とは反対側の端部において前記集電領域に接続されており、
前記屈曲された部分において、前記第一部分と前記第二部分とに接続されるリブをさらに備えて
おり、
前記第二部分に沿った前記リブの長さは、前記第一部分と前記電極体の間隔よりも小さい長さである、二次電池。
【請求項2】
前記リブは、前記第一部分および前記第二部分の表面のうち前記電極体に対向する側の表面に接続されている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記集電部材は、前記第一部分と前記第二部分と前記リブとが連続かつ一体的に構成されており、板状金属の曲げ加工品およびプレス加工品の少なくとも一方である、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記電池ケースは、開口を有するケース本体と前記開口を蓋する蓋部材とを備える角型電池ケースであって、
前記第一部分は前記蓋部材の内表面に接続され、
前記第二部分は前記開口を取り囲む前記ケース本体のいずれか一つの面に沿って屈曲されており、
前記第一部分から前記端部の最端部までの距離L
Cと、前記リブの前記距離L
Cに沿う方向の寸法である長さL
Rとは、次の関係:L
R≧0.1×L
C;を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記電池ケースは、開口を有するケース本体と前記開口を蓋する蓋部材とを備える角型電池ケースであって、
前記第一部分は前記蓋部材の内表面に接続され、
前記第二部分は前記開口を取り囲む前記ケース本体のいずれか一つの面に沿って屈曲されており、
前記第二部分の前記一つの面に直交する方向の寸法である厚みT
Cと、前記リブの前記一つの面に平行な方向の寸法である厚みT
Rとは、次の関係:T
R≧0.4×1/T
C;を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記電池ケースは、開口を有するケース本体と前記開口を蓋する蓋部材とを備える角型電池ケースであって、
前記第一部分は前記蓋部材の内表面に接続され、
前記第二部分は前記開口を取り囲む前記ケース本体のいずれか一つの面に沿って屈曲されており、
前記第二部分の前記一つの面に直交する方向の寸法である厚みT
Cと、前記リブの前記厚みT
Cに沿う方向の寸法である幅W
Rとは、次の関係:W
R≧0.25×1/T
C;を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記電極体は、長尺な前記正極、前記負極、および前記セパレータが積層されて捲回されてなる捲回型電極体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池等の二次電池は、パソコンおよび携帯端末等のいわゆるポータブル電源の他、車両駆動用電源として好ましく用いられている。二次電池の一例として、正極および負極をセパレータで絶縁した構成の電極体を電池ケースに収容した電池が知られている。電極体を構成する電極は、集電箔の表面に活物質を含む活物質層が備えられている。ここで、低電位側である負極活物質層の電荷担体の受け入れ性を高めるために、負極活物質層は正極活物質層よりも広い面積となるように設計されている。
【0003】
このとき、正極活物質層からはみ出た負極活物質層は変形自由度が高く、負極活物質層の端部の角部がセパレータを破損し、正極集電箔のうちの正極活物質が備えられていない非塗工部と短絡することが懸念される。例えば特許文献1には、このような短絡を抑制するため、正極集電箔のうち正極活物質層に隣接する領域で負極活物質層と対向する部分に、絶縁層を備える構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/162437号公報
【文献】特開2009-026705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際に使用されている二次電池を観察すると、正極活物質層に隣接して設けた絶縁層に亀裂や剥離が生じる場合があることが判明した。また、絶縁層の亀裂が多い電池ほど、絶縁層が剥離しやすい傾向にあることが明らかとなった。絶縁層の剥離は、上記の負極活物質層と正極集電箔との絶縁性が低下するという点において改善が望まれる。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、正極活物質層に沿って設けられた絶縁層の亀裂や剥離の発生が抑制された二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの検討によると、正極集電体に設けた絶縁層の亀裂や剥離は、電池の振動による影響が大きいことを知見した。すなわち、二次電池の典型的な一例では、電極体は、正極側集電部と負極側集電部とを、蓋部材に取り付けられた金属製の正負の集電部材にそれぞれ接合(例えば溶接)することで、電池ケース内での位置が定められている。しかしながら、電極体は集電部材との溶接部のみが固定されており、その他の部位は電池ケース内で移動または変形し得る。そして電極体は、正極活物質層と負極活物質層とが重なり合う部分の厚みがもっと厚く、当該部分と比較して、正極活物質層がない集電部分はその分だけ拘束されずに変形の自由度が高い。そのため、電池が振動すると、電極体と集電部材の先端との揺れにずれが生じ、電極体のうち変形自由度の高い集電部に設けられた絶縁層に負荷が集中して絶縁層の亀裂や剥離を誘起していたと考えられる。
【0007】
