(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】受動的に制御整列される可変回転子/固定子を備える永久磁石モーター
(51)【国際特許分類】
H02K 21/14 20060101AFI20221215BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H02K21/14 M
H02K21/24 M
(21)【出願番号】P 2020513528
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 US2018044955
(87)【国際公開番号】W WO2019050642
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-07-12
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514315012
【氏名又は名称】インディゴ テクノロジーズ, インク.
【氏名又は名称原語表記】INDIGO TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】ディアス カールソン レイチェル エー.
(72)【発明者】
【氏名】パーチェス スコット ティー.
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-166742(JP,A)
【文献】特開2002-021687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 21/14
H02K 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モーターであって、
第一のサブシステムおよび第二のサブシステムであって、前記第一および第二のサブシステムの一方が磁気回転子アセンブリを備え、前記第一および第二のサブシステムの他方がコイル固定子アセンブリを備える、第一のサブシステムおよび第二のサブシステムと、
前記磁気回転子アセンブリおよび前記コイル固定子アセンブリを支持し、回転軸を画定するハブアセンブリと、
前記ハブアセンブリ上に前記第一および第二のサブシステムのうちの少なくとも一つを支持する軸受アセンブリと、を備え、
前記磁気回転子アセンブリが、トルク発生磁石のアレイを備え、
前記コイル固定子アセンブリが、前記磁気
回転子アセンブリの
前記トルク発生磁石
のアレイに対向する駆動コイルのアレイを備え、
前記第一のサブシステムが、軸方向に配向された磁場を発生させるための
揚力発生要素のアレイを備え、
前記第二のサブシステムは、前記第一のサブシステムの前記揚力発生要素のアレイと整列し、かつ対向する導電性領域を備え、前記揚力発生要素のアレイおよび前記導電性領域は互いに分離距離だけ軸方向に分離され、
前記軸受アセンブリが、磁気回転子アセンブリが前記ハブアセンブリの前記回転軸の周りを回転できるようにし、ならびに前記揚力発生要素のアレイと前記導電性領域との互いに対す
る動きによって
前記導電性領域に誘導される渦電流によって発生する揚力に応答して、
前記第一又は第二のサブシステムの少なくとも一つを前記回転軸に沿って長手方向に移動できるようにして前記磁気回転子アセンブリおよび前記コイル固定子アセンブリの分離距離を変え
られるようにする、
前記電気モーター。
【請求項2】
前記軸受アセンブリが、前記ハブアセンブリ上で前記第一のサブシステムを支持する、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項3】
前記軸受アセンブリが、前記ハブアセンブリ上で前記第二のサブシステムを支持する、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項4】
前記軸受アセンブリが、前記ハブアセンブリ上で前記第一のサブシステムおよび前記第二のサブシステムの両方を支持する、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項5】
