(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】距離画像測定装置及び距離画像測定方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/341 20110101AFI20221215BHJP
H04N 5/378 20110101ALI20221215BHJP
G01S 7/4863 20200101ALI20221215BHJP
G01S 17/894 20200101ALI20221215BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H04N5/341
H04N5/378
G01S7/4863
G01S17/894
H04N5/225 300
H04N5/225 600
(21)【出願番号】P 2019548835
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2018039080
(87)【国際公開番号】W WO2019078366
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2017203855
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】川人 祥二
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141957(WO,A1)
【文献】特開2006-064641(JP,A)
【文献】特開2010-032425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/341
H04N 5/378
G01S 7/4863
G01S 17/894
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光を発生させる光源と、
第1の持続時間を有する前記パルス光を1フレーム期間内に含まれる第1~第N(Nは2以上の整数)のサブフレーム期間内で定期的に繰り返し発生させるように前記光源を制御する光源制御手段と、
光を電荷に変換する光電変換領域、前記光電変換領域に近接して互いに離間して設けられた第1~第M(Mは2以上の整数)の電荷読出領域、前記電荷を排出するための電荷排出領域、及び前記光電変換領域と前記第1~第Mの電荷読出領域および前記電荷排出領域とに対応してそれぞれ設けられ、前記光電変換領域と前記第1~第Mの電荷読出領域および前記電荷排出領域との間における電荷転送のための第1~第M+1の制御パルスを印加するための第1~第M+1の制御電極を有する画素回路部と、
前記光源制御手段による前記パルス光の発生に対応して、前記第1の持続時間以上である第2の持続時間の間だけ前記第1~第Mの制御電極に前記第1~第Mの制御パルスを順次印加し、前記第1~第Mの制御パルスの印加期間以外の期間に前記第M+1の制御電極に前記第M+1の制御パルスを印加する電荷転送制御手段と、
前記電荷転送制御手段による前記第1~第Mの制御パルスの印加後に、前記画素回路部の前記第1~第Mの電荷読出領域の電圧を第1~第Mの検出信号として読み出す電圧検出手段と、
前記第1~第Mの検出信号を基に距離を繰り返し計算する距離計算手段とを備え、
前記電荷転送制御手段は、1フレーム期間内の第1~第N(Nは2以上の整数)のサブフレーム期間ごとに、前記パルス光の発生タイミングに対する前記第1~第Mの制御パルスの遅れ時間を異なる時間にシフトさせるように、前記第1~第Mの制御パルスのタイミングを設定し、
前記電圧検出手段は、重み付けされて設定された期間のサブフレーム期間ごとに、前記第1~第Mの制御パルスの印加に応じて発生したそれぞれの前記第1~第Mの電荷読出領域の電圧を前記第1~第Mの検出信号として読み出す、
距離画像測定装置。
【請求項2】
前記距離計算手段は、前記第1~第Nのサブフレーム期間内のそれぞれにおいて前記第1~第Mの制御パルスの印加に応じて検出された前記第1~第Mの検出信号を用いて、前記距離を計算する、
請求項1記載の距離画像測定装置。
【請求項3】
前記距離計算手段は、前記第1~第Nのサブフレーム期間内のうちの2つのサブフレーム期間内において前記第1~第Mの制御パルスの印加に応じて検出された前記第1~第Mの検出信号を用いて、前記距離を計算する、
請求項1又は2記載の距離画像測定装置。
【請求項4】
1フレーム期間内のそれぞれの第1~第N(Nは2以上の整数)のサブフレーム期間内における前記パルス光の繰り返し回数は、前記パルス光の発生タイミングに対する前記第1~第Mの制御パルスの遅れ時間が長くなるほど多くなるように、重み付けされる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の距離画像測定装置。
【請求項6】
前記電荷転送制御手段は、第1~第Nのサブフレーム期間の間で、前記パルス光の発生タイミングに対する前記第1~第Mの制御パルスの遅れ時間が短くなるほど、順次印加される前記第1~第Mの制御パルスのうちの少なくとも前記第1の制御パルスの印加回数のレートを下げるように設定する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の距離画像測定装置。
【請求項7】
前記電荷転送制御手段は、第1~第Nのサブフレーム期間の間で、前記パルス光の発生タイミングに対する前記第1~第Mの制御パルスの遅れ時間が短くなるほど、順次印加される前記第1~第Mの制御パルスのうちの少なくとも前記第1の制御パルスの印加回数を間引くように設定する、
請求項6に記載の距離画像測定装置。
【請求項9】
前記1フレーム期間内のそれぞれの前記第1~第Nのサブフレーム期間内において、前記パルス光の発生タイミングに対する前記第1~第Mの制御パルスの遅れ時間が短くなるほど、前記第1~第Mの電荷読出領域の持つ容量が大きくなるように制御される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の距離画像測定装置。
【請求項10】
前記画素回路部が2次元アレイ状に配列されたイメージセンサを含む、
請求項1~4,6~9のいずれか1項に記載の距離画像測定装置。
【請求項11】
光源制御手段が、第1の持続時間を有するパルス光を1フレーム期間内に含まれる第1~第N(Nは2以上の整数)のサブフレーム期間内で定期的に繰り返し発生させるように光源を制御する光源制御ステップと、
光を電荷に変換する光電変換領域、前記光電変換領域に近接して互いに離間して設けられた第1~第M(Mは2以上の整数)の電荷読出領域、前記電荷を排出するための電荷排出領域、及び前記光電変換領域と前記第1~第Mの電荷読出領域および前記電荷排出領域とに対応して設けられた第1~第M+1の制御電極を有する画素回路部を用いて、電荷転送制御手段が、前記光源制御手段による前記パルス光の発生に対応して、前記第1の持続時間以上である第2の持続時間の間だけ前記第1~第Mの制御電極に、電荷の転送を制御するための第1~第Mの制御パルスを順次印加し、前記第1~第Mの制御パルスの印加期間以外の期間に前記第M+1の制御電極に電荷の排出を制御するための第M+1の制御パルスを印加する電荷転送制御ステップと、
電圧検出手段が、前記電荷転送制御手段による前記第1~第Mの制御パルスの印加後に、前記画素回路部の前記第1~第Mの電荷読出領域の電圧を第1~第Mの検出信号として読み出す電圧検出ステップと、
距離計算手段が、前記第1~第Mの検出信号を基に距離を繰り返し計算する距離計算ステップとを備え、
前記電荷転送制御ステップでは、1フレーム期間内の第1~第N(Nは2以上の整数)のサブフレーム期間ごとに、前記パルス光の発生タイミングに対する前記第1~第Mの制御パルスの遅れ時間を異なる時間にシフトさせるように、前記第1~第Mの制御パルスのタイミングを設定し、
前記電圧検出ステップでは、重み付けされて設定された期間のサブフレーム期間ごとに、前記第1~第Mの制御パルスの印加に応じて発生したそれぞれの前記第1~第Mの電荷読出領域の電圧を前記第1~第Mの検出信号として読み出す、
距離画像測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、画素毎に距離情報を含む距離画像を生成する距離画像測定装置および距離画像測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光の飛行時間を用いて距離情報を含む画像信号を生成するセンサ装置が用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。このセンサは、時間軸上に配列された第1~第5フレームにおいて第1~第5のパルスの列を照射パルスとして対象物に照射し、ピクセルアレイにおいて対象物の距離情報を含む画像信号を生成する。このような構成により、距離分解能を低下させることなく距離計測範囲を拡大することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のセンサ装置では、様々な距離計測範囲の対象物の距離情報を含む画像信号を生成しようとする場合に、さらに距離分解能を向上させようとするためには改善の余地があった。
【0005】
本発明の一側面は、上記課題に鑑みて為されたものであり、様々な距離計測範囲の対象物を対象にして距離分解能が向上された画像信号を生成することが可能な距離画像測定装置及び距離画像測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一形態にかかる距離画像測定装置は、パルス光を発生させる光源と、第1の持続時間を有するパルス光を1フレーム期間内に含まれる第1~第N(Nは2以上の整数)のサブフレーム期間内で定期的に繰り返し発生させるように光源を制御する光源制御手段と、光を電荷に変換する光電変換領域、光電変換領域に近接して互いに離間して設けられた第1~第M(Mは2以上の整数)の電荷読出領域、電荷を排出するための電荷排出領域、及び光電変換領域と第1~第Mの電荷読出領域および電荷排出領域とに対応してそれぞれ設けられ、光電変換領域と第1~第Mの電荷読出領域および電荷排出領域との間における電荷転送のための第1~第M+1の制御パルスを印加するための第1~第M+1の制御電極を有する画素回路部と、光源制御手段によるパルス光の発生に対応して、第1の持続時間以上である第2の持続時間の間だけ第1~第Mの制御電極に第1~第Mの制御パルスを順次印加し、第1~第Mの制御パルスの印加期間以外の期間に第M+1の制御電極に第M+1の制御パルスを印加する電荷転送制御手段と、電荷転送制御手段による第1~第Mの制御パルスの印加後に、画素回路部の第1~第Mの電荷読出領域の電圧を第1~第Mの検出信号として読み出す電圧検出手段と、第1~第Mの検出信号を基に距離を繰り返し計算する距離計算手段とを備え、電荷転送制御手段は、1フレーム期間内の第1~第N(Nは2以上の整数)のサブフレーム期間ごとに、パルス光の発生タイミングに対する第1~第Mの制御パルスの遅れ時間を異なる時間にシフトさせるように、第1~第Mの制御パルスのタイミングを設定する。
