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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】乾式分離装置及び乾式分離方法
(51)【国際特許分類】
   B07B 4/08 20060101AFI20221215BHJP
   B07B 9/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B07B4/08 Z
B07B4/08 B
B07B9/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018072050
(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公開番号】P2019181330
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】599035627
【氏名又は名称】学校法人加計学園
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】押谷 潤
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0023246(US,A1)
【文献】米国特許第04946044(US,A)
【文献】実開昭49-095561(JP,U)
【文献】特開2007-319739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0023327(US,A1)
【文献】特開昭53-097664(JP,A)
【文献】特開2013-139005(JP,A)
【文献】特開昭62-171786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/00-15/00
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
B29B 17/00-17/04
C08J 11/00-11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離槽を備える本体部と、分離対象物を前記分離槽へ投入する投入部と、分離された前記分離対象物を前記分離槽から排出する排出部とを有する乾式分離装置であって、前記分離槽に投入された分離対象物を振動する振動手段と、前記分離槽の底部、及び/又は中間部に設けられた送風手段と、前記振動によって分離された分離対象物を前記排出部へ移動させる移動手段とを有し、かつ、前記分離槽内は、前記分離対象物を移動させたい方向に平行に1又はそれ以上の振動可能な仕切りを有し、前記送風手段の風速は、前記投入部側が大きく、前記排出部側が小さいことを特徴とする乾式分離装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記分離槽の底部に設けられた傾斜である請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記傾斜は、前記投入部から前記排出部へ向けられた傾斜である請求項2記載の装置。
【請求項4】
さらに、前記分離槽の底部、及び/又は中間部に気体分散板を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記分離槽は、矩形型、円柱型、三角柱型の少なくとも1種である請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記移動手段は、前記分離槽内で分離された分離対象物を、前記排出部へ向かって移動させることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記振動手段は、縦、横、ツイスト及び斜めのうち少なくとも一つの方向を含む振動を実施することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の乾式分離装置を用いて、粉体を流動化させた固気流動層を利用して投入部から投入された分離対象物を分離するか、又は前記分離対象物自体を流動化させて前記分離対象物を分離し、前記分離した分離対象物を排出部へ排出する乾式分離方法であり、前記分離対象物を振動させて分離し、前記分離した分離対象物を前記排出部へ移動させる移動手段によって排出する乾式分離方法であって、前記流動化を、分離槽の底部、及び/又は中間部に設けられた送風手段により形成し、前記分離対象物を移動させたい方向に平行に1又はそれ以上の振動可能な仕切りを有する分離槽内で前記分離対象物を分離することを特徴とする乾式分離方法。
【請求項9】
