(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】水検知センサ及びこれに用いる水電池並びに冠水検知方法
(51)【国際特許分類】
G01F 23/00 20220101AFI20221215BHJP
G01F 23/24 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G01F23/00 D
G01F23/24 Z
(21)【出願番号】P 2021177111
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】300076736
【氏名又は名称】ニタコンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藝 浩資
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特公昭51-4785(JP,B1)
【文献】実開昭51-54690(JP,U)
【文献】特開2020-201132(JP,A)
【文献】特開2021-82919(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113037136(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F23/00-23/80
G08C13/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を感知するための水検知センサであって、
乾電池である第一電池と、
前記第一電池で駆動される制御回路と、
前記第一電池で駆動される、外部に対し無線で通信を行うための通信部と、
水と反応して起電力を発する水電池と、
を備える水検知センサであって、
前記制御回路は、
前記水電池が所定値以上の起電力を発生しない場合に、前記通信部で第一検出周期で、正常情報を発信し、
前記水電池が冠水して発生した起電力に応答して、前記通信部で前記第一検出周期よりも短い第二周期で、異常情報を発信するよう構成してなる水検知センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の水検知センサであって、
前記所定値が、0.5Vである水検知センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水検知センサであって、
第一検出周期が、30分以上である水検知センサ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の水検知センサであって、
前記第一電池が、ボタン電池である水検知センサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の水検知センサであって、さらに、
前記水電池を収納した電池ケースを備えてなる水検知センサ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の水検知センサであって、さらに、
前記水電池を、前記制御回路と接続されたケーブルに着脱自在に接続する防水コネクタを備えてなる水検知センサ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の水検知センサであって、さらに、
前記水電池が、冠水の有無を検知したい場所に固定するための冠水固定具を備えてなる水検知センサ。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の水検知センサであって、さらに、
前記水電池が、漏水の有無を検知したい場所に固定するための漏水固定具を備えてなる水検知センサ。
【請求項9】
水を感知して異常を発信する水検知システムであって、
互いに異なる位置に配置された複数の、請求項1~6のいずれか一項に記載の水検知センサと、
前記複数の水検知センサと、無線で接続され、外部とデータ通信可能なゲートウェイと、
を備え、
前記ゲートウェイは、複数の水検知センサの異常信号又は正常信号を外部に送信するよう構成してなる水検知システム。
【請求項10】
水を感知する方法であって、
水と反応して起電力を発生可能な水電池を、冠水又は漏水を検知したい場所に配置した状態で、起電力の発生を監視する工程と、
前記水電池が水と反応せず起電力を発生しない状態で、乾電池である第一電池で駆動される通信部が、第二周期で外部に対し無線で通信を行う工程と、
前記水電池が水と反応して起電力を発生させることを検出すると、前記通信部が、前記第二周期よりも短い第一周期で外部に対し無線で通信を行う工程と、
