(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】車両のルーフパネル補強構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B62D25/06 A
(21)【出願番号】P 2019050513
(22)【出願日】2019-03-18
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】三根 康平
(72)【発明者】
【氏名】馬場 皓平
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-076042(JP,A)
【文献】特開2014-054943(JP,A)
【文献】特開平09-254815(JP,A)
【文献】特開2017-144884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフ上板部と前記ルーフ上板部の車幅方向外端部から下方へ延びるルーフ側板部とを有するハイルーフ型のルーフパネルを補強するための車両のルーフパネル補強構造であって 、
前記ルーフ上板部よりも下方に配置される上端を有し、前記ルーフパネルよりも下方のボディ側
のレール部に下方から支持されて前記ルーフ側板部の車幅方向内側面に沿って上下方向に延び、前記ルーフ側板部に対して固定されるレインフォースと、
前記レインフォースの前記上端よりも上方に配置されて前記ルーフ上板部を下方から支持するルーフ支持部を有し、前記レインフォースの前記上端側に固定されて上方の前記ルーフ支持部まで延び、前記ルーフ上板部から荷重が入力した際に前記レインフォースよりも変形し易いエネルギー吸収部材と、を備えた
ことを特徴とする車両のルーフパネル補強構造。
【請求項2】
請求項1に記載のルーフパネル補強構造であって、
前記エネルギー吸収部材は、脆弱部を有し、
前記エネルギー吸収部材の前記脆弱部は、前記エネルギー吸収部材のうち前記脆弱部に隣接する領域よりも変形し易い
ことを特徴とする車両のルーフパネル補強構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のルーフパネル補強構造であって、
前記エネルギー吸収部材の車幅方向外側面は、前記ルーフ側板部の前記車幅方向内側面から車幅方向内側へ離間している
ことを特徴とする車両のルーフパネル補強構造。
【請求項4】
前記ルーフ上板部が前下方から後上方へ傾斜している前記ルーフパネルを補強するための請求項1~請求項3のいずれかに記載の車両のルーフパネル補強構造であって、
前記ルーフ上板部よりも下方且つ前記レインフォースの前記上端の高さ位置と略同じ高さ位置に配置される第2上端を有し、前記レインフォースよりも前方又は後方に配置され、前記ボディ側に下方から支持されて前記ルーフ側板部の前記車幅方向内側面に沿って上下方向に延びて、前記ルーフ側板部に対して固定される第2レインフォースを備えた
ことを特徴とする車両のルーフパネル補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のルーフパネル補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のルーフ構造が記載されている。このルーフ構造の補強部材は、L字形状の部材であり、ルーフの底面と接する面を有する横板部と、横板部の端部から湾曲部を介して横板部と直交して下方に延伸している縦板部とを有する。補強部材の縦板部には、脆弱部が設けられる。脆弱部は、第1の溝と第2の溝とを有する。補強部材に上方からルーフ荷重がかかると、補強部材の第1の溝よりも上方の部分は、第1の溝の位置において車両の前方側に向かって屈曲する。そして、さらに補強部材に上方から荷重がかかると、補強部材の第2の溝よりも上方の部分は、第2の溝の位置において車両の後方側に向かって屈曲する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のルーフ構造では、ルーフ(ルーフパネル)の上方から荷重が入力した際に、先ず、L字形状の補強部材の第1の溝よりも上方の部分が、前方側(車室側)へ向かって屈曲し、次に第2の溝よりも上方の部分が、後方側(外部側)へ向かって屈曲する。