前記第一のサブシステムが、前記磁気回転子アセンブリを備え、前記第二のサブシステムが、前記コイル固定子アセンブリを備える、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項6】
前記第一のサブシステムが、前記コイル固定子アセンブリを備え、前記第二のサブシステムが、前記磁気回転子アセンブリを備える、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項7】
前記揚力発生要素
のアレイが永久磁石のアレイである、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項8】
前記揚力発生要素
のアレイが電気コイルのアレイである、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項9】
前記軸受アセンブリが、前記ハブアセンブリ上で前記磁気回転子アセンブリを支持する回転軸受アセンブリを含む、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項10】
前記軸受アセンブリが、前記ハブアセンブリ上で前記コイル固定子アセンブリを支持するリニア軸受アセンブリを含む、請求項9に記載の電気モーター。
【請求項11】
前記軸受アセンブリが、前記ハブアセンブリ上で前記磁気回転子アセンブリを支持し、前記磁気回転子アセンブリが前記回転軸の周りを回転し、前記回転軸に沿って長手方向に前後に移動できるようにする、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項12】
前記第二のサブシステムが、前記導電性領域を形成する環状の導電性プレートを備える、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項13】
前記磁気回転子アセンブリおよび前記コイル固定子アセンブリが、ラジアル磁束モーターを形成する、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項14】
前記磁気回転子アセンブリおよび前記コイル固定子アセンブリが、軸方向磁束モーターを形成する、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項15】
前記磁気回転子アセンブリの回転速度が増加すると前記分離距離が増加して、前記トルク発生磁石のアレイと前記駆動コイルのアレイとの間の磁気結合の低下を生じさせる、請求項1に記載の電気モーター。
【請求項16】
前記揚力に反して前記磁気回転子アセンブリ又は前記コイル固定子アセンブリの一方に復元力を加えて、前記揚力発生要素のアレイと前記導電性領域との間の分離距離の変化を制限するように構成される、請求項1に記載の電気モーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月5日に出願された米国仮出願第62/554,068号、および2018年3月21日に出願された米国出願第15/927,328号に基づく優先権を主張するものであり、当該両出願の内容は参照によりここに組み込まれる。米国での目的は、本出願は米国出願番号15/927,328の継続出願である。
【0002】
発明の実施形態は、概ね電気モーターに関し、より具体的には、可変トルク定数を示す電気モーターに関する。
【背景技術】
【0003】
電気モーターは、トルク定数Ktで特徴付けられ、これは基本的に、モーターによって発生されるトルクであり、そのトルクを発生するのに必要なコイル電流で割ったものである。一般的に、高トルク定数のモーターは、低RPMで高トルクを発生するのに役立つのに対して、低トルク定数のモーターは、高トルクを必要としない高速の生産により適している。非常に一般的な意味では、トルク定数は、コイルアセンブリと磁気回転子アセンブリと間の電磁結合の尺度である。より高い結合は、より低い結合と比較してより高いトルク定数を発生させる。しかし、より高いトルク定数を有するモーターを使用する場合の欠点の一つは、比較的高い逆起電力、および高速で発生する誘導渦電流である。その逆起電力および誘導渦電流により、モーターで達成可能な最大速度が低下し、高速で大きな損失を、すなわち、効率の悪い作動をもたらす。したがって、作動範囲全体でトルク定数を変更し、低速でより高いトルク定数を、高速でより低いトルク定数を提供することが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0004】