そこで上記課題を解決するものとして、ここに開示される二次電池は、電池ケースと、正極および負極がセパレータで絶縁されて積層されてなる電極体と、前記電池ケースと前記電極体とに接続されている集電部材と、を備える。前記正極は、活物質層形成領域と、前記活物質層形成領域に隣接する絶縁層形成領域と、前記絶縁層形成領域に隣接する集電領域とを備える正極集電体と、前記活物質層形成領域の表面に備えられ正極活物質を含む正極活物質層と、前記絶縁層形成領域の表面に備えられた絶縁層と、を備える。また、前記集電部材は、第一部分と、前記第一部分と連続しかつ前記第一部分に対して屈曲されている第二部分とを備え、前記第一部分は、前記電池ケースに固定されており、前記第二部分は、前記屈曲された部分とは反対側の端部において前記集電領域に接続されている。そして、前記屈曲された部分において、前記第一部分と前記第二部分とに接続されるリブをさらに備えている。
【0008】
上記構成によると、集電部材の第一部分と第二部分とにリブが架け渡されている。これにより、第一部分と第二部分は、互いに為す角が小さくなる方向および大きくなる方向に変形することが抑制される。このことにより、二次電池が振動を受けたときに、ケースに固定される第一部分の揺れに対して、電極体に固定される第二部分の揺れのずれが抑制され、揺れの差が集約される絶縁層での亀裂や剥離の発生を低減できる。このような集電部材は、絶縁層の亀裂や剥離の発生を効果的に低減できるとの観点から、絶縁層が設けられた正極集電体と接合される正極集電部材に適用されていることが好ましい。また、このような集電部材は、電極体をより安定的に支持して絶縁層の亀裂や剥離の発生をさらに低減できるとの観点から、正極集電部材と負極集電部材の両方に適用されていることが好ましい。
なお、集電部材の第一部分および第二部分の揺れの差は、集電部材の剛性を高めること、例えば硬質材料にて作製することや部材の厚みを厚くすること等でも低減できる。しかしながら、一般的な集電部材の構成材料(典型的にはAlまたはAl合金もしくはCuまたはCu合金)よりも剛性(例えば、縦弾性係数)の高い材料は、電気抵抗が高くなる点において望ましくない。また、集電部材の厚みを厚くすることは、コストの観点から好ましくないといえる。
【0009】
なお、特許文献2は、電極体と集電部材との溶接時の押圧力によって集電端子が変形して集電体を傷つけることを抑制するために、集電体に接合される集電部材の接合面を含む平坦部を屈曲させることについて開示している。このような構成によると、集電部材の接合面の剛性は高まるものの、絶縁層の剥離については抑制できない。この点において、本願発明は特許文献2の開示と、構成および技術思想が明瞭に区別される。
【0010】
ここに開示される技術の好適な一態様では、前記リブは、前記第一部分および前記第二部分の表面のうち前記電極体に対向する側の表面に接続されている。このことにより、電池ケースに対する集電体の揺れの差を効果的に抑制することができる。
【0011】
ここに開示される技術の好適な一態様では、前記集電部材は、前記第一部分と前記第二部分と前記リブとが連続かつ一体的に構成されており、板状金属の曲げ加工品およびプレス加工品の少なくとも一方である。このことにより、高強度なリブを構築することができる。また、コストかつ効率的にリブを備えられる点においても好ましい。
【0012】
ここに開示される技術の好適な一態様では、前記電池ケースは、開口を有するケース本体と前記開口を蓋する蓋部材とを備える角型電池ケースであって、前記第一部分は前記蓋部材の内表面に接続され、前記第二部分は前記開口を取り囲む前記ケース本体のいずれか一つの面に沿って屈曲されている。そして、前記第一部分から前記端部の最端部までの距離LCと、前記リブの前記距離LCに沿う方向の寸法である長さLRとは、次の関係:LR≧0.1×LC;を満たす。上記構成によると、集電部材の先端部の揺れを効果的に抑制できるリブを構成することができる。
【0013】
ここに開示される技術の好適な一態様では、前記電池ケースは、開口を有するケース本体と前記開口を蓋する蓋部材とを備える角型電池ケースであって、前記第一部分は前記蓋部材の内表面に接続され、前記第二部分は前記開口を取り囲む前記ケース本体のいずれか一つの面に沿って屈曲されている。そして前記第二部分の前記一つの面に直交する方向の寸法である厚みTCと、前記リブの前記一つの面に平行な方向の寸法である厚みTRとは、次の関係:TR≧0.4×1/TC;を満たす。このような構成によっても、二次電池が振動を受けた際の集電部材のたわみを効果的に抑制することができる。
【0014】
ここに開示される技術の好適な一態様では、前記電池ケースは、開口を有するケース本体と前記開口を蓋する蓋部材とを備える角型電池ケースであって、前記第一部分は前記蓋部材の内表面に接続され、前記第二部分は前記開口を取り囲む前記ケース本体のいずれか一つの面に沿って屈曲されている。そして、前記第二部分の前記一つの面に直交する方向の寸法である厚みTCと、前記リブの前記厚みTCに沿う方向の寸法である幅WRとは、次の関係:WR≧0.25×1/TC;を満たす。これにより、二次電池が振動を受けた際の集電部材のたわみを効果的に抑制することができる。
【0015】
ここに開示される技術の好適な一態様では、前記電極体は、長尺な前記正極、前記負極、および前記セパレータが積層されて捲回されてなる捲回型電極体である。捲回型電極体は、捲回による湾曲部を備えるため、複数の板状の正極、セパレータ、および負極が積層されてなる枚葉型電極体よりも、集電部材との接合部分における負荷が高い。したがって、ここに開示される構成は、捲回型電極体を備える二次電池に適用することで、その効果が明瞭に表れるために有益である。
【0016】
