(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】電動車両の配車システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20221215BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20221215BHJP
B60L 3/00 20190101ALN20221215BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G01C21/34
B60L3/00 S
(21)【出願番号】P 2018056133
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2020-12-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】麻生 雅宏
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-101577(JP,A)
【文献】特開2018-036957(JP,A)
【文献】特開2002-203015(JP,A)
【文献】特開2002-365082(JP,A)
【文献】特開2013-090359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
B60L 1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々の電動車両に搭載された車両端末およびそれらと無線通信可能な配車サーバとこれに付随する入力端末とを含む電動車両の配車システムであって、
前記配車サーバは、特定の乗り場と関連した待機エリアに入場した前記電動車両と無線通信可能であり、
前記入力端末は、前記乗り場で前記電動車両を利用するための利用者情報を入力する機能および前記利用者情報を前記配車サーバに送信する機能を有し、
前記車両端末は
、バッテリ残量
と、前記待機エリアでの現在の待機における待機時間と、前記待機エリアでの
過去の所定期間における
待機時の待機時間を積算した積算待機時間
と、を含む車両情報を
前記配車サーバに送信する機能を有し、
前記配車サーバは、
前記入力端末から目的地を含む利用者情報を一時記憶する利用情報格納部と、
前記目的地までの経路走行の所要電力または所要距離を算出する経路設定部と、
前記車両端末から取得した前記車両情報のうち、
前記待機時間に応じた第1優先度と前記積算待機時間に応じた第2優先度を考慮して、バッテリ残量に所要電力を対応させるかまたはバッテリ残量から求まる航続可能距離に所要距離を対応させ
、利用者情報を車両情報に割当てる配車処理部と、
前記車両端末に割当てた配車情報を配信する配車情報配信部と、を備えた、電動車両の配車システム。
【請求項2】
前記車両端末は、配信された前記配車情報を表示する配車情報表示手段をさらに備えた、請求項1記載の電動車両の配車システム。
【請求項3】
前記入力端末は、前記配車サーバと有線または無線通信可能な固定端末、または、前記配車サーバと無線通信可能な移動端末であり、前記配車サーバは、前記入力端末に前記配車情報を送信する手段をさらに備えた、請求項2記載の電動車両の配車システム。
【請求項4】
前記入力端末は、目的地のほかに人数、荷物サイズ、および、車両グレードからなる群から選択された1以上の利用者情報を入力する機能および前記配車サーバに送信する機能を有する、請求項3記載の電動車両の配車システム。
【請求項5】
前記入力端末に送信される前記配車情報は、割当て車両を識別する識別情報を含み、
前記車両端末を搭載した前記電動車両は、前記配車情報表示手段として、前記識別情報を車体外部から視認可能に表示する表示部をさらに含む、請求項2記載の電動車両の配車システム。
【請求項6】
前記待機エリアは、縦横複数列の停車レーンを含み、
前記車両端末は、
自車両が待機エリアに入場した時に、バッテリ残量と、前記待機エリアにおける前記積算待機時間と、自車両前方に他車両が存在するか否かを示す先頭車両情報とを含む車両情報を、前記配車サーバに送信し、かつ、
前記待機エリアからの出車を含むイベント発生時に、前記車両情報を更新して前記配車サーバに送信するように構成されており、
前記配車処理部は、
