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特許7194365ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法
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  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図1
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図2
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図3
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図4
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図5
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図6A
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図6B
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図6C
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図6D
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図7
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図8
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図9
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図10
  • 特許-ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20221215BHJP
   G01M 11/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01M11/00 T
G01M11/02 A
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022519612
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2020043685
(87)【国際公開番号】W WO2022070437
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2020168022
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020180850
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.発行者名 社団法人映像情報メディア学会(ITE) 2.刊行物名 第26回ディスプレイ国際ワークショップ(IDW’19)予稿集,第204頁 3.発行日 令和1年11月26日 〔刊行物等〕 1.集会名 第26回ディスプレイ国際ワークショップ(IDW’19) 2.開催日 令和1年11月27日 〔刊行物等〕 1.発行者名 株式会社化学工業日報社 2.刊行物名 化学工業日報,第1面 3.発行日 令和2年3月5日 〔刊行物等〕 1.掲載日 令和2年3月5日 2.掲載アドレス https://www.dnp.co.jp/news/detail/10157821_1587.html 〔刊行物等〕 1.発行者名 社団法人映像情報メディア学会(ITE) 2.刊行物名 ディスプレイ技術シンポジウム2020予稿集,第15頁~第20頁 3.発行日 令和2年3月6日 〔刊行物等〕 1.集会名 ディスプレイ技術シンポジウム2020 2.開催日 令和2年8月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】倉重 牧夫
(72)【発明者】
【氏名】古井 玄
(72)【発明者】
【氏名】石田 一敏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕子
(72)【発明者】
【氏名】恒川 雅行
(72)【発明者】
【氏名】岩田 行光
(72)【発明者】
【氏名】中村 典永
(72)【発明者】
【氏名】西尾 俊平
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-304648(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021388(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/085308(WO,A1)
【文献】特開2010-169788(JP,A)
【文献】特開2009-175041(JP,A)
【文献】特開2009-074981(JP,A)
【文献】特開2004-239663(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103929130(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108088658(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/02
G01N 21/55 - G01N 21/57
G02B 5/20
G02B 5/02
G02F 1/1335
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ディスプレイの表面に配置された防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第1の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第1の2次元イメージセンサを用いて第1の測定条件で測定された、比較基準とする第1のぎらつきコントラストと、前記第1の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第2の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第2の2次元イメージセンサを用いて前記第1の測定条件と異なる第2の測定条件で測定された、比較対象とする第2のぎらつきコントラストと、前記第2の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記第1のぎらつきコントラストとの比較のために、前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との比率に基づいて前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程とを備え、
前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程は、以下の数式(1)にしたがって行われる、ぎらつきコントラストの補正方法。
2a=S2×(F2/F1)×(d2/d1)×(f1/f2)×(M2/M1)0.5 (1)
但し、
2a:補正後の第2のぎらつきコントラスト
2:補正前の第2のぎらつきコントラスト
F1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの像側実効F値、
F2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの像側実効F値、
d1:前記第1の測定条件としての前記防眩層から前記第1の撮像レンズまでの距離
d2:前記第2の測定条件としての前記防眩層から前記第2の撮像レンズまでの距離
f1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの実効焦点距離、
f2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの実効焦点距離、
M1:以下の数式(2)に示される値、
M2:以下の数式(3)に示される値
【数1】
但し、
Ac1:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F1×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am1:前記第1の測定条件としての前記第1の2次元イメージセンサの画素ピッチをp1と定義した場合にp1で表現されるパラメータ
erf:標準誤差関数
【数2】
但し、
Ac2:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F2×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am2:前記第2の測定条件としての前記第2の2次元イメージセンサの画素ピッチをp2と定義した場合にp2で表現されるパラメータ
【請求項2】
電子ディスプレイの表面に配置された防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第1の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第1の2次元イメージセンサを用いて第1の測定条件で測定された、比較基準とする第1のぎらつきコントラストと、前記第1の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第2の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第2の2次元イメージセンサを用いて前記第1の測定条件と異なる第2の測定条件で測定された、比較対象とする第2のぎらつきコントラストと、前記第2の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記第1のぎらつきコントラストとの比較のために、前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との比率に基づいて前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程とを備え、
前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程は、以下の数式(4)にしたがって行われる、ぎらつきコントラストの補正方法。
2a=S2×(F2/F1)×(m1/m2)×(M2/M1)0.5 (4)
但し、
2a:補正後の第2のぎらつきコントラスト
2:補正前の第2のぎらつきコントラスト
F1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの像側実効F値、
F2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの像側実効F値、
m1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの倍率
m2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの倍率
M1:以下の数式(2)に示される値、
M2:以下の数式(3)に示される値
【数3】
但し、
Ac1:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F1×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am1:前記第1の測定条件としての前記第1の2次元イメージセンサの画素ピッチをp1と定義した場合にp1で表現されるパラメータ
erf:標準誤差関数
【数4】
但し、
Ac2:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F2×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am2:前記第2の測定条件としての前記第2の2次元イメージセンサの画素ピッチをp2と定義した場合にp2で表現されるパラメータ
【請求項3】
電子ディスプレイの表面に配置された防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第1の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第1の2次元イメージセンサを用いて第1の測定条件で測定された、比較基準とする第1のぎらつきコントラストと、前記第1の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第2の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第2の2次元イメージセンサを用いて前記第1の測定条件と異なる第2の測定条件で測定された、比較対象とする第2のぎらつきコントラストと、前記第2の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記第1のぎらつきコントラストとの比較のために、前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との比率に基づいて前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程とを備え、
前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程は、以下の数式(5)にしたがって行われる、ぎらつきコントラストの補正方法。
2a=S2×(F2’/F1’)×(M2/M1)0.5 (5)
但し、
2a:補正後の第2のぎらつきコントラスト
2:補正前の第2のぎらつきコントラスト
F1’:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの物体側実効F値、
F2’:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの物体側実効F値、
M1:以下の数式(2)に示される値、
M2:以下の数式(3)に示される値
【数5】
但し、
Ac1:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F1×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am1:前記第1の測定条件としての前記第1の2次元イメージセンサの画素ピッチをp1と定義した場合にp1で表現されるパラメータ
erf:標準誤差関数
【数6】
但し、
Ac2:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F2×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am2:前記第2の測定条件としての前記第2の2次元イメージセンサの画素ピッチをp2と定義した場合にp2で表現されるパラメータ
【請求項4】