すなわち、ルーフパネルの上方から荷重が入力した際に、補強部材の脆弱部よりも上方の部分が車室側または外部側へ倒れる。補強部材の脆弱部よりも上方の部分が車室側または外部側へ倒れる際には、補強部材の脆弱部よりも下方の縦板部に対して車室側または外部側への荷重が入力するので、脆弱部よりも上方の部分が車室側または外部側へ倒れる際に脆弱部よりも下方の縦板部が連動して車室側または外部側へ倒れてしまう可能性がある。脆弱部よりも下方の縦板部が車室側または外部側へ倒れてしまうと、ルーフパネルの上方から荷重を補強部材によって下方へ効率的に伝達することが難しくなるので、ルーフパネルの下方への変形を抑制することができないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、ルーフパネルの上方からの荷重を下方へ効率的に伝達することが可能な車両のルーフパネル補強構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、ルーフ上板部とルーフ上板部の車幅方向外端部から下方へ延びるルーフ側板部とを有するハイルーフ型のルーフパネルを補強するための車両のルーフパネル補強構造であって、レインフォースとエネルギー吸収部材とを備える。レインフォースは、ルーフ上板部よりも下方に配置される上端を有し、ルーフパネルよりも下方のボディ側に下方から支持されてルーフ側板部の車幅方向内側面に沿って上下方向に延び、ルーフ側板部に対して固定される。エネルギー吸収部材は、レインフォースの上端よりも上方に配置されてルーフ上板部を下方から支持するルーフ支持部を有し、レインフォースの上端側に固定されて上方のルーフ支持部まで延び、ルーフ上板部から荷重が入力した際にレインフォースよりも変形し易い。
【0007】
上記構成では、エネルギー吸収部材は、レインフォースの上端よりも上方に配置されてルーフ上板部を下方から支持するルーフ支持部を有するので、ルーフパネルのルーフ上板部に衝突物が衝突すると、ルーフパネルの上方から入力する荷重は、ルーフ上板部からエネルギー吸収部材のルーフ支持部に入力する。エネルギー吸収部材は、ルーフ上板部から荷重が入力した際にレインフォースよりも変形し易いので、レインフォースでルーフ上板部を支持する場合に比べて、容易に変形して衝突エネルギーを吸収することができる。
【0008】
また、エネルギー吸収部材は、レインフォースの上端側に固定されるので、レインフォースとエネルギー吸収部材とが一体成形される場合に比べて、ルーフ上板部から荷重が入力した際に、レインフォースとエネルギー吸収部材との固定部分で曲折変形し易い。このため、エネルギー吸収部材の変形時にレインフォース側へ入力する上下方向と交叉する方向への荷重を抑えることができ、レインフォースが上下方向と交叉する方向へ倒れ難いので、ルーフパネルの上方から荷重をレインフォースによって下方へ効率的に伝達することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様のルーフパネル補強構造であって、エネルギー吸収部材は、脆弱部を有する。エネルギー吸収部材の脆弱部は、エネルギー吸収部材のうち脆弱部に隣接する領域よりも変形し易い。
【0010】
上記構成では、エネルギー吸収部材の脆弱部が、エネルギー吸収部材のうち脆弱部に隣接する領域よりも変形し易いので、ルーフパネルの上方から荷重が入力した際に、エネルギー吸収部材を更に容易に変形させることができる。このため、エネルギー吸収部材の変形時にレインフォース側へ入力する上下方向と交叉する方向への荷重を更に抑えることができ、レインフォースが上下方向と交叉する方向へ倒れ難いので、ルーフパネルの上方から荷重をレインフォースによって下方へ効率的に伝達することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様または上記第2の態様のルーフパネル補強構造であって、エネルギー吸収部材の車幅方向外側面が、ルーフ側板部の車幅方向内側面から車幅方向内側へ離間している。
【0012】
