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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】融雪用流体噴射装置および融雪装置
(51)【国際特許分類】
   E01H 11/00 20060101AFI20221215BHJP
   E01B 19/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
E01H11/00 B
E01B19/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019107957
(22)【出願日】2019-06-10
(65)【公開番号】P2020200651
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390002118
【氏名又は名称】株式会社いけうち
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】二坂 総一郎
(72)【発明者】
【氏名】横濱 明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昭良
(72)【発明者】
【氏名】権藤 政則
(72)【発明者】
【氏名】本多 真人
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-346436(JP,A)
【文献】特開平07-054318(JP,A)
【文献】特開2013-022481(JP,A)
【文献】特開2008-190136(JP,A)
【文献】特開平06-123105(JP,A)
【文献】実開昭53-063103(JP,U)
【文献】特開2009-002005(JP,A)
【文献】特開平10-140503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 11/00
E01B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に導入口を前面に導出口をそれぞれ有し内部に前記導入口と前記導出口とを連通する流体通路が形成されている本体ブロックと、前記本体ブロックの前記導出口に設けられた噴射ノズルと、を備え、枕木の上方へ突出する管路の端部に接続されて前記管路より送出されてくる流体を噴射する融雪用流体噴射装置であって、
前記本体ブロックの前記導入口には、
前記管路の端部に設けられている雄ネジに螺合される雌ネジ部が下部内周面に形成され、上部外周面にシーリング材が装着された結合金具と、上端が前記本体ブロックの前記導入口に固着され下部に前記結合金具に嵌合可能なスリーブを有する導水管と、を備えた結合手段が設けられていることを特徴とする融雪用流体噴射装置。
【請求項2】
前記噴射ノズルは、後端がボールジョイント構造により、前記本体ブロックの前記導出口に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の融雪用流体噴射装置。
【請求項3】
枕木の上面に固定されるベースプレートと、該ベースプレートに所定の距離をおいた状態で装着された支持プレートを備えた取付け手段と、を有し、
前記支持プレートの上に前記本体ブロックが載置され固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の融雪用流体噴射装置。
【請求項4】
前記支持プレートには、前記噴射ノズルの向きを調節し固定するためのノズル向き調整機構を備えることを特徴とする請求項3に記載の融雪用流体噴射装置。
【請求項5】
前記取付け手段の前記支持プレートの上に載置された前記本体ブロックおよび前記噴射ノズルの上方を覆うように配設され前記ベースプレートに固定された保護用のカバーを備えることを特徴とする請求項3または4に記載の融雪用流体噴射装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の融雪用流体噴射装置と、
融雪用流体を送給するためのポンプと、
上面より突出する口金が接続され融雪用流体を送給する管路が内部に設けられた管路一体型枕木と、
前記ポンプと前記枕木内の前記管路の入口との間を接続する流体送給用のパイプと、を備え、