概ね、一態様では、本発明は、第一のサブシステムおよび第二のサブシステムであって、第一および第二のサブシステムの一方は磁気回転子アセンブリを備え、第一および第二のサブシステムの他方はコイル固定子アセンブリを備える、第一のサブシステムおよび第二のサブシステムと、磁気回転子アセンブリおよびコイル固定子アセンブリを支持し、回転軸を画定するハブアセンブリと、ハブアセンブリ上に第一および第二のサブシステムのうちの少なくとも一つを支持する軸受アセンブリと、を備える電気モーターを特徴とする。磁気回転子アセンブリは、トルク発生磁石のアレイを備え、コイル固定子アセンブリは、磁気固定子アセンブリのトルク発生磁石のアレイに対向する駆動コイルのアレイを備え、第一のサブシステムは、軸方向に向けられた磁場を発生させるためのリフト発生要素のアレイを備え、第二のサブシステムは、第一のサブシステムの揚力発生要素のアレイと整列して対向する導電性領域を備え、揚力発生要素のアレイおよび導電性領域は互いに分離距離だけ軸方向に分離され、軸受アセンブリは、磁気回転子アセンブリがハブアセンブリの回転軸の周りを回転できるようにし、ならびに揚力発生要素のアレイと導電性領域との互いに対する相対的な動きによって発生する揚力に応じて、磁気回転子アセンブリおよびコイル固定子アセンブリの分離距離を変えることができるようにする。
【0005】
他の実施形態は、以下の特徴のうちの一つまたは複数を含む。軸受アセンブリは、ハブアセンブリ上の第一のサブシステムとハブアセンブリ上の第二のサブシステムの一方または両方を支持する。第一のサブシステムは磁気回転子アセンブリを備え、および第二のサブシステムはコイル固定子アセンブリを備え、あるいは、第一のサブシステムはコイル固定子アセンブリを備え、および第二のサブシステムは磁気回転子アセンブリを備える。揚力発生要素のアレイは、永久磁石のアレイまたは電気コイルのアレイである。軸受アセンブリは、ハブアセンブリ上で磁気回転子アセンブリを支持する回転軸受アセンブリを備える。軸受アセンブリは、ハブアセンブリ上でコイル固定子アセンブリを支持するリニア軸受アセンブリを備える。軸受アセンブリは、ハブアセンブリ上で磁気回転子アセンブリを支持し、磁気回転子アセンブリが回転軸の周りを回転し、回転軸に沿って長手方向に前後に移動できるようにする。第二のサブシステムは、導電性領域を形成する環状の導電性プレートを備える。磁気回転子アセンブリおよびコイル固定子アセンブリは、ラジアル磁束モーターまたは軸方向磁束モーターを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、導電性プレート上の可動磁石である。
【
図2】
図2は、
図1のシステムの回転速度の関数としての揚力および抗力のグラフである。
【
図3A】
図3A~Bは、回転磁気回転子アセンブリに応じて固定子アセンブリが軸方向に移動する実施形態である。
【
図4A】
図4Aは、磁気回転子アセンブリの一方の面上の揚力発生磁石アレイである。
【
図4B】
図4Bは、磁気回転子アセンブリの周囲壁上のトルク発生磁石アレイである。
【
図4C】
図4Cは、コイル固定子アセンブリ上のコイルアレイおよび導電性プレートである。
【
図5】
図5は、
図3Aのシステムの磁気回転子アセンブリの回転速度の関数としてのトルク係数Ktのグラフである。
【
図6A】
図6Aは、揚力発生磁石アレイは磁気回転子アセンブリ上にあり、リニア軸受アセンブリはコイル固定子アセンブリを支持する実施形態である。
【
図6B】
図6Bは、揚力発生磁石アレイが磁気回転子アセンブリ上にあり、コイル固定子アセンブリは静止し、磁気回転子アセンブリは磁気回転子アセンブリの回転運動と軸方向の運動の両方を可能にする軸受アセンブリによってハブ上に支持される、実施形態である。
【
図7】
図7は、コイル固定子アセンブリ上の駆動コイルが揚力発生要素としても用いられる実施形態である。
【
図8】