【0007】
あるいは、本発明の他の形態にかかる距離画像測定方法は、光源制御手段が、第1の持続時間を有するパルス光を1フレーム期間内に含まれる第1~第N(Nは2以上の整数)のサブフレーム期間内で定期的に繰り返し発生させるように光源を制御する光源制御ステップと、光を電荷に変換する光電変換領域、光電変換領域に近接して互いに離間して設けられた第1~第M(Mは2以上の整数)の電荷読出領域、電荷を排出するための電荷排出領域、及び光電変換領域と第1~第Mの電荷読出領域および電荷排出領域とに対応して設けられた第1~第M+1の制御電極を有する画素回路部を用いて、電荷転送制御手段が、光源制御手段によるパルス光の発生に対応して、第1の持続時間以上である第2の持続時間の間だけ第1~第Mの制御電極に、電荷の転送を制御するための第1~第Mの制御パルスを順次印加し、第1~第Mの制御パルスの印加期間以外の期間に第M+1の制御電極に電荷の排出を制御するための第M+1の制御パルスを印加する電荷転送制御ステップと、電圧検出手段が、電荷転送制御手段による第1~第Mの制御パルスの印加後に、画素回路部の第1~第Mの電荷読出領域の電圧を第1~第Mの検出信号として読み出す電圧検出ステップと、距離計算手段が、第1~第Mの検出信号を基に距離を繰り返し計算する距離計算ステップとを備え、電荷転送制御ステップでは、1フレーム期間内の第1~第N(Nは2以上の整数)のサブフレーム期間ごとに、パルス光の発生タイミングに対する第1~第Mの制御パルスの遅れ時間を異なる時間にシフトさせるように、第1~第Mの制御パルスのタイミングを設定する。
【0008】
上記形態の距離画像測定装置あるいは距離画像測定方法によれば、1フレーム期間内に含まれる2つ以上のサブフレーム期間内で光源から定期的に繰り返しパルス光が発生し、パルス光の発生に対応して、パルス光の持続時間以上の第2の持続時間の時間ウィンドウが順次設定され、その時間ウィンドウで画素回路部の光電変換領域から第1~第Mの電荷読出領域に順次電荷が転送されるとともに、その時間ウィンドウ以外の期間では光電変換領域から電荷が排出される。さらに、画素回路部の第1~第Mの電荷読出領域から第1~第Mの検出信号が読み出され、それらをもとに距離が繰り返し計算される。このとき、2つ以上のサブフレーム期間ごとに、パルス光の発生タイミングに対する時間ウィンドウの遅れ時間が異なる時間にシフトするように設定される。このように、画素回路部単位での時間ウィンドウのシフトおよびサブフレーム間での時間ウィンドウのシフトを組み合わせることによって、デューティ比の小さい多数の時間ウィンドウを使った電荷の検出が可能とされる。その結果、様々な距離計測範囲の対象物を対象にした場合であっても、検出信号における背景光ノイズの影響が低減され、距離分解能の高い距離計算が実現されるとともに、強い背景光に起因した検出信号の飽和による距離計算の誤差も防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、様々な距離計測範囲の対象物を対象にして距離分解能が向上された画像信号を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の好適な一実施形態に係る距離画像センサ10の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】演算回路12による距離計算の繰り返し期間である1フレーム期間の構成を示す図である。
【
図3】
図1の電荷転送制御手段32によって設定された各サブフレーム期間F
1~F
3における制御パルスG
1~G
4のタイミングを示すタイミングチャートである。
【
図4】
図1の電荷転送制御手段32によって設定された各サブフレーム期間F
1~F
3における制御パルスG
1~G
4のタイミングを示すタイミングチャートである。
【
図5】
図1の距離画像センサ10による距離計算の原理を説明するためのタイミングチャートである。
【
図6】
図1の距離画像センサ10によって扱われる各種信号のタイミングチャート、及び距離画像センサ10によって計算される各種値の遅れ時間T
Dに対する変化を示すグラフである。
【
図7】
図1の距離画像センサ10による別の計算手順で扱われる各種信号のタイミングチャート、及び、距離画像センサ10による別の計算手順において計算される各種値の遅れ時間T
Dに対する変化を示すグラフである。
【
図8】0.2~6mの距離範囲を距離計測した際の本実施形態の距離分解能のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図9】0.2~6mの距離範囲を距離計測した際の本実施形態の距離分解能のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図10】0.2~6mの距離範囲を距離計測した際の本実施形態の距離分解能のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図11】0.2~6mの距離範囲を距離計測した際の本実施形態における信号読み出し時の発生電子数のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図12】変形例によって扱われる各種信号のタイミングチャート、及び変形例によって計算される各種値の遅れ時間T
Dに対する変化を示すグラフである。
【
図13】変形例におけるサブフレーム期間F
1でのパルス光L
P及び第1~第4の制御パルスG
1~G
4の制御タイミングを示すタイミングチャートである。
【
図14】変形例におけるサブフレーム期間F
1でのパルス光L
P及び第1~第4の制御パルスG
1~G
4の制御タイミングを示すタイミングチャートである。
【
図15】0.2~6mの距離範囲を距離計測した際の変形例における信号読み出し時の発生電子数のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図16】0.2~6mの距離範囲を距離計測した際の変形例における距離分解能のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図17】変形例における、演算回路12による制御パルスG
1~G
4の印加タイミング及びパルス光L
Pの発生タイミングを示すタイミングチャートである。
【
図18】変形例における画素回路13の要部の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る距離画像測定装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
まず、
図1を参照して、本発明の距離画像測定装置の好適な一実施形態に係る距離画像センサ10の機能および構成を説明する。
図1に示す距離画像センサ10は、飛行時間法を利用して画素毎に距離情報を含む距離画像を生成する装置であり、光源11と、演算回路12と、複数の画素回路(画素回路部)13とを備える。光源11は、飛行時間(TOF:Time Of Flight)方式による距離計測を行うために、対象物Sに照射するパルス光L
Pを発生させる装置である。光源11は、例えば、発光ダイオードあるいはレーザダイオード等の半導体発光素子とその半導体発光素子を駆動する駆動回路とによって構成される。光源11としては、近赤外領域、可視光領域等の波長領域の光を発生させる素子を用いることができる。さらに、距離画像センサ10は複数の画素回路13を備える。複数の画素回路13は、2次元方向(例えば、列方向および行方向)に2次元アレイ状に配列されてイメージセンサを構成し、対象物Sによってパルス光L
Pが反射されて生じた入射パルス光L
Rを光電変換することにより検出信号を生成する。加えて、距離画像センサ10は、演算回路12も備えている。演算回路12は、複数の画素回路13によって生成された検出信号を用いて、対象物Sに関する距離情報を画素ごとに演算し、画素ごとの距離情報が反映された2次元画像情報を含む距離画像を生成及び出力する。演算回路12は、CPU,RAM、ROM、および入出力装置等を含むワンチップマイクロコンピュータ等の専用の集積回路によって構成されてもよいし、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータによって構成されてもよい。
【0013】
以下、画素回路13および演算回路12の構成について詳細に説明する。
【0014】
まず、画素回路13の構成について説明する。画素回路13は、半導体素子によって構成され、入射パルス光LRを電荷に変換する機能を有する光電変換領域21と、光電変換領域21に近接し、かつ互いに離間して設けられた第1~第4の電荷読出領域221~224及び電荷排出領域23と、第1~第4の電荷読出領域221~224及び電荷排出領域23のそれぞれに対応して設けられ、光電変換領域21からそれぞれの領域との間における電荷転送のための制御パルスを印加するための第1~第4の制御電極241~244および第5の制御電極25と、第1~第4の電荷読出領域221~224のそれぞれから検出信号を読み出すための電圧検出手段261~264とを含んでいる。電圧検出手段261~264は、例えば、ソースフォロワアンプを含む増幅器であり、演算回路12からの制御によって、選択的にそれぞれの電荷読出領域221~224の基準電位を基準にした電圧を検出および増幅し、増幅した電圧を第1~第4の検出信号として演算回路12に出力する。
【0015】
画素回路13は、例えば、シリコン基板等のp型半導体基板上に形成される。すなわち、光電変換領域21は、p型半導体基板上に順に形成された、p型の半導体からなる活性領域形成層、n型の表面埋込領域、p型のピニング層、及び絶縁膜からなる画素形成領域の中央部に設けられる。そして、光電変換領域21に近接するように互いに離間した位置にn型の表面埋込領域よりも高不純物濃度のn型の電荷読出領域221~224及び電荷排出領域23が形成され、絶縁膜上の光電変換領域21から電荷読出領域221~224及び電荷排出領域23のそれぞれに至る電荷移動経路上のそれぞれには、制御電極241~244,25が設けられる。ここで、制御電極241~244,25は、それぞれ、電荷移動経路上に設けられてもよいし、電荷移動経路を両側から挟むように複数の電極部に分離して設けられてもよい。
【0016】
