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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】人工血管搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/954 20130101AFI20221215BHJP
【FI】
A61F2/954
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019555399
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2018043454
(87)【国際公開番号】W WO2019103148
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2017225807
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514175852
【氏名又は名称】有限会社PTMC研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】井上 寛治
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-000312(JP,A)
【文献】特開2012-139500(JP,A)
【文献】特表2011-516202(JP,A)
【文献】特開平04-322665(JP,A)
【文献】特表2011-522590(JP,A)
【文献】特開2004-329955(JP,A)
【文献】特表2015-514548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/954
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントグラフトを搬送するための搬送管と、前記ステントグラフトを前記搬送管に取り付けるための取付機構とを具備し、
該取付機構が、ステントグラフトの搬送管に対する取付状態を維持する取付維持線を備え、該取付維持線の操作端部を引っ張ることにより、取付状態を解除して搬送管をステントグラフトから離脱させることができるようにしたものであって、
前記取付維持線の操作端部が前記搬送管内に収容されており、
該操作端部を前記搬送管外に引き出すための取付維持線引出機構として、一端部が前記取付維持線に取着され、他端部が前記搬送管の側周面に設けられた取付維持線引出窓から引き出されている取付維持線引出紐が設けられていることを特徴とするステントグラフト搬送装置。
【請求項2】
ステントグラフトを搬送するための搬送管と、前記ステントグラフトを収縮させるための収縮機構とを具備し、
該収縮機構が、ステントグラフトの収縮状態を維持する収縮維持線を備え、該収縮維持線の操作端部を引っ張ることにより、収縮状態を解除してステントグラフトを展開状態にできるようにしたものであって、
前記収縮維持線の操作端部が前記搬送管内に収容されており、
該操作端部を前記搬送管外に引き出すための収縮維持線引出機構として、一端部が前記収縮維持線に取着され、他端部が前記搬送管の側周面に設けられた収縮維持線引出窓から引き出されている収縮維持線引出紐が設けられていることを特徴とするステントグラフト搬送装置。
【請求項3】
前記ステントグラフトを収縮させるための収縮機構をさらに具備し、
該収縮機構が、ステントグラフトの収縮状態を維持する収縮維持線を備え、該収縮維持線の操作端部を引っ張ることにより、収縮状態を解除してステントグラフトを展開状態にできるようにしたものであって、
前記収縮維持線の操作端部が前記搬送管内に収容されており、
該操作端部を前記搬送管外に引き出すための収縮維持線引出機構として、一端部が前記収縮維持線に取着され、他端部が前記搬送管の側周面に設けられた収縮維持線引出窓から引き出されている収縮維持線引出紐が設けられていることを特徴とする請求項1記載のステントグラフト搬送装置。
【請求項4】
前記取付維持線引出窓と収縮維持線引出窓とが前記搬送管の軸方向に互いに偏位した部位に設けられている請求項3記載のステントグラフト搬送装置。
【請求項5】
前記ステントグラフトが主管とこの主管から分岐する枝管とを具備したものであって、該枝管に適用したものである請求項1記載のステントグラフト搬送装置。
【請求項6】
前記ステントグラフトが主管とこの主管から分岐する枝管とを具備したものであって、該枝管に適用したものである請求項2記載のステントグラフト搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントグラフトなどの人工血管を所望の箇所に搬送し留置する人工血管搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1に示すように、主管と該主管から分岐する枝管とからなるステントグラフトが開発されつつある。
【0003】
このような枝付きタイプのステントグラフトは、例えば、大動脈弓部とそこから分岐する分岐血管(例えば左鎖骨下動脈)に搬送されて留置される。
【0004】
その手順例(特に枝管の留置手順例)を具体的に説明する。
主管は、細長い折畳状態(収縮状態)にされて、ガイドワイヤが挿通する第1搬送管の周りに取り付けられている。また、枝管も、細長い折畳状態(収縮状態)にされて主管に沿わせてあり、枝付きステントグラフトが全体として細長い形状に維持されている。
上記枝付きステントグラフトは、このように細長く折り畳まれた状態で予めシースカテーテル内に収納されている。この状態で、シースカテーテルを血管内に挿入し、腹部大動脈又は胸部大動脈に達したら、その内部の枝付きステントグラフトを第1搬送管を用いてシースカテーテルから血管内に押し出し、ガイドワイヤに沿って分岐箇所にまで搬送する。
このことによって主管は所望位置にまで搬送されるが、ここから枝管を分岐血管に挿入する必要がある。
【0005】
そのために、枝管の先端部には、第2搬送管がそこから延伸するように取り付けられており、この第2搬送管の先端部を、分岐血管の先端側から挿入した把持ワイヤによって掴んで施術者が引っ張ることにより、該第2搬送管を分岐血管に導入し、それに伴って枝管を分岐血管内に導く。この状態において、第2搬送管の先端部は、分岐血管の先端側から体外に引き出されている。
