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特許7194459テクスチャ加工された膨張可能バルーンを含む医療用デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】テクスチャ加工された膨張可能バルーンを含む医療用デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/04 20060101AFI20221215BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20221215BHJP
【FI】
A61M25/04
A61M25/10 510
A61M25/10 500
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020560119
(86)(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 US2019013832
(87)【国際公開番号】W WO2019143709
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】62/617,868
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】レンチュラー マーク イー.
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス カール
(72)【発明者】
【氏名】エドマンドビッチ スティーヴン エー.
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0333686(US,A1)
【文献】国際公開第2016/158294(WO,A1)
【文献】特表2009-531157(JP,A)
【文献】特開2012-081130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/04
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔壁を含む患者の生理学的管腔内に挿入されるよう構成された医療用デバイスであって、
細長ボディと;
該細長ボディの少なくとも1区画に取り付けられかつこれを部分的に囲む膨張可能バルーンであって、非膨張状態と、該膨張可能バルーンがひずみを受ける膨張状態との間で選択的に膨張可能である、該膨張可能バルーンと;
該膨張可能バルーンから伸びる、該管腔壁に非侵襲的に係合するように構成された、複数の突起と
を含み、
該膨張可能バルーンが非膨張状態にある時、該複数の突起のうちの少なくとも1つの突起は、該膨張可能バルーンから外向きに伸び、
少なくとも1つの突起は、非膨張状態で第一の曲率半径を有し、かつ膨張状態で第二の曲率半径を有する、外向きに凹状の上面を備え、第二の曲率半径は第一の曲率半径よりも小さい、
前記医療用デバイス。
【請求項2】
前記膨張可能バルーンが、低密度ポリエチレン、ラテックス、ポリエーテルブロックアミド、シリコーン、ポリシロキサン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、およびポリウレタンからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1記載の医療用デバイス。
【請求項3】
非膨張状態にある時、前記少なくとも1つの突起が5μm以上1000μm以下の高さを有する、請求項1記載の医療用デバイス。
【請求項4】
非膨張状態にある時、前記少なくとも1つの突起が5μm以上700μm以下の断面幅を有する、請求項1記載の医療用デバイス。
【請求項5】
非膨張状態にある時、前記少なくとも1つの突起が400μmの断面幅を有する、請求項4記載の医療用デバイス。
【請求項6】
非膨張状態にある時、前記少なくとも1つの突起が最大で10までの、および10を含むアスペクト比を有し、該アスペクト比が該少なくとも1つの突起の高さと該少なくとも1つの突起の断面幅との間の比率である、請求項1記載の医療用デバイス。
【請求項7】
非膨張状態にある時、前記アスペクト比が0.5以上2.0以下である、請求項6記載の医療用デバイス。
【請求項8】
非膨張状態にある時、前記複数の突起が、20μm以上1,000μm以下の中心間間隔を伴って均等に間隔が空けられて分布する、請求項1記載の医療用デバイス。
【請求項9】
前記複数の突起が膨張可能バルーンと一体的に形成される、請求項1記載の医療用デバイス。
【請求項10】
前記膨張可能バルーンが、医療用デバイスの長さに沿って分布した複数の膨張可能バルーンの1つである、請求項1記載の医療用デバイス。
【請求項11】
細長ボディが、内視鏡ボディ、内視鏡オーバーチューブ、カテーテル、およびガイドワイヤのうちの1つである、請求項1記載の医療用デバイス。
【請求項12】
前記膨張可能バルーンは、該膨張可能バルーンが前記非膨張状態にある時に異なる直径を有するよう構成された交互の軸方向バンドに分けられ、該非膨張状態にある時に、膨張可能バルーンの第一の方向バンドが第一直径を有し、かつ、前記複数の突起の少なくとも1つを含む該膨張可能バルーンの第二の方向バンドが、該第一直径より小さい第二直径を有する、請求項1記載の医療用デバイス。
【請求項13】
膨張状態にある時に、前記複数の突起のの突起が、非膨張状態にある時と比較して、より横方向に配向される、請求項1記載の医療用デバイス。
【請求項14】
管腔壁を含む患者の生理学的管腔内に挿入されるよう構成された医療用デバイスであって、
細長ボディと;
該細長ボディの少なくとも1区画に取り付けられかつこれを部分的に囲む膨張可能バルーンであって、該生理学的管腔壁と係合するため該管腔内で膨張されるよう適合され、かつ、膨張可能バルーンが第一状態にある時に膨張可能バルーンを膨張させることより、第一状態から第二状態へ変化させられ、かつ、膨張可能バルーンが第二状態にある時に膨張可能バルーンをしぼませることにより、第二状態から第一状態へ変化させられるよう適合された、該膨張可能バルーンと;
該膨張可能バルーンから伸びる複数の突起と
を含み、
第二状態おいて、該膨張可能バルーンはひずみを受け、
該複数の突起のうちの少なくとも1つの突起は、上面を備え、
該第一状態にある時は、該管腔の材料で形成された表面への付着時に該膨張可能バルーンを該表面から係脱するのに第一分離力が必要であるように、該上面は第一の曲率半径を有し、
該第二状態にある時は、該管腔の材料で形成された表面への付着時に該膨張可能バルーンを該表面から係脱するのに、該第一分離力より大きい第二分離力が必要であるように、該上面は第一の曲率半径より小さい第二の曲率半径を有し、
該第一状態および該第二状態の各々において、該上面は外向きに凹状である、
前記医療用デバイス。
【請求項15】
第一状態において、第一のひずみが膨張可能バルーンに印加され、かつ、第二状態において、該第一のひずみとは異なる第二のひずみが該膨張可能バルーンに印加される、請求項14記載の医療用デバイス。
【請求項16】
第一のひずみおよび第二のひずみの少なくとも1つが二軸ひずみである、請求項15記載の医療用デバイス。
【請求項17】
膨張可能バルーンが第一状態にある時に、前記複数の突起の各々が、第一表面積を有する第一形状を有し、かつ、該膨張可能バルーンが第二状態にある時に、該複数の突起の各々が、第二表面積を有する第二形状を有し、該第一表面積が該第二表面積と異なる、請求項14記載の医療用デバイス。
【請求項18】
前記少なくとも1つの突起が円錐台形状を有する、請求項1記載の医療用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、2018年1月16日に提出された米国特許仮出願第62/617,868号の恩典を主張する。
【0002】
連邦政府の資金援助による研究開発についての記載
本発明は、米国国立科学財団(National Science Foundation)により付与された助成金番号第1636203号の政府援助により行われた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本開示の諸局面は、医学的手技において用いるためのバルーンに関し、とりわけ、バルーンを含む医療用デバイスが生理学的管腔と選択的かつ可変的に係合されうるように、管腔と選択的に係合するよう構成されたバルーンに関する。
【背景技術】
【0004】
背景
内視鏡検査は、高度なトレーニングを受けた医師が、長い可撓性の内視鏡を、非限定的に結腸または小腸などである患者の生理学的管腔に押し通すという手技である。従来の内視鏡は、不規則な解剖学的構造がある場合または小腸を検査する場合に、しばしば手技の完了に難渋する。これらの要因は、結腸直腸癌などの初期状態の診断見逃しにつながりうる;結腸直腸癌はアメリカにおいて癌による死因の第3位であるが、初期段階で検出された時の生存率は93%である。
【0005】
これら検査の多くを完了するため、しばしばダブルバルーン小腸内視鏡(DBE)が用いられる。ダブルバルーンシステムは、1つがスコープの前に取り付けられ、かつ1つがスコープのオーバーチューブに取り付けられた、2つのバルーンを含む。これらのバルーンは、内視鏡にとっての係留点として役立ち、かつ、長い可撓性のスコープを方向付けるためのさらなる支持を提供する。これらの係留バルーンは、連続して膨張およびしぼまされた時に、スコープの前進を補助する。バルーンは、膨張された時に、結腸、小腸、または他の生理学的管腔の壁を押して、その壁をグリップして係留点を形成し、これにより、スコープが係留点を押している間の動きを低減する。DBEは、不規則な解剖学的構造を有する患者および小腸内視鏡検査において、非常に成功した手技であることが示されている。
【0006】
当技術分野においてDBE手技に広く用いられているバルーンは、従来、なめらかなラテックス様材料で作られている。これらの材料は低い摩擦係数を有し、小腸、結腸、および胃腸(GI)菅の他の部分の、柔らかく粘膜で覆われた壁とでは特にそうである。低い摩擦係数は、早すぎる時点でバルーンが滑り、ゆえにスコープが適切に前進できない、ということを引き起こす可能性がある。バルーンの過膨張は、小腸または結腸の壁との摩擦を増大させうるが、同時に、患者のGI管に損傷を引き起こす可能性もある。
【0007】
ゆえに、当技術分野において、胃腸病学および他の医学的手技を行うために用いられうる新規のデバイスに対するニーズが存在する。そうしたデバイスは、そうした手技の成功完了件数を増大させ、かつ、より快適な検査経験を患者に提供すべきである。より多くの結腸内視鏡検査の完遂を可能にすることにより、より多くの結腸直腸癌の症例を、治療の成功につながる充分早期に発見できると考えられる。
【0008】
他にもあるがとりわけこれらの考えを念頭に、本明細書に開示するデバイスおよび方法の諸局面が構想された。
【発明の概要】
【0009】
概要
本開示の1つの局面では、医療用デバイスは、管腔壁を含む患者の生理学的管腔内に挿入されるよう構成される。同医療用デバイスは、細長ボディと、細長ボディの少なくとも1区画に取り付けられかつこれを部分的に囲む膨張可能バルーンとを含む。膨張可能バルーンは、しぼんだ状態と膨張状態との間で選択的に膨張可能であり、かつ、複数の突起が膨張可能バルーンから伸びる。1つの実施形態において、複数の突起の各々は、約5μm以上約1000μm以下の高さと、管腔壁のスチフネスに少なくとも等しいスチフネスとを有する。
【0010】
