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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】光学式エンコーダおよびその動作方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/26 20060101AFI20221215BHJP
   G01D 5/347 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01D5/26 K
G01D5/347 B
G01D5/347 110L
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018239244
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2019138897
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】15/897,100
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518426837
【氏名又は名称】アイオロス ロボティクス コーポレーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AEOLUS ROBOTICS CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】スー, ユエテン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,チンテ
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0283986(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に接続されたエンコーダであって、
パターンをその上に有する板と、
前記パターンの一部分の画像を取得するように構成されているセンサと、
前記パターンの前記一部分に対応する第1のM個の基準画像セットならびに前記第1のM個の基準画像セットに対応する角度および/または位置情報を記憶するように構成されているメモリと、
プロセッサであって、
前記センサによって取得された前記画像を前記第1のM個の基準画像セットと比較し、
前記第1のM個の基準画像セットのいずれも前記センサによって取得された前記画像と同一でないことに応答して、前記メモリに記憶された前記第1のM個の基準画像セットを回転方向に一位相だけN回シフトさせることによって、前記第1のM個の基準画像セットを拡張させて、拡張されたM×N個の基準画像セットを取得し、
前記センサによって取得された前記画像を前記拡張されたM×N個の基準画像セットと比較し、前記位相は前記パターンをNで除算した最小解像度と等しい、
ように構成されているプロセッサと、
を備えるエンコーダ。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記取得された画像と、前記第1のM個の基準画像セットおよび/または前記拡張されたM×N個の基準画像セットとの前記比較の結果に基づいて、前記物体の角度または位置を判定するように更に構成されている、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記第1のM個の基準画像セットまたは前記拡張されたM×N個の基準画像セットのうちの1つが前記取得された画像と同一であるか、または極めて類似している場合に、前記物体の角度または位置を判定するように更に構成されている、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記位相は角度または位置に対応し、前記パターンの前記最小解像度は角度または位置に対応する、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記位相に基づいて、前記角度および/または位置情報の較正値を生成するように更に構成されている、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記角度および/または位置情報ならびに前記較正値に基づいて、前記物体の角度または位置を判定するように更に構成されている、請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記取得された画像と前記第1のM個の基準画像セットとの比較に基づき、前記メモリに記憶されている前記画像のうちの1つが前記取得された画像と同一であるか、または極めて類似している場合に、前記物体の角度または位置を判定するように更に構成されている、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記センサ、前記メモリおよび前記プロセッサが、単一の構成要素内に組み込まれている、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項9】
物体に接続されたエンコーダの動作方法であって、
(a)パターンの一部分の画像を取得することと、
(b)前記取得された画像を、メモリに記憶されている第1のM個の基準画像セットと比較することと、
