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特許7194439大きいエリアのコンフォーマル堆積能力を有するコールド・スプレー装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】大きいエリアのコンフォーマル堆積能力を有するコールド・スプレー装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 24/04 20060101AFI20221215BHJP
   B05B 7/14 20060101ALI20221215BHJP
   B05B 7/16 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C23C24/04
B05B7/14
B05B7/16
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019520610
(86)(22)【出願日】2017-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 US2017056766
(87)【国際公開番号】W WO2018075395
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-04-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】15/295,050
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511000957
【氏名又は名称】ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF MICHIGAN
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モハンティー、プラバンス エス.
(72)【発明者】
【氏名】バラダラージャン、ビクラム
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】池渕 立
【審判官】羽鳥 友哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-513029(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0080599(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C24/00
B05B7/14
B05B7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子のコーティングを基板に塗布するためのコールド・スプレー装置であって、前記コールド・スプレー装置は、
複数の内側通路を有するノズル・アッセンブリであって、前記内側通路のそれぞれは、ノズル・エントランス、ノズル出口、収束セクション、発散セクション、および、前記収束セクションと前記発散セクションとの間のスロート部を含み、前記複数の内側通路のそれぞれは、前記ノズル・エントランスに隣接する前記収束セクションから、スロート部を通って、前記ノズル出口に隣接する前記発散セクションへ、フロー方向に延在しており、前記複数の内側通路は、前記ノズル・アッセンブリから外への共通の出口を共有しており、前記ノズル・アッセンブリは、前記複数の内側通路のそれぞれ同士の間に壁部を含み、前記壁部のそれぞれは、前記共通の出口に向けて長手方向に延在した状態になっており、前記壁部のそれぞれは、前記内側通路のそれぞれの前記スロート部から、前記内側通路のそれぞれの終端ポイントへ延在している、ノズル・アッセンブリと、
前記ノズル・アッセンブリの前記複数の内側通路を通って流れるように、ならびに、前記複数の内側通路のそれぞれの前記収束セクション、前記スロート部、および前記発散セクションを通過することによって、前記複数の内側通路を通って加速するように、前記ノズル・アッセンブリの前記複数の内側通路へ、供給されたガスを提供するガス供給部材と、
前記複数の内側通路と直接的に連通している粒子供給部材であって、前記粒子供給部材は、前記ガス供給部材によって供給される前記ガスの中に前記粒子を流すように、および、前記ノズル・アッセンブリから外へ前記共通の出口を介して前記基板に向けて前記粒子を流し、前記基板をコーティングするように、前記粒子を前記発散セクションへ直接的に供給する、粒子供給部材であって、前記複数の内側通路のそれぞれは、前記内側通路の前記スロート部と前記内側通路の前記終端ポイントとの間の距離として、ML距離を定義し、前記ノズル・アッセンブリは、前記内側通路の前記スロート部と前記共通の出口との間の距離として、DL距離を定義し、〔(DL-ML)/DL〕*100として定義するオーバーラップが、0.5%よりも大きい、粒子供給部材と、
レーザー・ビームを放出するレーザーであって、前記レーザー・ビームは、前記供給された前記ガスを含有する前記複数の内側通路のそれぞれを通して伝送され、前記レーザーは、前記粒子の融点の下方で前記粒子を加熱し、また、前記粒子による前記基板のコールド・スプレー・コーティングを推進するように、前記基板を加熱する、レーザーと
を含む、コールド・スプレー装置。
【請求項2】
前記複数の内側通路の前記収束セクション、前記スロート部、および前記発散セクションのそれぞれは、前記内側通路の長手方向軸線に対して垂直方向におよび横断方向に交差する断面平面において、実質的に長方形になっている、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項3】
前記複数の内側通路の前記収束セクションのそれぞれは、前記内側通路の長手方向軸線に対して垂直方向におよび横断方向に交差する断面平面において、実質的に長方形になっている、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項4】
前記複数の内側通路の前記スロート部のそれぞれは、前記内側通路の長手方向軸線に対して垂直方向におよび横断方向に交差する断面平面に対して、実質的に正方形になっている、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項5】
前記複数の内側通路の前記発散セクションのそれぞれは、前記内側通路の長手方向軸線に対して垂直方向におよび横断方向に交差する断面平面に対して、実質的に長方形になっている、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項6】
前記複数の内側通路の前記発散セクションのそれぞれは、前記共通の出口の上流の位置において終端している、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項7】
前記共通の出口の幅は、実質的に、すべての前記複数の内側通路のすべてのノズル出口の幅の総和以上になっている、請求項に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項8】
前記オーバーラップは、10%よりも大きい、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項9】
前記オーバーラップは、20%よりも大きい、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項10】
前記粒子供給部材は、前記ガス供給部材によって供給される前記ガスの中に前記粒子を流すように、前記発散セクションの中で前記粒子を加速させるように、および、前記ノズル・アッセンブリから外へ前記共通の出口を介して前記基板に向けて前記粒子を退出させ、前記基板をコーティングするように、前記粒子を前記発散セクションに直接的に供給する、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項11】
前記レーザーが前記粒子の融点の下方で前記粒子を加熱することは、前記発散セクションの中および下流のみにおいて、前記レーザーが前記粒子の融点の下方で前記粒子を加熱することを含む、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項12】
前記内側通路は、実質的に真っ直ぐな長手方向軸線を有しており、前記レーザー・ビームは、前記長手方向軸線に対して実質的に平行に方向付けられており、また、前記長手方向軸線に同軸に、前記共通の出口から外へ、前記基板に向けて方向付けられている、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項13】