前記移動手段は、前記分離槽の底部に設けられた傾斜である請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記底部からの送風により分離する請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記投入部の送風の風速は、前記排出部の送風の風速に比較して大きいことを特徴とする請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を用いることなく分離対象物の比重分離を行なう乾式分離方法、及び乾式分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設廃棄物、産業廃棄物又は災害廃棄物等は、種々の異なる成分を含んでいる。このような成分毎の分離は、残渣の適正処理のみならず、レアメタルの回収、鉱物資源の精製、資源のリサイクル等を行なう上で、必要である。
【0003】
より具体的には、ものづくり現場で生じる粒状廃棄物などの分離対象物の中から有価物を取り出すため、又は不法投棄が問題となっている建設廃棄物残渣や災害により大量発生する災害廃棄物残渣の適正利用に、粒状混合物などの分離対象物を密度差に基づいて分離する技術が求められる。さらには、資源利用においては、レアメタル、鉄鉱石、銅鉱石、石炭等の粒状鉱物の高品位化に、当該分離技術の利用が期待されている。
【0004】
現在までのところ、分離方法としては主として、水中での物体浮沈現象に基づく湿式分離法及び乾式分離法が知られている。例えば、衝突粉砕処理工程を組み込むことによって、各比重に対応した二種の単層細小片集合物を高回収率、かつ高純度で得る回収処理方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
湿式比重分離技術は、国内外で広く普及している。当該技術は廃液処理や乾燥工程が必要、液体の比重調整が高価、装置からの液漏れによる作業環境の劣悪化、水資源の乏しい国や地域での利用が困難などの問題がある。乾式比重分離技術では、このような問題はない。
【0006】
乾式比重分離技術において、固気流動層内での物体浮沈現象を利用するものがある。固気流動層とは、粉体を例えば下部からの送風により流動化させた層であり、密度や粘度等の物性が液体に類似する。この層内に物体を投入すると、相対的に軽い物体は浮上し、相対的に重い物体は沈降する、物体浮沈現象が生じるためにそれらの物体を上下に分離可能となる。
【0007】
そのような乾式比重分離方法の例として、流動化媒体となる粉体に気体を吹き付けて流動層を形成し、固気流動層内に石炭粒子を投入して流動層の見かけ密度より小さい密度の石炭粒子を浮揚させ、大きい密度の石炭粒子を沈降させて分離するようにした乾式石炭分離方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平7-156148号公報
【文献】特開2000-61398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の乾式分離技術はいずれも、装置コストが高く、効率も低いなどの問題があった。加えて、湿式分離法においては、廃液処理による環境汚染の問題や、水資源の少ないところでは利用できず、また、廃液処理や分離後の乾燥工程を必要とするなどの問題を抱えている。
【0010】
また、いずれの分離方法においても、目的成分以外に、分離対象物中に不純物を含んでいる場合が殆どである。当該不純物の中には、空気中ですぐに飛散してしまうほどの微粒子を含む場合もある。また、飛散することはないにしても、たとえば、流動層を形成する媒体、例えば、砂などの動きの影響を受けやすいサイズの粒状物は、やはり、条件を正確に設定しなければ、流動化媒体の動きの影響を受ける可能性があり、流動層を用いた分離には向かない傾向があった。
【0011】
そこで、本発明は、流動化媒体の影響を受けやすい分離対象物であっても、低コストで分離することが可能であり、環境に優しい乾式分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者は、密度差の小さな分離対象物同士の分離の場合について、固気流動層を用いて分離した後、排出するしくみについて鋭意検討し、本発明の乾式分離方法及び乾式分離装置を見出すに至った。
【0013】
本発明の乾式分離装置は、分離槽を備える本体部と、分離対象物を前記分離槽へ投入する投入部と、分離された前記分離対象物を前記分離槽から排出する排出部とを有する乾式分離装置であって、前記分離槽に投入された分離対象物を振動する振動手段と、前記分離槽の底部、及び/又は中間部に設けられた送風手段と、前記振動によって分離された分離対象物を前記排出部へ移動させる移動手段とを有し、かつ、前記分離槽内は、前記分離対象物を移動させたい方向に平行に1又はそれ以上の振動可能な仕切りを有し、前記送風手段の風速は、前記投入部側が大きく、前記排出部側が小さいことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記移動手段は、前記分離槽の底部に設けられた傾斜であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記傾斜は、前記投入部から前記排出部へ向けられた傾斜であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、さらに、前記分離槽の底部、及び/又は中間部に気体分散板を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の乾式分離装置は、前記分離槽は、矩形型