(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】路面反射式視線誘導装置
(51)【国際特許分類】
E01F 9/615 20160101AFI20221215BHJP
E01F 9/576 20160101ALI20221215BHJP
E01F 9/582 20160101ALI20221215BHJP
E01F 9/608 20160101ALI20221215BHJP
F21V 11/00 20150101ALI20221215BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20221215BHJP
【FI】
E01F9/615
E01F9/576
E01F9/582
E01F9/608
F21V11/00
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2021155510
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591052941
【氏名又は名称】コスモケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】大朏 建治
(72)【発明者】
【氏名】今井 俊行
(72)【発明者】
【氏名】倉本 積児
(72)【発明者】
【氏名】臺越 篤史
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-105894(JP,A)
【文献】特開2020-128684(JP,A)
【文献】特開2021-72242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00-11/00
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の外側線よりも外側に設置され、レーザー光をシート状に出射したラインレーザー光を走行車両の前方斜め上方から走行車両側に向けて道路の路面に照射して路面上に道路長さ方向に沿ってライン標示を行う光源部を備える路面反射式視線誘導装置において、
光源部は、ラインレーザー光を出射するレーザー光発振器を備える本体ケースと、本体ケースの上面及び両側面を覆い且つラインレーザー光の出射方向に延設する庇部とを備え、
レーザー光発振器は、本体ケースの窓部から出射するラインレーザー光をシート状の幅方向を斜め向きに配置し所定の広がり角度で三角形のシート状に出射するように設けられ、
庇部内のラインレーザー光において、シート状の面のうち道路側を向いた面をレーザー光道路向き面とし、シート状の面のうち道路反対側を向いた面をレーザー光道路反対向き面とし、シート状の幅方向端のうち庇部上部側をレーザー光上端とし、
庇部内には、レーザー光道路向き面の側に配置される道路向き側遮光部材と、レーザー光道路反対向き面の側に配置される道路反対向き側遮光部材と、ラインレーザー光を通過させるスリットを有し且つ庇部内を前方から見て庇部内全領域を覆い隠す隠し板とが設けられ、
道路向き側遮光部材は、レーザー光道路向き面に対向し且つ近接する道路向き側遮光面を有し、
道路反対向き側遮光部材は、レーザー光道路反対向き面に対向し且つ近接する道路反対向き側遮光面を有し、
道路向き側遮光部材又は道路反対向き側遮光部材は、隠し板においてスリットを通過するラインレーザー光の出口側の面にスリットに沿って配設され、
隠し板に配設しない道路向き側遮光部材又は道路反対向き側遮光部材には、庇部内を前方から見て庇部内領域の一部を覆い隠す遮光平面が設けられている路面反射式視線誘導装置。
【請求項2】
道路の外側線よりも外側に設置され、レーザー光をシート状に出射したラインレーザー光を走行車両の前方斜め上方から走行車両側に向けて道路の路面に照射して路面上に道路長さ方向に沿ってライン標示を行う光源部を備える路面反射式視線誘導装置において、
光源部は、ラインレーザー光を出射するレーザー光発振器を備える本体ケースと、本体ケースの上面及び両側面を覆い且つラインレーザー光の出射方向に延設する庇部とを備え、
レーザー光発振器は、本体ケースの窓部から出射するラインレーザー光をシート状の幅方向を斜め向きに配置し所定の広がり角度で三角形のシート状に出射するように設けられ、
庇部内のラインレーザー光において、シート状の面のうち道路側を向いた面をレーザー光道路向き面とし、シート状の面のうち道路反対側を向いた面をレーザー光道路反対向き面とし、シート状の幅方向端のうち庇部上部側をレーザー光上端とし、