【0006】
ところで、この第2搬送管には、枝管を折畳状態(収縮状態)に維持するための収縮維持線と、枝管の第2搬送管に対する取付状態を維持するための取付維持線とが収容されている。
施術者は、前述した手順で枝管を分岐血管内に導いた後、体外に引き出されている前記第2搬送管の先端部から収縮維持線を引き出して引っ張ることにより、収縮状態を解除し、枝管を展開状態にする。その後、同様に前記第2搬送管の先端部から取付維持線を引き出して引っ張り、取付状態を解除して、枝管から第2搬送管を取り外す。最後に、第2搬送管を体外に引き抜いて、該枝管を分岐血管内に留置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】再表00/025847
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した手順において、収縮維持線と取付維持線とを第2搬送管の先端部から引き出して引っ張る作業に煩雑性がある。
例えば、第2搬送管の外周には窓が設けられていて、この窓において内部の収縮維持線及び取付維持線が露出させてあり、術者は、この窓から収縮維持線及び取付維持線をピンセットなどで摘まんで引っ張り出せるようにしてあるところ、これに予想外に時間がかかったり、場合によっては摘まんだ際に前記維持線を切断してしまい、さらに手間取ったりする恐れがある。そして、かかる不具合は、枝管のみならず、同様の搬送構造を有するステントグラフトに共通する。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、ステントグラフトの搬送管に対する取付状態を維持する取付維持線又はステントグラフトの収縮状態を維持する収縮維持線を搬送管から簡単かつ確実に引き出せるようにして、取付解除操作又は収縮解除操作を容易ならしめるべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係るステントグラフト搬送装置は、ステントグラフトを搬送するための搬送管と、前記ステントグラフトを前記搬送管に取り付けるための取付機構とを具備し、該取付機構が、ステントグラフトの搬送管に対する取付状態を維持する取付維持線を備え、該取付維持線の操作端部を引っ張ることにより、取付状態を解除して搬送管をステントグラフトから離脱させることができるようにしたものであって、前記取付維持線の操作端部が前記搬送管内に収容されており、該操作端部を前記搬送管外に引き出すための引出機構として、一端部が前記取付維持線に取着され、他端部が前記搬送管の側周面に設けられた引出窓から引き出されている引出紐が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るステントグラフト搬送装置は、ステントグラフトを搬送するための搬送管と、前記ステントグラフトを収縮させるための収縮機構とを具備し、該収縮機構が、ステントグラフトの収縮状態を維持する収縮維持線を備え、該収縮維持線の操作端部を引っ張ることにより、収縮状態を解除してステントグラフトを展開状態にできるようにしたものであって、前記収縮維持線の操作端部が前記搬送管内に収容されており、該操作端部を前記搬送管外に引き出すための引出機構として、一端部が前記収縮維持線に取着され、他端部が前記搬送管の側周面に設けられた引出窓から引き出されている引出紐が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明によれば、ステントグラフトを血管所定部位に留置後、搬送管をステントグラフトから取り外すこと、または、収縮状態にあるステントグラフトを留置時に展開状態にすることが簡単で確実に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態におけるステントグラフトの全体図である。
図2】同実施形態におけるステントグラフトの最終留置状態を示す状態図である。
図3】同実施形態におけるステントグラフトを収縮させる過程を示す収縮過程図である。
図4】同実施形態におけるステントグラフトをステントグラフト搬送装置に取り付けた状態を示す取付状態図である。
図5】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置の分解図である。
図6】同実施形態における管状体(姿勢制御部材等)を示す正面図及び側面図である。
図7】同実施形態における管状体(姿勢制御部材等)の縦断面である。
図8】同実施形態における第1外装チューブにまとめられている第1搬送管、第1係止線、第1制御線等を示す横縦断面である。
図9】同実施形態における第1外装チューブの手元側から延出する管状体、第1係止線、第1制御線等を示す斜視面である。
図10】同実施形態における第1外装チューブの先端側から延出する管状体、第1係止線、第1制御線等を示す斜視面である。
図11】同実施形態における第1取付機構によって、ステントグラフトを管状体に取り付ける工程を示す工程説明図である。
図12】同実施形態における第2取付機構、第2展開機構、制御線引出機構及び係止線引出機構を示す部分側面図である。
図13】同実施形態における第2展開機構及び制御線引出機構を利用して、収縮状態にある枝管を展開し、その後、第2取付機構及び係止線引出機構を利用して、枝管を第2搬送管から切り離す工程を示す工程説明図である。
図14】同実施形態における第2展開機構及び制御線引出機構を利用して、収縮状態にある枝管を展開し、その後、第2取付機構及び係止線引出機構を利用して、枝管を第2搬送管から切り離す工程を示す工程説明図である。
図15】同実施形態における第2展開機構及び制御線引出機構を利用して、収縮状態にある枝管を展開し、その後、第2取付機構及び係止線引出機構を利用して、枝管を第2搬送管から切り離す工程を示す工程説明図である。
図16】同実施形態における第2展開機構及び制御線引出機構を利用して、収縮状態にある枝管を展開し、その後、第2取付機構及び係止線引出機構を利用して、枝管を第2搬送管から切り離す工程を示す工程説明図である。
図17】同実施形態における第1展開機構を利用して、収縮状態にある主管を展開する工程を示す工程説明図である。