を含む水検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水検知センサ及びこれに用いる水電池並びに冠水検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の異常気象等に起因すると思われる集中豪雨やゲリラ豪雨といった大雨では、河川の氾濫等による洪水により、広い範囲で冠水する被害が相次いでいる。また、短時間の局地的大雨により、雨量が一時的に河川の氾濫危険水位を超え、一過性の洪水となって被害が生じる場合も少なくない。このような場合、大雨や洪水の注意報や警報が発表されない段階で突発的な増水となって、水が河川から溢れ出し、低い土地や道路が至る所で冠水してしまうことがある。その結果、近隣の住民は急な状況変化に対応できずに様々な被害が引き起こされる。特に近年では、今まで冠水等が発生していなかった地域でも、突発的に大洪水が発生し、甚大な被害が引き起こされる場合も少なくない。このような背景から、豪雨時の浸水情報をリアルタイムで監視し、浸水情報を素早く正確に伝達する必要性が高くなってきている。
【0003】
このような豪雨時の浸水の状況を把握する一例として、冠水の有無や水位の上昇を検知し危険性を報知する冠水センサが提案されている(特許文献1)。また、このような水位計の電源として、電池を用いるものが提案されている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、電池駆動式の水位計では、常時動作させていることから、電池の持続性の問題があった。すなわち、水位や冠水を一定周期で検出するため、電池を常時消耗し、定期的に電池を交換する必要が生じる。また、電池交換の頻度を少なくするためには、電力消費を抑える必要があり、具体的には水位や冠水を検出する周期を長くすることが考えられる。しかしながら、検出周期を長くすれば、水位や冠水の検出のタイムラグも長くなる。例えば1日1回や1時間に一回といった周期で検出する冠水センサでは、時々刻々と変化する浸水の様子をリアルタイムに検出することが困難となる。特に近年では、ゲリラ豪雨のような短時間で急激に水位が上昇する冠水被害が多く報告されており、このような事態にも対応できる冠水センサが求められている。かといって検出周期を短くすれば、それだけ電力消費が多くなるため、寿命が短くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-189506号公報
【文献】特開2018-189505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一は、冠水時の検出周期を短くして精度を高めつつ、電力消費を抑えた冠水センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の第1の側面に係る水検知センサによれば、水を感知するための水検知センサであって、乾電池である第一電池と、前記第一電池で駆動される制御回路と、前記第一電池で駆動される、外部に対し無線で通信を行うための通信部と、水と反応して起電力を発する水電池と、を備える水検知センサであって、前記制御回路は、前記水電池が所定値以上の起電力を発生しない場合に、前記通信部で第一検出周期で、正常情報を発信し、前記水電池が冠水して発生した起電力に応答して、前記通信部で前記第一検出周期よりも短い第二周期で、異常情報を発信するよう構成できる。上記構成により、乾電池の第一電池を用いて通信を行うことで、水電池そのもので駆動する水検知センサと比べて安定的な動作が可能となる。一方で、平常時の第一検出周期を長めに設定することで第一電池の消耗を抑制しつつ、異常時にはより高頻度の第二周期に切り換えることで、精度よく冠水や漏水のモニタリングが行える。このように水電池をトリガとしてサンプリング周期を密に変更することで、水電池の起電力の変動による電力供給の不安定化を排除し、安定的な動作が可能となる。
【0008】
また、本発明の第2の側面に係る水検知センサによれば、上記構成において、前記所定値を0.5Vと設定できる。
【0009】
さらに、本発明の第3の側面に係る水検知センサによれば、上記いずれかの構成において、第一検出周期を30分以上とすることができる。
【0010】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る水検知センサによれば、上記いずれかの構成において、前記第一電池を、ボタン電池で構成できる。上記構成により、ボタン電池を用いて高出力通信が実現できるため、水電池で駆動する場合と比べて安定した動作が行えることに加え、通信距離も伸ばすことができる。
【0011】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る水検知センサによれば、上記いずれかの構成において、さらに、前記水電池を収納した電池ケースを備えることができる。
