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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】把持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20221215BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B25J15/08 D
B23Q3/06 303B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018169560
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020040169
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390026088
【氏名又は名称】富士電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】巳之上 潤二
(72)【発明者】
【氏名】増谷 有亮
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-009887(JP,U)
【文献】特開平10-080888(JP,A)
【文献】米国特許第03620095(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0093211(US,A1)
【文献】実開平03-093088(JP,U)
【文献】特開昭62-292383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B23Q 3/00- 3/154
B23Q 3/16- 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大きさが相違するワークを把持する把持装置であって、
駆動部と、一対の回動部を有し、
前記駆動部は、往復移動する被駆動部を有し、
前記各回動部は、本体部と、ワークを把持する把持部と、リンク機構部を有しており、
前記本体部は回動軸を有しており、前記本体部は回動軸を中心に所定の角度の範囲で回動が可能であり、被駆動部が一方向に移動すると前記本体部を押圧し、前記本体部が前記所定の角度の範囲で回動し、
前記各回動部が回動することによって、前記各回動部の非対向状態と対向状態を切り替えることができ、
前記本体部は、2つの短辺と2つの長辺とを有し、
前記各回動部が対向状態の時、前記2つの長辺が前記被駆動部の往復移動方向で、前記2つの短辺が前記被駆動部の往復移動方向に垂直な方向に配置され、
前記把持部は、前記本体部における前記回動軸から離間した位置において、前記本体部に対して前記2つの短辺の方向に往復移動可能に設置されていると共に、リンク機構部を介して被駆動部と連結されており、
前記被駆動部は、前記被駆動部の往復移動方向に垂直な方向に延びた形状であり、
前記各回動部は、前記被駆動部の往復移動方向に垂直な方向に対して前記被駆動部の両側に配置されており、
各回動部の把持部同士は、前記対向状態で互いに対向しており、
非対向状態から対向状態に切り替わって、さらに被駆動部が前記一方向に移動すると、各把持部同士の間隔が狭まることを特徴とする把持装置。
【請求項2】
被駆動部は押圧部を有し、
前記回動部は、前記押圧部に押圧される被押圧部を有し、
前記被駆動部の前記一方向への移動の途中に、前記回動部が所定の角度回動して押圧部による前記被押圧部への押圧がなくなることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記回動部の回動範囲を規制する規制部材を有し、
前記被押圧部への押圧がなくなった際に、前記回動部が前記規制部材に当接することを特徴とする請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
ピンと、前記ピンと係合する係合部材を有し、
前記係合部材は、ピンと所定の長さ範囲で相対移動が可能であり、
前記ピンと係合部材のうちのいずれかの一方が、被駆動部に設けられており、
前記ピンと係合部材のうちのいずれかの他方が、回動部側に設けられており、
前記回動部同士が対向状態であって、把持部同士の間隔が変更されている間は、
前記ピンと係合部材の相対移動が可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の把持装置。
【請求項5】
前記対向状態では、各回動部の把持部は、被駆動部の往復移動方向と直交する方向に移動して位置を変更できることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大きさの相違するワークを把持する把持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な把持装置(チャック)が発案されている。把持装置では、ワークを確実に把持することが極めて重要である。そのため、把持装置は、予め想定された大きさのワークのみを把持することができるように特化されている。特許文献1には、このようなチャックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭54-33047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記事情に鑑みると、大きさの異なるワークを共通の把持装置で把持することは想定しておらず、把持装置には汎用性がない。