電子ディスプレイの表面に配置された防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第1の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第1の2次元イメージセンサを用いて第1の測定条件で測定された、比較基準とする第1のぎらつきコントラストと、前記第1の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第2の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第2の2次元イメージセンサを用いて前記第1の測定条件と異なる第2の測定条件で測定された、比較対象とする第2のぎらつきコントラストと、前記第2の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記第1のぎらつきコントラストとの比較のために、前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程と、を備え、
前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程は、
前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との間に以下の数式(6)が成立する場合に、前記第1の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像との間で画像に基づいて算出されるMTFが揃うように、前記第2の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像に補正演算を行う工程と、
前記補正演算で得られた画像から補正後の第2のぎらつきコントラストを取得する工程と、を有し、
前記補正演算を行う工程は、前記第2の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像の解像度を調整するエンハンスフィルタの係数を調整する工程を有する、ぎらつきコントラストの補正方法。
S1=S2 (6)
但し、
S1:前記第1の測定条件としての前記第1の2次元イメージセンサ上への前記出射光の回折限界スポットの結像に寄与する前記防眩層上の発光領域の大きさであって、以下の数式(7)を満足する。
S2:前記第2の測定条件としての前記第2の2次元イメージセンサ上への前記出射光の回折限界スポットの結像に寄与する前記防眩層上の発光領域の大きさであって、以下の数式(8)を満足する。
【数7】
但し、
R1:前記第1の2次元イメージセンサ上の前記回折限界スポットの大きさ
m1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの倍率
F1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの像側実効F値、
d1:前記第1の測定条件としての前記防眩層から前記第1の撮像レンズまでの距離、
f1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの実効焦点距離、
F1’:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの物体側実効F値、
【数8】
但し、
R2:前記第2の2次元イメージセンサ上の前記回折限界スポットの大きさ
m2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの倍率
F2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの像側実効F値、
d2:前記第2の測定条件としての前記防眩層から前記第2の撮像レンズまでの距離、
f2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの実効焦点距離、
F2’:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの物体側実効F値
【請求項5】
前記補正演算を行う工程は、
前記第2の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像のエッジプロファイルを生成する工程と、
前記生成されたエッジプロファイルを微分することで線広がり関数を算出する工程と、
前記算出された線広がり関数をフーリエ変換することでMTFを算出する工程と、
前記算出されたMTFを前記第1の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像に基づくMTFと比較する工程と、を更に有する請求項4に記載のぎらつきコントラストの補正方法。
【請求項6】
前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程は、前記第2の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像に補正演算を行う工程と、前記補正演算で得られた画像から補正後の第2のぎらつきコントラストを取得する工程との間に、前記補正演算で得られた画像の放射輝度平均値を前記第1の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像の放射輝度平均値に揃える工程を有する、請求項4又は5に記載のぎらつきコントラストの補正方法。
【請求項7】
前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程は、前記第2の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像に補正演算を行う工程と、前記補正演算で得られた画像の放射輝度平均値を前記第1の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像の放射輝度平均値に揃える工程との間に、前記補正演算で得られた画像から前記電子ディスプレイの画素により生じた画像成分を除去する工程を有する、請求項6に記載のぎらつきコントラストの補正方法。
【請求項8】
電子ディスプレイの表面に配置された防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる仮想の撮像レンズおよび前記出射光が結像される仮想の2次元イメージセンサを用いた仮想の測定条件で仮想的に測定された、比較基準とする第3のぎらつきコントラストと、前記仮想の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる実際の撮像レンズおよび前記出射光が結像される実際の2次元イメージセンサを用いた実際の測定条件で実測された、比較対象とする第4のぎらつきコントラストと、前記実際の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記第3のぎらつきコントラストとの比較のために、前記第4のぎらつきコントラストを補正する工程とを備え、
前記第4のぎらつきコントラストを補正する工程は、
前記仮想の測定条件と前記実際の測定条件との間に以下の数式(9)が成立する場合に、以下の数式(10)にしたがって前記第4のぎらつきコントラストを補正する工程を有する、ぎらつきコントラストの補正方法。
S3≠S4 (9)
4a=S4×(S4/S3) (10)
但し、
S3:前記仮想の測定条件としての2次元イメージセンサ上への防眩層からの出射光の回折限界スポットの結像に寄与する防眩層上の発光領域の大きさであって、以下の数式(11)を満足する。
S4:前記実際の測定条件としての2次元イメージセンサ上への防眩層からの出射光の回折限界スポットの結像に寄与する防眩層上の発光領域の大きさであって、以下の数式(12)を満足する。
4a:補正後の第4のぎらつきコントラスト
4:補正前の第4のぎらつきコントラスト
【数9】
但し、
R3:前記2次元イメージセンサ上の前記回折限界スポットの大きさ
m3:前記仮想の測定条件としての撮像レンズの倍率
F3:前記仮想の測定条件としての撮像レンズの像側実効F値、
d3:前記仮想の測定条件としての防眩層から撮像レンズまでの距離
f3:前記仮想の測定条件としての撮像レンズの実効焦点距離、
F3’:前記仮想の測定条件としての撮像レンズの物体側実効F値
【数10】
但し、
R4:前記2次元イメージセンサ上の前記回折限界スポットの大きさ
m4:前記実際の測定条件としての撮像レンズの倍率
F4:前記実際の測定条件としての撮像レンズの像側実効F値、
d4:前記実際の測定条件としての防眩層から撮像レンズまでの距離
f4:前記実際の測定条件としての撮像レンズの実効焦点距離、
F4’:前記実際の測定条件としての撮像レンズの物体側実効F値
【請求項9】
前記第4のぎらつきコントラストを補正する工程は、以下の数式(13)にしたがって前記第4のぎらつきコントラストを補正する工程を更に有する、請求項8に記載のぎらつきコントラストの補正方法。
4a’=S4a×(M4/M3)0.5 (13)
但し、
4a’:数式(13)による補正後の第4のぎらつきコントラスト
M3:以下の数式(14)に示される値、
M4:以下の数式(15)に示される値
【数11】
但し、
Ac3:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F3×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am3:前記仮想の測定条件としての2次元イメージセンサの画素ピッチをp3と定義した場合にp3で表現されるパラメータ
erf:標準誤差関数
【数12】
但し、
Ac4:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F4×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am4:前記仮想の測定条件としての2次元イメージセンサの画素ピッチをp4と定義した場合にp4で表現されるパラメータ
【請求項10】
前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との間または前記仮想の測定条件と前記実際の測定条件との間には、前記電子ディスプレイと、前記防眩層と、撮像レンズおよび2次元イメージセンサを備えた測定装置と、のそれぞれの構造上の条件が同一であり、前記防眩層から前記撮像レンズまでの距離を含む前記測定装置を用いた測定条件が異なる関係が成立する、請求項1乃至5、8及び9のいずれか1項に記載のぎらつきコントラストの補正方法。
【請求項11】
前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との間または前記仮想の測定条件と前記実際の測定条件との間には、前記電子ディスプレイおよび前記防眩層のそれぞれの構造上の条件が同一であり、撮像レンズおよび2次元イメージセンサを備えた測定装置の構造上の条件と、前記防眩層から前記撮像レンズまでの距離を含む前記測定装置を用いた測定条件とが異なる関係が成立する、請求項1乃至5、8及び9のいずれか1項に記載のぎらつきコントラストの補正方法。
【請求項12】
前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との間または前記仮想の測定条件と前記実際の測定条件との間には、前記電子ディスプレイと、撮像レンズおよび2次元イメージセンサを備えた測定装置と、のそれぞれの構造上の条件が同一であり、前記防眩層の構造上の条件と、前記防眩層から前記撮像レンズまでの距離を含む前記測定装置を用いた測定条件とが異なる関係が成立する、請求項1乃至5、8及び9のいずれか1項に記載のぎらつきコントラストの補正方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のぎらつきコントラストの補正方法で補正された比較対象とするぎらつきコントラストを、比較基準とするぎらつきコントラストと比較する工程を備える、ぎらつきコントラストの比較方法。
【請求項14】
前記補正された比較対象とするぎらつきコントラストと前記比較基準とするぎらつきコントラストとの比較結果を出力する工程を更に備える、請求項13に記載のぎらつきコントラストの比較方法。
【請求項15】
検査対象の電子ディスプレイがぎらつきコントラストの合格基準を満たしているか否かを検査する工程を備え、
前記検査する工程は、請求項13に記載の比較する工程を有し、
前記比較する工程は、
前記比較対象とするぎらつきコントラストおよび前記比較基準とするぎらつきコントラストの一方として前記検査対象の電子ディスプレイのぎらつきコントラストを適用し、前記比較対象とするぎらつきコントラストおよび前記比較基準とするぎらつきコントラストの他方として前記合格基準のぎらつきコントラストを適用し、前記検査対象の電子ディスプレイのぎらつきコントラストを前記合格基準のぎらつきコントラストと比較する工程である、電子ディスプレイの製造方法。
【請求項16】
前記検査対象の電子ディスプレイは、表面に防眩層が配置されていない電子ディスプレイであり、前記検査する工程において、ぎらつきコントラストを測定するために前記表面に検査用の防眩層が配置され、
前記検査用の防眩層は、予め決められた特性を有する防眩層である、請求項15に記載の電子ディスプレイの製造方法。
【請求項17】
前記検査対象の電子ディスプレイは、表面に防眩層が配置された電子ディスプレイである、請求項15に記載の電子ディスプレイの製造方法。
【請求項18】
検査対象の防眩層を形成する工程と、
前記検査対象の防眩層がぎらつきコントラストの合格基準を満たしているか否かを検査する工程と、を備え、
前記検査する工程は、請求項13に記載の比較する工程を有し、
前記比較する工程は、
前記比較対象とするぎらつきコントラストおよび前記比較基準とするぎらつきコントラストの一方として前記検査対象の防眩層が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを適用し、前記比較対象とするぎらつきコントラストおよび前記比較基準とするぎらつきコントラストの他方として前記合格基準のぎらつきコントラストを適用し、前記検査対象の防眩層が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを前記合格基準のぎらつきコントラストと比較する工程を有する、防眩層の製造方法。
【請求項19】
前記検査対象の防眩層は、前記検査する工程において、ぎらつきコントラストを測定するために検査用の電子ディスプレイの表面に配置され、
前記検査用の電子ディスプレイは、予め決められた特性を有する電子ディスプレイである、請求項18に記載の防眩層の製造方法。
【請求項20】
前記検査対象の防眩層を形成する工程は、
基材上に防眩機能を有する層を設ける工程を有する、
請求項18又は19に記載の防眩層の製造方法。
【請求項21】
前記基材上に前記防眩機能を有する層を設ける工程は、
前記基材上に樹脂を含有する防眩層用組成物を塗布する工程と、
前記塗布された防眩層用組成物を硬化させる工程と、
を有する、請求項20に記載の防眩層の製造方法。
【請求項22】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のぎらつきコントラストの補正方法を用いて比較対象とするぎらつきコントラストを補正する補正部と、
補正された比較対象とするぎらつきコントラストと比較基準とするぎらつきコントラストとを比較する比較部とを備える、ぎらつきコントラストの比較装置。
【請求項23】
請求項13に記載のぎらつきコントラストの比較方法を用いて防眩層を選択する工程を備え、
前記防眩層を選択する工程は、
前記比較基準とするぎらつきコントラストとして、第1の防眩層が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを、第1の光学測定装置で測定した第1の測定コントラストを適用し、
前記比較対象とするぎらつきコントラストとして、前記第1の防眩層と異なる第2の防眩層が表面に配置された前記電子ディスプレイのぎらつきコントラストを、前記第1の光学測定装置と異なる第2の光学測定装置で測定した第2の測定コントラストを適用し、