、円柱型、三角柱型の少なくとも1種であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記移動手段は、前記分離槽内で分離された分離対象物を、前記排出部へ向かって移動させることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記振動手段は、縦、横、ツイスト及び斜めのうち少なくとも一つの方向を含む振動を実施することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の乾式分離方法は、本発明の乾式分離装置を用いて、粉体を流動化させた固気流動層を利用して投入部から投入された分離対象物を分離するか、又は前記分離対象物自体を流動化させて前記分離対象物を分離し、前記分離した分離対象物を排出部へ排出する乾式分離方法であり、前記分離対象物を振動させて分離し、前記分離した分離対象物を前記排出部へ移動させる移動手段によって排出する乾式分離方法であって、前記流動化を、分離槽の底部、及び/又は中間部に設けられた送風手段により形成し、前記分離対象物を移動させたい方向に平行に1又はそれ以上の振動可能な仕切りを有する分離槽内で前記分離対象物を分離することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記移動手段は、前記固気流動層を含む分離槽の底部に設けられた傾斜であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記底部からの送風により分離することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記投入部の送風の風速は、前記排出部の送風の風速に比較して大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
また、本発明によれば、いわゆる乾式分離であるため、水資源の少ないところでも利用することができる。そして、本発明は、各種の混合廃棄物の適正処理及びレアメタルを含む有価物の分離回収にも利用可能である。また、本発明によれば、従来の乾式分離装置と比べて、特に、分離対象物間の密度比が2.0を下回るか又は粒径10mm以下の分離対象物の場合でも分離し、装置外に確実に排出できるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の第一の実施態様における乾式分離装置の概略図を示す。
図2図2は、本発明の第二の実施態様における乾式分離装置の概略図を示す。
図3図3は、本発明の第三の実施態様における乾式分離装置の概略図を示す。
図4図4は、本発明の第四の実施態様における乾式分離装置の概略図を示す。(1)は、乾式分離装置の概略側面を示し、(2)は乾式分離装置の分離槽上部から見た概略図を示す。
図5図5は、本発明の第五の実施態様における乾式分離装置の概略図を示す。
図6図6は、本発明の第六の実施態様における乾式分離装置の概略図を示す。
図7図7は、送風と振動とを組み合わせる条件の違いによる乾式分離の実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の乾式分離装置は、分離槽を備える本体部と、分離対象物を前記分離槽へ投入する投入部と、分離された前記分離対象物を前記分離槽から排出する排出部とを有する乾式分離装置であって、前記分離槽に投入された分離対象物を振動する振動手段と、前記振動によって分離された分離対象物を前記排出部へ移動させる移動手段とを有することを特徴とする。
【0030】
まず、本発明の分離の原理について説明する。分離の原理は、分離対象物を固気流動層に投入し、液体系の比重選別と同様な粉体流動化媒体、すなわち固気流動層を利用してその密度によって、分離するか(物体浮沈を利用)、分離対象物自体を流動化させて前記分離対象物を分離するものである(密度偏析を利用)。前者の固気流動層とは、粉体を流動化させて液体に類似した性質を持つものを意図する。まず、前者の粉体流動化媒体を利用した場合について説明する。
【0031】
流動層の見掛け密度ρfbは下記の式で表される。
ρfb=W/V =(1-εf)ρ
ここでW は流動化媒体の粒子重量、V は流動化時の体積、εは流動化時の空隙率、ρは流動化媒体の粒子密度である。
【0032】
このような見掛け密度ρfbを有する流動層中に密度ρの物体が混在するとき、ρ <ρfbの物体成分は流動層上部に浮揚し、ρ>ρfbの当該物体成分は流動層下部に沈降する。そしてρ =ρfbの当該物体成分は流動層中間部を浮遊する。このことを利用して少なくとも二種類の物体の比重選別を行なうのである。
【0033】
一方、分離対象物自体を流動化させて前記分離対象物を分離するものである(密度偏析を利用)場合については、以下の通りである。これは、分離対象物自体をあたかも固気流動層を形成する媒体である粉体のように、流動化させて分離せんとするものである。分離対象物を流動化及び/又は循環させて分離する技術はこれまでも知られていたが、本発明は、特に、2以上の分離対象物間の密度比が2.0を下回るか又は粒径10mm以下の分離対象物の場合でも分離し、装置外に確実に排出できるものである。