特定の実施形態において、膨張可能バルーンは、低密度ポリエチレン、ラテックス、ポリエーテルブロックアミド、シリコーン、ポリシロキサン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、およびポリウレタンのうちの少なくとも1つから形成される。
【0011】
他の実施形態において、突起はまた、約300μm以上約500μm以下の高さを有してもよい。
【0012】
なお他の実施形態において、突起はまた、約400μmのおおよその断面幅を含めて、約5μm以上約700μm以下の断面幅を有してもよい。
【0013】
特定の実施形態において、突起は、突起の高さと断面幅とに関するアスペクト比によって規定されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、突起は、0.5以上2.0以下のアスペクト比を含めて、最大で約10までの、および10を含むアスペクト比を有してもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、突起は、約20μm以上約1,000μm以下の中心間間隔を伴って均等に間隔が空けられてもよい。
【0015】
特定の実施形態において、突起は、膨張可能バルーンと一体的に形成されてもよい。
【0016】
膨張可能バルーンはまた、医療用デバイスの長さに沿って分布した複数の膨張可能バルーンの1つであってもよく、かつ、細長ボディは、内視鏡ボディ、内視鏡オーバーチューブ、カテーテル、およびガイドワイヤのいずれかを含んでもよい。
【0017】
しぼんだ状態にある時に、バルーンの第一部分が第一直径を有してもよく、かつ、突起の少なくとも一部分を含むバルーンの第二部分が、第一直径より小さい第二直径に延在する。そしてまた、膨張状態にある時に、突起の一部分の各々がそれぞれの第一の方向に伸びてもよく、かつ、しぼんだ状態にある時に、突起の前記一部分の各々が第二のそれぞれの方向に伸びてもよい;第一のそれぞれの方向は、第二のそれぞれの方向と比較して、より外側に放射方向にある。
【0018】
本開示の別の態様において、管腔壁を含む患者の生理学的管腔内に挿入されるよう構成された医療用デバイスが提供される。同医療用デバイスは、細長ボディと、細長ボディの少なくとも1区画に取り付けられかつこれを部分的に囲む膨張可能バルーンとを含む。膨張可能バルーンは、生理学的管腔壁と係合するため管腔内で膨張されるよう適合し、かつ、第一ひずみ状態と、第一ひずみ状態とは異なる第二ひずみ状態との間で、変化させられるよう、適合する。医療用デバイスは、膨張可能バルーンから伸びる複数の突起をさらに含む。第一ひずみ状態にある時は、膨張可能バルーンを管腔壁から係脱するのに第一分離力が必要であり、そして、第二ひずみ状態にある時は、膨張可能バルーンを管腔壁から係脱するのに、第一状態とは異なる第二分離力が必要である。
【0019】
1つの実施形態において、第一ひずみ状態と第二ひずみ状態との間の変化は、膨張可能バルーンを膨張させることおよびしぼませることのうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
別の実施形態において、第一ひずみ状態にある時に、第一のひずみが膨張可能バルーンに印加され、そして、第二ひずみ状態において、第一のひずみとは異なる第二のひずみが膨張可能バルーンに印加される。第一のひずみおよび第二のひずみの各々は二軸ひずみであってもよい。
【0021】
さらに別の実施形態において、膨張可能バルーンが第一ひずみ状態にある時に、突起の各々が、第一表面積を有する第一形状を有してもよく、そして、膨張可能バルーンが第二ひずみ状態にある時に、突起の各々が、第二表面積を有する第二形状を有してもよく、第一表面積は第二表面積と異なる。例えば、第一形状にある時に、上面が第一の凹所を有し、かつ第二形状にある時に、上面が、第一の凹所とは異なる第二の凹所を有するよう、各突起がそれぞれの上面を含んでもよい。
【0022】
本開示の別の態様において、患者の生理学的管腔の壁内で医療用デバイスを前進させる方法が提供される。生理学的管腔は管腔壁を含み、そして医療用デバイスは、細長ボディと、細長ボディの少なくとも1区画に取り付けられかつこれを部分的に囲む膨張可能バルーンとを含む。膨張可能バルーンは、しぼんだ状態と膨張状態との間で選択的に膨張可能であり、かつ、複数の突起が膨張可能バルーンから伸びる。方法は、医療用デバイスを生理学的管腔内に配する段階;および、膨張可能バルーンを含む医療用デバイスの少なくとも一部分を、膨張可能バルーンがしぼんだ状態で、生理学的管腔に沿って移動させる段階を含む。方法は、膨張可能バルーンを膨張させることによって膨張可能バルーンを管腔壁と係合させる段階であって、突起の少なくとも一部分を管腔壁と係合させることを含む、該段階を、さらに含む。方法はまた、膨張可能バルーンを管腔壁から係脱するのに必要な分離力を変化させるため、膨張可能バルーンに対するひずみを変更する段階も含む。
【0023】
1つの実施形態において、膨張可能バルーンに対するひずみを変更する段階は、膨張可能バルーンをさらに膨張させることおよび膨張可能バルーンを部分的にしぼませることのうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
他の実施形態において、ひずみを変更する段階は、ひずみが変更されるにつれて突起の表面積が変化するよう突起を変形させる。
[本発明1001]
管腔壁を含む患者の生理学的管腔内に挿入されるよう構成された医療用デバイスであって、
細長ボディと;
該細長ボディの少なくとも1区画に取り付けられかつこれを部分的に囲む膨張可能バルーンであって、しぼんだ状態と膨張状態との間で選択的に膨張可能である、該膨張可能バルーンと;
該膨張可能バルーンから伸びる複数の突起と
を含み、
該複数の突起の各々が、約5μm以上約1000μm以下の高さと、該管腔壁のスチフネスに少なくとも等しいスチフネスとを有する、前記医療用デバイス。
[本発明1002]
前記膨張可能バルーンが、低密度ポリエチレン、ラテックス、ポリエーテルブロックアミド、シリコーン、ポリシロキサン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、およびポリウレタンからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、本発明1001の医療用デバイス。
[本発明1003]
前記突起が約300μm以上約500μm以下の高さを有する、本発明1001の医療用デバイス。
[本発明1004]
前記突起が約5μm以上約700μm以下の断面幅を有する、本発明1001の医療用デバイス。
[本発明1005]
前記突起が約400μmの断面幅を有する、本発明1004の医療用デバイス。
[本発明1006]
前記突起が最大で10までの、および10を含むアスペクト比を有し、該アスペクト比が該突起の高さと該突起の断面幅との間の比率である、本発明1001の医療用デバイス。
[本発明1007]
前記アスペクト比が0.5以上2.0以下である、本発明1006の医療用デバイス。
[本発明1008]
前記突起が、約20μm以上約1,000μm以下の中心間間隔を伴って均等に間隔が空けられる、本発明1001の医療用デバイス。
[本発明1009]
前記突起が膨張可能バルーンと一体的に形成される、本発明1001の医療用デバイス。
[本発明1010]
前記膨張可能バルーンが、医療用デバイスの長さに沿って分布した複数の膨張可能バルーンの1つである、本発明1001の医療用デバイス。
[本発明1011]
細長ボディが、内視鏡ボディ、内視鏡オーバーチューブ、カテーテル、およびガイドワイヤのうちの1つである、本発明1001の医療用デバイス。
[本発明1012]
しぼんだ状態にある時に、膨張可能バルーンの第一部分が第一直径を有し、かつ、突起の少なくとも一部分を含む該膨張可能バルーンの第二部分が、該第一直径より小さい第二直径に延在する、本発明1001の医療用デバイス。
[本発明1013]
膨張状態にある時に、突起の一部分の各々がそれぞれの第一の方向に伸び、かつ、しぼんだ状態にある時に、突起の該一部分の各々が第二のそれぞれの方向に伸び、該第一のそれぞれの方向が、該第二のそれぞれの方向と比較して、より外側に放射方向にある、本発明1001の医療用デバイス。
[本発明1014]
管腔壁を含む患者の生理学的管腔内に挿入されるよう構成された医療用デバイスであって、
細長ボディと;
該細長ボディの少なくとも1区画に取り付けられかつこれを部分的に囲む膨張可能バルーンであって、該生理学的管腔壁と係合するため該管腔内で膨張されるよう適合され、かつ、第一ひずみ状態と、該第一ひずみ状態とは異なる第二ひずみ状態との間で変化させられるよう適合された、該膨張可能バルーンと;
該膨張可能バルーンから伸びる複数の突起と
を含み、
該第一ひずみ状態にある時は、該膨張可能バルーンを該管腔壁から係脱するのに第一分離力が必要であり、かつ、該第二ひずみ状態にある時は、該膨張可能バルーンを該管腔壁から係脱するのに、該第一状態とは異なる第二分離力が必要である、前記医療用デバイス。
[本発明1015]
第一ひずみ状態と第二ひずみ状態との間の変化が、膨張可能バルーンを膨張させることおよびしぼませることのうちの少なくとも1つを含む、本発明1014の医療用デバイス。
[本発明1016]
第一ひずみ状態において、第一のひずみが膨張可能バルーンに印加され、かつ、第二ひずみ状態において、該第一のひずみとは異なる第二のひずみが該膨張可能バルーンに印加される、本発明1014の医療用デバイス。
[本発明1017]
第一のひずみおよび第二のひずみの各々が二軸ひずみである、本発明1016の医療用デバイス。
[本発明1018]
膨張可能バルーンが第一ひずみ状態にある時に、突起の各々が、第一表面積を有する第一形状を有し、かつ、該膨張可能バルーンが第二ひずみ状態にある時に、該突起の各々が、第二表面積を有する第二形状を有し、該第一表面積が該第二表面積と異なる、本発明1014の医療用デバイス。
[本発明1019]
第一形状にある時に、上面が第一の凹所を有し、かつ第二形状にある時に、該上面が、該第一の凹所とは異なる第二の凹所を有するよう、各突起がそれぞれの上面を含む、本発明1018の医療用デバイス。
[本発明1020]
細長ボディと、該細長ボディの少なくとも1区画に取り付けられかつこれを部分的に囲む膨張可能バルーンであって、しぼんだ状態と膨張状態との間で選択的に膨張可能である、該膨張可能バルーンと、該膨張可能バルーンから伸びる複数の突起とを含む、医療用デバイスを、管腔壁を有する患者の生理学的管腔の壁内で前進させる方法であって、以下の段階を含む方法:
該医療用デバイスを該生理学的管腔内に配する段階;
該膨張可能バルーンを含む該医療用デバイスの少なくとも一部分を、該膨張可能バルーンが該しぼんだ状態で、該生理学的管腔に沿って移動させる段階;
該膨張可能バルーンを膨張させることによって該膨張可能バルーンを該管腔壁と係合させる段階であって、該突起の少なくとも一部分を該管腔壁と係合させることを含む、該段階;および
該膨張可能バルーンに対するひずみを変更する段階であって、該膨張可能バルーンを該管腔壁から係脱するのに必要な分離力を変化させる、該段階。
[本発明1021]
膨張可能バルーンに対するひずみを変更する段階が、該膨張可能バルーンをさらに膨張させることおよび該膨張可能バルーンを部分的にしぼませることのうちの少なくとも1つを含む、本発明1020の方法。
[本発明1022]
