(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】戸当り装置
(51)【国際特許分類】
E05C 17/56 20060101AFI20221215BHJP
E05C 17/46 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
E05C17/56
E05C17/46
(21)【出願番号】P 2020048739
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】今野 僚太
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-291311(JP,A)
【文献】特開2007-285053(JP,A)
【文献】特開2004-204457(JP,A)
【文献】特開2003-336425(JP,A)
【文献】特開2002-47851(JP,A)
【文献】特開2012-26172(JP,A)
【文献】特開2018-178522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 17/00-17/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸体に取り付けられる本体部材と、
前記本体部材に設けられ、床面に回動自在に取り付けられるフラップを引き寄せる磁石と、
前記本体部材に、該本体部材に収納された収納位置と該本体部材から一部が突出した突出位置との間で移動自在に設けられ、前記磁石により引き寄せられたフラップを係止する係止部材と、
前記本体部材に設けられ、前記係止部材の移動を規制するロック部材と、
前記本体部材に取り付けられ、前記ロック部材の位置を切り替える切替部材と、を備え、
前記切替部材は、前記ロック部材の位置を、
前記ロック部材が前記係止部材を前記収納位置にて移動不能に規制する第1の位置と、
前記ロック部材が前記係止部材の移動を規制しない第2の位置と、
前記ロック部材が前記係止部材を前記突出位置にて移動不能に規制する第3の位置との間で切り替える
ことを特徴とする戸当り装置。
【請求項2】
前記本体部材には、前記ロック部材を前記第1の位置、前記第2の位置及び前記第3の位置に固定するための固定部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の戸当り装置。
【請求項3】
前記ロック部材は、前記切替部材によって前記第3の位置に切り替えられたときに前記本体部材から突出し、前記磁石により引き寄せられたフラップを係止することを特徴とする請求項1又は2に記載の戸当り装置。
【請求項4】
前記切替部材は、
前記ロック部材に回動自在に連結される連結部と、
前記本体部材の外側に配置される操作部と、
前記本体部材に取り付けられた回転軸に軸支され、前記操作部の動作を前記連結部に伝達する軸支部と
を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の戸当り装置。
【請求項5】
前記本体部材には、前記係止部材の移動方向を規制するガイド部が形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の戸当り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸体に取り付けられる戸当り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉する扉を開いた状態に維持する手段として各種の戸当り装置が知られている。戸当り装置としては、例えば、扉を仮止めする仮止め機構と、扉を本止めする本止め機構とを有し、状況に合わせて両機構を切り替えることができるドアストッパが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また他の戸当り装置としては、例えば、ストッパーピンを本体から突出させ、これを受金具(フラップ)に形成された孔と係合させることで扉を開状態に本止めすることができるドアストッパが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-066819号公報
【文献】特開2010-048053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるドアストッパにおいては、仮止め機構と本止め機構とのいずれかを切り替えるものであるため本止めしない場合には仮止め機構が選択される。このため扉が開くたびに仮止め機構が働くため日常の開閉動作において煩わしさが生じやすいという課題があった。また特許文献2に記載されるドアストッパにおいては、仮止め機構を有しないため扉が勢いよく開閉される状況で使用される場合には、扉が開かれるときにストッパからの跳ね返りが生じやすいという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、使用状況に応じて、非係止状態、仮止め状態、本止め状態を適宜切り替えることができる戸当り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の態様は、戸当り装置であって、戸体に取り付けられる本体部材と、前記本体部材に設けられ、床面に回動自在に取り付けられるフラップを引き寄せる磁石と、前記本体部材に、該本体部材に収納された収納位置と該本体部材から一部が突出した突出位置との間で移動自在に設けられ、前記磁石により引き寄せられたフラップを係止する係止部材と、前記本体部材に設けられ、前記係止部材の移動を規制するロック部材と、前記本体部材に取り付けられ、前記ロック部材の位置を切り替える切替部材とを備え、前記切替部材は、前記ロック部材の位置を、前記ロック部材が前記係止部材を前記収納位置にて移動不能に規制する第1の位置と、前記ロック部材が前記係止部材の移動を規制しない第2の位置と、前記ロック部材が前記係止部材を前記突出位置にて移動不能に規制する第3の位置との間で切り替える。
【0008】
また前記本体部材には、前記ロック部材を前記第1の位置、前記第2の位置及び前記第3の位置に固定するための固定部が形成されていることが好ましい。
【0009】
また前記ロック部材は、前記切替部材によって前記第3の位置に切り替えられたときに前記本体部材から突出し、前記磁石により引き寄せられたフラップを係止することが好ましい。
【0010】
また前記切替部材は、前記ロック部材に回動自在に連結される連結部と、前記本体部材の外側に配置される操作部と、前記本体部材に取り付けられた回転軸に軸支され、前記操作部の動作を前記連結部に伝達する軸支部とを有することが好ましい。
【0011】