【0034】
すなわち、従来においては、もっぱら、送風のみによって分離対象物の分離を行っていたが、送風のみでは、どうしても分離対象物の分離が困難な場合があったが、本発明のおいては、このような場合であっても分離対象物を分離し、装置外へと排出できるものである。
【0035】
このような分離原理に基づいて、本発明において分離可能な分離対象物は特に限定されない。分離対象物としては、各種鉱物資源、工業製品の他、シュレッダーダスト等を挙げる事ができる。具体的には、例えば、廃棄物、鉱物、農作物、工業生産物、金属粉、鉱物粉、ゴム類、プラスチック類、ガラス類等を挙げる事ができる。各種鉱物資源としては、珪石、ろう石などの鉱石、炭鉱で採掘された原炭等が挙げられ、シュレッダーダストには、家庭用ごみ、自動車、家電製品等からのシュレッダーダスト等由来のものを挙げることができる。分離対象物の大きさについても特に限定されるものではないが、本発明においては、振動、又は振動の回収機構の適正化によって、固気流動層による流動化媒体の動きの影響を受けやすい粒状混合物などの分離対象物をも分離可能とすることから、本発明は、密度比2.0を下回るか(密度差が小さい)又は粒径10mm以下といった、従来の乾式分離技術では浮き沈みが不安定となる分離対象物についても特に有効である。
【0036】
このようにいずれか由来の分離対象物であってもよいが、分離対象物が汚れている場合は、洗浄した後に分離するのが好ましい。これは本発明の分離方法によれば、主として分離対象物の成分をその比重差によって分離するため、分離対象物が汚れていると比重が変動するおそれがあるからである。
【0037】
また、洗浄後に分離対象物を乾燥させて分離することも必要である。リサイクル用に分離する場合、乾燥後は装置の大きさ等の関係から、分離対象物をシュレッダー等で粉砕したものを分離に使用するのが好ましい。
【0038】
本発明において、分離槽は、前記固気流動層を粉体媒体を利用して形成する場合の態様、及び分離対象物自体が流動層を形成する場合の態様のいずれにおいても、前記固気流動層又は前記流動層を形成することができれば、形状等は特に限定されない。また、本発明において、前記分離槽は、矩形型、円柱型、三角柱型の少なくとも1種とすることができる。
【0039】
分離槽を矩形型とする場合、分離対象物の投入部を分離槽の水平方向一端部の上方、排出部を分離槽の水平方向一端部の反対側面に配置してもよい。
【0040】
分離槽が円柱型又は三角柱型とする場合、分離対象物の投入部を分離槽の中心部、排出部を分離槽の外周側面に配置してもよい。
【0041】
また、本発明において、好ましくは、前記分離槽内は、1又はそれ以上の仕切りを有する。前記1又はそれ以上の仕切りは、分散槽内部に、好ましくは、分離対象物を移動させたい方向に平行に設けられる。そして、仕切りは、分離槽内での分離対象物への「壁効果」を促進することが期待される。壁効果とは、分離対象物が壁に接する範囲が広いほど、分離対象物への振動の伝搬が高められる効果とすることができる。すなわち、振動が伝播しない部分での振動の効果を得ることができる仕切りが無い状態で流動層又は分離槽全体を振動させた場合、側面の壁から遠い部分や底面の空気分散板(気体分散板)から遠い(高い)部分では振動の効果を得ることが難しいという観点からも、分離槽等全体のみを振動させる場合と比較して、さらに分離槽全体及び当該仕切りをともに振動させることで、より分離の効果を高めることが可能である。なお、進行方向に平行に仕切り部材を設置し、しかもこの部材は流動層全体の振動と同期して振動する仕組みにすると、より好ましい。このように本発明においては当該部材の設置により流動層の内部にも振動の効果を及ぼす工夫を施すことが可能となる。
【0042】
また、本発明は、分離対象物を前記分離槽へ投入する投入部と、分離された前記分離対象物を前記分離槽から排出する排出部とを有することができる。投入部についても、分離対象物を投入できれば特に限定されない。本発明において、分離対象物を振動する振動手段は、分離対象物を振動させることができれば、特に限定されない。例えば、振動モーターにより、上下(縦)、横、ツイスト及び斜めのうち少なくとも一つの方向を含む振動によって、分離対象物を振動させることができる。分離対象物を振動させることができれば、前記固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層を振動させたり、又は前記分離槽を振動させてもよい。例えば、前記固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層の層高120mm、前記固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層のカラム内径が100mmの円筒状の分離槽を使用した場合、上下振動する上下振幅は、比重差に基づく分離を積極的に行うという観点から、好ましくは、0.25~4.00mm、より好ましくは0.50~2.00mmとすることができる。
【0043】
また、振動の周波数としても、分離対象物の種類により適宜修正可能である、比重差に基づく分離を積極的に行うと言う観点から、好ましくは、10~30Hz、より好ましくは15~25Hzとすることができる。