ひずみを変更する段階が、該ひずみが変更されるにつれて突起の表面積が変化するよう該突起を変形させる、本発明1020の方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本開示の例示的実施形態を、参照される図面に図示する。本明細書に開示する、実施形態および対応する図面は、限定的ではなく例示的なものとみなされることが意図されている。
【0026】
図1A】しぼんだ状態にあるバルーンを含む、本開示に基づく第一の医療用デバイスの側面図である。
図1B図1Aの医療用デバイスの断面図である。
図1C】バルーンが膨張状態にある、図1Aの医療用デバイスの側面図である。
図1D図1Cの医療用デバイスの断面図である。
図1E】バルーン上に配された突起を図示する詳細図をさらに含む、膨張状態にある図1Aの医療用デバイスの側面図である。
図2図2Aは、本開示に基づくバルーンの第一の例示的突起の断面図である。図2Bは、本開示に基づくバルーンの第二の例示的突起の断面図である。図2Cは、本開示に基づくバルーンの第三の例示的突起の断面図である。図2Dは、本開示に基づくバルーンの第四の例示的突起の断面図である。
図3】本開示に基づく代替的バルーンの側面図である。
図4図4Aは、ひずみの第一状態にある、本開示に基づくバルーンのテクスチャ加工部分の略図である。図4Bは、図4Aのバルーンの突起の断面図である。
図5図5Aは、ひずみの第二状態にある、図4Aのバルーンのテクスチャ加工部分の略図である。図5Bは、図4Aのバルーンがひずみの第二状態にある時の、図4Bの突起の断面図である。
図6図6A~6Bは、図4Bおよび5Bの断面図のより詳しい図示である。
図7】分離力と、本開示に基づくバルーンに印加されるひずみとの、例示的関係を図示したグラフである。
図8】本開示に基づくバルーンを製造するための第一の鋳型の断面図である。
図9】本開示に基づくバルーンを製造するための第二の鋳型の等角図である。
図10】本開示に基づくカテーテル送達ツールの形態における医療用デバイスの略図である。
図11】本開示に基づき、かつカテーテルにマウントされたバルーンを含む、例示的な内視鏡式医療用デバイスの略図である。
図12】本開示に基づき、かつ内視鏡にマウントされたバルーンを含む、第二の例示的な内視鏡式医療用デバイスの略図である。
図13】本開示に基づき、かつカテーテルにマウントされたバルーンおよび内視鏡にマウントされたバルーンの各々を含む、第三の例示的な内視鏡式医療用デバイスの略図である。
図14】本開示に基づき、かつオーバーチューブにマウントされたバルーンを含む、第四の例示的な内視鏡式医療用デバイスの略図である。
図15】本開示に基づき、かつカテーテルにマウントされたバルーンおよび内視鏡にマウントされたバルーンの各々を含む、第五の例示的な内視鏡式医療用デバイスの略図である。
図16】本開示に基づき、かつ、カテーテルにマウントされたバルーン、内視鏡にマウントされたバルーン、およびオーバーチューブにマウントされたバルーンの各々を含む、第六の例示的な内視鏡式医療用デバイスの略図である。
図17図13の医療用デバイスを用いて行われる例示的な医学的手技のグラフィカルな図示である。
図18】本開示に基づく医療用デバイスを用いて手技を行う例示的方法を示したフローチャートである。
図19】本開示に基づくバルーンと生理学的管腔との間の係合を変更する方法を示したフローチャートである。
図20図20A~20Bは、それぞれ膨張状態およびしぼんだ状態の各々にある、本開示に基づく別の例示的バルーンの略図である。
図21図21A~21Cは、それぞれ、しぼんだ状態、部分的な膨張状態、および膨張状態の各々にある、本開示に基づくさらに別の例示的バルーンの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本開示は、部分的に、内視鏡などの医療用デバイスに組み込まれうるバルーンの設計に関する。とりわけ、本開示は、少なくとも部分的にテクスチャ加工された外面を有するバルーンに関する。バルーンのテクスチャ加工は、バルーンの表面から伸びる複数のピラー状突起を含めることによって実現される。本開示の少なくとも1つの用途において、本発明のバルーンを含む医療用デバイスは、バルーンが実質的にしぼんだ状態で、生理学的管腔内に配される。生理学的管腔は患者のGI管の一部分であってもよいが、より一般的に、任意の脈管、気道、管(duct)、路(tract)、狭窄部、括約筋、胆道狭窄部、または類似の生理学的構造であってもよい。バルーンは、生理学的管腔内にポジショニングされたら、突起が管腔壁に接触し、それによりバルーンと医療用デバイスとが管腔壁に係合されるように、膨張されてもよい。続いて、管腔の壁からの突起の係脱を容易にし、それにより医療用デバイスの動きを可能にするため、バルーンがしぼまされてもよい。したがって、本明細書に開示するバルーン(または類似の構造)は、従来のなめらかなバルーンと比較して生体組織との摩擦および付着を増大させる、テクスチャ加工/パターン加工された表面を含む。そのような、増大した摩擦および付着の結果として、本開示に基づくバルーンは、従来のバルーン設計と比較してより高い信頼性で生体組織に係合する。
【0028】
より詳しく後述するように、バルーンと、バルーンが牽引する生体組織との間に、さまざまな度合いの牽引を提供するため、本開示の諸用途において、突起の形状および分布はさまざまであってもよい。特定の実施形態において、突起はまた、バルーンに印加されたひずみに応じて変形するよう構成されてもよい。そうした変形は突起の付着特性および摩擦特性を変える。その結果として、医師は、バルーンを選択的に膨張またはしぼませることによって、生体組織に対するバルーンの相対的な牽引を制御しうる。例えば、医師は、(例えばバルーンを第一の程度まで膨張させることによって)バルーンに第一のひずみを印加してもよく、その結果、突起の第一の度合いの変形と、それに対応する、バルーンの第一の係合レベル(例えば、第一形状にある時の突起の付着特性および摩擦特性に基づく、第一の係合レベル)とが、もたらされる。続いて、医師は、(例えばバルーンの膨張の度合いを変更することによって)第二のひずみを印加してもよく、その結果、突起の第二の度合いの変形と、それに対応する、バルーンの第二の係合レベルとが、もたらされる。
【0029】
本明細書では主に、GI管において用いるための内視鏡用バルーンの文脈において論じるが、本開示は、さまざまな医療および非医療の用途に用いられうる。したがって、本開示の特定の用途が本明細書において論じられる程度までにおいて、そうした用途は、本開示の範囲を限定するものとみられるべきでない。そうではあるが、本開示の諸局面に関してさらに詳細を提供するため、本開示の例示的実施形態を以下に論じる。
【0030】
図1A~1Eは、本開示に基づく、膨張可能バルーン102を含む例示的な医療用デバイス100のさまざまな図面である。より具体的には、図1Aは、バルーン102が非膨張状態にある医療用デバイス100の側面図であり;図1Bは、図1Aのバルーン102の断面A-Aに沿った断面図であり;図1Cは、少なくとも部分的に膨張状態にある医療用デバイス100の側面図であり;図1Dは、図1Cのバルーン102の断面A'-A'に沿った断面図であり;そして図1Eは、バルーン102のテクスチャ加工部分104を図示したはめ込み図を含む、医療用デバイス100の側面図である。
【0031】
使用中、医療用デバイス100は、患者の生理学的管腔内に挿入および位置決めされてもよい。そうした挿入は、概して、バルーン102が図1Aに図示するしぼんだ状態にある間に行われてもよい。適切に位置決めされたら、図1Bに示すように、バルーンを膨張させるために空気または類似の流体媒質がバルーン102に提供されてもよい。バルーン102が身体の管腔内にある状態で、そうした膨張が行われる場合、テクスチャ加工部分104の少なくとも一部が生理学的管腔の内壁と接触するようにしてもよく、それにより、テクスチャ加工部分104と生理学的管腔および粘膜内層との間に摩擦性および付着性の係合が引き起こされる。
【0032】
医療用デバイス100上のバルーン102について、さまざまなアレンジメントが実現可能である。図1A~1Eの具体的実施例において、バルーン102は、半球形の端部によってキャップされた円柱状のボディを有する。別の非限定的実施例において、バルーン102は、バルーン102が中央管腔を有するトロイド形または球形を形成するように、医療用デバイス100の内視鏡101または類似の管状ボディの周りに配される。別の非限定的実施例において、バルーン102は、丸みを帯びた半球形の端部を有する円柱形を形成しながら内視鏡101の周りに配され、このとき内視鏡101はその円柱の長軸に沿って走行する。他の実施形態において、バルーン102は、楕円面の形状または「砲弾(pill)」形状であってもよい。以上の記述にかかわらず、本開示に基づくバルーンは、実質的に、望ましい任意の形状であってもよい。
【0033】
バルーン102は、少なくとも1つの非剛性材料で作られてもよい。例えば、1つの例示的実施形態において、バルーン材料は、低密度ポリエチレン(LDPE)、ラテックス、ポリエーテルブロックアミド(例えばPEBAX(登録商標))、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート(PET/PETE)、ナイロン、ポリウレタン、および他の任意の熱可塑性エラストマー、シロキサン、または他の類似の非剛性材料のうち、1つまたは複数を含んでもよい。特定の実施形態において、バルーン102は1つの材料から形成されてもよい;しかし、他の実施形態において、バルーン102は複数の材料から形成されてもよい。例えば、バルーン102は、第一の材料から形成されたボディを含んでもよいが、第二の材料から形成された補強部材または構造部材もまた含んでもよい。
【0034】
概して、バルーン102は、非膨張状態にある時の第一の直径または形状と、最小限に膨張した状態における第二直径とを有し、第二直径は第一直径より大きい。特定の実施形態において、バルーン102は、バルーン102が最大ひずみのレベルまでさらに膨張されうるよう、最小限に膨張した状態を超えてさらに膨張可能であってもよい。例えば、少なくとも1つの実施形態において、バルーン102はその非膨張状態に対し相対的に約1,000%までのひずみを受けてもよいが、他の最大ひずみレベルも可能である。他の実施形態において、バルーン102は、設定された膨張下限を有さない。バルーン102はまた、規定の形状を有する第一の膨隆状態まで膨張し、そして次に、規定の形状を保持したまま最大ひずみまでさらに膨張されるように、構成されてもよい。
【0035】
バルーン102は、しぼんだ状態にある時にバルーン102が収縮(collapse)して特定の形状になるように、構築されてもよい。例えば、図1Aおよび1Bに図示するように、バルーン102は、収縮して星形または類似の形状になるように構成されてもよい。バルーン102のそのような制御された収縮は、バルーン102の一部分を追加的材料で補強すること、および、バルーン102に連結または埋め込まれた半剛性の構造要素を含めること、を非限定的に含む、さまざまな方式において実現されてもよい。他の実施形態において、バルーン102は、バルーン102の膨張形状に実質的に対応する形状も含めて、砲弾形状、卵形、または類似の細長形状をしぼんだ時に形成してもよい。
【0036】
