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特許7194428エキスパンションジョイント用の断熱帯及びエキスパンションジョイント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】エキスパンションジョイント用の断熱帯及びエキスパンションジョイント
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20221215BHJP
   E04B 1/68 20060101ALI20221215BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
E04B1/76 500D
E04B1/68 100A
E04B1/80 100N
E04B1/80 100P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019021670
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2019196693
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2018089141
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127639
【氏名又は名称】株式会社エービーシー商会
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 琢也
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-137334(JP,A)
【文献】特開平07-268969(JP,A)
【文献】登録実用新案第3205367(JP,U)
【文献】特開2006-125051(JP,A)
【文献】特開平09-184210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキスパンションジョイントが設置される構造物の躯体間隙に取り付けられる断熱帯において、
断熱機能を有するコア材の表面がフィルムで包装されてなる帯状の断熱材であってその短手幅方向に沿って略U字形に湾曲乃至屈曲した形状に形成された断熱材と、
前記断熱材の対向長手側辺部にそれぞれ接続される合成樹脂製の支持材からなり、
前記断熱材の対向長手側辺部にそれぞれ接続された前記支持材が、間隙を挟んで向き合う躯体の端部取り付け面にそれぞれ配置されて両躯体間に前記断熱材が架設されることを特徴とするエキスパンションジョイント用の断熱帯。
【請求項2】
間隙を挟んで向き合う躯体にそれぞれ取り付けられた支持材の少なくとも一方は、断熱材の長手側辺部に接続する接続部が背面側に設けられた主面部と、主面部の上端から前記背面側へ屈曲していて躯体端部の取り付け面に重なって取り付けられる取り付け面部を備えて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエキスパンションジョイント用の断熱帯。
【請求項3】
主面部は、その面内に当該主面部の下側面部をその上側面部よりも前方に張り出させた段部が設けられ、この段部の下側から下方へ突出した突片部が設けられ、この突片部と前記下側面部との間に断熱材の長手側辺の辺縁部が挿入される隙間部が設けられているとともに、前記下側面部の端部に背面側へ膨らんだ湾曲凹面部が設けられて形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエキスパンションジョイント用の断熱帯。
【請求項4】
主面部の隙間部に断熱材の辺縁部が挿入され、この辺縁部に重なる前記主面部の突片部と下側面部が固着具で留め付けられて断熱材の辺縁部が固定されるとともに、前記断熱材が留め付けられた突片部背面から断熱材の端部に亘る部分に発泡樹脂片が取り付けられた構成を有することを特徴とする請求項3に記載のエキスパンションジョイント用の断熱帯。
【請求項5】