以上の二次電池は、例えば振動が加わるような環境で使用されたときにその有利な効果が顕著に現れ得る。また、負極活物質層と正極集電体との短絡は、電極体の厚みが大きく負極活物質層の端部に曲げの力が加わりやすい電池、換言すれば高容量の電池について、問題が生じやすく、また、確実な短絡抑制の対策が求められる。また微少短絡に起因する電池温度上昇の抑制は、高い安全性が要求される用途の二次電池においてとりわけ対策が望まれる。かかる観点から、ここに開示される二次電池は、車両の駆動用電源(主電源)、中でも例えばハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、電気自動車等の駆動用電源等として特に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る二次電池の構成を模式的に示す切欠き斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る二次電池の要部側面図である。
【
図3】一実施形態に係る集電部材の(A)側面図およびその(B)B-B断面図である。
【
図4】一実施形態に係る捲回型電極体の構成を説明する部分展開図である。
【
図5】一実施形態に係る電極体の構成を説明する断面模式図である。
【
図6】(a)~(c)は、他の実施形態に係る集電部材の構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、ここに開示される二次電池の一実施形態について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、絶縁層および集電部材の構成等)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本技術を特徴付けない二次電池の構造等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、下記に示す図面における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。そして本明細書において数値範囲を示す「A~B」との表記は、「A以上B以下」を意味する。
【0019】
本明細書において「二次電池」とは繰り返し充放電可能な蓄電デバイス一般をいい、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン二次電池、リチウムポリマー電池等のいわゆる蓄電池、ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、「非水電解質二次電池」とは、電荷担体として非水系の電解質を用いて充放電を実現する二次電池であり、電解質は固体電解質、ゲル状電解質、および非水電解質のいずれであってもよい。また、「活物質」とは、二次電池において電荷担体となる化学種を可逆的に吸蔵および放出し得る物質をいう。以下、非水電解質二次電池がリチウムイオン二次電池である場合を例にして、本技術について説明する。
【0020】
図1は一実施形態に係るリチウムイオン電池(以下、単に「二次電池」等という。)1の構成を示す切欠き斜視図であり、
図2はその要部側面図である。
図3(A)は集電端子の構成を示す側面図であり、
図3(B)はそのB-B断面図である。
図4は捲回型電極体20の構成を説明する部分展開図であり、
図5はその断面図である。図中のWは、電池ケース10および捲回型電極体20の幅方向を示し、捲回型電極体20の捲回軸WLの方向に一致している。Hは電池ケース10の高さ方向である。また、捲回軸WLと電池ケース10の高さ方向に直交する方向を、電池ケース10および捲回型電極体20の厚み方向と言う場合がある。しかしながら、これらの方向は、二次電池の設置態様を何ら限定するものではない。
【0021】
このリチウムイオン二次電池1は、正極30と負極40とセパレータ50とを含む捲回型電極体20が図示しない非水電解液とともに電池ケース10に収容されることで構成されている。捲回型電極体20は、セパレータ50と負極40とセパレータ50と正極30とをこの順に積層にし、捲回軸WLを中心に断面長円形に捲回した形状を有している。電極体20は、後述する集電体32,42の集電領域32c,42cが幅方向の両端に突出している。電極体20は、集電領域32c,42cにおいて集電部材38,48に接続され、電池ケース10に固定されている。
【0022】
正極30は、典型的には、正極集電体32と、その両面に形成された多孔質の正極活物質層34とを備え、正極活物質層34に隣接するように絶縁層36を備えている。正極集電体32は、正極活物質層34の支持部材であり、正極活物質層34から電荷を取り出すための導電部材であり得る。正極集電体32には、例えば、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)箔等の金属箔が好適に使用される。正極集電体32は、活物質層形成領域32aと、絶縁層形成領域32bと、集電領域32cとを備える。活物質層形成領域32aは正極集電体32の殆どの部分を占め、絶縁層形成領域32bは活物質層形成領域32aに隣接し、集電領域32cは絶縁層形成領域に隣接している。本例の正極集電体32は長尺であり、幅方向に、活物質層形成領域32a、絶縁層形成領域32b、集電領域32cの順に区画されている。一例として、絶縁層形成領域32bの幅方向の寸法は2.7~6mm程度であり、集電領域32cの幅方向の寸法は8.5~12.5mm程度である。正極活物質層34は活物質層形成領域32aの表面に帯状に形成されている。絶縁層36は絶縁層形成領域32bの表面に帯状に形成されている。集電領域32cでは集電体が露出されている。
【0023】