前記口金に前記結合手段によって前記導水管が接続されていることを特徴とする融雪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道軌道において融雪もしくは除雪のために使用される流体噴射ノズルに関し、特に融雪用の流体を供給する管路を有する管路一体型の枕木に装着するのに適した融雪用流体噴射装置およびそれを使用した融雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、降雪地域に敷設されている鉄道の分岐器には、雪氷が介在することでポイント不転換が発生しないように、分岐器の可動部分に向けて温水を噴射し、雪氷を融かして除去する融雪装置が設置されている。かかる融雪装置として、例えば図8に示すように、トング部に向けて温水を噴射するノズルN1及びN2を備えた融雪装置が知られている。
【0003】
また、圧縮気体の圧力により液体をノズルより噴射し、基本レールRbとトングレールRtの間に挟まった雪氷を、高圧水と圧縮空気により吹き飛ばすようにして除去する除雪装置に関する発明(特許文献1)や、融雪装置に使用される液体噴射ノズルであって液体を噴射する方向を調節するため姿勢変更手段を備えた液体噴射ノズルに関する発明(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-279633号公報
【文献】特開2002-346436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8に示す従来の融雪装置や特許文献1に開示されている除雪装置においては、温水や圧縮気体で押し出された水を噴射ノズルまで供給する配管12が、枕木10に沿って露出した状態で配設されていたため、天候及び車両に付着した氷雪の落下により配管が損傷を受け易い。また、バラスト軌道において、マルチプル・タイタン・パーと呼ばれる保線機械によって道床を突き固める保線作業の際に、予め配管を除去し作業終了後に再設置を行わなくてはならず作業効率が悪いという課題があった。
【0006】
そこで、本出願人は、合成樹脂材料で形成された枕木本体の内部に、長手方向に沿って枕木本体を貫通するように配管を設けることによって、温水を噴射ノズルまで供給する配管が露出した状態で軌道上に設置されるのを回避して損傷を受けにくくすることができる管路一体型枕木を開発し、特許出願をした(特願2018-127987)。
【0007】
しかしながら、枕木本体の内部に温水をノズルまで供給する配管を設けたとしても、その先に接続される噴射ノズルとして、特許文献1や2に記載されているような、枕木の幅方向にはみ出すような長さを有するノズルを使用すると、ノズルが保線作業の妨げになるとともに、ノズル自体が走行する列車から落下する雪塊の衝突で損傷を受けるおそれがある。なお、上記特許出願(特願2018-127987)では、枕木の幅内に収まる短い長さのノズルを使用することが示されているが、具体的な構造については記載されていない。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、道床を突き固める保線作業の際に予め除去して作業終了後に再設置する作業が不要な融雪用流体噴射装置とそれを使用した融雪装置を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、走行する列車から落下する氷雪塊の衝突で損傷を受けるおそれのない融雪用流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明は、
下面に導入口を前面に導出口をそれぞれ有し内部に前記導入口と前記導出口とを連通する流体通路が形成されている本体ブロックと、前記本体ブロックの前記導出口に設けられた噴射ノズルと、を備え、枕木の上方へ突出する管路の端部に接続されて前記管路より送出されてくる流体を噴射する融雪用流体噴射装置において、
前記本体ブロックの前記導入口には、
前記管路の端部に設けられている雄ネジに螺合される雌ネジ部が下部内周面に形成され、上部外周面にシーリング材が装着された結合金具と、上端が前記本体ブロックの前記導入口に固着され下部に前記結合金具に嵌合可能なスリーブを有する導水管と、を備えた結合手段が設けられているようにしたものである。