図1Cに図示するように、バルーン102は、少なくとも1つのテクスチャ加工部分104を含む。概して、かつ図1Cのはめ込み図に図示するように、テクスチャ加工部分104は、バルーン102の表面103から伸びる突起106などの複数の突起を含む。テクスチャ加工部分104の突起106は任意のパターンを有してもよい。例えばかつ非限定的に、テクスチャ加工部分104は、グリッドなど、規則的な幾何学パターンにアレンジされた、均等に間隔が空けられた突起を含んでもよい。例えば、図1Cに図示するバルーン102は、三角形のグリッドパターンにアレンジされた突起を含む。他の実施形態において、正方形、長方形、六角形、および八角形のグリッドパターン、または、幾何学形状の切りばめに基づく他の任意の好適なグリッドパターンを非限定的に含む、他のグリッドパターンが用いられてもよい。特定の実施形態において、テクスチャ加工部分104は、各エリアが異なる突起密度または突起パターンを有する、複数の突起エリアを含んでもよい。なお他の実施形態において、突起は、テクスチャ加工部分104にわたるランダムまたはセミランダムなパターンにアレンジされてもよい。より一般的に、本開示の実施形態に基づくテクスチャ加工部分は、任意の好適な突起アレンジメントを含んでもよい。
【0037】
特定の実施形態において、突起106は、非膨張状態または膨張状態のいずれかにおいて隣接突起間の中心間寸法が一定であるよう、均等に間隔が空けられてもよい。例えば1つの実施形態において、(図1Eのはめ込み図において寸法「d」によって示されているような)突起間の中心間間隔は、非膨張状態または膨張状態のいずれかにおいて約20μm~約1,000μmであってもよい。他の実施形態において、突起は、互いから約50μm以上約750μm以下離れた中心間間隔を伴って、均等に間隔が空けられてもよい。さらに別の実施形態において、突起は、互いから約100μm以上約600μm以下離れた中心間間隔を伴って、均等に間隔が空けられてもよい。
【0038】
突起106はさまざまな方式で形成されてもよい。例えばかつ非限定的に、突起は、(例えばバルーン102と突起とを同時に成形することによって)バルーン102と一体的に形成されてもよく、(例えば、まずバルーンを押出加工し次に突起をバルーン102に付着させることによって)バルーン102とは別に形成され続いてバルーン102に取り付けられてもよく、または、(例えば、まずバルーン102が成形され次に突起がバルーン102上に成形される、コモールディング(co-molding)またはオーバーモールディング(over-molding)加工によって)直接バルーン102上に形成されてもよい。
【0039】
先に論じたように、本開示に基づくバルーンは、特定の様式で膨張またはしぼむよう構成されてもよい。例えば、図1Aに図示するように、バルーン102は、しぼんだ時に収縮して星形またはクローバー形になるよう構成される。より具体的には、バルーン102は、バルーン102から空気が除去された時にバルーン102の特定の縦断面が他の縦断面より大きい度合いまで収縮するよう、構成される。そうした選択的な収縮は、例えば、バルーン102がしぼんだ時に突出したままとなるべき縦部分においてバルーン102の厚さを増大させることによって、実現されてもよい。
【0040】
類似の設計を図20A~20Bに図示する。より具体的には、図20Aは膨張状態におけるバルーン2002を図示し、一方、図20Bはしぼんだ状態におけるバルーン2002を図示している。図1A~1Bのバルーン102と同様に、バルーン2002はしぼんだ時に選択的に収縮するよう構成される。より具体的には、かつ図20Bに図示するように、バルーン2002は概して、収縮時に異なる直径を有するよう構成された、交互の軸方向バンドに分けられる。例えば、第一バンド2010は、第二バンド2012より小さい度合いまで収縮するよう構成される。先述のように、そうした選択的な収縮は、第一バンド2010の厚さを増大させるかまたは第一バンド2010をその他補強することによって、実現されてもよい。他の実施形態において、しぼんだ状態にある時の、バンドの少なくともいくつかの形状は、バルーン2002内に配されかつしぼんだ時にバルーン2002がその周りで収縮する、マンドレルまたは類似のボディによって定められてもよい。
【0041】
図1A~1Bおよび図20A~20Bの実施例に図示するように、バルーンが収縮する度合いを変動させることによって、しぼんだ状態にある時のバルーンの挿入および輸送が容易になる。とりわけ、最大直径で外向き/放射状に向くかまたは別の方法で配される突起の割合を低減することによって、バルーンによって提供される全体的な付着および摩擦が低減される。その結果として、バルーンと生理学的管腔の壁との間の接触の見込み(likelihood)および量が著明に低減される。例えば図20A~20Bを参照すると、バルーン2002は、本開示に基づく突起を有するテクスチャ加工部分2004を含む。(図20Aに示すような)膨張状態にある時、突起の各々は実質的に外向き/放射状に方向付けされ、そしてその結果として、生理学的管腔の壁に容易に接触および係合できる。しかし、(図20Bに示すような)しぼんだ状態にある時、バルーン2002のテクスチャ加工部分2004の諸区画(面(face)2006および2008など)、およびそれらのそれぞれの突起は、少なくとも部分的に長軸方向に方向付けされ、そしてその結果として、生理学的管腔の壁に直接係合する可能性が低くなる。同様に、テクスチャ加工部分2004の諸区画(第二バンド2012など)は、バルーン2002がしぼんだ状態にある時、テクスチャ加工部分2004の他の諸区画(第一バンド2010など)に対し相対的にくぼんでいてもよい。その結果として、くぼんだ区画は、生理学的管腔の壁に接触および係合する可能性が低くなる。
【0042】
図21A~21Cに、不均一に膨張すること/しぼむことを呈する、別の例示的なバルーン2102を図示する。図21Aは、実質的にしぼんだ状態にありかつ砲弾形状の構成を取っているバルーン2102を図示している。図21Bに示すように、バルーン2102は、砂時計(または類似の形状)の外観を呈する第一の膨張レベルまで膨張されてもよい;その形状において、バルーン2102の少なくとも一部分は、バルーン2102の他の部分の直径(d2)より小さい直径(d1)まで展開する。バルーン2102は、第二の膨張レベルにおいて、バルーンの直径が実質的に均一(d3)になるよう展開してもよい。
【0043】
特定の実施形態において、バルーン2102と、バルーン2102が中に配されている生理学的管腔の壁との間の、付着力および摩擦力を変動させるために、バルーン2102の制御された膨張が用いられてもよい。例えば、バルーン2102は、本開示に基づく突起を有するテクスチャ加工部分2104を含む。(図21Bに図示するような)部分的な膨張状態にある時は、限られた割合の突起のみが、それぞれバルーン2102の最大直径に配されかつ外向き/放射状に配向されるよう、テクスチャ加工部分2104の直径は一様ではない。その結果、テクスチャ加工部分2104の実質的に全部が同じ直径となるようバルーン2102が(図21Cに図示するように)さらに膨張された時と比較して、バルーン2102と生理学的管腔の壁との間の付着および摩擦は低減される。したがって、バルーン2102のユーザーは、第一の度合いの係合を実現するため第一の膨張レベルまで、そして、より大きい第二の度合いの係合を実現するため第二の膨張レベルまで、バルーン2102を膨張させてもよい。
【0044】
バルーンが膨張/収縮されうる、上述の具体的方式は、例として提供されているにすぎない。より一般的には、本開示に基づくバルーンは、不均一な方式で収縮および/または膨張するよう構成されてもよい。そうすることにより、異なる割合のバルーン突起をバルーンの最大直径で配するため、および/または、異なる割合の突起を実質的に外向き/放射状の延在方向にポジショニングするために、しぼむ/膨張の異なる状態を用いることが可能になる。
【0045】
図2A~2Dは、本開示に基づく例示的な突起の断面図である。とりわけ図2A~2Cは例示的な突起の異なる断面形状を図示している。とりわけ、図2Aはバルーン102から伸びかつ円柱形または長方形を有する第一の突起200Aを図示し、図2Bは三角形またはピラミッド形を有する第二の突起200Bを図示し、そして図2Cは丸みを帯びた形状を有する第三の突起200Cを図示している。図2Dは、複数の材料で組成された第四のマイクロピラー200Dの断面図である。
【0046】
図2A~2Dに図示した突起形状は、例にすぎないことが意図されており、他の突起形状も可能である。例えばかつ非限定的に、本開示の他の実施形態が、長方形、正方形、三角形、五角形、七角形、六角形、ピラミッド形、キノコ形、または球形を非限定的に含む、任意の形状を有する突起を含んでもよい。バルーン102の表面より遠位側の、突起の端部もまた、さまざまな形状に形成されてもよい。例えばかつ非限定的に、突起の遠位端は、平らであるか、(凸状または凹状のいずれかを含む)丸みを帯びるか、尖っているか、またはキノコ形であってもよい。突起の幅/直径もまたさまざまであってもよい。例えば、キノコに似るよう、突起の遠位端の直径が近位端より大きくてもよい。他の実施形態において、突起が遠位方向にテーパーするよう、突起の近位端の直径が遠位端より大きくてもよい。
【0047】
上述のように、図2Dは、複数の材料から形成された突起200Dを図示している。より具体的には、突起200Dは、バルーン102に近い第一部分202と、バルーン102から遠い第二部分204とを含む。図示のように、第一部分202はバルーン102と一体的に形成される。他方、第二部分204は、第一部分202の形成後に第一部分202に連結されるかまたは第一部分202上に形成されてもよい、突起200Dのキャップまたは先端を形成する。他の実施形態において、第一および第二部分202, 204の各々が、バルーン102と異なる材料から形成されてもよい。
【0048】
図2Dに図示した具体的アレンジメントは、複数材料による突起の例にすぎないことが意図されており、他のアレンジメントも可能である。例えばかつ非限定的に、第二材料で形成された突起内に第一材料の構造要素を埋め込むもしくは植え込むことによって、または、第一材料から形成された突起を、第二材料から形成されたキャップ、シース、もしくは類似の要素で少なくとも部分的に包含することによって、複数材料による突起が形成されてもよい。認識されるべき点として、図2Dは2つの材料による突起200Dを図示しているが、本開示に基づく突起を形成するため任意の好適な数の材料が用いられてよい。
【0049】
図1A~1Eに図示した例示的バルーン102は、それから伸びる突起の実質的に均一な分布を有する、テクスチャ加工部分104を含んでいた。対照的に、図3は、より複雑なテクスチャ加工部分304を含む、本開示に基づく別の例示的バルーン300の、最小限に膨張した状態における側面図である。より具体的には、実質的に均一な突起の、実質的に均一なパターンと分布とを含む、図1Eに図示したバルーン102のテクスチャ加工部分104とは対照的に、テクスチャ加工部分304は突起の複数のエリア306A~312を含む。より具体的には、テクスチャ加工部分304は、比較的低い突起密度を有する第一のエリアセット306A~306Fと;比較的高い突起密度を有する第二のエリアセット308A, 308Bと;中間の突起密度を有する第三のエリアセット310A, 310Bと;実質的になめらかな第四のエリア312とを含む。エリアは異なる突起密度を有するものとして説明されているが、認識されるべき点として、突起密度、突起形状、突起の剛性、突起の分布パターン、および突起の材料などのうち、1つまたは複数を非限定的に含む他の局面において、各エリアがさまざまであってもよい。同様に、図3に図示するように、テクスチャ加工部分304の各エリアはサイズおよび形状がさまざまであってもよい。
【0050】