前記利用者情報に基づいて前記目的地までの経路走行の前記所要電力または前記所要距離が算出された時に、前記待機エリアに待機中の車両の
うち、先頭車両を配車処理対象として、前記積算待機時間が長い車両から優先順を決定し、前記配車処理対象車両のバッテリ残量に前記所要電力または前記所要距離を対応させて、利用者情報を車両情報に割当てるように構成されている、請求項1記載の電動車両の配車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両、特にタクシーなどの業務用電動車両の配車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動車両の普及が著しい。当初課題であった航続距離の問題もバッテリの性能向上によって徐々に改善されており、特に、電費性能が営業利益に直結するタクシーなどの業務用車両(事業用自動車)では電動車両への切替えが検討されている。とは言え、依然として、課題となるのは1回の充電による航続可能距離と充電時間である。
【0003】
内燃エンジン車両は、1回の給油による航続可能距離が長いうえ、給油時間も短いが、電動車両は1回の充電による航続可能距離が短いうえ、充電に時間を要する。しかも満充電近傍では保護機能が働くので充電時間は長くなる。当然ながら、タクシーは実車営業中に利用者を待たせることはできない。
【0004】
一方、付待ちタクシー、例えば、駅待ちタクシーの場合、タクシープールで待機車列の最後尾に整列して待機し、待機順に出車するため、短距離の利用が続くと実車営業時間に比較して待機時間が長くなり、実車走行距離にばらつきを生じる。この点は、航続可能距離が長い内燃エンジン車両では長期的に平均化されると見做すこともでき、また、個々のタクシー車両が別々の事業者であれば、待機順にせざるをえないが、電動車両の場合、充電率や充電時間のため航続可能距離や必要な待機時間に差が生じ、運行に支障を生じる懸念があり、全体的な輸送効率や利用者の利便性という観点では改善の余地があった。
【0005】
特許文献1には、スポットエリア型無線通信を利用して、所定のタクシー乗場構内で待機するタクシー車両のうちの先頭車両を特定することにより、タクシー車両を配車するシステムが開示されている。しかしながら、特許文献1は、駅待ち中のタクシーの先頭車両を他所にいる利用者の迎車に向かわせるに過ぎず、上述の課題についての示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、待機時間と利用距離のばらつきを是正し、全体的な輸送効率の向上および利用者の利便性の向上に有利な電動車両の配車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、
個々の電動車両に搭載された車両端末およびそれらと無線通信可能な配車サーバとこれに付随する入力端末とを含む電動車両の配車システムであって、
前記配車サーバは、特定の乗り場と関連した待機エリアに入場した前記電動車両と無線通信可能であり、
前記入力端末は、前記乗り場で前記電動車両を利用するための利用者情報を入力する機能および前記利用者情報を前記配車サーバに送信する機能を有し、
前記車両端末は、バッテリ残量と、前記待機エリアでの現在の待機における待機時間と、前記待機エリアでの過去の所定期間における待機時の待機時間を積算した積算待機時間と、を含む車両情報を前記配車サーバに送信する機能を有し、
前記配車サーバは、
前記入力端末から目的地を含む利用者情報を一時記憶する利用情報格納部と、
前記目的地までの経路走行の所要電力または所要距離を算出する経路設定部と、
前記車両端末から取得した前記車両情報のうち、前記待機時間に応じた第1優先度と前記積算待機時間に応じた第2優先度を考慮して、バッテリ残量に所要電力を対応させるかまたはバッテリ残量から求まる航続可能距離に所要距離を対応させ、利用者情報を車両情報に割当てる配車処理部と、