支持材はその取り付け面部の主面部に対する屈曲角度を鋭角に設けて形成されており、躯体の端部取り付け面に前記取り付け面部を固定したときに、間隙内に配置された前記主面部と前記取り付け面に固定された前記取り付け面部の交差角度が広がることにより、前記主面部がその背面側に接続された断熱材を間隙内面側へ押圧するように設けられていることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載のエキスパンションジョイント用の断熱帯。
【請求項6】
間隙を挟んで向き合う躯体にそれぞれ取り付けられた支持材の少なくとも一方は、断熱材の長手側辺部に接続する接続部が背面側に設けられた主面部を含んで形成された間隙側部材と、躯体端部の取り付け面に重なって取り付けられる取り付け面部を含んで形成された躯体側部材からなり、
前記間隙側部材が、躯体間隙長さ方向に沿って変位し得るように躯体側部材に取り付けられた構成を有することを特徴とする請求項1から4の何れか記載のエキスパンションジョイント用の断熱帯。
【請求項7】
支持材が熱可塑性樹脂を用いて軟質又は半硬質に成形されていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のエキスパンションジョイント用の断熱帯。
【請求項8】
断熱材は真空断熱材であることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のエキスパンションジョイント用の断熱帯。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載の断熱帯が、間隙を挟んで対向する躯体間に架設された構成を有するエキスパンションジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の中に設けられるエキスパンションジョイントの構成要素であり、躯体間に設けられた間隙内に架設される断熱帯の構造と、これを用いたエキスパンションジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
大型の建物は、躯体の温度変化や地震のときになどにかかる荷重の影響を避けるため、建造物を複数の躯体に分割して躯体間に間隙を設けて建てられ、各間隙には、間隙の両側の躯体同士を一体に接続したまま躯体が相互に異なる方向に変位してもそれに追随するように構成されたエキスパンションジョイントが設置されている。
【0003】
かかるエキスパンションジョイントの間隙は建物の半開口部であり、ここが熱橋となって、夏季は外気温が伝わって室内を暑くしたり、冬季は冷気が伝わって建物内部を冷たくしたりすることがある。そのため、このようなエキスパンションジョイントの間隙部分を通した伝熱を遮断するための対策として、間隙内に硬質ウレタンやロックウール、グラスウール、独立発泡体などの断熱材を設置することが行われている。
また、間隙の両側の躯体端部に、一対の弾性シートを金属製固定金具で留め付けて架け渡し、両弾性シートの間にグラスウールなどの柔軟性断熱材を充填して、間隙内を断熱した構造のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-327177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のとおり、間隙内に硬質ウレタンなどの断熱材を設置する場合、断熱材の厚みを十分に厚くすれば良好な断熱性能を得ることができる。しかし、厚みのある断熱材を設置したのでは、間隙の伸縮変位に対する追従性や変位吸収性が損なわれ、施工にも手間を要するという問題がある。躯体間が100mm程度の狭い幅の間隙には設置することができない。
また、一対の弾性シートの間に柔軟性断熱材を充填する構造のものは、熱伝導率の高い固定金具が間隙に面して取り付けられるので、この金具を通して熱橋を生じさせ、断熱欠損を発生させるという問題がある。また、壁の間隙に取り付ける態様では、柔軟性弾性材が自重によって経年的に落下しやすいという問題がある。
【0006】