【0005】
そこで本発明は、大きさの相違するワークを把持することができる把持装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための請求項1に記載の発明は、大きさが相違するワークを把持する把持装置であって、駆動部と、一対の回動部を有し、前記駆動部は、往復移動する被駆動部を有し、前記各回動部は、本体部と、ワークを把持する把持部と、リンク機構部を有しており、前記本体部は回動軸を有しており、前記本体部は回動軸を中心に所定の角度の範囲で回動が可能であり、被駆動部が一方向に移動すると前記本体部を押圧し、前記本体部が前記所定の角度の範囲で回動し、前記各回動部が回動することによって、前記各回動部の非対向状態と対向状態を切り替えることができ、前記本体部は、2つの短辺と2つの長辺とを有し、前記各回動部が対向状態の時、前記2つの長辺が前記被駆動部の往復移動方向で、前記2つの短辺が前記被駆動部の往復移動方向に垂直な方向に配置され、前記把持部は、前記本体部における前記回動軸から離間した位置において、前記本体部に対して前記2つの短辺の方向に往復移動可能に設置されていると共に、リンク機構部を介して被駆動部と連結されており、前記被駆動部は、前記被駆動部の往復移動方向に垂直な方向に延びた形状であり、前記各回動部は、前記被駆動部の往復移動方向に垂直な方向に対して前記被駆動部の両側に配置されており、各回動部の把持部同士は、前記対向状態で互いに対向しており、非対向状態から対向状態に切り替わって、さらに被駆動部が前記一方向に移動すると、各把持部同士の間隔が狭まることを特徴とする把持装置である。
【0007】
請求項1に記載の発明では、駆動部と、一対の回動部を有し、駆動部は、往復移動する被駆動部を有し、各回動部は、被駆動部の両側に配置されており、各回動部が回動することによって、各回動部の非対向状態と対向状態を切り替えることができる。
よって、一対の回動部を非対向状態にすると、両回動部の間にワークを配置し易い。さらに両回動部を対向状態にすると当該ワークを容易に把持することができる。
各回動部の把持部同士は、対向状態で互いに対向しており、非対向状態から対向状態に切り替わって、さらに被駆動部が一方向に移動すると、各把持部同士の間隔が狭まるので、大きさの相違するワークを容易に把持することができる。
被駆動部が一方向に移動するだけで、回動部同士が非対向状態から対向状態となり、さらに把持部同士の間隔が狭まるので、各回動部の間にワークを配置するだけで、ワークの大きさによらず、当該ワークを把持することができる。すなわち、ワークの大きさに応じて、回動部の回動動作と、把持部の間隔を狭める動作を切り替えて実施する必要がない。
【0008】
請求項2に記載の発明は、被駆動部は押圧部を有し、前記回動部は、前記押圧部に押圧される被押圧部を有し、前記被駆動部の前記一方向への移動の途中に、前記回動部が所定の角度回動して押圧部による前記被押圧部への押圧がなくなることを特徴とする請求項1に記載の把持装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明では、回動部は、押圧部に押圧される被押圧部を有し、被駆動部の押圧部の一方向への移動の途中に、回動部が所定の角度回動して押圧部による被押圧部への押圧がなくなるので、回動部が確実に所定の角度回動し、回動部同士が非対向状態から対向状態に移行する。回動部の所定の角度以上の回動動作が制限され、回動部同士が対向状態を保ち易い。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記回動部の回動範囲を規制する規制部材を有し、前記被押圧部への押圧がなくなった際に、前記回動部が前記規制部材に当接することを特徴とする請求項2に記載の把持装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明では、回動部の回動範囲を規制する規制部材を有し、被押圧部への押圧がなくなった際に、回動部が規制部材に当接するので、回動部は所定の角度回転すると、その角度位置で確実に停止する。すなわち、回動部同士が対向状態を保ち易い。
【0012】
請求項4に記載の発明は、ピンと、前記ピンと係合する係合部材を有し、前記係合部材は、ピンと所定の長さ範囲で相対移動が可能であり、前記ピンと係合部材のうちのいずれかの一方が、被駆動部に設けられており、前記ピンと係合部材のうちのいずれかの他方が、回動部側に設けられており、前記回動部同士が対向状態であって、把持部同士の間隔が変更されている間は、前記ピンと係合部材の相対移動が可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の把持装置である。
【0013】
請求項4に記載の発明では、ピンと係合部材のうちのいずれかの一方が、被駆動部に設けられており、ピンと係合部材のうちのいずれかの他方が、回動部側に設けられており、回動部同士が対向状態であって、把持部同士の間隔が変更されている間は、ピンと係合部材の相対移動が可能であるので、回動部同士が対向状態のときに、被駆動部が一方向に移動しても回動部が回動することがなく、回動部同士が対向状態を維持することができる。また、回動部同士が対向状態から非対向状態に切り替わると、ピンと係合部材の相対移動が不能になり、回動部が被駆動部の他方向の移動に追従して回動する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記対向状態では、各回動部の把持部は、被駆動部の往復移動方向と直交する方向に移動して位置を変更できることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の把持装置である。