上記構成では、エネルギー吸収部材の車幅方向外側面が、ルーフ側板部の車幅方向内側面から車幅方向内側へ離間しているので、ルーフパネルの上方から荷重が入力した際に、エネルギー吸収部材の車幅方向外側面とルーフ側板部の車幅方向内側面との間の空間内でエネルギー吸収部材を車幅方向外側へ変形させることができる。このため、エネルギー吸収部材の車幅方向外側への変形時に、エネルギー吸収部材がルーフ側板部を車幅方向外側へ押圧し難いので、ルーフ側板部を介したレインフォース側への荷重の伝達を抑えることができ、上下方向と交叉する方向へのレインフォースの倒れを抑えて、ルーフパネルの上方から荷重をレインフォースによって下方へ効率的に伝達することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、ルーフ上板部が前下方から後上方へ傾斜しているルーフパネルを補強するための上記第1の態様~上記第3の態様のいずれかの車両のルーフパネル補強構造であって、第2レインフォースを備える。第2レインフォースは、ルーフ上板部よりも下方且つレインフォースの上端の高さ位置と略同じ高さ位置に配置される第2上端を有し、レインフォースよりも前方又は後方に配置され、ボディ側に下方から支持されてルーフ側板部の車幅方向内側面に沿って上下方向に延びて、ルーフ側板部に対して固定される。
【0014】
上記構成では、レインフォースよりも前方又は後方に第2レインフォースが配置され、第2レインフォースの第2上端がレインフォースの上端と略同じ高さ位置に配置されるので、ルーフパネルの上方から荷重によってエネルギー吸収部材が変形し、ルーフ上板部が下方へ移動してレインフォース及び第2レインフォースの上端の高さ位置に到達した際に、ルーフパネルの上方から荷重を、略同じ高さ位置で二つのレインフォース(レインフォース及び第2レインフォース)によって受けることができる。このため、ルーフパネルの上方から荷重を、二つのレインフォースへ分散させることができるので、二つのレインフォースの上端の高さ位置よりも下方へのルーフ上板部の変形を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ルーフパネルの上方からの荷重を下方へ効率的に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るルーフパネル補強構造を適用する車両のキャブの側面図である。
【
図2】
図1のルーフパネル補強構造の概略斜視図である。
【
図3】前後のレインフォース及びエネルギー吸収部材の斜視図である。
【
図5】前側のレインフォース及びエネルギー吸収部材の概略後面図である。
【
図8】後側のレインフォースと後側のエネルギー吸収部材との接続部分の車幅方向内側からの側面図である。
【
図9】前側のエネルギー吸収部材と上側のレインフォースとの接続部分の下側後方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るルーフパネル補強構造は、ハイルーフ型の車両1のキャブ2のルーフパネル3の補強構造に適用される。キャブ2は、車室4を上方へ拡大させるハイルーフ型のルーフパネル3と、ルーフパネル3よりも下方のボディ5とを有する。ボディ5は、上方へ開放される箱型に形成され、ルーフパネル3は、下方へ開放される箱型に形成され、ボディ5及びルーフパネル3は、内部に車室4を区画する。ボディ5の車幅方向両側の上端部には、前後方向に延びる閉断面状のレール部6が設けられる。ルーフパネル3の下端縁部がボディ5のレール部6に対して固定されることによって、ルーフパネル3とボディ5とが接続される。
【0019】
図1及び
図2に示すように、ルーフパネル3は、車室4の上方に配置されて上下方向と交叉するルーフ上板部3aと、ルーフ上板部3aの車幅方向両側の外端部から下方へ延びる左右のルーフ側板部3b(
図1及び
図2には、右側のルーフ側板部3bのみが図示されている。)と、ルーフ上板部3aの前端縁部から下方へ延びるルーフ前板部3cと、ルーフ上板部3aの後端縁から下方へ延びるルーフ後板部3dとを有する。ルーフ上板部3aは、その前端側よりも後端側の方が上方の高さ位置に配置され、前下方から後上方へ向かって延び、水平方向に対して傾斜している。左右のルーフ側板部3bは、車幅方向と交叉し、その下端側がボディ5のレール部6に対して固定される。ルーフ前板部3c及びルーフ後板部3dは、前後方向と交叉し、各々の下端側がボディの前側の上端部または後側の上端部に下方から支持される。なお、本実施形態に係るルーフパネル補強構造は、ルーフパネル3の左右に対称的に設けられるため、以下では、右側について説明し、左側の説明を省略する。
【0020】
ルーフパネル3のルーフ側板部3bの車幅方向内側面7(