前記間隙内に設置される耐火帯は、耐火材料がある程度の断熱性があることから、耐火帯の設置が間隙内の断熱に寄与することにはなるが、耐火材料は前述の断熱材料と比べて断熱性能自体が低いため間隙内を十分に断熱することができず、また、耐火帯は耐火材を躯体に固定するためのフレームに金属が使用されているため、金属製のフレームを通して熱橋を生じさせることになる。前記幅の狭い間隙への設置も対応が困難である。
【0007】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、エキスパンションジョイントの幅の狭い間隙内に設置することが可能であり、断熱性能に優れ、しかも間隙の伸縮変位に対する追従性や変位吸収性が良好で簡易に施工が可能な断熱帯を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のとおり、エキスパンションジョイントの間隙に断熱材を十分な厚み、例えば高性能グラス―ル16Kであれば225mm程度の厚みに設置すれば、間隙内を十分に断熱することができるが、これでは、間隙の伸縮変位に対応ができず、幅の狭い間隙に設置することができない。
そこで、本発明では、前記厚みのグラスウールと同程度の断熱性能を備え、しかも肉厚が10mm程度と薄いシート状に形成された断熱材、例えば真空断熱材などの、断熱機能を有するコア材の表面にフィルムをラミネートしてパッケージ化された断熱材を用い、これを間隙内に没入して間隙に面する両躯体間に架け渡されるように断面略U字形に成形し、その両端部分に合成樹脂製の支持材を取り付け、支持材を介して躯体端部に取り付けて断熱材を間隙内に架設するように構成した。
【0009】
すなわち、本発明は、エキスパンションジョイントが設置される構造物の躯体間隙に取り付けられる断熱帯において、
断熱機能を有するコア材の表面がフィルムで包装されてなる帯状の断熱材であってその短手幅方向に沿って略U字形に湾曲乃至屈曲した形状に形成された断熱材と、
前記断熱材の対向長手側辺部にそれぞれ接続される合成樹脂製の支持材からなり、
前記断熱材の対向長手側辺部にそれぞれ接続された前記支持材が、間隙を挟んで向き合う躯体の端部取り付け面にそれぞれ配置されて両躯体間に前記断熱材が架設されることを特徴とする。
【0010】
これによれば、間隙に架設された断熱材により間隙を通じた伝熱を遮断し、また、断熱材を躯体に取り付ける支持材は合成樹脂材料により形成されているので熱橋が生ずることもなく、間隙内に高い断熱構造を構築することができる。また、間隙の伸縮変位に対しては、略々U字形に湾曲した断熱材が可動して追従することで変位を吸収することができる。なお、本発明において、「躯体の端部取り付け面」とは、間隙を挟んで対向する両躯体の、エキスパンションジョイントが取り付けられる部分の面をいう。
【0011】
前記のとおり、断熱帯を構成する断熱材としては、グラスウールなどのコア材をフィルムで包装した断熱材が用いられ、真空断熱材を用いることがより好ましい。
真空断熱材を用いれば、構造物の断熱材として広く使用されているグラスウールの厚みが225mmのものと同等の熱抵抗値を厚み10mmの真空断熱材で得ることができるので、断熱帯全体を薄く形成することができ、例えば100mm程度の幅の狭い間隙にも嵩張らずに施工することが可能である。また、間隙を覆う幅及び長さを有する帯状の真空断熱材を、その短手幅方向に沿って略U字形に湾曲乃至屈曲させて形成し、対向長手辺側であるU字形の両端部を前記支持材で躯体に固定して間隙内に架設することで、間隙が伸縮変形するのにともなう可動追従性を確保することが可能である。
また、真空断熱材は、ある程度の硬さを持った素材であり、しかもコア材が包装フィルム内に封止されているため、間隙内に設置された状態でコア材が落下するようなことはなく、持続して断熱効果が発揮されることになる。
なお、コア材の表面がフィルムで包装されたパッケージ型の帯状の断熱材であって、前記真空断熱材と同等の断熱性能を有し、かつ同等の厚みに形成されるものであれば、真空断熱材に代えて本発明の断熱帯を構成する断熱材に用いることができる。真空断熱材に代えて使用可能な断熱材としては、例えば特開2016-74841号公報に記載のものが相当すると考えられる。真空断熱材又はこれと同等の断熱性能を備えた断熱材を用いることにより、熱貫流率0.35(W/m・K)の断熱性能を備えた断熱帯を構成することができる。