(c)前記第1のM個の基準画像セットのいずれも前記取得された画像と同一でないことに応答して、前記第1のM個の基準画像セットを回転方向に一位相だけN回シフトさせることによって、前記第1のM個の基準画像セットを拡張させて、M×N個の基準画像を含む拡張された基準画像セットを取得することと、
(d)前記取得された画像を前記拡張されたM×N個の基準画像セットと比較することであって、前記位相は前記パターンをNで除算した最小解像度と等しい、ことと、
を含む方法。
【請求項10】
前記取得された画像と、前記第1のM個の基準画像セットおよび/または前記拡張された基準画像セットとの前記比較の結果に基づいて、前記物体の角度または位置を判定することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のM個の基準画像セットおよび/または前記拡張されたM×N個の基準画像セットのうちの1つが前記取得された画像と同一であるか、または極めて類似している場合に、前記物体の角度または位置を判定することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記位相は角度または位置に対応し、前記パターンの前記最小解像度は角度または位置に対応する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のM個の基準画像セットのそれぞれが、前記物体の各角度および/または位置情報に対応する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記拡張された基準画像セットに基づいて、前記物体の前記角度および/または位置情報の較正値を生成することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記角度および/または位置情報ならびに前記較正値に基づいて、前記物体の角度または位置を判定することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記メモリに記憶されている前記第1のM個の基準画像セットは、前記センサによって取得された前記画像と比較される前に前記プロセッサによって前処理されない、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項17】
前記拡張されたM×N個の基準画像セットは、前記センサによって取得された前記画像と比較される前に前記プロセッサによって前処理されない、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記第1のM個の基準画像セットを拡張して前記エンコーダの解像度をN倍にするように構成されている、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項19】
物体がセンサと共に移動しない、請求項1に記載のエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本開示は、概略的には装置ならびにその位置及び移動をセンサ装置を使用して検出するための方法に関し、より詳細には、装置ならびにその位置および移動を光学式エンコーダセンサを使用して検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.先行技術の記載
光学式エンコーダは、様々な用途で有用である。例えば、アブソリュートエンコーダを、物理的な位置をそのような位置に対応する電気信号へと変換することにより、物体の位置、移動または角度を判定するために使用することが可能である。(ロボットアームなどの)比較回転機構においては、アブソリュートエンコーダが、コード板上に形成された(バーコードなどの)所定のパターンを読み取るかまたは検出するため、および回転機構の絶対位置を示す信号を生成するためのセンサを有する。一般には、回転機構の検出された位置の精度を向上させるためには、コード板上のパターンの解像度を上げることおよび/またはコード板のサイズを大きくすることが必要とされる。しかし、ディスクのサイズを大きくすることは、エンコーダの小型化を妨げ、コード板上のパターンの解像度を上げることは、コストを増大させ、その結果、市場における競争性を低下させてしまうであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
1つ以上の実施形態においては、物体に接続されたエンコーダが提供される。前記エンコーダは、板、センサ、メモリおよびプロセッサを有する。前記板は、その上にパターンを有する。前記センサは、前記パターンの一部分の画像を取得するように構成されている。前記メモリは、前記パターンの一部分に対応する複数の基準画像からなる第1のセットならびに、前記第1画像セットに対応する角度および/または位置情報を記憶するように構成されている。前記プロセッサは、前記第1基準画像セットをシフトさせて第2基準画像セットを取得し、取得された画像を前記第1基準画像セットおよび/または前記第2基準画像セットと比較するように構成されている。
【0004】