【0015】
請求項5に記載の発明では、対向状態では、各回動部の把持部は、被駆動部の往復移動方向と直交する方向に移動して位置を変更できるので、様々な大きさのワークを確実に把持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の把持装置は、大きさの相違するワークを確実に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る把持装置の斜視図であり、(a)は、回動部材が非対向状態であって、ワークを把持していない待機状態の形態を示し、(b)は、回動部材が対向状態であって、比較的大径のワークを把持する場合の形態を示し、(c)は、回動部材が対向状態であって、比較的小径のワークを把持する場合の形態を示している。
図2】(a)~(c)は、図1(a)~(c)の各々の平面図である。
図3図1の把持装置の分解斜視図である。
図4】(a)は、図3の把持装置の骨格構造部の分解斜視図であり、(b)は、(a)の骨格構造部の組立図である。
図5図1の把持装置の一部を分解した斜視図である。
図6】非対向状態の回動部材を対向状態にする機構部分を抜き出して描写した把持装置の内部を示す平面図であり、(a)は、回動部材が非対向状態になった際の平面図であり、(b)は、回動部材が対向状態になった際の平面図である。
図7】対向状態の回動部材を非対向状態にする機構部分を抜き出して描写した把持装置の内部を示す平面図であり、(a)は、回動部材が対向状態になった際の平面図であり、(b)は、回動部材が非対向状態になった際の平面図である。
図8】(a)~(c)は、図2(a)~(c)の形態における把持装置の内部の機構を描写した平面図である。
図9図1(a)の待機状態の把持装置のスケルトン図である。
図10図1(b)の把持装置のスケルトン図であり、回動部材が対向状態であって、比較的大径のワークを把持するのに適した形態を示す。
図11図1(c)の把持装置のスケルトン図であり、回動部材が対向状態であって、比較的小径のワークを把持するのに適した形態を示す。
図12】把持部の保持片側からワーク側に付与する力を仮想的に示す平面図であり、(a)は、比較的大径のワークを把持する場合を示し、(b)は、比較的小径のワークを把持する場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る把持装置1について説明する。以下において、「上下」、「前後」、「左右」の向きは、図1(a)に記載の向きを指している。これは、把持装置1の説明の都合上、便宜的に呼称したものである。すなわち、把持装置1は様々な姿勢で使用することができ、例えば、把持装置1を図1(a)に示す姿勢に対して、前後方向の水平軸周りや左右方向の水平軸周りに所定の角度(例えば90度)回転させた姿勢で使用することも可能である。よって、本実施形態の「上下」、「前後」、「左右」の文言は、把持装置1を使用する際における把持装置1の姿勢を制限するものではない。また、把持装置1自体には、固定された「上下」、「前後」、「左右」の概念はない。すなわち、図1(a)において、例えば前後方向の水平軸周りに把持装置1を180度回転させると、把持装置1の左右が入れ替わる。
【0019】
図1(a)~図1(c)、図2(a)~図2(c)に示すように、把持装置1は、駆動機構部2(駆動部)、右側回動部3a、左側回動部3bを有している。また、把持装置1は、図3に示すように、骨格構造部15、リンク機構部7を有している。
【0020】
骨格構造部15は、把持装置1の骨格を構成するものであり、図3図4(a)、図4(b)に示すように、シリンダ配置部材16、起立壁17、上部固定部材18、下部固定部材19、規制部材11を有している。
【0021】
シリンダ配置部材16は、板状の部材であり、把持装置1の基台を構成しており、把持装置1を図示しない固定構造物(例えば、工作機械等)に固定する機能を有する部位である。すなわち、シリンダ配置部材16には複数のボルト孔16aが設けられており、各ボルト孔16aを利用してシリンダ配置部材16(把持装置1)を図示しない固定構造物に固定する。シリンダ配置部材16には、後述の駆動機構部2(シリンダ14)が配置されている。
【0022】
起立壁17は、シリンダ配置部材16の前側の端部に一体固着された板状の部材である。起立壁17は、シリンダ配置部材16と直交しており、シリンダ配置部材16の上方へ起立している。また、起立壁17には、後述の駆動機構部2のロッド2bを貫通させる貫通孔17aが設けられている。貫通孔17aの中心線は、前後方向にのびている。
【0023】
また、起立壁17の前面には取付補助部材20、21が取り付けられている。取付補助部材20は、起立壁17の上部に固定されており、取付補助部材21は、起立壁17の下部付近に固定されている。起立壁17における、取付補助部材20、21の間の部位に、貫通孔17aが開口している。
【0024】
上部固定部材18は、図4(a)に示すように板状の部材である。上部固定部材18における上面前側の左右両側には、軸部材固定部22が設けられている。本実施形態では、軸部材固定部22は、上部固定部材18の上面の一部が若干凹んだような形態を呈している。軸部材固定部22には、軸挿通孔22aが設けられている。軸挿通孔22aは、上下方向の貫通孔である。
【0025】