図4参照)には、ルーフ側板部3bを補強する前後2本のレインフォース11,12と、前後2つのエネルギー吸収部材13,14とが取り付けられる。前後のレインフォース11,12のうち後側のレインフォース(レインフォース)12は、ルーフ側板部3bの後端近傍で上下方向に延び、その上端部12aには後側のエネルギー吸収部材14が固定される。前後のレインフォース11,12のうち前側のレインフォース(第2レインフォース)11は、ルーフ側板部3bの後部(ルーフ側板部3bの前後方向の中央部よりも後方)且つ後側のレインフォース12の前方で上下方向に延び、その上端部11aには前側のエネルギー吸収部材13が固定される。なお、本実施形態では、前後のレインフォース11,12は、互いに略同じ構成を有する。また、本実施形態では、前後のエネルギー吸収部材13,14は、互いに略同じ構成を有し、上下方向の長さが僅かに異なる。
【0021】
図1~
図4に示すように、前後のレインフォース11,12は、車幅方向外側へ開放する断面ハット状に形成されるレインフォース本体15と、レインフォース本体15に固定される閉止板部16とをそれぞれ有し、ルーフ側板部3bの車幅方向内側面7に固定されて上下方向に延び、ルーフ側板部3bを補強する。レインフォース本体15は、前後一対のフランジ部15a,15bと、前後のフランジ部15a,15bの後縁又は前縁から車幅方向内側へ曲折する前板部15c及び後板部15dと、前板部15c及び後板部15dの車幅方向内端縁同士を連結する内板部15eとを一体的に有する。前後のフランジ部15a,15bは、前後に互いに離間した位置に配置され、車幅方向と交叉した状態で上下方向に長尺に延びる。前板部15cは、前側のフランジ部15aの後縁に沿って車幅方向内側へ起立し、前後方向と交叉した状態で上下方向に長尺に延びる。後板部15dは、後側のフランジ部15bの前縁に沿って車幅方向内側へ起立し、前板部15cから後方へ離間した位置で前後方向と交叉した状態で上下方向に長尺に延び、前板部15cと対向する。内板部15eは、車幅方向と交叉した状態で上下方向に長尺に延びる。前板部15cと後板部15dと内板部15eとの間には空間17が区画される。閉止板部16は、レインフォース本体15の前板部15c及び後板部15dの車幅方向外側面に対して固定され、レインフォース本体15の内側の空間17を車幅方向外側から塞ぐ。すなわち、前後のレインフォース11,12は、レインフォース本体15と閉止板部16とによって閉断面状に形成される。前後のレインフォース11,12は、閉止板部16の車幅方向外側面をルーフ側板部3bの車幅方向内側面7に面接触させた状態で、ルーフ側板部3bに対して固定される。前後のレインフォース11,12の下端部18は、ボディ5のレール部6に載置された状態でレール部6に対して固定され、レール部6に下方から支持される。前後のレインフォース11,12の上端33,34は、ルーフ上板部3aから下方へ離間した所定の高さ位置(
図1に一点鎖線20で示す高さ位置)に配置される。すなわち、前側のレインフォース11の上端(第2上端)33は、後側のレインフォース12の上端34と略同じ高さ位置に配置される。前後のレインフォース11,12の閉断面形状は、ボディ5のレール部6から前後のレインフォース11,12の上端33,34まで連続している。
【0022】
図3、及び
図5~
図8に示すように、前後のエネルギー吸収部材13,14は、上方からの荷重に対して前後のレインフォース11,12よりも変形し易い断面ハット状に形成されて上下方向に延び、上方からの荷重の入力によって変形してエネルギーを吸収する。前後のエネルギー吸収部材13,14の断面積は、前後のレインフォース11,12の断面積よりも小さい。前後のエネルギー吸収部材13,14は、前後一対のフランジ部21a,21bと、前後のフランジ部21a,21bの後縁又は前縁から車幅方向内側へ曲折する前板部21c及び後板部21dと、前板部21c及び後板部21dの車幅方向内端縁同士を連結する内板部21eと、上端部に設けられるルーフ支持板部(ルーフ支持部)21fを一体的に有する。前後のフランジ部21a,21bは、前後に互いに離間した位置に配置され、車幅方向と交叉した状態で上下方向に長尺に延びる。前板部21cは、前側のフランジ部21aの後縁に沿って車幅方向内側へ起立し、前後方向と交叉した状態で上下方向に長尺に延びる。