【0012】
さらにまた、本発明の第6の側面に係る水検知センサによれば、上記いずれかの構成において、さらに、前記水電池を、前記制御回路と接続されたケーブルに着脱自在に接続する防水コネクタを備えることができる。上記構成により、水電池を制御回路とを着脱式とし、電気接続の防水構造を維持しながらも交換を容易に行える利点が得られる。
【0013】
さらにまた、本発明の第7の側面に係る水検知センサによれば、上記いずれかの構成において、さらに、前記水電池が、冠水の有無を検知したい場所に固定するための冠水固定具を備えることができる。上記構成により、冠水を検知したい場所に水検知センサを設置して、水検知センサを用いた冠水のモニタリングが可能となる。
【0014】
さらにまた、本発明の第8の側面に係る水検知センサによれば、上記いずれかの構成において、さらに、前記水電池が、漏水の有無を検知したい場所に固定するための漏水固定具を備えることができる。上記構成により、漏水を検知したい場所に水検知センサを設置して、水検知センサを用いた漏水のモニタリングが可能となる。
【0015】
さらにまた、本発明の第9の側面に係る水検知システムによれば、水を感知して異常を発信する水検知システムであって、互いに異なる位置に配置された複数の、上記いずれかの構成に係る水検知センサと、前記複数の水検知センサと無線で接続され、外部とデータ通信可能なゲートウェイとを備え、前記ゲートウェイは、複数の水検知センサの異常信号又は正常信号を外部に送信するよう構成できる。
【0016】
さらにまた、本発明の第10の側面に係る水検知方法によれば、水を感知する方法であって、水と反応して起電力を発生可能な水電池を、冠水又は漏水を検知したい場所に配置した状態で、起電力の発生を監視する工程と、前記水電池が水と反応せず起電力を発生しない状態で、乾電池である第一電池で駆動される通信部が、第二周期で外部に対し無線で通信を行う工程と、前記水電池が水と反応して起電力を発生させることを検出すると、前記通信部が、前記第二周期よりも短い第一周期で外部に対し無線で通信を行う工程とを含むことができる。これにより、乾電池の第一電池を用いて通信を行うことで、水電池そのもので駆動する水検知センサと比べて安定的な動作が可能となる。一方で、平常時の第一検出周期を長めに設定することで第一電池の消耗を抑制しつつ、異常時にはより高頻度の第二周期に切り換えることで、精度よく冠水や漏水のモニタリングが行える。このように水電池をトリガとしてサンプリング周期を密に変更することで、水電池の起電力の変動による電力供給の不安定化を排除し、安定的な動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態1に係る水検知システムを示す斜視図である。
【
図2】
図1の水検知センサを示すブロック図である。
【
図3】
図2の水検知センサで検出周期を切り換える様子を示すブロック図である。
【
図4】
図2の水検知センサを複数用いて構築した水検知システムを示すブロック図である。
【
図5】変形例に係る水検知システムを示すブロック図である。
【
図6】変形例に係る水検知センサを示すブロック図である。
【
図7】他の変形例に係る水検知センサを示すブロック図である。
【
図8】
図7の水検知システムを設置する一例を示す斜視図である。
【
図10】水電池を冠水固定具で検知部位に固定する様子を示す分解斜視図である。
【
図11】水電池を制御ユニットに接続する様子を示す分解斜視図である。
【
図12】水電池を漏水固定具で検知部位に固定する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(水検知センサ)
【0019】
本発明の実施形態に係る水検知センサは、水を検知するセンサであり、冠水や漏水の検出に利用できる。例えば、河川の付近や町中の交差点など、ゲリラ豪雨や河川の氾濫などによって冠水が発生していることを検知したい部位に、それぞれ配置して、冠水の発生を検知できる。特に、複数の水検知センサを広い領域内に離散的に配置し、各水検知センサ毎に冠水の有無を発信することで、地域内で冠水の発生している領域をリアルタイムで把握できるようになる。また、同じ部位で異なる高さに水検知センサを配置することで、水位の把握も可能となる。一例として、冠水を検知したい部位の壁面に電池ケース10を固定し、さらにこれよりも高い位置に制御ユニット3を固定した例を、