前記車両端末に割当てた配車情報を配信する配車情報配信部と、を備えた、電動車両の配車システムにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電動車両の配車システムは、上記のように、目的地を含む利用者情報に基づき経路走行の所要電力を算出し、それをバッテリ残量に対応させ、待機時間を考慮して配車するので、バッテリ残量が充分でない電動車両に航続可能距離に応じて割当てる配車が可能となるとともに、バッテリ残量が充分な電動車両には利益率の高い遠距離にある目的地までの利用者を割当てる配車も可能となり、待機時間と利用距離もしくは航続可能距離にばらつきのある待機車両の個々の状態を最大限に活用することで、電動車両の全体的な輸送効率の向上および利用者の利便性の向上に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明第1実施形態に係る配車システムを示すブロック図である。
【
図2】本発明実施形態に係る配車システムを適用したタクシー乗り場を示す概略平面図である。
【
図3】本発明実施形態に係る配車システムの表示/入力部を示す概略図である。
【
図4】本発明実施形態に係る配車システムを適用した電動タクシー車両およびタクシー乗り場を示す概略斜視図である。
【
図5】本発明第2実施形態に係る配車システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1において、本発明の第1実施形態に係る配車システム100は、個々の電動車両に搭載された車両端末20およびそれらと無線通信可能な配車サーバ10で構成され、配車サーバ10は本体部と有線または無線通信で連結された操作部30を備えている。
【0012】
先ず、車両端末20について説明する。車両端末20は、電動車両のバッテリ残量、タクシープールなど所定の待機エリアにおける待機時間、および、待機順番を含む車両情報を構成する機能(車両情報構成部21)と、この車両情報を配車サーバ10に送信する機能(車両情報出力部22)を有する。
【0013】
このような車両端末20としては、電動車両(電動タクシー車両)に搭載された無線通信端末、または、電動車両の運転者の携帯通信端末であり、タクシープールなどの限定的なエリアで通信可能な無線LANや、移動体通信網を利用して配車サーバ10と無線データ通信または音声通話可能な端末を利用できる。
【0014】
車両情報構成部21は、車載LAN(CAN)などを通じてBMU(バッテリ管理装置)からバッテリ残量(SOC)を取得する。電動車両の走行用バッテリには、バッテリ残量に相当する充電率(State of charge:SOC)、健全度(State of health:SOH)、充放電可能電力(State of power:SOP)を推定し、走行に支障がないよう管理するBMUが付設されている。
【0015】
また、車両情報構成部21は、タクシープールに進入し配車サーバ10と通信が確立され停車した時点からの待機時間を計時するタイマ機能を備えている。この待機時間はタクシープールにおける待機順番を示す情報となる。さらに、当日もしくは所定期間における待機時間を積算することや待機回数を考慮することにより、実車営業時間を評価する(実車走行距離を平均化する)指標を得ることができる。
【0016】
さらに、車両情報構成部21は、タクシープールにおいて当該車両が車列の最前部に位置していることを示す先頭車両情報(出車可能情報)を取得する。例えば、電動車両に搭載されたフロントカメラやレーダー、LIDERなどの前方検知手段により、自車両前方に他車両の存在が検知されている場合は、後続車両(出車不可能)、自車両前方に他車両の存在が検知されない場合は、先頭車両(出車可能)となる。
【0017】
車両情報出力部22は、車両情報構成部21に取得されたバッテリ残量、待機時間、先頭車両情報を当該電動車両の識別コードとともに車両情報として配車サーバ10に送信する。なお、車両情報の送信は、タクシープールでの待機中に先頭車両の出車などのイベント発生時に一斉に行われ、配車サーバ10の車両情報が更新される。
【0018】
一般に、駅前などのタクシープールにおいて、車列が1列の場合は整列順がそのまま待機順となるが、複数列(レーン)の場合は、右左右何れか決まった側から並び、各列先頭の横並びの車両が全部出車した時点で全列が1台分前進し、並び順に出車する。この点については後述する。
【0019】
次に、配車サーバ10について説明する。配車サーバ10は、例えば、
図2に示すように、駅前などのタクシープール2に臨む管理室4などに設置された電子計算システムである。また、配車サーバ10と有線または無線通信で連結され、タクシー乗り場5に設置された固定端末3の操作部30が付随して構成されている。
【0020】