また前記本体部材には、前記係止部材の移動方向を規制するガイド部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る態様によれば、使用状況に応じて、非係止状態、仮止め状態、本止め状態を適宜切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施の形態に係る戸当り装置がフラップと当接する前の状態を表す図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る戸当り装置がフラップと当接した状態を表す図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る戸当り装置の(A)全体斜視図と、(B)分解斜視図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る戸当り装置を構成する主要部材を表す透視斜視図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る戸当り装置の(A)非係止状態、(B)仮止め状態、(C)本止め状態を表す横断面図である。
【
図6】第1の実施の形態に係る戸当り装置の(A)非係止状態、(B)仮止め状態、(C)本止め状態を表す縦断面図である。
【
図7】第1の実施の形態に係る戸当り装置の(A)非係止状態、(B)仮止め状態、(C)本止め状態を表す斜視図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る戸当り装置がフラップと当接する前の状態を表す図である。
【
図9】第2の実施の形態に係る戸当り装置がフラップと当接した状態を表す図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る戸当り装置の(A)全体斜視図と、(B)分解斜視図である。
【
図11】第2の実施の形態に係る戸当り装置を構成する主要部材を表す透視斜視図である。
【
図12】第2の実施の形態に係る戸当り装置の(A)非係止状態、(B)仮止め状態、(C)本止め状態を表す横断面図である。
【
図13】第2の実施の形態に係る戸当り装置の(A)非係止状態、(B)仮止め状態、(C)本止め状態を表す縦断面図である。
【
図14】本実施の形態に係るフラップの構成を表す分解斜視図である。
【
図15】本実施の形態に係るフラップの(A)閉状態、(B)開状態を表す斜視図である。
【
図16】(A)~(F)本実施の形態に係るフラップに戸当り装置の係止部材を係止させる動作を表す断面図である。
【
図17】(A)~(C)戸当り装置による本実施の形態に係るフラップへの係止状態を解除する動作を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0015】
以下では、説明の便宜上、各構成部材の位置関係を前後方向X、左右方向Y及び上下方向Zで表し、前後方向Xにおける左方向を「前方」、右方向を「後方」と称し、上下方向Zにおける上方向を「上方」、下方向を「下方」と称している。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1及び
図2を用いて、本実施の形態に係る戸当り装置が適用される扉装置の構成について説明する。扉装置は、枠体2と、枠体2に一端側が軸支された戸体(扉)1と、扉の先端側の下端に取り付けられた戸当り装置3と、床面4に設置され戸当り装置3に設けられるマグネット部材(磁石)の吸引力により戸当り装置3と当接する受金具5とを有している。
【0017】
受金具5は、円盤形状の本体部51と、本体部51に取り付けられ一端が軸支された板部材からなるフラップ52と、回動軸53とを有している。フラップの先端側には、略矩形状の係止孔52aが形成されている。
図1(B)に示すように、戸当り装置3と受金具5とが離間した状態では、フラップ52は、本体部51と同一面上に配置されている。
【0018】
一方、
図2(B)に示すように、扉の開動作により戸当り装置3が受金具5に近接した状態では、フラップ52の先端が戸当り装置3に設けられるマグネット部材360の吸引力によって上方に引き寄せられ、戸当り装置3のベース部311の裏側に形成される当接部311aに当接する。このとき、フラップ52の先端が当接部311aの壁面に係止されることにより、扉1の更なる開動作が規制される。
【0019】
<戸当り装置の構成>
図3及び
図4を用いて、戸当り装置3の構成について説明する。
図3(B)に示すように、戸当り装置3は、本体部材310と、カバー部材320と、係止部材330と、ロック部材340と、切替部材350と、マグネット部材360と、軸部材370とを有している。
【0020】
(本体部材)
本体部材310は、戸当り装置3を構成する各種部材が取り付けられる基礎となる部材である。本体部材310は、ベース部311と、側面部312と、前面部313と、固定部314とを有している。
【0021】
ベース部311は、前後方向Xに延びる略矩形状を有しており、戸当り装置3の底部材としての機能を有している。ベース部311の裏側には略矩形状の凹状の当接部311aが形成されている。当接部311aには、受金具5のフラップ52が当接する。またベース部311には上下方向Zに貫通する貫通孔311bが形成されている(
図5参照)。貫通孔311bには、係止部材330の先端部334とロック部材340の先端部345が挿通される。
図2(B)に示すように、ベース部311は、戸当り装置3が扉1に取り付けられた状態において、扉1の下方から突出する。
【0022】
側面部312は、ベース部311の両側縁から上下方向Zに立設されている。側面部312は、第1ガイド部312aと、第2ガイド部312bと、軸挿通孔312cと、マグネット挿入孔312dと、側面凹部312eと、係止突起312fと、ガイド凹部312gとを有している。
【0023】
第1ガイド部312aは、側面部312の後方側において上下方向Zに沿って上端が開放されたスリット状に形成されている。第1ガイド部312aには係止部材330のガイド突起333がはめ込まれ、係合部材330が上下方向Zにおいて移動自在に係止される。
【0024】
第2ガイド部312bは、第1ガイド部312aよりも前方側において上下方向Zに沿って上端が開放されたスリット状に形成されている。第2ガイド部312bにはロック部材340のガイド突起342がはめ込まれ、ロック部材340が上下方向Zにおいて移動自在に係止される。
【0025】
軸挿通孔312cは、第2ガイド部312bよりも前方側において略円形状に形成されている。軸挿通孔312cには切替部材350に取り付けられた軸部材370が挿通され、切替部材350の軸支部353が本体部材310に回動自在に係止される。
【0026】
マグネット挿入孔312dは、第1ガイド部312aよりも後方側においてベース部311の上端側にわたって略矩形状に形成されている。マグネット挿入孔312dには、マグネット部材360が挿入され本体部材310内に保持される。