上記構成の画素回路13においては、後述する演算回路12から制御電極241~244,25に対して、互いに位相の異なる制御パルスが印加される。これにより、表面埋込領域の空乏化電位を順次変化させることにより、電荷移動経路のいずれかに電荷が輸送されるような電位勾配を順次形成して、光電変換領域21の表面埋込領域で発生した多数キャリア(電荷)を、電荷読出領域221~224及び電荷排出領域23のいずれかに移動させる。この電荷排出領域23は、光電変換領域21で発生した電荷を排出するための領域である。
【0017】
次に、演算回路12の構成について説明する。演算回路12は、機能的な構成要素として、光源制御手段31、電荷転送制御手段32、距離データ有効性判定信号生成手段33、距離データ有効性判定手段34、無効画素識別値生成手段35、距離計算参照信号生成手段36、距離計算参照信号選択手段37、及び距離画像生成手段38を含んで構成される。距離データ有効性判定信号生成手段33、距離データ有効性判定手段34、無効画素識別値生成手段35、距離計算参照信号生成手段36、距離計算参照信号選択手段37、及び距離画像生成手段38は、本実施形態の距離計算手段を構成する。
【0018】
演算回路12の光源制御手段31は、光源11によるパルス光LPの発光タイミング、パルス光LPの強度、及びパルス光LPのパルス幅を制御する。具体的には、持続時間T0のパルス光LPを、予め設定された長さの期間Tf(例えば、1/120sec)である1フレームの期間内の4種類のサブフレーム期間内で周期的に繰り返し発生させるように制御する。
【0019】
演算回路12の電荷転送制御手段32は、制御電極241~244,25のそれぞれに、第1~第4の制御パルスG1~G4及び第5の制御パルスGDを印加する機能を有する。すなわち、電荷転送制御手段32は、サブフレーム期間内のパルス光LPのそれぞれの発生タイミングに対応して、持続時間T0以上である持続時間T1の間だけ制御電極241~244に順次第1~第4の制御パルスG1~G4を印加する。本実施形態では、持続時間T1は持続時間T0と等しくなるように設定される。また、電荷転送制御手段32は、サブフレーム期間内の第1~第3の制御パルスG1~G3の印加タイミングを除く期間において、光電変換領域21に蓄積された電荷を電荷排出領域23に排出させるための制御パルスGDを制御電極25に印加する。
【0020】
なお、パルス光LPの飛行時間を用いた距離計算の分解能15cmは飛行時間1nsに相当し、この分解能を下回るためには目安としてpsオーダーの時間精度を持つ制御手段が必要となる。それ故に、電荷転送制御手段32と光源制御手段31は、画素回路13と一体での配線容量などを考慮した設計が必要になってくるため、画素回路13と一体の半導体上に形成することが望ましい。なお、「一体の半導体上」とは、SOI(Silicon On Insulator)技術やTSV(Through Silicon Via)技術を用いて積層された複数の半導体層のうちの異なる半導体上も含まれる。具体的には、電荷転送制御手段32と、電荷転送制御手段32と制御電極241~244,25との間の回路と、電荷転送制御手段32と光源制御手段31との間の回路の一部とは、画素回路13と同一の半導体上、あるいは画素回路13とともに積層された半導体層上に形成されていてもよい。
【0021】
ここで、演算回路12による距離計算の繰り返し期間である1フレーム期間(T
f)は、
図2に示すように、パルス光L
Pのそれぞれの発生タイミングに対する制御パルスG
1~G
4,G
Dのタイミングが異なる4種類のサブフレーム期間F
1~F
4と、それらの期間の間で第1~第4の検出信号を読み出す期間である読出期間Rとを含んでいる。1フレーム期間(T
f)は、
図2の(a)部に示すように、異なる長さの期間の4種類のサブフレーム期間F
1~F
4が循環して繰り返されてもよいし、
図2の(b)部、(c)部、及び(d)部のそれぞれに示すように、異なる期間の4種類のサブフレーム期間F
1~F
4が予め設定された任意の順番で繰り返されてもよい。
【0022】
演算回路12の電荷転送制御手段32は、4種類のサブフレーム期間F
1~F
4毎に、パルス光L
Pのそれぞれの発生タイミングに対する制御パルスG
1~G
4の遅れ時間を異なる時間にシフトさせるように、制御パルスG
1~G
4のタイミングを設定する。
図3は、電荷転送制御手段32によって設定された各サブフレーム期間F
1~F
3における制御パルスG
1~G
4のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。なお、
図3には、サブフレーム期間F
1~F
3に関するタイミングチャートを示しているが、サブフレーム期間F
4についても、サブフレーム期間F
3における制御パルスG
1~G
4の遅れ時間からさらにシフトするように設定される。
【0023】
具体的には、サブフレーム期間F1においては、期間TCで周期的に繰り返されるパルス光LPの発生タイミングと一致するように制御パルスG1のタイミングが設定され、その直後に互いに時間的に重ならないように連続して順次制御パルスG2~G4のタイミングが設定され、制御パルスG1~G4の印加期間以外の期間において制御パルスGDが印加されるように設定される。このサブフレーム期間F1の直後に読出期間Rが設定される。これに対して、サブフレーム期間F2においては、サブフレーム期間F1と比較して、パルス光LPの発生タイミングに対する制御パルスG1~G4のそれぞれの遅れ時間(以下、この遅れ時間を「レンジシフト」ともいう。)が+4T0でシフトするように制御パルスG1~G4のタイミングが設定される。このシフト幅は、+4T0には限定されず、+3T0等の他のシフト幅であってもよい。同様に、サブフレーム期間F3においては、サブフレーム期間F2と比較して、パルス光LPの発生タイミングに対する制御パルスG1~G4のそれぞれの遅れ時間が+4T0でシフトするように制御パルスG1~G4のタイミングが設定される。
【0024】
図4は、電荷転送制御手段32によって設定された各サブフレーム期間F
1~F
3における制御パルスG
1~G
4のタイミングの別の例を示すタイミングチャートである。この例では、サブフレーム期間F
2においては、サブフレーム期間F
1と比較して、パルス光L
Pの発生タイミングに対する制御パルスG
1~G
4のそれぞれの遅れ時間が+2T
0でシフトするように制御パルスG
1~G
4のタイミングが設定される。同様に、サブフレーム期間F
3においては、サブフレーム期間F
2と比較して、パルス光L
Pの発生タイミングに対する制御パルスG
1~G
4のそれぞれの遅れ時間が+2T
0でシフトするように制御パルスG
1~G
4のタイミングが設定され、サブフレーム期間F
4とサブフレーム期間F
3との間の関係も同様に設定される。
【0025】
また、演算回路12によって設定される各サブフレーム期間F
1~F
4毎の長さは、各サブフレーム期間F
1~F
4内でのパルス光L
Pの繰り返し回数N
1、N
2、N
3、N
4(N
1~N
4は整数)に比例した長さN
1・T
C、N
2・T
C、N
3・T
C、N
4・T
Cとなり、パルス光L
Pの発生タイミングに対する制御パルスG
1~G
4のそれぞれの遅れ時間が長くなるほど長くなるように設定される。言い換えれば、演算回路12によって、各サブフレーム期間F
1~F
4内でのパルス光L
Pの繰り返し回数N
1、N
2、N
3、N
4は、パルス光L
Pの発生タイミングに対する制御パルスG
1~G
4のそれぞれの遅れ時間が長くなるほど多くなるように設定される。これは、対象物での反射光の強度が対象物の距離の二乗に反比例することから、パルス光L
Pの画素回路13への取り込み回数を遅れ時間のシフト量に依存するように設定することを意味する。すなわち、各サブフレーム期間F
K(K=1,2,3,4)の長さは、その長さが下記式(1)で計算される重み付け係数W
Kで重み付けされるように設定される。
【数1】
【0026】
上記式(1)中、Nexpは所定の定数であり、例えば、Nexp=2の場合は、取り込み回数の重み付け係数は、W1=1/30、W2=4/30、W3=9/30、W4=16/30となる。結果として、サブフレーム期間F1~F4間での取り込み回数はレンジシフトが大きくなるほど増加するように重み付けされる。
【0027】
図1に戻って、演算回路12の距離計算手段は、各画素回路13ごとの距離の計算を1フレーム期間ごとに繰り返し実行し、その結果得られた距離情報を含む距離画像を繰り返し生成する。詳細には、距離計算手段は、
図2の(a)部に示した読出期間Rのタイミングごとに(すなわち、各サブフレーム期間F
1~F
4の終了タイミングに合わせて)、読出期間Rで読み出された第1~第4の検出信号S
1~S
4を対象に下記の距離計算を繰り返し行い、その結果得られた有効な距離計算結果の1フレーム期間内での平均値を距離情報とする。その一方で、
図2の(a)部~(d)部に示されたサブフレーム期間F
1~F
4の構成が採用される際には、距離計算手段は、1フレーム期間内で4種類のサブフレーム期間F
1~F
4毎にそれぞれの第1~第4の検出信号S
1~S
4の値を合算し、合算した第1~第4の検出信号S
1~S
4を対象に距離の計算を実行し、その結果のうちの有効な距離計算の結果を纏めて(平均化等して)距離情報としてもよい。
【0028】
距離計算手段を構成する距離データ有効性判定信号生成手段33は、パルス光LPの発光タイミングに対応して画素回路13から出力された第1~第4の検出信号S1~S4を基に、第1~第4の検出信号S1~S4のうち、背景光の信号成分を除いた入射パルス光LRから発生した電荷の信号成分の合計値を、距離データ有効性判定信号SAとして生成する。この距離データ有効性判定信号SAは、第1~第4の検出信号S1~S4が入射パルス光LRを強く反映したものであるかを示す信号であり、第1~第4の検出信号S1~S4を基にした距離の計算が有効であるかを判定するための信号である。距離データ有効性判定手段34は、距離データ有効性判定信号SAを基に、第1~第4の検出信号S1~S4を基にした距離の計算が有効であるかを判定する。具体的には、距離データ有効性判定手段34は、距離データ有効性判定信号SAを所定の閾値Th1と比較し、距離データ有効性判定信号SAが閾値Th1を超えた場合には距離の計算が有効であると判定し、距離データ有効性判定信号SAが閾値Th1以下である場合には距離の計算が無効であると判定する。無効画素識別値生成手段35は、距離データ有効性判定手段34の判定結果を基に、画素回路13に対応する画素ごとに距離計算が無効であるか否かを示す識別値を生成する。
【0029】