図8は、駆動装置のアレイとは異なる、コイル固定子アセンブリ上の揚力発生コイルのアレイを使用する実施形態である。
【
図9】
図9は、揚力発生機構の一つの構成要素(例えば、導電性プレート)が、コイル固定子アセンブリでも磁気回転子アセンブリでもないモーターの一部によって支持される実施形態である。
【
図10】
図10は、揚力発生機構を使用して可変トルク係数を実現する軸方向磁束モーターである。前の図において、同様の要素および同様の構成要素は、同様の参照番号で識別されることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で説明する永久磁石(PM)同期モーターは、モーターのトルク定数を変更して、より広い範囲のトルク/速度(例えば、低トルクおよび高速ならびに低速での高トルク)で効率を向上させるメカニズムを提供する。一般的に、モーターはトルク定数を受動的に、ならびにモーターの電流および/または速度に直接関係するように変化させる。それらは、揚力(および抗力)を発生させる異なる磁場発生アレイを使用し、その大きさはモーターの速度に依存する。結果として生じる揚力は、モーター要素のうちの一つを他の要素に対して軸方向に移動させ、それによって磁石の係合長さ、したがってトルク定数を変化させる。
【0008】
揚力機構は、導電性プレート上を移動する際に、磁場によって導電性プレートに誘導される渦電流に依存する。誘導される渦電流は、磁石の磁場に対抗する独自の磁場を発生させる。磁石の磁場と渦電流によって発生される磁場との相互作用により、磁石を導電性プレートから遠ざける力が生じる。
【0009】
これは、磁石10が、導電性プレート12に平行に、速度vで、およびプレート上の距離xで、右に移動することを示す
図1に例示されている。この例では、磁石は長さL、幅b、厚さhを有し、導電性プレートは厚さdを有する。磁石は導電性材料に渦電流を生成し、そして反発(揚力)F
揚力および抗力F
抗力の両方で磁石に作用する。これらの力の方向は図に示される。この相互作用に影響を与える法則はレンツの法則と呼ばれ、それによれば導電性材料上で磁石を動かすと、反対方向のB場、したがって揚力を生じる。
図1に示す配置の揚力は、磁石の特性、磁石と導電性プレートの形状、および磁石が移動する速度の関数である。
【0010】
ラジアルモーターの場合、揚力発生磁石アレイは、すなわち接線速度vに対応する任意の回転速度ωで導電性プレート上を移動する。
【0011】
図2に示すように、非常に遅い速度の場合、抗力は揚力よりも高くなる。しかし、臨界速度に達すると、常にある程度の抗力があるが、揚力は非常に大きくなる。(注:
図2では、下の曲線は抗力を表し、上の曲線は揚力を表す。)
【0012】
この原理を用いる電気モーター100が
図3Aに概略的に示される。それは、磁気回転子アセンブリ102およびコイル固定子アセンブリ104を備え、これらは両方とも、長手方向軸108を有するシャフト106(またはハブアセンブリ)に取り付けられる。磁気回転子アセンブリ102は、磁気回転子アセンブリ102がシャフトの周りを回転することを可能にするがシャフトに沿って軸方向に移動させない軸受110を介してシャフト106上に支持される。他方、コイル固定子アセンブリ104は、コイル固定子アセンブリ104がシャフトに沿って軸方向に前後に移動することを可能にするが、シャフト周りを回転させないリニア軸受112のシステムを介してシャフト106に取り付けられる。
【0013】
磁気回転子アセンブリ102は、二つの磁石アレイ、すなわち、トルク発生磁石アレイ114および揚力発生磁石アレイ116を備える。
図4Bに示すように、トルク発生磁石アレイ114は、磁気回転子アセンブリ102の周囲に配置され、その磁化方向が回転子アセンブリの回転軸に対して半径方向を指す永久磁石118によって形成される。例えば、磁石は、正の半径方向と負の半径方向との間で磁化方向が切り替わる、回転子アセンブリの周りに等間隔に配置される同一形状および同一サイズの要素であってもよい。あるいは、磁化方向は、ハルバッハアレイを形成するように配置されてもよい。回転子アセンブリの永久磁石を配置する別の方法は、当業者に周知である。
【0014】