庇部内には、レーザー光道路向き面の側に配置される道路向き側遮光部材と、レーザー光道路反対向き面の側に配置される道路反対向き側遮光部材とが設けられ、
道路向き側遮光部材は、レーザー光道路向き面に対向し且つ近接する道路向き側遮光面と、レーザー光上端に対向し且つ近接する道路向き側遮光天面と、庇部内を前方から見てレーザー光道路向き面側の道路向き側庇部内領域を覆い隠す道路向き側遮光平面とを有し、
道路反対向き側遮光部材は、レーザー光道路反対向き面に対向し且つ近接する道路反対向き側遮光面と、レーザー光上端に対向し且つ近接する道路反対向き側遮光天面と、庇部内を前方から見てレーザー光道路反対向き面側の道路反対向き側庇部内領域を覆い隠す道路反対向き側遮光平面とを有する路面反射式視線誘導装置。
【請求項3】
請求項1に記載の路面反射式視線誘導装置において、
本体ケースの窓部に近接して配設される道路向き側遮光部材又は道路反対向き側遮光部材には、レーザー光上端に対向し且つ近接する遮光天面が設けられている路面反射式視線誘導装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の路面反射式視線誘導装置において、
道路向き側遮光部材と道路反対向き側遮光部材は、一組となり、ラインレーザー光の出射方向に沿って少なくとも一組以上配設されている路面反射式視線誘導装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の路面反射式視線誘導装置において、
庇部内の先端部には、道路向き側遮光部材が配設されている路面反射式視線誘導装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の路面反射式視線誘導装置において、
道路向き側遮光部材及び道路反対向き側遮光部材には、光反射防止加工又は光吸収加工が施されている路面反射式視線誘導装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方から道路の路面に向けてラインレーザー光を照射してライン標示を行う路面反射式視線誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路面反射式視線誘導装置は、光源部を道路脇に立設した支柱に設置し、この光源部によりシート状のラインレーザー光を上方から道路の路面に照射して反射させ、道路の外側線に沿ったライン標示を行うことにより、積雪時等の視程障害時でも車両運転者に道路の外側線を認識させるものである。従来、路面反射式視線誘導装置において、光源部は、ラインレーザー光を走行車両の前方斜め上方から走行車両側に向けて道路の路面に照射することで、走行車両側へのラインレーザー光の反射光量を多くすることができ、レーザー光出力を高くしなくても、車両運転者は、遠くからでもライン標示を明るく明瞭に見ることができるという技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
前記路面反射式視線誘導装置では、光源部は、道路の外側から道路の路面上にラインレーザー光を照射するので、光源部からのラインレーザー光の直接光が道路(車道)を走行する車両の運転者の目に直射されることはない。一方、ラインレーザー光の反射光や散乱光等の間接的な光は、車両運転者は見ることができ、例えば、光源部からシート状に出射されるラインレーザー光が霧などで反射及び散乱して光の壁のように見え、道路の側端が一層明瞭に認識できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の路面反射式視線誘導装置では、光源部のラインレーザー光の出射方向が走行車両側に向けられているため、光源部でのラインレーザー光の反射光や散乱光等の間接的な光によって光源部が光っているように車両運転者に見えてしまう(
図6(B)参照)。道路を走行する車両の運転者には、余分な光が見えないようにすることで、さらなる安全性の向上を図ることが要望され得る。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、走行車両の運転者には光源部が光って見えることがないようにする路面反射式視線誘導装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
路面反射式視線誘導装置は、