距離計算手段のうちの距離計算参照信号生成手段36は、パルス光LPの発光タイミングに対応して画素回路13から出力された第1~第4の検出信号S1~S4を基に、距離の計算の基礎となる距離計算参照信号を生成する。具体的には、距離計算参照信号生成手段36は、第1~第4の検出信号S1~S4のうちの一方の検出信号の組S1,S3の差の値S1-3の差と距離データ有効性判定信号SAとの比を計算することにより、第1の距離計算参照信号XRを生成する。加えて、距離計算参照信号生成手段36は、第1~第4の検出信号S1~S4のうちの他方の検出信号の組S2,S4の差の値S2-4の差と距離データ有効性判定信号SAとの比を計算することにより、第2の距離計算参照信号YRを生成する。
【0030】
距離計算手段のうちの距離計算参照信号選択手段37は、第1及び第2の距離計算参照信号XR,YRを基に対象物Sの位置が測定可能な範囲か否かを判定し、測定可能な範囲である場合に第1及び第2の距離計算参照信号XR,YRのいずれかを有効な値として距離画像生成手段38に出力する。例えば、距離計算参照信号選択手段37は、距離計算参照信号XRの値が“0”以上であり、かつ、距離計算参照信号YRの値がTh3以下であるか否かを判定することにより、距離計算参照信号XR,YRの有効/無効を判定する。さらに、距離計算参照信号選択手段37は、第1の距離計算参照信号XRと閾値Th2との比較結果に応じて、第1及び第2の距離計算参照信号XR,YRのいずれかを選択し、選択した第1及び第2の距離計算参照信号XR,YRを有効な値として距離画像生成手段38に出力する。
【0031】
距離計算手段のうちの距離画像生成手段38は、距離計算が有効であると判定された場合は、各画素回路13に関して距離計算参照信号選択手段37によって選択されたいずれかの距離計算参照信号XR,YRを参照して各サブフレーム期間F1~F4毎に距離を算出し、それらの平均から距離情報を算出する。そして、距離画像生成手段38は、各画素回路13に対応する距離情報を含む距離画像を生成して外部装置に出力する。出力先の外部装置としては、例えば、表示装置、通信インターフェース装置等の出力デバイスが挙げられる。この際、距離画像生成手段38は、全てのサブフレーム期間F1~F4について距離計算が無効であることを示す識別値が生成された画素あるいは全てのサブフレーム期間F1~F4について距離計算参照信号XR,YRが測定可能範囲外であると判定された画素については距離画像に無効値を埋め込むことができる。
【0032】
図5は、距離画像センサ10による距離計算の原理を説明するためのタイミングチャートである。
図5には、距離画像センサ10によって制御される各種信号のタイミングおよび画素回路13の各領域に電荷が蓄積されるタイミングを示しており、上から順番に、パルス光L
Pの発光タイミング、第1~第4の制御パルスG
1~G
4及び制御パルスG
Dの印加タイミング、第1~第4の電荷読出領域22
1~22
4における電荷蓄積タイミングを示している。このように、パルス光L
Pの持続時間T
0の発光タイミングに対応して、第1~第4の制御パルスG
1~G
4が互いに重ならないように続けて持続時間T
0で印加されている。このようにすれば、入射パルス光L
Rが光電変換されることにより光電変換領域21に蓄積された電荷が、入射パルス光L
Rのパルス光L
Pに対する遅れ時間T
Dに対応した比率で、2つの電荷読出領域22
2,22
3、あるいは2つの電荷読出領域22
3,22
4に分配される。
【0033】
ここでは、パルス光LPの持続時間T0の発光タイミングと、第1の制御パルスG1の印加タイミングとの関係を設定することで、電荷読出領域221には、制御パルスG1で規定される時間ウィンドウで背景光及び暗電流等のノイズに起因する電荷量NBの電荷のみが輸送される。これに対して、入射パルス光LRの到達タイミングが制御パルスG2,G3で規定される2つの時間ウィンドウにまたがった場合には、電荷読出領域222には電荷量NBに遅れ時間TDに対応して分配された電荷量Nsm1が加算された電荷が輸送される一方、電荷読出領域223には、電荷量NBに遅れ時間TDに対応して分配された電荷量Nsm2が加算された電荷が輸送される。
【0034】
その一方で、入射パルス光LRの到達タイミングが制御パルスG3,G4で規定される2つの時間ウィンドウにまたがった場合には、電荷読出領域223には電荷量NBに遅れ時間TDに対応して分配された電荷量Nsm1が加算された電荷が輸送される一方、電荷読出領域224には、電荷量NBに遅れ時間TDに対応して分配された電荷量Nsm2が加算された電荷が輸送される。このような現象を利用して、距離画像センサ10の演算回路12においては、パルス光LPのそれぞれの発光タイミングに応じて、電荷量NBを除いた電荷量Nsm1と電荷量NBを除いた電荷量Nsm2との比率を計算することにより、遅れ時間TDに対応した対象物Sの距離を計算することができる。
【0035】
次に、距離画像センサ10による距離計算の手順の詳細を説明するとともに、本実施形態にかかる距離画像測定方法(以下では、「4タップ3ゾーン4サブフレーム方式」とも言う。)について説明する。なお、この処理は、各サブフレーム期間F
1~F
4単位で実行される。
図6は、距離画像センサ10によって扱われる各種信号のタイミングチャート、及び計算される各種値の遅れ時間T
Dに対する変化を示すグラフである。
図6において、(a)部から(e)部には、それぞれ、制御パルスG
1~G
4及びパルス光L
Pのタイミングを示し、(f)部~(n)部には、それぞれ、第1~第4の検出信号S
1~S
4の値、差分値S
1-3,S
2-4の値、距離データ有効性判定信号S
Aの値、及び距離計算参照信号X
R,Y
Rの値を、遅れ時間T
Dに対応して示し、(o)部には、遅れ時間T
Dにおけるデータ有効範囲を示し、(p)部には、遅れ時間T
Dにおける測定可能範囲を示す。なお、
図6には、サブフレーム期間F
1を対象にした距離計算において扱われる各種信号および値を示しているが、サブフレーム期間F
2~F
4を対象にした距離計算においても遅れ時間T
Dがシフトする点以外は同様である。
【0036】
まず、距離画像センサ10による距離画像の生成処理が開始されると、演算回路12の光源制御手段31及び電荷転送制御手段32によって、サブフレーム期間F1~F4によって構成される1フレームの期間内で制御パルスG1~G4及びパルス光LPのタイミングが制御される(光源制御ステップ、電荷転送制御ステップ)。詳細には、各サブフレーム期間F1~F4において、パルス光LPのタイミングが定期的なタイミングに設定され、このタイミングを基準に制御パルスG1~G4が持続時間T1=T0で互いに重複しないような連続したタイミングに設定され、制御パルスGDが制御パルスG1~G4の印加期間以外の期間に印加されるように設定される。その後、読出期間Rにおいて、各画素回路13の電圧検出手段261~264によって、第1~第4の検出信号S1~S4が読み出され、それらの検出信号S1~S4が演算回路12に出力される(電圧検出ステップ)。
【0037】
次に、各画素回路13から出力された検出信号S
1~S
4を基に、演算回路12によってサブフレーム期間F
1~F
4単位での画素ごとの距離情報が計算される(距離計算ステップ)。すなわち、距離データ有効性判定信号生成手段33によって、検出信号S
1,S
3を基に、下記式(2);
S
1-3=S
1-S
3…(2)
を用いて、検出信号S
1,S
3の差分値S
1-3が計算されてから、その差分値の絶対値|S
1-3|が計算される。加えて、距離データ有効性判定信号生成手段33によって、検出信号S
2,S
4を基に、下記式(3);
S
2-4=S
2-S
4…(3)
を用いて、検出信号S
2,S
4の差分値S
2-4が計算されてから、その差分値の絶対値|S
2-4|が計算される。さらに、距離データ有効性判定信号生成手段33によって、差分値の絶対値|S
1-3|と差分値の絶対値|S
2-4|が加算されることにより、下記式(4);
S
A=|S
1-3|+|S
2-4|…(4)
を用いて、距離データ有効性判定信号S
Aの値が計算される。そして、距離データ有効性判定手段34は、距離データ有効性判定信号S
Aの値を閾値Th
1と比較することにより、検出信号S
1~S
4を用いた距離の計算が有効であるか否かを判定する。例えば、閾値Th
1を“0”近傍に設定することにより、
図6の(o)部に示すように、遅れ時間T
Dの“-1”~“0”の間の値から“3”~“4”の間の値までの範囲が、距離の計算が有効な範囲である「データ有効範囲」であると判定される。さらに、距離計算参照信号生成手段36によって、検出信号S
1とS
3との差の値S
1-3と距離データ有効性判定信号S
Aの値との比を計算することにより、下記式(5);
X
R=1-S
1-3/S
A…(5)
を用いて第1の距離計算参照信号X
Rの値が計算されると共に、検出信号S
2とS
4との差の値S
2-4と距離データ有効性判定信号S
Aの値との比を計算することにより、下記式(6);
Y
R=2-S
2-4/S
A…(6)
を用いて第2の距離計算参照信号Y
Rの値が計算される。
【0038】
次に、距離計算参照信号選択手段37により、距離計算参照信号X
Rの値が所定範囲にあるか否かが判定されることにより、距離計算のために参照する値が、距離計算参照信号X
Rと距離計算参照信号Y
Rとのうちから選択される。例えば、距離計算参照信号X
Rの値が“0”以上閾値Th
2以下の場合は距離計算参照信号X
Rが選択され、距離計算参照信号X
Rの値が閾値Th
2を超えている場合は距離計算参照信号Y
Rが選択される。このような判定により、対象物Sの位置に応じて、入射パルス光L
Rの入射タイミングが重複した時間ウィンドウの検出信号が反映された距離計算参照信号を選択することができる。さらに、距離計算参照信号選択手段37により、選択された距離計算参照信号X
R,Y
Rの値が所定範囲にあるか否かが判定されることにより、対象物Sが測定可能な範囲にあるかが判定される。例えば、距離計算参照信号X
Rの値が“0”以上であるか否かが判定され、距離計算参照信号Y
Rの値が閾値Th
3以下であるか否かが判定される。このような判定により、対象物Sが近すぎて検出信号S
2の時間ウィンドウから入射パルス光L
Rが外れて距離計算参照信号X
Rの値に距離が反映されていない場合、及び、対象物Sが遠すぎて検出信号S
3の時間ウィンドウから入射パルス光L
Rが外れて距離計算参照信号Y
Rの値に距離が反映されていない場合を、距離計算から除外することができる。例えば、閾値Th
3を“3”近傍に設定することにより、
図6の(p)部に示すように、遅れ時間T
Dの“0”から“3”の近傍までの範囲が「測定可能範囲」であると判定される。
【0039】
最後に、距離画像生成手段38は、「データ有効範囲」にあると判定され、かつ、「測定可能範囲」にあると判定された場合に、該当画素に関して選択された距離計算参照信号XR,YRを基に対象物Sの距離が算出され、各サブフレーム期間F1~F4の算出結果を平均化して距離情報が算出され、算出した各画素の距離情報を含む距離画像が生成および出力される。