1つ以上の実施形態においては、物体に接続されたエンコーダの動作方法が提供される。前記方法は、(a)パターンの一部分の画像を取得することと、(b)第1基準画像セットを一位相だけシフトさせて第2基準画像セットを取得することと、(c)取得された画像を前記第1基準画像セットおよび/または前記第2基準画像セットと比較することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示の複数の局面が、添付の図面を参考としながら以下の詳細な説明を参照することで、最適に理解されよう。図面において、様々な特徴が正確な縮尺率で図示される必要はなく、これらの様々な特徴の寸法が、説明の明瞭化のために任意に拡大または縮小されていてもよいことに留意されたい。
図1図1は、本開示の幾つかの実施形態による回転可能な機構の斜視図である。
図2図2は、本開示の幾つかの実施形態による光学式エンコーダの斜視図である。
図3図3A図3Bおよび図3Cは、本開示の幾つかの実施形態による図2のパターンの一部分を図示したものである。
図4図4は、本開示の幾つかの実施形態による光学式エンコーダの動作方法を図示したものである。
図5図5は、本開示の幾つかの実施形態による光学式エンコーダの動作方法を図示したものである。
図6図6Aおよび6Cは、本開示の幾つかの実施形態による図2のパターンの一部分を図示したものである。
【0006】
図面および発明の詳細な説明を通じ、同一のまたは同様の要素は共通の参照番号を用いて表される。本開示は、以下の詳細な説明を添付の図面と組み合わせて参照することで、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
本開示の複数の実施形態の構造、製造および使用を、以下に詳細に説明する。ただし、これらの実施形態が、様々な状況で具現化しうる数多くの利用可能な構想を示すものであることが理解されるべきである。以下の開示が、数多くの異なる実施形態または、様々な実施形態の異なる特徴を具現化した複数の例を述べたものであることが理解されるべきである。複数の部品及び装置の例を、以下に説明の目的のために記載する。これらは、当然のことながら、単に例示的なものであり、限定的であることは意図されていない。
【0008】
図面に図示される複数の実施形態または実施例を、以下に特定の言語を用いて開示するが、これらの実施形態または実施例が限定を意図しないことが理解されよう。開示された実施形態ならびに、この文書に開示する原理の任意の更なる適用のいかなる変更および修正も本開示の範囲に含まれることが、当業者に理解されよう。
【0009】
加えて、本開示が、様々な実施例において参照番号及び/または文字を繰り返してもよい。この繰り返しは、簡潔化および明瞭化の目的でなされ、記載される様々な実施例および/または構成間の関連性をそれ自体が規定するものではない。
【0010】
図1は、本開示の幾つかの実施形態による回転可能な機構100の斜視図である。幾つかの実施形態においては、回転可能な機構100が、ロボットアームまたはロボットアームの一部分である。回転可能な機構100は、第1端部100Aおよび、第1端部100Aと反対側の第2端部100Bを有する。回転可能な機構100は、複数のモータ110、減速歯車装置120、駆動プレート130、スクリューロッド140および関節150をさらに有する。
【0011】
減速歯車装置120は、複数のモータ110の回転数を変化させるために、回転可能な機構100の第1端部100Aに接続され、かつ複数のモータ110に取り付けられている。これらのモータ110および減速歯車装置120は、回転可能な機構100のための複数の異なる駆動体を構成する。駆動プレート130が、回転可能な機構100の第1端部100Aに回転可能に取り付けられている。スクリューロッド140が、回転可能な機構100の第1端部に接続され、回転可能な機構100の第2端部100Bが、複数のモータ110によって発生された動力を使用して関節150を駆動し、関節150を回転または移動させる。
【0012】
図2は、本開示の幾つかの実施形態における光学式エンコーダ200の斜視図である。幾つかの実施形態においては、光学式エンコーダ200がアブソリュートエンコーダであり、図1の回転可能な機構の第2端部100Bに配置されていてもよい。例えば、光学式エンコーダ200が、図1の回転可能な機構100の関節150に接続されているか、またはこれに隣接していてもよい。あるいは、光学式エンコーダ200が、任意のその他の物体、装置または機構に、その角度および/または位置を検出するために接続されていてもよい。光学式エンコーダ200は、(「符号化ディスク」と称されてもよい)ディスク210、センサ220およびプロセッサ230を有する。
【0013】
ディスク210は、センサ220に隣接して配置されている。ディスク210は、その上に所定のパターンを有する。幾つかの実施形態においては、前記パターンが一連のバーコードシンボルを含む。例えば、前記パターンが、複数の黒色部分210aおよび白色部分210bを有する。幾つかの実施形態においては、ブロック部分210a及び白色部分210bの配置が、図1の回転可能な機構100の角度および/または位置に関する情報を表す。幾つかの実施形態においては、ブロック部分210aは、光を遮断することの可能な不透明な材料から形成されているか、またはこれを含む。白色部分210bは、光を透過させることの可能な透明な材料から形成されているか、またはこれを含む。あるいは、設計要件によっては、白色部分210bを開口部またはスロットと置き換えることが可能である。幾つかの実施形態においては、前記パターンが、標準的なバイナリコード、グレイコード、シングルトラックグレイコードまたは任意のその他の好適なコードであってもよい。幾つかの実施形態においては、ディスク210を、プレート、フレーム、ロッドまたは任意のその他の、その上にパターンを有する好適な要素と置き換えることが可能である。