上記のような構成によれば、噴射ノズルの突出量を少なくして枕木の幅内に収まる流体噴射装置を実現することができ、道床を突き固める保線作業の際に予め除去して作業終了後に再設置する作業が不要となり作業効率を向上させることができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記噴射ノズルは、後端がボールジョイント構造により、前記本体ブロックの前記導出口に接続されているようにする。
かかる構成によれば、噴射ノズルの向きを調節することができ、融雪装置に適用した場合には効率良く融雪を実行することができる。
【0011】
また、望ましくは、枕木の上面に固定されるベースプレートと、該ベースプレートに所定の距離をおいた状態で装着された支持プレートを備えた取付け手段と、を有し、
前記支持プレートの上に前記本体ブロックが載置され固定されているようにする。
このような構成によれば、融雪用流体噴射装置が接続される口金の高さにばらつきがあっても、噴射ノズルの高さを調節することでばらつきを吸収して融雪用流体噴射装置を容易に設置することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記支持プレートには、前記噴射ノズルの向きを調節し固定するためのノズル向き調整機構を備えるようにする。
かかる構成によれば、噴射ノズルの向きを調節した状態に保持することができるため、流体の噴射方向が次第にずれて融雪効率が低下するのを防止することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記取付け手段の前記支持プレートの上に載置された前記本体ブロックおよび前記噴射ノズルの上方を覆うように配設され前記ベースプレートに固定された保護用のカバーを備えるようにする。
かかる構成によれば、走行する列車から落下する氷雪塊の衝突で噴射ノズルが損傷を受けるのを防止することができる。
【0014】
さらに、本出願の他の発明に係る融雪装置は、
上述したような構成の融雪用流体噴射装置と、
融雪用流体を送給するためのポンプと、
上面より突出する口金に接続され融雪用流体を送給する管路が内部に設けられた管路一体型枕木と、
前記ポンプと前記枕木内の前記管路の入口との間を接続する流体送給用のパイプと、を備え、
前記口金に前記結合手段によって前記導水管が接続されているように構成したものである。
【0015】
上記のような構成を有する融雪装置によれば、枕木本体の内部に配管が配設されているため、この配管を利用して融雪のための温水を送給することができ、温水送給用の配管が軌道表面に露出した状態で軌道上に設置されるのを回避して、送給用の配管が損傷を受けにくくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る融雪用流体噴射装置および融雪装置によれば、道床を突き固める保線作業の際に予め除去して作業終了後に再設置する作業が不要となり作業効率を向上させることができる。また、走行する列車から落下する氷雪塊の衝突で融雪用流体噴射装置が損傷を受けるおそれがないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る融雪用流体噴射装置が接続される管路一体型枕木の一構成例を示すもので、(A)は枕木の全体を示す正面図、(B)は側面図である。
図2図1の管路一体型枕木を融雪装置に利用する形態の一例を示すもので、(A)は枕木の正面図、(B)は断面側面図である。
図3図1の管路一体型枕木を使用した分岐器の融雪装置の概略を示す平面図である。
図4】本発明に係る融雪用流体噴射装置を構成するノズルユニットの一実施形態を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図5】(A)および(B)は、実施形態の融雪用流体噴射装置を構成するノズルユニットの一部断面側面図である。
図6図4に示すノズルユニットとこれを管路一体型枕木に取り付けるための取付けユニットとを備えた融雪用流体噴射装置の構成を示す斜視図である。
図7】(A)および(B)は、実施形態の融雪用流体噴射装置を構成する保護ユニットの一実施形態を示す平面図および正面図である。
図8】従来の分岐器における融雪装置の概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る融雪用流体噴射装置およびそれを使用した融雪装置の実施形態について詳細に説明するが、先ず本発明に係る融雪用流体噴射装置を使用するのに適した管路一体型枕木について説明する。図1は、管路一体型枕木の構成例を示すもので、(A)は枕木の全体を示す正面図、(B)は側面図である。