図示例では配車サーバ10と離れて固定端末3が設置される場合を示しているが、管理室4の配車サーバ10自体またはその近くに操作部30が配設されていても良いし、逆に、タクシー乗り場5の固定端末3に配車サーバ10と操作部30が一体に設けられていても良い。
【0021】
操作部30は、タクシーの利用者が目的地を含む利用者情報を入力する情報入力部31と、それに基づく配車情報が表示される表示部33を備えており、好適には表示画面上で操作可能なタッチパネルを含んで実施される。
【0022】
図3は、情報入力部31を兼ねてタッチパネルとして実施された表示部33の一例を示しており、目的地を入力するための地図表示画面34、利用者の人数や荷物サイズ、希望グレードなどを入力するための情報入力画面35、料金や所要時間(概算)、運行者(会社)情報、車両識別コード37などが表示される配車情報表示画面36などで構成されている。
【0023】
これらは、地図表示画面34上にポップアップ表示されても良いし、画面が切替わって表示されても良い。また、タッチパネル以外に「決定」や「戻る」などの操作を行う操作ボタンを備えていても良い。
【0024】
配車サーバ10は、情報入力部31に入力された目的地を含む利用者情報を一時記憶する利用情報格納部13、利用者情報に基づいて目的地までの経路を割出す経路設定部14、車両端末20から送信された車両情報を受信し、車両毎に記憶する車両情報格納部12、利用者情報を車両情報に割当てる配車処理部11、割当てられた車両情報を表示部33に出力する車両情報出力部15、および、割当てられた車両端末20に出車指令を兼ねた配車情報を配信する配車情報配信部16を備えており、これらの処理のためのプログラムを記憶したROM、演算処理を行うCPU、一時記憶領域となるRAMなどで構成されたコンピュータと通信機器で構成される。
【0025】
利用情報格納部13は、情報入力部31に入力された目的地を含む利用者情報を一時記憶するとともに、以下に述べる経路設定部14の算出結果と経路情報を利用者情報(端末情報)と関連させて一時記憶する。
【0026】
経路設定部14は、目的地を特定するための地図情報を含む道路データと関連させて、走行速度(所要時間計算)の指標となる道路種別(幹線道路(市内/郊外)、一般道路(市内/郊外/非舗装)、高速道路(有料道路))や、構造物(交差点/交通信号機/踏切/指定方向外通行禁止/インターチェンジ/料金所)など、種々の道路情報を格納したデータベースを含み、このデータベースを利用して目的地までの到達経路を割出し、経路走行の所要時間(または所要距離)を算出し、標準的な電動車両を想定して経路走行の所要電力を算出する。
【0027】
配車処理部11は、車両情報格納部12に記憶された車両情報(識別コード、バッテリ残量、待機時間、待機回数、先頭車両情報)のうち、先頭車両情報を有する1または複数の車両の車両情報を処理対象とし、待機時間が長い車両から優先順を仮決定し、各車両情報のバッテリ残量に利用者情報の所要電力を対応させ、待機時間を考慮して利用者情報を車両情報に割当てる。
【0028】
例えば、以下のような流れで配車処理が実施される。
(a)利用者情報(荷物サイズ、希望グレードなど)に適合しない車両は当該利用者に対する配車対象から除外する。
(b)車両の仮決定優先順に応じた第1優先度の重み付け係数を設定する。
(c)当日積算待機時間または待機回数に応じた第2優先度の重み付け係数を設定する。
(d)利用者情報における所要電力の多/中/少(長距離/中距離/短距離)を閾値により判別するとともに、優先順位上位の車両のバッテリ残量の多/中/少を閾値により判別し、クラスが一致または近い車両から第3優先度の重み付け係数を設定する。
(e)それぞれの係数を乗算(または加算)して優先度を決定し、優先度の高い車両を割当てる。
なお、上記において、クラス分けの数は2または4以上であっても良く、また、各数値を(適宜桁数に丸めて)優先度係数として用いても良い。
【0029】
上記各優先度の重み付けの程度によって、基本的には待機順に応じて出車するがバッテリ残量や希望項目が適合しない車両のみを当該利用者に対する配車対象から除外するような配車処理アルゴリズムや、バッテリ残量や積算待機時間(待機回数)をより積極的に平均化するような方向性をもった配車処理アルゴリズムなどを構成できる。
【0030】
車両情報出力部15は、配車処理部11により割当てられた車両情報(識別コード、料金、所要時間、運行者情報)を操作部30の表示部33に出力する。これに伴い、