図18】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図19】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図20】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図21】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図22】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図23】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図24】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図25】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図26】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図27】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図28】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図29】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図30】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図31】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図32】同実施形態におけるステントグラフト搬送装置を利用してステントグラフトを血管内に留置する工程を示す工程説明図である。
図33】本発明の他の実施形態における第2姿勢制御部材を示す側面図である。
図34】同実施形態における第2姿勢制御部材を示す斜視図である。
図35】本発明のさらに他の実施形態における第1取付機構を示す図である。
図36】本発明のさらに他の実施形態における姿勢制御部材を示す断面図である。
図37】本発明のさらに他の実施形態における姿勢制御部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係るステントグラフト搬送装置100は、人工血管(ここではステントグラフト200)を、血管を通じて病変部位にまで搬送し、留置するものである。
【0016】
このステントグラフト搬送装置100の説明をする前に、まずはその搬送対象であるステントグラフト200について簡単に説明しておく。
【0017】
<ステントグラフト200の構成>
この実施形態におけるステントグラフト200は、図1図2に示すように、大径長尺の主管210と、該主管210の一端部から分岐する小径短尺の枝管220とからなる枝付き形状をなすものであり、ここでは、例えば、大動脈弓部に留置される。
【0018】
前記主管210は、その先端(上流端)が、左鎖骨下動脈と左総頸動脈との間に位置づけられるとともに、そこから大動脈弓部に沿って湾曲しながら下流に延び、その基端(下流端)が、大動脈瘤よりも下流となるように配置される。また、前記枝管220は、主管210の一端部から分岐・延伸して、左鎖骨下動脈に挿入・配置される。
【0019】
これら主管210及び枝管220は、管状をなすグラフト201と、該グラフト201を拡開させるためのステント202とをそれぞれ備えている。
【0020】
前記グラフト201は、例えば、耐久性がよく、組織反応の少ない樹脂シートを管状に形成したものであり、この実施形態では、周方向に沿った多数の折り目(図示しない)を予め設けておくことにより、湾曲や管軸方向に沿った屈伸を容易ならしめてある。シートの素材としては、繊維の編織物、不織布、多孔質シートなどを挙げることができる。また、このグラフト201を構成するシートの表面を、ヘパリン、コラーゲン、アセチルサリチル酸、ゼラチン等の抗血栓性材料で被覆処理しても構わない。
【0021】
前記ステント202は、グラフト201の一方から他方の開口端に亘って、所定間隔(ここでは略一定間隔であるが、一定間隔でなくともよい。)で配設した複数の円環状弾性リング202aからなるものであり、自然状態では、これら弾性リング202aによってグラフト201が概略円筒状に拡開する。なお、前記円環状弾性リング202aが互いに離間して配置されているという構成によって、このステントグラフト200は、軸方向に非常に曲がりやすい、湾曲性に富んだものとなっている。
【0022】
該弾性リング202aは、例えば、所定の弾性を有する極細径の金属線(図示しない)を複数重(多重)に巻き回して形成した円環状のものである。その素材としては、ステンレス、タンタル、チタン、白金、金、タングステンなどの金属やその合金を挙げることができる。このように、弾性リング202aを複数重巻きの細径金属線で構成することによって、単一線で形成した一重巻きのものと比べ、耐久性が向上し、また、仮に破損しても、部分破断が生じるだけで、即座にその機能が失われないという効果を得られる。なお、この弾性リング202aを、グラフト201同様、抗血栓性材料で被覆処理しても構わないし、樹脂製のものにしてもよい。
【0023】
なお、ステント202として、曲がりにくいという欠点はあるものの、いわゆるZステント202や網状のものなど、他のタイプのものを用いても構わない。
【0024】
かかる構成の主管210及び枝管220は、図3に示すように、径方向外側から内向きの外力を与えると、各弾性リング202aが鞍状に湾曲し、それに応じてグラフト201も変形して径方向に収縮できるように構成してある。ここでいう「鞍状」に湾曲するとは、同図に示すように、弾性リング202aが2つ折となる向きに湾曲するとともに、さらにそれが2つ折になる向きに湾曲して、山谷が交互に2つずつ現われるように変形することをいう。
【0025】
<ステントグラフト搬送装置100の説明>
次に、ステントグラフト搬送装置100について説明する。
このステントグラフト搬送装置100は、図4図5に示すように、血管を挿通可能な径にまで収縮させたステントグラフト200を所定の留置部位(この実施形態であれば大動脈弓部及び左鎖骨下動脈)にまで搬送する搬送機構と、前記搬送機構によって留置部位にまで搬送されたステントグラフト200を収縮状態から展開状態に展開させる展開機構とを備えている。
