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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】パネル部材および建物
(51)【国際特許分類】
   E04C 2/26 20060101AFI20221215BHJP
   E04C 2/24 20060101ALI20221215BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
E04C2/26 U
E04C2/24 R
E04H9/14 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020077378
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021173045
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394013943
【氏名又は名称】福助工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河内 四朗
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-121774(JP,A)
【文献】特開2016-173016(JP,A)
【文献】特開2015-183408(JP,A)
【文献】特開2015-092054(JP,A)
【文献】特開2014-009578(JP,A)
【文献】特許第2977815(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/00 - 2/54
E04H 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル面を構成するパネル面部と上記パネル面部の外周に設けられたパネル脚部とを備えるパネル本体と、
補強繊維より形成された織布または不織布から構成されており、上記パネル面部の一方面側から上記パネル本体を覆い、上記パネル本体に固定される補強シートと、を有しており、
上記パネル脚部の先端縁に複数の突起が形成されており、
複数の上記突起が上記補強シートの外周部に食い込んでいる、
パネル部材。
【請求項2】
上記補強シートを間に挟んだ状態で複数の上記突起の先端部を押さえ付け可能に構成された第1押さえ具を有する、請求項1に記載のパネル部材。
【請求項3】
上記パネル脚部の先端縁に沿って複数の上記突起が並んで配置されることにより、上記パネル脚部の先端縁がギザギザ状に形成されている、請求項1または請求項2に記載のパネル部材。
【請求項4】
上記補強シートは、コーキング材または接着剤を介して上記パネル脚部に接着されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のパネル部材。
【請求項5】
上記パネル面部に上記補強シートが接触する接触領域と、上記パネル面部に上記補強シートが接触しない非接触領域とを有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパネル部材。
【請求項6】
上記パネル本体は、金属材料より構成されており、
上記補強シートは、アラミド繊維織物より構成されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のパネル部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のパネル部材を有する建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル部材および建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、小屋、防災備蓄倉庫等の倉庫、シェルターなどの建物では、構成部材としてパネル部材が用いられている。また、これらの建物では、飛散してきた物体が壁等を貫通しないことが求められる場合がある。飛散してきた物体に対する耐性を向上させる簡単な手法としては、例えば、パネル部材の厚みを厚くする方法がある。
【0003】
なお、先行する非特許文献1は、パネル部材を用いた建物に関するものではないが、この非特許文献1には、噴石の衝突に対する耐性を向上させるため、垂木に配置した野地板上にアラミド繊維織物からなる補強シートを木材用ステープラーにより張り付け固定した後、これを屋根葺き材にて覆ってなる木造の山小屋等における屋根構造が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「活火山における退避壕等の充実に向けた手引き-概要-」,平成27年12月内閣府(防災担当)、図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パネル部材の厚みを厚くすると、パネル部材、これを用いた建物の重量が増加する。特に、パネル部材が金属材料からなる場合には、重量増加が著しい。そのため、パネル部材、建物の運搬性が低下する。なお、非特許文献1の技術は、パネル部材に関するものではないため、パネル部材にそのまま適用することができない。特に、パネル部材が金属材料からなる場合には、木材用ステープラーを使用した補強シートの固定は困難である。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、衝突した物体の貫通を抑制することができ、軽量化を図ることが可能なパネル部材、また、これを用いた建物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、パネル面を構成するパネル面部と上記パネル面部の外周に設けられたパネル脚部とを備えるパネル本体と、