軸部材固定部22には、軸部材25が固定されている。軸部材25は軸25aを有している。軸25aは、軸挿通孔22aに挿通されていて、上部固定部材18の下面から突出している(軸25aの突出状態は図示せず)。また、軸部材25は、軸部材固定部22に対して三カ所でネジ止めされている。すなわち、軸部材25と上部固定部材18は、一体化されている。
【0026】
また、上部固定部材18の前端付近には、後述の規制部材11をボルト(図示せず)で固定するためのボルト孔24aが設けられている。さらに、上部固定部材18の後端付近には、ボルト孔24bが設けられている。ボルト孔24bは、取付補助部材20を介して上部固定部材18を起立壁17に固定するためのボルト(図示せず)を挿通させる孔である。
【0027】
下部固定部材19は、図4(a)に示すように上部固定部材18と同様の板状の部材である。下部固定部材19における下面前側の左右両側には、軸部材固定部23が設けられている。本実施形態では、軸部材固定部23は、下部固定部材19の下面の一部が若干凹んだような形態を呈している。軸部材固定部23には、軸挿通孔23aが設けられている。軸挿通孔23aは、上下方向の貫通孔である。
【0028】
軸部材固定部23には、軸部材26が固定されている。軸部材26は軸26aを有している。軸26aは、軸挿通孔23aに挿通されていて、図4(a)、図4(b)に示すように、下部固定部材19の上面から突出している。また、軸部材26は、軸部材固定部23にネジ止めされている。すなわち、軸部材26と下部固定部材19は、一体化されている。
【0029】
また、下部固定部材19の前端付近には、後述の規制部材11をボルト(図示せず)で固定するためのボルト孔27a(図4(a))が設けられている。さらに、下部固定部材19の後端付近には、ボルト孔27bが設けられている。ボルト孔27bは、取付補助部材21を介して下部固定部材19を起立壁17に固定するためのボルト(図示せず)を挿通させる孔である。
【0030】
上部固定部材18と下部固定部材19は、上下の配置となるように対向配置されている。また、上部固定部材18と下部固定部材19は、それぞれ取付補助部材20、21を介して起立壁17の前面に固定されている。すなわち、上部固定部材18と下部固定部材19は、起立壁17におけるシリンダ配置部材16が配置されている側とは反対側に固定されている。換言すると、シリンダ配置部材16は、起立壁17の後方に配置されており、上部固定部材18及び下部固定部材19は、起立壁17の前方に配置されている。
【0031】
上部固定部材18と下部固定部材19の前方側の部位は、規制部材11を介して接続されている。規制部材11は厚みを有する板状の部材である。規制部材11は、上部固定部材18と下部固定部材19の前側の端部同士を接続している。すなわち、起立壁17、上部固定部材18、下部固定部材19、規制部材11が四角形の四辺の位置関係にあり、これらの間には、図4(b)に示すように、空間Sが形成されている。
【0032】
次に、駆動機構部2(駆動部)について説明する。
駆動機構部2は、公知の油圧シリンダ又はエアシリンダであり、図3図8(a)に示すように、ピストン2a、ロッド2b、シリンダ14を備えている。シリンダ14は、骨格構造部15のシリンダ配置部材16に固定されている。図8(a)に示すように、シリンダ14内に配置されたピストン2aの両側に室A、室Bが形成されている。この室A、室Bに作動油(作動流体)を出し入れすることにより、ピストン2aがシリンダ14内で移動する。ピストン2aの前側にはロッド2bが一体固着されている。ロッド2bは、室A側からシリンダ14の外部に突出している。図3には、ロッド2bがシリンダ14の外部に突出している状態が描写されている。すなわち、シリンダ14は、室Aが前側、室Bが後ろ側となるように配置されており、ロッド2bは、前後方向にのびている。
【0033】
また、駆動機構部2は被駆動部材4(被駆動部)を有している。被駆動部材4は、長さを有する部材であり、図5図8(a)~図8(c)に示すように、把持装置1の左右方向(往復移動方向と交差する方向)にのびる姿勢で、空間Sに配置されている。
【0034】
図3に示すように被駆動部材4は、左右両側に係合部材連結部28とリンク機構部固定部29a、29bを有している。すなわち、左右一対の係合部材連結部28の間に、左右一対のリンク機構部固定部29a、29bが設けられている。係合部材連結部28及びリンク機構部固定部29a、29bは、被駆動部材4の部分的に薄肉状に形成された部位に設けられた貫通孔である。
【0035】
係合部材連結部28には、図示しない軸を介して係合部材30a、30b(図3)の一端が連結されている。係合部材30a、30bは、同様の構造を呈しており、細長い薄板状の部材であり、一端には孔31aが設けられており、他端側には長孔31bが設けられている。長孔31bは、係合部材30a、30bの長手方向にのびており、長孔31bの延長上に孔31aが設けられている。
【0036】
係合部材30aは、係合部材30bの上側に配置されており、両者は平行であって離間して対向している。そして、係合部材30a、30bの間に、被駆動部材4の係合部材連結部28があり、係合部材30a、30bのそれぞれの孔31aと、係合部材連結部28が一致しており、これらに共通の揺動軸57(図3)が挿通されている。揺動軸57は、係合部材30a、30bのそれぞれの孔31aで固定されており、係合部材30a、30bと揺動軸57は一体化されている。揺動軸57は係合部材連結部28を貫通している。そのため、被駆動部材4に対して、係合部材30a、30bは回動可能に支持されている。
【0037】