【0027】
側面凹部312eは、側面部312の後端側であり且つマグネット挿入孔312dの上方側において略矩形状に形成されている。側面凹部312eは、側面部312の外側面よりも内側に形成されており、カバー部材320の後方延設部321cの内壁面と当接する。
【0028】
係止突起312fは、側面凹部312eの上端部において外側に突出するように形成されている。係止突起312fは、カバー部材320の後方延設部321cの内壁面が側面凹部312eに当接した状態において、後方延設部321cに形成される第2被係止孔321eにはめ込まれる。
【0029】
ガイド段部312gは、側面部312の内壁側において側面凹部312eとの境界をなす位置に上下方向Zに延びる段差として形成されている。ガイド段部312gには係止部材330の当接部332が当接し、係止部材330の上下方向以外の移動が規制される。
【0030】
前面部313は、側面部312の前方側の端縁においてベース部311から上下方向Zに立設されている。前面部313は、側面部312よりも高い位置まで立設されており、上端側は円弧状に形成されている。前面部313は、貫通孔313aと、取付孔313bと、係止突起313cとを有している。
【0031】
貫通孔313aは、前面部313の下方側において略矩形状に形成されている。貫通孔313aには切替部材350が挿通され、切替部材350が3つの位置(第1の位置、第2の位置、第3の位置)の間で回動することができるように貫通孔313aの大きさが設定されている。
【0032】
取付孔313bは、貫通孔313aの上方側において長孔状に形成されている。取付孔313bには締結部材380(ネジ381)が挿通され、取付孔313bの長さを許容範囲として締結部材380(ネジ381)の取付位置が上下方向Zにおいて調節される。
【0033】
係止突起313cは、前面部313の上方側の側面において外側に突出するように形成されている。係止突起313cは、カバー部材320が本体部材310に取り付けられた状態において、カバー部材320に形成される第1被係止孔321dにはめ込まれる。
【0034】
固定部314は、両側の側面部312間の後方側においてベース部311から立設されている(
図3(B)及び
図5参照)。
図5に示すように、固定部314は、立設支持部314aと、第1固定突起314bと、第2固定突起314cとを有している。
【0035】
立設支持部314aは、マグネット部材360が配置される位置よりも前方側においてベース部311の上面に対して略垂直の方向に立設されている。立設支持部314aは、前後方向Xにおいて、基端側から先端側にいくにしたがって先細りとなる形状を有している。
【0036】
図5に示すように、第1固定突起314bは、立設支持部314aの先端部において前方側に向けて突出するように形成されている。第1固定突起314bは、略台形状を有しており、その頂面の高さが上方から下方にいくにしたがって僅かに小さくなるテーパ状に形成されている。
【0037】
第1固定突起314bは、当該第1固定突起314bの上方のテーパ面にロック部材340を構成するロック爪344が当接した状態で、ロック部材340を第1の位置(非係止状態の位置)に固定する。
【0038】
図3(B)に示すように、第2固定突起314cは、第1固定突起314bよりも下方に位置し、左右方向Yにおける第1固定突起314bの位置からオフセットした位置に形成されている。
図5に示すように、第2固定突起314cは、略台形形状を有しており、その頂面の高さが上方から下方にいくにしたがって僅かに小さくなるテーパ状に形成されている。
【0039】
第2固定突起314cは、当該第2固定突起314cの上方のテーパ面にロック部材340を構成するロック爪344が当接した状態(若しくは第1固定突起314bの下方のテーパ面にロック部材340を構成するロック爪344が当接した状態)で、ロック部材340を第2の位置(仮止め状態の位置)に固定する。また、第2固定突起314cは、当該第2固定突起314cの下方のテーパ面にロック部材340を構成するロック爪344が当接した状態で、ロック部材340を第3の位置(本止め状態の位置)に固定する。
【0040】
後述するようにロック部材340は、ロック爪344が第1固定突起314bと第2固定突起314cとを乗り越えて上下方向Zに移動することにより、第1の位置(非係止状態の位置)、第2の位置(仮止め状態の位置)及び第3の位置(本止め状態の位置)のいずれかに固定される。
【0041】
なお第2固定突起314cの頂面の高さは、第1固定突起314bのそれよりも小さくなるように設定されている。第1固定突起314bと第2固定突起314cとの間で頂面の高さに差を設けているのは以下の理由による。すなわち、第1固定突起314bが形成される立設支持部314の先端部は、第2固定突起314cが形成される立設支持部314の基端側よりも撓み変形しやすい。そこで、ロック爪344が第1固定突起314bを乗り越える際に要する力と第2固定突起314cを乗り越える際に要する力を略同等とするために、たわみ変形しやすい先端側の第1固定突起314bの頂面の高さが第2固定突起314cの頂面の高さよりも大きく設定されている。
【0042】
(カバー部材)
カバー部材320は、本体部材310の開放された上方側を覆う部材である。
図3(B)に示すように、カバー部材320は、側壁部321と、天井部322とを有している。
【0043】
側壁部321は、戸当り装置3の側壁の一部を形成するものであり、前方延設部321aと、テーパ部321bと、後方延設部321cと、第1被係止孔321dと、第2被係止孔321eと、貫通孔321fとを有している。
【0044】
前方延設部321aは、側壁部321の前方側の端部において上下方向に延設されている。前方延設部321aは、カバー部材320が本体部材310に取り付けられた状態において、本体部材310の側面部312の前方側に配置される。
【0045】
テーパ部321bは、前方延設部321aの基端側において前方から方向にいくにしたがって幅狭となるように形成されている。テーパ部321bは、本体部材310の側面部312の前方側の上面に形成されるテーパ部に対応する形状を有している。
【0046】
後方延設部321cは、側壁部321の後方側の端部において上下方向Zに延設されている。後方延設部321cは本体部材310の側面凹部312eと略同一形状を有しており、カバー部材320が本体部材310に取り付けられた状態においてその内壁面が本体部材310の側面凹部312eと当接する。
【0047】
第1被係止孔321dは、テーパ部321bの上方側において上下方向Zに沿って延びるスリット状に形成されている。第1被係止孔321dには、カバー部材320が本体部材310に取り付けられた状態において、本体部材310の係止突起313cが上下方向Zにおいて移動自在にはめ込まれる。