後板部21dは、後側のフランジ部21bの前縁に沿って車幅方向内側へ起立し、前板部21cから後方へ離間した位置で前後方向と交叉した状態で上下方向に長尺に延び、前板部21cと対向する。前板部21c及び後板部21dの車幅方向の長さは、レインフォース本体15の前板部15c及び後板部15dの車幅方向の長さよりも短い。本実施形態では、前板部21c及び後板部21dの車幅方向の長さは、レインフォース本体15の前板部15c及び後板部15dの車幅方向の長さの半分以下に設定される。内板部21eは、車幅方向と交叉した状態で上下方向に長尺に延びる。内板部21eの下端部は、その車幅方向外側面をレインフォース本体15の内板部15eの上端部の車幅方向内側面に対して面接触させた状態で、レインフォース本体15の内板部15eに対して固定(本実施形態では、スポット溶接によって固定)される。これにより、前後のエネルギー吸収部材13,14の下端部22は、前後のレインフォース11,12の上端部に対して固定される。前後のエネルギー吸収部材13,14を前後のレインフォース11,12の上端部11a,12aに対して固定した状態(以下、単に「固定状態」という。)で、前後のエネルギー吸収部材13,14の前板部21cは、レインフォース本体15の前板部15cに対して固定されることなく前方から近接又は接触する位置に配置され、前後のエネルギー吸収部材13,14の後板部21dは、レインフォース本体15の後板部15dに対して固定されることなく後方から近接又は接触する位置に配置される。固定状態の前後のフランジ部21a,21bの車幅方向外側面30(エネルギー吸収部材の車幅方向外側面)は、ルーフ側板部3bの車幅方向内側面7から車幅方向内側へ離間し、ルーフ側板部3bの車幅方向内側面7との間に空間32を区画する。前後のフランジ部21a,21bは、固定状態で前後のレインフォース11,12の上端33,34の僅かに上方の高さ位置23(
図8に一点鎖線23で示す高さ位置)よりも上方の上部領域24と、前記高さ位置23よりも下方の下部領域25と、上部領域24と下部領域25との間で前後方向に延びる段差部26(上部領域24の下縁部)とを有する。前後のフランジ部21a,21bの下部領域25の前後方向の長さは、上部領域24の前後方向の長さよりも短い。前後のレインフォース11,12の上端33,34と、固定状態の前後のエネルギー吸収部材13,14の前後のフランジ部21a,21bの段差部26との間には、間隙27が設けられる。内板部21eのうち前後のフランジ部21a,21bの段差部26よりも僅かに上方の領域には、車幅方向外側へ凹んだ状態で前後方向に延びる溝部(脆弱部)28が設けられる。すなわち、溝部28は、前後のレインフォース11,12の上端33,34の上方近傍に配置される。溝部28は、前板部21cと後板部21dとの間で前後方向に延びる。前板部21c及び後板部21dの溝部28が設けられる高さ位置では、車幅方向の長さが、他の領域(溝部28よりも上方の領域及び下方の領域)よりも短くなっている(
図6参照)。前後のエネルギー吸収部材13,14の上部は、車幅方向内側へ湾曲している。ルーフ支持板部21fは、前後のフランジ部21a,21b、前板部21c、後板部21d、及び内板部21eの上端から上方へ延び、固定状態でルーフ上板部3aの下面29を下方から支持する。すなわち、ルーフ支持板部21fは、前後のレインフォース11,12の上端33,34よりも上方に配置されて、ルーフ上板部3aを下方から支持する。
【0023】
図3及び
図9に示すように、前側のエネルギー吸収部材13の上端部には、ルーフ上板部3aを補強する上側のレインフォース31が固定される。上側のレインフォース31は、前側のエネルギー吸収部材13の上端部から連続して車幅方向内側へ延び、前側のエネルギー吸収部材13のルーフ支持板部21fから車幅方向内側へ離間した位置でルーフ上板部3aの下面29を下方から支持する。
【0024】