【0044】
また、振動強度Gを以下のように定義することができる。
振動強度G=振動加速度(振幅×角速度)/重力加速度
本発明においては、比重差に基づく分離を積極的に行うと言う観点から、振動強度Gは好ましくは、0.25~3.00、より好ましくは、0.5~1.5とすることができる。
【0045】
また、本発明において、前記振動によって分離された分離対象物を前記排出部へ移動させる移動手段とを有する。本発明において、前記移動手段は、前記分離槽内で分離された分離対象物を、前記排出部へ向かって移動させるものとすることができる。前記移動手段としては、例えば、分離槽の構造によるもの、気流を利用するもの、分離槽内に設置した可動部材によるものなどを挙げることができる。但し、分離対象物に力を作用させて排出部に移動させるものであれば、特に限定されない。
【0046】
本発明において、例えば、移動手段としては、分離された分離対象物を迅速に排出部に移動させるという観点から、好ましくは、前記分離槽の底部に設けられた傾斜を挙げることができる。また、前記傾斜は、好ましくは、分離された分離対象物をより効率よく排出部に移動させるという観点から、前記投入部から前記排出部へ向けられた傾斜とすることができる。これによって、分離対象物は、その自重によって傾斜の高い位置から低い位置にスムーズに移動することができ、ひいては、分離対象物を、投入部から、排出部へ向けて、連続的に分離することが可能となる。
【0047】
また、本発明において、前記移動手段は、前記分離槽内で分離された分離対象物を、前記排出部へ向かって移動させることを特徴とする。例えば、分離槽内に設置した可動部材により、初めに、前記固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層内で浮揚した浮揚物を排出し、その後、前記固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層内で沈降した沈降物を排出することができる。
【0048】
さらに好ましくは、本発明の乾式分離装置は、前記分離槽の底部、及び/又は中間部に気体分散板を有することができる。例えば、気体分散板としては、金属、天然繊維、プラスチック等の合成繊維に由来する織布及び不織布、多孔金属板、多孔陶板、若しくはこれらに金属板などの補強材を組み合わせたもの、又はこれらを二種以上組み合わせたものである。コストの観点から、好適には、前記分散板が、布と金属板などの補強材を組み合わせたものである。
【0049】
気体分散板として、通気性の高いものは、積極的に分離対象物の移動を促進する循環流を発生させる点で有効な場合がある。なぜなら、通気性の高い気体分散板を用いた場合は、容器中央部での気泡上昇が顕著となり、その結果、中央部にて分離対象物が上昇し、壁面近傍部で分離対象物が下降するような循環流がより一層形成されやすくなるからである。したがって、いずれの気体分散板でも、気体が通過しやすい(物理的な)構造を有していれば、実現可能である。例えば、気体が通る空間を多くした構造等を挙げることができる。
【0050】
また、本発明において、分離槽底部や多孔性分散板などの気体分散板の傾斜の態様は特に限定されず、例えば、分散板を凹ませたり、山形にしたりして、容器の中心部と外周部で容器の高さを異にしてもよい。分散板を凹ませたり、山形にすることにより、容器の中心部と外周部で導入する気体の風速を変化させることができ、これにより分離対象物を循環させて、分離対象物の偏析をより顕著にすることが可能である。
【0051】
ここで、循環について補足説明すれば、以下のようである。すなわち、ここでいう循環、循環流というのは、特に言及しない限り、気体自身の循環流ではなく、分離対象物の循環流を意味する。つまり、分離対象物の下部から気体を導入した際に、容器底部の中央部の方が壁面近傍部よりも気体が通りやすい場合は、その中央部での気体からなる気泡の上昇が顕著であり、その気泡上昇に起因して中央部にて分離対象物が上昇し、壁面近傍部で分離対象物が下降するような循環流が形成される。その一方で、逆に壁面近傍部の方が、気体が通りやすい場合は、壁面近傍部での気泡の上昇が顕著になり、壁面近傍部にて分離対象物が上昇し中央部で下降するような循環流が形成される。さらには、ある特徴を持つ分離対象物を用いた場合は、高さ方向でS字に変化するような循環流も起こり得る。本発明においては、このような循環をも含む広い概念を意味する。
【0052】
また、気体の通りやすさが断面方向で(中央部と壁面近傍部で)違わない場合は、気体が気泡となって断面方向で均一に上昇し、分離対象物は流動化するが、上記のような循環流は形成されない。このように循環流が存在しない場合でも、比重差あるいはサイズ差に基づく分離は生じるのであるが、循環流の役割は、その分離をより顕著にする効果である。
【0053】
また、本発明の乾式分離装置は、前記底部、及び/又は前記中間部に設けられた送風手段を有することができる。本発明において、前記送風手段の送風に関して、空塔速度をu0として粉体の最小流動化空塔速度をumfとした場合、u/umfが、分離を制御する1つの要因となる。一般に、空塔速度を最小流動化空塔速度以上で当該最小流動化空塔速度近傍に設定すると、固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層内に存在するダスト成分の密度分布は狭くなり、空塔速度をさらに上げていくと、固気流動層内に存在するダスト成分の密度分布は広がる。なお、空塔速度とは、分離槽内に生じさせた空気流の速度である。
