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特許7194472シミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】シミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/13 20060101AFI20221215BHJP
   C07C 1/04 20060101ALI20221215BHJP
   C07C 7/04 20060101ALI20221215BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20221215BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20221215BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20221215BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C07C7/13
C07C1/04
C07C7/04
C07C11/02
B01J20/18 B
B01D15/00 K
B01J20/34 G
B01D15/00 101A
B01D15/00 G
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021521096
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 CN2019091271
(87)【国際公開番号】W WO2020177235
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】201910196902.X
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520373578
【氏名又は名称】インナー・モンゴリア・イータイ・コール-ベイスト・ニュー・マテリアルズ・リサーチ・インスティテュート・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Inner Mongolia Yitai Coal-based New Materials Research Institute Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジュンチォン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ジンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, シャオロン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン, チンウ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ, ユェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, シェティン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ハオティン
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102452888(CN,A)
【文献】特開2002-060760(JP,A)
【文献】特開昭61-134328(JP,A)
【文献】特開昭54-041803(JP,A)
【文献】特表2007-509933(JP,A)
【文献】特開2014-088366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭ベースのフィッシャートロプシュ合成油を原料とし、目標アルケンの炭素数Nの範囲が~18である、シミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法であって、
(1)予備処理した原料を留分分画して、炭素数がNである成分を得る、留分分画工程、
(2)第1シミュレーション移動床で工程(1)の成分をアルカン-アルケン分離し、アルカンとアルケンを分離して、アルケンリッチ成分を得る、アルカン-アルケン分離工程、および
(3)第2シミュレーション移動床で工程(2)で得られたアルケンリッチ成分を異性体分離して、高純度α-アルケンを得る、異性体分離工程、
を含み、
前記第1シミュレーション移動床における吸着剤は、Aシリーズ分子篩であり、
前記第2シミュレーション移動床における吸着剤は、Xシリーズ分子篩であることを特徴とする、シミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項2】
前記工程(2)における第1シミュレーション移動床のプロセスパラメータについて、操作温度が50~110℃であり、操作圧力が0.3~0.8MPaであり、吸着剤と合成油との質量比が0.5:1~4:1であることを特徴とする、請求項1に記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項3】