前記第1の測定コントラストと、前記第2の測定コントラストとを、両コントラストのうち一方の補正をともなう前記比較方法で比較する工程と、
前記比較の結果に基づいて、前記第1の防眩層および前記第2の防眩層のうち一方の防眩層を選択する工程と、
を有する防眩層の選択方法。
【請求項24】
前記一方の防眩層を選択する工程は、前記第1の防眩層および前記第2の防眩層のうちの対応する測定コントラストが良好な防眩層を選択する工程を有する、請求項23に記載の防眩層の選択方法。
【請求項25】
請求項13に記載のぎらつきコントラストの比較方法を用いて表示素子を選択する工程を備え、
前記表示素子を選択する工程は、
前記比較基準とするぎらつきコントラストとして、第1の表示素子の表面に第3の防眩層を配置した状態で、第3の光学測定装置によって測定された第3の測定コントラストを適用し、
前記比較対象とするぎらつきコントラストとして、前記第1の表示素子と異なる第2の表示素子の表面に前記第3の防眩層を配置した状態で、前記第3の光学測定装置と異なる第4の光学測定装置によって測定された第4の測定コントラストを適用し、
前記第3の測定コントラストと、前記第4の測定コントラストとを、両コントラストのうち一方の補正をともなう前記比較方法で比較する工程と、
前記比較の結果に基づいて、前記第1の表示素子および前記第2の表示素子のうち一方の表示素子を選択する工程と、
を有する表示素子の選択方法。
【請求項26】
前記一方の表示素子を選択する工程は、前記第1の表示素子および前記第2の表示素子のうちの対応する測定コントラストが良好な表示素子を選択する工程を有する、請求項25に記載の表示素子の選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2009-175041Aは、防眩フィルムを備えた電子ディスプレイ表示画像のぎらつきによる輝度ばらつきを定量的に測定評価する技術を開示している。JP2009-175041Aに記載されたぎらつき測定方法は、カメラで撮像したぎらつき画像から2次元フーリエ変換を用いて画像処理によりぎらつき以外の電子ディスプレイ由来の定周期成分を除去するように構成されている。また、JP2009-175041Aに記載されたぎらつき測定方法は、定周期成分を除去したぎらつき画像の輝度ばらつきの標準偏差を平均値で除した値をぎらつきコントラストとして評価するように構成されている。
【0003】
しかしながら、JP2009-175041Aに記載のぎらつき測定装置は、撮像条件がぎらつきコントラストに与える影響について考察していない。また、JP2009-175041Aに記載のぎらつき測定装置は、異なる測定条件で測定された複数のぎらつきコントラスト同士を適切に比較することについて何ら有効な提案をしていない。
【発明の開示】
【0004】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものである。すなわち、本開示は、測定条件が異なる複数のぎらつきコントラストを適切に比較することができるぎらつきコントラストの補正方法、比較方法および比較装置、電子ディスプレイの製造方法、及び防眩層の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法は、
電子ディスプレイの表面に配置された防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第1の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第1の2次元イメージセンサを用いて第1の測定条件で測定された比較基準とする第1のぎらつきコントラストと、前記第1の測定条件を示す情報とを取得する工程と、
前記防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第2の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第2の2次元イメージセンサを用いて前記第1の測定条件と異なる第2の測定条件で測定された比較対象とする第2のぎらつきコントラストと、前記第2の測定条件を示す情報とを取得する工程と、
前記第1のぎらつきコントラストとの比較のために前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との比率に基づいて前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程とを備え
前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程は、以下の数式(1)にしたがって行われる、ぎらつきコントラストの補正方法。
2a=S 2×(F2/F1)×(d2/d1)×(f1/f2)×(M2/M1) 0.5 (1)
但し、
2a:補正後の第2のぎらつきコントラスト
2:補正前の第2のぎらつきコントラスト
F1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの像側実効F値、
F2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの像側実効F値、
d1:前記第1の測定条件としての前記防眩層から前記第1の撮像レンズまでの距離
d2:前記第2の測定条件としての前記防眩層から前記第2の撮像レンズまでの距離
f1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの実効焦点距離、
f2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの実効焦点距離、
M1:以下の数式(2)に示される値、
M2:以下の数式(3)に示される値
【数1】
但し、
Ac1:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F1×λ)/2) ×πで表現されるパラメータ
Am1:前記第1の測定条件としての前記第1の2次元イメージセンサの画素ピッチをp1と定義した場合にp1 で表現されるパラメータ
erf:標準誤差関数
【数2】
但し、
Ac2:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F2×λ)/2) ×πで表現されるパラメータ
Am2:前記第2の測定条件としての前記第2の2次元イメージセンサの画素ピッチをp2と定義した場合にp2 で表現されるパラメータ
【0007】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法は、
電子ディスプレイの表面に配置された防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第1の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第1の2次元イメージセンサを用いて第1の測定条件で測定された、比較基準とする第1のぎらつきコントラストと、前記第1の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第2の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第2の2次元イメージセンサを用いて前記第1の測定条件と異なる第2の測定条件で測定された、比較対象とする第2のぎらつきコントラストと、前記第2の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記第1のぎらつきコントラストとの比較のために、前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との比率に基づいて前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程とを備え、
前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程は、以下の数式(4)にしたがって行われる。
2a=S2×(F2/F1)×(m1/m2)×(M2/M1)0.5 (4)
但し、
2a:補正後の第2のぎらつきコントラスト
2:補正前の第2のぎらつきコントラスト
F1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの像側実効F値、
F2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの像側実効F値、
m1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの倍率
m2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの倍率
M1:以下の数式(2)に示される値、
M2:以下の数式(3)に示される値
【数3】
但し、
Ac1:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F1×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am1:前記第1の測定条件としての前記第1の2次元イメージセンサの画素ピッチをp1と定義した場合にp1で表現されるパラメータ
erf:標準誤差関数
【数4】
但し、
Ac2:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F2×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am2:前記第2の測定条件としての前記第2の2次元イメージセンサの画素ピッチをp2と定義した場合にp2で表現されるパラメータ
【0008】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法
電子ディスプレイの表面に配置された防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第1の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第1の2次元イメージセンサを用いて第1の測定条件で測定された、比較基準とする第1のぎらつきコントラストと、前記第1の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第2の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第2の2次元イメージセンサを用いて前記第1の測定条件と異なる第2の測定条件で測定された、比較対象とする第2のぎらつきコントラストと、前記第2の測定条件を示す情報と、を取得する工程と、
前記第1のぎらつきコントラストとの比較のために、前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との比率に基づいて前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程とを備え、
前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程は、以下の数式(5)にしたがって行われる。
2a=S2×(F2’/F1’)×(M2/M1)0.5 (5)
但し、
2a:補正後の第2のぎらつきコントラスト
2:補正前の第2のぎらつきコントラスト
F1’:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの物体側実効F値、
F2’:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの物体側実効F値、
M1:以下の数式(2)に示される値、
M2:以下の数式(3)に示される値
【数5】
但し、
Ac1:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F1×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am1:前記第1の測定条件としての前記第1の2次元イメージセンサの画素ピッチをp1と定義した場合にp1で表現されるパラメータ
erf:標準誤差関数
【数6】
但し、
Ac2:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F2×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am2:前記第2の測定条件としての前記第2の2次元イメージセンサの画素ピッチをp2と定義した場合にp2で表現されるパラメータ
【0009】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法は、
電子ディスプレイの表面に配置された防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第1の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第1の2次元イメージセンサを用いて第1の測定条件で測定された比較基準とする第1のぎらつきコントラストと、前記第1の測定条件を示す情報とを取得する工程と、
前記防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる第2の撮像レンズおよび前記出射光が結像される第2の2次元イメージセンサを用いて前記第1の測定条件と異なる第2の測定条件で測定された比較対象とする第2のぎらつきコントラストと、前記第2の測定条件を示す情報とを取得する工程と、
前記第1のぎらつきコントラストとの比較のために前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程と、を備え、
前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程は、
前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との間に以下の数式(6)が成立する場合に、前記第1の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像との間で画像に基づいて算出されるMTFが揃うように、前記第2の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像に補正演算を行う工程と、
前記補正演算で得られた画像から補正後の第2のぎらつきコントラストを取得する工程と、を有
前記補正演算を行う工程は、前記第2の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像の解像度を調整するエンハンスフィルタの係数を調整する工程を有する、ぎらつきコントラストの補正方法。
S1=S2 (6)
但し、
S1:前記第1の測定条件としての前記第1の2次元イメージセンサ上への前記出射光の回折限界スポットの結像に寄与する前記防眩層上の発光領域の大きさであって、以下の数式(7)を満足する。
S2:前記第2の測定条件としての前記第2の2次元イメージセンサ上への前記出射光の回折限界スポットの結像に寄与する前記防眩層上の発光領域の大きさであって、以下の数式(8)を満足する。
【数7】
但し、
R1:前記第1の2次元イメージセンサ上の前記回折限界スポットの大きさ
m1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの倍率
F1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの像側実効F値、
d1:前記第1の測定条件としての前記防眩層から前記第1の撮像レンズまでの距離、
f1:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの実効焦点距離、