以下に各部を詳述する。
【0026】
<搬送機構>
搬送機構は、図4図5等に示すように、血管内に挿入されたガイドワイヤ3(請求項でいうガイド線)に沿って、収縮状態にあるステントグラフト200を大動脈弓部に搬送する主搬送機構4と、該主搬送機構4によって大動脈弓部に搬送されたステントグラフト200の枝管220を、分岐血管たる左鎖骨下動脈に挿入・配置する副搬送機構5とを備えたものである。
【0027】
<主搬送機構4>
主搬送機構4は、図4図5等に示すように、ガイドワイヤ3が内部をスライド可能に挿通する管状体41と、該管状体41に前記ステントグラフト200(の主管210)を取り外し可能に取り付ける第1取付機構42とを具備しており、大動脈内を通るガイドワイヤ3に沿って、管状体41及びこれに取り付けられたステントグラフト200を搬送できるように構成したものである。
【0028】
<管状体41>
前記管状体41は、図5図6図7等に示すように、ガイドワイヤ3が内部を挿通するチューブ状をなす第1搬送管412と、この第1搬送管412の先端部に取り付けられた樹脂製の姿勢制御部材411とを備えたものである。ステントグラフト200は、この管状体41に外装されるとともに、その先端部において前記姿勢制御部材411を咥え込んで装着されることにより該管状体41に取り付けられる。
【0029】
前記姿勢制御部材411は、長細いものであり、先端部が概略円錐状のような先細り形状となっている円柱状のヘッダ411aと、該ヘッダ411aの後端から一体に延伸する扁平形状をなす装着体411bとを具備している。その長手方向の長さは、前記ステントグラフト200(の主管210)の長手方向の長さの1/4以下であり、主管210と比べれば短尺である。
【0030】
しかして、前記ヘッダ411aの先端部を円錐状としているのは、血管内を引っ掛かりなく円滑に進むことができるようにするためである。他方、装着体411bの基端(この実施形態では、基端面における周縁部)は、角張らないように滑らかに丸めてある。これは、ステントグラフト200の留置後、該姿勢制御部材を引き抜く際に引っ掛かりにくくするためである。
【0031】
一方、前記装着体411bを扁平形状にしているのは、この装着体411bには、図4図6等に示すように、収縮状態にした主管210の先端開口部を咥え込ませて取り付けるところ、この状態で主管210と姿勢制御部材411とを確実に共回りさせるためである。
【0032】
また、もうひとつの理由としては、装着体411bが扁平形状であるため、円柱状をなすヘッダ411aとの間に段差が生じるところ、この段差の高さを主管210の弾性リング202aの径以上に設定して、図6(b)に示すように、該装着体411bを咥え込んだ主管210の先端部が、前方から見て前記段差に隠れるようにするためである。このことによって、ステントグラフト200の搬送中に、主管210の開口先端部が血管などに引っ掛かることを抑制できるので、円滑な搬送を担保できる。
【0033】
さらに、この姿勢制御部材411には、図7に示すように、ガイドワイヤ3が挿通する貫通孔411cが長手方向に沿って設けられている。本実施形態においては、この貫通孔411cのうち、装着体411bを貫通している部分が主に湾曲しており、ヘッダ411aを貫通する部分はほぼ直線状である。そのために、この実施形態では、装着体411bをやや湾曲させて扇形状をなすようにしてある。
【0034】
なお、貫通孔411cのうち、逆にヘッダ411aを貫通する部分が湾曲していてもよいし、貫通孔411c全体が湾曲していてもよい。
【0035】
前記第1搬送管412は、図6図7に示すように、内管412aと外管412bとからなり、内管412aが外管412bの先端部から突出するように構成された二重管構造のものである。
【0036】
内管412aは、例えばポリイミドとPTFEの2層構造のものを採用しており、外管412bに比べて弾性があり、ねじれやすいくしてある。そして、この内管412aの先端部に前記姿勢制御部材411が接続してある。より具体的には、内管412aの先端部が前記貫通孔411cを貫通するようにして姿勢制御部材411に接着されている。この内管412aにおいて、外管412bから突出した部分の長さは、図4図5に示すように、姿勢制御部材411とそれに取り付けられたステントグラフト200との合計長さよりも長くなるように設定してある。したがって、外管412bの先端は、ステントグラフト200の後端よりも後方に(手元側に)離間しており、その間は内管412aが露出している。
【0037】
外管412bは、例えばポリイミド製のものであり、内管412aよりも剛性が高いものを用いている。
【0038】
これら外管412bと内管412aとは、図7図9に示すように、外管412bの先端よりも根元側のみにおいて、より具体的には、施術者が操作する操作部位近傍のみにおいて接着剤ATなどによって互いに固着されている。
【0039】
<第1取付機構42>
第1取付機構42は、前記管状体41、より具体的には、姿勢制御部材411に、ステントグラフト200の主管210を抜脱可能に取り付けるための機構である。
【0040】
具体的に説明する。
【0041】
この第1取付機構42は、図6図7図11等に示すように、前記姿勢制御部材411の外周面に設けられた第1窓421と、この第1窓421内を挿通している第1係止線422と、前記管状体41(ここでは姿勢制御部材411)に基端部が取り付けられた複数の第1着脱紐423と、前記主管210の先端開口縁部に設けられた複数の第1紐挿通孔424とを利用して構成されたものである。
【0042】
前記第1窓421は、前記ヘッダ411aの一部を側周面から切り欠いて形成したものである。この実施形態での第1窓421は、同図に示すように、その貫通方向が姿勢制御部材411の湾曲方向と合致させてあるが、図37に示すように、湾曲方向とは直交する方向に貫通するようにしてもよい。この図37のような貫通方向とすることで、第1窓421の開口端が血管壁の大彎曲側と直接当たりにくくなり、そこを傷つける恐れを低減させることができる。
【0043】
前記第1係止線422は、金属製又は樹脂製の細線である。
【0044】
前記第1着脱紐423は、その先端部に少なくとも輪が形成された(ここでは全部が輪になっている。)ものであり、その基端部が当該管状体41に取り付けられている。