道路の外側線よりも外側に設置され、レーザー光をシート状に出射したラインレーザー光を走行車両の前方斜め上方から走行車両側に向けて道路の路面に照射して路面上に道路長さ方向に沿ってライン標示を行う光源部を備える路面反射式視線誘導装置において、
光源部は、ラインレーザー光を出射するレーザー光発振器を備える本体ケースと、本体ケースの上面及び両側面を覆い且つラインレーザー光の出射方向に延設する庇部とを備え、
レーザー光発振器は、本体ケースの窓部から出射するラインレーザー光をシート状の幅方向を斜め向きに配置し所定の広がり角度で三角形のシート状に出射するように設けられた構成を備えている。
【0008】
本発明に係る路面反射式視線誘導装置の一形態は、
前記路面反射式視線誘導装置において、
庇部内のラインレーザー光において、シート状の面のうち道路側を向いた面をレーザー光道路向き面とし、シート状の面のうち道路反対側を向いた面をレーザー光道路反対向き面とし、シート状の幅方向端のうち庇部上部側をレーザー光上端とし、
庇部内には、レーザー光道路向き面の側に配置される道路向き側遮光部材と、レーザー光道路反対向き面の側に配置される道路反対向き側遮光部材と、ラインレーザー光を通過させるスリットを有し且つ庇部内を前方から見て庇部内全領域を覆い隠す隠し板とが設けられ、
道路向き側遮光部材は、レーザー光道路向き面に対向し且つ近接する道路向き側遮光面を有し、
道路反対向き側遮光部材は、レーザー光道路反対向き面に対向し且つ近接する道路反対向き側遮光面を有し、
道路向き側遮光部材又は道路反対向き側遮光部材は、隠し板においてスリットを通過するラインレーザー光の出口側の面にスリットに沿って配設され、
隠し板に配設しない道路向き側遮光部材又は道路反対向き側遮光部材には、庇部内を前方から見て庇部内領域の一部を覆い隠す遮光平面が設けられている。
【0009】
本発明に係る路面反射式視線誘導装置の他の形態は、
前記路面反射式視線誘導装置において、
庇部内のラインレーザー光において、シート状の面のうち道路側を向いた面をレーザー光道路向き面とし、シート状の面のうち道路反対側を向いた面をレーザー光道路反対向き面とし、シート状の幅方向端のうち庇部上部側をレーザー光上端とし、
庇部内には、レーザー光道路向き面の側に配置される道路向き側遮光部材と、レーザー光道路反対向き面の側に配置される道路反対向き側遮光部材とが設けられ、
道路向き側遮光部材は、レーザー光道路向き面に対向し且つ近接する道路向き側遮光面と、レーザー光上端に対向し且つ近接する道路向き側遮光天面と、庇部内を前方から見てレーザー光道路向き面側の道路向き側庇部内領域を覆い隠す道路向き側遮光平面とを有し、
道路反対向き側遮光部材は、レーザー光道路反対向き面に対向し且つ近接する道路反対向き側遮光面と、レーザー光上端に対向し且つ近接する道路反対向き側遮光天面と、庇部内を前方から見てレーザー光道路反対向き面側の道路反対向き側庇部内領域を覆い隠す道路反対向き側遮光平面とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る路面反射式視線誘導装置によれば、光源部におけるラインレーザー光の反射光や散乱光等の間接的な光が拡散して広がることを抑制でき、且つ、道路側へ光漏れすることを抑制できる。従って、走行車両の運転者には、光源部が光って見えないようにすることができる。よって、走行車両の運転者に対して、光源部が光っているという余分な光を見えなくすることで、さらなる安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】路面反射式視線誘導装置の設置状態を示す斜視図である。
【
図2】実施形態1の路面反射式視線誘導装置における光源部の内部を斜め下から見た状態を示す斜視図である。
【
図3】実施形態1の路面反射式視線誘導装置における光源部の内部構造を示す断面図である。
【
図4】庇部内を光源部の前方から見た正面図であり、同図(a)は庇部内の部材を省略した正面図、同図(b)は庇部内の部材を現した正面図である。
【
図5】道路向き側遮光部材、道路反対向き側遮光部材、隠し板を示した斜視図である。
【
図6】路面反射式視線誘導装置の光源部について走行車両の運転者が前方を見ている状態での見え方を示す模式図であり、同図(A)は、本発明の光源部(光源部が光って見えない)、同図(B)は、従来例の光源部(光源部が光って見える)を示す模式図である。
【
図7】実施形態2の路面反射式視線誘導装置における光源部の内部を斜め下から見た状態を示す斜視図である。
【