【0054】
まず、固気流動層を用いた場合について、一例を挙げて説明すると以下の通りである。固気流動層を用いた(物体浮沈を利用)場合、当該u0/umfの値としては、例えば、1~4の範囲とすることができる。かかる範囲であれば、安定した固気流動層を形成することができるからである。但し、かかる範囲に限定されるものではなく、密度差の大きい成分同士を迅速に分離する場合には、u0/umfの値が4以上であってもよい。
【0055】
また、固気流動層を用いた(物体浮沈を利用)場合、単一の粉体を流動化させた場合において、密度差が小さい成分同士を分離するとき、使用する粉体にもよるが、u0/umfの値は、できるだけ1に近い値とするのが好ましい。u0/umfの値を、1~1. 5、好ましくは、1~1. 2、さらに好ましくは、1~1. 1とすることができる。
【0056】
また、固気流動層を用いた(物体浮沈を利用)場合、複数の粉体を流動化させた場合においては、当該複数の粉体が実質的に均一に混合するようなu0/umf値下で行なうことが好ましい。これは、実質的に均一に混合していないと、固気流動層の上方ほど見掛け密度が小さくなり、下方ほど見かけ密度が大きくなるために、固気流動層内の中層に位置する成分の密度分布が大きくなる傾向があるからである。
【0057】
固気流動層を用いた(物体浮沈を利用)場合、固気流動層を形成する粉体の種類についても、分離する分離対象物の種類により特に限定されないが、例えば、粉体を、ユニビーズ、ガラスビーズ、ジルコンサンド、ポリスチレン粒子、及びスチールショットからなる群から選択される少なくとも1種とすることができる。
【0058】
一方、前記分離対象自体によって形成される流動層を用いた(密度偏析を利用)場合は、当該u0/umfの値としては、例えば、0. 5~1. 5の範囲の値、より好ましくは0. 7 5~1. 2 5の範囲の値とすることができる。かかる範囲であれば、安定した前記分離対象物自体によって形成される流動層を形成することができるからである。
【0059】
固気流動層で使用する粉体、及び分離対象自体によって形成される流動層を用いた場合の分離対象物(粉体の場合)の平均粒径についても特に限定されないが、粉体の流動化を比較的小さな空塔速度で行うことと、付着性に起因する粉体の凝集を抑制するという観点から、好ましくは0.05~10.00mm、より好ましくは0.1~1.0mmとすることができる。
【0060】
また、本発明において、例えば、底部を傾斜した態様において、前記送風手段による送風の風速は、比重差に基づく分離を積極的に行うという観点から、好ましくは、前記投入部側が大きく、前記排出部側が小さくすることができる。
【0061】
次に、本発明の乾式分離方法の一例について説明すれば、以下の通りである。本発明の乾式分離方法は、粉体を流動化させた固気流動層を利用して分離対象物を分離するか、又は分離対象物自体を流動化させて前記分離対象物を分離し、前記分離した分離対象物を排出部へ排出する乾式分離方法であって、前記分離対象物を振動させて分離し、前記分離した分離対象物を前記排出部へ移動させる移動手段によって排出することを特徴とする。前記粉体、前記固気流動層、前記分離対象物、投入部、排出部については、上述の分離槽を備えた乾式分離装置の説明を参照することができる。
【0062】
本発明において、例えば、振動モーターにより、上下(縦)、横、ツイスト及び斜めのうち少なくとも一つの方向を含む振動によって、分離対象物を振動させることができる。分離対象物を振動させることができれば、前記固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層を振動させたり、又は分離槽を振動させてもよい。例えば、固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層の層高120mm、固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層のカラム内径が100mmの円筒状の分離槽を使用した場合、上下振動する上下振幅は、比重差に基づく分離を積極的に行うという観点から、好ましくは、0.25~4.00mm、より好ましくは、0.50~2.00mmとすることができる。なお、振動等に際して、上述の仕切りなどを含め、本発明の乾式分離装置で用いる構成を、本発明の乾式分離方法において適用可能である。
【0063】
また、振動の周波数としても、分離対象物の種類により適宜修正可能であるが、比重差に基づく分離を積極的に行うという観点から、好ましくは、10~30Hz、より好ましくは15~25Hzとすることができる。
【0064】
