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  • 特許-切断された製品の加工装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】切断された製品の加工装置
(51)【国際特許分類】
   B27C 9/04 20060101AFI20221215BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20221215BHJP
   B26D 7/34 20060101ALI20221215BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B27C9/04
B25J13/00 Z
B26D7/34
B26D7/18 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019047880
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020146967
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】596008231
【氏名又は名称】株式会社トーアエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100102923
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】野口 睦
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-126928(JP,A)
【文献】特開2015-221418(JP,A)
【文献】特開2013-097651(JP,A)
【文献】特開平07-032239(JP,A)
【文献】特開2013-215825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27C 1/00 - 9/04
B25J 13/00
B26D 7/34
B26D 7/18
B23Q 7/00 - 7/18
G05B 19/18 - 19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断制御データに従って切断装置上で材料板から切り離された製品が、加工台上まで搬送されたときに、その加工台上でその製品の特定箇所に加工を施すための装置であって、
切断装置で切断されて切断装置から排出される前の状態のコンベア上で静止位置にある一定の向きの製品を、ロボットアームのヘッドが予め指定された位置を掴んで持ち上げときに、上記ヘッドとその製品の加工を必要とする箇所との相対的な位置関係を、製品の形状と製品の加工を必要とする箇所とを示すデータを含む切断制御データから、ヘッドの特定の箇所と製品の加工を必要とする箇所との間の長さと方向とヘッドの向きとを算出して取得し、かつ、上記ロボットアームにより上記加工台上にその製品が搬送されて置かれたときの、上記加工台上の上記ヘッドの位置と向きとをロボットアームの制御データから算出して取得し、その製品の加工を必要とする箇所の位置座標を示す状態データを生成するデータ処理装置と、
上記の状態データを使用して加工台上の加工機の加工動作を制御する加工制御装置を備えたことを特徴とする切断された製品の加工装置。
【請求項2】
上記ロボットアームにより上記加工台上に製品を置くときの、上記ヘッドの位置と向きとを、全ての製品について一定にすることを特徴とする請求項1に記載の切断された製品の加工装置。
【請求項3】
コンピュータを請求項1または2に記載のデータ処理装置と加工制御装置として機能させるコンピュータプログラム。
【請求項4】
請求項3に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断制御データに従って切断装置上で木製板材等の材料板から切断された製品の特定箇所に加工を施すための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば木造住宅などに用いられる屋根用の野地パネルや床パネルなどは、合板材料を切断加工して製作している。その自動加工の生産性を高めるために(特許文献1)や(特許文献2)等に記載された装置が開発された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-51320号公報
