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特許7194474バルク音響波共振器及びその製造方法並びにフィルタ、無線周波数通信システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】バルク音響波共振器及びその製造方法並びにフィルタ、無線周波数通信システム
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/17 20060101AFI20221215BHJP
   H03H 9/54 20060101ALI20221215BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
H03H3/02 B
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021525685
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 CN2019105087
(87)【国際公開番号】W WO2020199504
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】201910273070.7
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519437928
【氏名又は名称】中芯集成電路(寧波)有限公司上海分公司
【氏名又は名称原語表記】NINGBO SEMICONDUCTOR INTERNATIONAL CORPORATION(SHANGHAI BRANCH)
【住所又は居所原語表記】Room 309, Area C, F3, Building 1,No.95, Lane 85, Cailun Road, China(Shanghai) Pilot Free Trade Zone, Shanghai 201210 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羅 海龍
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0152168(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0205360(US,A1)
【文献】特開2003-017964(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0339959(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク音響波共振器であって、
基板と、
前記基板上に設けられる底電極層であって、前記底電極層と前記基板との間にキャビティが形成され、前記底電極層は、前記キャビティの領域に位置するとともに、前記キャビティの底面に近接する方向に凹んでいる底電極凹み部を有する底電極層と、
前記キャビティの上方の前記底電極層上に形成される圧電共振層と、
前記圧電共振層上に形成される頂電極層であって、前記頂電極層は、前記キャビティの領域に位置するとともに、前記キャビティの底面に近接する方向に凹んでいる頂電極凹み部を有し、前記頂電極凹み部及び前記底電極凹み部がいずれも前記圧電共振層の外周における前記キャビティの領域に位置し、前記底電極凹み部及び前記頂電極凹み部がいずれも前記圧電共振層を囲んだ周辺方向に延在しており、両者が少なくとも部分的に対向する頂電極層と
前記圧電共振層と分離して前記圧電共振層の外周に位置するように、前記底電極層と前記頂電極層との間に設けられた圧電外周部と、を含み、
前記底電極凹み部と前記頂電極凹み部とは、積層方向に重ならないように、平面視において前記圧電共振層と前記圧電外周部との間に位置している、
ことを特徴とするバルク音響波共振器。
【請求項2】
前記底電極層は、一端が前記底電極凹み部に接続され、他端が前記キャビティの外周における前記基板上に当接する底電極ブリッジ部をさらに含み、
前記頂電極層は、一端が前記頂電極凹み部に接続され、他端が前記キャビティの外周における前記基板の上方まで延在する頂電極ブリッジ部をさらに含み、
前記底電極ブリッジ部と前記頂電極ブリッジ部とは、相互にずれる、ことを特徴とする請求項1に記載のバルク音響波共振器。
【請求項3】
前記底電極層は、前記圧電共振層と重なる底電極共振部をさらに含み、
前記頂電極層は、前記圧電共振層と重なる頂電極共振部をさらに含み、
前記底電極共振部及び前記頂電極共振部がいずれも多角形である、ことを特徴とする請求項2に記載のバルク音響波共振器。
【請求項4】
前記底電極凹み部は、前記底電極共振部の辺に沿って設けられるとともに、前記底電極ブリッジ部と前記底電極共振部とが位置合わせされる領域に少なくとも設けられ、
前記頂電極凹み部は、前記頂電極共振部の辺に沿って設けられるとともに、前記頂電極ブリッジ部と前記頂電極共振部とが位置合わせされる領域に少なくとも設けられる、ことを特徴とする請求項3に記載のバルク音響波共振器。
【請求項5】
前記底電極凹み部は、前記キャビティの上方において、少なくとも前記頂電極ブリッジ部と相互にずれ、又は、前記底電極凹み部は、前記底電極共振部の全周を囲んでおり、
前記頂電極凹み部は、前記キャビティの上方において、少なくとも前記底電極ブリッジ部と相互にずれ、又は、前記頂電極凹み部は、前記頂電極共振部の全周を囲んでいる、ことを特徴とする請求項4に記載のバルク音響波共振器。
【請求項6】
前記キャビティの底面における前記頂電極凹み部と前記底電極凹み部との投影は、ちょうど接続し、又は、相互にずれ、又は、重なる、ことを特徴とする請求項5に記載のバルク音響波共振器。