【0040】
上述した手順によれば、入射パルス光LRによって生じる電荷量を4種類のサブフレーム期間F1~F4内の検出信号S1~S4に対応する4×4=16個の時間ウィンドウに分配することができるので、遅れ時間TDに対応した計算可能な範囲を広げることができ、かつ、時間ウィンドウの時間幅も小さくすることができる。さらに、距離計算参照信号XR,YRのうちで遅れ時間TDに対して線形に変化する値を選んで距離の計算を行うので、対象物Sが位置する範囲に対応して適切な距離データ参照信号の値を利用して距離を計算することができ、対象物Sの位置にかかわらず精度の高い画像信号を生成することができる。
【0041】
ここで、上述した計算手順では、1つのサブフレームにおける測定可能な距離範囲が、時間T
0の幅の4つの時間ウィンドウに対して3つの時間ウィンドウ未満に相当する距離範囲である。そのため、
図3に示したような各サブフレーム期間F
1~F
3の制御パルスG
1~G
4のタイミングでは、距離測定できない距離範囲が生ずる可能性がある。このようなことを防ぐためには、
図4に示したような各サブフレーム期間F
1~F
3の制御パルスG
1~G
4のタイミングの設定方式を採用することが好ましい。ただし、この場合は4つのサブフレームで測定可能な距離範囲に相当する時間ウィンドウが2×4=8個の時間ウィンドウとなる。
【0042】
上述した距離画像センサ10による距離計算は、次のような別の手順(以下では、「4タップ4ゾーン4サブフレーム方式」とも言う。)で行われてもよい。この手順によれば、遅れ時間T
Dにおける「データ有効範囲」および「測定可能範囲」を広げることができる。
図7は、距離画像センサ10による別の計算手順で扱われる各種信号のタイミングチャート、及び別の計算手順において計算される各種値の遅れ時間T
Dに対する変化を示すグラフである。
図7において、(a)部から(e)部には、それぞれ、制御パルスG
1~G
4及びパルス光L
Pのタイミングを示し、(f)部~(o)部には、それぞれ、第1~第4の検出信号S
1~S
4の値、差分値S
1-3,S
2-4の値、距離データ有効性判定信号S
Aの値、及び距離計算参照信号R
1,R
2,R
3の値を、遅れ時間T
Dに対応して示し、(p)部には、遅れ時間T
Dにおけるデータ有効範囲を示し、(q)部には、遅れ時間T
Dに対応して計算される比較信号P
2~P
4の値、(r)部には、遅れ時間T
Dにおける測定可能範囲を示す。なお、
図7には、サブフレーム期間F
1を対象にした距離計算において扱われる各種信号および値を示しているが、サブフレーム期間F
2~F
4を対象にした距離計算においても遅れ時間T
Dがシフトする点以外は同様である。
【0043】
まず、距離画像センサ10による距離画像の生成処理が開始されると、演算回路12の光源制御手段31及び電荷転送制御手段32によって、サブフレーム期間F1~F4によって構成される1フレームの期間内で制御パルスG1~G4及びパルス光LPのタイミングが制御される(光源制御ステップ、電荷転送制御ステップ)。詳細には、サブフレーム期間F1~F4において、パルス光LPのタイミングが定期的なタイミングに設定され、このタイミングを基準に制御パルスG1~G4が持続時間T1=T0で互いに重複しないような連続したタイミングに設定され、制御パルスGDが制御パルスG1~G4の印加期間以外の期間に印加されるように設定される。ここでは、パルス光LPの点灯タイミングの直前に制御パルスG3がオンされてから、4つの制御パルスG1~G4が連続してオンされた直後に、再度制御パルスG1がオンされる。その後、読出期間Rにおいて、各画素回路13の電圧検出手段261~264によって、第1~第4の検出信号S1~S4が読み出され、それらの検出信号S1~S4が演算回路12に出力される(電圧検出ステップ)。
【0044】
次に、各画素回路13から出力された検出信号S
1~S
4を基に、演算回路12によってサブフレーム期間F
1~F
4単位での画素ごとの距離情報が計算される(距離計算ステップ)。すなわち、距離データ有効性判定信号生成手段33によって、検出信号S
1,S
3の差分値S
1-3及び検出信号S
2,S
4の差分値S
2-4が計算される。加えて、距離データ有効性判定信号生成手段33によって、差分値S
1-3及び差分値S
2-4の絶対値を基に、距離データ有効性判定信号S
Aの値が計算される。そして、距離データ有効性判定手段34は、距離データ有効性判定信号S
Aの値を閾値Th
1と比較することにより、検出信号S
1~S
4を用いた距離の計算が有効であるか否かを判定する。例えば、閾値Th
1を“0”近傍に設定することにより、
図7の(p)部に示すように、遅れ時間T
Dの“-1”~“0”の間の値から“4”~“5”の間の値までの範囲が、距離の計算が有効な範囲である「データ有効範囲」であると判定される。さらに、距離計算参照信号生成手段36によって、検出信号S
1とS
3との差の値S
1-3と距離データ有効性判定信号S
Aの値との比を計算することにより、下記式(7);
R
1=1-S
1-3/S
A…(7)
を用いて距離計算参照信号R
1の値が計算され、検出信号S
2とS
4との差の値S
2-4と距離データ有効性判定信号S
Aの値との比を計算することにより、下記式(8);
R
2=2-S
2-4/S
A…(8)
を用いて距離計算参照信号R
2の値が計算され、検出信号S
1とS
3との差の値S
1-3と距離データ有効性判定信号S
Aの値との比を計算することにより、下記式(9);
R
3=3+S
1-3/S
A…(9)
を用いて距離計算参照信号R
3の値が計算される。
【0045】
距離計算参照信号選択手段37により、距離計算参照信号R1~R3の値が閾値と比較されることにより、距離計算のために参照する値が、距離計算参照信号R1~R3の中から選択される。例えば、距離計算参照信号R1が閾値Th2以下であり、かつ、距離計算参照信号R2が閾値Th5以下である場合は、距離計算参照信号R1が選択される。その一方で、距離計算参照信号R1が閾値Th2を超えており、かつ、距離計算参照信号R2が閾値Th5以下である場合は、距離計算参照信号R2が選択される。さらに、距離計算参照信号R2が閾値Th5を超えている場合は、距離計算参照信号R3が選択される。このような判定により、対象物Sの位置に応じて、入射パルス光LRの入射タイミングが重複した時間ウィンドウの検出信号が反映された距離計算参照信号を選択することができる。
【0046】
さらに、距離計算参照信号選択手段37により、選択された距離計算参照信号R
1,R
3の値が所定範囲にあるか否かが判定されることにより、対象物Sが測定可能な範囲にあるかが判定される。例えば、距離計算参照信号R
1の値が“0”以上であるか否かが判定され、距離計算参照信号R
3の値が閾値Th
6以下であるか否かが判定される。このような判定により、対象物Sが近すぎて検出信号S
2の時間ウィンドウから入射パルス光L
Rが外れて距離計算参照信号R
1の値に距離が反映されていない場合、及び、対象物Sが遠すぎて検出信号S
4の時間ウィンドウから入射パルス光L
Rが外れて距離計算参照信号R
3の値に距離が反映されていない場合を、距離計算から除外することができる。例えば、閾値Th
6を“4”近傍に設定することにより、
図7の(r)部に示すように、遅れ時間T
Dの“0”から“4”の近傍までの範囲が「測定可能範囲」であると判定される。また、
図7の(q)部には、距離計算参照信号R
1を閾値Th
2と比較した結果得られる比較信号P
2、距離計算参照信号R
2を閾値Th
5と比較した結果得られる比較信号P
3、及び距離計算参照信号R
3を閾値Th
6と比較した結果得られる比較信号P
4を示している。
【0047】
最後に、距離画像生成手段38は、「データ有効範囲」にあると判定され、かつ、「測定可能範囲」にあると判定された場合に、該当画素に関して選択された距離計算参照信号R1~R3を基に対象物Sの距離が算出され、各サブフレーム期間F1~F4の算出結果を平均化して距離情報が算出され、算出した各画素の距離情報を含む距離画像が生成および出力される。
【0048】
上述した手順によれば、入射パルス光LRによって生じる電荷量を4種類のサブフレーム期間F1~F4内の連続する4つの制御パルスG1~G4に対応する4×4=16個の時間ウィンドウに分配することができるので、遅れ時間TDの計算可能な範囲を広げることができ、かつ、時間ウィンドウの時間幅も小さくすることができる。さらに、距離計算参照信号R1,R2,R3のうちで遅れ時間TDに対して線形に変化する値を選んで距離の計算を行うので、対象物Sが位置する範囲に対応して適切な距離データ参照信号の値を利用して距離を計算することができ、対象物Sの位置にかかわらず精度の高い画像信号を生成することができる。
【0049】
ここで、上述した計算手順では、1つのサブフレームにおける測定可能な距離範囲が、時間T
0の幅の5つの時間ウィンドウに対して4つの時間ウィンドウ未満に相当する距離範囲である。そのため、
図3に示したような各サブフレーム期間F
1~F
3の制御パルスG
1~G
4のタイミングでは、距離測定できない距離範囲が生ずる可能性がある。このようなことを防ぐためには、各サブフレーム期間F
1~F
3の制御パルスG
1~G
4のタイミングを、互いに+3T
0シフトさせる方式を採用することが好ましい。ただし、この場合は4つのサブフレームで測定可能な距離範囲に相当する時間ウィンドウが3×4=12個の時間ウィンドウとなる。
【0050】
上述した本実施形態の作用効果を説明する。
【0051】
本実施形態の距離画像センサ10によれば、1フレーム期間内に含まれる4つのサブフレーム期間F1~F4内で光源11から定期的に繰り返しパルス光LPが発生し、パルス光LPの発生に対応して、パルス光LPの持続時間T0以上の持続時間T1の時間ウィンドウが順次設定され、その時間ウィンドウで画素回路13の光電変換領域21から第1~第4の電荷読出領域221~224に順次電荷が転送されるとともに、その時間ウィンドウ以外の期間では光電変換領域21から電荷排出領域23に電荷が排出される。さらに、サブフレーム期間F1~F4ごとに画素回路13の第1~第4の電荷読出領域221~224から第1~第4の検出信号S1~S4が読み出され、それらをもとに距離が繰り返し計算される。このとき、4種類のサブフレーム期間F1~F4ごとに、パルス光LPの発生タイミングに対する時間ウィンドウの遅れ時間(レンジシフト)が異なる時間にシフトするように設定されている。
【0052】
このように、画素回路13単位での時間ウィンドウのレンジシフトおよびサブフレーム期間F
1~F
4間での時間ウィンドウのレンジシフトを組み合わせることによって、デューティ比の小さい多数の時間ウィンドウを使った電荷の検出が可能とされる。例えば、