【0048】
第2被係止孔321eは、後方延設部321cにおいて上下方向Zに沿って延びるスリット状に形成されている。第2被係止孔321eには、カバー部材320が本体部材310に取り付けられた状態において、本体部材310の係止突起312fが上下方向Zにおいて移動自在にはめ込まれる。
【0049】
なお本体部材310の係止突起313c及び係止突起312fが第1被係止孔321d及び第2被係止孔321eにそれぞれ上下方向Zに移動自在にはめ込まれることにより、カバー部材320が本体部材310に対して上下方向Zに移動し、戸当り装置3の高さを調整することができる。
【0050】
凹部321fは、第1被係止孔321dよりも後方側において略矩形状に形成されている。凹部321fには、締結部材380を構成するナット382が挿入される。
【0051】
天井部322は、側壁部321の上端側にアーチ状に形成されている。天井部322の長手方向における中央部においては、他の部分よりも幅狭の形状を有する取付部322aが形成されている。取付部322aには、天井部322の前後方向Xに延びる取付孔322bが形成されている(
図5(A)参照)。取付孔322bに図示しないネジが挿通されることにより、取付部322aが扉1に固定される。
【0052】
(係止部材)
係止部材330は、その先端が受金具5を構成するフラップ52の係止孔52aに挿通され、戸当り装置3を受金具5に係止させるための部材である。係止部材330は本体部材310に取り付けられており、後述するロック部材340の位置に応じて、本体部材310の上方に固定された状態(非係止状態)と、上下方向Zにおいて移動自在となる状態(仮止め状態)と、本体部材310の下方に固定された状態(本止め状態)をとる。係止部材330は、本体部331と、当接部332と、ガイド突起333と、先端部334と、ロック爪挿通孔335とを有している。
【0053】
本体部331は、略矩形状の板状部材からなり、本体部材310に取り付けられた状態では、上下方向Zに延在するように配置される。
当接部332は、本体部331の上端及び下端の両側面から延設されており、その先端が後方側に向くように屈曲形成されている。当接部332の先端はガイド段部312gに当接し、本体部材310に取り付けられた状態では、ガイド段部312gに沿って上下方向Zに移動する。
【0054】
ガイド突起333は、上端及び下端の当接部332の間における本体部331の両側面から外側に向けて延設されている。ガイド突起333は、本体部材310に取り付けられた状態では、側面部312の第1ガイド部312aにはめ込まれ、第1ガイド部312aに沿って上下方向Zに移動する。
【0055】
先端部334は、本体部331の下端から延設されており、上方から下方にいくにしたがって先細りになるように形成されている。先端部334は、係止部材330が本端部材310の下方側に位置するときに、本体部材310のベース部311の下方から突出する。先端部334は、ベース部311の下方から突出した状態において、受金具5を構成するフラップ52の挿通孔52aへ挿通される。
【0056】
ロック爪挿通孔335は、本体部331の中央部において上下方向Zに延びる略矩形状の孔として形成されている。ロック爪挿通孔335には、ロック部材340のロック爪344が挿通される。ロック爪挿通孔335の上下方向Zにおける長さは、挿通されるロック爪344の上下方向Zにおける移動を許容できる範囲に設定されている。
【0057】
(ロック部材)
図3(B)に示すように、ロック部材340は、係止部材330の上下方向Zにおける移動を規制するとともに、フラップ52の係止孔52aに挿通されることにより本止め状態を実現するための部材である。ロック部材340は、本体部材310に対して上下方向Zにおいて移動自在に取り付けられ、切替部材350によって、第1の位置(非係止状態)、第2の位置(仮止め状態)及び第3の位置(本止め状態)のいずれかの位置に切り替えられる。ロック部材340は、本体部341と、ガイド突起342と、軸固定部343と、ロック爪344と、先端部345とを有している。
【0058】
本体部341は、板状部材からなり、その両側部が翼状に張り出すように形成されている。本体部341の両側部は、さらにその先端部341aが前方側に向くように屈曲形成されている。
【0059】
ガイド突起342は、本体部341の先端部341aの端縁において外側に向けて突出するとともに上下方向Zに延在して形成されている。ガイド突起342は、本体部材310に取り付けられた状態では、側面部312の第2ガイド部312bにはめ込まれ、第2ガイド部312bに沿って上下方向Zに移動する。
【0060】
軸固定部343は、ガイド突起342の上端側において後方側に向けて延設されている。軸固定部343は、切替部材350の回動軸351aを回動自在に固定する。具体的に軸固定部343は、回動軸351aが軸固定部343と本体部341の先端部341aとの間に配置された状態において、回動軸351aの上下方向Zの移動を規制する。
【0061】
ロック爪344は、本体部341の上端において本体部341の延設方向に対して略垂直の後方側に向けて延設されている。ロック爪344は、その先端が上方に向けて屈曲されている(
図5参照)。また、ロック爪344の下方は矩形状に膨出部分344aを有している。ロック爪344は、係止部材330のロック爪挿通孔335に挿通され、ロック爪挿通孔335に沿って上下方向Zに移動する。
【0062】
先端部345は、本体部341の下端から延設されており、上方から下方にいくにしたがって先細りになるとともに、その先端付近において左右方向Yの外側に膨出する形状を有している。先端部334は、ロック部材340が切替部材350によって第3の位置(本止め状態の位置)に切り替えられた状態において、本体部材310のベース部311の下方から突出する。先端部334は、ベース部311の下方から突出した状態において、受金具5を構成するフラップ52の挿通孔52aへ挿通される。
【0063】
(切替部材)
切替部材350は、本体部材310に回動自在に取り付けられ、ロック部材340の位置を切り替えるための部材である。
図3(B)に示すように、切替部材350は、連結部351と、操作部352と、軸支部353とを有している。
【0064】
連結部351は、係止部材330と連結され、係止部材330を上下方向Zに移動させるための外力が付与される力点となる。連結部351は、切替部材350の一端側に形成され、基端から先端にいくにしたがって先細りとなる形状を有している。連結部351の先端側には回動軸351aが取り付けられている。連結部351は、回動軸351aが軸固定部343と本体部341の先端部341aとの間に配置された状態において係止部材330と連結される。