図4Aに示すように、揚力発生磁石アレイ116は、コイル固定子アセンブリ104に面する磁気回転子アセンブリ102の面に環状に配置される永久磁石120によって形成される。揚力発生磁石アレイ116の永久磁石120は、それらの磁化方向がすべてアレイの周りのN-S-N-Sのパターンで軸方向を指すように配置される。あるいは、他の可能な例を二つだけ挙げると、他のパターンとしては、例えばN-N-S-S-N-N-S-S…またはハルバッハアレイが用いられることができる。
【0015】
この実施形態では、
図4Cに例示のように、コイル固定子アセンブリ104は、磁気回転子アセンブリ102を取り囲む円筒形の外壁105を有し、その内側には、回転軸108を囲むコイルアレイ122の等間隔のコイル124のアレイが取り付けられる。コイルアレイ122のコイル124は、それらの軸が半径方向に向けられた状態で、磁石アレイ114の磁石118に対向するように配置される。好適な駆動信号がコイル124に印加されると、コイルで発生された磁場と磁石118の磁場との相互作用により、磁気回転子アセンブリ102にトルクが発生し、印加される駆動信号に依存する速度で、磁気回転子アセンブリ102を回転軸108の周りで一方向に回転させる。
【0016】
図3Aを参照すると、コイル固定子アセンブリ104の内側の垂直壁126、すなわち磁気回転子アセンブリ102に面する壁には、回転軸を囲む導電性材料のリング(または環状の導電性プレート)128(例えば、アルミニウム板)がある。あるいは、コイル固定子アセンブリ104の本体は、アルミニウム(または何らかの導電性材料)で作ることができ、その場合、別の環状の導電性プレートは必要ではなく、むしろコイル固定子アセンブリの本体自体が導電性リングとして機能することができる。
【0017】
最後に、コイル固定子アセンブリの左方向の動き(すなわち、コイル固定子アセンブリを磁気回転子アセンブリから離す動き)に抵抗するコイル固定子アセンブリ104の背面に戻し力を与えるばねアセンブリ130がある。モーターが作動していない場合、ばねアセンブリ130はコイル固定子アセンブリ104を磁気回転子アセンブリに向かって、駆動コイルアレイおよびトルク発生マグネットアレイが相互に最大の重なりを持つ位置(図示せず)に押し付ける。記載の実施形態では、ばねアセンブリ130は、発生する力が作動範囲にわたって実質的に一定である定荷重ばねを備えるが、他の力特性を有するばねを使用することができる。さらに、ばね以外の手段を用いて戻し力を発生させることができる。
【0018】
動作中、磁気回転子アセンブリ102が回転すると、導電性プレート128上の揚力発生磁石アレイ116の動きは、コイル固定子アセンブリ104に力F
揚力を発生させ、
図3Bに示すように、リニア軸受アセンブリ112上のコイル固定子アセンブリ104を左に押して磁気回転子アセンブリ102から離し、それによりその二つの間のギャップx
空気を増加させる。回転速度が増加すると、ギャップx
空気は、揚力アレイの強度、導電性材料の特性、およびばね力に依存する量により増加する。ギャップが増加すると、F
揚力はばねアセンブリによって加えられる力に等しくなるまで減少する。
【0019】
固定子を完全な係合位置に戻すばね力が一定の場合、この例で想定されているように、揚力も作動範囲全体で一定になる。すなわち、
【数1】
【0020】
ラジアル磁束モーターの場合、トルク定数は、次のように、磁石の係合長さに対して線形に比例する。
Kt(x)=NI(L0-xd)B
ここで、L0はコイルと磁石との最大の重なり合う長さ、(L0-xd)は、「係合長さ」、またはコイルが最大の重なり合いから距離xd離れて移動した場合の重なり合う量の尺度、Nはコイルの巻き数、Iはコイルを流れる電流、Bはコイルによって見られる磁石の磁場強度である。
【0021】
上記のように、モーターの速度が上がると、ギャップx
空気が増加し、これは係合長(L
0-x
d)を減少させ、これによりトルク定数Ktが減少する。サンプルモーターの2Nの一定のばね力についてこの関係のグラフ例を
図5に示す。これは、一定のKtを有するモーターと比較して、高速ではモーターの電圧制限が少なくなり、回転損失が減少することを意味する。回転損失(例えばコア損失および渦電流損失)も、係合長(L