【0014】
センサ220が、ディスク210上のパターンの一部分を取得し、取得された画像をプロセッサ230に送信するように構成されている。例えば、ディスク210が、四角Aで囲まれたパターンの一部分がセンサ220の捕捉領域内に配置されるように回転すると、四角Aで囲まれたパターンの一部分の画像がセンサ220によって取得される。従って、センサ220によって取得される前記パターンの画像は、ディスク210の回転に伴って変化する。
【0015】
幾つかの実施形態においては、センサ220が、ディスク210上の前記パターンの複数の異なる部分の画像を取得するためのカメラを有してもよい。幾つかの実施形態においては、センサ200が、光エミッタおよび(「光検出器」、「光センサ」または「光学式センサ」と称されてもよい)光検出装置を有する。光エミッタが、レーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)ダイオード、端面発光型レーザダイオードまたはその他の照光部品であってもよい。光エミッタは、ディスク210上のパターンに向かって発光し、光検出装置は、ディスク210から反射された光を受光または検出するように構成されている。幾つかの実施形態においては、光検出装置が、PINダイオード(p型半導体領域、真性半導体領域およびn型半導体領域を有するダイオード)またはフォトダイオードまたはフォトトランジスタを有してもよい。
【0016】
プロセッサ230は、センサ220から取得された画像を受信して、図1の回転可能な機構100の角度および/または位置を判定するように構成されている。プロセッサ230が、パターンの複数の異なる部分の一連の画像を記憶するように構成された、(例えばRAM、フラッシュメモリおよび同等物などの)メモリであって、各画像が回転可能な機構100の対応する位置または角度を表すかまたは示しているメモリを有してもよい。例えば、図3Aの画像は、回転可能な機構100の角度および/または位置3A1を表す、パターンの(図2に四角Aで囲まれて図示されている)一部分を示し、図3Bの画像は、回転可能な機構100の角度および/または位置3B1を表す、パターンの(図2に四角Bで囲まれて図示されている)別の一部分を示している。
【0017】
プロセッサ230は、センサ220から受信された取得された画像を、メモリに記憶されている画像と比較し、メモリに記憶されているいずれの画像が、取得された画像と極めて類似しているかまたは同一であるのかを特定または検査し、メモリに記憶されている特定されたまたは極めて類似している画像に対応する角度および位置情報に基づいて、前記回転可能な機構100の角度または位置を判定するように構成されている。例えば、プロセッサ230が、四角Aで囲まれたパターンの一部分の取得された画像をセンサ220から受信した場合には、プロセッサ230は、取得された画像を、メモリに記憶されている(それぞれ角度または位置3A1および3B1に対応する)図3Aおよび図3Bに示される画像と比較するように構成されている。取得された画像が図3Aの画像と同一であるので、プロセッサ230は、回転可能な機構100が角度または位置3A1に位置していると判定するように構成されている。従って、回転可能な機構100の角度および/または位置を、センサ220によって取得されたディスク210上のパターンの画像に基づいて判定することが可能である。
【0018】
図2では、パターンの最小解像度は、ディスク210の最外円の黒色部分または白色部分を含むことの可能なブロックである。従って、センサ220によって取得された画像が全てのブロックを含んでいない場合には、プロセッサ230は、メモリに記憶されている同一の画像を見つけることができない。例えば、図3Cに示す画像が取得された場合には、図3Cの画像が図3Aの画像の一部分と図3Bの画像の一部分とを含むために、メモリに記憶されている同一の画像を見つけることができない。この場合、回転可能な機構100の位置は、位置3A1と位置3B1との間にある。しかし、パターンの(例えばディスク20の最外円のブロックなどの)不十分な解像度のために、プロセッサ230は回転可能な機構100の正確な場所を判定できない。プロセッサ230は、代替的に、図3Cの取得された画像が、図3Bの画像よりも図3Aの画像に近い(即ち、図3Cの画像が図3Aの画像に極めて類似している)ので、回転可能な機構100が位置3Aにあると判定するように構成されている。従って、回転可能な機構100の位置の(変位誤差などの)誤差または歪みが発生する。現状の方法では、そのような誤差を解消または軽減するためには、ディスク上のパターンの解像度を上げるか、またはより多くのパターンシンボルを含むようにディスクのサイズを大きくすることが必要である。しかし、ディスクのサイズを大きくすることは、光学式エンコーダの小型化を妨げ、ディスク上のパターンの解像度を上げることは、コストを増大させ、市場における競争性を低下させてしまうであろう。
【0019】
図4は、本開示の幾つかの実施形態による光学式エンコーダの動作方法のフロー図である。幾つかの実施形態においては、図4の方法が、図2に示す光学式エンコーダを動作させるために用いられる。あるいは、図4の方法が、物体の角度または位置を判定するための任意のその他の光学式エンコーダを動作させるために用いられてもよい。