また、係合部材30a、30bのそれぞれの長孔31bには、共通のピン32が挿通されている。ピン32は、上側の係合部材30aの長孔31bを貫通し、後述の右側回動部3a(左側回動部3b)の本体部材5aのピン固定孔34aに係合して固定されている。すなわち、ピン32と本体部材5aは、一体化されている。
【0038】
同様に、ピン32は、下側の係合部材30bの長孔31bを貫通し、後述の右側回動部3a(左側回動部3b)の本体部材5bのピン固定孔34bに係合して固定されている。すなわち、ピン32と本体部材5bは、一体化されている。
【0039】
図3に示すように、被駆動部材4の左右両側には、それぞれ押圧部材9が設けられている。すなわち、押圧部材9は、被駆動部材4と一体化されている。押圧部材9は、被駆動部材4に対してシリンダ14が配置されている側とは反対側(前側)へ突出している。押圧部材9は、厚肉の板状の部材であり、上下方向の幅を有しており、前端部分が押圧部9aを構成している。また、押圧部材9の被駆動部材4側の面には、凹部9bが形成されている。
【0040】
さらに、被駆動部材4の左右方向の中央部分には、ロッド2bの先端が固定されている。すなわち、ロッド2bは、起立壁17の貫通孔17aを貫通して、被駆動部材4に固定されており、ピストン2a、ロッド2b、被駆動部材4(押圧部材9を含む)は、一体化されている。そのため、これらは一体に前後方向に往復移動することができる。被駆動部材4とロッド2bは、直交している。
【0041】
次に、右側回動部3a(回動部)について説明する。
図2(a)に示すように、右側回動部3aと左側回動部3bは、互いに左右対称形であり、同じ構造を有している。よって、以下では、右側回動部3aの構造について説明し、左側回動部3bの重複する説明は省略する。
【0042】
右側回動部3aは、一対の本体部材5a、5b(本体部)と、把持部材38を有している。
【0043】
本体部材5aは、薄板状の略長方形状の部材である。すなわち、本体部材5aは、図5に示すように、一対の長辺39a、40aと、一対の短辺41a、42aを有している。
本体部材5aの一方の短辺41a付近(長手方向の一端付近)には回動軸挿通孔8aと、ピン固定孔34aが設けられている。また、本体部材5aの下面側にはガイド溝36aが設けられている。ガイド溝36aは、本体部材5aの他方の短辺42a付近に設けられている。ガイド溝36aは、本体部材5aの下面の一部が凹んだような形状を呈しており、略長方形の本体部材5aの一方の長辺39aと連通している。すなわち、ガイド溝36aは、長辺39a側に開口している。
【0044】
本体部材5aのガイド溝36a付近であって、他方の長辺40a付近には、リンク固定孔35aが設けられている。また、ガイド溝36a付近であって、長辺39a付近には、固定孔33aが設けられている。
【0045】
さらに、本体部材5aの他方の長辺40aにおける短辺41a側の部位は、被押圧部37aを構成している。被押圧部37aは、本体部材5aの長辺40aにおける部分的に幅が狭くなった部位であり、本体部材5aの長手方向に沿ってのびる部位である。
【0046】
換言すると、本体部材5aにおける幅が広い部位には、ガイド溝36aとリンク固定孔35aと固定孔33aが設けられており、本体部材5aにおける幅が狭い部位には、回動軸挿通孔8aとピン固定孔34aが設けられている。
【0047】
本体部材5bは、本体部材5aと上下対称形の構造を有しており、本体部材5aの固定孔33a、ピン固定孔34a、リンク固定孔35a、ガイド溝36a、被押圧部37aに対応する固定孔33b、ピン固定孔34b、リンク固定孔35b、ガイド溝36b、被押圧部37bを有している。
【0048】
図3図5に示すように、本体部材5a、5bは、連結固定部材43を介して一体化されている。すなわち、連結固定部材43の両端にはネジ穴43aが形成されており、連結固定部材43の一端が本体部材5aの固定孔33aと一致しており、連結固定部材43の他端が本体部材5bの固定孔33bと一致しており、それぞれ図示しないネジ(皿ボルト等)で固定されている。これにより、本体部材5a、5bは、離間して互いに平行姿勢で対向して一体化されている。
【0049】
また、本体部材5a、5bのピン固定孔34a、34bにピン32が固定されている。すなわち、ピン32を介して本体部材5a、5bが連結固定されている。そのため本体部材5a、5bは、二カ所で固定されており、右側回動部3a(左側回動部3b)の安定した筐体構造を構成している。
【0050】
さらに、ガイド溝36a、36bが離間して対向しており、両者の間には、把持部材38が配置されている。すなわち、把持部材38は、ガイド溝36a、36bに係合している。把持部材38は、ガイド溝36a、36bにガイドされて、本体部材5a、5bの短辺42aに沿う方向に往復移動することができる。すなわち、把持部材38は、本体部材5a、5bに対して往復移動可能である。
【0051】
把持部材38は、図3図5に示すように、把持部38aと基部38bを有している。把持部38aは、一対の保持片45a、45bを有している。各保持片45a、45bは、支持面58a、58bを有している。支持面58a、58bは、隣接していて互いに鈍角を成している。各保持片45a、45bは、基部38bに取り付けられている。各保持片45a、45bは、基部38bに対して若干のクリアランスがある。すなわち、外力が作用すると、各保持片45a、45bは、支持面58a、58bの鈍角が若干変化するように所定の範囲で基部38bに対して揺動する。把持部38a(保持片45a、45b)は、ワークW1(W2)に接触させて当該ワークW1(W2)を把持する部位である。基部38bには、後述のリンク機構部7を連結する連結孔44が設けられている。連結孔44は、支持面58a、58bの中央に設けられている。