図8】実施形態2の路面反射式視線誘導装置において庇部内を光源部の前方から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1の路面反射式視線誘導装置1は、光源部10が道路Rの外側線R2よりも外側の道路脇に立設する支柱Pに設置され、上方の光源部10から下方の道路Rの路面R1に向けてラインレーザー光Lを照射し路面R1に反射させ、道路Rの外側線R2に沿ったライン標示L1を投影するものである。光源部10は、ラインレーザー光Lを車両Mの進行方向と逆方向(走行車両M側)の斜め下方に照射してライン標示L1を行うように設置されている。これにより、走行する車両Mの前面側に対して路面R1から反射するラインレーザー光Lの反射光量を多くでき、車両Mの運転者には遠くからでもライン標示L1を明るく見せることができる。
【0013】
路面反射式視線誘導装置1は、光源部10と、太陽光パネル11と、制御箱12とを備えている。制御箱12には、光源部10から出射するラインレーザー光Lを点滅又は点灯するように制御する制御回路(不図示)や太陽光パネル11で発電した電気エネルギーを充電する蓄電池(不図示)が収容されている。光源部10の電源は、太陽光パネル11及び蓄電池による太陽光利用のものであるが、商用電源等を用いてもよい。
【0014】
図2、
図3に示すように、光源部10は、ラインレーザー光Lを出射するレーザー光発振器21と、レーザー光発振器21を収容する本体ケース2と、本体ケース2に上方から被せて一体化された庇部3とを備えている。
【0015】
レーザー光発振器21は、円柱状に形成されたものであり、円柱軸線を光軸として円柱先端の出射面を透過して前方へ所定の広がり角度αで三角形に広がるシート状のラインレーザー光Lが出射される(
図3参照)。ラインレーザー光Lは、レーザー光発振器21内においてレーザー素子から出力されるレーザー光を光学系(レンズ)の設定によって形成されている。レーザー光発振器21は、およそ400nm~700nmの波長範囲内の可視光レーザーであり、赤、青、黄、緑などの様々な発光色のものを用いることができ、好ましくは、緑色の可視光レーザーが用いられる。なお、レーザー光発振器21から出射されるラインレーザー光Lは、広がり角度αの範囲内で設定出力値のレーザー光が出射されるが、広がり角度αより少し広い角度範囲でも設定出力値よりも低い出力値のレーザー光が出射されている場合がある。レーザー光は、指向性が高いため、直接光はラインレーザー光Lの出射範囲内に目線を置かない限り見えないが、出射範囲周辺の物質、物体等による反射光や散乱光等の間接光はラインレーザー光Lの出射範囲外からでも見える。本実施形態では、車両運転者が見る路面R1上のライン標示L1は、光源部10から出射されたラインレーザー光Lが路面R1に反射した反射光である。
【0016】
本体ケース2は、前面部22が下向きの傾斜面となった略四角形箱形に形成され、樹脂又は金属製で形成できるが、光源部10の軽量化や低コスト化等のために樹脂製とするのが好ましい。なお、本体ケース2の前面部22は、下向き傾斜面に形成して着雪、埃の付着等を防止させているが、下向き傾斜面に限らず、垂直面等でもよい。本体ケース2内には、レーザー光発振器21が横置き状態に固定され、本体ケース2の前面部22には、略中央部にレーザー光発振器21からのラインレーザー光Lを透過して出射させる窓部23が設けられている。レーザー光発振器21は、窓部23から出射するラインレーザー光Lを、シート状の幅方向を斜め向きに配置し所定の広がり角度αで三角形のシート状に出射するように本体ケース2内に設けられている。窓部23は、前面部22に設けた透明樹脂シート板又は透明ガラス板等で成形することができる。
【0017】
庇部3は、断面逆U字状の長尺な構造物により形成され、樹脂又は金属等で形成できるが、光源部10の軽量化や低コスト化等のために樹脂製とするのが好ましい。庇部3は、本体ケース2の上面部及び左右の側面部を覆い、ラインレーザー光Lの出射方向に延ばすように本体ケース2の前方に向かって延設されている。なお、庇部3は、窓部23から出射するラインレーザー光Lを遮らない形状であれば、逆U字状に限らず、三角屋根状、衝立状、四角形筒状など、様々な形状とすることができる。、
【0018】
次に、走行車両Mの運転者に対して、光源部10が光って見えることがないようにするための構成を説明する。なお、