【文献】特許第4668485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献に記載された装置は、コンピュータ制御により、切断制御データを使用して、材料板から製品を自動的に切断して積み上げて梱包発送ラインに送り出す。
【0005】
屋根材等に使用される製品の材料板の側面には、全周にわたって防湿等の目的で塗料が塗布されている。このような材料板を切断して得た製品には、新たな切断面に同様の塗料を塗布することが好ましい。
【0006】
従来は、切り離した製品を塗布装置に運び込んで、塗布エアーガンを使用して所定の塗料を塗布するようにしていた。この場合には、製品の塗布箇所を確認したり塗布エアーガンを操作したりするために、人手による作業を要していた。
【0007】
切断装置上では材料板は位置決めされている。従って、切断して、まだ製品を位置決めしている状態で製品に塗料を塗布すれば、自動的な制御も容易である。しかし、これでは切断装置を塗料で汚染し、溶剤等による環境汚染の問題も生じる。従って、塗料の塗布装置は切断装置とは別個に設けた部屋に収容している。
【0008】
塗布装置に運び込まれた製品は様々な形状をしている。そのため、自動処理を採用する場合には、個々の製品がそれぞれどの部分に塗装を施すべきかを自動的に認識する必要がある。そのため、画像処理等の複雑な制御が必要になり、自動化が容易でない等の問題があった。本発明は以上の点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
【0010】
<構成1>
切断制御データに従って切断装置上で材料板から切り離された製品が、加工台上まで搬送されたときに、その加工台上でその製品の特定箇所に加工を施すための装置であって、
切断装置で切断されて切断装置から排出される前の状態のコンベア上で静止位置にある一定の向きの製品を、ロボットアームのヘッドが予め指定された位置を掴んで持ち上げときに、上記ヘッドとその製品の加工を必要とする箇所との相対的な位置関係を、製品の形状と製品の加工を必要とする箇所とを示すデータを含む切断制御データから、ヘッドの特定の箇所と製品の加工を必要とする箇所との間の長さと方向とヘッドの向きとを算出して取得し、かつ、上記ロボットアームにより上記加工台上にその製品が搬送されて置かれたときの、上記加工台上の上記ヘッドの位置と向きとをロボットアームの制御データから算出して取得し、その製品の加工を必要とする箇所の位置座標を示す状態データを生成するデータ処理装置と、
上記の状態データを使用して加工台上の加工機の加工動作を制御する加工制御装置を備えたことを特徴とする切断された製品の加工装置。
【0011】
<構成2>
上記ロボットアームにより上記加工台上に製品を置くときの、上記ヘッドの位置と向きとを、全ての製品について一定にすることを特徴とする構成1に記載の切断された製品の加工装置。
【0012】
<構成3>
コンピュータを構成1または2に記載のデータ処理装置と加工制御装置として機能させるコンピュータプログラム。
【0013】
<構成4>
構成3に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0014】
<構成1の効果>
切断装置で切断されて取り出されたときに、切断時の状態が保持されていれば、切断制御データを使用して、製品のヘッドが掴む位置を正確に制御できる。同時に、その切断制御データにより、ヘッドと製品の加工を必要とする箇所との相対的な位置関係も直ちに算出できる。製品を搬送したときの加工台上のヘッドの位置と向きとは、ロボットアームの制御データから簡単に取得できる。その結果、製品が加工台上に置かれた時の位置や向きも正確に算出できるから、製品の該当箇所を正確に加工できる。
<構成2の効果>
切断装置とロボットアームと加工台の位置関係が固定であれば、ロボットアームのヘッドが、常に加工台上の一定の場所に加工台に対して一定の方向に向くようにして、製品を置くことで、状態データの生成はより簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】切断装置16とコンベア22の上面図である。
図2】ロボットアーム26のヘッド24と製品の位置関係を示す説明図である。
図3】本発明の装置が採用される材料切断加工ラインの概略側面図である。
図4】ラインの制御コンピュータの機能ブロック図である。
図5】制御コンピュータ52の動作例を示すプログラムフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1図2は本発明の装置の具体的な動作例説明図である。図3は本発明の装置が採用される材料切断加工ラインの概略側面図である。