補強繊維より形成された織布または不織布から構成されており、上記パネル面部の一方面側から上記パネル本体を覆い、上記パネル本体に固定される補強シートと、を有しており、
上記パネル脚部の先端縁に複数の突起が形成されており、
複数の上記突起が上記補強シートの外周部に食い込んでいる、
パネル部材にある。
【0008】
本発明の他の態様は、上記パネル部材を有する建物にある。
【発明の効果】
【0009】
上記パネル部材は、上記構成を有する。特に、パネル脚部の先端縁に形成された複数の突起が、補強繊維より形成された織布または不織布から構成される補強シートの外周部に食い込んだ状態とされている。そのため、上記パネル部材は、ステープラーを使用しなくてもパネル本体へ補強シートを固定することができる。そして、上記パネル部材は、パネル面部の一方面側から飛来物等の物体が衝突し、パネル本体が変形した場合でも、複数の突起の補強シートへの食い込みにより、補強シートがパネル本体から外れ難い。そのため、上記パネル部材は、パネル本体の変形と補強シートとによって物体の衝突エネルギーを吸収することができる。そのため、上記パネル部材は、衝突した物体の貫通を抑制することができる。また、上記パネル部材は、パネル本体の厚みを厚くすることによって衝突した物体の貫通を防ぐ必要がないため、パネル本体の厚みを薄くして軽量化を図ることができる。
【0010】
上記建物は、上記パネル部材を有する。そのため、上記建物は、衝突した物体の貫通を抑制することができ、軽量化を図ることができる。また、上記建物は、軽量化を図ることができるため、上記建物が予め組み立てて運搬されるものである場合に、上記建物の運搬性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係るパネル部材を示した図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は背面図である。
図2図2は、実施形態1に係るパネル部材のパネル本体を示した図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は背面図、(e)は上面図、(f)は底面図である。
図3図3は、図1(a)に示したIII-III線矢視断面図である。
図4図4は、図1(a)に示したIII-III線矢視断面の変形例である。
図5図5(a)は、図3に示したVa-Va線矢視断面図であり、図5(b)~図5(d)は、図3に示したVa-Va線矢視断面の変形例である。
図6図6は、実施形態1に係るパネル部材の第1押さえ具の一部を示した斜視図である。
図7図7は、図1(a)に示したVII-VII線矢視断面図である。
図8図8は、実施形態2に係るパネル部材を示した図である。
図9図9は、実施形態3に係るパネル部材を示した図であり、(a)は背面図、(b)は右側面図である。
図10図10は、実施形態3に係るパネル部材のパネル本体の背面側を示した図である。
図11図11は、図10(a)に示したXI-XI線矢視断面図である。
図12図12は、実施形態4に係る建物を示した図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図、(d)は背面図である。
図13図13は、実施形態4に係る建物の本体枠組を示した図であり、(a)は本体枠組の組図、(b)は本体枠組の分解図である。
図14図14は、実施形態4に係る建物において、柱間にパネル部材を組み込んだ一例を示した説明図である。
図15図15は、図14に示したXV-XV線矢視断面図である。
図16】実験例1における試験体の強度試験についての説明図である。
図17】実験例1における試験体の強度試験の結果をまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
実施形態1のパネル部材について、図1図7を用いて説明する。図1に例示されるように、本実施形態のパネル部材1は、パネル本体2と、補強シート3と、を少なくとも有している。以下、これについて詳説する。
【0013】
図2に例示されるように、パネル本体2は、パネル面部21と、パネル脚部22と、を備えている。
【0014】
パネル面部21は、パネル面を構成する。パネル面部21は、例えば、長方形状、正方形状等の四角形状などに形成されることができるがこれに限定されない。本実施形態では、パネル面部21が長方形状に形成されている例が示されている。
【0015】
パネル脚部22は、パネル面部21の外周に設けられる。パネル脚部22は、例えば、後述の実施形態4で説明する建物7を構成する柱体700などに取り付ける際の取り付け部位、パネル本体2の剛性を向上させる部位などとして機能することができる。パネル脚部22は、パネル面部21の外周を構成する四辺のうち、互いに対向する二辺に形成されることができる。図2では、パネル面部21の長辺にパネル脚部22が設けられている例が示されている。このように、パネル脚部22は、パネル面部21の外周の一部に設けられることができる。
【0016】
パネル脚部22は、パネル面部21と一体的に形成されることができる。具体的には、パネル脚部22は、板状のパネル本体形成材料が折れ曲がった状態とされることによって形成されることができる。この構成によれば、板材加工によりパネル部材1の剛性が向上し、比較的簡単にパネル部材1の強度を向上させることができる。
【0017】