【0020】
動作S40を参照すると、図2のセンサ220が、ディスク210上のパターンの一部分の画像を取得し、取得された画像をプロセッサ230に送信するように構成されている。
【0021】
動作S42を参照すると、プロセッサ230が、取得された画像をメモリに記憶されている複数の画像と比較して、メモリに記憶されているいずれかの画像が取得された画像と同一であるか否かを検査するように構成されている。そうである場合には、プロセッサ230は、動作S48に示すように、光学式エンコーダ200に接続された(図1の回転可能な機構100などの)物体の角度および/または位置を、メモリに記憶されている角度および位置情報に基づいて判定するように構成されている。
【0022】
動作S44を参照すると、取得された画像と同一の画像がメモリに記憶されていない場合には、メモリに記憶されている全ての画像が、シフトされた画像を取得するために位相φ1だけシフトされる。幾つかの実施形態においては、これらの画像がプロセッサ230によってシフトされる。幾つかの実施形態においては、位相φ1が、メモリに記憶されているパターンの画像に対応する角度および/または位置の較正値である。幾つかの実施形態においては、パターンの最小解像度がX度である場合に、位相φ1がX/N度に対応し、Nは1よりも大きい整数である。例えば、パターンの最小解像度が1度である場合には、位相φ1は、(例えば1/5または1/6度などの)1/N度に対応する。例えば、上述のように、図3Cに図示される取得された画像が、図3Aの画像の一部分および図3Bの画像の一部分を含んでいると、プロセッサ230は、取得された画像と同一のメモリ内に記憶されている画像を見つけることができない。従って、プロセッサ230が、図3Aおよび3Bの画像を反時計回り方向に位相φ1だけシフトさせて、図6Aおよび6Bにそれぞれ図示するシフトされた画像を形成してもよい。別の複数の実施形態においては、設計要件により、プロセッサ230が画像を時計回り方向に位相φ1だけシフトさせてもよい。
【0023】
動作S46を参照すると、プロセッサ230は、シフトされた画像が取得された画像と同一であるか否かを検査するように構成されている。そうである場合には、プロセッサ230は、動作S49に示されるように、光学式エンコーダ200に接続された物体の角度および/または位置を、メモリに記憶されている角度または位置と、シフトされた位相φ1に対応する較正値とに基づいて判定するように構成されている。例えば、位相φ1が(例えば0.2度などの)1/5度に対応しているとすると、図3Aの画像に対応する角度が30度であり、かつ図3Bの画像に対応する角度が31度である場合には、図6Aのシフトされた画像に対応する角度は30.2度であり、図6Bのシフトされた画像に対応する角度は31.2度である。図3Cの取得された画像が、図6Aのシフトされた画像と同一であるので、プロセッサ230は、光学式エンコーダ200に接続された物体の角度が30.2度であると判定するように構成されている。
【0024】
取得された画像と同一のシフトされた画像が依然としてない場合には、プロセッサ230は、取得された画像と同一であるかまたは極めて類似しているシフトされた画像をプロセッサ230が見つけるまで、動作S44およびS46を繰り返すように構成されている。図4の実施形態によれば、メモリに記憶されている画像を((最小解像度)/Nと等しい)位相φ1だけシフトさせることにより、光学式エンコーダ200の解像度は、より大きなディスクまたはより高い解像度のパターンを有するディスクを使用することなく、N倍に向上する。
【0025】
図5は、本開示の幾つかの実施形態による光学式エンコーダの動作方法のフロー図である。幾つかの実施形態においては、図5の方法が、図2に図示する光学式エンコーダ200を動作させるために使用される。あるいは、図5の方法が、物体の角度または位置を判定するための任意のその他の光学式エンコーダを動作させるために使用されてもよい。
【0026】
動作S50を参照すると、図2のセンサ220が、ディスク210上のパターンの一部分の画像を取得し、取得された画像をプロセッサ230に送信するように構成されている。
【0027】
動作S52を参照すると、プロセッサ230は、取得された画像をメモリに記憶されているM個の画像と比較して、メモリに記憶されているいずれかの画像が取得された画像と同一であるか否かを検査するように構成されている。そうである場合には、プロセッサ230は、動作S53に示すように、光学的エンコーダ200に接続された(図1の回転可能な機構100などの)物体の角度および/または位置を、メモリに記憶されている角度および/または位置情報に基づいて判定するように構成されている。
【0028】