正極活物質層34は、粒状の正極活物質を含有する。正極活物質層34は、正極活物質がバインダにより互いに結着され、活物質層形成領域32aに結合されている。正極活物質層34の細孔には非水電解液が含浸されている。正極活物質としては、例えば、リチウムイオンの可逆的な吸蔵・放出が可能な、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等)、リチウムニッケル複合酸化物(例、LiNiO2等)、リチウムコバルト複合酸化物(例、LiCoO2等)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(例、LiNi0.5Mn1.5O4等)などのリチウム遷移金属複合酸化物の一種または二種以上の組合せが用いられる。正極活物質層34は、正極活物質の他に、アセチレンブラック(AB)等の導電材や、これらを結着するための、アクリル系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)等のバインダ、その他の添加材を含有し得る。
【0024】
正極活物質層34のプレス後の厚み(平均厚みである。以下同じ。)は、典型的には10μm以上、例えば15μm以上であって、典型的には50μm以下、30μm以下、例えば25μm以下とすることができる。また、正極活物質層34の密度は特に限定されないが、典型的には1.5g/cm3以上、例えば2g/cm3以上であって、3g/cm3以下、例えば2.5g/cm3以下とすることができる。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特にことわりのない限り、レーザ回折散乱法によって得られる体積基準の粒度分布における累積50%粒子径(D50)である。
【0025】
絶縁層36は電気絶縁性を備え、例えば、セパレータ50が破損したり、セパレータ50が溶解・収縮等した場合であっても、負極活物質層44の端部と正極集電体32との短絡を防止できるように構成されている。絶縁層36は、無機フィラーがバインダによって互いに結着され、絶縁層形成領域32bに結合されて構成される。絶縁層36は、電荷担体の通過を可能とする多孔質な層であってよい。絶縁層36は、正極活物質層34に隣接する領域であって、少なくとも負極活物質層44と対向する領域に設けられている。絶縁層36は幅方向で負極活物質層44よりも寸法αだけ外側に突出していてもよい。寸法αは、負極活物質層44に位置ズレが生じた場合であっても、負極活物質層44と正極集電体32とがセパレータ50のみを介して対向する事態を回避するよう、負極活物質層44の端部を絶縁層36が十分にカバーし得る寸法に設計されている。寸法αは、集電体32(集電領域32c)の集箔不良を避けるために、絶縁層36が幅方向でセパレータ50の端部からはみ出さない程度の寸法に設計されているとよい。
【0026】
このような絶縁層36を構成する無機フィラーとしては、例えば、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)等の無機酸化物、マイカ、タルク、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン等の粘土鉱物、ガラス材料等が挙げられる。なかでも、品質が安定しているうえに安価で入手が容易なベーマイト(Al2O3・H2O)、アルミナ(Al2O3)等を用いるのが好ましい。なお、括弧内の分子式は代表組成であり、必ずしものこの組成に限定されない。これらはいずれか1種を単独で含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでもよい。絶縁層36に含まれるバインダとしては、例えば上記正極活物質層に用いることができる各種のバインダを好ましく用いることができる。絶縁層36に含まれるバインダの割合は、例えば、典型的には1質量%以上であり、5質量%以上が好ましく、8質量%以上や10質量%以上などであってよい。絶縁層36に含まれるバインダは、例えば、典型的には30質量%以下であり、25質量%以下であってよく、20質量%以下や、18質量%以下、15質量%以下であってよい。代表的な一例として、5~20質量%で適宜調整するとよい。絶縁層36の厚みは、典型的には20μm以下、例えば18μm以下、15μm以下、10μm以下(例えば10μm未満)等であってよく、8μm以下、例えば6μm以下、5μm以下としてもよい。絶縁層36の厚みは、典型的には3μm以上であるとよい。なお、このような絶縁層36は、目付量がおおよそ0.5mg/cm2以上、0.7mg/cm2以上、1mg/cm2以上などであるとよく、1.5mg/cm2以下、1.3mg/cm2以下、1.2mg/cm2以下などであるとよい。
【0027】
負極40は、典型的には、負極集電体42と、その両面に形成された多孔質の負極活物質層44とを備え得る。具体的には、負極集電体42は、活物質層形成領域42aと、集電領域42cとを備える。活物質層形成領域42aは負極集電体42の殆どの部分を占め、集電領域42cは活物質層形成領域42aに隣接している。本例の負極集電体42は長尺であり、幅方向に、活物質層形成領域42aと集電領域42cとに区画されている。一例として、集電領域42cの幅方向の寸法は8~12mm程度である。負極活物質層44は活物質層形成領域42aの表面に帯状に形成されている。集電領域32cでは集電体が露出されている。負極活物質層44の細孔には非水電解液が含浸されている。負極集電体42には、例えば、銅箔等の金属箔が好適に使用される。
【0028】