前記内側通路は、ノズル・エントランスを含み、前記長手方向軸線は、前記ノズル・エントランスおよび前記ノズル出口の両方を通って延在しており、前記レーザーは、前記ノズル・アッセンブリに操作可能に連結されており、前記レーザー・ビームが前記ノズル・エントランスを介して前記ノズル・アッセンブリの中へ伝送されるようになっている、請求項12に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項14】
前記コールド・スプレー装置は、圧力チューブをさらに含み、前記圧力チューブは、前記レーザーと前記ノズル・アッセンブリとの間に配設されており、前記圧力チューブは、前記複数の内側通路と流体連通しており、前記ガス供給部材は、前記ノズル・アッセンブリの前記複数の内側通路を通って流れるように、および、前記共通の出口から外へ流れるように、ガスを前記圧力チューブに供給する、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項15】
前記粒子供給部材は、前記粒子を前記複数の内側通路の中へ鋭角に導入する、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項16】
前記コールド・スプレー装置は、単一のレーザー・ビームを前記レーザーから前記ノズル・アッセンブリの前記複数の内側通路の中へ伝送する1つまたは複数の光学アッセンブリをさらに含む、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【請求項17】
前記ガス供給部材が前記ノズル・アッセンブリの前記複数の内側通路に前記ガスを供給することは、前記ガス供給部材が前記複数の内側通路に前記ガスを選択的に供給することを含む、請求項1に記載のコールド・スプレー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2016年10月17日に出願された米国特許出願第15/295,050号明細書の優先権を主張し、それは、2010年12月3日に出願された米国特許出願第12/959,523号明細書の一部継続出願であり、それは、2009年12月4日に出願された米国仮出願第61/266,639号明細書の利益を主張する。上記の出願の開示のすべては、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
政府の権利
本発明は、米国海軍によって授与された付与番号N00244-07-P-0553のものでの政府の支援によって行われた。政府は、本発明に所定の権利を有している。
【0003】
本開示は、コーティングを基板に塗布するための方法および装置に関し、より具体的には、コーティングを大きいエリアに塗布するためのレーザー支援型のコールド・スプレー装置および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
この章は、本開示に関係する背景情報を提供しており、それは、必ずしも先行技術であるわけではない。また、この章は、本開示の一般的な概要を提供しており、その完全な範囲またはその特徴のすべての包括的な開示ではない。
【0005】
コールド・スプレーは、アディティブ法の一種であり、アディティブ法において、固体粒子のストリームは、キャリア・ガスによってノズルを通して基板に向けて高い速度まで加速される。粒子は、十分な運動エネルギーを有しており、基板との衝突のときに、粒子が、塑性的に変形し、冶金学的に/機械的に基板に結合し、コーティングを形成するようになっている。冶金学的な結合が好適であるが、すべての粒子は、必ずしも冶金学的な方式で結合されなくてもよい。
【0006】
粒子は、臨界速度まで加速され、コーティングが生成され得るようになっている。この臨界速度は、粒子の特性に依存し得り、また、それには及ばないものの、基板の材料(すなわち、変形可能性、形状、サイズ、温度など)に依存し得る。
【0007】
粒子の運動エネルギーが、「断熱剪断不安定性」として当技術分野で知られている現象につながる十分なレベルの熱的および歪み(機械的な)エネルギーへ変換されるときに、粒子が基板に付着するということが仮定される。所与の材料の堆積効率は、粒子の温度が所定の程度まで増加させられるにつれて増加させられ、それは、典型的に、キャリア・ガス温度を増加させることによって実現されるということが観察された。また、キャリア・ガス温度は、コールド・スプレー・プロセスにおいて典型的に使用される収束-発散ノズルを通る気体力学に影響を与える。換言すれば、すべてのものが一定のままであるときに、より高いキャリア・ガス温度は、ノズルの発散セクションの中のより高いガス速度をもたらし、そして、それは、より高い粒子速度をもたらすことが可能である。
【0008】
関連の米国特許出願第12/959,523号明細書は、レーザー・ビームをノズルに同軸に発達させることによって、(キャリア・ガス温度から独立して)ノズルの発散セクションの中の粒子温度を増加させるための方法を教示しており、そこでは、教示された長方形ノズル設計は、発散セクションの中の粒子給送方法論とともに、強化された分配、および、粒子とノズルの発散セクションの中のレーザー・ビームとの相互作用を可能にし、粒子の温度を増加させる。換言すれば、参照される関連の技術の教示は、所与のノズルに関して粒子温度および気体力学(速度)を独立して制御するメカニズムを提供した。さらに、レーザー・ビームの一部分は、また、基板へ伝送され、堆積品質を強化する。
【0009】
コーティングを堆積させるために、コールド・スプレー・ノズルは、典型的に、適切なターゲット距離を維持しながら、基板の上を横断させられる。これは、基板の上の(典型的に、ノズル出口の幅と同様の)小さいトラックに沿ったコーティングを結果として生じさせる。ノズル出口幅よりも大きいエリアを有する基板をコーティングするために、ノズルは、典型的に、ロボットなどのような運動システムの助けによって、ラスター・パターンで、基板の上を複数回走査される。ノズル出口幅は、所与の収束-発散ノズルに関する気体力学要件によって限定され、所望の粒子速度および分配を実現する。換言すれば、所与の入口部温度および圧力を伴う所与のガスに関して、収束セクション、発散セクション、および、2つのセクションを接続するスロート部の幾何学形状は、ガス・フロー挙動を決定し、そして、それは、粒子速度および粒子分布に影響を与える。より大きい基板をコーティングするために、単にノズル断面積を増加させるということは、単純ではない。実用的な用途に関して、必要な流動力学が標準的な産業機器(ガス供給部、ヒーター、パウダー・フィーダーなど)によって経済的に実現され得るように、ノズルの幾何学形状を最適化するということが推奨される。
【0010】
コールド・スプレー・プロセスに関連付けられる1つの特定の困難性は、下層にある基板表面の上の欠陥から生じる。表面が、2つのコーティング・パス(トラック)の間のギャップまたはうねりなどのような、不完全状態を有しているときに、非連続性/不完全状態は、コーティングが積層するにつれて後続の層の中に発達し続ける可能性がある。したがって、単一パスにおいてより厚い層を構築すること(それは、最終的なコーティングの中のうねりの前兆になる可能性がある)は推奨されない。さらに、変化する表面積を有する円形/円錐形状の物体をコーティングしている間に、コーティング質量が著しく変化するので、拡張的なプロセス最適化が、原点から周辺に向けての堆積厚さ、または、頂点から底面に向けての堆積厚さを管理するために必要とされる。
【0011】
上述のものから、単一のコールド・スプレー・ノズルによって、変化する表面積を有する大きい基板の上の均一なコーティングが、容易に実現されないということが明らかである。新しい方法およびデバイスが、効率的なコーティング製作のために必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以下の概要は、本開示に独自の革新的な特徴のうちのいくつかの理解を促進させるために提供されており、完全な説明であることを意図されていない。明細書全体、特許請求の範囲、図面、および要約書を全体として考慮することによって、本開示のさまざまな態様の完全な認識が得られ得る。
【0013】
コールド・スプレー装置は、複雑なツール経路最適化を必要とすることなしに、高い精度および効率によって、複雑な大きい基板をコーティングすることができ、そして、欠陥成長およびその後の仕上げの機械加工動作を排除/最小化するということが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