図3に示すように、表示部33の配車情報表示画面36には、料金や所要時間、運行者(会社)情報などとともに、車両識別コード37(この例では「EW23」)が表示される。
には、
【0031】
配車情報配信部16は、配車処理部11により割当てられた車両端末20に出車指令を兼ねた配車情報(識別コード、目的地、人数、荷物サイズ)を配信する。配車情報を受信したタクシー車両は、運転席(インストルメントパネル)付近に設置される車両端末20の表示部23に配車情報が音声を伴って表示され、運転者はタクシー乗り場などに車両を発進させる。
【0032】
この際、
図4に示すように、タクシー車両Tのフロントフードやドアにも表示部23′を設け、固定端末3の表示部33に表示されたのと同じ車両識別コード「EW23」が表示されることで、利用者は自身の入力に従って配車されたタクシー車両であることを視認できる。このような表示部23′は、車両室内に設置した表示部から外部に向けてウインドウ越しに表示させても良い。また、固定端末3の表示部33に車両識別コードを特定の色彩で表示し、表示部23′や表示灯24を同じ色彩で点灯させても良い。
【0033】
次に、本発明実施形態に係る配車システム100を適用したタクシー乗り場5における運用例について
図2を参照しながら説明する。
【0034】
図2において、タクシー乗り場5には2台分の乗降スペース5a,5bがあり、先頭の乗降スペース5aに隣接して固定端末3が設置されており、利用者Wa,Wb,・・が順に並んでいる。
【0035】
タクシー乗り場5の近くにタクシープール2があり、このタクシープール2には4台のタクシーT1~T4が待機している。図示例では、待機位置に非接触充電用の送電コイルユニットC1~C4が設置されており、タクシーT1~T4は待機しながら充電している。図示を省略するが、4台のタクシーT1~T4の後にはそれぞれ後続のタクシーが並んでおり、各列先頭のタクシーT1~T4が全部出車した時点で、全列が1台分前進し、次の出車に備えることになる。
【0036】
先述したように、これらのタクシーT1~T4は、タクシープール2に入場し、それぞれの車両端末20と配車サーバ10との通信が確立した時点で、識別コード、バッテリ残量、待機時間、待機回数、先頭車両情報、車格、運行者情報などの車両情報が車両情報構成部21に構成され、車両情報出力部22から配車サーバ10に送信され、車両情報格納部12に格納される。
【0037】
それぞれの車両情報は、配車処理毎に(タクシーT1~T4が出車する毎に)更新される。更新ごとに待機時間が更新され、図示例のように充電設備を備える場合はバッテリ残量も更新されることになる。
【0038】
このような状態で、利用者Wa,Wb,・・が、固定端末3の操作部30を利用して利用者情報(目的地、人数、荷物サイズ、希望グレード)を入力すると、情報入力部31から配車サーバ10の利用情報格納部13に識別コードを付した利用者情報が格納され、この目的地情報に基づいて、経路設定部14において経路割出し、経路走行の所要時間および所要電力が算出され、これらの算出結果も利用情報格納部13に格納される。
【0039】
すると、配車サーバ10の配車処理部11は、利用者Wa,Wb,・・の利用者情報とタクシーT1~T4の車両情報に基づいて、最適なタクシー(図示例ではT3)を選定し、車両情報出力部15は、当該タクシーT3の車両端末20に、出車指令として配車情報(識別コード、目的地、人数、荷物サイズ)を送信する。配車情報を受信したタクシーT3は、識別コードなどを表示してタクシープール2から乗降スペース5aに向かう。
【0040】
一方、固定端末3の操作部30(表示部33)に配車案内として車両情報(識別コード、料金、所要時間、運行者情報)が表示され、利用者Waは、最先ではない位置から発進してきた車両であっても、当該車両が配車されたタクシーT3(Ta)であることを確認できる。したがって、タクシープールが乗り場から離れていても実施可能であり、駅前などの混雑するスペースから離れた場所にタクシープールを設置し、駅前などの混雑を緩和するうえで有利である。
【0041】
次に、
図5は、本発明の第2実施形態に係る配車システム200を示している。この配車システム200では、利用者用の端末が、携帯通信端末などの移動端末40であり、情報入力部41、表示部43は移動端末40の操作部を兼ねた表示画面を構成するタッチパネルなどで構成され、配車サーバ210も移動体通信を前提とした車両情報配信部17を備える場合を示している。