図1A~1Eの例示的な医療用デバイス100を再度参照すると、本開示の異なる用途において突起106の高さがさまざまであってもよい。例えばかつ非限定的に、少なくとも1つの実施形態において、バルーン102が非膨張状態または膨張状態のいずれかにある時、突起106は高さが約5μm以上約700μm以下であってもよい。別の実施形態において、突起は高さが約15μm以上約200μm以下であってもよい。さらに他の実施形態において、突起は高さが約30μm以上約110μm以下であってもよい。少なくとも1つの具体的実施形態において、突起が生理学的管腔の粘膜層を貫通できるようにするため、突起は約300μm以上約500μm以下である。対照的に、粘膜層が存在しない用途(例えば心臓用の用途)において、突起は高さが約50μm以上約100μm以下であってもよい。本開示の具体的実施形態はまた、さまざまな高さを有する突起を含んでもよい。そしてまた、個々の突起が、異なる高さまで伸びる異なる部分を有してもよい(例えば、狭間を備えた最上部を有するかまたはさまざまな高さを有する他の最上部を有するなど)。
【0051】
高さと同様に、各突起の断面幅(例えば、円形または卵形の断面を有する突起の場合は直径)がさまざまであってもよい。例えばかつ非限定的に、1つの実施形態において、バルーン102が非膨張状態または膨張状態のいずれかにある時、突起は約5μm以上約1000μm以下の断面幅を有してもよい。別の実施形態において、突起は約25μm以上約300μm以下の断面幅を有する。さらに他の態様において、突起は約70μm以上約210μm以下の断面幅を有する。なお別の実施形態において、突起は約600μm以上約1000μm以下の断面幅を有する。さらに別の実施形態において、突起は約300μm以上約500μm以下の断面幅を有する。別の実施形態において、突起は約150μm以上約250μm以下の断面幅を有する。少なくとも1つの具体的実施形態において、突起は約400μmの断面幅を有する。本開示の実施形態はまた、さまざまな直径を有する突起を含んでもよい。そしてまた、個々の突起が、異なる直径を有する異なる部分を有してもよい(例えばテーパー形状など)。
【0052】
特定の実施形態において、突起の全体的な割合は、代わりに、突起の高さと突起の断面幅/直径とを関連付けるアスペクト比に基づいて規定されてもよい。任意の好適なアスペクト比が用いられてよいが、1つの例示的実施形態において、アスペクト比は約5未満である。別の例示的実施形態において、アスペクト比は約0.05以上約10以下であってもよい。さらに別の例示的実施形態において、アスペクト比は約0.1以上約5.0以下であってもよい。別の例示的実施形態において、アスペクト比は約0.5以上約1.0以下であってもよい。なお別の例示的実施形態において、アスペクト比は約1.0以上約10.0以下であってもよい。別の実施形態において、アスペクト比は約0.1以上約1以下であってもよい。なお別の実施形態において、アスペクト比は約1以上約2以下であってもよい。さらに別の例示的実施形態において、アスペクト比は約0.5、約1.0、または約2.0であってもよい。これもまた認識されるべき点として、本開示の所与の実施形態における突起のアスペクト比は、バルーンの第一の突起セットが第一のアスペクト比に合致し、一方で、同じバルーンの第二の突起セットが第二のアスペクト比に合致するよう、さまざまであってもよい。さらに、アスペクト比を決定する目的のための、突起の断面幅/直径は、断面幅/直径の任意の尺度であってもよい。例えば、断面幅/直径は、突起の最大の断面幅/直径;突起の最小の断面幅/直径;突起の平均の断面幅/直径;または、突起の長さに沿った特定の位置における、突起の断面幅/直径であってもよい。
【0053】
突起はまた、偶発的な屈曲または変形を回避しながら、一方で突起と生体組織との係合を可能にするため、特定のスチフネスを有するよう構成されてもよい。少なくとも特定の実施形態において、突起は、突起が対する組織に少なくとも等しいスチフネスを有するように形成されてもよい。例えば、特定の実施形態において、突起のスチフネスは、それが係合する組織のスチフネスの約1.0倍以上2.0倍以下である。スチフネスはまた、突起を形成する材料の弾性率として表現されてもよい。例えば、少なくともいくつかの実施形態において、突起は約50 kPa以上約105 kPa以下の弾性率を有する材料から形成される。よりスチフネスが高い突起を含む他の実施形態において、突起は、約0.8 MPa以上約2.0 MPa以下の弾性率を有する材料で形成されてもよい。
【0054】
特定の実施形態において、本開示に基づくバルーンの突起は、バルーンに印加されたひずみに応じて変形するよう構成されてもよい。そうした変形は、次に、バルーンと生体組織との間の牽引を動的に制御および調整するために用いられてもよい。
【0055】
図4Aに、ひずみの第一状態における、バルーン402または類似の構造の一部分を図示する。特定の用途において、ひずみの第一状態は非ひずみ状態に対応してもよく、または代替的に、バルーン402に第一のひずみが印加された状態に対応してもよい。図に示すように、バルーン402は、バルーン402の表面403にわたって分布しかつそれから伸びる突起406など、複数の突起を含んでもよい。図4Bに図示するように、突起406は、特定の実施形態において円錐台形状を有してもよい。図5Aに、ひずみの第一状態より大きいひずみがバルーン402に印加されるひずみの第二状態における、バルーン402の前記一部分を示す。図5Aに示すように、少なくともいくつかの用途において、ひずみの第二状態の時に印加されるひずみは二軸性であってもよい。そうしたひずみは、例えば、バルーン402の膨張からもたらされてもよい。図5Aに図示するように、ひずみの印加は、概して、隣接する突起間の距離の増大と、突起の延伸/変形との、両方をもたらす。図5Bは、バルーン402に二軸ひずみが印加された時の突起406の断面図である。図示するように、突起406の円錐台形状は二軸ひずみ下で変形する。とりわけ、突起406の上面408および側壁410の各々が、二軸ひずみの印加に応じて漸増的に凹状になる。
【0056】
本明細書において、「二軸ひずみ(biaxial strain)」という用語は概して、2つの軸に沿って印加されるひずみを指し、その2つの軸は特定の実施形態において互いに垂直であってもよい。特定の事例において、二軸ひずみは、各軸に沿ってほぼ等しくてもよい。例えば、バルーンに印加されるひずみは、縦方向および横方向の各々において等しくてもよい。しかし、他の実施形態において、ひずみは各軸に沿って不均等に印加されてもよく、それには、突起の不均一な変形(例えば、主として単一の軸に沿った圧縮の伸長)をもたらすひずみも含まれる。さらに、突起の充分な変形はまた、単軸ひずみ、または、二軸ひずみ以外の多軸ひずみの印加によって実現されてもよい。したがって、本明細書に説明する実施例は主として、突起の変形に由来する摩擦性および付着性の係合の変動をもたらす、二軸ひずみを参照しながら論じるが、本開示の実施形態は、より一般的に、印加される任意のひずみに応じた突起の変形に由来する、摩擦性および付着性の係合の変動に関する。
【0057】
図6Aおよび6Bは、それぞれひずみ構成および非ひずみ構成における突起のさらなる詳細を図示した、突起406の断面図である。図6Aに図示するように、非ひずみ構成にある時、突起406は、突起の上面408に対応する最上部直径(D1)と、突起406の基部412に対応する基部直径(D2)とを有する。突起406の上面408は、最大の高さ(H)に配されたものとして示されている。上面408はまた、凹状であり、かつ、曲率半径(R)によって規定される凹所を有するものとして、示されている。突起の上面408は、バルーン402の表面403に対する相対的な高さ(H)に達する。認識されるべき点として、図6Aにおいて突起の上面408は凹状であるものとして示されているが、他の実施形態において上面408が実質的に平らであってもよい。そしてまた、図6Aにおいて最上部直径D1と基部直径D2とは異なるものとして図示されているが、他の実施形態において、突起406が実質的に円柱状の形状であるよう、D1とD2とが等しくてもよい。
【0058】
図6Bに示すように、突起406は、バルーン402に印加されたひずみに応じて変形してもよい。とりわけ、最上部直径(D1)および基部直径(D2)の各々が、それぞれ第二の基部直径(D1')および第二の基部直径(D2')まで拡大してもよい。上面408の曲率半径(R)もまた、第二の曲率半径(R')まで低減してもよく、それによって上面408が漸増的に凹状になる。前述の寸法変化に加えて、突起406の全体的な高さも、最初の高さ(H)から第二の高さ(H')まで変化してもよい。
【0059】
図6Aおよび6Bに図示するように、本開示の少なくともいくつかの実施形態において、各突起が、側壁410と上面408との間の移行部にリップまたはエッジ414を含んでいてもよい。概して、比較的鋭利なリップまたはエッジ414が、突起が生理学的管腔の壁により容易に係合することを可能にしてもよく、かつまた、壁上に存在しうる粘膜層または他の層を貫通することを容易にしてもよい。したがって、少なくともいくつかの実施形態において、エッジ/リップ414は約3μmを超えない半径を有してもよい。
【0060】
突起406の最初の寸法はさまざまであってもよい。例えば、特定の実施形態において、突起の非ひずみ下の上部直径(D1)は約100μm以上約700μm以下であってもよく;突起の非ひずみ下の下部直径(D2)は約100μm以上約750μm以下であってもよく;突起の非ひずみ下の高さ(H)は約100μm以上約700μm以下であってもよく;そして、突起の上面408の非ひずみ下の曲率半径(R)は約1 mm以上約2 mm以下であってもよい。同様に、特定の実施形態において、突起のひずみ下の上部直径(D1')は約375μm以上約750μm以下であってもよく;突起のひずみ下の下部直径(D2')は約405μm以上約825μm以下であってもよく;突起のひずみ下の高さ(H')は約200μm以上約400μm以下であってもよく;そして、突起の上面408のひずみ下の曲率半径(R')は約500μm以上約750μm以下であってもよい。1つの具体的実施例において、D1は約250μmであってもよく、D2は約270μmであってもよく、Hは約500μmであってもよく、そしてRは約1.5 mmであってもよい。同じ実施例において、バルーン402は、D1'が最大で約375μmになることができ、D2'が最大で約400μmになることができ、H'が約450μmまで低減でき、そしてR'が約500μmまで低減できるように、ひずむよう構成されてもよい。他の実施形態において、代わりに、バルーン402に印加されたひずみに応じた突起406の変形は、突起406の表面積の変化に基づいてもよい。例えばかつ非限定的に、バルーン402は、突起406の表面積が最大で約25%増大しうるように構成されてもよい。
【0061】
実験的試験中に、図6Aおよび6Bの突起406と同様の突起を含む材料片と、生体組織を模した可撓性プローブとの間の分離力が、材料に印加された二軸ひずみの度合いに伴って変動することが観察された。より具体的には、まずプローブを材料サンプルに接触させ、それによりプローブを材料サンプルに付着させた。次にプローブを材料サンプルとの接触から引き外した。そうした分離をもたらすのに要した力を測定したところ、材料サンプルに印加された二軸ひずみの度合いに伴って非線形に変動することが観察された。
【0062】