図1に示す(詳細は後述)。制御ユニット3は、電柱やカーブミラー等、既存の部材を利用して高所に固定できる。このように水検知センサを、河川沿い、道路沿い、水路や樋門近辺等、大雨による増水等を感知しようとする場所に設置し、冠水が発生した際に水を感知したことを発信し、冠水の状況を遠隔で把握して、浸水エリアのリアルタイム補足や避難経路の指示に役立てることができる。また、開放された場所だけでなく、例えば下水道内やマンホール、道路側溝内などのある程度閉じられた空間でも使用することができる。
【0020】
あるいは、水検知センサを漏水の検知に用いてもよい。漏水の検知は、例えば水道管の破裂や、貯水タンクの漏水などに利用できる。特に、日常的に検査し難い、あるいは目視で確認し難い部位に有効となる。例えば土中に埋設した上下水道管や、山中に配置した水道管などに設置することで、遠隔地から漏水の有無をモニタリングできる。一例として、例えば
図12に示すように、水道管WPを接続したバルブVLの近傍にトレイを設置し、トレイ10B内に水電池20を配置することで、トレイ10Bに水が溜まったことを水電池20で検出して、漏水の発生を検知できる(詳細は後述)。
【0021】
このように本実施形態に係る水検知センサは、冠水や漏水の検出に利用できる。以下では一例として、冠水を検出する水検知センサを実施形態1として、
図2~
図4に基づいて説明する。
[実施形態1]
【0022】
本発明の実施形態1に係る水検知センサ100を、
図2のブロック図に示す。この図に示す水検知センサ100は、水電池20と、第一電池1と、制御回路30と、通信部40とを備える。
【0023】
水電池20は、水と反応して起電力を発する電池である(詳細は後述)。
【0024】
第一電池1は、乾電池である。好ましくは、小型で軽量なリチウムイオン電池等のボタン電池とする。あるいは、第一電池1として、ニッケル水素電池やリチウムイオン二次電池等の二次電池を用いてもよい。第一電池1は、制御回路30と通信部40を駆動する駆動電力を供給する。ボタン電池を用いることで、高出力通信が実現できる。この結果、水電池で駆動する場合と比べて安定した動作が行える。また通信距離も伸ばすことができる。
【0025】
制御回路30は、水電池20と電気に接続される。この制御回路30は、水電池20を用いて冠水の有無を検出する。すなわち、水電池20の起電力を制御回路30で検出することで、水を検知する。制御回路30は、水電池が所定値以上の起電力を発生しない場合に正常、所定値以上の起電力を発生した場合に以上と判断する。所定値は、使用する水電池や設置環境に応じて設定でき、例えば0.5Vと設定できる。この制御回路30は、ディスクリートな電子部品で構成する他、マイコンやIC等で構成してもよい。
【0026】
通信部40は、制御回路30と接続されて、制御回路30の出力を外部に対し無線で通信を行うため部材である。通信部40は、好ましくは外部機器と無線で接続する。通信方式は、Bluetooth(登録商標)やZigBee(登録商標)等、規格化された通信方式が利用できる。特に低消費電力なBLE(Bluetooth(登録商標)Low Energy:商品又はサービス名)が好ましい。ただ、通信部40は外部機器と有線で接続してもよい。
【0027】
制御回路30は、所定の検出周期で、検出結果を出力する。この例では、
図3に示すように水電池20が起電力を発生しない場合には、第一検出周期で、正常情報を通信部40で発信する。一方、水電池20が起電力を発生した場合は、第一検出周期よりも短い第二周期で、異常情報を通信部40で発信する。これにより、水検知センサ100は水電池20でもって正常情報と異常情報を発信する周期を変更することができる。
【0028】
従来、水電池で冠水を検出する水センサが提案されている。しかしながら、このような水電池は水電池の起電力で、冠水を検出する回路を動作させているため、動作が不安定になるという問題があった。すなわち、冠水を検出した信号を外部に送信するための送信回路を安定して動作できるだけの起電力が求められるところ、水電池で十分な起電力が発生しないと、動作が不安定になるという問題があった。
【0029】
これに対して本実施形態に係る水検知センサ100では、水電池20をセンサ代わりに用いて、動作自体は別途ボタン電池等の電池を準備することにより、水電池20で発生させる起電力が低くても足り、水電池20の起電力不足による動作の不安定を解消できる。
【0030】
一方で、乾電池で駆動させる場合は、電池の消耗が懸念される。そこで本実施形態に係る水検知センサ100では、水を検出しない期間、すなわち冠水の発生していない平常時の動作は、水検知センサ100の動作状態を確認する死活確認を長めのスパン(例えば1日1回、あるいは12時間に一回など)で行い、平常時の電力消費を低減して電力消費を抑えている。その一方で、水を検知して冠水の発生が検出されると、周期を変更して(例えば1分1回)、正確な水位や冠水の検出を可能としている。このように、本実施形態に係る水検知センサ100によれば、長期に渡る動作と安定動作とを両立させることができる。