負極活物質層44は、粒状の負極活物質を含有する。負極活物質としては、例えば、リチウムイオンの可逆的な吸蔵・放出が可能な、グラファイトカーボン、アモルファスカーボンなどの炭素系材料、シリコン、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属窒化物等の一種または二種以上の組合せが用いられる。負極活物質層44は、負極活物質の他に、これらを結着するための、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)等のバインダや、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘剤を含有し得る。負極活物質層44のプレス後の厚み(片面の平均厚みである。以下同じ。)は、例えば20μm以上、典型的には40μm以上であって、例えば高容量化の観点からは50μm以上であるとよい。負極活物質層44の平均厚みは、例えば100μm以下、典型的には80μm以下、例えば65μm以下であってよい。また、負極活物質層44の密度は特に限定されないが、例えば0.8g/cm3以上、典型的には1.0g/cm3以上であって、1.5g/cm3以下、典型的には1.4g/cm3以下、例えば1.2g/cm3以下とすることができる。
【0029】
セパレータ50は、正極30と負極40とを絶縁するとともに、正極活物質層34と負極活物質層44との間で電荷担体の移動経路を提供する構成要素である。このようなセパレータ50は、上記正極活物質層34と負極活物質層44との間に配置される。このようなセパレータ50は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂からなる微多孔質樹脂シートにより好適に構成することができる。なかでも、PEやPP等のポリオレフィン樹脂からなる微多孔質シートは、シャットダウン温度を80℃~140℃(典型的には110℃~140℃、例えば120℃~135℃)の範囲に好適に設定できるために好ましい。かかるセパレータ50は、単一の材料から構成される単層構造であってもよく、材質や性状(例えば、平均厚みや空孔率等)の異なる2種以上の微多孔質樹脂シートが積層された構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ50の厚み(平均厚みである。以下同じ。)は特に限定されないが、通常、10μm以上、典型的には15μm以上、例えば17μm以上とすることができる。また、上限については、40μm以下、典型的には30μm以下、例えば25μm以下とすることができる。基材の平均厚みが上記範囲内にあることで、電荷担体の透過性を良好に保つことができ、かつ、微小な短絡(漏れ電流)がより生じ難くなる。このため、入出力密度と安全性とを高いレベルで両立することができる。
【0030】
なお、電極体20において、正極活物質層34の幅W1と、負極活物質層44の幅W2と、セパレータの幅W3とは、W1<W2<W3の関係を満たす。また、負極活物質層44は幅方向の両端で正極活物質層34を覆い、セパレータ50は幅方向の両端で負極活物質層44を覆う。また、絶縁層36は、正極活物質層34に隣接しつつ、少なくとも負極活物質層44の端部と対向する領域の正極集電体32を覆う。ただし、ここに開示されるリチウムイオン二次電池1の電極体20は、捲回型電極体に制限されず、例えば、複数枚の正極30と負極40とがそれぞれセパレータ50で絶縁されて積層された形態の、いわゆる平板積層型の電極体20であってもよい。
【0031】
非水電解液は、非水溶媒と電解質支持塩とを含んでいる。非水溶媒および電解質支持塩の種類は特に限定されず、従来の二次電池の電解液に使用されているものと同様であってよい。電解質支持塩の好適例は、例えば、LiPF6、LiBF4等のリチウム塩である。非水溶媒の好適例は、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒である。なかでも、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネート、および、これらのカーボネートがフッ素化されたフッ素化鎖状またはフッ素化環状カーボネートを、1種または2種以上含むことが好ましい。電解液中のリチウム塩の濃度は、例えば0.8~1.3mol/Lとすることができる。非水電解液は、その他、被膜形成剤、過充電防止剤などの添加剤を含むことができる。
【0032】
電池ケース10は、一の面(ここでは上面)に開口を有するケース本体11と、この開口を封口する蓋部材12と、を備える。本例のケース本体11は、底面11cと、底面11cに連続し幅方向に広い一対の広側面11aと、底面11cおよび広側面11aに連続する一つの狭側面11bと、を備える扁平な有底角筒型である。蓋部材12は、広側面11aおよび狭側面11bの上端によって形成される開口を気密に封止できるように構成されている。蓋部材12には、正極外部端子38Tおよび負極外部端子48Tと、注液孔および安全弁が備えられている。電池ケース10は、これに限定されないものの、例えば、鉄、銅、アルミニウム、チタニウムおよびこれらを含む合金(例えば、鋼)などの金属、または高強度樹脂等により好適に構成される。
【0033】
正極外部端子38Tおよび負極外部端子48Tは、蓋部材12とは絶縁されつつ、ケース内部側に設けられる正極集電部材38および負極集電部材48と電気的に接続されている。正極側と負極側の端子構造は概ね同一であるため、以下では、正極側を例にして端子構造および集電部材38,48について説明する。以下の正極集電部材38についての説明は、負極集電部材48についても同様に当てはまる。詳細は省略するが、典型的な二次電池1の端子構造では、
図2に示すように、ケース外側(ここでは上方)から、正極外部端子38T、外部絶縁部材(図示せず)、蓋部材12、内部絶縁部材(図示せず)、および、正極集電部材38がこの順に重ねられ、図示しない孔が同軸に設けられている。そしてこの孔に挿入された金属製のかしめ部材38K(