F1’:前記第1の測定条件としての前記第1の撮像レンズの物体側実効F値、
【数8】
但し、
R2:前記第2の2次元イメージセンサ上の前記回折限界スポットの大きさ
m2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの倍率
F2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの像側実効F値、
d2:前記第2の測定条件としての前記防眩層から前記第2の撮像レンズまでの距離、
f2:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの実効焦点距離、
F2’:前記第2の測定条件としての前記第2の撮像レンズの物体側実効F値
【0011】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法において、
前記補正演算を行う工程は、
前記第2の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像のエッジプロファイルを生成する工程と、
前記生成されたエッジプロファイルを微分することで線広がり関数を算出する工程と、
前記算出された線広がり関数をフーリエ変換することでMTFを算出する工程と、
前記算出されたMTFを前記第1の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像に基づくMTFと比較する工程と、を更に有していてもよい。
【0012】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法において、
前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程は、前記第2の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像に補正演算を行う工程と、前記補正演算で得られた画像から補正後の第2のぎらつきコントラストを取得する工程との間に、前記補正演算で得られた画像の放射輝度平均値を前記第1の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像の放射輝度平均値に揃える工程を有していてもよい。
【0013】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法において、
前記第2のぎらつきコントラストを補正する工程は、前記第2の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像に補正演算を行う工程と、前記補正演算で得られた画像の放射輝度平均値を前記第1の測定条件の下で撮像された前記出射光の画像の放射輝度平均値に揃える工程との間に、前記補正演算で得られた画像から前記電子ディスプレイの画素により生じた画像成分を除去する工程を有していてもよい。
【0014】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法は、
電子ディスプレイの表面に配置された防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる仮想の撮像レンズおよび前記出射光が結像される仮想の2次元イメージセンサを用いた仮想の測定条件で仮想的に測定された比較基準とする第3のぎらつきコントラストと、前記仮想の測定条件を示す情報とを取得する工程と、
前記防眩層により生じたぎらつきコントラストであって、前記防眩層からの出射光を結像させる実際の撮像レンズおよび前記出射光が結像される実際の2次元イメージセンサを用いた実際の測定条件で実測された比較対象とする第4のぎらつきコントラストと、前記実際の測定条件を示す情報とを取得する工程と、
前記第3のぎらつきコントラストとの比較のために前記第4のぎらつきコントラストを補正する工程とを備え、
前記第4のぎらつきコントラストを補正する工程は、
前記仮想の測定条件と前記実際の測定条件との間に以下の数式(9)が成立する場合に、以下の数式(10)にしたがって前記第4のぎらつきコントラストを補正する工程を有する、ぎらつきコントラストの補正方法。
S3≠S4 (9)
4a=S4×(S4/S3) (10)
但し、
S3:前記仮想の測定条件としての2次元イメージセンサ上への防眩層からの出射光の回折限界スポットの結像に寄与する防眩層上の発光領域の大きさであって、以下の数式(11)を満足する。
S4:前記実際の測定条件としての2次元イメージセンサ上への防眩層からの出射光の回折限界スポットの結像に寄与する防眩層上の発光領域の大きさであって、以下の数式(12)を満足する。
4a:補正後の第4のぎらつきコントラスト
4:補正前の第4のぎらつきコントラスト
【数9】
但し、
R3:前記2次元イメージセンサ上の前記回折限界スポットの大きさ
m3:前記仮想の測定条件としての撮像レンズの倍率
F3:前記仮想の測定条件としての撮像レンズの像側実効F値、
d3:前記仮想の測定条件としての防眩層から撮像レンズまでの距離
f3:前記仮想の測定条件としての撮像レンズの実効焦点距離、
F3’:前記仮想の測定条件としての撮像レンズの物体側実効F値
【数10】
但し、
R4:前記2次元イメージセンサ上の前記回折限界スポットの大きさ
m4:前記実際の測定条件としての撮像レンズの倍率
F4:前記実際の測定条件としての撮像レンズの像側実効F値、
d4:前記実際の測定条件としての防眩層から撮像レンズまでの距離
f4:前記実際の測定条件としての撮像レンズの実効焦点距離、
F4’:前記実際の測定条件としての撮像レンズの物体側実効F値
【0015】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法において、
前記第4のぎらつきコントラストを補正する工程は、以下の数式(13)にしたがって前記第4のぎらつきコントラストを補正する工程を更に有していてもよい。
4a’=S4a×(M4/M3)0.5 (13)
但し、
4a’:数式(13)による補正後の第4のぎらつきコントラスト
M3:以下の数式(14)に示される値、
M4:以下の数式(15)に示される値
【数11】
但し、
Ac3:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F3×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am3:前記仮想の測定条件としての2次元イメージセンサの画素ピッチをp3と定義した場合にp3で表現されるパラメータ
erf:標準誤差関数
【数12】
但し、
Ac4:前記出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F4×λ)/2)×πで表現されるパラメータ
Am4:前記仮想の測定条件としての2次元イメージセンサの画素ピッチをp4と定義した場合にp4で表現されるパラメータ
【0016】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法において、
前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との間または前記仮想の測定条件と前記実際の測定条件との間には、前記電子ディスプレイと、前記防眩層と、撮像レンズおよび2次元イメージセンサを備えた測定装置と、のそれぞれの構造上の条件が同一であり、前記防眩層から前記撮像レンズまでの距離を含む前記測定装置を用いた測定条件が異なる関係が成立してもよい。
【0017】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法において、
前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との間または前記仮想の測定条件と前記実際の測定条件との間には、前記電子ディスプレイおよび前記防眩層のそれぞれの構造上の条件が同一であり、撮像レンズおよび2次元イメージセンサを備えた測定装置の構造上の条件と、前記防眩層から前記撮像レンズまでの距離を含む前記測定装置を用いた測定条件とが異なる関係が成立してもよい。
【0018】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法において、
前記第1の測定条件と前記第2の測定条件との間または前記仮想の測定条件と前記実際の測定条件との間には、前記電子ディスプレイと、撮像レンズおよび2次元イメージセンサを備えた測定装置と、のそれぞれの構造上の条件が同一であり、前記防眩層の構造上の条件と、前記防眩層から前記撮像レンズまでの距離を含む前記測定装置を用いた測定条件とが異なる関係が成立してもよい。
【0019】
本開示によるぎらつきコントラストの比較方法は、
前記ぎらつきコントラストの補正方法で補正された比較対象とするぎらつきコントラストを、比較基準とするぎらつきコントラストと比較する工程を備える。
【0020】
本開示によるぎらつきコントラストの比較方法において、
前記補正された比較対象とするぎらつきコントラストと前記比較基準とするぎらつきコントラストとの比較結果を出力する工程を更に備えていてもよい。
【0021】
本開示による電子ディスプレイの製造方法は、
検査対象の電子ディスプレイがぎらつきコントラストの合格基準を満たしているか否かを検査する工程を備え、
前記検査する工程は、前記比較する工程を有し、
前記比較する工程は、
前記比較対象とするぎらつきコントラストおよび前記比較基準とするぎらつきコントラストの一方として前記検査対象の電子ディスプレイのぎらつきコントラストを適用し、前記比較対象とするぎらつきコントラストおよび前記比較基準とするぎらつきコントラストの他方として前記合格基準のぎらつきコントラストを適用し、前記検査対象の電子ディスプレイのぎらつきコントラストを前記合格基準のぎらつきコントラストと比較する工程である。
【0022】
本開示による電子ディスプレイの製造方法において、
前記検査対象の電子ディスプレイは、表面に防眩層が配置されていない電子ディスプレイであり、前記検査する工程において、ぎらつきコントラストを測定するために前記表面に検査用の防眩層が配置され、
前記検査用の防眩層は、予め決められた特性を有する防眩層であってもよい。
【0023】
本開示による電子ディスプレイの製造方法において、
前記検査対象の電子ディスプレイは、表面に防眩層が配置された電子ディスプレイであってもよい。
【0024】
本開示による防眩層の製造方法は、
検査対象の防眩層を形成する工程と、
前記検査対象の防眩層がぎらつきコントラストの合格基準を満たしているか否かを検査する工程と、を備え、
前記検査する工程は、前記比較する工程を有し、
前記比較する工程は、
前記比較対象とするぎらつきコントラストおよび前記比較基準とするぎらつきコントラストの一方として前記検査対象の防眩層が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを適用し、前記比較対象とするぎらつきコントラストおよび前記比較基準とするぎらつきコントラストの他方として前記合格基準のぎらつきコントラストを適用し、前記検査対象の防眩層が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを前記合格基準のぎらつきコントラストと比較する工程を有する。
【0025】
本開示による防眩層の製造方法において、
前記検査対象の防眩層は、前記検査する工程において、ぎらつきコントラストを測定するために検査用の電子ディスプレイの表面に配置され、
前記検査用の電子ディスプレイは、予め決められた特性を有する電子ディスプレイであってもよい。
【0026】
本開示による防眩層の製造方法において、
前記検査対象の防眩層を形成する工程は、
基材上に防眩機能を有する層を設ける工程を有していてもよい。
【0027】
前記基材上に前記防眩機能を有する層を設ける工程は、
前記基材上に樹脂を含有する防眩層用組成物を塗布する工程と、
前記塗布された防眩層用組成物を硬化させる工程と、
を有していてもよい。
【0028】
本開示による防眩層は、前記防眩層の製造方法を用いて製造された防眩層である。
【0029】
本開示によるぎらつきコントラストの比較装置は、
前記ぎらつきコントラストの補正方法を用いて比較対象とするぎらつきコントラストを補正する補正部と、
補正された比較対象とするぎらつきコントラストと比較基準とするぎらつきコントラストとを比較する比較部とを備える。
【0030】
本開示による防眩層の選択方法は、
前記ぎらつきコントラストの比較方法を用いて防眩層を選択する工程を備え、
前記防眩層を選択する工程は、
前記比較基準とするぎらつきコントラストとして、第1の防眩層が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを第1の光学測定装置で測定した第1の測定コントラストを適用し、
前記比較対象とするぎらつきコントラストとして、前記第1の防眩層と異なる第2の防眩層が表面に配置された前記電子ディスプレイのぎらつきコントラストを前記第1の光学測定装置と異なる第2の光学測定装置で測定した第2の測定コントラストを適用し、
前記第1の測定コントラストと前記第2の測定コントラストとを両コントラストのうち一方の補正をともなう前記比較方法比較する工程と、
前記比較の結果に基づいて、前記第1の防眩層および前記第2の防眩層のうち一方の防眩層を選択する工程と、
を有する。
【0031】
本開示による防眩層の選択方法において、
前記一方の防眩層を選択する工程は、前記第1の防眩層および前記第2の防眩層のうちの対応する測定コントラストが良好な防眩層を選択する工程を有していてもよい。
【0032】
本開示による防眩層は、
前記防眩層の選択方法によって選択された防眩層である。
【0033】
本開示による偏光板は、
前記防眩層の選択方法によって選択された防眩層が搭載された偏光板である。
【0034】
本開示による表示素子は、
前記防眩層の選択方法によって選択された防眩層が搭載された表示素子である。
【0035】
本開示による電子ディスプレイは、
前記防眩層の選択方法によって選択された防眩層が搭載された電子ディスプレイである。
【0036】
本開示による表示素子の選択方法は、
前記ぎらつきコントラストの比較方法を用いて、表面に防眩層が配置されていない電子ディスプレイである表示素子を選択する工程を備え、
前記表示素子を選択する工程は、
前記比較基準とするぎらつきコントラストとして、第1の表示素子の表面に第3の防眩層を配置した状態で第3の光学測定装置によって測定された第3の測定コントラストを適用し、
前記比較対象とするぎらつきコントラストとして、前記第1の表示素子と異なる第2の表示素子の表面に前記第3の防眩層を配置した状態で前記第3の光学測定装置と異なる第4の光学測定装置によって測定された第4の測定コントラストを適用し、
前記第3の測定コントラストと前記第4の測定コントラストとを両コントラストのうち一方の補正をともなう前記比較方法比較する工程と、
前記比較の結果に基づいて、前記第1の表示素子および前記第2の表示素子のうち一方の表示素子を選択する工程と、
を有する。
【0037】
本開示による表示素子の選択方法において、
前記一方の表示素子を選択する工程は、前記第1の表示素子および前記第2の表示素子のうちの対応する測定コントラストが良好な表示素子を選択する工程を有していてもよい。
【0038】
本開示による電子ディスプレイは、
前記表示素子の選択方法によって選択された表示素子を備えた電子ディスプレイである。
【0039】
本開示によるぎらつきコントラストの補正方法は、
電子ディスプレイの表面に配置された防眩層により生じた複数のぎらつきコントラストであって、互いに異なる複数の測定条件で測定された複数のぎらつきコントラストと、前記複数の測定条件を示す情報とを取得する工程と、