図7は、分離力と二軸ひずみとの関係に関する実験的知見をまとめたグラフ700である。より具体的には、グラフ700は、二軸ひずみに対応する第一の軸702、および、プローブと材料サンプルとの分離時に測定された分離力に対応する第二の軸704を含む。線706が示すように、分離力は、二軸ひずみの変化に応じて非線形の様式で変動した。
【0063】
グラフ700は、材料サンプルが非ひずみ下にある時の分離力に対応する、ベース分離力の線708をさらに示している。同グラフは、試験した材料サンプルと実質的に同様であるが突起がない第二の材料サンプルに対応する、「フラットな」分離力の線710をさらに含む。
【0064】
グラフ700に図示するように、突起を有する材料に関する分離力は、材料に印加される二軸ひずみを変化させることによって、ある範囲の値を有するように、変動しうる。例えば、二軸ひずみを印加しないかまたは比較的低い二軸ひずみを印加することによって、突起を伴う材料に、同じ材料の平らなシートより小さい分離力を持たせる(すなわち、摩擦性および/または付着性を小さくする)ことも可能である。しかし、二軸ひずみが増大されると摩擦および付着もまた増大する;ゆえに、特定のレベルの二軸ひずみにおいて、突起を含む材料の分離力が、同じ材料の平らなシートの分離力を上回ることが可能である。
【0065】
グラフ700に示すように、このことにより、特定の実施形態において、非ひずみ時の分離力は平らな材料シートの分離力と比べて小さくなりうる。しかしその分離力は、ひずみが増大されるにつれて、平らなシートの分離力を上回って増大しうる。換言すると、材料サンプルに二軸ひずみを選択的に印加することによって、分離力が変更され得、このことは、本開示に基づくバルーンを組み込んだ医療用デバイスについて、より増大した制御と、より信頼性の高い係合とを、医師に提供する。
【0066】
図4A~7において論じた具体的実施例は、概して、平らかまたは部分的に凹状である上面を有する突起を含む;そのような上面は、ひずみが印加された時に、突起を漸増的に凹状にさせ、それにより突起の表面積を増大させる。本開示の他の実施形態において、代わりに、ひずみが印加された時に突起の上面が少なくとも部分的に平坦になるよう、丸みを帯びた/凸状の上面または類似の上面を突起が含んでもよい。そうした平坦化は、表面積の低減をもたらし得、そしてその結果として、突起と生理学的管腔との間の分離力の変化(概して低減)をもたらし得る。したがって、先述の実施例においてひずみは突起表面積を増大させて分離力を増大させるために印加されるが、ひずみはまた、突起表面積を低減させそしてその結果として分離力を低減させるために用いられてもよい。しかし、いずれの事例においても、ひずみは、突起の形状とひいては突起の分離力とを変えるための主たる機構として用いられる。
【0067】
バルーンと生理学的管腔との間の分離力は、本開示の異なる実施形態にわたって、かつ、所与の実施形態についての異なる膨張状態にわたって、さまざまであってもよい。しかし、少なくともいくつかの実施形態において、最小の付着および摩擦でバルーンを生理学的管腔に沿って移動させることを容易にするため、バルーンは、(例えば図1A~1Bに図示するような)しぼんだ状態にある時に約5 N未満の分離力を有するよう構成されてもよい。他の実施形態において、しぼんだ状態にある時の分離力は約3 N未満であってもよい。1つの具体的実施例において、しぼんだ状態における分離力は約1 Nであってもよい。バルーンはまた、バルーンが生理学的管腔に実質的に係合する最小限に膨張した状態において特定の分離力を有するよう構成されてもよい。例えば、少なくともいくつかの実施形態において、最小限に膨張した状態における分離力は約10 N以上約30 N以下であってもよい。他の実施形態において、最小限に膨張した状態における分離力は約15 N以上約25 N以下であってもよい。1つの具体的実施形態において、最小限に膨張した状態における分離力は約20 Nであってもよい。
【0068】
先に論じたように、少なくともいくつかの実施形態において、バルーンの付着および摩擦の特質を変更し、そしてその結果としてバルーンと生理学的管腔との間の分離力を変更するため、バルーンに対するひずみが(例えばバルーンを膨張またはしぼませることによって)印加または変更されてもよい。1つの実施形態において、最小限に膨張した状態に対する相対的な分離力は、バルーンをしぼませることによって1%またはそれ以下まで低減され得、および、バルーンを過膨張させかつひずませることによって最大で200%であり得る。別の実施形態において、しぼんだバルーンは、最小限に膨張した状態の約5%未満の分離力と、バルーンをひずませることによる約150%の最大値とを有してもよい。なお別の例示的実施形態において、バルーンは、最小限に膨張した状態の約5%未満の下限分離力と、バルーンをひずませることによる約125%の最大値とを有してもよい。したがって、少なくとも1つの具体的実施例において、バルーンは、膨張状態における約20 N、しぼんだ状態における約1 N、および最大ひずみ状態における約25 Nの分離力を有してもよい。
【0069】
先述のように、本開示に基づくバルーンはさまざまな方式で製造されてもよい。例えば、少なくとも1つの実施形態において、上述のような突起を含むバルーンは、キャスティング加工を通じて製造されてもよい。図8に、そうしたキャスティング加工に用いるための例示的な鋳型800を図示する。図示のように、鋳型800は、内側鋳型ピースまたはコア804がその中に配される外側鋳型ピース802を含む。外側鋳型ピース802とコア804との組み合わせは、成形されるバルーンの概形を提供するキャビティ806を規定する。
【0070】
鋳型800は、外側鋳型ピース802およびコア806に加えて、キャスティング中にバルーン上に突起を形成するためのインサート808も含む。インサート808は、最終的なバルーン上に含まれるべき突起のパターンと分布とを有するよう、別に形成される。インサート808は、機械加工、3Dプリンティング、マイクロリソグラフィ、または他の任意の同様の製造プロセスを非限定的に含む、さまざまな方式で製造されてもよい。インサート808は、形成されたら、外側鋳型ピース802内に配されそしてこれに連結されてもよい。特定の実施形態において、インサート808は、非限定的にKapton(登録商標)もしくは他のポリイミド材料、シリコーン、ラテックス、またはゴムなどである、半剛性材料から形成されてもよい。
【0071】
キャスティング加工中、(非限定的にECOFLEX(登録商標)50などである)バルーン材料が、キャビティ内に注入され、そして静置固化される。特定の実施形態において、鋳型キャビティ806から空気を除去するため、かつ、キャビティ806内に注入された材料が、鋳型インサート808によって規定される突起も含めて鋳型キャビティ806の形状を取ることを促すため、鋳型800に真空もまた印加される。
【0072】
特定の実施形態において、キャビティ806の厚さを変化させることによって、バルーンの全体的な厚さが変更されてもよい。例えば、外側鋳型ピース802とコア804との間で規定されるキャビティ806の厚さが、鋳型800内に入るコアを交換することによって変更されうるよう、外側鋳型ピース802がさまざまなサイズのコアを受けるように構成されてもよい。
【0073】
外側鋳型ピース802とコア804との間で規定されるキャビティ806は、図8において実質的に均一な幅を有するものとして図示されているが、鋳型800内の特定の位置においてキャビティ806がより幅広になるように、不均一であってもよい。したがって、鋳型800を用いて形成されるバルーンはいずれも、その厚さにおいて、対応する変動を有する。バルーンの厚さをさまざまにすることによって、さまざまな特質がバルーンに付与されてもよい。例えば、バルーンの特定の位置の全体的な耐久性および強度を向上させるため、その位置の厚さが増大されてもよい。他の事例において、バルーンを特定の方式で収縮および/または展開させる、バルーンの補強領域が形成されるように、バルーンの厚さがさまざまであってもよい。そうした補強領域はまた、しぼんだ状態、部分的な膨張状態、または完全な膨張状態のいずれかにおいて、バルーンに特定の形状を取らせてもよい。
【0074】
図9は、本開示に基づくバルーンの製造に用いるための代替的な鋳型900の等角図である。鋳型900は、内側鋳型ピースまたはコア(図には示していない)がその中に配されてもよい外側鋳型ピース902を含む。バルーン突起を形成するため取り外し可能インサート808が用いられる図8の鋳型800とは対照的に、外側鋳型ピース902は、キャスティング加工中に突起を形成するために用いられる、外側鋳型ピース902の内面908内に直接形成された空隙906を含む。
【0075】
上述のように、少なくともいくつかの実施形態において、本開示にもとづくバルーンがキャスティング加工を用いて形成されてもよい。そうしたキャスティング加工には、ピースキャスティング、スラッシュキャスティング、ドリップキャスティング、または、中空物の製造に好適な他の任意の同様のキャスティング方法が含まれうる。例えばスラッシュキャスティング加工では、材料が固化する前に鋳型の内面をコーティングするため、ある量の材料が鋳型に加えられそしてスラッシュされてもよい。さまざまなタイプの成形加工(例えば射出成形)および押出加工を非限定的に含む、他の作製方法もまた実施されてもよい。
【0076】
先述の作製方法は突起をバルーンと一体的に形成する段階を含んでいたが、他の実施形態において、代わりに、先に形成されたバルーン上に突起が形成されてもよい。例えば、少なくとも1つの他の作製方法において、まずベースバルーンが形成されてもよい。次に、それに続く加工を用いて、バルーンに突起が形成または連結されてもよい。1つの例示的作製方法において、ベースバルーンが押出加工され、そして次にスプレー法を用いて突起がベースバルーンに追加される。別の例示的作製方法において、第一のキャスティング加工または成形加工を用いてベースバルーンが形成され、そしてベースバルーンが固化したら、ベースバルーンの外面上に突起を形成するため第二のキャスティング加工または成形加工(例えばオーバーモールディング加工)が適用される。
【0077】
先に論じたように、図1A~1Eの文脈において、さまざまな医療用デバイスにおける使用のために本開示に基づくバルーンが実施されてもよい。図10~16は、さまざまな例示的医療用デバイス、および、本開示のバルーンを含むそうした医療用デバイスの構成の、略図である。認識されるべき点として、本明細書に提供する医療用デバイスは例示的なデバイスにすぎず、したがって限定的ではない。より一般的には、本開示に基づくバルーンは、生理学的管腔内に挿入されるよう適合した任意の医療用デバイスとの関連において用いられてもよい。特定の実施形態において、医療用デバイスは、その長さにわたる管腔を含んでもよい。デバイスの管腔は、ツールおよび/またはカテーテルが医療用デバイスの長さに沿って通されそしてデバイスの遠位端から出ることができるよう、ツールまたはカテーテルのポートとして役立ってもよい。代替的に、生理学的管腔内にすでに配されたツールまたはカテーテル上にデバイスが通されてもよい。
【0078】