図1(A)に示すように、本実施形態の融雪用流体噴射装置が結合される枕木10は、直方体状の枕木本体11の内部に、樹脂製の配管12が枕木の長手方向に沿って枕木を貫通するように内蔵した状態で配設されている。
【0019】
上記枕木本体11は、例えば人工木材として提供されている合成樹脂あるいはガラス繊維と硬質発泡ウレタンなどの合成樹脂で構成された複合材料で形成されている。配管12には、耐食性・耐震性に優れた水道管用配管としてポリエチレン管が従前より提供されているので、そのようなポリエチレン管を使用することができる。金属製の配管を使用しても良いが、合成樹脂の配管を使用することで、特に融雪装置の送水管として利用する際の耐久性を高めることができる。また、配管12が枕木本体11内に配設されるため、保線機械によって道床を突き固める保線作業を実施する際に、管に損傷を与えることなく作業を行うことが可能となる。
【0020】
一方、上記配管12の両端には、外周に雄ネジが形成された口金13A,13Bが固着されている。また、配管12の途中には、管路を分岐させるためT字形の継手14A,14Bが逆さの状態で設けられており、このT型継手14A,14Bの上端には外周に雄ネジが形成された口金15A,15Bが固着されている。融雪装置の送水管として使用される場合、上記配管12の両端の口金13A,13Bの一方はプラグ(キャップ)によって塞がれ、他方には、図3に示すように、フレキシブル継手24A,24Bを介して送水用のパイプ25が接続される。
【0021】
また、配管12の途中のT型継手14A,14B上端の口金15A,15Bの一方はプラグによって塞がれ、他方には噴射ノズルが装着される。T型継手14A,14Bの両方に噴射ノズルを装着する構成も可能であるが、一方にのみ噴射ノズルを装着することで、噴出圧力が低下するのを回避することができる。
本実施形態においては、特に限定されるものでないが、上記配管12が枕木本体11の厚さ方向下から1/3の高さ位置に配設されている。これにより、バラスト軌道において、配管12の側部に接続されるフレキシブル継手24A,24Bや送水管がバラスト内に埋設され、表面に露出して損傷され易くなるのを防止することができる。
【0022】
上記枕木本体11は、配管12をインサートとして一体成型により形成することもできるが、ほぼ同一の厚みであって所定の部位に配管12を内蔵させる空間を構成する半円柱状の溝を有する2枚または3枚の短冊状の樹脂板を重ね合わせ、接合面に接着剤を塗布してクランパによって上下から圧力を加えて接着させることで形成しても良い。
上記樹脂板の接着前に溝により形成される空洞内に配管12が配置され、外周の隙間10a(図1)に接着剤が流し込まれ、樹脂板の接着後には、樹脂製配管12の両端の口金13A,13Bの外周の隙間にシリコンシーラントのようなシール剤が充填され封止される。これにより、空洞内部での配管12の移動やガタツキが防止されるとともに、隙間への雨水や融水の進入が防止される。
【0023】
なお、枕木本体11内の配管12を、融雪装置を構成する温水送給用の管路として利用する場合、枕木本体11の上面には、図2(A)に示すように、タイプレート21を介してレールRが載置され、レール締結器20によって枕木に固定される。このレール締結器20は枕木10に固定するため埋込みネジ22が設けられているが、埋込みネジ22の下端は、図2(B)に示すように、配管12の外側に位置することになるため、配管12の形成に何ら支障をもたらすものではない。
【0024】
次に、上記管路一体型枕木を利用した融雪装置の構成を、図3を用いて説明する。
図3は、図1図2の管路一体型枕木を利用した融雪装置の構成例を示す平面図である。
図3に示す融雪装置においては、枕木10Aと10Bに、前述の配管12を内蔵した枕木が使用されている。そして、一方の枕木10Aは、枕木本体11の上面に突出するT型継手14A,14Bの上端の口金15A,15Bのうち右側の口金15Aに流体の噴射ノズル23Aが、また他方の枕木10Bは左側の口金15Bに噴射ノズル23Bが装着されている。
【0025】
また、枕木10Aと10Bの側面に突出する口金13Aと13Bには、フレキシブル継手24Aと24Bがそれぞれ接続されており、これらのフレキシブル継手24A,24Bの他端には温水を供給するパイプ25が接続され、温水送給ポンプ26によってパイプ25を介して枕木10A,10B内の配管12へ温水が送給される。