前記複数のぎらつきコントラストの比較のために前記複数の測定条件を示す情報に基づいて前記複数のぎらつきコントラストの少なくとも1つを補正する工程と、を備える。
【0040】
本開示による防眩層の製造装置は、
前記比較装置を備え、
前記補正部は、前記比較対象とするぎらつきコントラストとして検査対象の防眩層が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを補正し、
前記比較部は、前記検査対象の防眩層が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを、前記比較基準とするぎらつきコントラストとしての合格基準のぎらつきコントラストと比較する。
【0041】
本開示によれば、測定条件が異なる複数のぎらつきコントラストを適切に比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本実施形態によるぎらつきコントラストの比較方法を示すフローチャートである。
図2図2は、図1のぎらつきコントラストの比較方法に用いることができる測定系の一例を示す図である。
図3図3は、図1のぎらつきコントラストの比較方法を説明するための説明図である。
図4図4は、本実施形態の第1の変形例によるぎらつきコントラストの比較方法を示すフローチャートである。
図5図5は、本実施形態の第2の変形例によるぎらつきコントラストの比較方法を示すフローチャートである。
図6A図6Aは、本実施形態の第3の変形例によるぎらつきコントラストの比較方法の一例を示すフローチャートである。
図6B図6Bは、図6Aと異なる本実施形態の第3の変形例によるぎらつきコントラストの比較方法の一例を示すフローチャートである。
図6C図6Cは、図6Bのフローチャートの一部の工程を説明するための説明図である。
図6D図6Dは、図6Aおよび図6Bと異なる本実施形態の第3の変形例によるぎらつきコントラストの比較方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、図6A~Cのフローチャートの一部の工程の詳細な例を示すフローチャートである。
図8図8は、本実施形態の第4の変形例によるぎらつきコントラストの比較方法を示すフローチャートである。
図9図9は、本実施形態の第5の変形例によるぎらつきコントラストの比較方法を示すフローチャートである。
図10図10は、本実施形態によるぎらつきコントラストの比較方法に用いることができる疑似ディスプレイの一例を示す斜視図である。
図11図11は、ぎらつきコントラストの具体的な測定系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0044】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「同等」、「同一」等の用語や、長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0045】
また、本明細書において用いる光学的用語は、JISZ8120:2001光学用語に沿う。また、本明細書において用いられる「予め決められた特性」との用語において、「特性」とは、光学特性、物理特性などあらゆる特性をいう。特に、本開示の各数式、各補正方法、各製造方法、各選択方法などに必要な特性のことをいう。
【0046】
図1は、本実施形態によるぎらつきコントラストの比較方法を示すフローチャートである。図2は、図1のぎらつきコントラストの比較方法に用いることができる測定系の一例を示す図である。
【0047】
本実施形態によるぎらつきコントラストの比較方法は、発光型の電子ディスプレイの表面に配置された防眩層により生じるぎらつきコントラストを、測定条件が異なる場合でも適切に比較するために用いることができる。
【0048】
ぎらつきとは、ディスプレイの表示素子の画素マトリクスから出射した光が微細に凹凸加工された媒体および屈折率変調層などを通過するときに生じた散乱および屈折などによって、画面上に画素マトリクスサイズの小さな輝度分布を引き起こすことによって、ちらついて見える現象である。ぎらつきは、スパークルまたはスパークリングとも呼ぶが、本願では「ぎらつき」と表現する。より詳しくは、本願のぎらつきは、直視型ディスプレイの画素マトリクスと当該ディスプレイの表面の近くに配置された拡散層との組合せによる観察者の視覚系のセンサ面上への結像の結果生じる不規則な空間変調イメージをいう。
【0049】
ぎらつきコントラストとは、ぎらつき値を、ぎらつきパターンを構成する全照度分布データの平均値に対する百分率で表した値である。ぎらつき値とは、ぎらつきパターンを構成する全照度分布データの標準偏差である。ぎらつきパターンとは、測定範囲内において、単一色で点灯したディスプレイの表示画面を撮像するときの撮像素子面上での照度分布に相当する。より詳しくは、ぎらつきパターンとは、撮像することによって得られる、ディスプレイの表示素子の画素形状の画像成分が見えない2次元の照度分布データ又はディスプレイの表示素子の画素形状の画像成分が見える照度分布データから画素形状の影響を排除した2次元の階調データである。
【0050】
ただし、以下に示すように、照度分布の代わりに放射輝度分布を用いてぎらつきコントラストを定義することができる。すなわち、ぎらつきコントラストは、ぎらつきの度合いを示す代表的評価指数として次式で定義される。
【0051】
【数13】
数式(16)において、σは、測定用の2次元イメージセンサ面上における単色ぎらつきパターンの放射輝度分布の標準偏差である。また、数式(16)において、
【数14】
は、単色ぎらつきパターンの放射輝度の平均値である。数式(16)の右辺の分母および分子として、放射輝度の代わりに輝度を用いてもよい。
【0052】
このようなぎらつきコントラストを比較するため、図2に示される測定系は、電子ディスプレイ8と、第1の光学測定装置1Aと、第2の光学測定装置1Bと、比較装置100とを備える。
【0053】
第1の光学測定装置1Aは、比較基準とする第1のぎらつきコントラストを測定する装置である。第2の光学測定装置1Bは、比較対象とする第2のぎらつきコントラストを測定する装置である。比較装置100は、第1のぎらつきコントラストと第2のぎらつきコントラストとを比較する装置である。
【0054】
より詳しくは、電子ディスプレイ8は、画素マトリクス81とブラックマトリクス82とを有し、その表面部には、拡散層としての防眩層9が積層されている。防眩層9とは、例えば外光による反射光を抑制するためにディスプレイ8表面に設置される光拡散層などである。ブラックマトリクス82とは、従来知られているブラックマトリクスそのもの以外に、混色しないためのその他のブラックマトリクス的に作用する仕組みも含む。
【0055】
電子ディスプレイ8としては、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、量子ドット(QD)ディスプレイ、ミニLEDディスプレイ、マイクロLEDディスプレイなどを採用することができる。電子ディスプレイ8は、疑似ディスプレイであっても良い。疑似ディスプレイとは、平面状の拡散光源上に画素マトリクスを模した媒体を配置した構成である。画素マトリクスは、拡散光源上に直接存在してもよいし、別途積層してもよい。例えば、図10に示すように、平面白色光源801の発光部802上に画素を模したメタルマスク803を設置することで、疑似ディスプレイ800を作製することができる。
【0056】
防眩層9は、防眩機能を有する構造体であれば特に限定されない。防眩機能とは、防眩層に映り込む物体・光等の輪郭をぼかして見えにくくしたり、または映り込む物体・光そのものをぼかして見えにくくしたりする機能であり、眩しさを防止したりディスプレイで表示したい文字情報・動画・画像などの視認性を向上できる機能である。防眩層の表面には一般的には凹凸形状を有し、防眩機能が発現するならば、非常に微細な凹凸であってもよい。例えば、防眩層9は、A:基材上に防眩機能を有する単一または複数の層を設けた積層体、B:基材表面そのものが防眩機能を有する基材、C:AまたはBを表面に搭載したディスプレイまたは評価用のカラーフィルタ等の物品などであってもよい。また、防眩層9の防眩機能が発現する層は、防眩層を構成する複数の層の、いずれの位置に存在してもよい。視認側、ディスプレイ内部側、更には視認側とディスプレイ内部側の間に位置する層のいずれの位置でもよく、更には前記した複数位置に有してもよい。防眩層9は電子ディスプレイの表面に配置されるが、これは電子ディスプレイ8の画素マトリクス81とブラックマトリクス82よりも視認側に配置する部材であることを意味しており、そこに配置することでぎらつきを発生する。より具体的な例として、防眩層9は、硝子またはプラスチック上にサンドブラストや化学エッチングなどで適度な凹凸を設けた防眩層9であってもよい。または、防眩層9は、100μm以下の薄い硝子フィルムやプラスチックフィルム上に、反応性有機・無機系樹脂バインダー、様々な粒径の有機・無機微粒子などを単独または混合してコーティング、硬化することで凹凸を設けた防眩層9であってもよい。あるいは、防眩層9は、金型や賦形フィルムなどによるエンボス凹凸を設けた防眩層9であってもよい。また、上記したようなバインター、バインダーと屈折率が異なる有機・無機微粒子を混合したコーティング組成物や、相溶性の低い複数の樹脂同志や屈折率の異なる複数の樹脂同志を混合したバインダーを含むコーティング組成物等を、あえて凹凸が非常に微細であるようにコーティングや加工を施して乾燥、硬化させたような防眩層9であってもよい。後述する[3.防眩層の選択方法及び防眩層を搭載した製品]で説明する防眩層9の選択方法によれば、ぎらつきが抑制できた良好な防眩層9を容易に得ることができる。なお、防眩層9に用いるプラスチックフィルムは、アクリル系、ポリエステル系、環状オレフィン系、セルロース系樹脂などを用いた防眩層9がよいが、この限りではない。また、防眩層9が複数の層を設けた積層体である場合、防眩層のバインダー屈折率よりも低い屈折率を有する低反射層、防汚性を発現するための防汚層などが積層されていてよい。この場合、これらの積層体全体が防眩層9である。なお、防眩層9がない場合、つまり防眩機能を発現しない平坦な面状の構造体であっても、バインダーを構成する樹脂成分や粒子の屈折率差がある場合には、内部拡散によりぎらつきが観察されうるので、ぎらつきコントラスト測定は防眩層9と同様にして行える。内部拡散の態様は防眩層9と同じくランダム構造をもつ。
【0057】
図2に示すように、第2の光学測定装置1Bは、第2の光学系3Bと、第2の2次元イメージセンサ4Bと、第2の算出部6Bとを備える。また、図示を簡略化するが、第1の光学測定装置1Aは、第1の光学系3Aと、第1の2次元イメージセンサ4Aと、第1の算出部6Aとを有する。以下、これらの光学測定装置1A,1Bの構成部について詳しく説明する。
【0058】
(光学系3A,3B)
第2の光学系3Bは、防眩層9からの出射光Lを屈折させて第2の2次元イメージセンサ4Bの2次元センサアレイ面41上に結像させる装置である。第1の光学系3Aは、防眩層9からの出射光Lを屈折させて第1の2次元イメージセンサ4Aの2次元センサアレイ面41上に結像させる装置である。
【0059】
第2の光学系3Bは、第2の撮像レンズ31Bと、開口321が設けられた第2の絞り32Bとを有する。第2の光学系3Bと同様に、第1の光学系3Aは、第1の撮像レンズ31Aと、第1の絞り32Aとを有する。
【0060】
光学系3A,3Bのパラメータは、ぎらつきコントラストの大きさに影響する。
【0061】
例えば、絞り32A,32Bの開口321が小さい、すなわち、撮像レンズ31A,31BのFナンバーが大きいほど、絞り32A,32Bの開口321によって出射光Lが受ける回折の影響は顕著になる。出射光Lの回折が顕著になることで、2次元センサアレイ面41上に結像する出射光Lの回折限界スポットすなわちエアリーディスクの広がりは大きくなる。これにより、2次元イメージセンサ4A,4Bの1つの画素42にとどまらず、隣接する他の画素42に至るまで、回折限界スポットは広がる。
【0062】
このような回折限界スポットの広がりが2次元イメージセンサ4A,4Bの各画素42上に結像する各回折限界スポットで生じることで、特定の画素42に着目した場合、防眩層9の異なる箇所を通過した射出光L同士が特定の画素42上で重なり合うことによるぎらつきパターンの平均化が生じる。
【0063】
このような画素42上でのぎらつきパターンの平均化の度合いが大きいほど、ぎらつきコントラストは低下する。すなわち、撮像レンズ31A,31BのFナンバーが大きいほど、画素42上での平均化効果によってぎらつきコントラストは低下する。
【0064】
一方、Fナンバーが小さくなり過ぎることで、2次元センサアレイ面41上に形成されるぎらつきパターンを構成する平均粒径が画素42よりも小さくなる場合にも、ぎらつきコントラストは低下する。このぎらつきコントラストの低下は、回折限界スポットの広がりが画素42に対して狭すぎることによって1つの画素42内で受光量の分布が生じることに起因する。より詳しくは、当該ぎらつきコントラストの低下は、当該受光量の分布によって1つの画素42の出力値が画素42内でのぎらつきパターンの積分値となることに起因する。すなわち、撮像レンズ31A,31BのFナンバーが小さくなり過ぎると、画素42内でのぎらつきパターンの積分効果によってぎらつきコントラストは低下する。
【0065】
以上のように、撮像レンズ31のFナンバーは、ぎらつきコントラストに影響する。具体的には、Fナンバーの増加にともなって画素42上で異なるパターンが重なることによる平均化効果によって、コントラストは低下する。また、Fナンバーの減少にともなう画素42内での積分効果によっても、ぎらつきコントラストは低下する。
【0066】
なお、図2に示される例において、第2の撮像レンズ31Bは、1枚のレンズで構成されている。しかし、撮像レンズ31A,31Bは、それぞれが複数枚のレンズで構成されていてもよい。この場合、撮像レンズ31A,31Bを構成する複数枚のレンズは、出射光Lの収差を低減するのに好適な組み合わせのパワーを有していてもよい。また、光学系3A,3Bは光学フィルタ33を含んでいてもよい。光学フィルタ33は、入射光の強度、複素振幅、分光分布、振動面などを変化させて出射させる光学素子である。例えば、光学フィルタ33は、国際照明委員会CIE1931で定義されたXYZ等色関数のうちのY値の関数に準じた光透過特性を有するYフィルタであってもよい。光学フィルタ33は、CIE1931で定義されたXYZ等色関数に準じた光透過特性を有するXYZフィルタであってもよい。光学フィルタ33は、ディスプレイのRGB原色に準じた光透過特性を有するRGBフィルタであってもよい。光学フィルタ33は、入射光を直線偏光に変換して出射させる直線偏光フィルタであってもよい。光学フィルタ33は、入射光を円偏光に変換して出射させる円偏光フィルタであってもよい。光学フィルタ33は、入射光の光量を減少させて出射させるNDフィルタであってもよい。光学フィルタ33の例は、これらに限定されない。また、図2には、第2の絞り32Bと第2の撮像レンズ31Bとの間に光学フィルタ33を配置する例が示されているが、光学フィルタ33の枚数や位置は、図2の例に限定されない。また、絞りについても図2に例示した前絞りに限定されず、レンズ構成部内に設定した絞りであってもよい。
【0067】
(2次元イメージセンサ4A,4B)
2次元イメージセンサ4A,4Bは、防眩層9からの出射光Lが結像される撮像素子である。2次元イメージセンサ4A,4Bは、2次元センサアレイ面41を有し、出射光Lを撮像する。
【0068】
2次元イメージセンサ4A,4Bは、互いに隣接する複数の画素42を有し、画素42の表面が2次元センサアレイ面41を構成している。画素42で受光された出射光Lは、光電変換によって電気信号へと変換され、変換された電気信号は、ぎらつきコントラストの算出に用いられる。