本実施形態では、パネル面部21の一方面側をおもて面とし、パネル面部21の他方面側をうら面とする。なお、パネル面部21のおもて面は、飛来物等の物体が衝突する側の面となる。また、図2(a)において、パネル面部21に沿うパネル面内方向のうち、パネル面部21を長手方向に沿って二等分する中央線Lへ向かう方向を内方、パネル面部21の中央線Lへ向かう方向とは逆方向を外方とする。
【0018】
パネル脚部22は、より具体的には、図2図3図4(a)に例示されるように、パネル面部21の外周端縁からパネル面部21の他方面側にパネル面部21に対して垂直に延びる第1脚部221と、第1脚部221の先端部からパネル面部21に沿って内方に延びる第2脚部222とを有する構成とすることができる。
【0019】
本実施形態は、第1脚部221と第2脚部222とによってパネル脚部22を構成した例を示したものである。パネル脚部22は、他の構成を有していてもよい。例えば、図4(b)に示されるように、パネル脚部22は、さらに、第2脚部222の先端部からパネル面部21に向かって延びる第3脚部223を有する構成とされていてもよい。また、例えば、図4(c)、(d)に示されるように、パネル脚部22は、第1脚部221を有しており、第2脚部222を有していない構成とされていてもよい。パネル脚部22の形状は、パネル本体2に付与する強度、パネル本体2の製造性、パネル部材1の取り付け性などを考慮して適宜選択することができる。パネル脚部22に屈曲部が多くなるほど、パネル本体2の製造性は低下するが、パネル本体2の強度は向上する。
【0020】
パネル脚部22は、補強シート3の固定に用いられる複数の貫通孔220aを有することができる。図2図3では、第1脚部221に複数の貫通孔220aが形成されている例が示されている。また、パネル脚部22は、建物7の柱体700などへの取り付けに用いられる単数または複数の取り付け孔220bを有することができる。図2では、第2脚部222に複数の取り付け孔220bが形成されている例が示されている。
【0021】
補強シート3は、補強繊維より形成された織布(織物)または不織布から構成されている。織布および不織布は、通常、隙間を有している。織布の隙間は、織目である。不織布の隙間は、絡み合った補強繊維間に生じる空間である。補強シート3は、1枚の布から構成されていてもよいし、複数枚の布から構成されていてもよい。補強シート3は、パネル面部21の一方面側からパネル本体2を覆い、パネル本体2に固定される。補強シート3は、パネル面部21を中心にしてパネル本体2を平面に展開してなる展開形状の外形よりも大きく形成されることができる。図3図4に例示されるように、補強シート3は、パネル面部21の一方面、パネル脚部22の外側面を覆うとともに、パネル脚部22の先端縁を巻き込むように配置されることができる。つまり、補強シート3の先端縁は、パネル脚部22の先端縁を跨いでパネル脚部22の内側面にまで達するように配置されることができる。
【0022】
なお、本実施形態では、図1(d)に例示されるように、補強シート3は、パネル脚部22が形成されていないパネル面部21の二つの短辺側の端縁を巻き込むように配置されることもできる。つまり、補強シート3の先端縁は、パネル面部21の端縁を跨いでパネル面部21の他方面の外周部にまで達するように配置されることができる。
【0023】
補強シート3は、図3等に例示されるように、パネル脚部22の貫通孔220aに挿通された接合部材224にてパネル脚部22に固定されることができる。なお、補強シート3は、図1図2に例示されるように、パネル面部21の短辺部分に形成された複数の貫通孔210aに挿通された接合部材224にてパネル面部21にも固定されることができる。接合部材224としては、例えば、ブラインドリベット等のリベット、ネジ、ボルト・ナットなどを用いることができる。このうち、好ましくは、固定の確実性、作業性などの観点から、接合部材224としてブラインドリベットを用いることができる。
【0024】
ここで、パネル部材1において、パネル脚部22の先端縁には、図2図5に例示されるように、複数の突起225が形成されている。複数の突起225は、補強シート3の外周部に食い込んでいる。
【0025】
複数の突起225は、パネル脚部22の先端縁の全体にわたって形成されていてもよいし、パネル脚部22の先端縁の一部に形成されていてもよい。図2図5(a)では、複数の突起225がパネル脚部22の先端縁の全体にわたって形成されている例が示されている。また、複数の突起225は、互いに接して配置されていてもよいし、互いに離れて配置されていてもよいし、これらを組み合わせて配置されていてもよい。図2図5(a)では、複数の突起225が互いに接して配置されている例が示されている。図2図5(a)に例示されるように、複数の突起225がパネル脚部22の先端縁の全体にわたって形成されており、かつ、互いに接して配置されている場合には、補強シート3の外周部への突起225の食い込み箇所が増える。そのため、パネル面部21の一方面側から飛来物等の物体が衝突し、パネル本体2が変形した場合でも、補強シート3がパネル本体2からより外れ難くなる。なお、補強シート3への突起225の食い込みは、少なくとも補強シート3の外周部に突起225が引っ掛かった状態となっておればよい。つまり、突起225の一部が補強シート3に食い込んでいてもよいし、突起225の全体が補強シート3に食い込んでいてもよい。
【0026】