図3の例によれば、4×3=12種類のレンジシフトの時間ウィンドウが設定される。
図4の例によれば、8種類のレンジシフトの時間ウィンドウが設定される。その結果、様々な距離計測範囲の対象物Sを対象にした場合であっても、検出信号における背景光ノイズの影響が低減され、距離分解能の高い距離計算が実現されるとともに、強い背景光に起因した検出信号の飽和による距離計算の誤差も防止できる。
【0053】
また、距離画像センサ10においては、演算回路12の距離計算手段により、サブフレーム期間F1~F4毎に距離が計算されている。この場合、対象物Sの距離計測範囲に応じて距離分解能の高い距離の計算が可能となる。
【0054】
また、距離画像センサ10においては、1フレーム期間内のそれぞれのサブフレーム期間F1~F4内におけるパルス光LPの繰り返し回数は、レンジシフトのシフト時間が長くなるほど多くなるように重み付けされている。これにより、サブフレーム期間F1~F4毎の測距範囲に応じて、遠い測距範囲のフレームに関しては光パルスの投光回数(画素内での電荷の蓄積回数)を多くし、近い測距範囲のフレームに対しては投光回数(画素内での電荷の蓄積回数)を少なくでき、距離分解能を高めることができる。特に、入射パルス光LRの強度は距離の二乗に反比例して弱くなることから、サブフレーム期間F1~F4を測距距離の二乗で重み付けしている。これにより、距離分解能が最も低下する最長の測距距離のサブフレーム期間に対してより多くの投光回数を割り当てることができ、距離分解能の最低値(最長の測距距離のサブフレーム期間で起こりうる)を改善することができる。例えば、サブフレーム期間の間で均等に投光回数を割り当てた場合と比較して距離分解能の最低値が21/2倍改善する。その結果、距離の遠い距離計測範囲における距離分解能の低下を防止でき、全体として効率的に距離分解能を維持することができる。
【0055】
さらに、距離画像センサ10においては、重み付けされて設定された期間のサブフレーム期間F1~F4ごとに、第1~第4の制御パルスG1~G4の印加に応じて発生したそれぞれの第1~第4の電荷読出領域221~224の電圧が第1~第4の検出信号S1~S4として読み出され、それらを用いて距離の計算が実行されている。この場合、強い背景光に起因した検出信号S1~S4の飽和を防止できる結果、距離計測のダイナミックレンジを向上させることができる。
【0056】
次に、本実施形態における距離分解能の向上の効果を、比較例と比較しつつ説明する。
【0057】
なお、以下に示すシミュレーションの前提条件を以下の表に示す。
【表1】
【0058】
図8及び
図9には、0.2~6mの距離範囲を距離計測した際の本実施形態の距離分解能のシミュレーション結果を比較例と比較して示している。
図8では、100kluxの背景光下での計測における分解能、
図9では、0luxの背景光下での計測における分解能が示される。比較例1は、サブフレーム毎に1種類のレンジシフトを設定し、1フレーム期間内でサブフレームを1種類とした場合、比較例2は、サブフレーム毎に2種類のレンジシフトを設定し、1フレーム期間内でサブフレームを1種類とした場合、比較例3は、サブフレーム毎に3種類のレンジシフトを設定し、1フレーム期間内でサブフレームを1種類とした場合、比較例4は、サブフレーム毎に4種類のレンジシフトを設定し、1フレーム期間内でサブフレームを1種類とした場合、をそれぞれ示している。実施例1は、サブフレーム毎に4種類のレンジシフトを設定し、1フレーム期間内の2種類のサブフレーム期間でサブフレームのレンジシフトを2種類にシフトさせた場合、実施例2は、サブフレーム毎に4種類のレンジシフトを設定し、1フレーム期間内の3種類のサブフレーム期間でサブフレームのレンジシフトを3種類にシフトさせた場合、実施例3は、サブフレーム毎に4種類のレンジシフトを設定し、1フレーム期間内の4種類のサブフレーム期間でサブフレームのレンジシフトを4種類にシフトさせた場合、をそれぞれ示している。ただし、実施例1~3では、複数のサブフレーム期間の長さの重み付けは行わず、複数のサブフレーム期間の長さは1フレーム期間内で均等と設定されていることを想定している。
【0059】
図8に示すように、比較例1では6mの距離計測において約7mの分解能が見積もられているのに対して、実施例1~3においては、サブフレーム期間の個数を増やすに従って分解能が改善され、実施例3では6mの距離計測で20cmの分解能にまで向上することが判明した。また、
図9に示すように、比較例1では6mの距離計測において約5.5cmの分解能が見積もられているのに対して、実施例1~3においては、サブフレーム期間の個数を増やすに従って分解能が改善され、実施例3では6mの距離計測で8mmの分解能にまで向上することが判明した。
【0060】
また、
図10には、100kluxの背景光下で0.2~6mの距離範囲を距離計測した際の本実施形態の距離分解能のシミュレーション結果を、サブフレーム期間の長さを重み付けした場合と重み付けしない場合とを比較して示している。グラフRG
15は、実施例3において定数Nexp=0としてサブフレーム期間の長さを重み付けしない場合、グラフRG
16は、実施例3において定数Nexp=2.5としてサブフレーム期間の長さを重み付けする場合を示している。この結果より、重み付けしない場合は6mまでの距離計測において距離分解能のワースト値が21.5cmであるのに対し、重み付けした場合は距離分解能のワースト値が14cmまで改善されている。
【0061】
また、
図11には、100kluxの背景光下で0.2~6mの距離範囲を距離計測した際の本実施形態の信号読み出し毎の発生電子数のシミュレーション結果を、比較例と比較して示している。グラフCG
1は、比較例4において1フレーム期間単位で信号読み出しを行う際の発生電子数を示し、グラフCG
2は、実施例3において、
図2の(d)部に示すように設定されたサブフレーム期間F
1~F
4単位で信号を読み出す際の発生電子数を示している。これらの結果に示すように、本実施形態では、広い計測範囲で信号読み出しにおける発生電子数が抑えられている。
【0062】
このように、本実施形態では、サブフレーム毎の信号読み出しを行うことで、太陽光のような強い背景光に起因する大量の電荷による飽和を防止できる。また、画素の電荷検出部の飽和電子数を比較的低く設定できるので、画素に内蔵する電荷検出のためのキャパシタのサイズを小さくできる。例えば、電子数を100,000個以下にできれば、10fFのキャパシタで100kluxの背景光まで対応できる。キャパシタを小さくできることにより、変換利得を大きくすることができ、ノイズに対しても有利となる。
【0063】
一方で、サブフレーム毎の信号読み出しを行うことで、読み出しノイズが加算され、距離計算の分解能が低下する可能性がある。しかしながら、強い背景光によるショットノイズが支配する状況下では、読み出し1回あたりのノイズを十分に小さくすることによってその影響を小さくすることができる。
【0064】
なお、本発明は、上述した実施形態の態様に限定されるものではない。
【0065】
上述した実施形態では、画素回路13に4つの電荷読出領域221~224が設けられているが、電荷読出領域は3つ以上であれば任意の個数で設けられていてもよい。その場合は、制御電極及び電圧検出手段は電荷読出領域の個数に対応して設けられ、演算回路12は、それぞれの電荷読出領域から読み出された検出信号を基に距離情報を計算する。
【0066】
また上述した実施形態では、1フレーム期間に4種類のサブフレーム期間F1~F4が含まれていたが、2以上のサブフレーム期間であれば任意の種類のサブフレーム期間を含んでいてもよい。その場合は、演算回路12の電荷転送制御手段32は、パルス光LPの発生タイミングに対して、サブフレーム期間の種類の数に応じて、制御パルスの遅れ時間を異なる時間にシフトさせるように制御パルスのタイミングを設定する。
【0067】
上記実施形態では、演算回路12の距離計算手段は、1フレーム期間内で4種類のサブフレーム期間F1~F4毎に第1~第4の検出信号S1~S4を対象に距離の計算を実行していた。しかし、そのような態様には限定されない。
【0068】
例えば、距離計算手段は、2つのサブフレーム期間F
1,F
2で跨って検出された検出信号を対象に距離の計算を実行してもよい。
図12を参照しながら、このような態様の変形例における、演算回路12の距離計算手段による距離計算の手順の詳細を説明する。なお、本変形例では、2つのサブフレーム期間F
1,F
2で跨って検出された検出信号を基に距離の計算が実行されているが、同様に、2つのサブフレーム期間F
2,F
3あるいは2つのサブフレーム期間F
3,F
4で跨って検出された検出信号を基に距離の計算が実行されてもよい。
【0069】
図12は、本変形例によって扱われる各種信号のタイミングチャート、及び計算される各種値の遅れ時間T
Dに対する変化を示すグラフである。
図12において、(a)部~(c)部には、それぞれ、サブフレーム期間F
1において印加される制御パルスG
1
(1)~G
4
(1)、サブフレーム期間F
2において印加される制御パルスG
1
(2)~G
4
(2)、及びパルス光L
Pのタイミングを示し、(d)部~(e)部には、それぞれ、サブフレーム期間F
1,F
2において検出される第1~第4の検出信号S
1
(1)~S
4
(1),S
1
(2)~S
4
(2)の値を示している。また、
図12において、(f)部~(g)部には、差分値S
1-3
(1),S
1-3
(2),S
2-4
(1),S
2-4
(2)の値、(h)部~(i)部には、距離データ有効性判定信号S
A
(1),S
A
(2)の値、(j)部~(o)部には、距離計算参照信号X
R
(1),Y
R
(1),X
R
(B),Y
R
(B),X
R
(2),Y
R
(2)の値を、遅れ時間T
Dに対応して示し、(p)部には、遅れ時間T
Dにおけるデータ有効範囲を示し、(q)部には、遅れ時間T
Dにおける測定可能範囲を示す。
【0070】
本変形例にかかる演算回路12は、上述した実施形態と同様にして、それぞれのサブフレーム期間F
1,F
2において検出された検出信号S
1
(1)~S
4
(1),S
1
(2)~S
4
(2)を基に、差分値S
1-3
(1),S
1-3
(2),S
2-4
(1),S
2-4
(2)を計算する。そして、演算回路12は、これらの差分値を基に、上述した実施形態と同様にして、各サブフレーム期間F
1,F
2に対応した距離データ有効性判定信号S
A
(1),S
A
(2)の値を計算する。そして、それぞれの距離データ有効性判定信号S
A
(1),S
A
(2)の値が閾値Th
1と比較されることにより、それぞれの検出信号S
1
(1)~S
4
(1),S
1
(2)~S
4
(2)を用いた距離の計算が有効であるか否かが判定される。例えば、閾値Th