前記工程(2)における第1シミュレーション移動床のプロセスパラメータについて、操作温度が60~100℃であり、操作圧力が0.4~0.6MPaであり、吸着剤と合成油との質量比が0.5:1~2:1であることを特徴とする、請求項2に記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項4】
前記工程(3)における第2シミュレーション移動床のプロセスパラメータについて、操作温度が50~110℃であり、操作圧力が0.3~0.8MPaであり、吸着剤と合成油との質量比が0.5:1~4:1であることを特徴とする、請求項に記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項5】
前記工程(3)における第2シミュレーション移動床のプロセスパラメータについて、操作温度が60~100℃であり、操作圧力が0.4~0.6MPaであり、吸着剤と合成油との質量比が0.5:1~2:1であることを特徴とする、請求項4に記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項6】
前記第1シミュレーション移動床における吸着剤は、5A分子篩及び/又は変性5A分子篩であることを特徴とする、請求項に記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項7】
前記第2シミュレーション移動床における吸着剤は、13X分子篩及び/又は変性13X分子篩であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項8】
目標アルケンの炭素数Nの範囲が9~16であることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項9】
目標アルケンの炭素数Nの範囲が9~14であることを特徴とする、請求項に記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項10】
目標アルケンの炭素数Nの範囲が10~14であることを特徴とする、請求項に記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項11】
目標アルケンの炭素数Nの範囲が10~12であることを特徴とする、請求項10に記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項12】
前記石炭ベースのフィッシャートロプシュ合成油において、アルケンの含有量が73~75wt%であり、アルカンの含有量が22~25wt%であり、酸素含有化合物の含有量が3~5wt%であることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項13】
前記予備処理工程は、原料を脱酸する工程を含むことを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項14】
脱酸予備処理を行った後に、留分油が脱軽塔に入り、炭素数がN未満である成分が脱軽塔のタワートップから分離され、タワーボトム成分が脱重塔に入り、炭素数がN超である成分が脱重塔のタワーボトムから分離され、炭素数がNである成分が脱重塔のタワートップから分離されることを特徴とする、請求項13に記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項15】
前記第1シミュレーション移動床および前記第2シミュレーション移動床の設備は、いずれも、吸着床、原料フィードシステム、脱着剤フィードシステム、循環システム、抽出液システム、ラフィネートシステム、プログラム制御バルブグループおよび自動制御システムを含み、ただし、前記吸着床は、幾つかの吸着カラムを含み、吸着領域、純化領域、脱着領域およびバッファ領域に分けられ、
各前記吸着カラムの上端には、原料フィードバルブ、脱着剤フィードバルブ、循環液フィードバルブが設けられ、
各前記吸着カラムの下端には、ラフィネート排出バルブ、抽出液排出バルブが設けられ、
隣り合う2つの吸着カラムの間には、チェックバルブが設けられ、
前記原料フィードシステムは、各々の吸着カラムの原料フィードバルブに接続され、
前記脱着剤フィードシステムは、各々の吸着カラムの脱着剤フィードバルブに接続され、
前記循環システムは、循環ポンプを含み、前記循環システムは、循環ポンプによって各々の吸着カラムの循環液フィードバルブに接続され、
前記抽出液システムは、各々の吸着カラムの抽出液排出バルブに接続され、
前記ラフィネートシステムは、各々の吸着カラムのラフィネート排出バルブに接続され、
全てのバルブは、プログラム制御バルブグループを構成し、プログラム制御バルブグループは、自動制御システムに接続され、自動制御システムは、プログラム制御バルブグループにおける各々のバルブの開閉状態を制御できることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項16】
前記高純度α-アルケン製品において、α-アルケンの含有量が99.2wt%以上であることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【請求項17】