【0012】
また、前記のとおり、断熱材を躯体に固定するための支持材を、金属よりも熱伝導率が小さい合成樹脂材を用いて形成することにより、支持材の部分の熱欠損を抑えて断熱性が高まるようにした。
支持材を形成する合成樹脂材としては、塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。支持材は、塩化ビニル樹脂などを材料にして押出成形により、間隙の長さ方向に沿った長さで長尺に形成されるが、施工性や作業性確保、断熱材の破損リスク軽減のため、軟質又は半硬質に成形されていること、具体的には、一般的な施工環境下-10~+40℃におけるデユロメータを使用してのタイプAの硬度が60~95Aの範囲に設定されて成形してあることが好ましい。
【0013】
前記構成の断熱帯において、間隙を挟んで向き合う躯体にそれぞれ取り付けられた支持材の少なくとも一方は、断熱材の長手側辺部に接続する接続部が背面側に設けられた主面部と、主面部の上端から前記背面側へ屈曲していて躯体端部の取り付け面に重なって取り付けられる取り付け面部を備えて形成されたものを用いることができる。
これによれば、断熱材の対向長手側辺に前記支持材の接続部をそれぞれ接続し、略U字形に湾曲乃至屈曲した断熱材が間隙内に没入するように配置し、間隙両側の躯体端部の取り付け面に支持材の取り付け面部を重ね、留めネジなどで固定することにより、間隙に断熱帯を取り付けることができる。
【0014】
また、前記構成の断熱帯において、主面部は、その面内に当該主面部の下側面部をその上側面部よりも前方に張り出させた段部が設けられ、この段部の下側から下方へ突出した突片部が設けられ、この突片部と前記下側面部との間に断熱材の長手側辺の辺縁部が挿入される隙間部が設けられているとともに、前記下側面部の端部に背面側へ膨らんだ湾曲凹面部が設けられて形成されていることが好ましい。
このように形成された支持材を断熱材に取り付けるには、支持材の主面部の隙間部に隙間部に断熱材の辺縁部を挿入し、挿入された断熱材の辺縁部に重なる前記主面部の突片部と下側面部を固着具で留め付けることにより、断熱材の辺縁部に支持材を固定して行うことができる。
この場合、前記断熱材の辺縁部、突片部及び主面部の下側面部を一体に留め付ける固着具は、タッピングネジではその表面に露出する角部が断熱材に接触して傷をつける虞があり、また、取り付け操作に手間がかかることから、リベットを用いて前記各部を締結することが好ましい。
これによれば、金属部材で断熱材の辺縁部を連結した態様では、相対して配置した二つの金具の間に断熱材の辺縁部を挟み込み、挟み込んだ部分を固着具で締結して連結するのが通常であるが、本発明では支持材を押出成形により形成し、断熱材の辺縁部が挿入される隙間部が一体成形により設けてあるので、金属部材の態様のものよりも連結に用いる部材が少なくなり、連結作業も簡易に行え、また、連結部分が破損するリスクも少なく、断熱帯の組み立てに要するコストを抑えることが可能である。
また、断熱帯を間隙に取り付けたときに、前記軟質又は半硬質に成形された支持材の主面部の下側面部に形成された湾曲凹面部が、断熱材の内側表面に柔らかく接して断熱材を躯体の端部内面側へ押圧するが、この押圧された部分とは反対側の断熱材の外側表面が躯体端部内面に押圧されて接していると、断熱材に傷をつける虞がある。よって、前記断熱材が留め付けられた突片部背面から前記湾曲面部で躯体の端部内面側へ押圧される断熱材の端部に亘る部分には、緩衝材としての発泡樹脂片が取り付けられていることが好ましい。発泡樹脂片は、例えばポリエチレンフォームにより成形することができ、その取り付け手段には、例えば両面粘着テープを用いることができる。
【0015】
また、前記構成の断熱帯において、支持材をその取り付け面部の主面部に対する屈曲角度を鋭角に設けて形成し、躯体の端部取り付け面に前記取り付け面部を固定したときに、間隙内に配置された前記主面部と前記取り付け面に固定された前記取り付け面部の交差角度が広がり、この変形により生ずる弾性力より、当該主面部がその背面側に接続された断熱材を間隙に面した躯体の端部内面側へ押圧するように設けられていることが好ましい。