0-x
d)に比例する。言い換えれば、可変トルク定数モーターは、より広い範囲のトルク/速度の組み合わせで効率が高いだけでなく、最高速度も高くなる。これは、高速で見られるトルク定数の減少によるものであり、それはそして逆起電力の減少につながり、所定の駆動電圧でモーターがより高速になることができる。
【0022】
図3Aおよび3Bの実施形態によって表される一般的な概念を実施する他の方法がある。例えば、別の実施形態が
図6Aに示されており、トルク発生永久磁石142のアレイを保持する磁気回転子アセンブリ140は、コイル146のアレイを保持するコイル固定子アセンブリ144を取り囲んでいる。他の点では設計は、磁石の磁化方向が軸方向に向けられた磁気回転子アセンブリ140の内側壁上に揚力発生磁石アレイ148、および揚力発生磁石アレイ148に面するようにコイル固定子アセンブリ144によって支持される導電性プレート150がある点で
図3A~Bの設計に、非常に類似している。磁気回転子アセンブリ140は、シャフト154の長手方向軸の周りを回転することを可能にするが、そのシャフトに沿って軸方向に移動させない軸受アセンブリ152によってシャフト154(またはハブ)上に支持される。他方、コイル固定子アセンブリ144は、それが軸方向に前後に移動することを可能にするが、そのシャフト154の周りを回転させないリニア軸受アセンブリ160によってシャフト154上に支持される。ばねアセンブリ130は、コイル固定子アセンブリ130の背面に力を及ぼす。
図3A~Bに示す実施形態と同様に、磁気回転子アセンブリ140上の回転揚力磁石アレイ148は、コイル固定子アセンブリ144を右に移動させる導電性プレート150に渦電流を誘導し、磁気係合長さを減少させ、それによりトルク定数を減少させる。
【0023】
図6Aによって例示される配置と同様の配置が
図6Bに示される。この他の配置では、コイル固定子アセンブリ144はシャフト154上で静止し(すなわち、回転も長手方向の移動もできない)、磁気回転子アセンブリ140は、シャフトの周りを回転すること、およびシャフト上を前後に方向に移動することの両方を可能にする軸受アセンブリ153によってシャフト154上に支持されている。この場合、ばねアセンブリ130は、磁気回転子アセンブリ140の背面に対して復元力を及ぼす。
【0024】
揚力磁石アレイによって実行される機能が代わりに駆動コイル160によって実行されることを除いて、
図6Aによって例示される配置と同様の実施形態を示す
図7によってさらに別の配置が例示される。より具体的には、駆動コイル161は、コイル固定子アセンブリ164の外周からコイル固定子アセンブリ164の前面162上に延在する。ここで、駆動コイルはまた、軸方向に向けられ、および磁気回転子アセンブリ140上の導電性プレート166に向かう磁場を発生させる。その軸方向に向けられた磁場は、回転導電性プレート166に渦電流を誘導し、それにより、コイル固定子アセンブリ164をばね130に向かって右に、回転速度に応じて新しい位置に押す揚力を発生する。
【0025】
さらに、揚力を誘導する場を発生させるために駆動コイル170を使用する代わりに、別の揚力発生コイル172が使用されることを除いて、
図7に例示される実施形態に類似する実施形態を示す別の方法が
図8に例示される。換言すれば、磁気回転子アセンブリ140上の導電性プレート166の反対側の、面するコイル固定子アセンブリ164の面174上に、コイル固定子アセンブリ164の周りに、導電性プレート166と整列して配列される揚力発生コイル172がある。この実施形態では、揚力コイルは駆動コイルと同数であり、同じ駆動信号を受信する。したがって、駆動信号が送信され、対応する揚力および駆動コイルが接続されるバス176がある。
【0026】
したがって、これまでに説明したすべての実施形態では、揚力の発生に関わる要素のうちの一つは、回転要素、すなわち磁気回転子アセンブリであった。これが当てはまらない他の実施形態が可能である。例えば、