上記構成では、前後のエネルギー吸収部材13,14のルーフ支持板部21fは、固定状態でルーフ上板部3aの下面29を下方から支持する。このため、ルーフパネル3のルーフ上板部3aに上方から衝突物が衝突すると、ルーフパネル3の上方から入力する荷重は、前後のエネルギー吸収部材13,14のルーフ支持板部21fに入力する。前後のエネルギー吸収部材13,14は、ルーフ上板部3aからの荷重に対する剛性が前後のレインフォース11,12よりも低く形成され、ルーフ上板部3aからの荷重に対して前後のレインフォース11,12よりも変形し易い。具体的には、前後のエネルギー吸収部材13,14は、開断面状(断面ハット状)に形成され、前後のレインフォース11,12は、閉断面状に形成される。また、前後のエネルギー吸収部材13,14の前板部21c及び後板部21dの車幅方向の長さは、レインフォース本体15の前板部15c及び後板部15dの車幅方向の長さよりも短い。従って、前後のエネルギー吸収部材13,14は、上方からの荷重に対する剛性が前後のレインフォース11,12よりも低いので、前後のレインフォース11,12を上方へ延長してルーフ上板部3aを支持する場合に比べて変形し易く、係る変形によって衝突エネルギーを吸収することができる。
【0025】
また、前後のエネルギー吸収部材13,14は、前後のレインフォース11,12の上端部11a,12aに固定されるので、前後のレインフォース11,12と前後のエネルギー吸収部材13,14とが一体成形される場合に比べて、ルーフ上板部3aから荷重が入力した際に、前後のレインフォース11,12に対する前後のエネルギー吸収部材13,14の固定部分で曲折変形し易い。このため、前後のエネルギー吸収部材13,14の変形時に、前後のレインフォース11,12側に入力する車幅方向内側又は外側(上下方向と交叉する方向)への荷重を抑えることができ、前後のレインフォース11,12が車幅方向内側又は外側へ倒れ難いので、ルーフパネル3の上方から荷重を前後のレインフォース11,12によって下方へ効率的に伝達することができる。
【0026】
また、固定状態では、前後のエネルギー吸収部材13,14の内板部21eの下端部が前後のレインフォース11,12の内板部15eの上端部に対して固定(本実施形態では、スポット溶接によって固定)され、前後のエネルギー吸収部材13,14の前板部21c及び後板部21dは、レインフォース本体15の前板部15cまたは後板部15dに対して固定されない。このため、ルーフ上板部3aから荷重が入力した際に、前後のレインフォース11,12に対する前後のエネルギー吸収部材13,14の固定部分で曲折変形し易いので、上述したように前後のレインフォース11,12が車幅方向内側又は外側へ倒れ難く、ルーフパネル3の上方から荷重を前後のレインフォース11,12によって下方へ効率的に伝達することができる。
【0027】
また、前後のレインフォース11,12の上端33,34と、固定状態の前後のエネルギー吸収部材13,14の前後のフランジ部21a,21bの段差部26との間には、間隙27が設けられるので、ルーフ上板部3aから荷重が入力した際に、前後のエネルギー吸収部材13,14が間隙27の高さ位置で曲折変形し易い。このため、前後のエネルギー吸収部材13,14の変形時に前後のレインフォース11,12側へ入力する荷重を抑えることができ、前後のレインフォース11,12が車幅方向内側又は外側へ倒れ難いので、ルーフパネル3の上方から荷重を前後のレインフォース11,12によって下方へ効率的に伝達することができる。
【0028】
また、前後のフランジ部21a,21bの段差部26よりも下方の下部領域25の前後方向の長さは、段差部26よりも上方の上部領域24の前後方向の長さよりも短いので、ルーフ上板部3aから荷重が入力した際に、前後のエネルギー吸収部材13,14が下部領域25で曲折変形し易い。このため、前後のエネルギー吸収部材13,14の変形時に前後のレインフォース11,12側へ入力する車幅方向内側又は外側への荷重を抑えることができ、前後のレインフォース11,12が車幅方向内側又は外側へ倒れ難いので、ルーフパネル3の上方から荷重を前後のレインフォース11,12によって下方へ効率的に伝達することができる。
【0029】
また、前後のエネルギー吸収部材13,14の内板部21eには、車幅方向外側へ凹んだ状態で前後方向に延びる溝部28が設けられるので、ルーフ上板部3aから荷重が入力した際に、前後のエネルギー吸収部材13,14は、溝部28の上下に隣接する領域よりも溝部28の高さ位置で変形し易い。このため、前後のエネルギー吸収部材13,14の変形時に前後のレインフォース11,12側へ入力する車幅方向内側又は外側への荷重を抑えることができ、前後のレインフォース11,12が車幅方向内側又は外側へ倒れ難いので、ルーフパネル3の上方から荷重を前後のレインフォース11,12によって下方へ効率的に伝達することができる。