図6(a)参照)によってこれらは一体的かつ緊密にかしめられている。これにより、各部材は蓋部材12に固定される。ここで、正極集電部材38はかしめ部材38Kによって正極外部端子38Tと電気的に接続されている。外部絶縁部材と内部絶縁部材とは、かしめ部材38Kによって機械的に接続されている。このことにより、正極外部端子38T、正極集電部材38およびかしめ部材38Kは、外部絶縁部材および内部絶縁部材によって、蓋部材12と電気的に絶縁される。なお、かしめ部材38Kは、
図6(a)に示すように、予め集電部材38の第一部分38aの上面に一体的に設けられていてもよい。かしめ部材38Kはかしめに供されることで、第一部分38aの上面からの突出量が低減される(
図1等参照)。
【0034】
正極集電部材38は、第一部分38aと、第二部分38bとを備えている。第一部分38aおよび第二部分38bは、概ね板状である。正極集電部材38は、第一部分38aによって、上記のとおり電池ケース10の蓋部材12に固定されている。第二部分38bは、第一部分38aと連続し、かつ、第一部分38aに対して屈曲されている。第一部分38aと第二部分38bとの間は、屈曲部38Lである。本実施形態の正極集電部材38は屈曲部38Lにおいて約90°に折り曲げられている。第二部分38bは、ケース本体11の広側面11aに沿って下向きに延びている。第二部分38bは、所定の長さだけ下方に延びたところで、電池ケース10の内側に向けて略S字に湾曲されている。そしてこの湾曲部38Sよりも下方の端部38eにおいて、第二部分38bは再び広側面11aに沿って下向きに延びている。第二部分38bは、湾曲部38Sよりも下方の平板状の端部38eにおいて、回型電極体20の集電領域32cと接合されている。このような構成によると、正極集電部材38は、第一部分38aと湾曲部38Sとの間に形成される空間に捲回型電極体20の湾曲部Rを配置させることができ、湾曲部Rを潰すことなく捲回型電極体20を支持、固定することができる。なお、正極集電部材38と電極体20の集電領域32cとは、超音波溶接によって好適に接続される。また、負極集電部材48と電極体20の集電領域42cとは、抵抗溶接によって好適に接続される。これにより、二次電池1において、正極外部端子38Tおよび負極外部端子48Tを通じて、電極体20に電気エネルギーを充電したり、電極体20から電気エネルギーを外部回路に取り出したりできる。
【0035】
正極集電部材38は、屈曲部38Lにおいて、第一部分38aと、第二部分38bとに接続されるリブ38cをさらに備えている。リブ38cは、小片状部位である。リブ38cは、
図3(A)に示すように、第一部分38aと、第二部分38bとに渡し架けられている。リブ38cは、第一部分38aと第二部分38bの少なくとも一方、好ましくは両方に対して、直交するように設けられている。本実施形態において、リブ38cは、第一部分38aおよび第二部分38bの表面のうち、電極体20に対向する側の表面に接続されている。このような構成によって、第二部分38bが第一部分38aに対して相対的に揺動するのを好適に抑制することができる。換言すれば、第一部分38aと第二部分38bは、互いに為す角(θ)が小さくなる方向(例えば、θ<90°)および大きくなる方向(例えば、θ>90°)に変形することが抑制される。
【0036】
このようなリブ38cは、これに制限されるものではないが、第一部分38aと、第二部分38bと、リブ38cと、が連続かつ一体的に構成されていることが好ましい。すなわち、正極集電部材38の第一部分38aと、第二部分38bと、リブ38cとは、別部材が接合されて構成されていてもよいが、一の板状金属部材を、曲げ加工およびプレス加工の少なくとも一方で加工して構成するとよい。換言すれば、正極集電部材38は、曲げ加工品およびプレス加工品の少なくとも一方であるとよい。このことにより、第一部分38a、第二部分38b、およびリブ38cに継ぎ目が形成されず、二次電池1に振動が加わったときに継ぎ目への応力集中により継ぎ目が破損するなどの不具合が生じにくいために好ましい。なお、正極集電部材38の第一部分38aと第二部分38bとリブ38cとが曲げ加工および/またはプレス加工で製造されているかどうかは、当業者であれば、これらの境界の金属組織を観察することで確認することができる。
【0037】
以下に、集電部材38,48におけるリブ38c,48cの形状について検討した結果を例示するとともに、好ましいリブ38c,48cの形状について説明する。
図3Aに示すように、集電部材38,48の第二部分38b,48bの長さについて、第一部分38a,48a(のリブ側の表面)から、第二部分38b,48bの端部38e,48eの最端部までの距離を、第二部分38b,48bの長さL
C(距離L
C)とする。すなわち、第二部分38b,48bの長さL
Cは、湾曲部38Sの湾曲長さ等は考慮しない寸法である。また、第二部分38b,48bの厚みについて、第二部分38b,48bの広側面11aに直交する方向の寸法を厚みT
Cとする。リブ38c,48cの長さについては、距離L
Cに沿う方向のリブ38c,48cの寸法をリブ38c,48cの長さL
Rとする。リブ38c,48cの厚みについては、広側面11aに平行な方向の寸法をリブ38c,48cの厚みT
Rとする。リブ38c,48cの幅については、第二部分38b,48bの厚みT
Cに沿う方向の寸法を幅W
Rとする。
【0038】
[リブ長さ]
集電部材のリブの長さLRを5とおりに変化させて、リブを設けない集電部材とともに、下記の条件で振動試験を行い、第二部分の最端部の変位量を測定した。その結果を、リブなしの集電部材について振動試験を行ったときの第二部分の最端部の変位量を「100」とした相対値で示し、下記の表1に示した。そして、変位量の相対値が20以下の場合を振動抑制効果が十分(合格)とし、変位量の相対値が20超過の場合を振動抑制効果が不十分(不合格)とした。