【0069】
2次元イメージセンサ4A,4Bは、固体撮像素子を有するイメージセンサであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサであってもよい。
【0070】
(算出部6A,6B)
算出部6A,6Bは、2次元イメージセンサ4A,4Bで撮像された出射光Lの画像に基づいてぎらつきコントラストを算出する。算出部6A,6Bは、例えば既述した数式(16)にしたがってぎらつきコントラストを算出する。算出部6A,6Bは、例えばCPUやメモリなどのハードウェアで構成されている。算出部6A,6Bの一部をソフトウェアで構成してもよい。なお、ぎらつきコントラストの算出、すなわち測定に用いる2次元イメージセンサ4A,4Bの画素領域である測定領域としては、統計誤差が少ない測定領域を採用することが好ましい。具体的には、測定領域を小さく取りすぎると、場所、すなわち画素の位置に依存した平均放射輝度のばらつきに因る、ぎらつきコントラストの測定誤差である統計誤差は大きくなり易い。したがって、統計誤差が許容できる程度に小さくなるように、測定領域は大きく取ることが好ましい。また、光学系3A,3Bの条件によっては、2次元イメージセンサ4A,4Bの画素ピッチと画素マトリクス81のピッチとによってモアレが生じる場合がある。モアレを回避するためには、適切な光学系3A,3BのF値、または適切な測定距離、すなわち防眩層9から撮像レンズ31A,31Bまでの距離を選択することが好ましい。モアレが生じている場合には、算出部6A,6Bまたは後述する比較装置100は、事後的に画像からモアレを除去するためのフィルタリング処理を行うことが好ましい。ただし、フィルタリング処理によって、モアレが除去されるだけでなく、元々のぎらつきパターンによる放射輝度のランダム成分も影響を受けることがある。したがって、ぎらつきコントラストを正しく比較するために、比較装置100は、フィルタリング処理によってどのようにぎらつきコントラストが影響しているかを考慮することが好ましい。
【0071】
次に、比較装置100の構成について説明する。比較装置100は、補正部101と、比較部102とを有する。
【0072】
補正部101は、第1のぎらつきコントラストとの比較のために、第1の測定条件と第2の測定条件との比率に基づいて第2のぎらつきコントラストを補正する。第2のぎらつきコントラストのより具体的な補正の態様については、以下の比較方法において説明する。比較部102は、補正部101で補正された第2のぎらつきコントラストを第1のぎらつきコントラストと比較する。比較部102は、比較結果を出力する。
【0073】
(ぎらつきコントラストの比較方法)
次に、図2の測定系を適用したぎらつきコントラストの比較方法の具体例について説明する。
【0074】
まず、図1に示すように、補正部101は、防眩層9からの出射光Lを結像させる第1の撮像レンズ31Aおよび出射光が結像される第1の2次元イメージセンサ4Aを用いて、第1の測定条件で測定された比較基準とする第1のぎらつきコントラストと、第1の測定条件を示す情報とを取得する(ステップS1)。
【0075】
また、補正部101は、防眩層9からの出射光Lを結像させる第2の撮像レンズ31Bおよび出射光が結像される第2の2次元イメージセンサ4Bを用いて、第2の測定条件で測定された第2のぎらつきコントラストと、第2の測定条件を示す情報とを取得する(ステップS2)。なお、ステップS1とステップS2とは、前後が入れ替わってもよい。または、ステップS1とステップS2とは、同時であってもよい。
【0076】
次いで、補正部101は、第1のぎらつきコントラストとの比較のために、第1の測定条件と第2の測定条件との比率に基づいて第2のぎらつきコントラストを補正する(ステップS3)。第2のぎらつきコントラストの補正は、以下の数式(1)にしたがって行われる。
【0077】
2a=S2×(F2/F1)×(d2/d1)×(f1/f2)×(M2/M1)0.5 (1)
数式(1)において、S2aは、補正後の第2のぎらつきコントラストである。S2は、補正前の第2のぎらつきコントラストである。F1は、第1の測定条件としての第1の撮像レンズ31Aの像側実効F値である。F2は、第2の測定条件としての第2の撮像レンズ31Bの像側実効F値である。d1は、第1の測定条件としての防眩層9から第1の撮像レンズ31Aまでの距離、すなわち、測定距離である。d2は、第2の測定条件としての防眩層9から第2の撮像レンズ31Bまでの距離である。f1は、第1の測定条件としての第1の撮像レンズ31Aの実効焦点距離である。f2は、第2の測定条件としての第2の撮像レンズ31Bの実効焦点距離である。M1は、以下の数式(2)に示される値である。M2は、以下の数式(3)に示される値である。M1,M2は、統合パラメータと呼ばれることもある。
【数15】
数式(2)において、Ac1は、出射光Lの波長をλと定義した場合に(((4/π)×F1×λ)/2)×πで表現されるパラメータである。Ac1は、後述する第1の2次元イメージセンサ4A上の回折限界スポットの大きさR1を直径とした円の面積に相当する。Am1は、第1の測定条件としての第1の2次元イメージセンサ4Aの画素ピッチをp1と定義した場合にp1で表現されるパラメータである。Am1は、センサ4Aの1画素の面積に相当する。erfは、標準誤差関数である。
【数16】
数式(3)において、Ac2は、出射光Lの波長をλと定義した場合に(((4/π)×F2×λ)/2)×πで表現されるパラメータである。Ac2は、後述する第2の2次元イメージセンサ4B上の回折限界スポットの大きさR2を直径とした円の面積に相当する。Am2は、第2の測定条件としての第2の2次元イメージセンサ4Bの画素ピッチをp2と定義した場合にp2で表現されるパラメータである。Am2は、センサ4Bの1画素の面積に相当する。erfは、標準誤差関数である。
【0078】
第2のぎらつきコントラストが補正された後、比較部102は、補正後の第2のぎらつきコントラストすなわち補正コントラストと、第1のぎらつきコントラストすなわち非補正コントラストとを比較する(ステップS4)。
【0079】
数式(1)にしたがって第2のぎらつきコントラストを補正することは、第1の測定条件との間で、2次元イメージセンサ4A,4B上への出射光Lの回折限界スポットの結像に寄与する防眩層9上の発光領域の大きさが同一になるように第2の測定条件を事後的に調整することに相当する。
【0080】
2次元イメージセンサ4A,4B上への出射光Lの回折限界スポットの結像に寄与する防眩層9上の発光領域の大きさは、回折限界スポットの大きさと、撮像レンズ31A,31Bの焦点距離および防眩層9から撮像レンズ31A,31Bまでの距離から求まる撮像レンズ31A,31Bの倍率と、に基づいて以下の数式(7)および数式(8)のように定まる。
【数17】
数式(7)において、S1は、第1の測定条件としての第1の2次元イメージセンサ4A上への出射光の回折限界スポットの結像に寄与する防眩層9上の発光領域の大きさである。R1は、第1の2次元イメージセンサ4A上の回折限界スポットの大きさ、すなわち、エアリーディスクの大きさである。m1は、第1の測定条件としての第1の撮像レンズ31Aの倍率である。F1は、第1の測定条件としての第1の撮像レンズ31Aの像側実効F値である。d1は、第1の測定条件としての防眩層9から第1の撮像レンズ31Aまでの距離である。f1は、第1の測定条件としての第1の撮像レンズ31Aの実効焦点距離である。F1’は、第1の測定条件としての第1の撮像レンズ31Aの物体側実効F値である。
【数18】
数式(8)において、S2は、第2の測定条件としての第2の2次元イメージセンサ4B上への出射光の回折限界スポットの結像に寄与する防眩層9上の発光領域の大きさである。R2は、第2の2次元イメージセンサ4B上の回折限界スポットの大きさである。m2は、第2の測定条件としての第2の撮像レンズ31Bの倍率である。F2は、第2の測定条件としての第2の撮像レンズ31Bの像側実効F値である。d2は、第2の測定条件としての防眩層9から第2の撮像レンズ31Bまでの距離である。f2は、第2の測定条件としての第2の撮像レンズ31Bの実効焦点距離である。F2’は、第2の測定条件としての第2の撮像レンズ31Bの物体側実効F値である。
【0081】
ここで、数式(1)は、第2のぎらつきコントラストS2に(S2/S1)を乗じることに相当する。ぎらつきコントラストSは2次元イメージセンサ上への出射光の回折限界スポットの結像に寄与する防眩層上の発光領域の大きさSの逆数1/Sに比例する。したがって、数式(1)は、右辺のS2にS1/S2を乗じること、すなわち、左辺の補正後の第2のぎらつきコントラストS2aを、第1のぎらつきコントラストS1に揃えることに相当する。ぎらつきコントラストが揃うということは、ぎらつきコントラストの逆数に比例するSも揃うことに相当する。したがって、数式(1)にしたがった第2のぎらつきコントラストS2の補正は、第1の測定条件と第2の測定条件との間に以下の数式(6)を事後的に成立させることと等価である。
S1=S2 (6)
【0082】
ここで、図3に示すように、防眩層9上の1点からの出射光Lは、PSF(点像強度分布関数)にしたがって、2次元イメージセンサ4A,4Bの2次元センサアレイ面41上に結像する。より具体的には、防眩層9上の1点からの出射光Lは、複数の画素42に跨る回折限界スポットPSすなわち点像として結像する。なお、図3は、PSFにしたがった回折限界スポットPSの広がりを説明する便宜上、2次元イメージセンサ4A,4Bを図2よりも拡大して図示している。
【0083】
このように、1つの画素42を中心とする回折限界スポットPSは、その画素42だけでなく隣接する他の画素42でも受光される。したがって、1つの画素42への回折限界スポットPSの結像には、防眩層9上の複数の発光点Pからの出射光Lが寄与していると考えることができる。
【0084】
そして、2次元センサアレイ面41上への出射光Lの回折限界スポットPSの結像に寄与する防眩層9上の発光領域は、複数の発光点Pの集合と考えることができる。したがって、発光領域の大きさは、図3に示すように、撮像レンズ31A,31Bを通して2次元イメージセンサ4A,4B側の回折限界スポットPSを防眩層9上に投射した像の大きさS1,S2と考えることができる。なお、図3は、防眩層9上への回折限界スポットPSの投射像を、PSFの投射像として表現している。図3に示される例において、防眩層9上への回折限界スポットPSの投射像は、回折限界スポットPSよりも大きい。投射像が回折限界スポットPSよりも大きいことは、光学系3の倍率が関与していることによる。
【0085】
回折限界スポットPSの結像に寄与する防眩層9上の発光領域の大きさS1,S2が一致すれば、異なる測定条件の下で撮像された出射光Lに基づくぎらつきコントラストの互換性を確保することができる。その理由は以下のとおりである。
【0086】
画素42上に入射する防眩層9上の各発光点Pからの出射光Lが、インコヒーレントまたはインコヒーレントと見なせる程度に可干渉性が低減されている場合、画素42上において、防眩層9の各発光点Pからの出射光Lは殆ど干渉しない。すなわち、画素42上において、単純な光の波面の重ね合わせが生じる。また、各発光点Pから生成される要素ぎらつきパターンは、防眩層9のランダム構造に起因してお互いに独立した異なるパターンである。
【0087】
この結果、画素42に対応する防眩層9上の発光点Pの個数に応じて、ぎらつきが平均化された回折限界スポット群が形成される。このぎらつきの平均化の度合いは、画素42に対応する防眩層9上の発光点Pの個数、すなわち防眩層9上の発光領域の大きさS1,S2に依存する。
【0088】
したがって、防眩層9上の発光領域の大きさS1,S2を一致させれば、測定条件が異なっていても、ぎらつきの平均化の度合いが共通する同一基準で比較できるぎらつきコントラストを得ることができる。
【0089】
以上の理由によってぎらつきコントラストの互換性を確保できるため、補正部101は、S2がS1に一致することと等価になるように、数式(1)にしたがって第2のぎらつきコントラストを補正する。
【0090】
このような構成によれば、第1の測定条件と異なる第2の測定条件で測定された比較対象とする第2のぎらつきコントラストを数式(1)にしたがって補正することで、第1の測定条件で測定された比較基準とする第1のぎらつきコントラストと、補正後の第2のぎらつきコントラストとの互換性を確保することができる。これにより、測定条件が異なる複数のぎらつきコントラストを適切に比較することができる。
【0091】
なお、第1の測定条件と第2の測定条件との間に成立する関係は、電子ディスプレイ8と、防眩層9と、撮像レンズ31A,31Bおよび2次元イメージセンサ4A,4Bを備えた光学測定装置1A,1Bと、のそれぞれの構造上の条件が同一であり、かつ、防眩層9から撮像レンズ31A,31Bまでの距離を含む、光学測定装置1A,1Bを用いた測定条件が異なる関係であってもよい。
【0092】
または、第1の測定条件と第2の測定条件との間に成立する関係は、電子ディスプレイ8および防眩層9のそれぞれの構造上の条件が同一であり、かつ、撮像レンズ31A,31Bおよび2次元イメージセンサ4A,4Bを備えた光学測定装置1A,1Bの構造上の条件と、防眩層9から撮像レンズ31A,31Bまでの距離を含む、光学測定装置1A,1Bを用いた測定条件とが異なる関係であってもよい。
【0093】
あるいは、第1の測定条件と第2の測定条件との間に成立する関係は、電子ディスプレイ8と、撮像レンズ31A,31Bおよび2次元イメージセンサ4A,4Bを備えた光学測定装置1A,1Bと、のそれぞれの構造上の条件が同一であり、防眩層9の構造上の条件と、防眩層9から撮像レンズ31A,31Bまでの距離を含む、光学測定装置1A,1Bを用いた測定条件とが異なる関係であってもよい。
【0094】
次に、ぎらつきコントラストの比較方法の適用例について説明する。
【0095】
[1.電子ディスプレイの製造方法]
本実施形態および後述の各変形例によるぎらつきコントラストの比較方法は、電子ディスプレイの製造工程において、製品となる検査対象の電子ディスプレイがぎらつきコントラストの合格基準を満たしているか否かを検査するために用いることもできる。この場合、第1のぎらつきコントラストとして、合格基準のぎらつきコントラストを適用する。また、第2のぎらつきコントラストとして、検査対象品のぎらつきコントラストを適用する。例えば、比較装置100の比較部102は、比較装置100の補正部101で補正された検査対象品のぎらつきコントラストを、合格基準のぎらつきコントラストと比較する。比較した結果、検査対象品の補正後のぎらつきコントラストと合格基準のぎらつきコントラストとの差分が小さいと判断される場合、比較部102は、検査対象の電子ディスプレイが合格品であるとの判定結果を出力してもよい。一方、検査対象品の補正後のぎらつきコントラストと合格基準のぎらつきコントラストとの差分が大きいと判断される場合、比較部102は、検査対象の電子ディスプレイが不合格品であるとの判定結果を出力してもよい。検査対象品の補正後のぎらつきコントラストと合格基準のぎらつきコントラストとの差分が小さいか否かの判断は、予め決められたぎらつきコントラストの差分の閾値などの判断基準にしたがって行ってもよい。なお、第1のぎらつきコントラストとして検査対象品のぎらつきコントラストを適用し、第2のぎらつきコントラストとして合格基準のぎらつきコントラストを適用してもよい。
【0096】