【0030】
また、前後のエネルギー吸収部材13,14の溝部28は、前板部21cと後板部21dとの間で前後方向に延び、前板部21c及び後板部21dの溝部28が設けられる高さ位置では、車幅方向の長さが、他の領域(溝部28よりも上方の領域及び下方の領域)よりも短いので、ルーフ上板部3aから荷重が入力した際に、前後のエネルギー吸収部材13,14は溝部28の高さ位置で変形し易い。このため、前後のエネルギー吸収部材13,14の変形時に前後のレインフォース11,12側へ入力する車幅方向内側又は外側への荷重を抑えることができ、前後のレインフォース11,12が車幅方向内側又は外側へ倒れ難いので、ルーフパネル3の上方から荷重を前後のレインフォース11,12によって下方へ効率的に伝達することができる。
【0031】
また、固定状態の前後のエネルギー吸収部材13,14の前後のフランジ部21a,21bの車幅方向外側面30がルーフ側板部3bの車幅方向内側面7から車幅方向内側へ離間しているので、ルーフ上板部3aから荷重が入力した際に、前後のエネルギー吸収部材13,14の車幅方向外側面30とルーフ側板部3bの車幅方向内側面7との間の空間32内で前後のエネルギー吸収部材13,14を車幅方向外側へ変形させることができる。このため、前後のエネルギー吸収部材13,14の車幅方向外側への変形時に、前後のエネルギー吸収部材13,14がルーフ側板部3bを車幅方向外側へ押圧し難いので、ルーフ側板部3bを介した前後のレインフォース11,12側への荷重の伝達を抑えることができ、車幅方向内側又は外側への前後のレインフォース11,12の倒れを抑えて、ルーフパネル3の上方から荷重を前後のレインフォース11,12によって下方へ効率的に伝達することができる。
【0032】
また、前後のレインフォース11,12の上端33,34が互いに略同じ高さ位置に配置されるので、ルーフパネル3の上方から荷重によって前後のエネルギー吸収部材13,14が変形し、ルーフ上板部3aが下方へ移動して前後のレインフォース11,12の上端33,34の高さ位置に到達した際に、ルーフパネル3の上方から荷重を、略同じ高さ位置(上端33,34の高さ位置)で前後のレインフォース11,12によって受けることができる。このため、ルーフパネル3の上方から荷重を、前後のレインフォース11,12へ分散させることができるので、前後のレインフォース11,12の上端33,34の高さ位置よりも下方へのルーフ上板部3aの変形を抑えることができる。
【0033】
従って、本実施形態によれば、ルーフパネル3の上方からの荷重を下方へ効率的に伝達することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、前側のレインフォース(第2レインフォース)11の上方に前側のエネルギー吸収部材13を設けたが、前側のエネルギー吸収部材13を設けなくてもよい。また、本実施形態では、前側のレインフォース(第2レインフォース)11を、ルーフ側板部3bの後部(ルーフ側板部3bの前後方向の中央部よりも後方)に配置したが、
図1に二点鎖線35で示すように、前側のレインフォース(第2レインフォース)35を、ルーフ側板部3bの前端側に配置してもよい。この場合、前側のレインフォース35の上端36を、ルーフ上板部3aの前端部の下面29の僅かに下方の上記所定の高さ位置(
図1に一点鎖線20で示す高さ位置)に配置し、前側のレインフォース35の上方に前側のエネルギー吸収部材13を設けなくてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、本開示に係るレインフォースを、後側のレインフォース12とし、本開示に係る第2レインフォースを、前側のレインフォース11としたが、これに限定されるものではなく、本開示に係る第2レインフォースを、後側のレインフォース12とし、本開示に係るレインフォースを、前側のレインフォース11としてもよい。この場合、後側のエネルギー吸収部材14を設けなくてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、ルーフパネル3のルーフ側板部3bを補強する前後2本のレインフォース11,12を設けたが、レインフォースの数はこれに限定されるものではなく、少なくとも1本のレインフォースを設け、係るレインフォースの上端部にエネルギー吸収部材が固定されていればよい。