粒子のコーティングを基板に塗布するためのコールド・スプレー装置であって、コールド・スプレー装置は、複数のノズルを含み、複数のノズルは、アッセンブリ全体のための共通の出口において終端する内側通路を画定するそれぞれのノズルを含む、コールド・スプレー装置が提供される。また、ノズル・アッセンブリは、内側通路と連通している粒子供給部材を含む。粒子供給部材は、内側通路を通って、および、ノズルから外へ共通のノズル出口を介して基板に向けて流れて加速し、基板の上にコーティングされるように、粒子を供給する。そのうえ、それぞれのノズルは、レーザー・ビームを含み、レーザー・ビームは、内側通路を通して伝送され、共通のノズル出口を介して、基板に向けて出て行く。レーザーは、内側通路の中の粒子および基板のうちの少なくとも1つを加熱し、粒子による基板のコーティングを推進する。
【0015】
随意的に、少なくとも1つの態様において、粒子とノズルの内側通路の中のレーザー・ビームとの相互作用を強化する方法を提供し、それによって、エネルギー吸収を改善することによって、先行技術の1つまたは複数の課題を解決する方法が提供される。これは、ノズルの発散セクションの中に粒子を注入し、粒子をその中に均一に分配させ、したがって、粒子とレーザー・ビームとの相互作用を増加させることによって、レーザー・ビームの後方散乱を最小化することを含む。
【0016】
いくつかの態様では、それぞれのノズルからの粒子ストリームを実質的に均一な粒子分布密度を有する共通の粒子ストリームへと一体化し、実質的に均一な粒子性質を有する組み合わせられたストリームを基板に向けて方向付けするための方法が、堆積効率および均一性を増加させるために提供される。これは、随意的に、装置アッセンブリの共通の出口から最適な距離においてそれぞれのノズルの内側通路を終端させることを含む。
【0017】
さらなる別の態様では、複雑な基板をコーティングするための方法が提供される。これは、随意的に、コーティングまたは構築されることとなる基板の幾何学的なプロファイルを模倣する所定の共通の出口幾何学形状を有する、複数のノズルを組織することを含む。さらに、これは、随意的に、基板の上に異なったコーティング質量を実現するために、所望の量の粒子をそれぞれのノズルに供給することを含み、そして、それは、所望の幾何学的なプロファイルまたはコンフォーマリティーを発達させる。
【0018】
したがって、上述の課題を解決すること、ならびに、高い精度および効率によって複雑な基板をコーティングすることが可能になる。
【0019】
適用可能性のさらなるエリアが、本明細書に提供される説明から明らかになることとなる。この概要の中の説明および特定の例は、図示の目的だけが意図されており、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本明細書で説明されている図面は、選択される実施形態の例示目的のためだけのものであり、すべての可能な実装形態の例示目的のものであるわけではなく、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【0021】
図面は、必ずしも正確な縮尺になっているわけではなく、いくつかの特徴は、特定のコンポーネンの詳細を示すために、誇張または最小化されている可能性がある。したがって、本明細書で開示されている特定の構造的なおよび機能的な詳細は、限定するものとして解釈されるべきでなく、単に、本発明をさまざまに用いるように当業者に教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。例示的な態様は、詳細な説明および添付の図面から、より完全に理解されるようになるであろう。
【0022】
図1】本教示のいくつかの実施形態による、同軸のレーザー・ビームを伴う長方形の収束-発散ノズルの斜視図である。
図2】本教示のいくつかの実施形態、同軸のレーザー・ビームを伴う長方形の収束-発散ノズルの斜視断面図である。
図3】本教示のいくつかの実施形態による、円形ディスクの半径方向へのコーティング質量変化の概略図である。
図4】本教示のいくつかの実施形態による、同軸のレーザー・ビームを伴う長方形の収束-発散マルチノズル・アッセンブリの斜視図である。
図5A】本教示のいくつかの実施形態による、収束-発散マルチノズル・アッセンブリの平面図である。
図5B】線B-Bに沿って見た、図5Aの収束-発散マルチノズル・アッセンブリの断面図である。
図5C】線C-Cに沿って見た、図5Aの収束-発散マルチノズル・アッセンブリの断面図である。
図5D】線D-Dに沿って見た、図5Aの収束-発散マルチノズル・アッセンブリの断面図である。
図5E】線E-Eに沿って見た、図5Aの収束-発散マルチノズル・アッセンブリの断面図である。
図6】本教示のいくつかの実施形態による、収束-発散マルチノズル・アッセンブリの斜視断面図である。
図7】本教示のいくつかの実施形態による、マルチノズル・アッセンブリの収束セクションの斜視断面図である。
図8】本教示のいくつかの実施形態による、長方形の長軸に沿って見た収束-発散マルチノズル・アッセンブリの断面図である。
図9】本教示のいくつかの実施形態による、10mmのターゲット距離における粒子分布密度および速度を示すシミュレーション結果である。
図10】本教示のいくつかの実施形態による、10mmのターゲット距離における最大、平均、および最小粒子速度を示すシミュレーション結果である。
図11】本教示のいくつかの実施形態による、10mmのターゲット距離における長方形のノズル・アッセンブリの長軸に沿って粒子速度分布を示すシミュレーション結果である。
図12】本教示のいくつかの実施形態にしたがって実現される概略的なレーザー・ビーム・プロファイルを示す収束-発散マルチノズル・アッセンブリの斜視断面図である。
図13】本明細書で開示されているノズル・アッセンブリを用いるブレーキ・ローターの両側をコーティングするためのデバイス配置の斜視図である。
図14】本教示のいくつかの実施形態による、1つおよび3つのチャネルが動作させられるときの粒子速度分布および粒子分布マップを示すシミュレーション結果である。
図15】本教示のいくつかの実施形態による、別々の圧力チューブがキャリア・ガスをそれぞれの内部通路に給送することを示す、マルチノズル・アッセンブリの収束セクションの斜視断面図である。
図16】いくつかの公知の技術による、粒子がすべてのチャネルに軸線方向に注入されたときの粒子速度分布および粒子分布マップを示すシミュレーション結果である。
図17】本教示のいくつかの実施形態による、放物線出口プロファイルを備えたマルチノズル・アッセンブリの断面図である。
図18】本教示のいくつかの実施形態による、放物線表面のコンフォーマル・コーティングのためのデバイス配置の斜視図である。
図19】本教示のいくつかの実施形態による、傾斜した出口プロファイルを備えたマルチノズル・アッセンブリの断面図である。
図20】本教示のいくつかの実施形態による、円錐形状の表面のコンフォーマル・コーティングのためのデバイス配置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
対応する参照番号は、図面のいくつかの図の全体を通して、対応するパーツを示している。
【0024】
ここで、例示的な実施形態が、添付の図面を参照して、より完全に説明されることとなる。
【0025】
詳述された態様が、本明細書で開示されている。しかし、開示されている態様は、本質的に単に例示的なものに過ぎず、さまざまなおよび代替的な形態で具現化され得るということが理解されるべきである。図は、必ずしも正確な縮尺になっているわけではない。したがって、本明細書で開示されている特定の詳細は、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に、本発明の任意の態様に関する代表的な根拠として、および/または、本発明をさまざまに用いるように当業者に教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0026】