噴射ノズル23Aと23Bは、枕木と直交する方向すなわちレールRとほぼ平行な方向を向くように装着されており、前方にある基本レールRbとトングレールRtの間に向けて温水を噴射することができるように構成されている。
【0026】
次に、上記管路一体型枕木10に接続される噴射ノズル23を備えた融雪用流体噴射装置の実施例を、図4図7を用いて説明する。
本実施例の融雪用流体噴射装置は、噴射ノズル23を有するノズルユニット30と、ノズルユニット30を枕木10に固定するための取付けユニット40と、ノズルユニット30を落雪から保護するための保護ユニット50とから構成されている。
【0027】
図4および図5には、上記ユニットのうちノズルユニット30の詳細が示されている。このうち、図4(A)および(B)はノズルユニット30の平面図および正面図、図5(A)および(B)はノズルユニット30の一部断面側面図である。
図4に示されているように、ノズルユニット30は、ほぼ直方体状をなし前記T型継手14A(14B)の上端の口金15A(15B)に噴射ノズル23を連結するためのアダプタ31、アダプタ31の下面に形成されている導入口に固着された導水管32、導水管32を口金15A(15B)に結合するための結合金具33(図5(A))、アダプタ31の前面に形成されている導出口に噴射ノズル23を装着するための抑えプレート34などを備える。
【0028】
アダプタ31は、例えばステンレスなどの金属製であり、内部に下面の導入口から前面の導出口まで噴射流体を誘導する流水路が形成されている。この流水路は、下面の導入口から垂直方向へ立ち上がる縦穴とこの縦穴の中央部から水平方向へ延びる横穴とを備え、横穴に前面の導出口が連通されている。
なお、流水路はドリルを用いて金属ブロックを切削することで形成されるため、上記縦穴は貫通孔として形成され、その貫通孔が臨むアダプタ31の上面にはメクラネジ35が螺合されて、流水路の開口部を閉塞している。また、横穴の入口となるアダプタ31の側面の開口部にもメクラネジ36が螺合されて、流水路を閉塞している。
【0029】
図示しないが、アダプタ31内に形成されている流水路の出口近傍には、導出口へ誘導される流体の流れを整えるため、例えば十字形をなす整流片が設けられている。
さらに、アダプタ31には、図4(A)および図5(A)に示すように、取付けユニット40を構成する支持台に固定するためのボルトが挿通される3個のボルト挿通孔31aが上下方向に形成されている。
アダプタ31の下面に固着されている導水管32は、図5(A)に示すように、アダプタ31の下面の導入口に形成されている雌ネジ部に螺合される雄ネジ部32aと、雄ネジ部32aと一体に形成されたスリーブ32bを有する。
【0030】
結合金具33は、上記導水管32のスリーブ32bの内径よりも若干小さな外形を有する円筒状をなし、T型継手14A(14B)の上端の口金15A(15B)に形成されている雄ネジに螺合される雌ネジ部33aが下部内周面に形成され、上部外周面に形成された溝にはシーリング材としてのOリング33bが係合されており、枕木上面より突出するT型継手の口金に螺着された結合金具33と導水管32のスリーブ32bとの隙間から水が漏れるのを防止するように構成されている。
【0031】
また、T型継手14A(14B)の口金15A(15B)の高さにばらつきがあっても、スリーブ32bが、図5の(A)および(B)に示すように、結合金具33に対して上下方向に移動することでばらつきを吸収し、枕木上面からのアダプタ31の高さを一定に調整する機能を備えている。さらに、スリーブ32bの下端内周には、結合金具33の上端部の挿入を容易にするためのテーパ面32cが形成されている。
上記ノズルユニット30の枕木への装着に際しては、先ず枕木上面のT型継手14Aまたは14Bの口金15Aまたは15Bに結合金具33を螺着して結合してから、結合金具33にアダプタ31下面の導水管32のスリーブ32bを嵌合させることで、枕木内の送水用配管12とノズルユニット30内の流水路とが接続される。
【0032】
アダプタ31の前面に形成されている導出口に装着される噴射ノズル23は、ボールジョイント構造(図示省略)により装着され、アダプタ31の前面の導出口の内周には、噴射ノズル23の基部にあるボールの径に対応した湾曲を有する凹面が形成されており、噴射ノズル23の向きすなわち流体の噴射方向を調整可能に構成されている。
【0033】