【0052】
次にリンク機構部7について説明する。
リンク機構部7は、図3に示すように、第一リンク部材46a、46b、第二リンク部材47、第三リンク部材48a、48b、第四リンク部材49を有しており、この順で各リンク部材同士が相対回動可能に連結されている。
【0053】
第一リンク部材46a、46bは、細長い板状の部材であり、一端(後端)に固定孔51a、51bが設けられている。また、第一リンク部材46a、46bの他端(前端)には、連結孔52が設けられている。
【0054】
第二リンク部材47は、略「へ」の字形を呈する薄板状の部材であり、両端にそれぞれ連結孔(図示せず)が設けられている。
【0055】
第三リンク部材48a、48bは、略「く」の字形を呈する薄板状の部材であり、一端には連結孔60が設けられており、他端には連結孔61が設けられている。また、第三リンク部材48a、48bの屈曲部分には、固定軸50が設けられている。固定軸50の上端は、上側に配置された第三リンク部材48aよりも上方に突出しており、下端は、下側に配置された第三リンク部材48bよりも下方に突出している。
【0056】
第四リンク部材49は、短尺の薄板状の部材であり、一端には図示しない連結孔が設けられており、他端には連結軸56が設けられている。連結軸56は、第四リンク部材49の上方及び下方に突出している。
【0057】
第一リンク部材46a、46bは上下に配置されており、第一リンク部材46a、46bの間には、被駆動部材4におけるリンク機構部固定部29a、29b(貫通孔)が設けられた薄肉状の部位が配置されている。すなわち、第一リンク部材46a、46bは被駆動部材4を挟んでいる。そして、第一リンク部材46aの固定孔51a、51bと、リンク機構部固定部29a、29b(貫通孔)と、第一リンク部材46bの固定孔51a、51b(中心線)が一致しており、これらに軸59a、59bが挿通されている。軸59a、59bは、第一リンク部材46a、46bのそれぞれの固定孔51a、51bに固定されている。第一リンク部材46a、46bは、軸59a、59bによって前後の二カ所で被駆動部材4に拘束されており、被駆動部材4に対して相対移動しない。
【0058】
第一リンク部材46a、46bの他端(連結孔52)には、第二リンク部材47が連結されている。第二リンク部材47は、略「へ」の字形を呈する薄板状の部材であり、一端には第一リンク部材46a、46bの連結孔52と一致して共通の連結軸53で連結される連結孔(図示せず)が設けられている。連結軸53は、第一リンク部材46a、46bの連結孔52に固定されており、第二リンク部材47の図示しない連結孔には固定されていない。そのため、第一リンク部材46a、46bは連結軸53を介して一体化されており、第二リンク部材47は、連結軸53周りに回動(揺動)可能である。
【0059】
第二リンク部材47の他端の上下に、第三リンク部材48a、48bが配置されており、第二リンク部材47の他端は、第三リンク部材48a、48bで挟まれている。そして、第三リンク部材48a、48bの連結孔60と第二リンク部材47の他端の図示しない連結孔に連結軸54が挿通されている。第二リンク部材47と第三リンク部材48a、48bは、連結軸54で連結されている。
【0060】
そして、連結軸54は、第三リンク部材48a、48bの各連結孔60に固定されており、第二リンク部材47の図示しない連結孔には固定されていない。そのため、第三リンク部材48a、48bは連結軸54を介して一体化されており、第二リンク部材47は、連結軸54周りに回動(揺動)可能である。
【0061】
第三リンク部材48a、48bの他端側の各連結孔61には、連結軸55が固定されている。すなわち、連結軸55の両端が第三リンク部材48a、48bの各連結孔61に固定されている。連結軸55の中央部分には、短尺の第四リンク部材49の一端側に設けられた連結孔(図示せず)が係合している。第四リンク部材49は、連結軸55周りに回動可能である。すなわち、第三リンク部材48a、48bと第四リンク部材49は、連結軸55を介して相対回動可能に連結されている。
【0062】
第三リンク部材48a、48bの屈曲部分には固定軸50が挿通されている。固定軸50の上端は、本体部材5aのリンク固定孔35aに係合している。また、固定軸50の下端は、本体部材5bのリンク固定孔35b(図示せず)に係合している。よって、第三リンク部材48a、48bは、固定軸50を中心に本体部材5a、5bに対して回動可能に支持されている。
【0063】
第四リンク部材49の一端側は、連結軸55を介して第三リンク部材48a、48bと回動可能に連結されていると共に、他端側が連結軸56を介して把持部材38に連結されている。すなわち、第四リンク部材49側の連結軸56が、把持部材38の基部38bの連結孔44を挿通しており、把持部材38は、連結軸56周りに回動可能である。
【0064】
把持部材38は、上下に離間して配置された本体部材5a、5bのガイド溝36a、36bに係合しており、本体部材5a、5bの間に設置されている。ガイド溝36a、36bは、本体部材5a、5bの長辺39a側が開口している。しかし、把持部材38は、第四リンク部材49と連結されており、ガイド溝36a、36bから外れて脱落することはない。
【0065】
リンク機構部7は、第一リンク部材46a、46bが被駆動部材4に固定されており、第三リンク部材48a、48bの固定軸50が右側回動部3a(左側回動部3b)の本体部材5a、5bに固定されている。よって、被駆動部材4が前後方向に移動すると、各リンク部材と右側回動部3a(左側回動部3b)が連動して動作する。