本明細書において使用されている専門用語は、単に、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、限定することは意図されていない。本明細書で使用されているように、内容が明確にそうでないことを示していなければ、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形を含むことが意図されており、「少なくとも1つの」を含む。「または」は、「および/または」を意味している。本明細書で使用されているように、「および/または」という用語は、関連の列挙された項目のうちの1つまたは複数の任意のおよびすべての組み合わせを含む。「含む(comprises)」および/もしくは「含む(comprising)」、または、「含む(includes)」および/もしくは「含む(including)」という用語は、この明細書において使用されるときに、述べられている特徴、領域、整数、ステップ、動作、エレメント、および/またはコンポーネントの存在を特定しているが、1つもしくは複数の他の特徴、領域、整数、ステップ、動作、エレメント、コンポーネント、および/または、それらのグループの存在または追加を除外しないということがさらに理解されることとなる。「または、それらの組み合わせ」という用語は、先述のエレメントのうちの少なくとも1つを含む組み合わせを意味している。
【0027】
別段の定めがない限り、本明細書で使用されているすべての用語(技術的用語および科学的用語を含む)は、この開示が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有している。一般に使用される辞書の中で定義されているものなどのような用語は、関連技術および本開示の文脈におけるそれらの意味と一貫する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されていない限り、理想化されたまたは過度に形式ばった意味で解釈されることとはならないということがさらに理解されることとなる。
【0028】
この明細書の全体を通して、刊行物が参照されている場合に、これらの刊行物の開示は、これによって、それらの全体が参照によりこの出願に組み込まれ、この発明が関係する従来技術をより完全に説明する。
【0029】
最初に図1を参照すると、関連の米国特許出願第12/959,523号明細書のさまざまな例示的な実施形態によるコールド・スプレー・ノズル・アッセンブリ10が図示されている。コールド・スプレー・ノズル・アッセンブリ10は、より詳細に下記に説明されることとなるように、粒子17のコーティングを基板に塗布するために使用され得る。
【0030】
アッセンブリ10は、実質的に真っ直ぐな長手方向軸線Xを有するノズル5を含むことが可能である。図2に示されているように、ノズル5は、軸線Xに平行に延在する内側通路22を画定することが可能である。また、内側通路22は、その反対側端部において、ノズル・エントランス22aおよびノズル出口22cを含むことが可能である(図2)。図2に示されているように、内側通路22は、ノズル・エントランス22aに隣接する収束セクション21、および、ノズル出口22cに隣接する発散セクション23を含むことが可能である。より具体的には、収束セクション21および発散セクション23の両方は、漸進的にテーパーを付けられ得る。収束セクション21は、エントランス22aから離れる方に移動して細くなっており、発散セクション23は、出口22cに向けて移動して太くなっている。収束セクション21は、発散セクション23に接続され、スロート部22bを画定している(図2)。議論されることとなるように、粒子17は、内側通路22を通って流れ、収束セクション21および発散セクション23は、通路22の中の適当な流動場を保証し、粒子17が基板(図示せず)をコーティングするのに十分な速度で移動するようになっている。
【0031】
図1に示されているように、ノズル5は、形状が実質的に長方形になっていることが可能である。より具体的には、内側通路22(図2)は、軸線Xに対して垂直にとられた実質的に長方形の断面を有することが可能である。内側通路22全体は、通路22の軸線X全体に沿って、同様の実質的に長方形の断面を有することが可能である。しかし、そのような断面の面積は、収束セクション21および発散セクション23が漸進的にテーパーを付けられていることに起因して、軸線Xに沿って変化することとなるということが明らかになることとなる。また、内側通路22および出口22cは、代替的に、正方形形状を含む任意の適切な非円形形状を有することが可能であるということが認識されることとなる。
【0032】
そのうえ、図1に示されているように、ノズル5は、1つまたは複数の粒子供給入口部13a、13bを含むことが可能である。ノズル5は、任意の数の入口部13a、13bを含むことが可能であり、入口部13a、13bは、随意的に、任意の適切な場所に配設され得る。図1に示されている好適な実施形態では、軸線Xの反対側に対称的に配設されている2つの入口部13a、13bが存在している。粒子供給入口部28a、28b(図2)は、軸線Xに対して横断方向にそれぞれ延在することが可能である。たとえば、粒子供給入口部28a、28bは、軸線Xに対してプラスの鋭角に、一般的に出口22cに向けてそれぞれ配設され得る。さらに、アッセンブリ10は、粒子供給部材(図示せず)を含むことが可能である。粒子供給部材は、入口部28a、28bを介してノズル5の内側通路22と(流体)連通していることが可能である。たとえば、粒子供給部材は、1つまたは複数のチューブを含むことが可能であり、1つまたは複数のチューブは、それぞれ、入口部28a、28bの中に受け入れられ、入口部28a、28bに操作可能に連結されている。したがって、議論されることとなるように、粒子17は、供給部材から供給され、入口部28a、28bを通って、内側通路22を通って、および、ノズル出口22cから外へ基板に向けて流れ、粒子17によって基板をコーティングすることが可能である。
【0033】
図1に示されているように、アッセンブリ10は、ガス供給部材14を含むことが可能である。ガス供給部材14は、ガス供給源(図示せず)と流体連通していることが可能である。ガス供給源は、ノズル5の内側通路22を加圧するために、任意の適切なガスを供給することが可能である。そのうえ、アッセンブリ10は、レーザー供給源16を含むことが可能である。レーザー供給源16は、公知のタイプのダイオード・レーザーなどのような、任意の適切なタイプのものであることが可能である。レーザー供給源16は、随意的に、光ファイバー・ケーブル15および少なくとも1つまたはそれ以上の(たとえば、ここでは、3つが示されている)光学エレメント25a、25b、25c(図2)を含むことが可能である。レーザー供給源16は、圧力チューブ11の第1のブランチ18に操作可能に連結され得り、軸線Xと実質的に同軸になるようになっている。議論されることとなるように、レーザー16は、レーザー・ビーム29(図2)を放出することが可能であり、レーザー・ビーム29は、ノズル5の内側通路22のエントランス22aを通して伝送され、および、ノズル5から外へ出口22cを介して基板に向けて伝送される。レーザー・ビーム29は、軸線Xに対して実質的に平行に、および、軸線Xに同軸に、基板に向けて方向付けられ得るが、内向きへのまたはX軸線から離れる方へのビーム29のいくらかの程度の広がりが、随意的に好適である可能性がある。レーザー・ビーム29は、粒子の融点の下方で粒子を加熱することが可能である。いくつかの実施形態では、レーザー・ビーム29は、発散セクション23の中および下流のみにおいて、粒子の融点の下方で粒子を加熱することが可能である。
【0034】
追加的に、アッセンブリ10は、ハンドリング・デバイスおよびプロセス・コントローラー(図示せず)をさらに含むことが可能である。ハンドリング・デバイスは、ロボット・ハンドリング・デバイスなどのような、任意の適切なタイプのものであることが可能である。コントローラーは、プログラム可能なコンピューターなどのような、任意の適切なタイプのものであることが可能である。コントローラーは、それぞれを動作させるために、レーザー供給源、ハンドリング・デバイス、ガス供給源、および粒子供給源と連通していることが可能である。また、コントローラーは、随意的に、圧力チューブ11の内側の圧力および温度に関するフィードバックを受け入れるために、圧力チューブ11と連通していることが可能である。
【0035】