なお、集電部材のリブの厚みTRは、第二部分の厚みTCに対して「0.4/TC」で一定とし、リブの幅WRは、第二部分の厚みTCに対して「0.47/TC」で一定とした。
【0039】
<振動試験条件>
加速度:10G
周波数:25Hz
温度:室温(25℃)
振動方向:リブの幅方向(第二部分の厚み方向)
【0040】
【0041】
表1に示されるように、リブの長さLRは第二部分の長さLCに対して0.1倍以上(LR≧0.1×LC)とすることで、振動を効果的に抑制できることが確認された。具体的には示さないものの、形状および寸法等の規格の異なる集電部材に対して試験した場合も同様の傾向が見られる。リブの長さLRは、LR≧0.12×LCであると好ましく、LR≧0.15×LCや、LR≧0.2×LCがより好ましく、例えば、LR≧0.3×LC、LR≧0.5×LCとしてもよい。リブの長さLRの上限は、電極体20の湾曲部Rとリブとが干渉しない範囲で、許容される電池ケースの寸法を考慮して決定することができる。例えば、リブの長さLRの上限は、1×LCであってよく、例えば0.9×LCや0.8×LC程度とすることが例示される。
【0042】
[リブ厚み]
集電部材のリブの厚みTRを6とおりに変化させて、リブを設けない集電部材とともに、上記と同じ条件で振動試験を行い、第二部分の最端部の変位量を測定した。その結果を、リブなしの集電部材について振動試験を行ったときの第二部分の最端部の変位量を「100」とした相対値で示し、下記の表2に示した。そして、変位量の相対値が20以下の場合を振動抑制効果が十分(合格)とし、変位量の相対値が20超過の場合を振動抑制効果が不十分(不合格)とした。
なお、集電部材のリブの長さLRは、第二部分の長さLCに対して「0.1×LC」で一定とし、リブの幅WRは、第二部分の厚みTCに対して「0.47/TC」で一定とした。
【0043】
【0044】
表2に示されるように、リブの厚みTRは、例えば表2に例示したように、第二部分の厚みTCの逆数(1/TC)に対して、0.4倍以上(TR≧0.4×1/TC)とすることで、振動を効果的に抑制できることが確認された。具体的には示さないものの、形状および寸法等の規格の異なる集電部材に対して試験した場合も概ね同様の傾向が見られる。リブの厚みTRは、TR≧0.45/TCであると好ましく、TR≧0.48/TCがより好ましく、例えばTR≧0.5/TCや、TR≧0.55/TC、TR≧0.6/TC、TR≧0.7/TC、TR≧0.8/TCなどであってよい。リブの厚みTRの上限は、集電部材の加工性や電極体との接続性等を考慮して決定することができる。一例として、リブが厚すぎるとリブを押出成形で形成するのが困難となる。また、リブが厚すぎると電極体と集電部材との接続が困難となり得る。かかる観点から、リブの厚みTRの上限は、例えば、集電部材の幅(長さLCと厚みTCとに直交する方向の寸法)の1/3程度を目安に設定とするとよい。リブの厚みTRは、集電部材の幅の2/7以下や、1/4以下、1/5以下等であってもよい。
【0045】
[リブ幅]
集電部材のリブの幅WRを6とおりに変化させて、リブを設けない集電部材とともに、上記と同じ条件で振動試験を行い、第二部分の最端部の変位量を測定した。その結果を、リブなしの集電部材について振動試験を行ったときの第二部分の最端部の変位量を「100」とした相対値で示し、下記の表2に示した。そして、変位量の相対値が20以下の場合を振動抑制効果が十分(合格)とし、変位量の相対値が20超過の場合を振動抑制効果が不十分(不合格)とした。
なお、集電部材のリブの長さLRは、第二部分の長さLCに対して「0.1×LC」で一定とし、リブの厚みTRは、第二部分の厚みTCに対して「0.4/TC」で一定とした。
【0046】
【0047】
表3に示されるように、リブの幅WRは第二部分の厚みTCの逆数(1/TC)に対して0.25倍以上(WR≧0.25×1/TC)とすることで、振動を効果的に抑制できることが確認された。具体的には示さないものの、形状および寸法等の規格の異なる集電部材に対して試験した場合も同様の傾向が見られる。リブの幅WRは、WR≧0.3/TCであると好ましく、WR≧0.4/TCやWR≧0.5/TCがより好ましく、例えばWR≧0.6/TCや、WR≧0.8/TC、WR≧1/TCであってよい。リブの幅WRの上限は、集電部材の加工性やケース内での収容性等を考慮して決定することができる。一例として、リブの幅WRが広すぎるとリブを押出成形で形成するのが困難となる。また、リブの幅WRが広すぎると、電極体のケース収容時やケース内で、電極体を覆うケースや絶縁フィルム(図示せず)等とリブとが干渉する可能性が生じるため好ましくない。このような観点から、リブの幅WRの上限は、かかる干渉を避け得る寸法とすることができる。リブの幅WRは、例えば、電極体の厚み(捲回軸WLと高さ方向Hとに直交する方向の寸法)の1/2程度とするとよく、1/3以下程度であってよい。また、リブの幅WRは、例えば、第二部分の上記厚み方向(捲回軸WLと高さ方向Hとに直交する方向)の寸法の1/2程度とするとよく、1/3以下程度としてもよい。
【0048】
上記実施形態において、リブ38cは、
図3(A)に示すように、広側面11aに沿う方向から見て長方形の板状体であった。しかしながら、リブ38cの形状はこれに限定されない。例えば、リブ38cは、第一部分38aおよび第二部分38bに接続された部分の端部のうち、屈曲部38Lとは反対側の二つの端部を結ぶラインよりも、屈曲部38Lとは反対側の領域が欠損していてもよい。例えば、リブ38cは、屈曲部38Lと、前記反対側の二つの端部とをそれぞれ繋いでできる三角形であってもよい。また例えば、リブ38cは、第一部分38aおよび第二部分38bに接続されていない角部が面取りされていてもよい。面取りは、上記長方形の一つの角部をR面またはC面に面取りするものであってもよいし、上記反対側の二つの端部を緩やかに繋ぐようにR面化する(つまり、上記長方形上を扇形状にする)ものであってもよい。また、