これによれば、断熱帯を間隙内に設置したときに、支持材の主面部が断熱材を躯体の端部内面側へ押圧して断熱材を間隙内面に沿って拡張することで、間隙の断熱効果を高めることができる。前記の通り、支持材の主面部の端部に湾曲凹面部が設けてあり、この湾曲凹面部が断熱材の表面に広く接して押圧するので、押圧によって断熱材の表面に傷がつくようなことはない。
【0016】
また、本発明のエキスパンションンジョイントは、前記構成の断熱帯が、間隙を挟んで対向する躯体間に架設された構成を有することを特徴とする。
前記のとおり、支持材を軟質又は半硬質に成形することで、所望の幅で長さ方向に沿って容易に切断することが可能であり、床や壁、天井、これらのコーナー部の取り合いなどの各部に設置されるエキスパンションジョイントの間隙に対応して設置することが可能である。
【0017】
また、断熱帯は、間隙を挟んで向き合う躯体にそれぞれ取り付けられた支持材の少なくとも一方が、断熱材の長手側辺部に接続する接続部が背面側に設けられた主面部を含んで形成された間隙側部材と、躯体端部の取り付け面に重なって取り付けられる取り付け面部を含んで形成された躯体側部材からなり、前記間隙側部材が、躯体間隙長さ方向に沿って変位し得るように躯体側部材に取り付けられた構成としてもよい。
このように、支持材が躯体に固定される躯体側部材と、断熱材の端部が接続される間隙側部材からなり、間隙側部材が躯体側部材に間隙長さ方向に沿ってスライド変位し得るように取り付けられていれば、地震が起きて間隙を挟んで相対する躯体同士が間隙長さ方向沿って大きく変位しても、これに追随して支持材の間隙側部材がスライド変位することで、断熱帯を構成する断熱材と支持材が捻じれたり躯体との取り付け部に応力が集中して破損したりすることを防ぎ、当初の設置状態を維持することが可能である。
【0018】
本発明のエキスパンションジョイント用の断熱帯によれば、幅の狭い間隙にも設置することが可能であり、間隙を通した伝熱を遮断して、高い断熱効果を発揮することが可能である。
また、断熱材が間隙の幅よりも十分に長く略U字形に湾曲乃至屈曲して形成されているので、間隙の両側の躯体が相対変位したときは、変位方向に沿って断熱材が変形することで変位を吸収し、当初の設置状態を維持することが可能である。なお、断熱材の支持材が取り付けられた部分は、一面に支持材の湾曲凹面部が広く接し、他面に発泡樹脂片が取り付けてあるので、間隙の両側の躯体が相対変位して断熱材が変位方向に沿って変形しても、前記取り付け部に応力が集中することはなく、傷や破損が発生しにくい。
また、躯体が間隙長さ方向に沿って相対変位した場合、合成樹脂製の支持材が弾性変形することで、或いは略U字形の断熱材のたるみ長さによる撓みよって変位を吸収し、さらに、支持材が躯体側部材と間隙側部材とにより形成され、間隙側部材が躯体側部材に間隙長さ方向に沿ってスライド変位し得るように設けられていれば、躯体同士が間隙長さ方向沿って大きく変位しても、これに追随して支持材の間隙側部材がスライド変位することで躯体の変位を吸収し、設置状態を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の断熱帯が設置されたエキスパンションジョイントの一実施形態の概略構成を示した断面図である。
図2図1の断熱帯を構成する断熱材の一部を破断して示した外観図である。
図3図1の断熱帯を構成する支持材の要部外観図である。
図4図3の支持材の拡大端面図である。
図5図1の断熱帯の間隙に設置する前の端面図である。
図6図5の支持材と断熱材を接続した部分の拡大断面図である。
図7図1の断熱材が取り付けられた部分を拡大して示した構成図である。
図8】本発明の他の形態の断熱帯の間隙に設置する前の端面図である。
図9図8の断熱帯を構成する断熱材の要部外観図である。
図10】さらに他の形態の断熱材の要部外観図である。
図11】本発明の断熱帯が設置されたエキスパンションジョイントの他の実施形態の概略構成を示した断面図である。
図12図11の断熱帯を構成する支持材の躯体側部材の端面図である。