【0065】
操作部352は、手動の操作によって、軸支部353を介して連結部351を移動させるための部材である。操作部352は、切替部材350の他端側に形成され、基端から先端にいくにしたがって先細りとなる形状を有している。操作部352の上側と下側の表面には、左右方向に沿って延在する突起352aが間隔をあけて複数形成されている(
図4参照)。突起352aは、作業者が操作部352を操作する際に作業者の指などが操作部352に対して引っかかりやすくするために形成されている。
【0066】
軸支部353は、連結部351と操作部352との間に形成され、先端先細り形状を有する先端部351の基端側に位置し、先端部351と同一面となるように形成されている。軸支部353は切替部材350の回動の支点となる。軸支部353には、挿通孔353aが形成されており、軸部材370が挿通される。
【0067】
(マグネット部材)
マグネット部材360は、磁石からなり受金具5のフラップ52を吸引力(磁力)により引き寄せるために設けられる。
図3(B)に示すように、マグネット部材360は、略直方体形状を有し、本体部材310のマグネット挿入孔312dから挿入され、本体部材310の後端部において保持される。
【0068】
(軸部材)
軸部材370は、本体部材310の軸挿通孔312cを介して切替部材350を構成する軸支部353の挿通孔353aに挿通される。軸部材370の両端部は本体部材310に固定され、切替部材350の回動を支持する。
【0069】
図3及び
図4を用いて、戸当り装置3を構成する各部材の本体部材への組み付けについて説明する。なお以下で説明する戸当り装置3の組み付け手順は一例であり、これに限定されるものではない。
【0070】
まず、ロック部材340のロック爪344を係止部材330のロック爪挿通孔335に挿通させる。この状態において、係止部材330及びロック部材340を本体部材310の上方へ配置し、係止部材330のガイド突起333が本体部材310の第1ガイド部312aへはめ込まれるとともに、ロック部材340のガイド突起342が本体部材310の第2ガイド部212bへとはめ込まれる。
【0071】
また、切替部材350を構成する連結部351の回転軸351aをロック部材340の軸固定部343と本体部341の先端部341aとの間に配置させ、連結部351をロック部材340に連結させる。また、切替部材350を構成する軸支部353の挿通孔353aと本体部材310の軸挿通孔312cとを位置合わせした状態で軸部材370を挿通させ、軸部材370が本体部材310に固定される。
またマグネット部材360が本体部材310のマグネット挿入孔312dへ挿入され、マグネット部材360が本体部材310に保持される。
【0072】
本体部材310に係止部材330、ロック部材340及び切替部材350が取り付けられた状態において、本体部材310に対してカバー部材320が取り付けられる。取り付けに際しては、本体部材310を構成する側面部312の係止突起312fがカバー部材320の第2被係止孔321eへとはめ込まれるとともに、本体部材310を構成する前面部313の係止突起313cがカバー部材320の第1被係止孔321dへとはめ込まれる。
【0073】
カバー部材320が本体部材310に取り付けられた状態において、締結部材380を構成するネジ381が凹部321fに挿入されたナット382に挿通されることにより、締結部材380が本体部材310を締結する。なお、カバー部材320は、締結部材380による締結を緩めることにより、上下方向Zにスライド(移動)できるように本体部材310に取り付けられる。カバー部材320が上下方向Zに移動する際には、本体部材310の係止突起313c及び係止突起312fが第1被係止孔321d及び第2被係止孔321eにそれぞれ上下方向Zに移動する。
また戸当り装置3を扉1に取り付ける際は、カバー部材320が最上位置(ボルト381が本体部材310の取付孔313bの上端縁に当接する位置)に固定された状態で、カバー部材320の天井部322と前面部313の上端との間に形成される空間から図示しないネジが取付孔322bに挿入され、カバー部材320の取付部322aが扉1に固定される。そして、戸当り装置3が扉1に取り付けられた状態で、扉1の寸法等に応じてカバー部材320と本体部材310のとの上下方向Zにおける位置関係を調整する。
【0074】
<戸当り装置の動作>
図5~
図7を用いて、戸当り装置3の動作について説明する。戸当り装置3は、非係止状態、仮止め状態及び本止め状態のいずれかの状態において受金具5のフラップ52と当接する。ここで、非係止状態とは、戸当り装置3とフラップ52との間に係止力が作用していない状態をいう。また仮止め状態とは、戸当り装置3とフラップ52との間に係止力が作用しているが一定の外力が与えられることにより係止状態が解除される状態をいう。また本止め状態とは、戸当り装置3とフラップ52との間に係止力が作用し、外力が与えられても係止状態が解除されずに保持される状態をいう。以下では3つの状態に分けて、戸当り装置3の動作を説明する。
【0075】
(非係止状態における戸当り装置の動作)
図5(A)に示すように、切替部材350の操作部352が下位置に保持されることにより、先端部351と連結されるロック部材340を構成するロック爪344の先端が本体部材310を構成する固定部314の第1固定突起314bの上面に固定されている。
【0076】
この状態において、ロック爪344の上面が係止部材330のロック爪挿通孔335の上縁と当接しており、係止部材330が最上位置でロック部材340に移動不能に規制されている。これにより、係止部材330の先端部334はベース部311の下方から突出することなく、本体部材310の内部に収容されている(
図5(A)及び
図7(A)参照)。
【0077】
図6(A)に示すように、この状態では、係止部材330の先端部334はフラップ52を係止しないため、戸当り装置3とフラップ52との間には係止力が発生しない。したがって、この状態では、マグネット部材360による吸引力のみによってフラップ52が戸当り装置3の当接部311aと当接する。
【0078】
(仮止め状態における動作)
図5(B)に示すように、切替部材350の操作部352が中間位置に保持されることにより、ロック爪344の先端が固定部314の第1固定突起314bと第2固定突起314cとの間に固定されている。
【0079】
この状態において、ロック爪344が非係止状態よりも下方位置において係止部材330のロック爪挿通孔335の上端と当接しており、係止部材330の先端部334がベース部311の下方から突出している(
図5(B)及び
図7(B)参照)。また係止部材330はロック爪挿通孔335の上端と下端との間で上下方向Zに移動自在に保持されている。
【0080】