図10は、カテーテル送達ツールの形態における第一の医療用デバイス1000の略図である。図示するように、医療用デバイス1000は、カテーテルツールチャネル1006およびバルーン送気チャネル1008の各々がそこから出る近位側のハブ1004を含む。カテーテルツールチャネル1006の遠位部分1010が、ハブ1004から延在し、かつバルーン1002を含む;バルーン1002は、バルーン送気チャネル1008を介して、空気を提供することまたはバルーン1002からの空気の抜けを許容することの、それぞれによって、選択的に膨張およびしぼまされうる。したがって、バルーンがしぼんだ状態で、遠位部分1010が患者の生理学的管腔内に挿入されてもよい。生理学的管腔内の関心対象ポイントに位置決めされたら、バルーン1002を展開させそして生理学的管腔の壁に係合させるため、バルーン送気チャネル1008を介してバルーン1002に空気が提供されてもよい。そのように係合された時、関心対象の位置までの妨げられずかつ直接的な経路を提供するため、カテーテルツールチャネル1006が用いられてもよい。
【0079】
医療用デバイス1000は、生理学的管腔内でカテーテルもしくはガイドワイヤと関連して用いられるか、またはこれをガイドするために用いられるものとして上述したが、本開示の他の実施形態において、本開示に基づくバルーンがカテーテルまたはガイドワイヤに組み込まれてもよい。例えばかつ非限定的に、本開示の少なくとも1つの実施形態において、本明細書に説明する膨張可能バルーンが、ガイドワイヤまたはカテーテルに沿って(例えばガイドワイヤもしくはカテーテルの遠位端またはその近くに)配されてもよい。そうした実施形態において、ガイドワイヤまたはカテーテルは、バルーンがしぼんだ状態で生理学的管腔内に挿入されてもよい。続いて、生理学的管腔に係合するため、かつガイドワイヤまたはカテーテルを生理学的管腔内に少なくとも部分的に係留するため、バルーンが膨張されてもよい。
【0080】
図11は、内視鏡デバイスであってもよい第二の医療用デバイス1100の略図である。第二の医療用デバイス1100は、例えばかつ非限定的に発光ダイオード(LED)1106とカメラ1108とを含んでもよい、内視鏡ボディ1104を含む。内視鏡ボディ1104はまた、カテーテル1110がそれを通って挿入されてもよいカテーテルチャネル1109も規定してもよい。図11に図示するように、カテーテル1110は、カテーテル1110を生理学的管腔内で少なくとも部分的に確実固定する(secure)ために用いられてもよい、遠位側のバルーン1102を含んでもよい。
【0081】
医療用デバイス1100の1つの例示的用途において、カテーテル1110は内視鏡ボディ1104用のガイドとして用いられてもよい。より具体的には、第一のプロセス中に、カテーテル1110は、バルーン1102が非膨張状態にある状態で、生理学的管腔に沿った関心対象ポイントまで送達されてもよい。位置決めされたら、バルーン1102を管腔に係合しかつカテーテルを管腔内で少なくとも部分的に確実固定するため、バルーン1102が膨張されてもよい。次に、カテーテルをガイドとして用いて内視鏡ボディ1104をカテーテル1110に沿って動かせるよう、内視鏡ボディ1104がカテーテル1110上に置かれてもよい。
【0082】
図12は第三の医療用デバイス1200の略図である。図11の医療用デバイス1100と同様に、医療用デバイス1200は、カテーテル1210を受けるよう構成されてもよい内視鏡ボディ1204(または同様のツールのボディ)を含む。しかし、バルーン1102がカテーテル1110に連結された図11の医療用デバイス1100とは対照的に、医療用デバイス1200は、内視鏡ボディ1204に連結され、かつ患者の生理学的管腔内で内視鏡ボディ1204を少なくとも部分的に確実固定するために用いられてもよい、バルーン1202を含む。
【0083】
図13は、図11の医療用デバイス1100および図12の医療用デバイス1200の両方の諸局面を組み合わせた、第四の医療用デバイス1300の略図である。より具体的には、医療用デバイス1300は、カテーテル1310がそれを通って挿入されてもよいカテーテルチャネル1309を規定する、内視鏡ボディ1304を含む。図11の医療用デバイス1100のように、カテーテル1310は、カテーテル1310を生理学的管腔内で少なくとも部分的に確実固定するために用いられてもよい、遠位側のバルーン1302を含む。そしてまた、図12の医療用デバイス1200のように、内視鏡ボディ1304はバルーン1312も含む。
【0084】
医療用デバイス1300の、バルーンが2つある構成は、医療用デバイス1300を生理学的管腔に沿って進めるために用いられてもよい。例えば、図17に、(フレーム1に示す)生理学的管腔1702に沿った医療用デバイス1300の進行を描写した、一連の図示を提供する。図示するように、医療用デバイス1300はまず、非膨張/係脱構成において生理学的管腔内に挿入されてもよい(フレーム1)。次に、内視鏡バルーン1312を管腔1702に係合するため、かつ内視鏡ボディ1304を管腔1702内で少なくとも部分的に確実固定するため、バルーン1312が膨張されてもよい(フレーム2)。次に、内視鏡ボディ1304が確実固定された状態で、カテーテル1310が内視鏡ボディ1304から管腔に沿って延ばされてもよく(フレーム3)、そして、カテーテルバルーン1302を第二の位置で膨張させることによって、カテーテルバルーン1302が第二の位置で管腔1702に係合されてもよい(フレーム4)。次に内視鏡バルーン1312がしぼまされてもよく(フレーム5)、そして、係留されたカテーテル1310をガイドとして用いながら内視鏡ボディ1304が管腔1702に沿って進められてもよい(フレーム6)。内視鏡ボディ1304がカテーテルバルーン1302に到達した時に、内視鏡ボディのバルーン1312を膨張させることによって内視鏡ボディ1304が再び管腔1702内で確実固定されてもよい(フレーム7)。フレーム8~12に図示するように、医療用デバイス1300を生理学的管腔1702に沿って進めるためにこのプロセスが反復されてもよい。
【0085】
特定の実施形態において、医療用デバイスは、PCT出願公報WO 2017/096350に説明されているように、第一および第二膨張可能バルーンのうちの1つまたは両方の外面の少なくとも一部分が本明細書に説明するようなマイクロパターン加工された表面を含む、可撓性のオーバーチューブを含むダブルバルーン内視鏡であってもよい。他の態様において、内視鏡はオーバーチューブを含まない。
【0086】
図14~16に、前述の例示的医療用デバイスのさらなるバリエーションを図示する。図14は、それを通って内視鏡デバイス1404が挿入されてもよいオーバーチューブ1414に、バルーン1402が連結されている、医療用デバイス1400の略図である。図15は、それを通って内視鏡ボディ1504が延在するオーバーチューブ1514に連結されたバルーン1502を含むという点において図14と同様である、医療用デバイス1500の略図である。医療用デバイス1500は、オーバーチューブバルーン1502に加えて、内視鏡ボディ1504を通って延在するカテーテル1510の遠位端に連結されたカテーテルバルーン1512を含む。図15のものに類似しかつ可撓性オーバーチューブを含む、例示的なダブルバルーン内視鏡デバイスは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるPCT出願公報WO 2017/096350に詳しく説明されている。そして、図16は、3つの別個のバルーンを含む医療用デバイス1600の別の略図である。具体的には、医療用デバイス1600は、オーバーチューブ1614に連結された第一のバルーン1602と、オーバーチューブ1614を通って延在する内視鏡ボディ1604に連結された第二のバルーン1616と、内視鏡ボディ1604から延在するカテーテル1610に連結された第三のバルーン1618とを含む。
【0087】
医療用ツールの各々において、本開示のバルーンを膨張させるためバルーンに空気または他の流体を送達すること、および、バルーンをしぼませるためバルーンから空気/流体を除去することに好適なチャネルを、本明細書に説明するデバイスが含むことが想定されている。例えば、ポンプまたは他の流体供給源に接続されてもよく、かつ、それを通って流体がバルーンから除去されうるベントまたは戻りチャネルをさらに含む、近位側のマニホールドまたはカップリングを、各デバイスが含んでもよい。特定の実施形態において、医療用デバイスは、デバイスの1つまたは複数のバルーンと流体連絡したチュービングであって、そのバルーンのうちの1つまたは複数の制御された膨張および/またはしぼむことを可能にするチュービングを含む。医療用デバイスが複数のバルーンを含む実施形態において、チュービングは、その複数のバルーンのうちの1つまたは複数を膨張させるために用いられる。代替的に、医療用デバイスのバルーンのそれぞれのサブセットの膨張およびしぼむことを独立的に制御するため、チュービングの異なるセットが用いられてもよい。
【0088】
これもまた認識されるべき点として、複数のバルーンを有する本開示の実施形態において、本開示に基づく突起を有する必要があるのは1つのバルーンのみである。換言すると、本開示に基づく医療用デバイスは、本明細書に説明するような1つのテクスチャ加工バルーンを含んでもよいが、任意の数の、テクスチャ加工されていないバルーンまたは本明細書に説明する以外のデザインを有するバルーンも、また含んでもよい。さらに、図10~17の例示的医療用デバイスには、医療用デバイスのコンポーネント(例えば、カテーテル、内視鏡ボディ、オーバーチューブ)の遠位端近くに位置決めされたバルーンが図示されているが、他の実施形態において、バルーンは、所与のコンポーネントに沿った複数の位置も含めて、そうしたコンポーネントに沿った任意の位置に配されてもよい。
【0089】
本開示はさらに、内視鏡検査または体腔内における類似の医学的手技を行う方法も提供する。図18は、図1A~1Eおよび図10~17の文脈において論じた医療用デバイスを非限定的に含む、本開示に基づく医療用デバイスを用いて一般的に行われてもよい、そうした手技の例示的方法1800を図示したフローチャートである。
【0090】
オペレーション1802において、少なくとも医療用デバイスのバルーンがしぼんだ状態で、医療用デバイスが生理学的管腔または体腔内に導入される。先に論じたように、本開示の少なくとも1つの用途において、生理学的管腔は患者のGI管の一部分を含んでもよい(が、それに限定されるわけではない)。例えば、小腸内視鏡検査の文脈において、生理学的管腔は患者の下部消化器系の一部分に対応してもよく、そして医療用デバイスは、生理学的管腔の検査を容易にするよう適合した、照明および/またはカメラなどの、遠位コンポーネントを含んでもよい。
【0091】
生理学的管腔内に挿入されたら、バルーンがしぼんだ状態にある間に、医療用デバイスの少なくとも一部分が生理学的管腔に沿って係合位置まで移動される(オペレーション1804)。例えば特定の実施形態において、医療用デバイスの前記一部分は、バルーンを含むカテーテルであってもよく、そして、医療用デバイスの前記一部分を移動させる段階は、医療用デバイスの第二部分(例えば内視鏡ボディ)が最初の挿入位置のままである間に、カテーテルおよびバルーンを生理学的管腔に沿って延ばす段階を含んでもよい。別の例示的実施形態において、医療用デバイスの前記一部分を移動させる段階は、医療用デバイスの内視鏡または類似部分を、生理学的管腔に沿って延びたガイドワイヤまたはカテーテルに沿って動かす段階を含んでもよい。
【0092】
医療用デバイスの前記一部分の移動に続いて、本明細書に説明するようなバルーンの突起が生理学的管腔の壁に係合するよう、医療用デバイスのバルーンが膨張される(オペレーション1806)。
【0093】