【0066】
次に、把持装置1の右側回動部3a、左側回動部3bの本体部材5a、5bの動作について、図6図7図9図10を参照しながら説明する。
【0067】
図6(a)、図9では、右側回動部3a、左側回動部3bが非対向状態であり、両回動部3a、3bは開いている。そのため、把持装置1の前側には広い空間Cが形成されている。換言すると、両回動部3a、3bは、空間Cから後方へ退避している。
【0068】
非対向状態では、被押圧部37a、37bは押圧部材9に対して交差する方向を向いている。そして、被駆動部材4と一体の押圧部材9の前端の押圧部9aは、両回動部3a、3bの本体部材5a、5bの被押圧部37a、37bに当接(接触)している。
【0069】
また、被駆動部材4は骨格構造部15内の空間Sにおける後方側に位置しており、起立壁17(図3)に近接している。さらに、本体部材5a、5bは、骨格構造部15(図4)の規制部材11から離れている。
【0070】
この状態で駆動機構部2を駆動し、図6(b)、図10に示すように、被駆動部材4を前方へ移動させる。被駆動部材4と一体の押圧部材9も前方へ移動し、押圧部9aが両回動部3a、3bの本体部材5a、5bの長辺39a、39bに形成された被押圧部37a、37bを押圧する。その結果、両回動部3a、3bの本体部材5a、5bは、軸25a、26aを中心に回動する。そして、把持部材38同士が対向する。すなわち、両回動部3a、3bは所定の角度回動して対向状態になる。
【0071】
本体部材5a、5bが押圧されて軸25a、26aを中心に回動すると、やがて押圧部材9と本体部材5a、5bの被押圧部37a、37bが平行になり、押圧部材9による本体部材5a、5bの押圧がなくなる。また、本体部材5a、5bが回動すると、本体部材5a、5bの長辺40が規制部材11に接近し、やがて衝突する。
【0072】
そのため、本体部材5a、5bは、回動の推進力がなくなると共に、規制部材11がストッパとして機能し、本体部材5a、5b(両回動部3a、3b)は、対向状態を呈して停止し、図6(b)、図10に示す状態になる。すなわち、規制部材11は、両回動部3a、3bの回動範囲を規制する機能を有している。
【0073】
図6(b)、図10に示す状態から、さらに被駆動部材4を前方へ移動させても、押圧部材9は、本体部材5a、5bを押圧せず、本体部材5a、5bの長辺39a、39bに沿って移動する。すなわち、被駆動部材4の前方(一方向)への移動の途中で、押圧部材9による本体部材5a、5bの被押圧部37a、37bへの押圧がなくなる。
【0074】
次に、対向状態の両回動部3a、3bが非対向状態に把持装置1の形態を変更する(切り替える)場合について説明する。
【0075】
図7(a)に示すように、被駆動部材4と本体部材5a、5bは、係合部材30a、30bとピン32を介して連結されている。すなわち、被駆動部材4側の係合部材30a、30bの長孔31bにピン32が係合している。ピン32は、長孔31bの前端側に位置している。そのため、被駆動部材4が後方へ移動すると、係合部材30a、30b(長孔31b)が、ピン32を牽引する。その結果、本体部材5a、5bは、軸25a、26aを中心に回動し、両回動部3a、3bは図7(b)に示すように非対向状態になる。
【0076】
そして、本体部材5a、5bの被押圧部37a、37bが、押圧部材9の押圧部9aに当接し、本体部材5a、5bの回動は停止する。
【0077】
次に、対向状態の把持装置1において、把持部材38同士の間隔を変更する場合について、図8図10図11を参照しながら説明する。
【0078】
図8(a)では、両回動部3a、3bは非対向状態となっており、被駆動部材4を前方へ移動させると、両回動部3a、3bは図8(b)に示すように対向状態になる。把持装置1が図8(a)に示す非対向状態から図8(b)に示す対向状態になるまでの間、リンク機構部7は、両回動部3a、3bと共に向きを変更しただけであって、動作はしていない。
【0079】
非対向状態から対向状態に変化した直後の図8(b)に示す形態では、両回動部3a、3bの各把持部材38同士の間隔は広い。すなわち、図8(b)に示す形態は、比較的大径のワークW1を把持するのに適した形態である。
【0080】
把持対象のワーク(W2)が比較的小径の場合には、本実施形態の把持装置1では、把持部材38同士の間隔を狭めることができる。すなわち、被駆動部材4を、図8(b)に示す位置からさらに前方へ図8(c)に示す位置まで移動させる。
【0081】
被駆動部材4が図8(c)に示すように前方へ移動すると、被駆動部材4に固定された第一リンク部材46a、46bが前方へ移動する。その際、被駆動部材4と本体部材5a、5bの間隔が狭まり、本体部材5a、5b側に固定されたピン32が、被駆動部材4側に固定された係合部材30a、30bの長孔31b内を移動する。すなわち、ピン32が長孔31bに沿って摺動する。図8(c)では、ピン32が長孔31bの後端側に移動している状態が描写されている。ピン32は、長孔31bの範囲で移動が可能である。換言すると、右側回動部3aと左側回動部3bが対向状態であって、把持部材38同士の間隔が変更されている間、ピン32と係合部材30a、30bが相対移動する。
【0082】
被駆動部材4と本体部材5a、5bの間隔が変化すると、リンク機構部7の各リンク部材同士の位置関係が変化する。すなわち、図11において、リンク機構部7の各リンク部材が、破線で示す位置から実線で示す位置へ移動する。
【0083】