ここで、本明細書で開示されているコールド・スプレー・ノズルの随意的な動作モードが注目される。コントローラーは、ハンドリング・デバイスを使用して、基板に対して所望の位置へアッセンブリ10を移動させることが可能である。コントローラーは、レーザー供給源16の動作の前および間に、ガス供給部材が内側通路22の中へおよび基板へガスを供給することを引き起こすことが可能である。レーザー16が動作し始めた後に、コントローラーは、粒子供給部材が粒子17を供給することを引き起こすことが可能である。粒子17は、内側通路22の中の臨界速度まで、または、臨界速度を超えて、ガスによって加速され得り、基板に向けて方向付けされ得る。いくつかの実施形態では、粒子17を供給する粒子供給部材は、発散セクション23へ直接的に供給され、ガス供給部材によって供給されるガスの中を流れ、発散セクション23の中で加速し、また、ノズル・アッセンブリから外へノズル出口を介して基板に向けて加速し、基板をコーティングすることが可能である。レーザー・ビーム29のエネルギーは、基板に向けての飛行の間の粒子17を加熱することが可能である。粒子17は加熱されるので、粒子17は、粒子17が基板に衝突するときに、より容易に塑性変形することが可能である。そのうえ、レーザー・ビーム29のエネルギーは、粒子17が基板に向けて噴出されるときに、基板を加熱し続けることが可能である。したがって、基板は、より容易に塑性変形することが可能である。ハンドリング・デバイスは、アッセンブリ10を連続的に移動させ、基板を所定のエリアの上において粒子17によって均一にコーティングすることが可能である。上記に説明されている動作モードは、単なる例に過ぎず、限定するものとして解釈されるべきではないということが認識されることとなる。
【0036】
関連の米国特許出願第12/959,523号明細書の教示が、実質的に長方形のノズル幾何学形状、サイド粒子注入モード、および、同軸のレーザー・カップリングを含み、先行技術と比較して予想外の利益および利点を作り出すということは注目すべきである。内側通路22(図2)の実質的に長方形の断面に起因して、および、内側通路22の発散セクションの中の短軸平面(28a、28b)に沿った適切な場所における粒子の注入に起因して、粒子17は、内側通路22を横切ってより均一に分配され得り、より均一な微粒子速度を結果として生じさせ、先行技術システムと比較したときに、基板の上の極めて均一な厚さをもたらす(さらに図9に図示されている)。均一な微粒子速度の重要性は、臨界速度の文脈において認識されるべきである。コールド・スプレーの用途において、粒子は、効果的な堆積のための臨界速度を実現しなければならないということがよく知られている。臨界速度を下回る速度を有する粒子は、ターゲットに冶金学的に結合せず、一方、臨界速度よりもはるかに高い粒子速度は、追加的な利益をまったく提供しないが、より高いエネルギーを消費する。関連の米国特許出願第12/959,523号明細書の教示は、ノズル出口を横切る均一な粒子分布、および、より低い標準偏差を有する均一な粒子速度の両方の最良の組み合わせを提供するということが認識されることとなる。そのうえ、「内側通路を通して伝送されるレーザー・ビームを放出するレーザー」を有することは、それによって、熱源としての供給ガスから独立して、追加的な熱エネルギーをノズルの中の粒子に提供する。さらに、教示されたレーザー・カップリング方法論は、漸進的な内部反射に起因してノズルの内部通路を模倣するレーザー・ビーム・プロファイルの発達を提供する。効果的なエネルギー伝達は、ノズルの発散セクションの中の均一な粒子分布、および、ビーム形状変調に起因して起こり、それは、レーザー・ビームと粒子との相互作用の最大の機会を提供する。したがって、仕上げられたパーツは、見た目により美しくなることが可能であり、他のパーツにより良好にフィットすることが可能であり、また、現場の焼鈍に起因してより良好な特性を有することが可能である。そのうえ、特許請求されている特定の組み合わせは、先行技術によって取得することができない性能の改善を結果として生じさせる。
【0037】
上記に参照された関連の米国特許出願第12/959,523号明細書の教示は、(i)粒子ストリームがターゲットに向けて出現するときの均一な粒子分布プロファイルの発達、(ii)漸進的な内部反射に起因する、長方形ノズルの内部通路を模倣するレーザー・ビーム・プロファイルの発達、(iii)均一な吸収につながる、レーザー・ビームへの粒子の均一な露出、(iv)レーザー・オプティクスに損傷を与え得る、供給源に向けてのレーザー・ビームの後方反射がないということ、および、(v)ノズル出口の断面を模倣する、ノズルから外へ出現する残存レーザー・ビームによる、コーティングされた材料の均一な処理を提供するが、コールド・スプレー・プロセスにさらに利益を与えることができるいくつかの未解決の問題が存在しているままである。この一部継続出願の開示の教示は、下記に議論されているような未解決の問題のうちの少なくともいくつかを提供する。
【0038】
ここで、図3を参照すると、ブレーキ・ローター30が、上記に説明されているコールド・スプレー・ノズル・アッセンブリ10によってコーティングされることとなる。コーティングは、ブレーキング表面31だけに塗布される必要があるということが認識されることとなる。ブレーキング表面31全体は、随意的に、望まれないエリア38をコーティングすることを回避しながら、均一なコーティング厚さを保証することとなる複雑で時間のかかるラスター・パターンに続いて、ロボットなどのようなハンドリング・デバイス(図示せず)の助けによって、コールド・スプレー・ノズル・アッセンブリ10をブレーキング表面31にわたって移動させることによってコーティングされ得る。代替的に、ローターの回転運動とノズル・アッセンブリの段階的な半径方向の運動との組み合わせは、より簡単で時間のかからないものであることが可能である。所与のコーティング厚さに関して、コーティング・セグメント32、34、および36の質量が著しく変化することとなるということが認識されるべきである。ノズルは一度に小さいトラックしかコーティングすることができないので、所与のトラックにおけるノズルの効果的な滞留時間は、コーティング厚さを均一に維持するために、それが半径方向に沿って段階的に移動するにつれて、かなり変化することとなる。さらに、所望のコーティング厚さは、単一のパスで実現されなくてもよい。その理由は、それが、連続するトラックの間にうねりを残す傾向があることとなるからである。コールド・スプレーにおいて、下層にあるうねり/欠陥は、コーティングが積層するにつれて成長し続ける。要約すれば、拡張的なプロセス最適化が、パーツ30の上の均一なコーティングを実現するために必要となることとなり、それは、依然として、欠陥のあるコーティング、および、かなりの量の仕上げの機械加工の必要性を回避することができない。とりわけ、欠陥の成長は、そのような大きい表面をコーティングする間に問題がある。
【0039】
ここで図4を参照すると、マルチノズル・コールド・スプレー装置40が開示されており、マルチノズル・コールド・スプレー装置40は、より詳細に下記に説明されることとなるように、基板46全体を横切って粒子45の均一なコーティングを塗布することが可能である。粒子ストリーム45の幅は、随意的に、基板46の幅と同一になっていることが可能であるが、しかし、それは、均一なコーティングを保証するに十分でない可能性があるということが認識されることとなる。他の重要な粒子ストリーム性質が、均一なコーティングを保証するために必要であり、より詳細に下記に説明されることとなる。さらに、ハンドリング・デバイス(たとえば、ロボット)の助けによって、装置40は、基板46の長さに沿って横断させられ、粒子ストリーム45に面する表面全体をコーティングすることが可能である。代替的に、コーティングを実現するために、装置40を静止した状態に維持しながら、基板46が横断させられ得る。
【0040】
図4に示されているコールド・スプレー装置40の例示的な実施形態は、ノズル・アッセンブリ44を含み、ノズル・アッセンブリ44は、実質的に真っ直ぐな長手方向軸線Xを有しており、複数の内部通路をさらに含む。内部通路の数は、少なくとも2つであることが可能であり、随意的に、必要とされるコーティングの幅、および、内部通路の幾何学的な性質に応じて、3つ、4つ、5つ、6つ、または多数であることが可能である。追加的に、これらの内部通路の幾何学的な性質は、大部分において、好適な実施形態22(図2)を模倣している。さらに、装置40は、ガス供給部材48を含むことが可能であり、ガス供給部材48は、圧力チャンバー42と操作可能に連通しており、また、装置40は、複数の粒子供給部材43aから43fを含むことが可能であり、複数の粒子供給部材43aから43fは、ノズル・アッセンブリ44の内部通路と操作可能に連通している。異なる場所において軸線Xに対して横断方向にとられた装置40の断面図(図5A)が、図5B図5Eに提供されている。圧力チャンバー42に隣接してとられた断面57は、テーパーを付けられた5つの入口部58a、58b、58c、58d、および58eを示している。さらに、断面55は、5つの通路56a、56b、56c、56d、および56eを含み、5つの通路56a、56b、56c、56d、および56eは、断面57に示されている入口部よりも実質的に小さくなっている。追加的に、内部通路(54a、54b、54c、54dおよび54e)の断面積は、断面53に示されているように、出口49に向けてサイズが漸進的に増加している。そのうえ、ノズル出口49に隣接して、1つだけの実質的に大きい通路52が存在しており、それは、上記に図示されているすべての通路の融合から結果として生じている。