【0037】
また、本実施形態では、ルーフ上板部3aから荷重が入力した際に、前後のエネルギー吸収部材13,14を前後のレインフォース11,12よりも変形し易くするために、前後のレインフォース11,12を閉断面状に形成し、前後のエネルギー吸収部材13,14を開断面状(断面ハット状)に形成したが、前後のレインフォース11,12及び前後のエネルギー吸収部材13,14の断面形状は上記に限定されるものではない。また、本実施形態では、ルーフ上板部3aから荷重が入力した際に、前後のエネルギー吸収部材13,14を前後のレインフォース11,12よりも変形し易くするために、前後のエネルギー吸収部材13,14の前板部21c及び後板部21dの車幅方向の長さを、レインフォース本体15の前板部15c及び後板部15dの車幅方向の長さよりも短くしたが、これに限定されるものではない。すなわち、ルーフ上板部3aから荷重が入力した際に、前後のエネルギー吸収部材13,14を前後のレインフォース11,12よりも変形し易くするための構造は上記に限定されるものではない。例えば、前後のエネルギー吸収部材13,14の板厚を薄くするなどして、ルーフ上板部3aからの荷重に対する前後のエネルギー吸収部材13,14の剛性を、前後のレインフォース11,12よりも低くしてもよいし、或いは、前後のエネルギー吸収部材13,14を、前後のレインフォース11,12よりも変形し易い材料で形成してもよい。
【0038】
また、本実施形態では、前後のエネルギー吸収部材13,14の前板部21c及び後板部21dをレインフォース本体15の前板部15c及び後板部15dに対して固定することなく、前後のエネルギー吸収部材13,14の内板部21eをレインフォース本体15の内板部15eにスポット溶接によって固定したが、前後のレインフォース11,12に対する前後のエネルギー吸収部材13,14の固定方法は、上記に限定されるものではない。
【0039】
また、本実施形態では、前後のエネルギー吸収部材13,14の内板部21eに、上方からの荷重が入力した際に変形し易い脆弱部としての溝部28を設けたが、脆弱部はこれに限定されるものではない。例えば、前後方向に並ぶように形成された複数の開口部などであってもよい。或いは、本実施形態では、前後のエネルギー吸収部材13,14の内板部21eに、上方からの荷重が入力した際に変形し易い脆弱部としての溝部28を設けたが、脆弱部を設けなくてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、前後のエネルギー吸収部材13,14の前後のフランジ部21a,21bの車幅方向外側面30を、ルーフ側板部3bの車幅方向内側面7から車幅方向内側へ離間させたが、これに限定されるものではなく、前後のエネルギー吸収部材13,14の前後のフランジ部21a,21bの車幅方向外側面30をルーフ側板部3bの車幅方向内側面7に当接させてもよい。
【0041】
また、本実施形態では、前側のエネルギー吸収部材13の上端部に、上側のレインフォース31を固定したが、上側のレインフォース31を設けなくてもよい。また、後側のエネルギー吸収部材14の上端部に、ルーフ上板部3aを補強する上側のレインフォースを固定してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、ルーフパネル3のルーフ上板部3aを、前下方から後上方へ向かって、水平方向に対して傾斜させたが、これに限定されるものではない。
【0043】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示に係るルーフパネル補強構造は、ハイルーフ型の車両に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1:車両
3:ルーフパネル
3a:ルーフ上板部
3b:ルーフ側板部
5:ボディ
7:ルーフ側板部の車幅方向内側面
11:前側のレインフォース(第2レインフォース)
12:後側のレインフォース(レインフォース)
13,14:エネルギー吸収部材
21f:エネルギー吸収部材のルーフ支持板部(ルーフ支持部)
28:溝部(脆弱部)
30:エネルギー吸収部材の車幅方向外側面
33:前側のレインフォースの上端(第2上端)
34:後側のレインフォースの上端