まず、図3を用いて、本発明の装置を採用するのに適する材料切断加工ラインの説明をする。このラインでは、材料供給部から切断装置16に対して、1枚ずつ材料板が供給される。この材料板は切断装置16において切り分けられる。材料板から切り離された製品は一枚ずつコンベア22により取り出される。その後、製品はロボットアーム26により搬出される。
【0018】
図1は上記の切断装置16とコンベア22の上面図で、図2は、ロボットアーム26のヘッド24と製品の関係を示す説明図である。
切断装置16は、切断制御データ18に従って材料板12から、製品20を切り出す。その後、この製品は、切断装置16から排出されて梱包等のための工程に進む。
【0019】
ここで、本発明の装置は、切断装置16からコンベア22により取り出され、排出される前の製品20の一部分をロボットアーム26のヘッド24で掴んで持ち上げて、加工台28まで搬送する。切断装置16の内部で、材料板12から製品20を切り離すまで、材料板12と製品20とは正確に位置決めされてクランプされている。切断されて材料板12から切り離された製品20は、切り離されたときのままの状態で、コンベア22で一定の距離だけ送り出される。従って、コンベア22上の製品20の位置と形状と向きとは、切断制御データ18から正確に認識することができる。
【0020】
加工台28では、加工機44により製品20の特定箇所に加工を施す。具体的には、例えば、加工台28では、製品20の切断によって新たに生じた側面に、塗布エアーガンを用いて防湿等のための塗料を塗布する。なお、加工機44の別の例としては、製品の特定の箇所に部品の取り付け等の簡単な加工を施すといったものをあげることができる。
【0021】
ロボットアーム26は、例えば、吸盤を備えたヘッド24を製品20の中央付近に吸着させて掴んで持ち上げるように構成されている。
【0022】
上記のように、切断装置16で製品20を切り離した後、コンベア22が一定量だけ製品を外部に送り出す。コンベア22により送り出された製品20の向きと静止位置や製品20の形状は切断制御データ18から正確に取得できる。ロボットアーム26は、図1に示すように、そのヘッド24を製品の掴みやすい指定された位置に位置決めして、製品を掴む。
【0023】
例えば、ヘッド24には図示しない吸盤が取り付けられており、製品の重心付近に吸着して持ち上げるようにする。製品を切断装置16から排出する前の、コンベア22上で一定の場所にある状態で、上記ロボットアーム26のヘッド24が製品20の一部分を掴んで搬送を開始する。
【0024】
このときに、データ処理装置40は、切断制御データ18により、ヘッド24と製品20の加工を必要とする箇所との相対的な位置関係を算出して取得する。この位置関係を示すデータには、例えば、ヘッド24の特定の箇所と製品の加工を必要とする箇所との間の長さや方向と、製品20を掴んだときの製品に対するヘッド24の向き等を示すデータが含まれる。
【0025】
例えば、図2に示すように、ロボットアーム26のヘッド24上に原点を持つ、ヘッド24に対してその向きが固定された座標軸を設定して、製品20の塗料を塗布すべき側面の主要な点の位置座標を取得しておく。
【0026】
なお、予め準備された切断制御データ18には、材料板12を切断する刃物を制御するためのデータが含まれており、製品の形状を示すデータも含まれている。従って、製品をロボットアーム26で持ち上げるときにヘッド24を吸着させる位置を示すデータも予め準備できる。
【0027】
切断装置16とコンベアによる取り出し時の移動量とロボットアーム26の位置に変動がなければ、ヘッド24の特定の箇所と製品の加工を必要とする箇所との間の長さや方向と、製品20を掴んだときの製品に対するヘッド24の向きは、全て予め算出できる。従って、データ処理装置40は、この位置関係を示すデータを製品毎に予め算出して記憶装置に記憶させておくこともできる。
【0028】
その後、データ処理装置40は、上記ロボットアーム26により上記加工台28上にその製品20が搬送されて置かれたとき、上記加工台28上の上記ヘッドの位置と向きとを取得する。
【0029】
製品を搬送した後の加工台上のヘッドの位置と向きとは、ロボットアームの制御データから取得する。このデータと、ヘッド24と製品20の加工を必要とする箇所との相対的な位置関係とから、製品が加工台上に置かれた時の位置と向きも正確に算出できる。
【0030】