【0041】
ノズル・アッセンブリ44のさらなる詳細が、図6に示されており、図6は、マルチノズル装置40の対称平面に沿ってとられた断面図60である。内側通路64a、64b、64c、64d、および64eは、軸線Xに対して実質的に平行に延在している。これらの通路は、随意的に、互いに同様になっていることが可能であるが(必ずしも同じであるわけでない)、しかし、ここで示されている好適な実施形態では、それらは、随意的に同一に維持されている。その精神において、1つだけの通路64aのさらなる詳細が、下記に議論されており、また、すべての他の通路(64b、64c、64d、および64e)が同様の性質を所有するということが理解される。内側通路64aは、その反対側端部において、ノズル・エントランス62aおよびノズル出口66aを含むことが可能である。図7に示されているように、内側通路64aは、ノズル・エントランス62aに隣接する収束セクション72aと、ノズル出口66aに隣接する発散セクション75aとを含むことが可能である。より具体的には、収束セクション72aおよび発散セクション75aの両方は、漸進的にテーパーを付けられ得る。収束セクション72aは、エントランス62aから離れる方に移動して細くなっており、発散セクション75aは、出口66aに向けて移動して太くなっている。収束セクション62aは、発散セクション75aに接続され、スロート部73aを画定している(図7)。粒子は、内側通路64aを通って流れ、収束セクション72aおよび発散セクション75aは、通路64aの中の適当な流動場を保証し、粒子が、共通のノズル・アッセンブリ出口67に進入する前に、十分な速度で移動するようになっている。それぞれの内側通路は、共通の圧力チャンバー61からの加速するキャリア・ガスを受け入れることが可能であり、または、随意的に、圧力チャンバーは分離され得る。
【0042】
追加的に、それぞれの内側通路は、複数の粒子供給入口部を含むことが可能である。内側通路は、任意の数の入口部を含むことが可能であり、入口部は、随意的に、任意の適切な場所に配設され得る。図7に示されている好適な実施形態では、通路の反対側に対称的に配設されている、内部通路64aのための2つの入口部74a、74bが存在している。粒子供給入口部74a、74b(図7)は、軸線Xに対して横断方向にそれぞれ延在することが可能である。たとえば、粒子供給入口部74a、74bは、軸線Xに対してプラスの鋭角に、一般的に出口66a(図6)に向けてそれぞれ配設され得る。さらに、アッセンブリ40は、粒子供給部材(図示せず)を含むことが可能である。粒子供給源は、粒子供給部材43aから43fを介してノズルの内側通路と(流体)連通していることが可能である。たとえば、粒子供給部材は、1つまたは複数のチューブを含むことが可能であり、1つまたは複数のチューブは、入口部の中に受け入れられ、入口部に操作可能に連結されている。したがって、議論されることとなるように、粒子45は、供給源から供給され、入口部74a、74bを通って、内側通路64aを通って、および、ノズル出口66aから外へ基板に向けて流れ、粒子45によって基板をコーティングすることが可能である。
【0043】
そのうえ、装置アッセンブリ40は、レーザー供給源41を含むことが可能である。レーザー供給源41は、公知のタイプのダイオード・レーザーなどのような、任意の適切なタイプのものであることが可能である。ノズル・アッセンブリ44のそれぞれの内側通路は、随意的に、レーザー・ビームを含むことが可能である。レーザー供給源41は、随意的に、光ファイバー・ケーブル47を含むことが可能である。図6に示されている好適な実施形態では、ファイバー65は、供給源(図示せず)から1つのレーザー・ビームを取り入れ、1つのレーザー・ビームは、随意的に、半透明のミラー・アッセンブリ68aを通して複数のレーザー・ビームへとスプリットされ得る。半透明のミラー・アッセンブリは、レーザー・ビームの所望の割合がそれぞれのミラーを通して伝送されることを可能にし、軸線Xの実質的に平行の方向に残りの割合を反射する、任意の公知のタイプのものであることが可能である。その後に、レーザー・ビームのそれぞれの反射された割合は、少なくとも1つまたは複数の(たとえば、ここでは2つが示されている)光学エレメント(たとえば、レンズ)アッセンブリ68b、68c(図6)を通して処理される。レーザー供給源41は、圧力チューブ42の第1のブランチ69(図6)に操作可能に連結され得り、すべてのレーザー・ビームを軸線Xと実質的に同軸に維持するようになっている。それを通るレーザー・ビーム伝播についてのさらなる詳細が、下記に提供されることとなる。
【0044】
ここで図8を参照すると、装置アッセンブリ80のそれぞれの内側通路は、随意的に、出口83から離れるように85において終端することが可能である。便宜上、内側通路のスロート部81(発散セクション)から終端ポイント85の間の距離は、MLとして定義され、内側通路のスロート部81から出口83への距離は、DLとして定義される。それぞれの内側通路の発散角度は、軸線X方向への内側通路の漸進的なテーパーを維持するために、一定のままであることとなるが、しかし、それぞれの内側通路の投影された出口幅82は、DLに依存することとなるということが認識されることとなる。さらに、装置アッセンブリ80の合計最大開口部幅87は、すべてのチャネルの投影された出口幅82の総計であることとなる。さらに、ノズル・オーバーラップという用語が、[(DL-ML)/DL]*100として定義されている。MLがDLに等しいときには、すなわち、それぞれの内部通路が出口83において終端するときには、0%オーバーラップを結果として生じる。それぞれの内部通路同士の間の壁部は、有限の寸法を有することとなり、したがって、0%オーバーラップを有するノズル・アッセンブリを製作することは実用的に困難であるということが認識されることとなる。たとえば、仮に、複数の個々のノズル・アッセンブリ10(図1)が物理的に接合されたとすれば、それは、MLがDLよりも大きいという状況をもたらすこととなり、マイナスのオーバーラップを結果として生じさせる。図8に示されている好適な実施形態80では、オーバーラップは、随意的に、0.5%から50%の間にあることが可能である。微粒子性質に対するオーバーラップの影響、および、結果として生じるコーティングは、より詳細に下記に議論されることとなる。
【0045】
本発明の教示の特定の利益を実証するために、異なるオーバーラップ・パーセンテージに関するフロー・シミュレーションが、下記に提示されている。シミュレーションは、フロー・シミュレーション・ソフトウェアFluent 16.0を用いて実施された。以下の条件(典型的に我々のプロセスにおいて使用される)が、それぞれのシミュレーション・ケースにおいて用いられた:ガス圧力-500psi、ガス温度-600℃、パウダー・フィード・レート-内側通路当たり30g毎分、粒子サイズ-15μm、材料-スチール、DL-10.9インチ、および発散角度(82)-1.905度。さらに、フロー・シミュレーションに関して、連結された圧力速度、ならびに、密度および運動量に関する迅速離散化を備えた、レイノルズ応力モデルが用いられた。追加的に、確率的トラッキングを備えたDPMの粒子注入スキーム(ランダム・ウォーク・モデル)が採用された。そのうえ、関連の米国特許出願第12/959,523号明細書の教示は、先行技術と比較して予想外の利益および利点を作り出す、実質的に長方形内部通路、短軸平面に沿ったサイド粒子注入、および、同軸のレーザー・カップリングを含み、それは、シミュレーションの中に組み込まれた。
【0046】