検査対象の電子ディスプレイは、表面に防眩層9が配置されていない電子ディスプレイすなわち電子ディスプレイ本体であってもよい。この場合、合格基準を満たしているか否かの検査において、ぎらつきコントラストを測定するために電子ディスプレイの表面に検査用の防眩層9が配置される。検査用の防眩層9は、予め決められた特性を有する防眩層9である。例えば、防眩層9は、予め決められた構造および大きさを有する防眩層9であってもよい。この場合、複数の検査対象の電子ディスプレイの間で、防眩層9の条件が共通となる。このため、複数の検査対象の電子ディスプレイの間の光学特性の差異が、ぎらつきコントラストの差異として現れる。すなわち、複数の検査対象の電子ディスプレイの間でぎらつきコントラストの差異が現れた場合、この差異が防眩層9の光学特性の差異に起因しないとみなすことができる。このように、防眩層9の条件が共通である検査条件の下で検査対象の電子ディスプレイが合格基準を満たしているか否かを検査することで、検査を適切に行うことができる。例えば、電子ディスプレイが本来は合格品であるにもかかわらず、防眩層9の光学特性の差異の影響によって不合格品であると誤判定されてしまうことを抑制することができる。ぎらつきコントラストの比較工程を経て製造された電子ディスプレイは、ぎらつきコントラストについての合格基準を満たす良好な光学特性を発揮することができる。
【0097】
なお、検査対象の電子ディスプレイは、表面に防眩層9が配置されている電子ディスプレイすなわち電子ディスプレイ装置であってもよい。
【0098】
[2.防眩層の製造方法]
また、本実施形態および後述する各変形例によるぎらつきコントラストの比較方法は、防眩層9の製造工程において、製品となる検査対象の防眩層9がぎらつきコントラストの合格基準を満たしているか否かを検査するために用いることもできる。この場合、第1のぎらつきコントラストとして、合格基準のぎらつきコントラストを適用する。また、第2のぎらつきコントラストとして、検査対象の防眩層9が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを適用する。例えば、比較部102は、補正部101で補正された検査対象の防眩層9が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを、合格基準のぎらつきコントラストと比較する。比較した結果、検査対象の防眩層9が表面に配置された電子ディスプレイの補正後のぎらつきコントラストと合格基準のぎらつきコントラストとの差分が小さいと判断される場合、比較部102は、検査対象の防眩層9が合格品であるとの判定結果を出力してもよい。一方、検査対象の防眩層9が表面に配置された電子ディスプレイの補正後のぎらつきコントラストと合格基準のぎらつきコントラストとの差分が大きいと判断される場合、比較部102は、検査対象の防眩層9が不合格品であるとの判定結果を出力してもよい。検査対象の防眩層9が表面に配置された電子ディスプレイの補正後のぎらつきコントラストと合格基準のぎらつきコントラストとの差分が小さいか否かの判断は、予め決められたぎらつきコントラストの差分の閾値などの判断基準にしたがって行ってもよい。なお、第1のぎらつきコントラストとして、検査対象の防眩層9が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを適用してもよい。また、第2のぎらつきコントラストとして、合格基準のぎらつきコントラストを適用してもよい。
【0099】
検査対象の防眩層9は、合格基準を満たしているか否かの検査において、ぎらつきコントラストを測定するために検査用の電子ディスプレイの表面に配置される。検査用の電子ディスプレイは、予め決められた特性を有する電子ディスプレイである。例えば、検査用の電子ディスプレイは、予め決められた構造および大きさを有する電子ディスプレイであってもよい。検査用の電子ディスプレイは、複数の検査対象の防眩層9の間で共用、すなわち、繰り返し用いられてもよい。
【0100】
このように、検査用の電子ディスプレイとして予め決められた特性を有する電子ディスプレイを用いる場合、複数の検査対象の防眩層9の間で、電子ディスプレイの条件は共通となる。このため、複数の検査対象の防眩層9の間の光学特性の差異は、ぎらつきコントラストの差異として現れる。すなわち、複数の検査対象の防眩層9の間でぎらつきコントラストの差異が現れた場合、この差異は電子ディスプレイの光学特性の差異に起因しないとみなすことができる。このように、電子ディスプレイの条件が共通である検査条件の下で検査対象の防眩層9が合格基準を満たしているか否かを検査することで、検査を適切に行うことができる。例えば、防眩層9が本来は合格品であるにもかかわらず、電子ディスプレイの光学特性の差異の影響によって不合格品であると誤判定されてしまうことを抑制することができる。ぎらつきコントラストの比較工程を経て製造された防眩層9は、ぎらつきコントラストについての合格基準を満たす良好な光学特性を発揮することができる。
【0101】
検査対象の防眩層9の具体的な態様は特に限定されず、例えば、既述したA:基材上に防眩機能を有する単一または複数の層を設けた積層体、の態様であってもよい。防眩層が積層体の態様である場合、検査対象の防眩層9は、基材上に防眩機能を有する単一または複数の層を設けることで形成される。基材としては、例えば、シート状の光透過性基材を用いることができる。光透過性基材の材質は特に限定されず、例えば、プラスチック等の樹脂や、ガラスであってもよい。樹脂は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
【0102】
防眩機能を有する層は、光透過性基材上に樹脂を含有する防眩層用組成物を塗布し、塗布された樹脂を硬化させることで形成してもよい。防眩層用組成物は、例えば、少なくとも1つのオリゴマーまたはポリマーと少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体とを、適切な溶媒を用いて混合した組成物であってもよい。オリゴマーやポリマーは、硬化性であっても、非硬化性であってもよい。防眩層用組成物は、更に微粒子が添加されていてもよい。前記オリゴマーまたはポリマーは、例えば、熱可塑性樹脂であってもよい。硬化性樹脂前駆体、硬化性オリゴマー、硬化性ポリマーとしては、熱や、紫外線および電子線等の電離放射線などによって硬化又は架橋して、硬化樹脂又は架橋樹脂などの樹脂を形成することが可能な種々の硬化性化合物を用いることができる。微粒子は、無機系の微粒子および有機系の微粒子のいずれであってもよい。微粒子は、例えば、プラスチックビーズであってもよい。また組成物には光硬化開始剤、レベリング剤、特殊波長吸収剤、屈折率調整剤、帯電防止剤、染料、顔料、酸化防止剤など各種添加剤を含んでいてよい。
【0103】
基材上に防眩層用組成物を塗布する手法は特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の手法を用いて行ってもよい。
上記の方法のいずれかで防眩層用組成物を塗布した後、形成した塗膜を乾燥させるために加熱されたゾーンに搬送され各種の公知の方法で塗膜を乾燥させ溶剤を蒸発させる。ここで溶剤相対蒸発速度、固形分濃度、塗布液温度、乾燥温度、乾燥風の風速、乾燥時間、乾燥ゾーンの溶剤雰囲気濃度等を選定することにより、有機微粒子及び無機微粒子の分布状態を調整できる。
【0104】
防眩層用組成物の硬化は、加熱や活性エネルギー線の照射によって行ってもよい。電離放射線の照射方法としては、例えば、超高 圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源を用いる方法が挙げられる。また、紫外線の波長としては、190~380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0105】
検査対象の防眩層9は、表面に凹凸形状を有していてもよい。防眩層9の表面に凹凸形状を形成する方法は、例えば、(1)既述した防眩層用組成物に微粒子を添加すなわち混合分散させる方法、(2)微粒子は添加せず、防眩層用組成物中の溶剤の蒸発にともなうスピノーダル分解によって相分離構造を形成する方法、(3)凹凸形状を付与する賦形処理、(4)エンボス加工および(1)~(4)の組み合わせのいずれであってもよい。
【0106】
[3.防眩層の選択方法及び防眩層を搭載した製品]
また、本実施形態および後述する各変形例によるぎらつきコントラストの比較方法は、防眩層9の選択方法および当該選択方法で選択された防眩層9を搭載した製品に適用することもできる。防眩層9の選択方法で用いられる防眩層9としては、[2.防眩層の製造方法]で説明した積層体の製造方法及びその他の製造方法で製造された様々な態様の防眩層9を適用することができる。
【0107】
防眩層9の選択方法では、比較基準とするぎらつきコントラストとして、第1の防眩層9が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを第1の光学測定装置で測定した第1の測定コントラストを適用する。第1の光学測定装置としては、例えば、図2に示した第1の光学測定装置1Aを用いることができる。また、防眩層9の選択方法では、比較対象とするぎらつきコントラストとして、第2の防眩層9が表面に配置された電子ディスプレイのぎらつきコントラストを第2の光学測定装置で測定した第2の測定コントラストを適用する。第2の測定コントラストの測定で用いられる電子ディスプレイ本体は、第1の測定コントラストの測定で用いられる電子ディスプレイ本体と同じである。第2の防眩層9は、第1の防眩層9と異なる防眩層である。第2の光学測定装置としては、例えば、図2に示した第2の光学測定装置1Bを適用することができる。
【0108】
すなわち、防眩層9の選択方法では、第1の測定コントラストと第2の測定コントラストとを、両コントラストの一方の補正をともなう上述のぎらつきコントラストの比較方法を用いて比較する。
【0109】
そして、第1の測定コントラストと第2の測定コントラストとの比較の結果に基づいて、第1の防眩層9および第2の防眩層9のうちの一方の防眩層を選択する。具体的には、第1の防眩層9および第2の防眩層9のうちの対応する測定コントラストが良好な防眩層を選択する。より具体的には、第1の防眩層9および第2の防眩層9のうちの対応する測定コントラストが低い防眩層を選択する。このような防眩層9の選択は、第1の防眩層9と第2の防眩層9との双方が上述した[2.防眩層の製造方法]において合格品であると判断されたうえで行ってもよい。
【0110】
本方法で選択された防眩層9は、製品としての電子ディスプレイ、電子ディスプレイを構成する偏光板または表示素子に搭載されて良好な光学特性を発揮することができる。なお、表示素子の具体的な態様は、電子ディスプレイの種類によって異なる。例えば、電子ディスプレイがLCD(液晶表示ディスプレイ)である場合、表示素子は液晶表示パネルである。LCDは、例えば、液晶表示パネルと、表面材と、偏光板とによって構成される。また、電子ディスプレイがOLED(有機発光ダイオード)である場合、表示素子は、OLEDの表示素子である。OLEDは、例えば、表示素子と、表面材と、偏光板とによって構成される。OLEDは、偏光板を備えない場合もある。また、表示素子は、電子ディスプレイの他の一例としてのミニLEDまたはマイクロLEDの表示素子であってもよい。ミニLEDおよびマイクロLEDは、例えば、表示素子と、表面材と、偏光板とによって構成され得る。ミニLEDおよびマイクロLEDは、偏光板を備えない場合もある。上記表示素子は、電子ディスプレイ8に含まれており、表示素子には画素、画素マトリクス81やブラックマトリクス82が含まれている。
【0111】
この他にも、本方法で選択された防眩層9は、あらゆる電子ディスプレイに有効に用いられる。例えば、近年大面積化HD(ハイビジョン)、FHD(フルハイビジョン)4K、8Kなどの高画質化が進んでいる30インチ、更には40、50インチ以上のテレビ、15インチ、更には20、30インチ以上のモニター、10インチ以上、更には15インチ以上、17インチ以上のノートブックPCなどは、110dpi~350dpiという画素密度(1インチあたりの画素数)を持つ。画素密度は、ppiと称されることもある。本開示における画素密度とは、ディスプレイにおける表示素子の物理的な画素密度である。もし各種ディスプレイ表示素子で解像度を変更出来る場合は、そのとりうる最大の画素密度である。
【0112】
例えば138dpiのノートブックPCに防眩層9を搭載した場合のぎらつきコントラスト値が、0.05、より好ましくは0.03以下である場合、ぎらつき防止性が良好と考えられる。また、近年高精細化が更に進んでいる車載用ディスプレイ、タブレット型ディスプレイ、スマートフォンなどは上記大面積化が進む電子ディスプレイと比較し、画面サイズが小さくても情報量を多く表示できるよう更に画素密度が緻密な場合が多く、150dpi~900dpiである。例えば423dpiのスマートフォンに搭載した場合のぎらつきコントラスト値が、0.07以下、より好ましくは0.05以下、最も好ましくは0.04以下であれば、ぎらつき防止性が良好と考えられる。なお、このぎらつきコントラスト値は、図11に示すように、上記したそれぞれの画素密度:138dpi、423dpiのディスプレイ8000に防眩層90を搭載し、それぞれの画素密度に対応する測定条件の下で測定器1000を用いて測定した場合の値である。測定器1000は、筐体1001の内部に、絞り1002と、レンズ1003と、CCD1004とを収容して構成されている。なお、レンズ1003には、単焦点60mmのカメラレンズを、CCD1004には、測定エラーを極力低減するために冷却CCDを用いた。測定器1000を用いた具体的な測定条件は以下のとおりである。
【0113】
[13.3インチ、138dpiの場合の測定条件]
(1)ディスプレイの条件:フルスクリーン
(2)緑色光Gのみフル出力点灯時のサブピクセルのピッチP:約185μm
(3)測定器の撮像素子の画素ピッチP:5.5μm
(4)撮像レンズの像側実行F値F#image:36.4
(5)コントラスト値の計算に用いた撮像素子画素領域:128×128
(6)撮像レンズ物体側主点からディスプレイマトリクス面までの距離である測定距離L:500mm
(7)光学倍率m:0.136
(8)P*m/Pで定義されるISR(Image Sampling Ratio):4.59
(9)ディスプレイ表面と測定器の光軸とのなす角度:90°
(10)画素形状が見えたため、画素形状を除去する工程を実施
【0114】
[5.2インチ、423dpiの場合の測定条件]
(1)ディスプレイの条件:フルスクリーン
(2)P:約60μm
(3)P:5.5μm
(4)F#image:36.4
(5)コントラスト値の計算に用いた撮像素子画素領域:128×128
(6)L:500mm
(7)m:0.136
(8)ISR:1.49
(9)ディスプレイ表面と測定器の光軸とのなす角度:90°
(10)画素形状が見えなかったため、画素形状を除去する工程を実施せず
【0115】
138dpiにおいては、ディスプレイ表示素子の画素形状の画像成分を除去する工程を実施した。この工程は、撮像で得られた画像をフーリエ変換し、フーリエ変換された画像からディスプレイの画素形状の画像成分により生じた規則的な周期成分を除去した後に逆フーリエ変換することで実施した。
【0116】
本方法によれば、異なる光学測定装置で測定されたぎらつきコントラスト値同士を再測定せずに比較することができ、電子ディスプレイの偏光板や表示素子などに最適な防眩層を容易に選択することができる。
【0117】
[4.表示素子の選択方法及び表示素子を搭載した製品]
また、本実施形態および後述する各変形例によるぎらつきコントラストの比較方法は、表示素子の選択方法および当該選択方法で選択された表示素子を搭載した製品に適用することもできる。表示素子の具体的な態様は特に限定されず、例えば、上述したLCDの液晶表示パネルや、OLEDの表示素子やミニLEDの表示素子やマイクロLEDの表示素子であってもよい。
【0118】