1を“0”近傍に設定することにより、
図12の(p)部に示すように、遅れ時間T
Dの“-1”~“0”の間の値から“7”~“8”の間の値までの範囲が、距離の計算が有効な範囲である「データ有効範囲」であると判定される。
【0071】
さらに、上記実施形態と同様にして、サブフレーム期間F1に対応して、第1の距離計算参照信号XR
(1)及び第2の距離計算参照信号YR
(1)の値が計算される。それに加えて、本変形例では、2つのサブフレーム期間F1,F2に跨って検出された検出信号を基に、下記式(10)及び(11)を用いて、距離計算参照信号XR
(B),YR
(B)の値が計算される。
XR
(B)=3+(S1-3
(1)+S1-3
(2))/(SA
(1)+SA
(2))…(10)
YR
(B)=4+(S2-4
(1)+S2-4
(2))/(SA
(1)+SA
(2))…(11)
さらに、サブフレーム期間F2に対応して、第1の距離計算参照信号XR
(2)及び第2の距離計算参照信号YR
(2)の値が、下記式(12)及び(13)を用いて、計算される。
XR
(2)=5-S1-3
(2)/SA
(2)…(12)
YR
(2)=6-S2-4
(2)/SA
(2)…(13)
【0072】
次に、本変形例にかかる演算回路12によって、距離計算のために参照する値が、距離計算参照信号XR
(1),XR
(B),XR
(2)と距離計算参照信号YR
(1),YR
(B),YR
(2)とのうちから選択される。例えば、距離データ有効性判定信号SA
(1)の値が閾値Th1以上である場合には、上記実施形態と同様にして、距離計算参照信号XR
(1),YR
(1)の値に応じて、距離計算参照信号XR
(1)及びYR
(1)のいずれかが選択される。距離データ有効性判定信号SA
(2)の値が閾値Th1以上である場合には、上記実施形態と同様にして、距離計算参照信号XR
(2),YR
(2)の値に応じて、距離計算参照信号XR
(2)及びYR
(2)のいずれかが選択される。さらに、距離データ有効性判定信号SA
(1),SA
(2)のいずれかの値が閾値Th1以上である場合であって、距離計算参照信号XR
(1),XR
(2)と距離計算参照信号YR
(1),YR
(2)とのうちからいずれの値も選択されなかった場合には、距離計算参照信号XR
(B),YR
(B)の値に応じて、距離計算参照信号XR
(B)及びYR
(B)のいずれかが選択される。
【0073】
最後に、本変形例にかかる演算回路12によって、「データ有効範囲」にあると判定され、かつ、「測定可能範囲」にあると判定された場合に、該当画素に関して選択された距離計算参照信号XR
(1),XR
(B),XR
(2),YR
(1),YR
(B),YR
(2)を基に対象物Sの距離が算出され、全てのサブフレーム期間F1~F4における算出結果を平均化して距離情報が算出され、算出した各画素の距離情報を含む距離画像が生成および出力される。
【0074】
上述した手順によっても、入射パルス光LRによって生じる電荷量を4種類のサブフレーム期間F1~F4内の検出信号S1~S4に対応する4×4=16個の時間ウィンドウに分配することができるので、遅れ時間TDに対応した計算可能な範囲を広げることができ、かつ、時間ウィンドウの時間幅も小さくすることができる。さらに、距離計算参照信号XR
(1),XR
(B),XR
(2),YR
(1),YR
(B),YR
(2)のうちで遅れ時間TDに対して線形に変化する値を選んで距離の計算を行うので、対象物Sが位置する範囲に対応して適切な距離データ参照信号の値を利用して、切れ目のない範囲の距離を計算することができ、対象物Sの位置にかかわらず精度の高い画像信号を生成することができる。例えば、1つのサブフレーム期間ごとに4つの時間ウィンドウを設定し、3つのサブフレーム期間毎に距離の計算を行うと、11個の時間ウィンドウに対して入射パルス光LRが入射した場合にシンプルな計算で距離を求めることができる。同様に、M個の時間ウィンドウが設定されたサブフレーム期間をN種類設定する場合は、連続したM×N-1個の時間ウィンドウに対応して入射パルス光LRが入射した場合を想定して距離を計算することができる。
【0075】
また、上述した実施形態では、4種類のサブフレーム期間F
1~F
4の間で、第1~第4の制御パルスG
1~G
4のうち少なくとも制御パルスG
1の印加回数を変化させるように構成されてもよい。
図13を参照しながら、このような態様の変形例における、演算回路12の電荷転送制御手段32による制御パルスG
1~G
4の印加タイミングの制御の詳細を説明する。
【0076】
図13は、本変形例におけるサブフレーム期間F
1でのパルス光L
P及び第1~第4の制御パルスG
1~G
4の制御タイミングを示すタイミングチャートである。なお、
図13には、サブフレーム期間F
1でのタイミング制御を示しているが、他のサブフレーム期間F
2~F
4でのタイミング制御は、
図3又は
図4に示した制御状態と同一であってよい。
【0077】
すなわち、本変形例の電荷転送制御手段32では、パルス光L
Pの印加タイミングに対する第1~第4の制御パルスG
1~G
4の遅れ時間が短いサブフレーム期間F
1~F
4において、順次印加される第1~第4の制御パルスG
1~G
4の印加回数のレート(単位時間当たりの印加回数)を、第4~第1の制御パルスG
4~G
1の順番で下げるように、第1~第4の制御パルスG
1~G
4の印加タイミングを制御する。ただし、少なくとも第1の制御パルスG
1の印加回数のレートが下げられていればよい。すなわち、
図13に示す例では、電荷転送制御手段32は、遅れ時間が最も短いサブフレーム期間F
1において、制御パルスG
1~G
3の印加回数を間引くように制御し、サブフレーム期間F
1内での間引き回数を、第3~第1の制御パルスG
3~G
1の順番で多くするように制御する。より具体的には、サブフレーム期間F
1内での第1~第4の制御パルスG
1~G
4の印加回数が、それぞれ、N1・(1/4)、N1・(2/4)、N1・(3/4)、N1となるように制御される。
【0078】
また、本変形例では、サブフレーム期間F
1でのパルス光L
P及び第1~第4の制御パルスG
1~G
4の制御タイミングが、
図14に示すように制御されてもよい。
【0079】
すなわち、本変形例の電荷転送制御手段32では、パルス光L
Pの印加タイミングに対する第1~第4の制御パルスG
1~G
4の遅れ時間が短いサブフレーム期間F
1~F
4において、パルス光L
Pの印加直後に印加される測定対象の距離範囲に相当する遅れ時間を持つ第1~第4の制御パルスG
1~G
4の印加回数のレートを、第4~第1の制御パルスG
4~G
1の順番で下げるように、第1~第4の制御パルスG
1~G
4の印加タイミングを制御する。ただし、少なくとも第1の制御パルスG
1の印加回数のレートが下げられていればよい。すなわち、
図14に示す例では、電荷転送制御手段32は、遅れ時間が最も短いサブフレーム期間F
1において、制御パルスG
1~G
3の一部をパルス光L
Pの印加直前の測定対象の距離範囲に相当しない遅れ時間のタイミングに変更するように制御し、サブフレーム期間F
1内での印加タイミングの変更回数を、第3~第1の制御パルスG
3~G
1の順番で多くするように制御する。このように印加タイミングが変更された制御パルスG
3~G
1の印加により、背景光のみが検出信号に反映されるようになる。より具体的には、サブフレーム期間F
1内でのパルス光L
Pの印加直後に印加される第1~第4の制御パルスG
1~G
4の印加回数が、それぞれ、N1・(1/4)、N1・(2/4)、N1・(3/4)、N1となるように制御される。
【0080】
上記変形例によれば、近い距離計測範囲の対象物Sを対象にした場合に検出信号の飽和を防止できる結果、距離計測のダイナミックレンジを向上させることができる。すなわち、近距離領域の対象物Sを対象にした場合には、強い入射パルス光LRに起因して発生電子数が非常に多くなり、画素回路13における飽和電子数を超える可能性がある。本変形例では、近距離領域の測定のための時間ウィンドウが設定されたサブフレーム期間においては時間ウィンドウによる電荷取り込み回数を少なくして発生電子数を抑えている。その結果、画素回路13における発生電子数を飽和電子数の範囲に収めることができ、遠距離領域の対象物Sを対象にした場合の距離分解能を十分に高めつつ、近距離領域の対象物を対象にした場合の距離分解能も十分な値に維持できる。
【0081】
図15には、0luxの背景光下で0.2~6mの距離範囲を距離計測した際の本変形例の信号読み出し毎の発生電子数のシミュレーション結果を示している。グラフCG
3は、サブフレーム期間F
1において第1の制御パルスG
1の印加回数を1/4に間引きし、第2の制御パルスG
2の印加回数を2/4に間引きした場合における1フレーム期間での発生電子数を示している。また、グラフCG
4は、第1~第4の制御パルスG
1~G
4を間引きしない場合における1フレーム期間での発生電子数を示している。これらの結果に示すように、本変形例では、約1mの距離までの近い計測範囲で信号読み出しにおける発生電子数が抑えられている。
【0082】
また、
図16には、0luxの背景光下で0.2~6mの距離範囲を距離計測した際の本変形例における距離分解能のシミュレーション結果を示している。グラフRG
17は、サブフレーム期間F
1において第1の制御パルスG
1の印加回数を1/4に間引きし、第2の制御パルスG
2の印加回数を2/4に間引きした場合における距離分解能を示している。また、グラフRG
18は、第1~第4の制御パルスG
1~G
4を間引きしない場合における距離分解能を示している。グラフRG
17に示すように、本変形例では、制御パルスを間引きした場合でも距離分解能は0.8mの距離において約3.2mm以下に抑えられている。
【0083】
また、上述した実施形態では、各サブフレーム期間F1~F4毎の長さが、パルス光LPの発生タイミングに対する制御パルスG1~G4のそれぞれの遅れ時間が長くなるほど長くなるように設定されている。その代わりに、変形例として、1フレーム期間内のそれぞれのサブフレーム期間F1~F4内におけるパルス光LPの強度が、パルス光LPの発生タイミングに対する制御パルスG1~G4のそれぞれの遅れ時間が短くなるほど弱くなるように重み付けして設定されてもよい。
【0084】
図17には、このような態様の変形例における、演算回路12の電荷転送制御手段32及び光源制御手段31による制御パルスG
1~G
4の印加タイミング及びパルス光L
Pの発生タイミングを示している。この変形例では、演算回路12の光源制御手段31によって、各サブフレーム期間F
1~F
3内において発生するパルス光L
Pの強度が、それぞれ、I
1、I
2、I
3(I
1<I
2<I
3)と設定される。詳細には、光源11が点光源であると想定できる場合、パルス光L