図6(B)に示すように、この状態では、係止部材330の先端部334がフラップ52の係止孔52aに挿通されることにより、戸当り装置3とフラップ52との間には係止力が発生する。一方、係止部材330は上下方向Zに移動自在に保持されているので、戸当り装置3にある程度の外力が付与されると、係止部材330の先端部334はフラップ52の係止孔52aに当接しながら上方へと移動することにより戸当り装置3とフラップ52との係止状態が解除される。
【0081】
(本止め状態における動作)
図5(C)に示すように、切替部材350の操作部352が上方位置に保持されることにより、ロック爪344の先端が固定部314の第2固定突起314cの下面に固定されている。
【0082】
この状態において、ロック爪344の膨出部分344aの下面が係止部材330のロック爪挿通孔335の下端と当接し、係止部材330が最下位置でロック部材340に移動不能に規制されている。これにより、係止部材330の先端部334はベース部311の下方から突出した状態で固定されている(
図5(C)及び
図7(C)参照)。またこの状態においてロック部材340の先端部345もベース部311の下方から突出している。
【0083】
図6(C)に示すように、この状態では、係止部材330の先端部334がフラップ52の係止孔52aに挿通されることにより、戸当り装置3とフラップ52との間には係止力が発生する。このとき係止部材330は上下方向Zに移動不能に固定されている。したがってこの状態では、戸当り装置3に対して外力が付与された場合でも戸当り装置3とフラップ52との係止状態が保持される。
【0084】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る戸当り装置について説明する。以下では、第1の実施の形態と異なる構成について主として説明する。
【0085】
まず、
図8及び
図9を用いて、本実施の形態に係る戸当り装置が適用される扉装置の構成について説明する。扉装置は、枠体2と、枠体2に一端側が軸支された扉1と、扉の先端側の下端付近の側面に取り付けられた戸当り装置6と、床面4に設置され戸当り装置6に設けられるマグネット部材の吸引力により戸当り装置6と当接する受金具5とを有している。受金具5の構成は第1の実施の形態と同じであるため説明を省略する。
【0086】
<戸当り装置の構成>
図10及び
図11を用いて、戸当り装置6の構成について説明する。
図10(B)に示すように、戸当り装置6は、本体部材610と、カバー部材620と、係止部材630と、ロック部材640と、切替部材650と、マグネット部材660と、軸部材670とを有している。
【0087】
(本体部材)
本体部材610は、戸当り装置6を構成する各種部材が取り付けられる基礎となる部材である。本体部材610は、本体部611と、固定部612と、ストッパ部613と取付部614とを有している。
【0088】
本体部611は、箱状に形成されており、当接面611aと、貫通孔611bと、第1ガイド部611cと、第2ガイド部611dと、軸挿通孔611eと、マグネット挿入孔611fと、ガイド段部611gとを有している。
【0089】
当接面611aは、本体部611の底面に形成されており、マグネット部材660の吸引力によって引き寄せられた受金具5のフラップ52が当接する。
貫通孔611bは、当接面611aの一部が略矩形状に切りかかれて形成されている。貫通孔611bには、係止部材630の先端部634とロック部材640の先端部645が挿通される(
図12参照)。
【0090】
第1ガイド部611cは、本体部611の側面の中央部において上下方向Zに沿って上端が開放されたスリット状に形成されている。第1ガイド部611cには係止部材630のガイド突起633がはめ込まれ、係合部材630が上下方向Zにおいて移動自在に係止される。
【0091】
第2ガイド部611dは、第1ガイド部611cよりも前方側において上下方向Zに沿って上端が開放されたスリット状に形成されている。第2ガイド部611dにはロック部材640の係合突起642がはめ込まれ、ロック部材640が上下方向Zにおいて移動自在に係止される。
【0092】
軸挿通孔611eは、第1ガイド部611cよりも後方側において略円形状に形成されている。軸挿通孔611eには両側の軸挿通孔611e間に切替部材650の挿通孔653aを配置した状態で軸部材670が挿通され、切替部材650の軸支部653が本体部材610に回動自在に係止される。
【0093】
マグネット挿入孔611fは、第1ガイド部611cの下方側に略矩形状に形成されている。マグネット挿入孔611fには、マグネット部材660が挿入され本体部材610内に保持される。
【0094】
ガイド段部611gは、本体部611の後方側の内壁において上下方向Zに延びる段差として形成されている。ガイド段部611gには係止部材630の当接部632が当接し、係止部材630の上下方向以外の移動が規制される。
【0095】
固定部612は、本体部611の内側において本体部611の底面から立設されている(
図12参照)。
図12に示すように、固定部612は、立設支持部612aと、第1固定突起612bと、第2固定突起612cとを有している。固定部612の構成及び機能は、第1の実施の形態に係る固定部314と同じであるため説明を省略する。
【0096】
ストッパ部613は、本体部611の左右方向Yにおける一方側の端縁(扉に取り付けられる側の端縁)の下端から突出して形成されている。ストッパ613は、フラップ52の先端と当接し扉1の開動作を規制する。
【0097】
取付部614は、本体部611の左右方向Yにおける一方側の端縁(扉に取り付けられる側の端縁)に、前後方向Xにおける両外側に向けて張り出すように形成されている。取付部614には取付孔614aが形成されている。取付部614は、扉1と当接した状態で、取付孔614aに挿通される締結部材(図示しない)により扉1と固定される。
【0098】
(カバー部材)
カバー部材620は、本体部材610の開放された上方側を覆う部材である。カバー部材620は、本体部621と本体部621の上面に形成される略矩形状の貫通孔622とを有している。本体部621の左右方向Yにおける一方側の側面(扉に取り付けられる側の側面)は、取付部614と扉1との当接を許容するために一部が切りかかれている。
【0099】
(係止部材)
係止部材630は、本体部材610に対して上下方向Zにおいて移動自在に取り付けられる。係止部材630は、本体部631と、当接部632と、ガイド突起633と、先端部634と、ロック爪挿通孔635とを有している。
【0100】
係止部材630の先端部634は、本体部631の下端から延設されており、上方から下方にわたって略平行に形成されるとともに先端側において両外側に膨出する膨出部634aが形成され、膨出部634aの下側は上方から下方にいくにしたがって先細りになるように形成されている。