表示素子の選択方法では、比較基準とするぎらつきコントラストとして、第1の表示素子の表面に第3の防眩層9を配置した状態すなわち電子ディスプレイの状態で第3の光学測定装置によって測定された第3の測定コントラストを適用する。第3の光学測定装置としては、例えば、図2に示した第1の光学測定装置1Aを用いることができる。また、表示素子の選択方法では、比較対象とするぎらつきコントラストとして、第2の表示素子の表面に第3の防眩層9を配置した状態で第4の光学測定装置で測定された第4の測定コントラストを適用する。第2の表示素子は、第1の表示素子と異なる表示素子である。第4の測定コントラストの測定で用いられる第3の防眩層9は、第3の測定コントラストの測定で用いられる防眩層9と同じ光学特性を有する防眩層である。第4の光学測定装置は、第3の光学測定装置と異なる装置である。第4の光学測定装置としては、例えば、図2に示した第2の光学測定装置1Bを適用することができる。
【0119】
すなわち、表示素子の選択方法では、第3の測定コントラストと第4の測定コントラストとを、両コントラストの一方の補正をともなう上述のぎらつきコントラストの比較方法を用いて比較する。
【0120】
そして、第3の測定コントラストと第4の測定コントラストとの比較の結果に基づいて、第1の表示素子および第2の表示素子のうちの一方の表示素子を選択する。具体的には、第1の表示素子および第2の表示素子のうちの対応する測定コントラストが良好な表示素子を選択する。本方法で選択された表示素子は、電子ディスプレイに搭載されて良好な光学特性を発揮することができる。
【0121】
以上述べたように、本実施形態によれば、第1の測定条件と第2の測定条件との比率に基づいて第2のぎらつきコントラストを補正することで、測定条件が異なる第1のぎらつきコントラストと第2のぎらつきコントラストとを適切に比較することができる。
【0122】
一実施の形態をいくつかの具体例により説明してきたが、上述した具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の構成の省略、置き換え、変更、或いは、更なる構成の追加を行うことができる。
【0123】
以下、図面を参照しながら、他の具体例を説明していくことで上述した実施の形態を更に説明していく。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0124】
(第1の変形例)
図4は、本実施形態の第1の変形例によるぎらつきコントラストの比較方法を示すフローチャートである。図1では、数式(1)にしたがって第2のぎらつきコントラストを補正する例について説明した。これに対して、図4に示される例において、第2のぎらつきコントラストの補正は、以下の数式(4)にしたがって行われる(ステップS3A)。
2a=S2×(F2/F1)×(m1/m2)×(M2/M1)0.5 (4)
【0125】
ここで、m1、d1、f1の間には、m1=f1/d1の関係が成立する。同様に、m2、d2、f2の間には、m2=f2/d2の関係が成立する。したがって、数式(4)を変形すれば数式(1)と同じ関係式が得られる。すなわち、数式(4)にしたがって第2のぎらつきコントラストを補正することは、数式(1)にしたがった補正と同様に、S1=S2を成立させることと等価である。
【0126】
したがって、図4に示される例によれば、図1の場合と同様に、測定条件が異なる第1のぎらつきコントラストと第2のぎらつきコントラストとを適切に比較することができる。
【0127】
(第2の変形例)
図5は、本実施形態の第2の変形例によるぎらつきコントラストの比較方法を示すフローチャートである。図5に示される例において、第2のぎらつきコントラストの補正は、以下の数式(5)にしたがって行われる(ステップS3B)。
2a=S2×(F2’/F1’)×(M2/M1)0.5 (5)
【0128】
ここで、F1’とF1との間には、F1’=F1/m1の関係が成立する。F2’とF2との間には、F2’=F2/m2の関係が成立する。したがって、数式(5)を変形すれば数式(4)と同じ関係式が得られる。すなわち、数式(5)にしたがって第2のぎらつきコントラストを補正することは、数式(4)にしたがった補正と同様に、S1=S2を成立させることと等価である。
【0129】
したがって、図5に示される例によれば、図4の場合と同様に、測定条件が異なる第1のぎらつきコントラストと第2のぎらつきコントラストとを適切に比較することができる。
【0130】
(第3の変形例)
図6Aは、本実施形態の第3の変形例によるぎらつきコントラストの比較方法を示すフローチャートである。これまでは、S1=S2が成立するように第2のぎらつきコントラストを補正することで、第1のぎらつきコントラストとの互換性を有する第2のぎらつきコントラストを得る例について説明した。これに対して、図6Aに示される例では、収差の影響によるぎらつきコントラストの誤差を考慮して、S1=S2が成立する場合よりも更に高精度に第1のぎらつきコントラストと比較できる第2のぎらつきコントラストを得るように構成されている。
【0131】
具体的には、補正部101は、第1のぎらつきコントラストおよび第1の測定条件を示す情報を取得し(ステップS1)、第2のぎらつきコントラストおよび第2の測定条件を示す情報を取得した後(ステップS2)、既述した数式(6)の関係式S1=S2が成立するか否かを判定する(ステップS31)。
【0132】
S1=S2が成立する場合(ステップS31:Yes)、補正部101は、第1の測定条件の下で撮像された出射光の画像との間で画像に基づいて算出されるMTF(Modulation Transfer Function)が揃うように、第2の測定条件の下で撮像された出射光の画像の補正演算を行う(ステップS32)。一方、S1=S2が成立しない場合(ステップS31:No)、処理を終了する。
【0133】
図7は、図6Aのフローチャートにおける補正演算(ステップS32)の詳細な例を示すフローチャートである。第2の測定条件の下で撮像された出射光の画像の補正演算は、例えば、図7のフローチャートにしたがって行われてもよい。
【0134】
具体的には、補正部101は、先ず、第2の測定条件の下で撮像された出射光の画像のエッジプロファイルを作成する(ステップS321)。エッジプロファイルは、第2の測定条件の下で撮像された出射光の画像のエッジ部分の画素値の変動を示す情報である。エッジプロファイルは、例えば、JP2020-25224Aに開示されている技術を応用して作成してもよい。
【0135】
エッジプロファイルを作成した後、補正部101は、エッジプロファイルを微分することで線広がり関数を算出する(ステップS322)。
【0136】
線広がり関数を算出した後、補正部101は、算出された線広がり関数をフーリエ変換することによって第2のMTFを算出する(ステップS323)。
【0137】
第2のMTFを算出した後、補正部101は、算出された第2のMTFと、第1の測定条件の下で撮像された出射光の画像に基づいて算出された第1のMTFとを比較する(ステップS324)。
【0138】
比較により、補正部101は、第2のMTFが第1のMTFと揃ったか否かを判定する(ステップS325)。
【0139】
第2のMTFが第1のMTFと揃った場合(ステップS325:Yes)、補正部101は、補正演算を終了して、図6Aに示すように、補正演算後の出射光の画像に基づいて補正後の第2のぎらつきコントラストを取得する(ステップS33)。
【0140】
一方、第2のMTFが第1のMTFと揃っていない場合(ステップS325:No)、補正部101は、第2の測定条件の下で撮像された出射光の画像の解像度を調整するエンハンスフィルタの係数を変更することで、当該画像の解像度を変更する(ステップS326)。エンハンスフィルタを用いた解像度の変更は、例えば、JP2020-25224Aに開示されている技術を応用して行ってもよい。その後は、解像度が変更された画像に対して、ステップS321以降の処理を繰り返す。なお、図7に示される例は、補正演算の一例を示したに過ぎず、図7以外の方法で補正演算を行ってもよいことは勿論である。
【0141】
図6Aに示される例によれば、測定条件が異なる第1のぎらつきコントラストと第2のぎらつきコントラストとをより適切に比較することができる。
【0142】
なお、図6Bに示すように、補正部101は、ステップS32とステップS33との間に、ステップS34を実施してもよい。ステップS34は、第2の測定条件の下で撮像された出射光の画像に対する補正演算で得られた画像の放射輝度平均値を、第1の測定条件の下で撮像された出射光の画像の放射輝度平均値に揃える工程である。
【0143】
具体的には、ステップS34において補正部101は、補正演算で得られた画像を、図6Cに示すようにX方向およびY方向にマトリクス状に整列した複数の領域(X,Y)に分割する。そして、補正部101は、分割された各領域(X,Y)内の全ての画素の放射輝度データに下記パラメータ
【数19】
を乗じる。ただし、
【数20】
は、予め取得された第1の測定条件の下で撮像された出射光の画像の放射輝度平均値である。IXYは、領域(X,Y)内の局所的な平均輝度である。ステップS34により、補正演算された画像の全ての領域(X,Y)の放射輝度平均値を、第1の測定条件の下で撮像された出射光の画像の放射輝度平均値に揃えることができる。ステップS34に続くステップS33において、補正部101は、第1の測定条件の下で撮像された出射光の画像との間で放射輝度平均値が揃えられた補正演算後の画像に基づいて、補正後の第2のぎらつきコントラストを取得する。
【0144】
また、図6Dに示すように、補正部101は、ステップS32とステップS34との間に、ステップS35を実施してもよい。ステップS35は、ステップS32の補正演算で得られた画像から電子ディスプレイ8の表示素子の画素により生じた画素形状の画像成分を除去する工程である。ステップS35は、例えば、補正演算で得られた画像をフーリエ変換し、フーリエ変換された画像から電子ディスプレイ8の画素により生じた規則的な周期成分を除去した後に逆フーリエ変換することで実施してもよい。これにより、ステップS35に続くステップS34では、電子ディスプレイ8の表示素子の画素により生じた画素形状の画像成分が除去された補正演算後の画像に対して、第1の測定条件の下で撮像された出射光の画像との間で放射輝度平均値を揃える工程が実施される。
【0145】
(第4の変形例)
図8は、本実施形態の第4の変形例によるぎらつきコントラストの比較方法を示すフローチャートである。これまでは、比較基準とするぎらつきコントラストが、実際の測定条件で実測されたぎらつきコントラストであった。これに対して、図8に示される例では、比較基準とするぎらつきコントラストを、仮想の測定条件で仮想的に測定されたぎらつきコントラストとする。
【0146】
具体的には、先ず、図8に示すように、補正部101は、防眩層9からの出射光を結像させる仮想の撮像レンズおよび出射光が結像される仮想の2次元イメージセンサを用いた仮想の測定条件で仮想的に測定された比較基準とする第3のぎらつきコントラストと、仮想の測定条件を示す情報とを取得する(ステップS1A)。
【0147】
また、補正部101は、防眩層9からの出射光を結像させる実際の撮像レンズおよび出射光が結像される実際の2次元イメージセンサを用いた実際の測定条件で実測された比較対象とする第4のぎらつきコントラストと、実際の測定条件を示す情報とを取得する(ステップS2A)。
【0148】
次いで、補正部101は、仮想の測定条件と実際の測定条件との間に以下の数式(9)が成立するか否かを判定する(ステップS301)。
S3≠S4 (9)
数式(9)において、S3は、仮想の測定条件としての2次元イメージセンサ上への防眩層9からの出射光の回折限界スポットの結像に寄与する防眩層9上の発光領域の大きさであって、以下の数式(11)を満足する。S4は、実際の測定条件としての2次元イメージセンサ上への防眩層9からの出射光の回折限界スポットの結像に寄与する防眩層9上の発光領域の大きさであって、以下の数式(12)を満足する。
【0149】
【数21】
数式(11)において、R3は、2次元イメージセンサ上の回折限界スポットの大きさである。m3は、仮想の測定条件としての仮想の撮像レンズの倍率である。F3は、仮想の測定条件としての仮想の撮像レンズの像側実効F値である。d3は、仮想の測定条件としての防眩層9から仮想の撮像レンズまでの距離である。f3は、仮想の測定条件としての仮想の撮像レンズの実効焦点距離である。F3’は、仮想の測定条件としての仮想の撮像レンズの物体側実効F値である。
【0150】
【数22】
数式(12)において、R4は、2次元イメージセンサ上の回折限界スポットの大きさである。m4は、実際の測定条件としての実際の撮像レンズの倍率である。F4は、実際の測定条件としての実際の撮像レンズの像側実効F値である。d4は、実際の測定条件としての防眩層9から実際の撮像レンズまでの距離である。f4は、実際の測定条件としての実際の撮像レンズの実効焦点距離である。F4’は、実際の測定条件としての実際の撮像レンズの物体側実効F値である。
【0151】
数式(9)が成立する場合(ステップS301:Yes)、補正部101は、以下の数式(10)にしたがって第4のぎらつきコントラストを補正する(ステップS302)。
4a=S4×(S4/S3) (10)
数式(10)において、S4aは、補正後の第4のぎらつきコントラストである。S4は、補正前の第4のぎらつきコントラストである。
【0152】
一方、数式(9)が成立しない場合(ステップS301:No)、補正部101は、処理を終了する。
【0153】
第4のぎらつきコントラストを補正した後、比較部102は、補正後の第4のぎらつきコントラストと第3のぎらつきコントラストとを比較する(ステップS4A)。
【0154】
図8に示される例によれば、比較基準とするぎらつきコントラストを仮想的に設定した場合でも、比較対象とするぎらつきコントラストを適切に比較することができる。比較基準を仮想的に設定することで、比較基準についての自由度を向上させることができる。
【0155】
(第5の変形例)
図9は、本実施形態の第5の変形例によるぎらつきコントラストの比較方法を示すフローチャートである。図9に示されるように、既述した数式(10)にしたがって第4のぎらつきコントラストを補正した後に、以下の数式(13)にしたがって第4のぎらつきコントラストを更に補正してもよい(ステップS303)。
【0156】
4a’=S4a×(M4/M3)0.5 (13)
数式(13)において、S4a’は、数式(13)による補正後の第4のぎらつきコントラストである。M3は、以下の数式(14)に示される値である。M4は、以下の数式(15)に示される値である。
【数23】
数式(14)において、Ac3は、防眩層からの出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F3×λ)/2)×πで表現されるパラメータである。Am3は、仮想の測定条件としての2次元イメージセンサの画素ピッチをp3と定義した場合にp3で表現されるパラメータである。erfは、標準誤差関数である。
【数24】
数式(15)において、Ac4は、防眩層からの出射光の波長をλと定義した場合に(((4/π)×F4×λ)/2)×πで表現されるパラメータである。Am4は、仮想の測定条件としての2次元イメージセンサの画素ピッチをp4と定義した場合にp4で表現されるパラメータである。erfは、標準誤差関数である。
【0157】
図9に示される例によれば、仮想の測定条件と実際の測定条件との間で撮像レンズのF値が異なる場合でも第4のぎらつきコントラストを適切に補正することができる。したがって、仮想の測定条件で仮想的に測定されたぎらつきコントラストと実際の測定条件で実測されたぎらつきコントラストとを更に適切に比較することができる。
【0158】
なお、以上において上述した実施の形態に対して適用可能な多数の変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11