そして、抑えプレート34は、噴射ノズル23の基部にあるボールが抜けないように抑える機能を有しており、図4(B)に示すように、4本のボルト37によってアダプタ31の前面に固着されている。なお、噴射ノズル23の向きは一旦調整が終了すると、後述の取付けユニット40のロック機構によって固定されるように構成されている。
上記のような構成を有するノズルユニット30によれば、枕木の幅内に収まる融雪用流体噴射装置を実現することができる。
【0034】
次に、上記ノズルユニット30を枕木に固定するための取付けユニット40の構成を、図6を用いて説明する。
図6に示されているように、取付けユニット40は、4隅に設けられたボルト挿通孔に挿通された固定用ボルト41によって枕木11に固定されるベースプレート42と、ベースプレート42に頭部を下向きにした状態で溶着された4本のボルト43およびそれぞれに螺合されたナット44によってベースプレート42と所定の距離をおいて水平に支持された支持プレート45と、噴射ノズル23の向きを調整可能なノズル向き調整機構部46とを備える。
【0035】
そして、支持プレート45上に前記ノズルユニット30が載置され、3本のボルト47によって固定されている。図示しないが、支持プレート45には、ノズルユニット30のアダプタ31の下面に固着されている導水管32が挿通可能な開口部が形成されている。
ノズル向き調整機構部46は、支持プレート45上に載置されたノズルユニット30の噴射ノズル23の周囲を囲繞する位置に固着されたリング61と、このリング61に120度間隔の3方向からリング61の中心へ向かって螺合された3本の調整ネジとを備える。なお、図6においては、3本の調整ネジのうち2本のネジ62A,62Bが示されている。
【0036】
ノズル向き調整機構部46による調整は、先ず3本の調整ネジ62A,62B,63C(図示略)を緩めた状態で噴射ノズル23の向きを調整し、向きが確定したなら噴射ノズル23の下面とリング61の周面との隙間に、対応した高さを有するブッシュもしくはクサビを挿入した後、調整ネジ62A,62B,63Cを締め付け方向へ回してネジの先端を噴射ノズル23の外周に当接させることで行われる。
【0037】
なお、ベースプレート42の4本の固定用ボルト41の近傍には、保護ユニット50のカバー51(図7参照)を取り付けるための取付け片48が設けられている。
保護ユニット50は、図7に示されているように、支持プレート45上に載置されたノズルユニット30の上方を覆う屋根形のカバー51と、このカバー51の下部を上記ベースプレート42の4隅の取付け片48に固定するボルト52とによって構成されている。
【0038】
カバー51の上記噴射ノズル23の先端に対向する部位には、図7(B)に示すように、開口51aが形成されており、この開口51aより噴射ノズル23から噴射された流体が前方へ向かって放出される。
また、カバー51は、図7(A)に示すように、上辺から側壁にかけてテーパ部51bが形成されており、走行する列車から落下した氷雪塊の衝突による衝撃を逃がし、カバー51が変形したり破損したりするのを防止するように構成されている。特に限定されるものでないが、カバー51の側部(図7(B)の左右)は解放されている。
【0039】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、カバー51の側部は解放されているが、側壁を設けて内側の空間を閉鎖するようにしても良い。
また、前記実施形態では、アダプタ31内に流水路として縦穴と横穴を設けているが、横穴を省略して縦穴に直接導出口を連通させるように構成しても良い。
さらに、前記実施形態では、融雪のための流体を噴射するノズルとして使用する場合について説明したが、除雪のための圧縮気体を噴射する場合にも利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 枕木
11 枕木本体
12 配管
13A,13B 口金
14A,14B T型継手
20 レール締結器
21 タイプレート
22 埋込みネジ
23A,23B 噴射ノズル
24A,24B フレキシブル継手
25 パイプ
26 温水送給ポンプ
30 ノズルユニット
31 アダプタ(本体ブロック)
32 導水管
33 結合金具
40 取付けユニット
42 ベースプレート
45 支持プレート
46 ノズル向き調整機構部
50 保護ユニット
51 カバー
Rb 基本レール
Rt トングレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8