突起225の形状は、補強シート3における織目等の隙間に食い込むことができれば、特に限定されない。突起225の形状は、例えば、図2図5(a)、(b)、(d)に例示されるように、先端が尖った形状(三角形状等)とすることができる。他にも、突起225の形状は、例えば、図5(c)に例示されるように、四角形状(矩形状)等とすることもできる。突起225の形状は、補強シート3における織目等の隙間に食い込ませやすい、四角形状の突起225に比べてレーザー加工等による加工時間を短縮できるなどの観点から、好ましくは、先端が尖った形状であるといよい。
【0027】
また、複数の突起225は、図2図5(a)~(c)に例示されるように、同じ形状とされていてもよいし、図5(d)に例示されるように、異なる形状を含んでいてもよい。複数の突起225が同じ形状とされている場合には、レーザー加工等による突起225の形成性を向上させることができる。
【0028】
パネル部材1は、図2図5(a)に例示されるように、パネル脚部22の先端縁に沿って複数の突起225が並んで配置されることにより、パネル脚部22の先端縁がギザギザ状に形成されることができる。つまり、パネル部材1は、複数の突起225による凹凸によってパネル脚部22の先端縁がギザギザ状に形成されることができる。この構成によれば、複数の突起225の先端が補強シート3の織目等の隙間を捉えやすくなり、補強シート3の外周部への複数の突起225の食い込みを確実なものとすることができる。なお、ギザギザ状に形成された部分は、パネル脚部22の先端縁の全体にわたって存在していてもよいし、パネル脚部22の先端縁に部分的に存在していてもよい。図2では、前者の例が示されている。また、ギザギザ状とは、少なくとも先端が補強シート3の隙間に食い込み可能に形成された突起225が複数並んで配置されることによって凹凸が形成された状態をいい、先端が尖った突起225が複数並んで配置されることによって凹凸が形成された状態が少なくとも含まれる。
【0029】
パネル部材1は、パネル面部21に補強シート3が接触する接触領域(不図示)と、パネル面部に補強シートが接触しない非接触領域(不図示)とを有する構成とすることができる。この構成によれば、パネル面部21の全体に補強シート3が接触するように強く張られている場合に比べ、パネル面部21の一方面側から飛来物等の物体が衝突した際の衝突エネルギーを吸収しやすくなる。なお、非接触領域は、パネル面部21に張られた補強シート3がパネル面部21から浮いた状態にある領域ということもできる。また、接触領域および非接触領域は、パネル面部21上に単数または複数存在することができる。
【0030】
パネル部材1は、図1図3図6に例示されるように、補強シート3を間に挟んだ状態で、パネル脚部22の先端縁に形成された複数の突起225の先端部を押さえ付け可能に構成された第1押さえ具4を有する構成とすることができる。この構成によれば、補強シート3に食い込んだ突起225の先端部が第1押さえ具4によって押され付けられることにより、補強シート3の外周部に突起225が食い込んだ状態を確実に保持することができる。そのため、この構成によれば、パネル本体2への補強シート3の固定を確実なものとすることができる。また、この構成によれば、パネル面部21の一方面側から飛来物等の物体が衝突した際にパネル本体2が変形した場合でも、補強シート3が突起225からより外れ難くなる。そのため、この構成によれば、パネル本体2と補強シート3との接合強度を向上させることができる。
【0031】
第1押さえ具4は、図3図4に例示されるように、パネル脚部22に固定されることができる。なお、図4では、固定位置を矢印Yにて示している。第1押さえ具4は、図3図6に例示されるように、パネル脚部22に形成された各貫通孔220aに対応する複数の貫通孔400aを有することができる。第1押さえ具4は、複数の貫通孔400aおよびパネル脚部22の対応する各貫通孔220aに挿通された接合部材224にて、補強シート3を間に挟んだ状態でパネル脚部22に固定されることができる。図3では、第1押さえ具4と補強シート3とが同じ接合部材224によってパネル脚部22に固定されている例が示されている。
【0032】
第1押さえ具4の形状は、パネル脚部22の先端縁の位置、パネル脚部22の外形、パネル脚部22への取り付け性などを考慮して決定することができる。第1押さえ具4は、具体的には、図3図4図6に例示されるように、パネル脚部22に取り付け可能であり、突起225の先端に対向配置される突起押さえ部404を有する構成とすることができる。より具体的には、例えば、パネル脚部22が図3に示される形態の場合、第1押さえ具4は、パネル脚部22における第1脚部221の外面を覆う第1被覆部401と、第1被覆部401の先端部から延びており、第2脚部222の外面を覆う第2被覆部402と、第2被覆部402の先端部から延びており、突起225の先端に対向配置される突起押さえ部404とを有する構成とすることができる。
【0033】
また、第1押さえ具4は、図4(a)に例示されるように、第1被覆部401を有さず、パネル脚部22における第2脚部222の外面を覆う第2被覆部402と、第2被覆部402の先端部から延びており、突起225の先端に対向配置される突起押さえ部404とを有する構成とすることができる。なお、図4(a)に例示されるように、第1押さえ具4では、突起押さえ部404の先端部に、パネル本体2の変形による補強シート3の外れを抑制しやすくするため、パネル脚部22の内側面に向けて折り返し部405を設けることができる。また、例えば、パネル脚部22が図4(b)に示される形態の場合、第1押さえ具4は、パネル脚部22における第2脚部222の外面を覆う第2被覆部402と、第2被覆部402の先端部から延びており、第3脚部223の外面を覆う第3被覆部403と、第3被覆部403の先端部から延びており、突起225の先端に対向配置される突起押さえ部404とを有する構成とすることができる。