本発明において、例えば、移動手段としては、分離された分離対象物を迅速に排出部に移動させるという観点から、好ましくは、前記分離槽の底部に設けられた傾斜を挙げることができる。分離槽については、上述の本発明の乾式分離装置の説明を参照することができる。また、前記傾斜は、好ましくは、分離された分離対象物をより効率的に移動させるという観点から、前記投入部から前記排出部へ向けられた傾斜とすることができる。これによって、分離対象物は、その自重によって傾斜の高い位置から低い位置にスムーズに移動することができ、ひいては、分離対象物を、投入部から、排出部へ向けて、連続的に分離することが可能となる。
【0065】
また、本発明において、前記移動手段は、前記分離槽内で分離された分離対象物を、前記排出部へ向かって移動させることを特徴とする。例えば、分離槽内に設置した可動部材により、初めに、固気流動層内で浮揚した浮揚物を排出し、その後、固気流動層内で沈降した沈降物を排出することができる。
【0066】
本発明の乾式分離方法において、分離対象物を流動化させるという観点から、分離対象物は、前記底部からの送風により分離することができる。なお、分離槽の中間部に設けた送付手段によって送風してもよい。また、本発明の乾式分離方法において、比重差に基づく分離を積極的に行うという観点から、前記投入部の送風の風速は、前記排出部の送風の風速に比較して大きくすることができる。このようにして、従来技術では、小さな物体(例えば、直径10mm以下の粒状物質)は、固気流動層内での粉体の動的挙動や上昇気泡の影響を受けやすく、物体の浮沈が不安定になるため、分離不可能であったが、本発明によれば、振動等の導入によって、特に小さい分離対象物や、密度の値を比に換算して2.0を下回るような密度差の小さな粒状混合物などの分離対象物をも、分離可能とすることができる。
【実施例
【0067】
以下、本発明の一例を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
【0068】
実施例1
まず、移動手段として、分離槽の底部に設けられた傾斜を利用した乾式分離装置を製造した。図1は、本発明による乾式分離装置の一実施例を示す。図1において、乾式分離装置は、分離槽3、分離対象物の投入部5、分離対象物の排出部7、振動手段(図では振動20のみを示す)、及び送風部30を備える。実施例1では、分離槽3は矩形である。当該装置は、分離槽3内に固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層4を生成し、固気流動層又は前記分離対象物自体によって形成される流動層4において分離対象物の密度小の物体と密度大の物体を分離して、排出部7から装置外へと排出させる。振動手段は、分離槽内の流動層4及び分離対象物を振動させる。移動手段は、投入部に近い室から排出部に近い室に向かって分離対象物の排出部への移動を促進させる。
【0069】
排出部7は、分離対象物が含有する複数種類の物体の密度の違いに基づいて設置位置を設定した排出口7a、7bを備える。排出口7a、7bは、例えばスリットである。排出口の数は、密度の違いで予め決めた種類数に替えて、投入された分離対象物を分離させた後に排出させたい種類数とすることができる。
【0070】
実施例1では、移動手段の一例として、投入部5に近い部位から排出部7に近い部位にかけて低くなる傾斜を設けた底部9を図示した。
【0071】
また、乾式分離装置の送風部30は、空気室31から予め設定した風速の気流33を分離槽3内に送って分離効率を向上させると共に粉体の右への移動を促進させる点では、移動手段の一部と考えることもできる。
【0072】
排出部7は、分離対象物の相対的に密度の小さな物体の排出口7aと、相対的に密度の大きな物体の排出口7bとを備える。ここで、排出口7a、7bは二つであるが、分離したい物体の密度の違いに基づく種類数などに応じて、排出口の数や位置を変更する。
【0073】
送風部30では、空気室31を複数に分割し、投入部に近い室から排出部に近い室にかけて気流33の風速が徐々に小さくなるように設定してもよい。
【0074】
以上の装置を使用して、u/umfの値を1に設定し、振動強度Gを1.2に設定して、分離対象物として、従来分離が困難であった粒状物質の粒径10mm以下の分離対象物であって、重鉱砂(2.5g/cm)と珪砂(1.5g/cm)の小さい密度差の分離を試みた結果、送風のみでは分離できなかったものでも、分離することができることが判明した。
【0075】
実施例2
次に、移動手段として、分離槽の底部に設けられた傾斜を利用した乾式分離装置の別の態様を製造した。図2は、本発明の実施例2を示す。実施例2では、円柱又は矩形の分離槽3の水平断面中心部に投入部5を設け、中心部について互いに対称な位置関係となる部位に、分離された粉体を排出する複数の排出口7a、7bを有する排出部7を設けたものである。また、図2においては、分離槽3の底部9の傾斜は、分離槽3の中心部から、各排出部7に向かって低くなる傾斜としている。この傾斜は、分離対象物の移動を促進させる手段(移動手段40)の一例である。
【0076】
実施例3
次に、移動手段として、可動部材を利用した乾式分離装置の別の態様を製造した。図3は、実施例3を示す。実施例3では、分離槽3内に設けた可動部材40により、複数の層に分離された分離対象物を上層(すなわち、密度の相対的に小さい物体の層)から順に対応する排出部7に向かって移動させるものである。可動羽根などの可動部材40は、分離対象物を排出部7に向かって移動させるものであれば特に限定されない。例えば、可動部材40は、分離対象物を押し出す又は引っ張るものである。この態様によれば、底部に傾斜を設けて分離対象物の移動をさらに促進してもよい。