【0045】
より具体的に説明すると、第1着脱紐423の基端部は、前記第1窓421内を貫通している第1搬送管412(の内管412a)に巻き回されて取り付けられており、その先端部が前記第1窓421を通って外側に引き出されている。なお、その他の態様として、第1着脱紐423の基端部を姿勢制御部材411に接着剤などによって固定しても構わない。しかして、このような構成の第1着脱紐423がここでは4本設けられている。
【0046】
前記第1紐挿通孔424は、主管210の前端開口縁部に糸を環状にして取り付けることにより形成したものであり、ここでは等間隔に4つが設けられている。
【0047】
次に、上述した第1取付機構42によって、管状体41が主管210にどのようにして取り付けられているかを説明する。
【0048】
図11(a)~(c)に示すように、前記各4本の第1着脱紐423は、その先端から、主管210の開口縁部の4箇所に設けられた第1紐挿通孔424にそれぞれ通され、第1紐挿通孔424を通った第1着脱紐423の先端輪が前記第1窓421を通り、その内部の第1係止線422に引っ掛けられている。このようにして、主管210が第1着脱紐423を介して姿勢制御部材411に取着されている。
【0049】
しかして、主管210を姿勢制御部材411(管状体41)から取り外す場合には、前記第1係止線422の基端部を施術者が引っ張ればよい。このことにより、第1係止線422の先端が第1窓421よりも手元側に移動し、第1着脱紐423の先端輪が第1係止線422から外れて、図11(a)の状態に戻り、主管210は姿勢制御部材411(管状体41)から離脱可能な状態になる。
【0050】
なお、第1着脱紐の本数と第1紐挿通孔の数とは同数でなくともよい。例えば、この実施形態のように第1紐挿通孔が4つ設けられてる場合、第1着脱紐の本数をそれよりも少ない1本のみとし、これを全ての第1紐挿通孔に通して、その先端輪を第1係止線に引っ掛けるようにしてもよい。また、第1着脱紐を2本にして、各1本が互いに異なる2つの第1紐挿通孔にそれぞれ通るようにしてもよい。
【0051】
<副搬送機構5>
副搬送機構5は、図4図5図12図16等に示すように、枝管220を分岐血管(ここでは左鎖骨下動脈)に挿入・留置するためのものであり、第2搬送管51(請求項でいう搬送管に対応)と、該第2搬送管51に前記枝管220を取り外し可能に取り付けるための第2取付機構52とを具備している。
【0052】
<第2搬送管51>
第2搬送管51は、細径のフレキシブルなチューブ(ここでは複数ルーメン(図示では2ルーメンだが、3ルーメン以上でもよい。)のものである。)であり、その基端部が枝管220の開口部に取り付けられている。
【0053】
<第2取付機構52>
第2取付機構52は、前記第2搬送管51内を挿通する第2係止線521(請求項でいう取付維持線)と、該第2搬送管51の外周面に設けられた第2窓522と、第2搬送管51に取り付けられた1又は複数の第2着脱紐523(ここでは1本)と、前記枝管220の先端開口縁部に設けられた複数(ここでは2つ)の第2紐挿通孔524とを利用して構成されたものであり、原理的には前記第1取付機構42と同じである。
【0054】
より具体的に説明する。
前記第2係止線521は、手元で押引操作可能な金属製又は樹脂製のものであり、第2搬送管51のいずれか1つのルーメン(以下、第1ルーメンという。)に挿入されている。
【0055】
前記第2窓522は、ここでは、第2搬送管51の一部を側面から切り欠いて前記第1ルーメンに連通するように形成したものであり、この第2窓522から、前記第1ルーメンを通る前記第2係止線521が露出するようにしてある。
【0056】
前記第2着脱紐523は、少なくとも先端部に輪が形成されたもの(ここでは全部が輪になっている。)であり、その基端部が、前記第2搬送管51における第2窓522の近傍(ここでは第2窓522よりも下流側)に接着剤などによって固定されている。
【0057】
前記第2紐挿通孔524は、枝管220の先端開口縁部に糸を環状にして取り付けることにより形成したものである。
【0058】
このような第2取付機構52によって、枝管220は以下のような態様で第2搬送管51に取り付けられている。
【0059】
すなわち、前記各第2着脱紐523は、その先端から枝管220の開口縁部の2箇所に設けられた前記第2紐挿通孔524に連続して通されている。そして、各第2紐挿通孔524を通った第2着脱紐523の先端輪が、前記第2窓522を通ってその内部の第2係止線521に引っ掛けられている。このようにして、枝管220が第2着脱紐523を介して第2搬送管51に取着されている。
【0060】
しかして、枝管220を第2搬送管51から取り外す場合には、第2係止線521を引っ張る。このことによって、第2着脱紐523の先端輪が第2係止線521から外れ、枝管220は第2搬送管51から離脱可能な状態となる。
【0061】
<展開機構>
展開機構は、径方向に収縮されて留置位置にまで搬送されたステントグラフト200を、展開させ、血管内に密着させるものであり、この実施形態では、主管210用の第1展開機構21と枝管220用の第2展開機構22とが用意されている。
【0062】
<第1展開機構21>
第1展開機構21は、図4図17に示すように、主管210の外側周面を縛って収縮状態を維持する第1繋縛紐211と、この第1繋縛紐211の繋縛と解除とを制御する金属製又は樹脂製の第1制御線212とを備えたものである。
【0063】
前記第1繋縛紐211は、例えば無端環状をなすものであり、繋縛するときには、この第1繋縛紐211を2つ折りの二重線にして、収縮状態にある主管210に巻き回し、その両端部が重合するようにしてある。そして、その重合によって形成された輪に、軸方向に沿って伸びる金属製又は樹脂製の細線である前記第1制御線212が挿通させてある。この構成によって、図17(a)に示すように、第1繋縛紐211の両端部の離間が防止されて繋縛状態が維持される。
【0064】
しかして、この繋縛状態から第1制御線212を引き抜くと、図17(b)に示すように、第1繋縛紐211の両端部同士の結合が解かれ、繋縛状態が解除される。
【0065】
本実施形態では、図4に示すように、複数の第1繋縛紐211が主管210の軸方向に沿って間欠的に設けられている。そして、主管210を縛っている各第1繋縛紐211に1本の第1制御線212が共通して挿通させてある。