また、例えば、パネル脚部22が図4(c)に示される形態の場合、第1押さえ具4は、パネル脚部22における第1脚部221の外面を覆う第1被覆部401と、第1被覆部401の先端部から延びており、突起225の先端に対向配置される突起押さえ部404と、突起押さえ部404の先端部から第1脚部221に沿って延びる折り返し部405とを有する構成とすることができる。また、例えば、パネル脚部22が図4(d)に示される形態の場合、第1押さえ具4は、パネル面部21の外周部を覆うパネル面被覆部400と、パネル面被覆部400の先端部から延びており、第1脚部221の外面を覆う第1被覆部401と、第1被覆部401の先端部から延びており、突起225の先端に対向配置される突起押さえ部404とを有する構成とすることができる。なお、パネル脚部22への第1押さえ具4の取り付けには、いずれかの被覆部を利用することができる。また、第1押さえ具4は、図6に例示されるように、パネル脚部22の取り付け孔220bに対応する位置に取り付け孔400bを有することができる。
【0034】
パネル部材1において、パネル面部21の外周のうち、パネル脚部22が設けられていない部分における端縁には、図2に例示されるように、パネル脚部22に設けられる突起225と同様の突起226を形成することができる。この構成によれば、パネル面部21の端縁に形成された複数の突起226に補強シート3の外周部を食い込ませることが可能になる。そのため、この構成によれば、パネル本体2と補強シート3との接合強度を向上させることができる。なお、図2では、図5(a)に示されるパネル脚部22に形成された複数の突起225と同様の突起226が、パネル面部21の短辺側の端縁に形成されている例が示されている。
【0035】
またこの場合、パネル部材1は、図1に例示されるように、補強シート3を間に挟んだ状態で、パネル面部21の端縁に形成された複数の突起226の先端部を押さえ付け可能に構成された第2押さえ具5を有する構成とすることができる。この構成によれば、補強シート3に食い込んだ突起226の先端部が第2押さえ具5によって押され付けられることにより、補強シート3の外周部に突起226が食い込んだ状態を確実に保持することができる。そのため、この構成によれば、第1押さえ具4との相乗効果により、パネル本体2への補強シート3の固定をより確実なものとすることができる。また、この構成によれば、パネル面部21の一方面側から飛来物等の物体が衝突した際にパネル本体2が変形した場合でも、第1押さえ具4との相乗効果により、突起225および突起226から補強シート3がより外れ難くなる。そのため、この構成によれば、パネル本体2と補強シート3との接合強度をより向上させることができる。
【0036】
第2押さえ具5は、パネル面部21に固定されることができる。第2押さえ具5は、図1および図7に例示されるように、パネル面部21の外周部に形成された各貫通孔210aに対応する複数の貫通孔50aを有することができる。第2押さえ具5は、複数の貫通孔50aおよびパネル面部21の対応する各貫通孔210aに挿通された接合部材224にて、補強シート3を間に挟んだ状態でパネル面部21に固定されることができる。
【0037】
第2押さえ具5は、具体的には、図7に例示されるように、パネル面部21に取り付け可能であり、突起226の先端に対向配置される突起押さえ部52を有する構成とすることができる。より具体的には、第2押さえ具5は、図7に示されるように、パネル面部21の外周部を覆うパネル面被覆部51と、パネル面被覆部51の先端部から延びており、突起226の先端に対向配置される突起押さえ部52とを有する構成とすることができる。なお、パネル面部21への第2押さえ具5の取り付けには、パネル面被覆部51を利用することができる。
【0038】
パネル本体2、第1押さえ具4、および、第2押さえ具5の材料としては、例えば、金属材料、プラスチック材料、複合材料などを例示することができる。また、補強シート3を形成する補強繊維としては、例えば、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、高強力ポリアリレート繊維、PBO繊維、炭素繊維などを例示することができる。これら材料は、パネル部材1が用いられる用途に合わせて任意に組み合わせることができる。また、パネル本体2、第1押さえ具4、および、第2押さえ具5は、例えば、板状材料を折り曲げ加工したり、型成形したりすることなどによって形成することができる。
【0039】
上述したパネル部材1は、上記構成を有する。特に、パネル脚部22の先端縁に形成された複数の突起225が、補強繊維より形成された織布または不織布から構成される補強シート3の外周部に食い込んだ状態とされている。そのため、パネル部材1は、ステープラーを使用しなくてもパネル本体2へ補強シート3を固定することができる。そして、パネル部材1は、パネル面部21の一方面側から飛来物等の物体が衝突し、パネル本体2が変形した場合でも、複数の突起225の補強シート3への食い込みにより、補強シート3がパネル本体2から外れ難い。そのため、パネル部材1は、パネル本体2の変形と補強シート3とによって物体の衝突エネルギーを吸収することができる。そのため、パネル部材1は、衝突した物体の貫通を抑制することができる。また、パネル部材1は、パネル本体2の厚みを厚くすることによって衝突した物体の貫通を防ぐ必要がないため、パネル本体2の厚みを薄くして軽量化を図ることができる。
【0040】