管腔内で少なくとも部分的に確実固定されたら、さまざまな機能を行うために医療用デバイスが操作されてもよい(オペレーション1808)。1つの実施例において、医療用デバイスの確実固定された部分がカテーテルを含んでもよく、そして、確実固定されたカテーテルをガイドとして用いて、医療用デバイスの確実固定されていない部分を生理学的管腔に沿って移動させることによって、医療用デバイスが操作されてもよい。別の実施形態において、異物または組織を生理学的管腔から除去するために医療用デバイスが操作されてもよい。例えば、医療用デバイスの操作は、生理学的管腔内の組織もしくは物体を捕捉、切除、切断、生検するよう、またはそうした組織もしくは物体とその他相互作用するよう構成された、医療用デバイスの1つまたは複数のツールの、挿入およびオペレーションを含んでもよい。1つの具体的実施例において、オペレーション1804の間に、バルーンが、管腔内の関心対象の異物または組織の遠位側に配されてもよい。次に、オペレーション1806において、管腔を閉塞するためバルーンが膨張されてもよい。1つの実施形態において、次に、異物を除去するためバルーンが管腔を通って近位方向に動かされてもよい。別の実施形態において、代わりに、バルーンより遠位側の異物を除去するため、バルーンが管腔内に配されそして遠位方向に動かされてもよい。別の実施形態において、膨張されたバルーンより近位側の管腔の一部分内でツールが用いられうるよう、医療用デバイスを通ってツールが挿入されてもよい。以上の実施例は、尿管から腎結石を除去するため、胆管から胆石を除去するため、または、生理学的管腔内に存在する他の異物または望ましくない物を取り除くために、有用である可能性がある。
【0094】
別の例示的な医学的手技において、第二のバルーンの突起が、生理学的管腔の壁に部分的に係合するがそれ以外は生理学的管腔内で少なくとも部分的に可動のままであるように、本開示に基づく第二のバルーンが生理学的管腔内に配されそして膨張されてもよい。例えば、先に生理学的管腔内に配された医療用デバイスを通って次に(例えばオペレーション1804および1806の間に)挿入されるガイドワイヤまたはカテーテル上に、第二のバルーンが配されてもよい。生理学的管腔の壁を擦るかまたはこするため、第二のバルーンの突起が部分的に係合した状態で、第二のバルーンが生理学的管腔に沿って移動されてもよい。
【0095】
医療用デバイスの操作に続いて、バルーンを生理学的管腔から係脱するためバルーンがしぼまされ(オペレーション1810)、そして、医学的手技の完了時を決定するため評価が行われる(オペレーション1812)。そうであれば、医療用デバイスが生理学的管腔から除去される(オペレーション1814)。そうでなければ、(例えばオペレーション1804~1812を反復することによって)手技の追加的段階を行う目的のため医療用デバイスが生理学的管腔内で再ポジショニングされてもよい。
【0096】
図19は、本開示に基づくバルーンと生理学的管腔との間の係合を変更する方法1900を図示した、第二のフローチャートである。図4A~7の文脈において先に論じたように、本開示に基づくバルーンの突起は、それらに印加される二軸ひずみに基づいて変動する付着特性および摩擦特性を有するよう構成されてもよい。より具体的には、(例えばバルーンを選択的に膨張またはしぼませることによって)バルーンにひずみを印加すると、バルーンの表面上で突起の変形が引き起こされ、そしてそれによりバルーンと隣接組織との間の付着および摩擦が変更される。先に論じたように、医学的手技中の制御性およびフレキシビリティの向上を可能にするため、バルーンに印加されるひずみを変更することによって、付着特性および摩擦特性が医師によって動的に操作されてもよい。
【0097】
以上を踏まえたうえで、方法1900は、本開示に基づく突起を有するバルーンを生理学的管腔内に配する段階で始まる(オペレーション1902)。オペレーション1904において、バルーンの突起が生理学的管腔の壁と相互作用しかつ壁との第一分離力を有するよう、バルーンを膨張させるなどによってバルーンに二軸ひずみが印加される。オペレーション1906において、第一分離力と異なる第二分離力がバルーンと生理学的管腔の壁との間で実現されるよう、二軸ひずみが変更される。
【0098】
前述のことに関して、オペレーション1906において二軸ひずみを変更する段階は、バルーンに対する二軸ひずみを増大させる段階または低減させる段階のいずれかを含んでもよい。二軸ひずみを増大させる段階は、例えば、オペレーション1904の間にバルーンが膨張された程度を超えて、バルーンを膨張させる段階を含んでもよい。図7の文脈において論じたように、バルーンに対するひずみをそのような様式で増大させる段階は、概して、バルーンを生理学的管腔の壁から分離するのに必要な力の増大をもたらしうる(すなわち、摩擦および/または付着を増大させうる)。二軸ひずみを低減させる段階は、例えば、バルーンを生理学的管腔の壁から分離するのに必要な力を低減させる(すなわち、摩擦および/または付着を低減させる)ためバルーンを少なくとも部分的にしぼませる段階を含んでもよい。
【0099】
本開示はさらに、本開示に基づく医療用デバイスを含むキットにも関する。特定の実施形態において、キットは、本明細書に説明するような突起を有する少なくとも1つの膨張可能バルーンを含む、内視鏡または類似の医療用デバイスを含む。他の実施形態において、キットは、本明細書に説明するような突起を有するバルーンを含むカテーテルをさらに含む。さらに他の実施形態において、キットは、本開示に基づく医療用デバイスを用いる方法を詳述した指示資料を含む。なお別の実施形態において、キットは、本明細書に説明するようなバルーンをその各々が含む、内視鏡およびカテーテルの各々を含む。なお他の実施形態において、キットは、内視鏡およびカテーテルを用いる方法を詳述した指示資料を含む。
【0100】
本明細書において用いる、以下の用語の各々は、本セクションにおいてそれに関連付けられる意味を有する。
【0101】
本明細書において用いるすべての技術用語および科学用語は、別段の定義がない限り、概して、本開示が属する分野の当業者によって広く理解されるものと同じ意味を有する。概して、本明細書において用いる学名は、当技術分野において周知されかつ広く使用されているものである。
【0102】
本明細書において用いる、「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は、1つまたは1つより多い(すなわち、少なくとも1つの)、その冠詞の文法上の対象を指す。例として、「1つの要素(an element)」は、1つの要素、または、1つより多い要素を意味する。
【0103】
本明細書において用いる「約(about)」という用語は、当業者によって理解され、かつ、用いられる文脈に応じてある程度変動する。本明細書において用いる「約」は、量および時間など測定可能な値を参照する時、指定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、そしてなおより好ましくは±0.1%の変動を包含する意味をもつ;そうした変動は本開示の方法を行うのに適切なものである。
【0104】
本明細書において用いる「指示資料(instructional material)」という用語は、本開示の組成物(compositions)および/または方法の有用性を伝えるために用いられてもよい、刊行物、記録物、線図、または他の任意の表現媒体を含む。本発明のキットの指示資料は、例えば、本開示の組成物を含有する容器に添付されてもよく、または、本開示の組成物を含有する容器とともに出荷されてもよい。代替的に、指示資料は、受取人が指示資料と組成物とを協同的に用いるという意図を伴って、容器とは別に出荷されてもよい。例えば、指示資料はキットの使用に関するものである;かつ/または、指示は組成物の使用に関するものである。
【0105】
本開示全体を通して、本開示のさまざまな局面が範囲形式で提示される場合がある。理解されるべき点として、範囲形式による説明は、簡便さおよび簡潔さを目的としたものにすぎず、本開示の範囲に対する硬直的な限定とみなされるべきではない。したがって、範囲の説明は、その範囲内の可能なすべての部分範囲および個々の数値、ならびに、適切な時には、範囲内の数値の部分的な整数を、具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびに、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6などを、具体的に開示したものとみなされるべきである。このことは、範囲の広さに関わりなく適用される。
【0106】
本明細書に説明または例示するあらゆる調合物、またはコンポーネントの組み合わせは、別段の言明がない限り、本開示の実施形態を実践するために用いられうる。当業者が同じ化合物を異なる名前で呼びうることが公知であるので、化合物の固有名は例示的なものであることが意図されている。化合物の特定の異性体または鏡像異性体が指定されずに、例えば化学式または化学名などによって、化合物が本明細書に説明される場合、その説明は、説明される化合物の各異性体および鏡像異性体を、個々にまたは任意の組み合わせで含むことが意図されている。
【0107】
本明細書における説明は多くの例示的実施形態を含有するが、これらは、本開示の範囲を限定するものとしてではなく、例証的な実施例を提供するものにすぎないとみなされるべきである。
【0108】
本開示全体にわたるすべての参照物(例えば、発行もしくは付与された特許または同等物を含む特許文書;特許出願公報;および、特許でない文献または他の原資料)は、各参照物が本出願における本開示と少なくとも部分的に矛盾しない程度まで、個々に参照により組み入れられた場合と同様に、その全体が参照により本明細書に組み入れられる(例えば、部分的に矛盾する参照物は、その参照物の、その部分的に矛盾する部分を除いて、参照により組み入れられる)。
【0109】
当業者は、せいぜいルーチンの実験法のみを用いることによって、本明細書に説明する具体的な手技、態様、特許請求の範囲、および実施例に対する多数の同等物を、認識するかまたは確認しうるであろう。そうした同等物は、本開示の範囲内でありかつ添付の特許請求の範囲の対象内であるものとみなされる。概して、本明細書において用いる用語および句は、当業者に公知である標準的なテキスト、雑誌参照物、および文脈を参照することにより見いだされうる、当技術分野において認識されている意味を有する。前述の定義がある場合、その定義は、本開示の文脈における固有の用い方を明らかにするために提供されている。
【0110】
理解されるべき点として、本明細書において値および範囲が提供される場合は、これらの値および範囲によって包含されるすべての値および範囲が本開示の範囲内に包含されるものと意図されている。さらに、これらの範囲内に入るすべての値、ならびに値範囲の上限または下限もまた、本開示によって企図されている。
【0111】
本明細書に引用したすべての特許、特許出願、および刊行物の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0112】
本開示は具体的諸態様への参照を含んでいるが、本開示の真の精神および範囲から逸脱することなく、本開示の他の態様およびバリエーションが当業者によって考案されうることが明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのそうした態様および等価的バリエーションを含むものと解釈されることが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16
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