(水検知システム)
【0031】
またこのような水検知センサ100を複数用いた水検知システム、
図4のブロック図に示す。この図に示す水検知システムは、互いに異なる部位に設置された複数の水検知センサ100と、各水検知センサ100と電気的に接続されたゲートウェイ50と、ゲートウェイ50とネットワーク接続された端末PCを備える。
【0032】
各水検知センサ100は、水電池20の起電力に応じて、異常信号又は正常信号をゲートウェイ50に発信する。ゲートウェイ50は、外部とデータ通信可能な部材である。この例では、複数の水検知センサ100は、ゲートウェイ50と無線で接続されている。なお水検知センサ100とゲートウェイ50の接続は、有線接続としてもよい。
【0033】
端末PCは、ゲートウェイ50とインターネットなどの公衆回線で接続されている。この水検知システムは、各位置に設置された水検知センサ100の情報をゲートウェイ50を介して端末PC側に発信する。端末PC側では、各位置での冠水の有無を判別することが可能となる。
【0034】
なお
図4の例では、ゲートウェイ50を一のみ図示しているが、複数のゲートウェイを配置できることは云うまでもない。あるいは
図5に示すように、一のゲートウェイ50に対し、複数の中継器52を接続し、各中継器52でもって複数の水検知センサ100の信号を集めるように構成してもよい。特に、異なる領域に設置した複数の水検知センサ100毎に、中継器52を配置することで、異なる領域で取得した情報をゲートウェイ50に集めて、一元的に端末PC側に送信することが可能となる。中継器52とゲートウェイ50とは、LPWA等の規格化された通信プロトコルに従い接続される。また
図5の例では、水検知センサ100→中継器52→ゲートウェイ50とし、水検知センサ100とゲートウェイ50の間に中継器を一段介在させた例を説明しているが、本発明箱の構成に限られず、中継器を多段に接続してもよいことはいうまでもない。これよって、通信距離をさらに延長させることができる。さらに、中継器を通信可能な多点に配置することで、複数の通信経路を確保して、安定的な通信が可能となる。
【0035】
また
図2の例では、水電池20毎に通信部40を設けた水検知センサ100の例を説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば
図6の変形例に示すように、複数の水電池20を共通の通信部40Bに接続してもよい。これにより、通信部の数を低減して、構成を簡素化できる利点が得られる。この場合は、制御回路30と通信部40Bの電気接続を、有線に限らず無線接続としてもよい。特に、通信モジュールを組み込んだSoC等で制御回路30を構成する場合は、このような構成によって小型化、低コスト化が見込まれる。
【0036】
あるいは、
図7の変形例に示すように、複数の水電池20を共通の制御回路30Bに接続してもよい。これにより、複数の水電池20を異なる位置に設置しつつ、制御回路30Bや通信部40の数を低減して安価に構成できる利点が得られる。特に、
図8に示すように狭い領域に多数の水電池20を設置したい場合、例えば冠水の水深を検出するために、同じ地点の異なる高さに水電池20を設置するようなケースに有利となる。
【0037】
なお正常信号を送信する第一検出周期は、30分以上、あるいは1時間以上とすることが好ましく、例えば6時間以上、好ましくは12時間以上、より好ましくは24時間以上とする。長くするほど、第一電池1の寿命を長くすることができる。
【0038】
一方、異常信号を送信する第二検出周期は、1時間以下とすることが好ましく、例えば30分以下、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下、さらに好ましくは1分以下とする。なお、上記「以下」は「未満」としてもよい。第二周期を短くするほど、時間分解能を少なくして冠水の時間変化を詳細に追跡することが可能となる。
【0039】
なお通信部40は、BLE5.0で正常情報と異常情報を出力する。正常情報と異常情報とは、フラグで判別可能とする。例えば、iBeacon(登録商標)やEddystone(登録商標)などのBLEビーコンが利用できる。BLEビーコンは、UUID(128-bit)、メジャー、マイナー等で構成されたID情報を識別することができる。例えば、メジャー番号を正常情報と異常情報とで変更して区別することができる。さらに、規格化された通信規格に限られず、これに代えて、あるいはこれに加えて、独自の通信規格でデータ通信を行ってもよい。
【0040】