パネル部材1において、パネル本体2は、金属材料より構成されることができ、補強シート3は、アラミド繊維織物より構成されることができる。この際、パネル部材1が第1押さえ具4を有する場合、パネル部材1が第1押さえ具4および第2押さえ具5を有する場合には、第1押さえ具4、第2押さえ具5は、金属材料より構成されることができる。以下、これについて詳述する。
【0041】
上述した非特許文献1によれば、木材用ステープラーを用いて木材にアラミド繊維織物を張り付け固定することにより、飛来した噴石が木板を破損した場合でも、噴石がアラミド繊維織物を貫通しないことが実証されている。しかし、パネル本体2が金属材料からなる場合には、木材用ステープラーは使用することができない。そのため、この場合には、パネル本体2と補強シート3としてのアラミド繊維織物とを接合するための新規な構造が必要になる。なお、リベットやネジなどを用いて、アラミド繊維織物を金属製のパネル本体2に直接固定する方法も考えられる。しかし、この方法のみでは、パネル部材に力が掛かったときに織目が緩み、アラミド繊維織物が外れてしまう。これに対して、上述したパネル部材1の構造によれば、パネル面部21の一方面側から噴石が衝突し金属製のパネル本体2が変形した場合でも、複数の突起225のアラミド繊維織物への食い込みにより、アラミド繊維織物がパネル本体2から外れ難い。そのため、パネル部材1は、金属製のパネル本体2の変形とアラミド繊維織物とにより、ある程度の大きさの噴石の衝突エネルギーを吸収することができる。そのため、パネル部材1は、衝突した噴石の貫通を抑制することができる。パネル部材1が金属製の第1押さえ具4、金属製の第2押さえ具5を有する場合には、アラミド繊維織物の外れ抑制を確実なものとすることができる。また、パネル部材1は、アラミド繊維織物を用いずに金属製のパネル本体2の厚みを厚くしたパネル部材1に比べ、金属製のパネル本体2の厚みを薄くして軽量化を図ることができる。そのため、パネル部材1は、パネル部材1自体の軽量化、このパネル部材1を用いた建物の軽量化を図ることができる。また、パネル部材1は、建物が予め組み立てて運搬されるものである場合に、建物の運搬性を向上させることができる。
【0042】
なお、パネル本体2を構成する金属材料としては、ステンレス鋼などを好適に用いることができる。ステンレス鋼としては、具体的には、高強度、高耐食性、薄肉化などの観点から、二相ステンレス鋼などを好適に用いることができる。
【0043】
したがって、上記の場合には、火山の噴火時に飛来する噴石に対する対策が要求される、小屋、シェルター、防災備蓄倉庫等の倉庫、物置などの建物に用いて好適なパネル部材1が得られる。
【0044】
(実施形態2)
実施形態2のパネル部材について、図8を用いて説明する。なお、実施形態2以降において用いられる符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0045】
図8に例示されるように、本実施形態のパネル部材1では、補強シート3は、コーキング材6aまたは接着剤6bを介してパネル脚部22に接着されることができる。この構成によれば、コーキング材6aまたは接着剤6bによる接着力により、補強シート3の位置ずれや外れを抑制しつつ補強シート3をパネル脚部22に固定することができる。つまり、この構成によれば、補強シート3の位置ずれや外れに対する補強効果を付与することが可能になる。また、パネル部材1が上述した第1押さえ具4を有するとともに、コーキング材6aまたは接着剤6bを介してパネル脚部22に補強シート3が接着されている場合には、両者の作用効果が相まって、パネル面部21の一方面側から飛来物等の物体が衝突した際に、補強シート3がパネル本体2からより外れ難くなる。なお、コーキング材6aおよび接着剤6bの材質は、補強シート3およびパネル脚部22に接着可能な材質を適宜選択することができる。また、コーキング材6aおよび接着剤6bは、パネル脚部22の全体にわたって設けられていてもよいし、パネル脚部22に部分的に設けられていてもよい。
【0046】
その他の構成および作用効果は、実施形態1のパネル部材1と同様である。
【0047】
(実施形態3)
実施形態3のパネル部材について、図9図11を用いて説明する。図9図11に例示されるように、本実施形態のパネル部材1では、パネル面部21は、正方形状に形成されている。また、パネル脚部22は、長方形状に形成されたパネル面部21の外周を構成する四辺のそれぞれに形成されている。つまり、パネル脚部22は、パネル面部21の外周全体にわたって設けられている。
【0048】
この構成によれば、パネル脚部22がパネル面部21の外周の一部に設けられている場合に比べ、パネル部材1の剛性が向上し、パネル部材1の強度を向上させることができる。なお、パネル脚部22同士の間には、パネル脚部22同士が干渉しないように適宜間隔227を設けることができる。また、パネル脚部22の両端部は、間隔227を設けることができるように適宜形状を調節することができる。
【0049】
その他の構成および作用効果は、実施形態1のパネル部材1、実施形態2のパネル部材1と同様である。
【0050】
(実施形態4)
実施形態4の建物7について、図12図15を用いて説明する。図12図15に例示されるように、本実施形態の建物7は、実施形態1または実施形態2のパネル部材1を有している。本実施形態では、パネル部材1は、パネル本体2と、補強シート3と、第1押さえ具4と、第2押さえ具5とを有する構成とすることができる。パネル本体2、第1押さえ具4、および、第2押さえ具5は、例えば、二相ステンレス鋼などの金属材料より構成されており、補強シート3は、アラミド繊維織物から構成されている。
【0051】