【0042】
この配車システム200では、利用者の移動端末40に予め配車システム200にログオン可能なアプリケーションをインストールしておき、移動体通信網やインターネット、あるいは、駅前やタクシープールなどの限定的なエリアでの無線LANを利用して、配車サーバ210に無線データ通信により、利用者情報を送信し、配車情報を受信する。
【0043】
なお、この配車システム200では、利用者はタクシー乗り場から離れていても情報送信可能であるが、固定端末の場合のように端末入力順に配車処理を行うと、利用者が乗り場に到着した時点で他の利用者と順番が逆になったり、混乱を生じたりする虞がある。そのため、通信エリアを至近距離に限定するか、出発時刻を利用者情報として送信し、出発時刻を考慮して配車処理を実施する必要がある。
【0044】
あるいは、移動端末40の位置情報を利用者情報として送信し、当該位置に迎車要請する形態で運用することもできる。この場合でも、配車サーバ210やタクシー乗り場周辺に限定した運用となるので、経路設定や所要電力の算出は乗り場を起点としたものでも構わない。
【0045】
(主要な構成と効果)
以上詳述したように、本発明に係る電動車両の配車システム(100,200)は、目的地を含む利用者情報に基づき経路走行の所要電力を算出し、それをバッテリ残量に対応させ、待機時間(待機順、積算待機時間、待機回数)を考慮して配車するので、バッテリ残量が充分でない電動車両に航続可能距離に応じて割当てる配車が可能となるとともに、バッテリ残量が充分な電動車両には利益率の高い遠距離にある目的地までの利用者を割当てる配車も可能となり、待機時間と利用距離のばらつきを是正し、電動車両の全体的な輸送効率の向上および利用者の利便性の向上に有利である。
【0046】
本発明の好適な態様では、車両端末(20)は、配信された配車情報を表示する配車情報表示手段(23)を備えたので、利用者の乗車後に目的地を確認する必要が無く、走行経路を事前に想定しながら、実車走行に備え、乗車後は直ちに発車させることができ、乗り場での停車時間を短縮するうえで有利である。
【0047】
本発明の好適な態様では、入力端末(30,40)は、前記配車サーバと有線または無線通信可能な固定端末(30)、または、前記配車サーバと無線通信可能な移動端末(40)であり、前記配車サーバは、前記入力端末に配車情報を送信する手段(15,17)を備えたので、システムの設置レイアウトの自由度が高いことに加えて、複数の利用者の配車要請を効率よく処理できる。
【0048】
本発明の好適な態様では、入力端末(30,40)は、目的地のほかに人数、荷物サイズ、および、車両グレードからなる群から選択された1以上の利用者情報を入力する機能および前記配車サーバに送信する機能を有するので、利用者の希望を配車に反映させることができ有利である。
【0049】
本発明の好適な態様では、入力端末(30,40)に送信される配車情報は、割当て車両を識別する識別情報(37)を含み、車両端末(20)を搭載した前記電動車両は、前記配車情報表示手段として、前記識別情報を車体外部から視認可能に表示する表示部(23′)をさらに含むので、利用者は、配車された車両であることを容易に確認でき、特に、並び順と異なる順で配車された場合にも混乱を生じることが無い。
【0050】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、電動車両がタクシーである場合について述べたが、本発明の配車システムは、タクシー以外の送迎車両や貨物配送車両などにも実施可能である。
【符号の説明】
【0051】
2 タクシープール
3 固定端末
5 タクシー乗り場
5a,5b 乗降スペース
10,210 配車サーバ
11 配車処理部
12 車両情報格納部
13 利用情報格納部
14 経路設定部
15 車両情報出力部
16 配車情報配信部
17 車両情報配信部
20 車両端末
21 車両情報構成部
22 車両情報出力部
23,23′ 表示部
26,42 情報取得部
30 操作部
31,41 情報入力部
33,43 表示部
40 移動端末
42 情報取得部
100,200 配車システム
C1,C2,C3,C4 充電用送電コイルユニット
Ta,Tb,T1,T2,T3,T4 タクシー
Wa,Wb 利用者