図4(a)を参照して、庇部3内のラインレーザー光Lにおいて、シート状の面のうち道路側を向いた面をレーザー光道路向き面Aとし、シート状の面のうち道路反対側を向いた面をレーザー光道路反対向き面Bとし、シート状の幅方向端のうち庇部3上部側をレーザー光上端Cとする。また、庇部3内の領域として、ラインレーザー光Lを境界にして、レーザー光道路向き面A側の庇部内領域を道路向き側庇部内領域aとし、ラインレーザー光Lのレーザー光道路反対向き面B側の庇部内領域を道路反対向き側庇部内領域bとする。
【0019】
図2、
図3、
図4(b)に示すように、実施形態1では、庇部3内には、レーザー光道路向き面A側に配置される道路向き側遮光部材5と、レーザー光道路反対向き面B側に配置される道路反対向き側遮光部材6と、ラインレーザー光Lを通過させるスリット71を有し且つ庇部3内を前方から見て庇部3内全領域を覆い隠す隠し板7とが設けられている。なお、庇部3内において、道路向き側遮光部材5、道路反対向き側遮光部材6、隠し板7は、様々な方法で設置することができ、例えば、庇部3内面の上部に庇部3の長手方向に延びるレールを設置して、このレールに取り付けるようにしてもよい。
【0020】
道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6とは、ラインレーザー光Lを形成するシート状光のシート面(A,B)を挟んで出射方向にずらして平行に重なり合わないように交互に配設されている。庇部3内の先端部には、道路向き側遮光部材5が位置するように配設される。なお、
図3では、紙面上、道路向き側遮光部材5は、ラインレーザー光Lの後ろ側に位置し、道路反対向き側遮光部材6は、ラインレーザー光Lの手前側に位置していること示す。庇部3の先端部の道路向き側遮光部材5との関係を除き、道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6とは、ラインレーザー光Lの出射方向に対して、互いの前後端部が重なることなく近接或いは一致するように配設されているが、ラインレーザー光Lが乱反射等を起こさない適切な間隔を空けて配設されてもよい。なお、実施形態1では、庇部3の先端部の道路向き側遮光部材5とこれに最も近くに配置する道路反対向き側遮光部材6とは離れて配設されているが、これらの間隔も互いの前後端部が重なることなく近接或いは一致するように配設されてもよい。また、道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6は、ラインレーザー光Lが乱反射等を起こさない表面を有する場合は、道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6を平行に重なり合うように配設されてもよい。
【0021】
道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6は、これを一組のペアとし、ラインレーザー光Lの出射方向に沿って少なくとも一組以上配設される。なお、道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6の組の集合体の先頭側(庇部3先端側)又は後尾側(庇部3基端側)に道路向き側遮光部材5又は道路反対向き側遮光部材6が並設されてもよい。実施形態1では、庇部3の先端側から基端側に向かって(あるいは庇部3の基端側から先端側に向かって)、道路向き側遮光部材5、道路反対向き側遮光部材6、道路向き側遮光部材5、道路反対向き側遮光部材6、道路向き側遮光部材5の順に配設されている。すなわち、道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6の組が二組配設され、この二組の集合体の先頭側又は後尾側に道路向き側遮光部材5が並設されている。
【0022】
道路向き側遮光部材5は、庇部3内でラインレーザー光Lのレーザー光道路向き面Aが向いている道路向き側庇部内領域aに配設され、道路反対向き側遮光部材6は、庇部3内でラインレーザー光Lのレーザー光道路反対向き面Bが向いている道路反対向き側庇部内領域bに配設されている。道路向き側遮光部材5及び道路反対向き側遮光部材6は、各々の設置位置において所定の広がり角度αで出射されているラインレーザー光Lのシート状の幅と略同一幅又は幅広に形成されている。
【0023】
道路向き側遮光部材5は、本体ケース2の窓部23に近接して配設された道路向き側遮光部材5を除いて、D形筒体によって構成されている。