本実施形態の建物7としては、例えば、小屋、シェルター、防災備蓄倉庫等の倉庫、物置などを例示することができる。なお、建物7は、予め工場等において組み立てられる形態のものであってもよいし、建物7が設置される現場にて組み立てられるものであってもよい。以下では、火山の噴火時に飛来する噴石に対する対策が要求される、防災備蓄倉庫、シェルター、シェルター兼用防災備蓄倉庫などに適用可能な建物7の例について説明する。
【0052】
本実施形態の建物7は、例えば、図12に例示されるように、床面部71と、建物の前面に配置される前面壁72と、建物7の左右側面に配置される一対の側面壁73と、建物7の背面に配置される背面壁74と、建物の屋根に配置される屋根部75と、前面壁72に設けられ、建物7の出入り口となる扉体76と、を有する構成とすることができる。
【0053】
本実施形態の建物7は、図13に例示されるように、複数の柱体700を備える本体枠組70と、柱体700間に取り付けられた複数のパネル部材1と、を有する構成とすることができる。なお、柱体700は、垂直方向に設けられる柱部材のみならず、水平方向に設けられる土台、梁等も含むものとする。
【0054】
本体枠組70は、床面部71を構成するためのベース枠組701と、前面壁72を構成するための前面枠組702と、左右の側面壁73を構成するための一対の側面枠組703と、背面壁74を構成するための背面枠組704と、屋根部75を構成するための屋根枠組705と、前面枠組702に設けられ、扉体76を設けるための扉枠組706と、を有する構成とすることができる。
【0055】
本実施形態では、前面枠組702、各側面枠組703、背面枠組704、および、屋根枠組705における柱体700間にパネル部材1が取り付けられている。また、扉体76内にもパネル部材1が取り付けられている。また、前面枠組702、各側面枠組703、背面枠組704、および、扉体76では、アラミド繊維織物を1枚使用したパネル部材1が用いられ、屋根枠組705では、アラミド繊維織物を2枚使用したパネル部材1が用いられる。
【0056】
柱体700間へのパネル部材1の取り付け構造の一例について図15を用いて説明する。図15に例示されるように、柱体700は、金属材料より中空に形成されており、互いに隣り合った柱体700の間にある空間に突出する板状の突出部700aを有している。図15では、突出部700aが壁厚み方向の中央部から突出している例が示されている。柱体700を構成する金属材料としては、例えば、二相ステンレス鋼などを用いることができる。
【0057】
パネル部材1は、パネル面部21の一方面を外側にした状態で柱体700の間の空間に配置され、柱体700の突出部700aに接合部材(不図示)を用いて取り付けられる。本実施形態では、パネル脚部22の第2脚部222の外側を覆う第2被覆部402が突出部700aに当接した状態で、パネル部材1が突出部700aに取り付けられる。接合部材としては、例えば、ブラインドリベット等のリベット、ネジなどを例示することできる。
【0058】
建物7は、例えば、以下のようにして組み立てることができる。先ず、ベース枠組701に、前面枠組702と、一対の側面枠組703と、背面枠組704と、扉枠組706とを組み付ける。次いで、組み付けられた前面枠組702と、一対の側面枠組703と、背面枠組704とにおける各柱体700間にパネル部材1を取り付ける。パネル部材1の取り付け後、柱体700の外側から外装材771を取り付ける。外装材771としては、例えば、二相ステンレス鋼などの金属材料を用いることができる。次いで、各柱体700間(各梁間)にパネル部材1が取り付けられた屋根枠組705と、内部にパネル部材1が取り付けられた扉体76とを組み付ける。なお、屋根枠組705の上には屋根材774が取り付けられている。屋根材774としては、例えば、二相ステンレス鋼などの金属材料を用いることができる。次いで、室内側から柱体700間に必要に応じて断熱材772を配置した後、床面、内壁面、天井面に内装材773を取り付ける。床面および天井面に取り付ける内装材773としては、合板などを用いることができ、内壁面に取り付ける内装材773としては、カラー鋼板、塩ビ鋼板などを用いることができる。以上により、火山の噴火時に飛来する噴石に対する対策が要求される、防災備蓄倉庫、シェルター、シェルター兼用防災備蓄倉庫などに適用可能な建物7を得ることができる。
【0059】
(実験例1)
パネル本体に補強シートを固定した複数のパネル部材について、強度試験を実施した。なお、噴石の衝突試験は、特殊な試験設備がなければ実施することができない。上記強度試験は、噴石の衝突によってパネル本体に変形が生じた場合でも補強シートの外れが起きないかどうかを検証するための試験である。
【0060】
本実験例では、具体的には、火山の噴火時に飛来する噴石に対する対策が要求される、小屋、シェルター、防災備蓄倉庫等の倉庫、物置などの建物に適用するパネル部材を模擬した複数の試験体を作製した。
【0061】
試験体は、概略、図9に示されるような形状を呈している。具体的には、板金製の430mm角の正方形状のパネル本体と、パネル本体を覆い、パネル本体の四辺に設けられたパネル脚部に固定されたアラミド繊維織物(帝人フロンティア社製、Twaron<登録商標>、TNF-3002)と、各パネル脚部に取り付けられる板金製の第1押さえ具と、を有している。各試験体は、パネル本体の材料、補強シートの枚数、補強シートのパネル脚部への接着の有無、第1押さえ具の形状などの条件がそれぞれ異なっている。
【0062】