Pの反射光が距離の2乗に反比例して減衰するので、下記式;
I
1:I
2:I
3=(1/3)
2:(2/3)
2:1=1:4:9
に示すような重み付けによって設定される。サブフレーム期間F
4内のパルス光L
Pの強度も同様に設定される。この際、各サブフレーム期間F
1~F
4内におけるパルス光L
Pの繰り返し回数N
1~N
4は、同等に設定される。
【0085】
このような変形例によっても、サブフレーム期間F1~F4毎の測距範囲に応じて、遠い測距範囲のフレームに関しては光パルスの投光強度を高くし、近い測距範囲のフレームに対しては投光強度を低くでき、距離分解能を高めることができる。特に、入射パルス光LRの強度は距離の二乗に反比例して弱くなることから、光パルスの強度を測距距離の二乗で重み付けしている。これにより、距離分解能が最も低下する最長の測距距離のサブフレーム期間に対してより強いパルス光を使用することができ、距離分解能の最低値(最長の測距距離のサブフレーム期間で起こりうる)を改善することができる。その結果、距離の遠い距離計測範囲における距離分解能の低下を防止でき、全体として効率的に距離分解能を維持することができる。
【0086】
また、他の変形例として、1フレーム期間内のそれぞれのサブフレーム期間F1~F4内において、パルス光LPの発生タイミングに対する制御パルスG1~G4の遅れ時間が短くなるほど、電荷読出領域221~224の持つ容量が大きくなるように制御されてもよい。
【0087】
図18には、このような態様の変形例における画素回路13の要部の等価回路図を示している。
図18において、フォトダイオードD
ijが光電変換領域21に対応し、電荷排出用MOSトランジスタQ
Dのゲート端子が第5の制御電極25に対応し、転送用MOSトランジスタQ
1T~Q
4Tのゲート端子がそれぞれ第1~第4の制御電極24
1~24
4に対応する。フォトダイオードD
ijから転送用MOSトランジスタQ
1T~Q
4Tに至る静電誘導チャネル部は、自己のゲート端子が接地された接合型電界効果トランジスタQ
P1,Q
P2で表される。直列接続された2つの接合型電界効果トランジスタQ
P1,Q
P2の中間タップに、電荷排出用MOSトランジスタQ
Dのソース端子が接続され、電荷排出用MOSトランジスタQ
Dのドレイン端子が高電位の電源V
DDに接続されている。等価回路上では、転送用MOSトランジスタQ
1T~Q
4Tのそれぞれの一方の端部が接合型電界効果トランジスタQ
P2にT字型に接続された構成として表される。
【0088】
さらに、
図18に示すように、転送用MOSトランジスタQ
1T~Q
4Tのそれぞれの他方の端部には、電荷読出領域22
1~22
4、及び電圧検出手段26
1~26
4が接続される。等価回路上は、電荷読出領域22
k(k=1,2,3,4)は、ノードD
k、キャパシタ(容量素子)C
ka,C
kb,C
kc、及び容量スイッチ用MOSトランジスタQ
kb,Q
kcで表され、電圧検出手段26
k(k=1,2,3,4)は、MOSトランジスタQ
kA,Q
kS、及び端子SL
kで表される。
【0089】
電荷読出領域22kにおいては、ノードDkとグラウンドとの間には、電荷蓄積用のキャパシタCkaが接続され、それと並列に、容量スイッチ用MOSトランジスタQkbと電荷蓄積用のキャパシタCkbとの直列回路、及び、容量スイッチ用MOSトランジスタQkcと電荷蓄積用のキャパシタCkcとの直列回路が接続されている。そして、容量スイッチ用MOSトランジスタQkbの4つのゲート端子が制御線SCbに接続され、容量スイッチ用MOSトランジスタQkcの4つのゲート端子が制御線SCcに接続され、演算回路12の電荷転送制御手段32から制御線SCb及び制御線SCcに与えられる制御信号によって、容量スイッチ用MOSトランジスタQkb及び容量スイッチ用MOSトランジスタQkcのオン/オフが独立に制御可能とされている。その結果、電荷転送制御手段32によって、電荷読出領域221~224の持つ容量が、4通りで変化するように制御可能とされる。
【0090】
ノードDkには、ノードDkの電荷量の変化に伴う電位変化を読み出すためのソースフォロア回路を構成する増幅トランジスタQkAのゲート端子に接続され、ノードDkにはさらに、信号の読み出し後に信号電荷を初期化するためのリセットトランジスタQkRが接続されている。また、増幅トランジスタQkAのソース端子には、読出画素選択用のスイッチとしての選択トランジスタQkSが接続され、選択トランジスタQkSの出力は検出信号を読み出すための信号読出線Skに接続されている。
【0091】
このような変形例においては、演算回路12の電荷転送制御手段32によって、各サブフレーム期間F1~F4において電荷を転送し検出信号を読み出す際に、電荷読出領域221~223の持つ容量を、それぞれ、C1、C2、C3(C1>C2>C3)と設定する。詳細には、光源11が点光源であると想定できる場合、パルス光LPの反射光が距離の2乗に反比例して減衰するので、下記式;
C1:C2:C3=1:(2/3)2:(1/3)2=9:4:1
に示すような重み付けによって設定される。例えば、Cka:Ckb:Ckc=1:3:5とし、C1=Cka+Ckb+Ckc、C2=Cka+Ckb、C3=Ckaと設定するように制御することで、このような重み付けが実現される。電荷読出領域224の持つ容量も同様に設定される。この際、各サブフレーム期間F1~F4内におけるパルス光LPの繰り返し回数N1~N4は、同等に設定される。
【0092】
このような変形例によっても、サブフレーム期間F1~F4毎の測距範囲に応じて、遠い測距範囲のフレームに関しては電荷を蓄積する容量を小さく、近い測距範囲のフレームに対しては電荷を蓄積する容量を大きくでき、距離分解能を高めることができる。特に、入射パルス光LRの強度は距離の二乗に反比例して弱くなることから、距離分解能が最も低下する最長の測距距離のサブフレーム期間に対してより小さい容量を使用することができ、距離分解能の最低値(最長の測距距離のサブフレーム期間で起こりうる)を改善することができる。その結果、距離の遠い距離計測範囲における距離分解能の低下を防止でき、全体として効率的に距離分解能を維持することができる。
【0093】
ここで、上記実施形態では、距離計算手段は、第1~第Nのサブフレーム期間内のそれぞれにおいて第1~第Mの制御パルスの印加に応じて検出された第1~第Mの検出信号を用いて、距離を計算する、こととしてもよい。この場合、対象物の距離計測範囲に応じて距離分解能の高い距離の計算が可能となる。
【0094】
また、距離計算手段は、第1~第Nのサブフレーム期間内のうちの2つのサブフレーム期間内において第1~第Mの制御パルスの印加に応じて検出された第1~第Mの検出信号を用いて、距離を計算する、こととしてもよい。この場合、対象物の複数の距離計測範囲に跨って切れ目のない距離の計算が可能となる。
【0095】
また、1フレーム期間内のそれぞれの第1~第N(Nは2以上の整数)のサブフレーム期間内におけるパルス光の繰り返し回数は、パルス光の発生タイミングに対する第1~第Mの制御パルスの遅れ時間が長くなるほど多くなるように、重み付けされる、ことでもよい。これにより、距離の遠い距離計測範囲における距離分解能の低下を防止でき、全体として効率的に距離分解能を維持することができる。
【0096】
さらに、電圧検出手段は、重み付けされて設定された期間のサブフレーム期間ごとに、第1~第Mの制御パルスの印加に応じて発生したそれぞれの第1~第Mの電荷読出領域の電圧を第1~第Mの検出信号として読み出してもよい。この場合、強い背景光に起因した検出信号の飽和を防止できる結果、距離計測のダイナミックレンジを向上させることができる。
【0097】
またさらに、電荷転送制御手段は、第1~第Nのサブフレーム期間の間で、パルス光の発生タイミングに対する第1~第Mの制御パルスの遅れ時間が短くなるほど、順次印加される第1~第Mの制御パルスのうちの少なくとも第1の制御パルスの印加回数のレートを下げるように設定する、ことでもよい。かかる構成を採れば、近い距離計測範囲の対象物を対象にした場合に検出信号の飽和を防止できる結果、距離計測のダイナミックレンジを向上させることができる。
【0098】
さらにまた、電荷転送制御手段は、第1~第Nのサブフレーム期間の間で、パルス光の発生タイミングに対する第1~第Mの制御パルスの遅れ時間が短くなるほど、順次印加される第1~第Mの制御パルスのうちの少なくとも第1の制御パルスの印加回数を間引くように設定する、ことでもよい。かかる構成を採れば、近い距離計測範囲の対象物を対象にした場合に検出信号の飽和を防止できる結果、距離計測のダイナミックレンジを向上させることができる。
【0099】
また、前記1フレーム期間内のそれぞれの前記第1~第Nのサブフレーム期間内における前記パルス光の強度は、前記パルス光の発生タイミングに対する前記第1~第Mの制御パルスの遅れ時間が短くなるほど弱くなるように、重み付けされる、ことでもよい。この場合、近い距離計測範囲の対象物を対象にした場合に検出信号の飽和を防止できる結果、距離計測のダイナミックレンジを向上させることができる。
【0100】
また、前記1フレーム期間内のそれぞれの前記第1~第Nのサブフレーム期間内において、前記パルス光の発生タイミングに対する前記第1~第Mの制御パルスの遅れ時間が短くなるほど、前記第1~第Mの電荷読出領域の持つ容量が大きくなるように制御される、ことでもよい。この場合、近い距離計測範囲の対象物を対象にした場合に検出信号の飽和を防止できる結果、距離計測のダイナミックレンジを向上させることができる。
【0101】
また、画素回路部が2次元アレイ状に配列されたイメージセンサを含んでいてもよい。かかる構成によれば、対象物の位置にかかわらず精度の高い2次元距離情報を含む距離画像を生成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の一側面は、画素毎に距離情報を含む距離画像を生成する距離画像測定装置および距離画像測定方法を使用用途とし、様々な距離計測範囲の対象物を対象にして距離分解能が向上された画像信号を生成することができるものである。
【符号の説明】
【0103】
10…距離画像センサ(距離画像測定装置)、11…光源、12…演算回路、13…画素回路(画素回路部)、21…光電変換領域、221~224…電荷読出領域、23…電荷排出領域、241~244,25…制御電極、261~264…電圧検出手段、31…光源制御手段、32…電荷転送制御手段、33…距離データ有効性判定信号生成手段、34…距離データ有効性判定手段、35…無効画素識別値生成手段、36…距離計算参照信号生成手段、37…距離計算参照信号選択手段、38…距離画像生成手段、F1~F4…サブフレーム期間、G1~G4,GD…制御パルス、LP…パルス光、S…対象物。