図9を参照すると、異なるオーバーラップ・パーセンテージに関して、ノズル・アッセンブリ出口83(図8)から10mm離れて位置しているターゲット基板の上の粒子衝突マップ90が提示されている。さらに、対応する粒子速度の大きさも、グレー・スケール97にしたがってこのマップの上に重ね合わせられており、より明るい陰影は、より高い速度を示しており、一方、より暗い陰影は、より低い速度を示している。ここで、複数の(ここでは、5つの)ノズル10を単純に隣接させることによって実現される、-20%オーバーラップのケースを参照すると、粒子分布マップの中にかなりのギャップ92が観察される。これらのギャップは、ターゲットのそれらのエリアの上にコーティングが形成されないこととなるということを示している。さらに、ゾーン91が注目され、ゾーン91は、それらのエリアの中の粒子の極めて均一な分配を示す、粒子衝突を記録している。さらに、マップの大半におけるより明るい陰影は、また、かなりの数の粒子が、それぞれのパッチ(91)の縁部のものを除いて、より高い均一な速度を実現したということを示している。コールド・スプレー開発者コミュニティーは、従来から、最大堆積効率をもたらす粒子の最大数に関して、より高い均一な速度(ターゲットにおける粒子付着を実現するために必要とされる臨界速度を上回る)を実現することを試みてきた。さらに、一般的に、軸線方向の注入が最大粒子速度を提供すると考えられている。しかし、当業者は、通常、図2に示されているような発散セクションの中のサイド注入によって、高い粒子速度および均一な分配プロファイルを得るかなりの数の粒子を予期しないこととなる。関連の米国特許出願第12/959,523号明細書の教示は、サイド粒子注入モードとともに実質的に長方形の内部通路幾何学形状を含み、従来の知恵とは対照的な結果をもたらすということが認識されることとなる。下記に実証されることとなるように、軸線方向の注入は、そのような均一な粒子速度、および、ノズル開口部全体を横切る均一な分配を提供しない可能性がある。-20%のオーバーラップに関して、隣接する粒子の速度(より暗い陰影)が極め低くなっており、それらはターゲットと結合することを予期されないので、コーティングされていないエリア92は、粒子衝突を有しないエリアよりも多くなることが予期されるということが認識されることとなる。
【0047】
さらに、オーバーラップが0%であるときに、粒子マップは均一なカバー率を示しているが、著しく低い速度を有するゾーン93が存在しており、コーティングがそれらのエリアに形成されることとならないということが予想される。これは、図10からさらに立証され、図10は、異なるオーバーラップ・パーセンテージに関して、最大、平均、および最小の粒子速度を提供している。このプロットから見られるように、最も低い粒子速度(106)は、0%オーバーラップに関して実現される。そのうえ、10%オーバーラップによって、より低い速度を有する粒子(より暗い陰影)のかなりの低減があり、一方、20%オーバーラップにおいて、ほとんどすべての粒子が、より高い均一な速度(より明るい陰影)を示している。追加的に、30%オーバーラップにおいて、粒子速度陰影の特定の改善は観察されないが、しかし、粒子衝突ゾーンの長さが実質的に低減される。粒子衝突ゾーンの長さの重要性は、衝突する粒子が、必要とされる臨界速度および分配の均一性を有するという条件で、それが長ければ長いほど、より多くのターゲット・エリアが、装置40(図4)の単一の横断でコーティングされ得るということである。したがって、所定のポイントを超えるオーバーラップは、追加的な利益を提供することができないが、他方では、望まれない可能性のあるより厚くかつより狭いコーティングにつながる可能性がある。最適なオーバーラップ・パーセンテージに対するさらなる洞察が、図11に示されている粒子速度分布マップから得られ得る。認識されることとなるように、最良のコーティング結果に関して、すべての粒子が、堆積させられている材料の臨界速度よりも高い速度を得るということが望ましい。しかし、すべての粒子が臨界速度よりも高い速度になる状態を得ることは、実用的に困難である。換言すれば、所与のコールド・スプレー・ノズルにおいて、臨界速度を得ることができないいくつかの粒子が常に存在することとなるが、しかし、臨界速度よりも高い速度を有する最大数の粒子を提供することが、常に設計目標である。さらに、これらの粒子が粒子ストリームを横切って均一に分配され、均一なコーティングが製作され得るようになっているということも望まれる。その背景とともに、図11を参照すると、-20%オーバーラップにおいて、臨界速度112よりも高い速度を得るかなりの数の粒子が存在しているということが観察される。しかし、2つの粒子ストリーム114の間の領域では、粒子が存在せず、明らかに、コーティングがそのゾーンの中に形成されないこととなる。さらに、0%オーバーラップにおいて、臨界速度112よりも高い速度を得るかなりの数の粒子が存在しているが、しかし、2つの粒子ストリーム115の間の領域は、粒子を見ることができるが、所望の臨界速度112よりも低い速度を有している。結果として、コーティングがゾーン115の中に形成することは予期されない。それとは対照的に、10%オーバーラップにおいては、2つの粒子ストリーム116の間の領域の中に多くの粒子が存在しており、それらは、臨界速度112よりも高い速度を所有しており、その領域の中にコーティングを形成することを予期される。オーバーラップが20%まで成長するにつれて、臨界速度112よりも高い速度を有する粒子の数が、領域117の中でかなり成長し、粒子ストリームを横切る全体的に良好なコーティングが予期される。さらに、30%オーバーラップによって、粒子ストリームの幅が縮小するが、領域118の中の、臨界速度よりも高い速度を有する粒子の数は、それ以上増加しないように見えた。したがって、30%オーバーラップから、追加される利益は予期されず、他方では、それは、コーティング幅を低減させる観点から有害である可能性がある。したがって、好適なオーバーラップは、随意的に、10%から30%の間にある可能性があるが、それは、材料の臨界速度に応じて、はるかに低い可能性がある。たとえば、10のオーバーラップは、その臨界速度が112よりも実質的に低い材料に関して、領域115の中の良好な粒子の十分な数を有する可能性がある。
【0048】
ここで、図12を参照すると、レーザー供給源41は、レーザー・ビーム124aを提供することが可能であり、レーザー・ビーム124aは、ノズル44の内側通路64a(図6)のエントランス62a(図6)を通して伝送され、および、内側通路64aから外へ出口66aを介して基板に向けて伝送される。レーザー・ビーム124aは、軸線Xに対して実質的に平行に、および、軸線Xに同軸に、基板に向けて方向付けられ得るが、軸線Xに同軸に、基板に向けて方向付けられ得るが、内向きへのまたはX軸線から離れる方へのビーム124aのいくらかの程度の広がりが、随意的に好適である可能性がある。レーザー吸収は、ライン・オブ・サイト・プロセス(line of sight process)である。中央のレーザー・ビーム124aが内側通路を通過するために、レーザー・ビームは、内側通路のスロート部63a(図6)においてまたはその周りにおいて、最小寸法を実現しなければならず、それは、レーザー・ビームがスロート部の近くでの最大パワー密度(合計パワー/ビーム断面積)を実現するということを意味している。当業界で一般に実践されているように、粒子がスロート部63aを通して軸線方向に注入された場合には、粒子ストリームも、レーザー・ビームと同時にスロート部を通過しなければならない。結果として、粒子は、スロート部におけるレーザー・ビームの大部分を遮断することとなり、後方反射、ビームひずみ、および不均一な吸収につながる。後方反射は、オプティクス121a、122a、123aに損傷を与える可能性がある。本発明のスロート部を越えた(すなわち、発散セクションの中の)74aおよび74b(図7)を介したサイド注入スキームは、その焦点を越えた位置で、および、内側通路の発散セクションの中で、レーザー・ビームが粒子と相互作用することを可能にする。内側通路の発散セクションの中のレーザー・ビームの任意の散乱された割合は、スロート部63aを介してオプティクスへ戻るようには進行しないこととなる。そのうえ、スロート部を越えた内側通路の漸進的な発散、および、実質的に長方形の断面に起因して、前方散乱および複数の内部反射が推進されることとなり、内部通路を模倣するレーザー・ビーム・プロファイル125aにつながる。正味の結果は、(a)レーザー・ビームへの粒子の均一な露出(それは、均一な吸収につながる)、および、(b)供給源に向けてのレーザー・ビームの後方反射(それは、レーザー・オプティクスに損傷を与える可能性がある)がないということである。トップ・ハット分布を有する長方形プロファイルへと変換するガウシアン強度分布を有する円形ビーム断面が、粒子注入スキーム、ノズル形状、および、ノズルとのレーザー・カップリングのこの特定の組み合わせによって引き起こされる。同じ利益が、図12に示されている好適な実施形態120の中のすべての他の内部通路を通って伝送するすべての他のレーザー・ビームに生じることが可能である。共通の出口通路67(図6)は、それぞれの内部通路のように実質的に長方形の形状をとるということが認識されることとなる。出口66aを介してそれぞれの内側通路から発せられるすべての変調されたレーザー・ビームは、単一のビーム126へとさらに散乱および変調することが可能であり、単一のビーム126は、共通の出口通路67の断面プロファイルを模倣し、それによって、ノズル出口49(図4)から外へ出現する残存レーザー・ビームによる、コーティングされる材料の均一な処理を引き起こす。