【0066】
したがって、この第1制御線212を抜けば、主管210を縛っている全ての第1繋縛紐211が解かれ、該主管210は、ステント202(各弾性リング202a)の弾性復元力によって展開状態となる。
【0067】
<第2展開機構22>
第2展開機構22は、図12図16等に示すように、枝管220の外側周面を縛って収縮状態を維持する第2繋縛紐221と、この第2繋縛紐221の繋縛と解除とを制御する金属製又は樹脂製の第2制御線222(請求項でいう収縮維持線)とを備えたものである。
【0068】
第2繋縛紐221は、第1緊縛紐211と同様の構成であるので説明は省略する。
【0069】
第2制御線222は、前記第2搬送管51のもう一つのルーメン(以下、第2ルーメンという)内を挿通させてある。そして、その先端部が、該第2搬送管51の途中に設けられた側面孔51aから外に出て、前記枝管220を縛っている第2繋縛紐221に挿通ずるようにしてある。
【0070】
ところで、この実施形態において、当該第2搬送管51には、前記第2係止線521と第2制御線222とがともに挿通させてあるところ、前記第2係止線521は第2搬送管51内に全て収容されている一方、第2制御線222も、繋縛を維持するための先端部を除いては、第2搬送管51内に全て収容されている。
【0071】
このように第2係止線521および第2制御線222の少なくも基端部が第2搬送管51内に収容されているのは、<使用方法>で後述するが、この第2搬送管51が、術間において、その手元端部(基端部)も含め、血管内を引き回されるからであり、その引き回しの間に、不測に第2制御線222や第2係止線521が引っ張られて、展開機構や取付機構が動作してしまうことを確実に防止するためである。
【0072】
<引出機構>
一方、これら第2制御線222及び第2係止線521を第2搬送管51から引き出せないのでは、第2展開機構22や第2取付機構52を動作させることができないので、この実施形態では、第2制御線222及び第2係止線521を引き出すための引出機構がそれぞれ設けられている。
【0073】
引出機構としては、図12図16等に示すように、第2制御線222を引き出すための制御線引出機構6(請求項でいう収縮維持線引出機構)と、第2係止線521を引き出すための係止線引出機構7(請求項でいう取付維持線引出機構)とがあり、これらは、同じ原理のものである。
【0074】
制御線引出機構6は、第2搬送管51の途中(より具体的には、手元端部)に設けられた制御線引出窓61(請求項でいう収縮維持線引出窓)と、第2制御線222に結わえ付けられているとともに、該制御線引出窓61から第2搬送管51の外に引き出された非常にフレキシブルな制御線引出紐62(請求項でいう収縮維持線引出紐)とを備えている。
【0075】
この制御線引出紐62を引っ張ると、第2搬送管51内の第2制御線222の手元側が制御線引出窓61から引き出され、この引き出された第2制御線222を引っ張ることによって、枝管220を展開させることができる。
【0076】
係止線引出機構7についても同様である。すなわち、この係止線引出機構7は、第2搬送管51の途中(より具体的には、手元端部)であって、前記制御線引出窓61とは異なる箇所(ここでは、軸方向に偏位した部位)に設けられた係止線引出窓71(請求項でいう取付維持線引出窓)と、第2係止線521に結わえ付けられ、該係止線引出窓71から第2搬送管51の外に引き出された係止線引出紐72(請求項でいう取付維持線引出紐)とを備えている。
【0077】
これら、制御線引出紐62及び係止線引出紐72は、その先端部が第2搬送管51から出ているが、第2制御線222や第2係止線521に比べて非常に柔軟に構成してあるうえ、ループ状にはなっておらず、開放端状にしてあるため、術中にいずれかの部位に不測に引っかかる恐れがほとんどない。
【0078】
<使用方法>
次に、本搬送装置によるステントグラフト200の搬送・留置方法の一例について説明する。
【0079】
まず、ステントグラフト200の主管210に管状体41を挿通させた状態で、該主管210を収縮させてその先端開口で姿勢制御部材411を咥え込ませるとともに、第1取付機構42によって主管210を姿勢制御部材411に取り付けておく。
【0080】
ステントグラフト200の枝管220にも同様に、第2搬送管51を挿通させた状態で、該枝管220を収縮させるとともに、第2取付機構52によって枝管220を第2搬送管51に取り付けておく。
【0081】
さらに、ガイドワイヤ3を管状体41(第1搬送管412及び姿勢制御部材411)に挿入し、このガイドワイヤ3に沿って、管状体41及びこれに取り付けられたステントグラフト200を移動可能にしておく。
【0082】
この状態では、図4に示すように、ステントグラフト200における主管210の先端部に姿勢制御部材411が取り付けられているとともに、主管210から第1搬送管412、第1係止線422及び第1制御線212が延伸し、かつ、枝管220の先端からは第2搬送管51が延伸していることとなる。また、第1係止線422及び第1制御線212の先端部は、図6図7に示すように、姿勢制御部材411の内部を挿通して、その先端部に設けられたトリプルルーメンチューブ45に収容されている。それら先端部が血管内で不測に引っかかるなどして不具合が生じるのを防止するためである。
【0083】
なお、この実施形態では、ステントグラフト200から延伸する管状体41、第1係止線422及び第1制御線212は、それらより大径の第1外装チューブT1に挿通させてまとめてある。また、この第1外装チューブT1には、図8図9頭に示すように、他の各線より剛性が高い金属製又は樹脂製の補強線GTを抜脱可能に挿入できるようにしてあり、ステントグラフト200を進行させていく途中での第1外装チューブT1及びその内部に挿通させてある管状体41等の座屈や縮みを防止できるようにしてある。さらにここでは、第1外装チューブT1の先端部分及び基端部分(根元部分)において、第1係止線422が挿入されているチューブ422x、第1制御線212が挿通されているチューブ212x、補強線GTが挿入されているチューブGTx及び外管412bを、第1外装チューブT1と接着剤(図示しない)を注入して接着している。
【0084】