図3(B)に示す例では、リブ38cは、電池ケースの幅方向の中心から遠くなる側の第二部分38bの端部に接続するように設けられている。しかしながら、リブ38cの位置はこれに限定されない。リブ38cは、電池ケースの幅方向の中心よりの第二部分38bの端部に設けられてもよいし、第二部分38bの幅方向の中心や、その他の位置に接続するように設けられてもよい。
【0049】
上記実施形態において、集電部材38,48にリブ38c,48cは一つのみ設けられていたが、リブ38c,48cは一つの集電部材38,48に二つ以上が設けられてもよい。例えば
図3(B)に示す例では、リブ38cは、一つの正極集電部材38に一つが設けられている。しかしながらリブ38cの数はこれに限定されない。リブ38cは、一つの正極集電部材38に、二つ以上、例えば、二つ、三つ、四つ等と複数が設けられてもよい。この場合、全てのリブ38cが同じ形状であってもよいし、一つないしは幾つかのリブ38cが独立して異なる形状であってもよい。リブ38cが複数ある場合、それぞれのリブ38cは、第一部分38aと第二部分38bとの為す角が変動するのを好適に抑制するよう、第二部分38bの幅方向(W)で分散して配置するとよい。例えば、リブ38cは、第二部分38bの幅方向で等間隔に配置されていてもよい。なお、第一部分38aと第二部分38bとが、これらの屈曲部38Lにおいて断面L字型ではなく、断面T字形に接続されている場合は、リブ38cは、第二部分38bの一方の面にのみ設けられていてもよいし、両方の面に設けられていてもよい(
図6(b)参照)。この場合、リブ38c,48cの厚みT
Rおよび幅W
Rは、二つ以上のリブ38c,48cについての合計の厚みT
Rおよび合計の幅W
Rが、上記範囲内であることが好ましい。
【0050】
上記実施形態において、集電部材38,48の第二部分38b,48bは広側面の側から見て高さ方向に長い長方形状(帯状)であった。しかしながら、第二部分38b,48bは広側面の側から見た形状が長方形以外の形状であってもよい。例えば、屈曲部38L,48Lに近い部分では第二部分38b,48bの幅がより広く、第一部分38a,48aと第二部分38b,48bとがより長い寸法で接続されていてもよい。そして第二部分38b,48bの幅は、下方に向かうにつれて、連続的にあるいは段階的に、狭くなっていてもよい(
図6(a)参照)。
【0051】
また、第二部分38b,48bは、電池ケース10の広側面に沿って設けられていた。しかしながら、第二部分38b,48bは、電池ケース10の狭側面に沿って設けられていてもよい。このとき、第二部分38b,48bは、さらに曲げ加工されることで、電極体20の集電領域32c,42cと接合されていてもよい。例えば、第二部分38b,48bは、
図6(c)に示すように、下方の少なくとも電極体20の集電領域32c,42cと接合される部分が、スリットによって二股に分けられていてもよい。第二部分38b,48bの下端が二股に分けられていると、捲回型電極体10の集電部を捲回軸WLを基準に二つに分けて束ねることができ、これらを二股に分けられた第二部分38bのそれぞれと分けて接続することができる。このような構成によると、捲回型電極体20と集電部材38,48との接合において、集電領域32c,42cに加える変形量および負荷を低減することができる。また、捲回型電極体20内への電解液の含浸を促進できる点においても好ましい。なおこの場合、リブ38c,48cは、二股に分けられた第二部分38b,48bのそれぞれの幅方向(狭側面の幅方向、電池ケースの厚み方向)の中心の上方に一つずつ設けるとよい。二股に分けられた第二部分38b,48bのそれぞれに対してリブ38c,48cを設けることで、第二部分38b,48bの強度を高め得る点においても好ましい。
【0052】
上記実施形態において電極体20は捲回型電極体であったが、電極体20は枚葉型電極体であってもよい。電極体20が枚葉型電極体である場合は、
図6(b)に示すように、集電部材38,48の第二部分38b,48bは湾曲部38Sを備えていなくてもよい。その場合もリブ38c,48cの寸法は、上記範囲内であることが好ましい。
【0053】
上記実施形態において、集電部材38,48は第二部分38b,48bが広側面に沿って下方に延びるように設置されていた。しかしながら、集電部材38,48の電池ケース10への取付け態様はこれに限定されない。例えば、集電部材38,48の第二部分38b,48bは、狭側面に沿って下方に延びるように設置されていてもよい。この場合、
図6(c)に示すように、第二部分38b,48bは電極体の集電領域32c,42cと二箇所で接合されていてもよい。例えば狭側面側から見たとき、第二部分38b,48bを下方に延びる二股に分割し、捲回型電極体20を捲回軸WLに沿って三時の側と九時の側とに二つに分けておく。そして第二部分38b,48bの二股の一方は三時の側の電極体20に、二股の他方は九時の側の電極体20に、それぞれ接合するとよい。このとき、リブ38c,48cは、二股に分けた第二部分38b,48bのそれぞれに設けるとよい。また二股に分かれた第二部分38b,48bは、集電領域32c,42cと平行になるようにそれぞれ捻れて集電領域32c,42cと接合されていてもよい。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 二次電池
30 正極
32 正極集電体
34 正極活物質層
36 絶縁層
40 負極
50 セパレータ
38,48 集電部材
38a,48a 第一部分
38b,48b 第二部分
38c,48c リブ