具体的には、第一リンク部材46a、46bと連結軸53が前方へ移動し、第二リンク部材47と第三リンク部材48a、48bが、それぞれ破線で示す位置から実線で示す位置まで移動する。すなわち、第三リンク部材48a、48bは、固定軸50で本体部材5a、5bに固定されているため、第三リンク部材48a、48bは固定軸50を中心に回転する。第二リンク部材47は、一端側の連結軸53が前方に移動するのみであるため、他端側の連結軸54は、第三リンク部材48a、48bの一端と連結されており、第三リンク部材48a、48bが回転できる範囲内で移動する。
【0084】
連結軸54は、固定軸50の左右方向の外側に配置されており、被駆動部材4(連結軸53)が前方へ移動すると、第三リンク部材48a、48bは、一方向に回転する。すなわち、右側回動部3aでは、第三リンク部材48a、48bは反時計回りに回転し、左側回動部3bでは、第三リンク部材48a、48bは時計回りに回転する。
【0085】
第三リンク部材48a、48bが、図11に示すように回転すると、第三リンク部材48a、48bの他端に連結された連結軸55を介して第四リンク部材49が空間Cを狭める方向へ移動する。そして、第四リンク部材49と連結軸56を介して連結された把持部材38が、空間C側へガイド溝36a、36bに沿って移動し、対向する両把持部材38の間隔が狭まる。すなわち、各把持部材38が、矢印Yで示すように左右方向に移動し、互いの間隔を狭める。
【0086】
把持装置1は、図8(b)、図10に示す形態で、比較的大径のワークW1を把持することができる。また、把持装置1は、図8(c)、図11に示す形態で、比較的小径のワークW2を把持することができる。
【0087】
把持装置1では、大径のワークW1、及び小径のワークW2の保持が安定している。
以下、その理由を説明する。
図10図12(a)に示す対向状態では、把持装置1の中心線Dと、把持部材38の中心線Eが直交している。すなわち、中心線Dと中心線Eが交点Iで交差している。
【0088】
右側回動部3aの把持部材38の支持面58aにおけるワークW1と当接する部位と、左側回動部3bの把持部材38の支持面58bにおけるワークW1と当接する部位を結ぶ線Gが、交点Iを通過している。また、右側回動部3aの把持部材38の支持面58bにおけるワークW1と当接する部位と、左側回動部3bの把持部材38の支持面58aにおけるワークW1と当接する部位を結ぶ線Hも、交点Iを通過している。
【0089】
線Gと線Hは、中心線Dに関して線対称の関係にある。すなわち、右側回動部3aの把持部材38がワークW1に付与する力F1、F2が線G上にあり、左側回動部3bの把持部材38がワークW1に付与する力F3、F4が線H上にあり、力F1と力F4が互いに反力の関係であり、同様に、力F2と力F3が互いに反力の関係にある。
【0090】
よって、ワークW1の周面における対向する四つの部位が同じ大きさの力F1~F4で押圧されており、各力F1~F4は、全て交点I方向を向いていて釣り合っている。すなわち、力F1~F4をベクトルに見立てると、その和がゼロになる。そのため、把持装置1によるワークW1の把持(保持)は安定している。また、力F1~F4同士が釣り合っているため、ワークW1に歪な外力が作用しない。
【0091】
次に、両回動部3a、3bの把持部材38同士の間隔を狭めた場合について説明する。
図11図12(b)に示す把持部材38同士の間隔を狭めた対向状態においても、把持装置1の中心線Dと、把持部材38の中心線Eが直交している。すなわち、中心線Dと中心線Eが交点Iで交差している。
【0092】
ワークW2は、ワークW1よりも小径であり、各把持部材38の支持面58aにおけるワークW2と当接する部位は、ワークW1と当接する部位とは相違している。各把持部材38の保持片45a、45b(把持部38a)は、基部38bに対して若干揺動することができる。図12(b)では、矢印Mで示すように揺動している。この揺動Mによって、把持部材38の支持面58a、58bは、ワークW2の表面を保持し易い姿勢になる。すなわち、把持部材38によるワークW2の保持が安定する。また、各把持部材38の保持片45aがワークW2を押圧する力F5と力F8、及び力F6と力F7は、互いに反力の関係にあり、釣り合っている。
【0093】
よって、ワークW2の周面における対向する四つの部位が同じ大きさの力F5~F8で押圧されており、各力F5~F8は、全て交点I方向を向いていて釣り合っている。すなわち、力F5~F8をベクトルに見立てると、その和がゼロになる。そのため、把持装置1によるワークW2の把持(保持)は安定している。また、力F5~F8同士が釣り合っているため、ワークW2に歪な外力が作用しない。
【0094】
本実施形態では、駆動機構部2として油圧シリンダ又はエアシリンダを採用したが、代わりにサーボモータを使用することもできる。すなわち、サーボモータで駆動される雄ネジに対して、ナット側を被駆動部材4に固定する。これにより、被駆動部材4は、前後方向に往復移動が可能になる。
【0095】
また、本実施形態では、把持装置1はワークW1、W2を把持する例を示したが、把持装置1は、工作機械の工具を把持することもできる。
【符号の説明】
【0096】
1 把持装置
2 駆動機構部(駆動部)
3a 右側回動部(回動部)
3b 左側回動部(回動部)
4 被駆動部材
5a、5b 回動部の本体部材(本体部)
6 把持部材(把持部)
7 リンク機構部
8a、8b 回動部の本体部材の回動軸
9 押圧部材(押圧部)
10 回動部の本体部材の被押圧部
11 規制部材
12 ピン
13 係合部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12