前記アルカン-アルケン分離工程前に、酸素含有化合物を除去する工程を含まないことを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法に関し、具体的に、二段のシミュレーション移動床による方式で石炭ベースのフィッシャートロプシュ合成油から高純度α-アルケンを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシャートロプシュ合成油製品には貴重な化学品原料であるアルケンが多量に含まれおり、アルケンは、他のファインケミカル製品を生産する肝心な原料であり、その下流産業に極めて重大な影響を与える。現在、中国国内及び海外でフィッシャートロプシュ合成油製品の後加工方法は、主に蒸留、精留の面に集中している。
【0003】
特許文献1および特許文献2は、フィッシャートロプシュ合成油製品の蒸留方法および蒸留で得られた中間留分油を提案している。当該中間留分油は、メチル、エチル、プロピルなどの分岐鎖を含み、C9~C16成分が留分油全体の90%以上を占め、当該中間留分油は、ディーゼルオイルを構成する主成分であり、且つ良好な低温流動性を持つものであるが、当該方法で得られた製品は、純度が低く、そのまま重合反応に用いることができない。
【0004】
特許文献3は、フィッシャートロプシュ合成粗製品の蒸留処理方法および得られた中間留分油を提案し、主なプロセスがFTS粗製品をナフサと中間留分油に分画する。1994年、南アフリカSASOL社は、「アルカリ洗浄-エーテル化-精留-抽出」という共同プロセスルートを開発して、重合級の1-へキセン、1-オクテンの製造を達成している。しかしながら、当該プロセスルートは、比較的複雑で、操作のエネルギー消費が高いので、投資および運営コストが非常に高くなり、また当該技術は、C6、C8成分のみを分離でき、炭素数の高い成分をまだ分離できない。
【0005】
特許文献4では、高温フィッシャートロプシュ合成C5軽質留分油を原料とし、原料を抽出・精留し、抽出剤がN,N-ジメチルホルムアミドであり、精留塔のタワートップから得られた1-ペンテンリッチ料を抽出し、精密精留でさらに純化して1-ペンテン製品を得る。この方法で得られたアルケンの炭素数が単一であり、用いられる基本方法が抽出・精留であり、エネルギー消費が高いとともに、溶剤の消費量が高く、生産コストが高い。
【0006】
また、1994年、南アフリカSASOL社は、「アルカリ洗浄-エーテル化-精留-抽出」という共同プロセスルートを開発して、重合級の1-へキセン、1-オクテンの製造を達成している。しかしながら、当該プロセスルートは、比較的複雑で、操作のエネルギー消費が高いので、投資および運営コストが非常に高くなり、また当該技術は、C6、C8成分のみを分離でき、炭素数の高い成分をまだ分離できない。
【0007】
シミュレーション移動床は、吸着原理によって分離操作を行う分離設備である。シミュレーション移動床技術は、連続クロマトグラフィーの主な代表として、生産効率が高く、有機溶剤の消耗が少なく、物質移動駆動力が大きく、自動連続生産に便利であるなどの利点を有し、石油化学産業、食品産業および製薬などの領域に広く用いられる。シミュレーション移動床技術は、複雑な産業過程であり、影響要因が多く、非線形、非平衡、非理想で、自由度が多い周期性過程である。
【0008】
上記技術文献において、分離プロセスとして、いずれも従来の抽出・精留プロセスが採用され、α-アルケンと不純物(イソアルケン)とは、沸点の差異が極めて小さいので、抽出・精留プロセスによる分離は、コストが非常に高く、溶剤の使用量が大きく、且つリサイクルが困難であり、現在の社会発展の要求に適合しない。現在の技術は、液体アルケンと液体アルカンを分離できるが、アルカンからアルケンを分離するためのさらに改善される方法の提供が依然として必要である。
【0009】
上記欠陥について、本願は、フィッシャートロプシュ合成油原料とシミュレーション移動床による二段分離とを組み合わせて、フィッシャートロプシュ合成油から炭素鎖範囲の広いα-アルケンを効率よく経済的に分離することを初めて提唱して、従来のように特定の炭素数、狭い炭素鎖範囲のα-アルケンを抽出・精留により分離する通常のルートを越える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第7217852号明細書
【文献】米国特許第7294253号明細書
【文献】欧州特許第1835011号明細書
【文献】中国特許出願公開第104370678号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、石炭ベースのフィッシャートロプシュ合成油からα-アルケンを効率よく経済的に分離して、純度への要求を満足するアルケン製品を得ること、特にプロセスが簡単でエネルギー消費が低く、市場にアルケンの異なる純度および炭素数分布への要求(例えば、C4~C18)を満足できるα-アルケンの分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を達成するために、以下の技術案を採用する。
【0013】
石炭ベースのフィッシャートロプシュ合成油を原料とし、目標アルケンの炭素数Nの範囲が4~18である、シミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法であって、