そして、ステントグラフト200と、これから延伸する管状体41、第1係止線422、第1制御線212(、これらをまとめるための第1外装チューブT1)及び第2搬送管51を、シースカテーテルT2に挿入し、初期状態では、図18に示すように、シースカテーテルT2の先端からヘッダ411aのみが突出するように構成してある。なお、第1外装チューブT1など、いくつかのチューブの根元部分には、必要に応じて血液の逆流を防止する逆止弁が設けられている。
【0085】
次に、図19に示すように、予め動脈内を先行させたガイドワイヤ3に沿って、ステントグラフト200及びステントグラフト搬送装置100を収容したシースカテーテルT2を、下行動脈内に挿入する。
【0086】
その後、図20図22に示すように、第1外装チューブT1及び第2搬送管を繰り出すことにより、姿勢制御部材411に取り付けられたステントグラフト200を、シースカテーテルから突出、離脱させ、前記ガイドワイヤ3に案内させて、前記留置位置まで進行させる。
【0087】
その過程において、ガイドワイヤ3が湾曲している大動脈弓部を通過するとき、姿勢制御部材411は、その湾曲方向がガイドワイヤ3の湾曲方向、つまり大動脈の湾曲方向と合致するように、軸方向に自然に回転し(図20から図21に回転する様子を示す。)、その軸周りの位相が血管に対して常に一定となるように自動調整される。
【0088】
そして、この姿勢制御部材411に固定されたステントグラフト200も姿勢制御部材411と共回りし、所期の回転位相、すなわち最終留置位相に自動調整される。
【0089】
しかして、図22に示す前記最終留置位相においては、軸方向から視て、ステントグラフト200の枝管220と分岐動脈との位置が合致するように、予め姿勢制御部材411にステントグラフト200を取り付けてあるので、ステントグラフト200の枝管220をなんら手元で操作することなく、分岐動脈の入口に対向する位相に自動的に合致させることができる。これがセルフアラインメント機能である。
【0090】
したがって、施術者は、枝管220が分岐動脈の入口近傍となるように、ステントグラフト200を前後に進退操作するだけでよくなり、従来のように、ステントグラフト200を手元で回転操作することなく、枝管220の位置を分岐動脈の位置に合致させることができるので、その操作性が、従来に比べ飛躍的に向上する。
【0091】
しかも、この姿勢制御部材411は短尺であり、ステントグラフト200の先端部にのみ取り付けられていて、この種のステントグラフト200の特徴である湾曲自在性を損なうものではないため、搬送過程において無理な抵抗等が作用しにくく、円滑な搬送が可能となる。
【0092】
次に、このようにして、枝管220を分岐動脈の入口近傍に位置づけた後、枝管220を分岐動脈に挿入する。その手順は以下のとおりである。
【0093】
まず、カテーテル9の手元から突出している第2搬送管51の先端を、折り返すようにして当該カテーテル9に挿入し、繰り出す。
【0094】
そのために、この実施形態では、まず、手元側に伸びている第2搬送管51の先端からそれより大径の第2外装チューブT3を外嵌するとともに、この第2外装チューブT3を繰り出して、図23に示すように、その先端を枝管220の先端近傍にまで到達させる。そして、第2搬送管51の先端を折り返して第2外装チューブT3の根元から挿入し、繰り出す。
【0095】
このことによって、図24に示すように、第2搬送管51の先端が第2外装チューブT3の先端から突出する。
【0096】
なお、第2外装チューブT3を入れることなく、第2搬送管51を折り返して直接シースカテーテルT2内に挿入してもよいが、折り返した第2搬送管51が途中で絡まるなどして進行させることができなくなる場合がある。これに対し、第2外装チューブT3を予め挿入し、折り返した第2搬送管51を第2外装チューブT3内で進行させれば、上述した不具合を未然に回避することができる。
【0097】
その一方で、分岐動脈の先端側から、別途設けた把持具8を挿入しておく。この把持具8は、細径の把持チューブ81と把持チューブ81内を進退可能に挿通させた把持線82とを具備したものであり、この把持線82の先端には輪82aが形成されている。
【0098】
そして、この把持具8を繰り出し、この実施形態では、その先端の輪82aを分岐動脈から飛び出させて大動脈内に位置づける。
【0099】
この状態で、第2搬送管51を操作し、図25に示すように、その先端部を前記輪82aに挿通させる。なお、この第2搬送管51の先端部は、輪に82aに挿通させやすいように、チューブではなく、それよりもやや細径で柔らかい線状部材にしてある。
【0100】
次に、図26に示すように、把持チューブ81を繰り出して、先端輪82aを該把持チューブ81内に引き込み、先端輪82aを絞ることによって、第2搬送管51の先端部を掴む。なお、このときに、図27に示すように、第2外装チューブT3は手元から引き抜いておく。
【0101】
次に、図28に示すように、把持具8を手元側に引っ張って、それが掴んでいる第2搬送管51の先端部を人体から取り出す。この第2搬送管51をさらに引っ張れば、図29に示すように、これに取り付けられている枝管220も引っ張られて分岐動脈に挿入・配置される。
【0102】
このようにして、主管210を大動脈弓部に、また、枝管220を分岐動脈に配置した後、これらを展開させる。展開手順は以下のとおりである。
【0103】
まず主管210については、カテーテル9の手元側から体外に伸びている第1制御線212を引き抜く。このことによって、図30に示すように、第1繋縛紐211の結合が外れ、主管210が展開状態となって大動脈内に張り付く。
【0104】
一方、枝管220においては、図13に示すように第2搬送管51のうち、分岐動脈から体外に引き出された手元側部分において、制御線引出窓61から出ている制御線引出紐62を引っ張り、第2制御線222の手元側(基端部)を第2搬送管51から引き出す。そして、この引き出された第2制御線222を引き抜く。このことによって、第2繋縛紐221の結合が外れ、図14図30に示すように、枝管220が展開状態となって分岐動脈内に張り付く。
【0105】
最後に、ステントグラフト200のみを残して、管状体41及び第2搬送管51を体外に引き出す。その手順は以下のとおりである。
【0106】