【0077】
また、本発明においては、「分離」と「装置外への排出」を交互に繰り返す方式を採用してもよく、具体的には、各室の風速を一定とし、底部に傾斜をつけない矩形装置で分離操作を終えた後に、まず右側面上部の扉を開放し可動羽根を右方向に移動させることで密度小を装置外に排出し、その後、左側面下部の扉を開放し可動羽根を左方向に移動させることで密度大を装置外に排出させる装置も効果的であり、同様な可動羽根を円柱形装置に設置するのもよい。
【0078】
実施例4
図4は、矩形の分離槽3(図4(1))内に仕切り15を複数設けた実施例4を示す。仕切り15は、矩形の分離槽3内に、分離対象物2の移動方向Xに平行に設ける(図4(2))。一般的には、この仕切り15の面に分離対象物2が接触する面積が大きいほど、分離対象物2への「壁効果」又は振動の伝達効果が高まる。したがって、乾式分離装置1において、分離効果促進との関係で、仕切り15の数を設定することは好ましい。
【0079】
分離槽3内に設ける仕切り15は、例えば、壁又は板部材であってもよい。また、仕切り15には、適切に孔、溝を設けてもよい。
【0080】
振動の効果として、分離対象物である粉と壁との接触、つまり、壁が上下に振動する際に粉に対して生じる摩擦が考えられる。本実施態様において、その効果をより顕著にするために、分離対象物の移動方向に平行に複数の壁(板)を挿入し、分離対象物が振動する壁と接触する面積を増やすことで振動の効果を高めるのも効果的であることが分かった。
【0081】
実施例5
図5は、分離対象物を分離槽に投入したとき、分離対象物全体の層の高さによって、分離槽内の追加の送風部35と、追加の振動手段21とを選択的に使用する例を示す。分離槽内の分離対象物の層高に応じた、追加の送風部35又は/追加の振動手段21により、乾式分離装置による分離効果をより高める。
【0082】
層高が大きくなるにつれて分離効率の低下が懸念される。これは層上部の粉体の動きが鈍くなるからかもしれないためであるが、本実施例により、中間高さから追加送風したり、中間高さに分散板を入れて振動を加えたりして、分離効率の低下を防ぐことも有効であることが分かった。
【0083】
実施例6
図6は、乾式分離装置における振動方向の種類を示す。乾式分離装置の振動手段が、縦A、横B、ツイストC及び斜めDのうち少なくとも一つの方向を含む振動を実施することで、分離対象物の分離効果をより高める。
【0084】
図7は、送風及び振動の効果についての実験結果を示す。かさ密度1.5g/cmの軽粉体と2.5g/cmの重粉体(密度比は、約1.7)を同かさ体積分ずつ混合した試料粉体を直径105mmの円筒容器に 層高105mm となるように投入した。エアーコンプレッサーで圧縮された乾燥空気をマスフローコントローラーにて流量を設定し送風を行った。そこに、円筒容器内の固体流動層下方に取り付けた振動装置により振動を付加した。振動装置の設置角度により、振動方向を縦および横に変化させた風速のみ、送風及び縦振動、送風及び横振動で10分間流動化を行った。流動化終了後、全10層になるように試料粉体を上から吸引機で回収し、上から順に1、2、…10層目とした。回収した各層のかさ密度を測定し、予め作成した検量線より各層の固体の体積割合を算出した。図7において、一番左の「送風のみ」(a)は1~10層の重粉体の割合がほとんど同じであったことから、分離できていなかったといえる。二番目の「送風及び横振動」(b)は、下層になるにつれて重粉体の割合が大きくなり、分離がある程度認められた。一番右の「送風及び縦振動(c)では、上5層において重粉体の割合がほぼゼロ、すなわち軽粉体が占めていて、下5層において重粉体の割合はほぼ100、すなわち重粉体が占めていたので、三つの条件の中では最も分離が認められたといえる。
【0085】
以上のように、本発明の乾式分離装置及び方法によって、粒状物質の粒径10mm以下で密度比にして2.0を下回る密度差の小さな物体の混合物を分離して確実に排出できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、各種の混合廃棄物の適正処理及びレアメタルを含む有価物の分離回収に適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 乾式分離装置
2 分離対象物
3 分離槽
4 固気流動層又は分離対象物自体によって形成される流動層
5 投入部
7 排出部
7a 密度が相対的に小さな分離対象物の排出口
7b 密度が相対的に大きな分離対象物の排出口
9 底部
11 気体分散板
15 仕切り
20 振動手段
21 追加の振動手段
30 送風部(送風手段)
31 空気室
33 気流(送風)
35 追加の送風部(追加の送風手段)
40 可動部材(移動手段)
A 縦方向の振動
B 横方向の振動
C ツイストの振動
D 斜めの振動
X 分離対象物の移動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7