動作S54を参照すると、取得された画像と同一の画像がメモリに記憶されていない場合には、メモリに記憶されているM個の画像全てが、位相φ2だけN回シフトされ、M×N個のシフトされた画像が取得される。幾つかの実施形態においては、これらの画像は、プロセッサ230によってシフトされる。幾つかの実施形態においては、位相φ2は、メモリに記憶されているパターンの画像に対応する角度および/または位置の較正値である。幾つかの実施形態においては、パターンの最小解像度がX度である場合には、位相φ2はX/(N+1)度に対応し、Nは1よりも大きい整数である。例えば、パターンの最小解像度が1度である場合には、位相φ2は、(例えば1/5または1/6などの)1/(N+1)度に対応する。従って、位相φ2が1/5度(0.2度、即ち4回シフトされている)に対応しているとすると、図3Aの画像に対応する角度が30度である場合には、(φ2だけシフトされた)第1のシフトされた画像に対応する角度は30.2度であり、(2φ2だけシフトされた)第2のシフトされた画像に対応する角度は30.4度であり、(3φ2だけシフトされた)第3のシフトされた画像に対応する角度は30.6度であり、(4φ2だけシフトされた)第4のシフトされた画像に対応する角度は30.8度である((5φ2だけシフトされた)第5のシフトされた画像に対応する角度は31度であり、これは図3Bの画像に対応する角度と等しいので、5回目のシフトを行う必要はない)。幾つかの実施形態によれば、プロセッサ230が、設計要件により、画像を位相φ2だけ時計回り方向にシフトさせてもよいし、反時計回り方向にシフトさせてもよい。
【0029】
動作S56を参照すると、プロセッサ230は、M×N個のシフトされた画像のいずれかが、取得された画像と同一であるか、または極めて類似しているか否かを検査するように構成されている。動作S58を参照すると、プロセッサ230は、光学式エンコーダ200に接続された物体の角度および/または位置を、動作S58に示すように、メモリに記憶されている角度または位置情報と、シフトされた位相φ2に対応する較正値とに基づいて判定するように構成されている。例えば、図3Aの画像の(3φ2だけシフトされた)第3のシフトされた画像が、取得された画像と同一であるか、または極めて類似していると判定された場合には、プロセッサ230は、光学式エンコーダ200に接続された物体が30.6度の角度に位置していると判定するように構成されている。
【0030】
図5の実施形態によれば、メモリに記憶されている画像を位相2φだけN回シフトさせることで、光学式エンコーダ200の解像度は、より大きなディスクまたはより高い解像度パターンを有するディスクを使用することなく、N倍向上する。
【0031】
ここで使用される「約」、「実質的に」、「実質的な」および「概ね」という用語は、微小な差異を記載し、これを説明するために用いられる。これらの用語は、ある事象または状況と組み合わせて用いられる場合に、前記事象または状況が正確に発生する場合とともに、前記事象または状況がきわめて近似的に発生する場合も指しうる。例えば、これらの用語は、数値と組み合わせて用いられる場合に、±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.1%以内または±0.05%以内などの、その数値の±10%以内の差異の範囲を指してもよい。例えば、2つの数値の間の差が、これらの値の平均の、例えば±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.1%以内または±0.05%以内などの、±10%以内である場合に、これらの値が「実質的に」または「概ね」同一であるかまたは等しいとみなされてもよい。例えば、「実質的に」平行であることが、0°に対する角度差の範囲が、例えば±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.1%以内または±0.05%以内などの、±10%以内であることを指してもよい。例えば、「実質的に」垂直であることが、90°に対する角度差の範囲が、例えば±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.1%以内または±0.05%以内などの、±10%以内であることを指してもよい。
【0032】
ここで使用される単数を表す用語「a」、「an」および「the」は、別段の明示がなされていない限り、複数の指示対象を含む。幾つかの実施形態の記載においては、別の部品「の上」または「上」に設けられている部品は、前者の部品が後者の部品に(物理的に接触しているなど)直接に接している場合とともに、前者の部品と後者の部品との間に1つ以上の介在する部品が配置されている場合をも包含しうる。
【0033】
本開示を、その具体的な実施形態を参照しながら説明および例示してきたが、これらの説明および例示は、本開示を限定するものではない。様々な変更を加えることが可能であり、同等の複数の部品を、実施形態において、添付の請求項に定める本開示の精神および範囲から逸脱することなく置き換えることが可能であることが当業者に明確に理解されよう。図面が正確な縮尺率である必要はない。本開示の描画と実際の装置との間に、製造工程における不確定要素などによる差があってもよい。具体的に例示されていない本開示のその他の実施形態が存在しうる。明細書及び図面は、限定的であるよりも例示的であることを意図されている。特定の状況、材料、物質の組成、方法またはプロセスを本開示の目的、精神および範囲に適合させるための修正を行うことが可能である。そのような修正はすべて、添付の請求項の範囲に含まれることを意図されている。ここに開示する複数の方法は、特定の順序で実施される特定の動作と関連させて記載されているが、これらの方法が、組み合わせられ、分割され、または並べ替えられて、本開示の教示から逸脱することなく同等な方法を構成することが可能である。従って、ここに特に指定しない限り、動作の順序および組み合わせは、本開示の限定事項ではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6