まず、主管210については、カテーテル9の手元側から体外に伸びている第1係止線422を引き抜く。このことによって、図31に示すように、第1着脱紐423が管状体41から外れて、管状体41と主管210との接続が解除される。その後、管状体41(及び第1外装チューブT1)を体外に引き抜く。
【0107】
一方、枝管220においては、図13に示すように、第2搬送管51のうち、分岐動脈から体外に引き出された手元側部分において、係止線引出窓71から出ている係止線引出紐72を引っ張り、第2係止線521の手元側を第2搬送管51から引き出す。そして、図14に示すように、この引き出された第2係止線521を引き抜く。このことによって、図15図31に示すように、第2着脱紐523が第2搬送管51から外れて、第2搬送管51と枝管220との接続が解除される。その後、第2搬送管51を分岐動脈を介して体外に引き抜く。
【0108】
このことによって、図32に示すように、所望の位置にステントグラフト200が留置される。
【0109】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0110】
例えば、係止線引出紐と制御線引出紐とを互いに異なる形態にしておけば、術者がこれらを混同して引っ張る順序を間違える可能性をより低減させることができる。ここで、形態を異ならせるとは、色や長さ、太さなどを、視認あるいは触認で判別できるように異ならせることをいう。
【0111】
また、図32図33に示すように、1又は複数の第2姿勢制御部材413を第1搬送管412に間欠的に接着するなどして回転不可能に固着してもよい。
【0112】
この第2姿勢制御部材413は、短尺(少なくとも主管の長さの1/5以下のものであり、収縮したステントグラフト200(の主管210)が軸周りに回転できないような形状、例えば扁平な板状をなすものである。そして、その中心に貫通孔が設けてあり、この貫通孔に第1搬送管412及びガイドワイヤ3が貫通するように構成してある。この実施形態では、この第2姿勢制御部材211は、前端部及び後端部が先細りとなり、その端経が、第1搬送管412と略同一径となるようにした扁平板状のものである。先細りにしてあるのは、ステントグラフト200の留置後、引き抜く際に、この第2姿勢制御部材413が血管や他の部材に不測に引っ掛かるといったことを防止するためである。
【0113】
前記実施形態においては、ステントグラフト200の先端部のみが、姿勢制御部材に軸回転不能に取り付けられており、ステントグラフト200の中間部、根元部において先端部との間にねじれが生じ得るが、このように第1搬送管412の中間部にも第2姿勢制御部材413を設けることによって、前記ねじれを軽減することができる。
【0114】
また、この第2姿勢制御部材413の貫通孔を湾曲または屈曲させて、第2姿勢制御部材413にも、前記セルフアラインメント機能を持たせてもよい。その場合は、前記姿勢制御部材411を設けなくとも構わない。
【0115】
第1搬送管412は、前記実施形態においては、外管412bの先端から内管412aが突出するようにして、根元部においては剛性が高く、先端部においては剛性が低い(柔軟性が高い)ように構成していたが、単管を用いてもよい。その場合は、素材や繊維の編み方等によって先端部と根元部とで剛性が異なるようにすればよい。
【0116】
第1搬送管412にステントグラフト200を取り付けている第1取付機構を、図35に示すようなものとしてもよい。
すなわち、この図35では、ステントグラフト200に形成されている第1紐挿通孔424と、第1搬送管412に取り付けられている第1着脱紐423の輪との重合部分に、第1係止線422を挿通させることにより、ステントグラフト200を第1搬送管412に取り付けている。しかして、この第1係止線422を抜き取れば、第1紐挿通孔424と第1着脱紐423との係止状態が解除され、ステントグラフト200は第1搬送管412からは取り外すことができる状態となる。
【0117】
なお、ここでは、第1紐挿通孔424と第1着脱紐423とがそれぞれ複数個(4個)設けられており(図35では、図面の煩雑化を避けるため、各2つだけを表示してある。)、それに対応する本数の第1係止線422が設けられている。
このようなものであれば、前記実施形態のものよりも外すことが容易にできる。
また、姿勢制御部材411において、図36に示すように、方向の異なる2つ以上の直線状の貫通孔411cが直列に設けられた構成にしてもよい。
さらに、第1、第2繋縛紐の代わりに、例えば、矩形シートまたはメッシュシート(繋縛シート)を筒状にし、それをステントグラフトに外装して収縮状態に維持しておいてもよい。この場合は、筒状にした繋縛シートの重なった端縁部に、制御線を直線的に縫うように挿通させ、該繋縛シートがほどけるのを防ぐようにする。
また、本発明は、枝管が1本のステントグラフトに限られず、2本以上のものに適用して同様の作用効果を奏し得る、
【0118】
その他、姿勢制御部材や第2制御部材の形状など、本発明は、前記実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0119】
200 ステントグラフト
210 主管
220 枝管
100 ステントグラフト搬送装置
3 ガイドワイヤ
T1 第1外装チューブ
T2 シースカテーテル
T3 第2外装チューブ
21 第1展開機構
211 第1繋縛紐
212 第1制御線
22 第2展開機構
221 第2繋縛紐
222 第2制御線(収縮維持線)
4 主搬送機構
41 管状体
411 姿勢制御部材
411a ヘッダ
411b 装着体
411c 貫通孔
412 第1搬送管
412a 内管
412b 外管
42 第1取付機構
421 第1窓
422 第1係止線
423 第1着脱紐
424 第1紐挿通孔
5 副搬送機構
51 第2搬送管(搬送管)
52 第2取付機構
521 第2係止線(取付維持線)
522 第2窓
523 第2着脱紐
524 第2紐挿通孔
6 制御線引出機構(収縮維持線引出機構)
61 制御線引出窓(収縮維持線引出窓)
62 制御線引出紐(収縮維持線引出紐)
7 係止線引出機構(取付維持線引出機構)
71 係止線引出窓(取付維持線引出窓)
72 係止線引出紐(取付維持線引出紐)
8 把持具
81 把持チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37