【0049】
図13を参照すると、実施形態130は、ブレーキ・ローターの両方のブレーキング表面を同時にコーティングするために利用され得る。それは、2つのマルチノズル・コールド・スプレー装置134aおよび134bを含む。装置134bは、適切な場所に静止した状態で維持され、モーター138によってブレーキ・ローターを回転させながら、表面152全体を同時にコーティング136することが可能である。先に議論されているように、コーティング質量は、半径方向に沿って著しく変化することとなる。したがって、注入される粒子の質量は、装置134bの内側のチャネルから最も外側のチャネルに向けて漸進的に変化することが可能である。さらに、それぞれのチャネルを通過するビーム・パワーは、コーティングの単位質量当たり均等の熱エネルギーを提供するように、漸進的に変化することが可能である。これは、レーザー供給源41(図12)の中に使用されている適当な光学エレメントによって実現され得る。したがって、ラスター・マークおよび関連の欠陥のない均一なコーティングが、迅速に製作され得る。
【0050】
マルチノズル・コールド・スプレー装置40は、ラスター・パターンおよび欠陥なしに大きいエリアをコーティングすることが可能であるが、それは、また、単一のノズル10によって取得され得るものと同様のコーティングを製作するために使用され得る。図14は、装置40が異なるモードで動作されたときの、シミュレートされた粒子分布マップ、および、対応する粒子速度分布マップを提示している。10%オーバーラップが、これらのシミュレーションにおいて考えられた。粒子およびキャリア・ガスが1つの内部通路だけの中に注入されたときに(それは、1つの単一のノズル10を動作させることと同等である)、粒子分布マップ145が取得された。単一のチャネル・モードで装置を走らせるために、キャリア・ガスは、内部通路が共通の圧力チャンバー71からキャリア・ガスを受け入れるので使用中でないチャネルを通って流れ続けることとなるということが認識されることとなる。代替的に、圧力チャンバー71は、それぞれの内部通路に別々に給送するために分離され得る。図15を参照すると、内部通路64aは、随意的に、圧力チューブ151aからキャリア・ガスを受け入れることが可能であり、圧力チューブ151aは、壁部152aによって近隣の圧力チューブから隔離されている。ノズル・アッセンブリ40の対称的な半分の部分150の部分図だけが、図15に示されているということが認識されることとなる。さらに、圧力チューブ151aは、制御弁153aを介してガス供給源と流体連通している。したがって、それぞれの内部通路(図6の64a、64b、64c、64d、および64e)は、随意的に、その対応する圧力チューブからキャリア・ガスを受け入れることが可能であり、その対応する圧力チューブは、壁部によってその近隣の圧力チューブから隔離されている。さらに、それぞれの圧力チューブは、その対応する制御弁を介してガス供給源と流体連通している。粒子およびキャリア・ガスが3つの隣接する内部通路だけを通して注入すされるときに、粒子分布マップ144(図14)が取得された。対応する粒子速度分布が、マップ143および142に提示されている。見ることができるように、粒子分布マップに対する共通の出口ノズル67(図6)の影響(すなわち、コーティングの幅)は、重大ではない。すべての5つの内部通路にキャリア・ガスを供給するが、3つの隣接する内部通路だけに粒子を給送することによって、さらなるシミュレーションが実施された。マップ141において見られるように、臨界速度146を上回る速度を所有する粒子の数が著しく増加した。しかし、粒子分布マップは、著しく144と異なることはなかった。したがって、材料堆積効率は、このモードにおいて、著しく増加され得る。
【0051】
先に議論されているように、軸線方向の注入は、この開示の中に提供されるようなサイド注入と比較して、より高い粒子速度を提供すると考えられる。粒子速度および分配に対するマルチノズル・コールド・スプレー装置40への軸線方向の粒子注入の影響を実証するために、上記に説明されている手順を利用するシミュレーションが実施された。ここで、図16を参照すると、ターゲット粒子分布マップ160’は、多くの粒子を伴うゾーン161と、わずかな粒子を伴うゾーン162とから構成される、かなり不均一な分配を示している。さらに、粒子速度分布マップ162’’は、いくつかの粒子は臨界速度166よりも著しく高い速度164を実現したが、それらの割合は低かったということを示している。大きい割合の粒子163は、臨界速度166よりも低い速度を示した。さらに、グラフ160’’’から、軸線方向の注入に関する最大粒子速度167は、サイド注入のケースよりも高かったが、平均粒子速度168は、軸線方向の注入のケースに関してわずかに低かったということが見られる。追加的に、最大粒子速度と最小粒子速度との間の広がりは、軸線方向の注入のケースに関して、最大となっていた。ここで開示されているようなマルチノズル・コールド・スプレー装置40は、最も均一な粒子分布、および、粒子速度の最小の広がり(標準偏差)を提供し、結果として生じるコーティングに有益に影響を与えるということが認識されることとなる。
【0052】
図17を参照すると、マルチノズル・コールド・スプレー装置170は、放物線プロファイル172を有する共通の出口174から構成されている。すべての内部通路が同じままである場合に、オーバーラップは、放物線に沿って変化することとなる。最適な微粒子分配および速度性質を取得するために、このオーバーラップは調節され得る。放物線表面184をコーティングするためにそのようなノズルを使用することが、図18に示されている。したがって、そのような装置は、また、放物線物体を構築するために使用され得る。別のマルチノズル・コールド・スプレー装置190が図19に示されており、それは、テーパーを付けられている出口192を含むことが可能である。また、この装置は、変化するオーバーラップを有することとなり、最適なオーバーラップは、良好な堆積を保証するように選択される必要がある。図20は、コーティング質量が半径方向に変化する円錐形状の表面206をコーティングする際の、そのような装置の使用を示しており、それは、粒子給送を変化させることによって調節され得る。さらに、テーパーを付けられたノズル出口は、固定されたターゲット距離を保証することが可能である。追加的に、装置200は、円錐形状のプロファイル204を有する物体を構築するために使用され得る。したがって、多くの異なる共通の出口ノズル・プロファイルが、異なる堆積プロファイルを実現するために採用され得る。また、これは、随意的に、基板の上に異なったコーティング質量を実現するために、所望の量の粒子をそれぞれのノズルに供給することを含むことが可能であり、そして、それは、所望の幾何学的なプロファイルまたはコンフォーマリティーを発達させる。
【0053】
本発明の態様が図示および説明されてきたが、これらの態様が本発明の可能な形態を図示および説明しているということは意図されていない。むしろ、本明細書の中で使用されている語句は、限定というよりもむしろ説明の語句であり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更が行われ得るということが理解される。
【0054】
本発明のさまざまな修正例は、本明細書で示されて説明されているものに加えて、上記の説明の当業者に明らかになることとなる。また、そのような修正例は、添付の特許請求の範囲の中に入ることが意図されている。
【0055】
すべての試薬が、別段の定めがない限り、当技術分野で公知の供給源によって取得可能であるということが認識される。
【0056】
実施形態の先述の説明は、図示および説明の目的のために提供されてきた。それは、徹底的であることを意図されておらず、または、本開示を限定することを意図されていない。特定の実施形態の個々のエレメントまたは特徴は、一般的に、特定の実施形態に限定されるのではなく、適用可能な場合には、相互交換可能であり、また、具体的には示されていない場合または説明されていない場合にも、選択された実施形態において使用され得る。また、それは、多くの方式で変化させられ得る。そのような変形例は、本開示からの逸脱として見なされるべきではなく、すべてのそのような修正例は、本開示の範囲の中に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20