(1)予備処理した原料を留分分画して、炭素数がNである成分を得る、留分分画工程、
(2)第1シミュレーション移動床で工程(1)の成分をアルカン-アルケン分離し、アルカンとアルケンを分離して、アルケンリッチ成分を得る、アルカン-アルケン分離工程、および
(3)第2シミュレーション移動床で工程(2)で得られたアルケンリッチ成分を異性体分離して、高純度α-アルケン製品を得る、異性体分離工程、
を具体的に含む、シミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法。
【0014】
幾つかの実施形態では、アルカン-アルケン分離工程前に、酸素含有化合物を除去する工程を含まない。
【0015】
幾つかの実施形態では、工程(2)における第1シミュレーション移動床のプロセスパラメータについて、操作温度が50~110℃であり、操作圧力が0.3~0.8MPaであり、吸着剤と合成油との質量比が0.5:1~4:1であり、好ましくは、操作温度が60~100℃であり、操作圧力が0.4~0.6MPaであり、吸着剤と合成油との質量比が0.5:1~2:1である。
【0016】
幾つかの実施形態では、工程(3)における第2シミュレーション移動床のプロセスパラメータについて、操作温度が50~110℃であり、操作圧力が0.3~0.8MPaであり、吸着剤と合成油との質量比が0.5:1~4:1であり、好ましくは、操作温度が60~100℃であり、操作圧力が0.4~0.6MPaであり、吸着剤と合成油との質量比が0.5:1~2:1である。
【0017】
幾つかの実施形態では、第1シミュレーション移動床における吸着剤は、Aシリーズ分子篩であり、好ましくは、5A分子篩及び/又は変性5A分子篩である。
【0018】
幾つかの実施形態では、第2シミュレーション移動床における吸着剤は、Xシリーズ分子篩であり、好ましくは、13X分子篩及び/又は変性13X分子篩である。
【0019】
幾つかの実施形態では、目標アルケンの炭素数Nの範囲が9~18であり、好ましくは9~16であり、より好ましくは10~14であり、さらに好ましくは10~12である。
【0020】
幾つかの実施形態では、石炭ベースのフィッシャートロプシュ合成油において、アルケンの含有量が73~75wt%であり、アルカンの含有量が22~25wt%であり、酸素含有化合物の含有量が3~5wt%である。
【0021】
幾つかの実施形態では、前記予備処理工程は、原料を脱酸する(deacidify)工程を含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、第1シミュレーション移動床および第2シミュレーション移動床は、吸着床、原料フィードシステム、脱着剤フィードシステム、循環システム、抽出液システム、ラフィネートシステム、プログラム制御バルブグループおよび自動制御システムを含み、ただし、前記吸着床は、幾つかの吸着カラムを含み、吸着領域、純化領域、脱着領域およびバッファ領域に分けられ、
各前記吸着カラムの上端には、原料フィードバルブ、脱着剤フィードバルブ、循環液フィードバルブが設けられ、
各前記吸着カラムの下端には、ラフィネート排出バルブ、抽出液排出バルブが設けられ、
隣り合う2つの吸着カラムの間には、チェックバルブが設けられ、
前記原料フィードシステムは、各々の吸着カラムの原料フィードバルブに接続され、
前記脱着剤フィードシステムは、各々の吸着カラムの脱着剤フィードバルブに接続され、
前記循環システムは、循環ポンプを含み、前記循環システムは、循環ポンプによって各々の吸着カラムの循環液フィードバルブに接続され、
前記抽出液システムは、各々の吸着カラムの抽出液排出バルブに接続され、
前記ラフィネートシステムは、各々の吸着カラムのラフィネート排出バルブに接続され、
全てのバルブは、プログラム制御バルブグループを構成し、プログラム制御バルブグループは、自動制御システムに接続され、自動制御システムは、プログラム制御バルブグループにおける各々のバルブの開閉状態を制御できる。
【0023】
幾つかの実施形態では、前記高純度α-アルケン製品において、α-アルケンの含有量が99.2wt%以上である。
【0024】
従来技術に対して、本発明は以下の優れた効果を有する。
【0025】
1.アルカン-アルケン混合物において、アルケンが極性物質であり、アルカンが非極性物質または弱極性物質であり、それらの極性によって特定の吸着剤への吸着性能がある程度の差異を有する。本発明の方法は、従来の精留、抽出プロセスのように沸点の差異によって分離するものではなく、異なる物質の吸着性能の差異によって混合成分を分離する。従来の精留、抽出プロセスと比べると、本発明は、シミュレーション移動床直列の方式で分離し、得られたα-アルケン製品は、純度がより高く、収率がより高く、エネルギー消費がより低く、生産コストが従来プロセスの約15%である。
【0026】
2.本発明の方法は、石炭ベースのフィッシャートロプシュ合成油におけるα-アルケンを分離する過程に特に好適であり、各プロセスパラメータの組み合わせが原料の組成と緊密に関連し、原料の分析、パラメータの調整、スモールテスト、パイロットテストを経て、継続的に調整・改善する過程である。
【0027】