図9に示す実施形態を参照されたい。この実施形態では、磁気回転子アセンブリ800は、トルク発生磁石アレイ802を保持し、磁気回転子アセンブリ800は駆動コイルアレイ806を保持するコイル固定子アセンブリ804内で回転する。磁気回転子アセンブリ800は、シャフト154の回転軸108の周りを回転できるようにする軸受け808を介してハブアセンブリ154に取り付けられている。コイル固定子アセンブリ804は、それがシャフト154に沿って軸方向に前後に移動することを可能にするが、シャフトの周りを回転させない一組のリニア軸受810によってシャフト154上に支持される。非回転コイル固定子アセンブリ804は、その背面814、すなわち、磁気回転子アセンブリ800とは反対側の面に揚力発生コイルアレイ812も備える。シャフト154に沿って軸方向に回転も移動もできないように、コイル固定子アセンブリ804の背面に隣接して、シャフト上に固定して取付されたディスク(または構造)816がある。ディスク816は、コイル固定子アセンブリ804の裏側で揚力発生コイルアレイ812に面する環状の導電性プレート818を備える。揚力発生コイルアレイ812に信号が印加されない場合、ばねアセンブリ130は、コイル固定子アセンブリ804を押し付け、ディスク816に向かって停止部(図示せず)に押し付ける。この特定の実施形態では、揚力発生コイルアレイ812を駆動する信号は、駆動コイルアレイ806を駆動する駆動信号と同じである。(揚力発生コイルアレイ812は、異なる信号によって別々に駆動されることができる。)
【0027】
作動中、揚力発生アレイに印加される駆動信号は、変化する駆動信号に従って変化する磁場を導電性プレート818に発生させる。これにより、導電性プレートに渦電流が誘導され、前述のように、コイル固定子アセンブリ804をディスク816から離し、ばねアセンブリ130によって発生する戻し力に対抗する揚力が発生する。
【0028】
これまでに提供した例はすべて、ラジアル磁束永久磁石同期モーターに関係する。この概念は、アキシャル磁束永久磁石同期モーターにも適用できる。
図10は、揚力磁石アレイ202を使用して、駆動コイル204と磁気回転子アセンブリ208のトルク発生磁石206との間のギャップの幅x
空気を変化させるアキシャル磁束モーター200を示す。コイル固定子アセンブリ210は、コイル固定子アセンブリ210の周囲に配列される駆動コイル204のアレイを有する。磁気回転子アセンブリ208の対向する面には、回転子アセンブリの周囲に配列される磁石のグループがある。磁石アレイの磁石は、次のようなパターンで磁化方向が軸方向に向いているが、これらに限定されない。N-S-N-S-N…、2N-2S-2N-2S…、またはハルバッハアレイ。磁気回転子アセンブリ208の同じ面上で、回転軸の近くに、回転軸の周りに配列される揚力発生磁石214のセットもある。また、これらの磁石は軸方向に向けられた磁化方向を有し、磁石のアレイの周りを移動する場合、正の軸方向から負の軸方向に変化する磁場を発生させる。コイル固定子アセンブリの対向する面の対応する位置(駆動コイルが配置されているのと同じ面)には、導電性プレート212がある。磁気回転子アセンブリが回転すると、揚力アレイの磁場と導電性プレートとの相互作用により、前述のように揚力が発生し、コイル固定子アセンブリを右に移動させて駆動コイルとトルク発生磁石アレイとの結合を減少させ、それによりモーターのトルク係数を低減させる。他の点では、
図10のモーターは、他の実施形態について前述したのと同じように作動し、特定の番号の要素は前述の同様の番号の要素の機能を実行する。
【0029】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。例えば、磁気回転子アセンブリまたはコイル固定子アセンブリのいずれかが回転し、もう一つの部分は回転しない。一般的に、コイルを備える部品は非回転部品となる。そうでなければ、(DCブラシモーターで一般的に見られる)整流子が必要になる。同様に、揚力磁石がコイル固定子アセンブリ上にあり、導電性材料が磁気回転子アセンブリ上にあるように、揚力磁石と導電性材料とを交換することができる。概念はどちらの方法でも機能するが、いくつかのトレードオフ、例えば慣性を制限する必要性、は決定を通知する場合がある。また、これらの概念は一般的に、AC永久磁石同期モーター以外のタイプのモーターにも適用できることに留意されたい。