図13図11の断熱帯を構成する支持材の間隙側部材の端面図である。
図14図11の断熱帯の支持材と断熱材を接続した部分の拡大端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明の技術的思想は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は本発明の一実施形態のエキスパンションジョイントを示している。このエキスパンションジョイント1は、建物の屋内の床や壁面、天井、屋外の屋根や外壁などの中に設けられた間隙Gに沿って設けられ、間隙Gを隔てて相対する躯体Aの躯体面Waと躯体Bの躯体面Wbの間にカバー材2を架け渡して間隙Gを覆うとともに、間隙G内に断熱帯4を設置して構成されたものである。同図中、符号Wはエキスパンションジョイント1の取り付け面、符番9は補助シートを示している。
【0022】
詳しくは、カバー材2は、間隙Gに臨む両躯体A,Bの端部に当該間隙Gに沿って取り付けられたホルダー材3,3で支持され、地震などで躯体A,Bが相対変位して間隙Gの伸縮やずれが生じたときに、前記変位に追従してホルダー材3,3上でカバー材2の支持位置が相対移動することで変位を吸収して、間隙Gを覆った状態が維持されるように構成してある。
【0023】
断熱帯4は、間隙G内に設置される断熱材5の両長手側辺の端部に、断熱材5を両躯体A,Bに架設するための支持材6,6を一体に取り付けて構成してある。
【0024】
断熱材5は、グラスウールなどのコア材をフィルムで包装した真空断熱材である。真空断熱材は、10mm程度の厚みで方形板状に形成されており、その周辺部、又は対向二側辺部には、コア材を封止したフィルムの重合止着部である辺縁部51を突出させて形成されている。
本形態では、短手幅の長さが前記間隙Gの幅よりも十分に大きな長尺な真空断熱材を、図2に示されるように、その短手幅方向に沿って略U字形に湾曲させて形成したものを断熱材2として用いている。
【0025】
支持材6は、塩化ビニル樹脂を用いて押出成形により軟質又は半硬質で長尺に形成されており、図3及び図4に示されるように、前記断熱材5の辺縁部51が接続される接続部が背面側に設けられた主面部61と、主面部61の上端から前記背面側へ屈曲した取り付け面部62を備えた形状に設けてある。
【0026】
より詳しくは、支持材6の主面部61は、その面内に当該主面部61の下側面部61bをその上側面部61aよりも前方に張り出させた段部63を設け、この段部63の下側に下方へ突出した突片部64を設けて、この突片部64と前記主面部61の下側面部61bとの間に、断熱材5の辺縁部51が挿入されて接続される隙間部65を設けて形成してある。また、主面部61の下側面部61bはその下部が前方斜め下方へ張り出し、その端部には後方の背面側へ膨らんだ湾曲凹面部66を設けてあり、前記突片部64の上部には背面側へ突出した突起67を設けてある。
【0027】
また、支持材6は、その取り付け面部62の主面部61に対する屈曲角度を鋭角(約60°)に設定して形成してあり、後述するように、支持材6を躯体A,Bの端部に取り付けるときに、自身の弾性により、主面部61と取り付け面部62の交差角度を広げた状態で取り付けられるようになっている。
また、前記主面部61、取り付け面部62及び突片部64の表面には、留めネジなどの固着具を螺合し又は打ち込む位置を示した凹筋68が形成してある。
【0028】
断熱材5と支持材6は、断熱帯4を設置する間隙Gの長さ方向の寸法に合わせた長さに形成されるが、間隙Gの長さ方向の寸法が大きい場合は、それよりも短尺に形成した断熱材5と支持材6を間隙Gに沿って複数継ぎ合わせて設置してもよい。
【0029】
断熱帯4の組み立ては、断熱材5の辺縁部51を前記主面部61の背面側に設けられた隙間部65に挿入し、挿入された辺縁部51を突片部64と主面部61の下側面部61bで挟み持ち、かつ前記辺縁部51に重なる突片部64と下側面部61bを、リベット7を締結して留め付けることにより断熱材5の両辺縁部51,51に支持材6,6を固定するとともに、図5及び図6に示されるように、前記断熱材51の辺縁部51が留め付けられた突片部64の背面から断熱材51の端部に亘る部分に重なるように帯状の発泡樹脂片8を両面粘着テープ(図示せず)で一体に固着することにより行うことができる。