パネル本体の材料は、1.2mm厚の鋼板、1.6mm厚の鋼板、または、1.5mm厚の二相ステンレス鋼板とした。パネル脚部の形状は、図3の形状とした。補強シートの枚数は、1枚または2枚とした。補強シートの接着にはシリコーン系のコーキング材を用いた。コーキング材による接着は、4つのパネル脚部の全てに補強シートを接着した状態と、4つのパネル脚部のうち、2つのパネル脚部に接着し、残りの2つのパネル脚部には接着しない状態の2種類とした。なお、コーキングによる接着は、パネル脚部の第2脚部の位置にて実施した。第1押さえ具は、図3の形状、または、図3の形状における突起押さえ部の先端部に折り返し部を設けた形状とした。この際、折り返し部は、補強シート側に折り返されており、突起押さえ部に対して45度傾斜させた。また、折り返し部の形成は、4つの第1押さえ具の全てに形成した場合と、4つの第1押さえ具のうち、2つの第1押さえ具に形成した場合の2種類とした。なお、各試験体は、いずれも、パネル脚部の先端縁に形成されたギザギザ状の複数の突起の先端が補強シートに食い込んだ状態とした。また、各突起の基端部の幅は、6mmとし、各突起の基端部から先端部までの高さは、3mmとした。また、各試験体は、パネル面部に補強シートが接触する接触領域と、パネル面部に補強シートが接触しない非接触領域とが形成されるように、補強シートにかかる張力を調整した。
【0063】
強度試験では、図16に示されるように、パネル面部21の一方面側を上向きにして、高さ200mmの架台9にパネル部材1を載せ、パネル部材1の中央に荷重Pをかけてパネル本体2を大きく変形させた。具体的には、パネル面部21が100mm以上変形するようにパネル面部21の中央部に荷重Pをかけた。なお、パネル部材1は、架台9に固定されていない。また、強度試験は、図16に示されるように、屋根材774を模擬した厚み1.5mmの板材774aをパネル部材1の表面にのせた場合と、のせない場合のいずれかにて行った。そして、パネル面部21を変形させた後、補強シート3の外れの有無、補強シート3の破損の有無を確認した。
【0064】
表1に試験体および試験条件をまとめて示す。図17に試験結果をまとめて示す。
【0065】
【表1】
【0066】
上記強度試験結果によれば、いずれの試験体も、補強シートの外れ、破損が見られなかった。これらの結果から、本開示のパネル部材の構造によれば、パネル本体が大きく変形した場合でも、パネル本体に補強シートを十分な強度で接合できることが確認された。また、補強シートをコーキング材にてパネル脚部に接着した試験体では、荷重によるパネル本体の変形によって第1押さえ具が一部外れた場合でも、補強シートの外周部にパネル脚部の先端縁に形成した複数の突起が食い込んだ状態が保持されており、補強シートの外れや破損は見られなかった。また、屋根板を模擬した板材が有る場合、無い場合のいずれの場合も、補強シートの外れや破損は見られなかった。また、荷重に対する強度については、1.2mm厚の鋼板を用いた試験体の強度<1.6mm厚の鋼板を用いた試験体の強度<1.5mm厚の二相ステンレス鋼板を用いた試験体の強度の関係が見られた。
【0067】
上述した内閣府にて行われた検証結果では、アラミド繊維織物を張った木板が破損しても、木板に固定されたアラミド繊維織物により、こぶし大の噴石の貫通を防ぐことができている。本実験例では、上述のように、板金製のパネル本体にアラミド繊維織物を十分な強度で接合できている。この結果から、噴石の衝突によって板金製のパネル本体自体が大きく変形しても、パネル本体から外れないアラミド繊維織物により噴石の貫通を防ぐことができる。つまり、パネル部材は、パネル本体によって噴石の衝突に耐えるのではなく、パネル本体の変形と、パネル本体から外れないアラミド繊維織物とによって噴石の衝突エネルギーを吸収することができる。また、パネル本体の薄肉化により、パネル部材の軽量化を図ることもできる。よって、このようなパネル部材を用いた、小屋、シェルター、防災備蓄倉庫等の倉庫、物置などの建物は、こぶし大の噴石に対する耐性があり、軽量化を図ることができるといえる。
【0068】
(実験例2)
実施形態4に従って、防災備蓄倉庫、シェルター、シェルター兼用防災備蓄倉庫などに適用可能な建物を試作した。試作した建物は、概略以下の通りである。
【0069】
建物の外形寸法は、幅4168mm×奥行2358mm×高さ2400mmとした。各枠組の柱体を構成する金属材料としては、厚み3mmの二相ステンレス鋼を用いた。建物の壁、天井、扉体内には、厚み1.2~1.6mmの電気亜鉛メッキ鋼板製のパネル本体とアラミド繊維織物とを備えるパネル部材を組み込んだ。屋根材としては、厚み1.5mmの二相ステンレス鋼を用いた。扉体は、扉厚み65mmであり、厚み2mmの二相ステンレス鋼を用いた。なお、扉枠組としては、厚み2mmの二相ステンレス鋼を用いた。外装材としては、厚み1mmの二相ステンレス鋼を用いた。内壁面に取り付ける内装材としては、カラー鋼板、塩ビ鋼板を用いた。床面に取り付ける内装材としては、厚み12mmの耐水合板を用いた。天井面に取り付ける内装材としては、厚み4mmの化粧合板を用いた。
【0070】
試作した建物の重量は、約2tであった。したがって、試作した建物は、トラック輸送、輸送用の大型ヘリコプターにて吊り上げて運搬可能なサイズ、重量であるといえる。
【0071】
本発明は、上記各実施形態、各実験例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、各実施形態、各実験例に示される各構成は、それぞれ任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 パネル部材
2 パネル本体
21 パネル面部
22 パネル脚部
3 補強シート
225 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17