図5(a)を参照して、D形筒体の道路向き側遮光部材5は、四角形平面状の道路向き側遮光面51と、庇部3の内面に沿って湾曲する曲面54と、道路向き側遮光面51及び曲面54を連設するD平面状の道路向き側遮光平面53とを有する。D形筒体の道路向き側遮光部材5が庇部3内に設置された状態では、道路向き側遮光面51は、ラインレーザー光Lのレーザー光道路向き面Aに対向し且つ近接して配置され、ラインレーザー光Lが道路向き側庇部内領域aへ散乱、反射等することを防止する。道路向き側遮光平面53は、庇部3内を前方から見てレーザー光道路向き面A側の道路向き側庇部内領域aを覆い隠すように配置され、道路向き側庇部内領域aで庇部3の先端から外部へ光漏れすることを防止する。
【0024】
窓部23に近接して配設される道路向き側遮光部材5は、
図5(b)を参照して、上部で折れ曲がったL形の平板部材により形成され、本体ケース2の前面部22に配設される支持板4の前面に設けられている。支持板4には、所定の広がり角度αのラインレーザー光Lを全通過させる矩形の縦長のスリット41が設けられており、このスリット41の外周に沿ってL形の道路向き側遮光部材5が設けられている。L形の道路向き側遮光部材5は、上下方向に延在する側部がレーザー光道路向き面Aに対向し且つ近接する道路向き側遮光面51を構成し、左右方向に延在する上部がラインレーザー光Lのレーザー光上端Cに対向し且つ近接する道路向き側遮光天面52を構成する。この道路向き側遮光天面52は、
図5(b)を参照して、前方へ向かうに従って上方に傾斜した傾斜面となっているので、所定の広がり角度αで出射されるラインレーザー光Lのレーザー光上端Cに沿って近接して配置される。道路向き側遮光天面52によって、レーザー光発振器21から出射されるラインレーザー光Lの所定の広がり角度αよりも広い角度範囲において出射されてしまう低出力のラインレーザー光部分による散乱光や反射光等の広がりを良好に抑制できる。すなわち、L形の道路向き側遮光部材5は、庇部3の上部側に対応するラインレーザー光Lのレーザー光上端Cを囲うことで、広がり角度αの外側の低出力のラインレーザー光部分が庇部3上部の内面等によって反射したり散乱されたり等することを防止できる。
【0025】
道路反対向き側遮光部材6は、
図5(c)を参照して、道路反対向き側遮光面61を有する平板部材により形成され、隠し板7の前面に設けられている。隠し板7は、庇部3の断面形状に一致した形状及び大きさを有し、所定の広がり角度αのラインレーザー光Lを全通過させる矩形の縦長のスリット71が設けられており、このスリット71の外周に沿って道路反対向き側遮光部材6が設けられている。実施形態1では、隠し板7は、2つ設置されており、各隠し板7のスリット71は、庇部3の先端側に配置される隠し板7ほど長く形成されており、各隠し板7の設置位置におけるスリット71は、所定の広がり角度αで出射されているラインレーザー光Lを必要量通過させるスリット長さに形成されている。なお、スリット71は、広がり角度α分のラインレーザー光Lを全通過させるスリット長さであってもよい。また、スリット71の下端部は、庇部3の開放側である隠し板7の下端部に開口した形状でもよい。
【0026】
隠し板7とともに道路反対向き側遮光部材6が庇部3内に設置された状態では、道路反対向き側遮光部材6の道路反対向き側遮光面61は、ラインレーザー光Lのレーザー光道路反対向き面Bに対向し且つ近接して配置され、ラインレーザー光Lが道路反対向き側庇部内領域bへ散乱、反射等することを防止する。隠し板7は、庇部3内を前方から見て庇部3内全領域を覆い隠すように配置され、庇部3内でのラインレーザー光Lの反射光や散乱光等を光源部10の前方から見えないように隠すことができる。従って、庇部3内で散乱、反射等した光が庇部3の先端部からの光漏れを抑制できる。
【0027】
また、隠し板7の前面には、スリット71に沿って道路反対向き側遮光部材6を配設することで、スリット71出口でのラインレーザー光Lの回折による回折光の広がりを抑制できる。これにより、隠し板7のスリット71出口でのラインレーザー光Lの回折光が庇部3の内面等によって反射したり散乱されたり等することを抑制できる。支持板4のスリット41出口側でも、L形の道路向き側遮光部材5によってスリット41出口でのラインレーザー光Lの回折光の広がりを抑制できる。
【0028】
また、道路向き側遮光部材5、道路反対向き側遮光部材6及び隠し板7における表面には、光反射防止加工又は光吸収加工(不図示)が施されている。これにより、道路向き側遮光部材5、道路反対向き側遮光部材6及び隠し板7でのラインレーザー光Lの反射や散乱等を抑制できる。
【0029】