【0101】
係止部材630を構成する本体部631、当接部632、ガイド突起633、及びロック爪挿通孔635の構成については、第1の実施の形態に係る係止部材330と略同じであるため説明を省略する。
【0102】
(ロック部材)
ロック部材640は、本体部材610に対して上下方向Zにおいて移動自在に取り付けられ、切替部材650によって、第1の位置(非係止状態の位置)、第2の位置(仮止め状態の位置)及び第3の位置(本止め状態の位置)のいずれかの位置に切り替えられる。ロック部材640は、本体部641と、ガイド突起642と、軸固定部643と、ロック爪644と、先端部645とを有している。ロック部材640の構成は、第1の実施の形態に係るロック部材340と略同じであるため説明を省略する。
【0103】
(切替部材)
切替部材650は、連結部651と、操作部652と、軸支部653とを有している。切替部材650は、操作部652が上端側に配置され、操作部652の下方において分岐して前方側に連結部651と後方側に軸支部653とが配置された形状を有している。
【0104】
連結部651は、係止部材630と連結され、係止部材630を上下方向Zに移動させるための外力が付与される力点となる。連結部651の先端側には回動軸651aが取り付けられている。連結部651は、回動軸651aがロック部材を構成する軸固定部643と本体部641の両側部に位置する先端部641aとの間に配置された状態において係止部材630と連結される。
【0105】
操作部652は、手動の操作によって、軸支部653を介して連結部651を移動させるための部材である。操作部652は、切替部材650の他端側に形成され、基端から先端にいくにしたがって先細りとなる形状を有している。操作部652の上側と下側の表面には、左右方向Yに沿って延在する突起652aが間隔をあけて複数形成されている。
【0106】
軸支部653は切替部材650の回動の支点となる。軸支部653には挿通孔653aが形成されている。軸支部653は、挿通孔653aに軸部材670が挿通されることにより本体部材610に回動自在に固定される。
【0107】
(その他部材)
マグネット部材660及び軸部材670の構成は、第1の実施の形態に係るマグネット部材360及び軸部材370と同じであるため説明を省略する。
【0108】
<戸当り装置の動作>
図12及び
図13を用いて、戸当り装置6の動作について説明する。戸当り装置6は、切替部材650によりロック部材640が3つの位置(第1の位置、第2の位置及び第3の位置)の間で切り替えられることにより、非係止状態、仮止め状態及び本止め状態のいずれかの状態でフラップ52と当接する。以下では3つの状態に分けて、戸当り装置6の動作を説明する。
【0109】
(非係止状態における動作)
図12(A)に示すように、切替部材650の操作部652が前後方向Xにおける後方位置に保持されることにより、先端部651と連結されるロック部材640を構成するロック爪644の先端が本体部材610を構成する固定部614の第1固定突起612bの上面に固定されている。
【0110】
この状態において、ロック爪644が係止部材630のロック爪挿通孔635の上端と当接し、係止部材630が最上位置でロック部材640に移動不能に規制されている。これにより、係止部材630の先端部634は本体部611の下方から突出することなく、本体部材610の内部に収容されている(
図13(A)参照)。
【0111】
図13(A)に示すように、この状態では、係止部材630の先端部634はフラップ52を係止しないため、戸当り装置6とフラップ52との間には係止力が発生しない。したがって、この状態では、マグネット部材660による吸引力のみによってフラップ52が戸当り装置6の当接部613と当接する。
【0112】
(仮止め状態における動作)
図12(B)に示すように、切替部材650の操作部652が中間位置に保持されることにより、ロック爪644の先端が固定部614の第1固定突起612bと第2固定突起612cとの間に固定されている。
【0113】
この状態において、ロック爪644が非係止状態よりも下方位置において係止部材630のロック爪挿通孔635の上端と当接しており、係止部材630の先端部634が本体部611の下方から突出している(
図13(B)参照)。また係止部材630はロック爪挿通孔635の上端と下端との間で上下方向Zに移動自在に保持されている。
【0114】
図13(B)に示すように、この状態では、係止部材630の先端部634がフラップ52の係止孔52aに挿通されることにより、戸当り装置6とフラップ52との間には係止力が発生する。一方、係止部材630は上下方向Zに移動自在に保持されているので、戸当り装置6にある程度の力が付与されると、係止部材630の先端部634はフラップ52の係止孔52aに当接しながら上方へと移動することにより戸当り装置6とフラップ52との係止状態が解除される。
【0115】
(本止め状態における動作)
図12(C)に示すように、切替部材650の操作部652が前後方向Xにおける前方位置に保持されることにより、ロック爪644の先端が固定部614の第2固定突起612cの下面に固定されている。
【0116】
この状態において、ロック爪644が係止部材630のロック爪挿通孔635の下端と当接し、係止部材630が最下位置でロック部材640に移動不能に規制されている。これにより、係止部材630の先端部634は本体部611の下方から突出した状態で固定されている(
図13(C)参照)。またこの状態においてロック部材640の先端部645も本体部611の下方から突出している。
【0117】
図13(C)に示すように、この状態では、係止部材630の先端部634がフラップ52の係止孔52aに挿通されることにより、戸当り装置6とフラップ52との間には係止力が発生する。このとき係止部材630は上下方向Zに移動不能に固定されている。したがってこの状態では、戸当り装置6に対して外力が付与された場合でも戸当り装置6とフラップ52との係止状態が保持される。
【0118】
(受金具の他の態様)
図14~
図17を用いて、戸当り装置と係止状態を構成する受金具の他の態様について説明する。
図14及び
図15に示すように、受金具7は、ベース部71とフラップ72と回動軸73とカバー部74とを有している。
【0119】
図14に示すように、取付部71は、円盤形状を有しており、床面4に取り付けられる。取付部71の外周部には床面4へ取り付けるために用いられる締結具(図示しない)を挿通させるための複数の挿通孔が形成されている。また取付部71の中央には、フラップ72を収容するための矩形状の収容孔71aが形成されている。また収容孔71aの一端縁には回動軸を挿通させるための挿通部71bが形成されている。
【0120】