【0030】
このように組み立てられた断熱帯4の間隙Gへとの取り付けは、略々U字形に湾曲した断熱材5が間隙G内に没入するように配置し、間隙Gに面した両躯体A,Bの端部の取り付け面にそれぞれ支持材6,6の取り付け面部62,62を重ねて支持材6,6を間隙Gの両側に沿って配置した状態で、カバー材2を支持するホルダー材3,3を取り付け面部62,62に重ね、その上からアンカーボルト10を躯体A,Bの取り付け面に打ち込んで固定することにより行うことができる。
このとき、支持材6の主面部61が間隙G内に、取り付け面部62が躯体A,Bの取り付け面に配置されることにより、図7に示されるように、主面部61と、これに鋭角に屈曲していた取り付け面部62の交差角度が広がるため、取り付け面部62が固定された状態で、主面部61には躯体A,Bの端部内面側へ押圧する弾性力が作用し、その背面側に取り付けられた断熱材5の表面は湾曲凹面部66で押圧されて、断熱材5は間隙G内面に沿って拡張される。これにより、間隙G内は断熱材5ですっぽりと覆われて断熱効果を高めることができる。なお、断熱材5の前記湾曲凹面部66で押圧された面と反対側の面、つまり間隙G内面側の面には発泡樹脂材8が設置してあり、これが間隙G内面との間で緩衝材として機能するため、押圧により断熱材5の表面に傷がつくようなことはない。
【0031】
図8は本発明の他の実施形態の断熱帯4を示しており、これは、図9に示されるように、真空断熱材からなる断熱材5を断面略U字形に屈曲させて形成し、前記と同様に、これに支持材6,6を取り付け、さらに発泡樹脂片8,8を接着して形成したものである。
また、図10に示されるように、断面U字形状に形成された断熱材5を用いてもよい。
【0032】
本発明のエキスパンションジョイント用の断熱帯4によれば、幅の狭い間隙Gにも設置することが可能であり、間隙Gを通した伝熱を遮断して、高い断熱効果を発揮することが可能である。
【0033】
図11は本発明の他の実施形態のエキスパンションジョイントを示している。
このエキスパンションジョイント1は、前記図1に示されたものと同様に、建物に配された間隙Gを覆うように躯体A,Bの躯体面Wa,Wb間にカバー材2を架け渡すとともに間隙G内に断熱帯4を設置したものであるが、断熱帯4をその断熱材5の一方の端部に前述の支持材6、他方の端部に躯体側部材6A1とこの躯体側部材6A1にスライド自在に接続する間隙側部材6A2からなる支持材6Aを取り付けて設置した構成のものである。
【0034】
詳しくは、支持材6Aは、躯体Aに固定される躯体側部材6A1と、一側に断熱材5が接続される接続部、他側に躯体側部材6A1との接続部が有する間隙側部材6A2からなり、ともに支持材6と同様に、塩化ビニル樹脂を用いて押出成形により軟質又は半硬質で長尺に形成してある。
【0035】
躯体側部材6A1は、図12に示されるように、間隙Gに面した躯体Aの縁辺に重なる基部6A11の上部に背面側へ屈曲した取り付け面部6A12を設け、下部に端部を正面側へ略U字形に折り返した係合部6A13を設けるとともに、係合部6A13よりも若干上方に基部6A11から正面側へ適宜な幅で突出し、かつ端部を下方へ屈曲して係合部6A13よりも下側に突出させてなる下折れ面部6A14を設けて形成してある。
取り付け面部6A12を基部6A11に対して鋭角に屈曲させて設けてあり、躯体Aの端部に躯体側部材6A1を取り付けるときに、自身の弾性により、基部6A11と取付け面部6A12の交差角度を広げた状態で取り付けられる点は、前記支持材6と同様である(図14参照)。また、下折れ面部6A14も基部6A11の前方へ突出した端部から下方へ鋭角に屈曲させて設けてあり、間隙側部材6A2を接続するときに、下折れ面部6A14の端部を広げることで後述する間隙側部材6A2の係合部6A22を係合部6A13に係合させることが可能となり、係合させた状態で間隙側部材6A2の主面部6A21の下部表面に下折れ面部6A14が弾圧接するようになっている(図14参照)。
【0036】