あるいは、制御回路30が生成する正常情報と異常情報とを、同じ信号としてもよい。この場合は端末PC側では、ゲートウェイ50から受信する信号を送出する周期でもって、当該受信信号が正常情報か異常情報かを区別することができる。このような構成により、同じ信号を送信することで送信側の構成を簡素化でき、送信する周期でもって正常情報と異常情報とを受信側で区別することで、安価な水検知を実現できる。
(制御回路30)
【0041】
制御回路30の具体的な一例を、
図9の回路図に示す。この図に示す制御回路30は、第一電池1と、水電池20と、ダイオードD1と、コンデンサC1と、スイッチIC1と、トランジスタ(FET)TR1と、通信部40を備える。水電池20は、防水コネクタ36を介して制御回路30と接続されている。通信部40は、BLEチップであり、ここではBLE5.0で外部とデータ通信を行っている。
【0042】
正常動作時は、一定時間経過後にコンデンサC1に電荷が貯まると、スイッチIC1がONとなる。スイッチIC1がONとなると、第一電池1が通信部40の給電端子Vccと接続され、通信部40に駆動電圧が供給されて動作を開始する。動作を開始した通信部40は、水電池20の電圧を測定する。水電池20の電圧は、正常であれば0Vであるが、ここでは誤動作などのマージンを考慮して、しきい値電圧を0.5Vに設定している。水電池20の電圧がしきい値電圧以下であれば、通信部40は正常情報として、死活信号を1回送信する。その後、トランジスタTR1にゲート信号を入力してONとする。これにより、コンデンサC1が接地されて電荷が抜ける結果、スイッチIC1がOFFになり、通信部40が停止される。再度、コンデンサC1の充電が開始され、以下、同じ動作を繰り返す。このように、コンデンサC1の容量は、第一検出周期を規定する。ここではコンデンサC1として2200μFの電解コンデンサを使用している。
【0043】
一方、異常動作時には、水電池20で起電力が発生している。この場合は、コンデンサC1の状態によらず、ダイオードD1を介してスイッチIC1に電圧が供給されて、しきい値を超えるとONとなる。この結果、スイッチIC1を介して第一電池1から駆動電圧が通信部40に供給されて、通信部40が異常信号を発信する。
【0044】
一方、異常動作時には、水電池20でしきい値以上の起電力が発生している。この場合は、コンデンサC1の状態によらず、スイッチIC1がONとなる。この場合は、水電池20の起電力が低下しない限り、スイッチIC1に電圧が供給されてON状態が継続される結果、通信部40からの異常信号の送信が継続される。異常信号を送信する第二検出周期は、通信部40の設定によって決定される。
(電池ケース10)
【0045】
水電池20は、電池ケース10に収納することが好ましい。このような例を
図10の分解斜視図に示す。この図に示す電池ケース10は、耐水性を有する材質、例えば樹脂製とする。この例では、箱状の水ケースをプラスチックシートの打ち抜きで構成している。一面を開口した箱状の水ケースの展開図の形状にプラスチックシートで形成し、これを組み立てて箱状とし、開口端から水電池20を収納して、蓋12をする。蓋12はゴム製のシート等が利用できる。あるいは別部材の蓋12に代えて、防水パテを充填してもよい。
(冠水固定具60)
【0046】
また水検知センサ100は、冠水の有無を検知したい場所に固定するための冠水固定具60を備えてもよい。これにより、冠水を検知したい場所に水検知センサ100を設置して、水検知センサ100を用いた冠水のモニタリングが可能となる。冠水固定具60は、
図10に示すようにコンクリート壁CWなどの硬質部材に固定する際は、電池ケース10の外周を覆う断面視コ字状に構成する。また、耐久性や剛性に優れた金属製や樹脂製とすることが好ましい。
図10の例では、コンクリート壁CWにボルトやピンで固定する。これにより
図1のように、水検知センサ100を安定的に固定できる。
【0047】
一方、水電池20と制御回路30とは、異なる位置に設置することが好ましい。特に制御回路30や通信部40、あるいはゲートウェイ50や中継器52は、冠水しないよう高い位置に固定することが好ましい。これにより、これらの部材に高い防水性を要求されることなく、また冠水によって電波が伝搬できなくなる事態を回避でき、信頼性が高められる。
図1の例では、電柱やカーブミラー等の既存の部材の上方に、制御回路30と通信部40を収納した制御ユニット3を設置した例を示している。制御ユニット3は、軽量で耐久性に優れた樹脂製とすることが好ましい。
(防水コネクタ36)
【0048】
また水電池20と制御回路30とは、ケーブル14、34で着脱式に接続することが好ましい。これにより、水電池20の交換を容易に行える利点が得られる。特に、頻繁に冠水する地域においては、冠水によって泥水等の多くの不純物を含んだ環境に水電池20が晒されるため、定期的に交換することが望ましい。一方で制御回路30は冠水し難いように高い位置に固定されているため、頻繁に交換する必要はない。そこで、水電池20だけを交換し易くできるように、水電池20を着脱式とする。