フラップ72は、略矩形状の板部材からなり基端側が回動軸73を介して取付部71に回動自在に軸支される。フラップ72の先端側には略矩形状の係止孔72aが形成されている。またフラップ72の係止孔72aよりも先端側には下方に向けて屈曲したテーパ部72bが形成されている。
【0121】
カバー部74は、円盤形状を有しており、取付部71の上面に取り付けられる。カバー部74の中央にはフラップ72を収容するための矩形状の収容孔74aが形成されている。
図15(A)に示すように、フラップ72が取付部71及びカバー部74の収容孔71a、74aに収容された状態では、フラップ72の上面とカバー部74の上面とが同一面上に配置される。一方、
図15(B)に示すように、フラップ72が起立した状態では、フラップ72の先端がカバー部74の上面側に突出する。
【0122】
図16及び
図17を用いて、本実施の形態に係る受金具7と戸当り装置と係合動作について説明する。以下では、第2の実施の形態に係る戸当り装置6が仮止め状態にある場合において、受金具7と戸当り装置6とが係止状態を構成する動作について説明する。
【0123】
図16(A)に示すように、戸当り装置6と受金具7との距離が離れている状態では受金具7のフラップ72は収容された状態にある。この状態において、ロック部材640のロック爪644の上面が係止部材630のロック爪挿入孔635の上縁に当接している。
【0124】
図16(B)に示すように、戸当り装置6が図面上の右方向に移動し受金具7に近接すると戸当り装置6のマグネット部材660の吸引力によってフラップ72が戸当り装置6が引き寄せられ、フラップ72のテーパ部72bが係止部材630の先端部634に当接する。
【0125】
図16(C)及び16(D)に示すように戸当り装置6がさらに右方向に移動すると、フラップ72のテーパ部72bが係止部材630の先端部634の形状(先端側に向けて先細りとなるテーパ形状)に沿って下方に移動する。このとき、フラップ72にはマグネット部材から上方への吸引力が作用しているため、フラップ72のテーパ部72bは係止部材630の先端部634と常に当接している。またこの状態において、係止部材630がフラップ72との当接により上方へと移動する。
【0126】
フラップ72のテーパ部72bの頂部(フラップ72の屈曲部)に差し掛かり(
図16(D)参照)、戸当り装置6がさらに右方向に移動すると、
図16(E)に示すように係止部材630の先端部634がフラップ72の係止孔72aへと入り込む。フラップ72は、係止部材630の先端部634と係止孔72aの端縁とが当接しながら上方に移動する。
【0127】
図16(F)に示すように戸当り装置6がさらに右方向に移動すると、先端部634の全体が係止孔72aにすべて入り込むとともに、テーパ部72bの頂部が戸当り装置6の当接面611aと当接する。この状態において、係止部材630の先端部634に形成される左右の張出部がフラップ72の下方に位置することにより、フラップ72と先端部634とが係合される。これにより、フラップ72と先端部634との間に戸当り装置6を受金具7から取り外すために付与される外力に対する抵抗力(係止力)が発生する。
【0128】
このように、受金具7を構成するフラップ72にテーパ部72bが形成されていることにより、フラップ72が係止部材630の先端部634と当接する際にテーパ部72bが先端部634の形状に沿って移動するので、係止部材630の先端部634を円滑にフラップ72の係止孔72aへと誘導することができる。すなわち、扉に対して過度の外力を付与することなく扉1を仮止め状態で受金具7によって係止させることができる。
【0129】
次に、受金具7と戸当り装置6との係止状態が解除される動作について説明する。
図17(A)に示すように、扉1に対して戸当り装置6が図面上の左方向に移動するような外力が付与されると、係止部材630の先端部634がフラップ72の係止孔72aの端縁に押し付けられた状態となり、係止部材630が反時計回りの方向に若干傾く。
【0130】
さらに戸当り装置6に対して外力が付与されると、
図17(B)に示すように、先端部634のテーパ面が係止孔72aの端縁と当接した状態でフラップ72が下方へと移動するとともに、係止部材630が上方へと移動する。さらに戸当り装置6に対して外力が付与されると、
図17(C)に示すように先端部634の頂部がフラップ72のテーパ部72bの頂部へと達する。さらに戸当り装置6に対して外力が付与されると、フラップ72と係止部材630との係止状態が解除される。
【0131】
本実施の形態に係る戸当り装置3,6によれば、戸体(扉)1に取り付けられる本体部材310,610と、本体部材310,610に設けられ床面に回動自在に取り付けられるフラップを引き寄せる磁石360,660と、本体部材310,610に当該本体部材310,610に収納された収納位置と該本体部材から一部が突出した突出位置との間で移動自在に設けられ磁石360,660により引き寄せられたフラップ52を係止する係止部材330,630と、本体部材310,610に設けられ係止部材330,630の移動を規制するロック部材340,640と、本体部材310,610に取り付けられロック部材340,640の位置を切り替える切替部材350,650とを備え、切替部材350,650は、ロック部材340,640の位置を、ロック部材340,640が係止部材330,630を収納位置にて移動不能に規制する第1の位置(非係止状態の位置)と、ロック部材340,640が係止部材330,630の移動を規制しない第2の位置(仮止め状態の位置)と、ロック部材340,640が係止部材330,630を突出位置にて移動不能に規制する第3の位置(本止め状態の位置)との間で切り替える。このような構成を有することにより、使用状況に応じて、非係止状態、仮止め状態、本止め状態を適宜切り替えることができる
【0132】
本発明に係る戸当り装置は、上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、切替部材が本体部材に対して回動自在に取り付けられ、切替部材の回動によりロック部材の位置が切り替えられる構成を例示して説明したが、これに限定されない。切替部材の回動を伴わず、例えば、切替部材が直線方向に移動することによりロック部材の位置が切り替えられる構成に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 戸体(扉)、3,6 戸当り装置、5 受金具、52 フラップ、310 本体部材、 311 ベース部、320 カバー部材、330 係止部材、340 ロック部材、350 切替部材、351 連結部、352 操作部、353 軸支部、360 マグネット部材、370 軸部材、610 本体部材、620 カバー部材、630 係止部材、640 ロック部材、650 切替部材、651 連結部、652 操作部、653 軸支部、660 マグネット部材、670 軸部材