図2の例では、点Aから点Bを経由して点Cまでの線が塗料を塗布すべき側面を示す。この線を示すデータが、加工機44の加工動作を制御するための状態データ38である。この実施例では加工機44は塗布エアーガンだから、図2に示すように、加工制御装置46は、上記の線に沿って加工台28上の製品の側面に向けて塗料を噴出させる。なお、この加工台28と加工機44には、塗料の飛散を防ぐために図示しない覆いが設けられる。
【0031】
ロボットアーム26が製品20を加工台28上まで搬送して製品を下ろすときまで、ヘッド24から製品20が離れない限り、ヘッド24と製品20の相対的な位置関係は変化しない。ロボットアーム26と加工台28の位置関係も一定である。ここで、加工台28上に製品20を置くときの、ヘッド24の位置と向きとを、全ての製品について一定にすると、ロボットアーム26の制御データを読む必要もなくなる。
【0032】
即ち、ロボットアーム26のヘッド24が、常に加工台28上の一定の場所に移動してから製品20を置くようにする。そのときのヘッド24の向きも一定にしておく。これにより、製品20の識別データとその加工台28上の加工位置を示す状態データ38とを対応させた加工制御データを予め準備しておくこともできる。
【0033】
図4は、図3に示したラインの制御用コンピュータの機能ブロック図である。
この制御コンピュータ52の演算処理装置56は、演算処理を開始すると、切断制御装置48とデータ処理装置40と搬送制御装置50と加工制御装置46として機能する。このとき、記憶装置54に記憶された切断制御データ18を使用して、状態データ38を生成する。これにより、既に説明した製品に塗料を塗布するような処理をする加工制御装置46を制御する。
【0034】
図5は、制御コンピュータ52の動作例を示すプログラムフローチャートである。
まず、ステップS11で、切断制御データ18を読む。そして、ステップS12で、材料板12を切断制御する。ステップS13では、コンベア22が、1枚の製品20を取り出す。この状態で、ステップS14で、ロボットアーム26のヘッド24が、製品20を掴む。ステップS15で、ロボットアーム26が品20を加工台に搬送する。ステップS16では、データ処理装置40が状態データ38を算出する。ステップS17では、この状態データ38を使用して、加工機44の加工(塗料の塗布)制御を開始する。
【0035】
以上のような処理の後は、例えば、ロボットアーム26が再び製品20を掴み上げて、梱包のために積み上げるように処理をする。即ち、ロボットアーム26はこうした動作にも利用できる。
【0036】
以上の装置は、加工装置に運び込まれた製品の位置や向きや形状を認識処理するための複雑な演算制御を必要としない。ロボットアームの動作記録だけで塗布装置を制御する制御データを生成できるため、制御が簡単で高速処理が可能である。
【0037】
しかも、例えば、特許文献1に示した製造ラインの、切断後の製品の梱包処理前に、簡単に追加設置ができる。従って、上記のような塗料の塗布処理のみならず、部品の取り付け処理等に広く利用できる。
【0038】
塗料を塗布された後に、その製品は、隣接するスペースに積み上げられて梱包されて搬出される。ロボットアームにより作業台上に置かれたままの状態で塗料が塗布されると、ロボットアームは、作業台上に置かれた製品の位置と形状と向きとを、記憶装置に記憶しておいて、再度そのデータを利用することができる。
【0039】
ロボットアームの操作範囲内に、梱包用のスペースが設けられていると、このロボットアームが、加工台からそのスペースに製品の形状と向きを認識して運び出すことができる。即ち、記憶装置に記憶していたデータを利用して、製品の形状と向きを考慮して梱包用のスペースに製品を積み上げることができる。
【0040】
例えば屋根材の場合には、同様の形状の製品が多数含まれる。これらの製品は、屋根に持ち上げることができる分量ずつ積み上げられて梱包される。同時に、屋根の上で作業をするときに、梱包から取り出す順番に積み上げられる。こうした梱包作業では、各製品の形状に合わせて、向きを揃えて積み上げることが好ましい。
【0041】
即ち、本発明では、切断装置で切断した製品を加工台に移動させて塗料の塗布等の加工処理を施し、続いてその製品を梱包のために形状や向きを揃えて積み上げる処理をロポットアームの制御によって自動的に連続的に実行することが可能になる。
【符号の説明】
【0042】
12 材料板
16 切断装置
18 切断制御データ
20 製品
22 コンベア
24 ヘッド
26 ロボットアーム
28 加工台
38 状態データ
40 データ処理装置
44 加工機
46 加工制御装置
48 切断制御装置
50 搬送制御装置
52 制御コンピュータ
54 記憶装置
56 演算処理装置
図1
図2
図3
図4
図5