間隙側部材6A2は、図13に示されるように、断熱材の辺縁部51が接続される接続部が背面側に設けられた主面部6A21の上部に端部を背面側へ略下向きU字形に折り返した係合部6A22を設け、その前面側の面内に前方へ張り出した段部6A23を設けるとともに、この段部6A23の下側に下方へ突出した突片部6A24を設けて、この突片部6A24と前記主面部61の段部6A23よりも下側の部分との間に、断熱材5の辺縁部51が挿入されて接続される隙間部6A25を設けて形成してある。また、主面部6A21の下端部には背面側へ膨らんだ湾曲凹面部6A26を設けてあり、前記突片部6A24の上部には背面側へ突出した突起6A27を設けてある。
【0037】
間隙側部材6A2は、躯体Aに取り付けられた躯体側部材6A1の係合部6A13に係合部6A22を凹凸係合させることで躯体側部材6A1に接続し、間隙側部材6A2の主面部6A21の表面に躯体側部材6A1の下折れ面部6A14が弾圧接して係合状態が保持されるとともに、係合したまま躯体側部材6A1の長手方向に沿ってスライド変位し得るようになっている。
【0038】
支持材6Aを断熱材5に取り付けるには、先ず、断熱材5の一方の辺縁部51を、間隙側部材6A2の主面部6A21の背面側に設けられた隙間部6A25に挿入して突片部6A24と主面部6A21の下側部で挟み持ち、リベット7を締結して留め付け、さらに、断熱材51の辺縁部51が留め付けられた突片部6A24の背面から断熱材51の端部に亘る部分に重なるように帯状の発泡樹脂片8を一体に固着し、次いで、間隙側部材6A2をその係合部6A22を躯体側部材6A1の係合部6A13に係合させて躯体側部材6A1に接続することにより行うことができる。そして、断熱材5の他方の辺縁部51に支持材6を取り付けることで断熱帯4が組み立てられる。
【0039】
断熱帯4の間隙Gへとの取り付けは、略々U字形に湾曲した断熱材5が間隙G内に没入するように配置し、間隙Gに面した躯体Aの端部取り付け面に支持材6Aの躯体側部材6A1の取り付け面部6A12、躯体Bの端部の取り付け面に支持材6の取り付け面部62をそれぞれ重ね。、その上からアンカーボルト10を躯体A,Bの取り付け面に打ち込むことにより行うことができる。
【0040】
本形態における断熱帯4によれば、躯体Aの端部に沿って断熱材5を支持する支持材6Aが、躯体側部材6A1と間隙側部材6A2からなり、間隙側部材6A2が間隙Gの長さ方向である躯体側部材6A1に沿ってスライド変位し得るように取り付けてあるので、地震が起きるなどして間隙Gを挟んで相対する躯体A,B同士が間隙Gの長さ方向沿って変位しても、これに追随して支持材6Aの間隙側部材6A2が躯体側部材6A1に沿ってスライド変位することで、断熱帯4を構成する断熱材5と支持材6及び支持材6Aが捻じれたり躯体A,Bとの取り付け部に応力が集中したりすることを抑制或いは緩和し、間隙Gの長さ方向に沿った躯体A,Bの変位による破損の発生を防いで当初の設置状態を維持することが可能である。
【0041】
なお、図示した断熱帯4とエキスパンションジョイント1の構成は、本発明の実施形態の一例を示すものであり、本発明はこれに限定されず、他の適宜な形態で構成することが可能である。断熱材5として真空断熱材を用いたが、コア材の表面がフィルムで包装されたパッケージ型の帯状の断熱材であって、真空断熱材と同等の断熱性能を有し、かつ同等の厚みに形成されるものであれば、他の適宜な断熱材を真空断熱材に代えて用いてもよい。断熱材5を間隙G内に支持する支持材6,6Aも他の適宜な形態に設けることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 エキスパンションジョイント、2 カバー材、3 ホルダー材、4 断熱帯、5 断熱材、51 辺縁部、6,6A 支持材、61 主面部、62 取り付け面部、63 段部、64 突片部、65 隙間、66 湾曲凹面部、6A1 躯体側部材、6A2 間隙側部材、7 リベット、8 発泡樹脂材、A,B 躯体、G 間隙、W 取り付け面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14