【0049】
また、
図11に示すように、制御回路30から延長されたケーブル34と、水電池20から延長されたケーブル14とは、防水コネクタ36で接続することが好ましい。これにより、防水性を発揮させながらケーブル同士を電気的に接続でき、信頼性と作業性を高められる。防水コネクタ36は、既存の構造を適宜利用でき、例えばねじ込み式でカバーを締結するタイプが好適に利用できる。
(漏水固定具70)
【0050】
以上は、水検知センサ100を冠水のおそれのある地域に設置して冠水の有無を検出する冠水センサとして利用する例を説明した。ただ本発明の水検知センサや水検知システムは、冠水検知に限られず、他の用途に水検知センサを利用することもできる。一例として、漏水の検出に利用する例を
図12に示す。この例では、水道管WP同士を接続するバルブVLの下にトレイ10Bを設置し、トレイ10B内に水電池20を配置している。言い換えると、トレイ10Bで電池ケースを構成している。またトレイ10Bは、漏水固定具70で水道管WPに固定されている。この例では漏水固定具70は、トレイ10Bと、このトレイ10Bの両端から上方に延長され、先端をU字状に折曲したフック72で構成されている。また制御ユニット3は、水道管WPの上部など、水が溜まり難い部位に固定することが好ましい。このような構成によって、仮に水道管WP同士や水道管WPとバルブVLを連結した継ぎ目から漏水が発生すると、トレイ10B内に水が溜まって水電池20が浸漬され、起電力を発生して異常情報を外部に発信できる。このように、漏水を検知したい場所に水検知センサ100を設置して、水検知センサ100を用いた漏水のモニタリングが可能となる。
【0051】
以上のように、乾電池の第一電池1を用いて通信を行うことで、水電池20そのもので駆動する水検知センサ100と比べて安定的な動作が可能となる。一方で、平常時の第一検出周期を長めに設定することで第一電池1の消耗を抑制しつつ、異常時にはより高頻度の第二周期に切り換えることで、精度よく冠水や漏水のモニタリングが行える。このように水電池20をトリガとしてサンプリング周期を密に変更することで、水電池20の起電力の変動による電力供給の不安定化を排除し、安定的な動作が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の水検知センサ及び冠水検知方法を使用して、河川や水路、下水道等の氾濫等により冠水した道路、市街地、田畑等の状況や水位を、現地で又はインターネット等を通して、リアルタイムで把握できるようにした。これにより、ユーザが冠水した領域に誤って侵入し、立ち往生したり、側溝等に落ちたりする事故を防止するとともに、避難行動を起こすきっかけとなる重要な情報の提供が可能となり、早期の避難開始や安全な避難経路の選択ができるなど、冠水によるさらなる被害の拡大の回避に役立てることができる。また、面的に複数個所に設置することにより、浸水範囲はもとより、非浸水範囲もリアルタイムで把握することができ、安全な避難経路の選択をさらに容易とすることができる。その結果、避難行動に伴う困難の解消に大きく貢献できる。また、地下や屋根裏、山中など、検査し難い場所に設置された水道管や配管の漏水の検出にも利用できる。
【符号の説明】
【0053】
100…水感知センサ
1…第一電池
3…制御ユニット
10…電池ケース;10B…トレイ
12…蓋
14…ケーブル
20…水電池
30、30B…制御回路
34…ケーブル
36…防水コネクタ
40、40B…通信部
50…ゲートウェイ
52…中継器
60…冠水固定具
70…漏水固定具
72…フック
PC…端末
D1ダイオード;C1…コンデンサ;IC1…スイッチ;TR1…トランジスタ
CW…コンクリート壁
WP…水道管;VL…バルブ
【要約】
【課題】冠水時の検出周期を短くして精度を高めつつ、電力消費を抑える。
【解決手段】水検知センサ100は、水を感知するための水検知センサ100であって、乾電池である第一電池1と、第一電池1で駆動される制御回路30と、第一電池1で駆動される、外部に対し無線で通信を行うための通信部40と、水と反応して起電力を発する水電池20とを備える。制御回路30は、水電池20が所定値以上の起電力を発生しない場合に、通信部40で第一検出周期で、正常情報を発信し、水電池20が冠水して発生した起電力に応答して、通信部40で第一検出周期よりも短い第二周期で、異常情報を発信するよう構成している。上記構成により、乾電池の第一電池1を用いて通信を行うことで、水電池20そのもので駆動する水検知センサと比べて安定的な動作が可能となる。
【選択図】
図2