以上の構成を備えた実施形態1の路面反射式視線誘導装置1によれば、道路向き側遮光部材5及び道路反対向き側遮光部材6によって、庇部3内におけるラインレーザー光Lの反射光や散乱光等の間接的な光が庇部3内で拡散して広がることを抑制できる。この場合、道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6をラインレーザー光Lのシート状の面A,Bを挟んで出射方向にずらして重なり合わないように交互に配設することで、道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6を平行に重なり合うように配設する場合に比べ、道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6との間でラインレーザー光Lの反射を繰り返すことを少なくすることができる。なお、道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6を平行に重なり合うように配設する場合でも、道路向き側遮光部材5及び道路反対向き側遮光部材6の表面に光反射防止加工又は光吸収加工を施すことで、道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6との間でのラインレーザー光Lの反射の繰り返しを低減できる。
【0030】
庇部3の先端部に設けた道路向き側遮光部材5によって、庇部3内でのラインレーザー光Lの反射光や散乱光等が庇部3の先端から道路方向(車両Mが走行する道路R側)へ光漏れすることを防止できる。
【0031】
また、隠し板7によって、庇部3内でのラインレーザー光Lの反射光や散乱光等を光源部10の前方から見えないように隠して庇部3の先端からの光漏れを抑制できる。D形筒体の道路向き側遮光部材5の道路向き側遮光平面53によっても、道路向き側庇部内領域aでのラインレーザー光Lの反射光や散乱光等を光源部10の前方から見えないように隠して庇部3の先端からの光漏れを抑制できる。
【0032】
以上より、ラインレーザー光Lの反射光や散乱光等が庇部3内で拡散して広がることを確実に抑制でき、光源部10を正面(庇部3の先端配置面)から見た場合に光源部10が光って見える視野範囲を狭めることができる。従って、庇部3から道路方向への光漏れが確実に防止でき、道路Rを走行する車両M(左ハンドル車も含む。)の運転者において、路面反射式視線誘導装置1の光源部10が視界の斜め上に入っても、光源部10が光って見えないようにすることができる。すなわち、
図6(B)に示す従来の路面反射式視線誘導装置では、車両運転者からは光源部100が光って見えるが、
図6(A)に示す本発明(実施形態1)の路面反射式視線誘導装置1では、車両運転者からは光源部10が光って見えない。よって、道路Rを走行する車両Mの運転者に対して、光源部10が光っているという余分な光を見えなくすることで、さらなる安全性の向上を図ることができる。
【0033】
(変形例)
なお、実施形態1では、道路向き側遮光部材5をD形筒体で形成し、道路反対向き側遮光部材6を平板部材で形成するが、道路向き側遮光部材5は道路向き側遮光面51を有し、道路反対向き側遮光部材6は道路反対向き側遮光面61を有するものである限り、道路向き側遮光部材5及び道路反対向き側遮光部材6は、様々な形状の部材で形成することができる。
道路向き側遮光部材5は、道路向き側遮光平面53を有しない平板部材等で形成してもよい。
隠し板7には、道路反対向き側遮光部材6に代えて、道路向き側遮光部材5を設けてもよい。
道路反対向き側遮光部材6は、道路反対向き側庇部内領域bを覆い隠す道路反対向き側遮光平面を有してもよい。
道路反対向き側遮光部材6は、隠し板7に設けることなく独立に設けられたものでもよい。
【0034】
(実施形態2)
実施形態2では、
図7、
図8に示すように、庇部3内の先端側に道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6のペアの1組が配設され、庇部3内の基端側に本体ケース2の窓部23に近接して道路向き側遮光部材5が配設されている。なお、庇部3の先端部には、道路向き側遮光部材5が位置するように配設される。道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6とは、ラインレーザー光Lの出射方向に対して、互いが平行に重なることなく、ラインレーザー光Lが乱反射等を起こさない適切な間隔を空けて配設されている。なお、道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6の組は、1組に限らず複数組配設されていてもよい。また、道路向き側遮光部材5と道路反対向き側遮光部材6の組の集合体の先頭側(庇部3先端側)又は後尾側(庇部3基端側)に道路向き側遮光部材5又は道路反対向き側遮光部材6が並設されてもよい。