3.市場のニーズに応じて、生産コストを低下させるために、本発明の方法は、留分分画を行った後に、酸素含有化合物除去工程を設けない。少量の酸素含有化合物の存在によって、シミュレーション移動床における吸着剤は、寿命が少し低下し、剤油比が高くなるが、酸素含有化合物除去工程を含む方法に比べると、本発明の方法は、生産コストを全体的に低下させることができ、要求を満足する高純度α-アルケン製品を得ることができる。
【0028】
4.本発明は、従来のマルチチャンネルロータリーバルブの代わりにプログラム制御バルブグループを採用してシミュレーション移動床の周期変換を制御し、設備コストを低下させ、プログラム制御バルブグループは、メンテナンス要求に応じて便利に取り出されるので、設備のメンテナンスが便利であり、各々の吸着カラムは、いずれも取り出されてメンテナンス可能であり、吸着剤を交換した後にシステムに組み込むことができ、装置の長期作動能力が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のシミュレーション移動床でα-アルケンを分離する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明のプロセスフローは、図1に示すように、原料の予備処理、留分分画、シミュレーション移動床Iによるアルカン-アルケン分離、およびシミュレーション移動床IIによる直鎖アルケン-イソアルケン分離を経て、α-アルケン製品を得ることである。
【0031】
原料が脱酸予備処理された後に、留分油が脱軽塔(軽質成分除去タワー)に入り、炭素数がN未満である成分が脱軽塔のタワートップから分離され、タワーボトム成分が脱重塔(重質成分除去タワー)に入り、炭素数がN超である成分が脱重塔のタワーボトムから分離され、炭素数がNである成分が脱重塔のタワートップから分離される。留分分画によって、留分油における酸素含有化合物の含有量がさらに低下する。
【0032】
前記シミュレーション移動床は、固定吸着床を多数の段に分け、段に吸着剤が装填され、段の間を液体が直接に流れることができない。各段は、いずれも出入口パイプを設け、バルブでその出入りを制御する。典型的には、吸着カラムを8個有するシミュレーション移動床において、24個の出入口のうち、20個が段間コンタクトとして機能し、残りの4個が4つの材料流のイン又はアウトに用いられ、ある瞬間で材料流の出入り口の位置は、吸着床層の全体を4つの領域に分け、各領域の距離の長さが異なり、各段での相間物質移動も異なる。シミュレーション移動床において、4つの材料流の出入口は、固相濃度の変化に同期する速度で上に移動し、このように、1つの閉回路を構成し、全体の結果は、出入口の位置がそのまま維持され、固体吸着剤が吸着器において上から下まで移動する場合の効果とほぼ同一となり、これにより、分離効果を達成する。
【0033】
シミュレーション移動床のプロセスパラメータは、以下の通りである。
【0034】
第1シミュレーション移動床:
操作温度が50~110℃であり、操作圧力が0.3~0.8MPaであり、シミュレーション移動床の吸着剤がAシリーズ分子篩(例えば、3A、4A、5A又は変性5A分子篩)であり、吸着剤と合成油との質量比が0.5:1~4:1であり、得られたアルケン成分の含有量が99.5wt%以上である。
【0035】
第2シミュレーション移動床:
操作温度が50~110℃であり、操作圧力が0.3~0.8MPaであり、シミュレーション移動床の吸着剤がXシリーズ分子篩(例えば、13X又は変性13X分子篩)であり、吸着剤と合成油との質量比が0.5:1~4:1であり、得られたα-アルケン成分の含有量が99.6wt%以上である。
【0036】
本発明が採用する留分油原料は、内蒙古伊泰化工有限責任公司の120万トン/年の石炭による石油の製造装置に由来し、その組成は、表1に示される。
【0037】
【表1】
【0038】
脱酸して得られた留分油における原料組成は、表2に示される。
【0039】
【表2】
【0040】
留分分画後の留分油における原料組成は、表3に示される。
【0041】
【表3】
【0042】
比較例1
目標炭素数が9であり、予備処理、留分分画処理を行った後に、シミュレーション移動床による分離を行わず、抽出精留でアルカン-アルケン分離を行う。その中、アルカン-アルケン分離の操作温度が100~105℃であり、タワートップ温度が48~50℃であり、還流比が5であり、剤油比(吸着剤と合成油との質量比)が1:1であり、抽出剤がNMP(参考文献CN105777467Aの実施例1の第四抽出剤)であり、得られたアルケン成分の含有量が98.08wt%である。直鎖炭化水素と分岐炭化水素とは、分離が行われず、沸点の差が3℃だけであるので、精留方法による分離は非常に困難である。
【0043】
実施例1~10
実施例1~10の処理方法における予備処理工程および留分分画処理工程は、比較例1と同じであり、留分分画した留分を第1シミュレーション移動床に移送してアルカン-アルケン分離を行い、分離したアルケンリッチ生成物を第2シミュレーション移動床に移送して異性体分離を行う。具体的な操作パラメータを表5に示す。シミュレーション移動床で分離したα-アルケンの純度は、99.2wt%以上であり、酸素含有化合物の含有量が50ppm未満であることがわかった。
【0044】
【表5】
図1