【0035】
実施形態2における道路向き側遮光部材5は、レーザー光道路向き面Aに対向し且つ近接する直線状平面の道路向き側遮光面51と、ラインレーザー光Lのレーザー光上端Cに対向し且つ近接する道路向き側遮光天面52と、庇部3内を前方から見て道路向き側庇部内領域aを覆い隠す略D平面状の道路向き側遮光平面53とを有する。道路反対向き側遮光部材6は、レーザー光道路反対向き面Bに対向し且つ近接する直線状平面の道路反対向き側遮光面61と、ラインレーザー光Lのレーザー光上端Cに対向し且つ近接する道路反対向き側遮光天面62と、庇部3内を前方から見て道路反対向き側庇部内領域bを覆い隠す略三角形平面状の道路反対向き側遮光平面63とを有する。道路向き側遮光平面53と道路反対向き側遮光平面63との1組によって、前記実施形態1の隠し板7と同様の機能を果たす。また、道路向き側遮光部材5及び道路反対向き側遮光部材6には、遮光天面52,62を有するので、これら遮光天面52,62によって、ラインレーザー光Lにおける広がり角度αの上部外側の低出力のラインレーザー光部分が庇部3上部の内面等によって反射したり散乱されたり等することを防止できる。なお、遮光天面52,62は、前後方向に水平な平面に限らず、前方へ向かうに従って上方に傾斜した傾斜面とすることができる。遮光天面52,62を傾斜面とすることで、所定の広がり角度αで出射されるラインレーザー光Lのレーザー光上端Cに沿って近接して配置され、レーザー光発振器21から出射されるラインレーザー光Lの所定の広がり角度αよりも広い角度範囲において出射されてしまう低出力のラインレーザー光部分による散乱光や反射光等の広がりを良好に抑制できる。
【0036】
実施形態2によっても、庇部3内でラインレーザー光Lの反射光や散乱光等が拡散して広がることを確実に抑制でき、光源部10を正面(庇部3の先端配置面)から見た場合に光源部10が光って見える視野範囲を狭めることができる。従って、庇部3から道路方向への光漏れが確実に防止でき、道路Rを走行する車両M(左ハンドル車も含む。)の運転者において、路面反射式視線誘導装置1の光源部10が視界の斜め上に入っても、光源部10が光って見えないようにすることができる。なお、実施形態2における上述以外の構成及び作用効果は、前記実施形態1での説明が援用される。
【0037】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で様々な変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 路面反射式視線誘導装置
2 本体ケース
3 庇部
4 支持板
5 道路向き側遮光部材
6 道路反対向き側遮光部材
7 隠し板
10 光源部
11 太陽光パネル
12 制御箱
21 レーザー光発振器
22 前面部
23 窓部
41 スリット
51 道路向き側遮光面
52 道路向き側遮光天面
53 道路向き側遮光平面
54 曲面
61 道路反対向き側遮光面
62 道路反対向き側遮光天面
63 道路反対向き側遮光平面
71 スリット
A レーザー光道路向き面
B レーザー光道路反対向き面
C レーザー光上端
a 道路向き側庇部内領域
b 道路反対向き側庇部内領域
L ラインレーザー光
L1 ライン標示
M 車両
P 支柱
R 道路
R1 路面
R2 外側線
α 広がり角度
【要約】 (修正有)
【課題】走行車両の運転者には光源部が光って見えないようにする路面反射式視線誘導装置を提供する。
【解決手段】路面反射式視線誘導装置はラインレーザー光を路面に照射しライン標示を行う光源部10を備える。光源部は、レーザー光発振器21を備える本体ケース2、本体ケースを覆う庇部3を備える。庇部内には道路向き側遮光部材5、道路反対向き側遮光部材6、隠し板7が設けられる。隠し板7は、ラインレーザー光を通過させるスリット71を有し且つ庇部内を前方から見て庇部内全領域を覆い隠す。道路向き側遮光部材5は、レーザー光道路向き面Aに対向し近接する道路向き側遮光面、道路向き側庇部内領域を覆い隠す道路向き側遮光平面を有する。道路反対向き側遮光部材6は、レーザー光道路反対向き面Bに対向し近接する道路反対向き側遮光面を有する。
【選択図】
図2