【請求項7】
前記底電極凹み部、前記底電極ブリッジ部及び前記底電極共振部は、同じ膜層で形成され、
前記頂電極凹み部、前記頂電極ブリッジ部及び前記頂電極共振部は、同じ膜層で形成される、ことを特徴とする請求項3に記載のバルク音響波共振器。
【請求項8】
前記底電極ブリッジ部は、自体が位置する前記キャビティの部分の上方において、前記キャビティを完全にカバーし、前記頂電極ブリッジ部の幅方向に、前記頂電極ブリッジ部と重ならない、ことを特徴とする請求項4に記載のバルク音響波共振器。
【請求項9】
前記頂電極凹み部の側壁が前記圧電共振層の頂面に対して傾斜し、
前記底電極凹み部の側壁が前記圧電共振層の底面に対して傾斜する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のバルク音響波共振器。
【請求項10】
前記頂電極凹み部の側壁と前記圧電共振層の頂面との間の角度が45度以下であり、
前記底電極凹み部の側壁と前記圧電共振層の底面との間の角度が45度以下である、ことを特徴とする請求項に記載のバルク音響波共振器。
【請求項11】
前記キャビティは、底部全体が前記基板に凹んだ溝構造であり、又は、突出全体が前記基板の表面に設けられるキャビティ構造である、ことを特徴とする請求項1~8又は請求項1のいずれか1項に記載のバルク音響波共振器。
【請求項12】
請求項1~1のいずれか1項に記載の少なくとも1つのバルク音響波共振器を備える、ことを特徴とするフィルタ。
【請求項13】
請求項1に記載の少なくとも1つのフィルタを備える、ことを特徴とする無線周波数通信システム。
【請求項14】
バルク音響波共振器の製造方法であって、
基板を提供し、第1の犠牲層を一部の前記基板上に形成するステップと、
前記第1の犠牲層の下方における前記基板の表面を露出しない第1の溝を前記第1の犠牲層のエッジ部分に形成するステップと、
底電極層を前記第1の犠牲層上に形成し、前記第1の溝の表面を被覆する前記底電極層の部分を底電極凹み部として形成するステップと、
前記底電極凹み部を露出させる圧電共振層を前記底電極層上に形成するステップと、
第2の溝が形成される第2の犠牲層を前記圧電共振層の周囲において露出する領域に形成するステップと、
頂電極層を前記圧電共振層及び前記圧電共振層の周囲における一部の前記第2の犠牲層上に形成し、前記第2の溝を被覆する前記頂電極層の部分を頂電極凹み部として形成するステップと、
前記第2の犠牲層及び前記第1の犠牲層を除去し、前記第2の犠牲層及び前記第1の犠牲層の位置にキャビティを形成するステップであって、前記頂電極凹み部及び前記底電極凹み部がいずれも前記圧電共振層の外周における前記キャビティの領域に位置し、前記底電極凹み部及び前記頂電極凹み部がいずれも前記圧電共振層を囲んだ周辺方向に延在しており、両者が少なくとも部分的に対向するステップとを含む、ことを特徴とするバルク音響波共振器の製造方法。
【請求項15】
前記第1の犠牲層を一部の前記基板上に形成するステップは、前記基板をエッチングすることにより、第3溝を前記基板に形成するステップと、前記第1の犠牲層を形成して前記第3溝に充填するステップとを含み、又は、
前記第1の犠牲層を一部の前記基板上に形成するステップは、前記第1の犠牲層を前記基板に被覆するステップと、前記第1の犠牲層をパターニングすることにより、前記第1の犠牲層を一部の前記基板に突設するように形成するステップとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のバルク音響波共振器の製造方法。
【請求項16】
前記第1の犠牲層は、順に積層される第1のサブ犠牲層及び第2のサブ犠牲層を含み、
順に積層される前記第1のサブ犠牲層及び前記第2のサブ犠牲層を形成するステップは、前記第1のサブ犠牲層を形成するステップと、前記第1のサブ犠牲層の頂部の所定の厚さを、材質が前記第1のサブ犠牲層と異なる前記第2のサブ犠牲層に材質変換するステップとを含み、又は、
順に積層される前記第1のサブ犠牲層及び前記第2のサブ犠牲層を形成するステップは、前記第1のサブ犠牲層を形成するステップと、前記第1のサブ犠牲層上に材質が前記第1のサブ犠牲層と異なる前記第2のサブ犠牲層を形成するステップとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のバルク音響波共振器の製造方法。
【請求項17】
酸化処理、窒化処理及びイオン注入のうちの少なくとも1つを含む表面改質処理プロセスにより、前記第1のサブ犠牲層の頂部の所定の厚さを材質変換することにより、前記第2のサブ犠牲層を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載のバルク音響波共振器の製造方法。
【請求項18】
前記第1の溝の底面を前記第1のサブ犠牲層の頂面上まで停止し、又は、前記第1のサブ犠牲層内をまで停止する、ことを特徴とする請求項1に記載のバルク音響波共振器の製造方法。
【請求項19】
前記第2の溝を有する前記第2の犠牲層及び前記第1の犠牲層を除去するステップは、
前記頂電極層を形成した後に、少なくとも、一部の前記第1の犠牲層、一部の前記第2の溝、又は、前記第2の溝以外の一部の前記第2の犠牲層を露出する少なくとも1つの開放穴を形成するステップと、
前記開放穴にガス及び/又は薬液を導入することにより、前記第2の溝を有する前記第2の犠牲層及び前記第1の犠牲層を除去するステップとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のバルク音響波共振器の製造方法。
【請求項20】
前記底電極層を形成するステップは、底電極材料層を前記第1の溝を有する前記第1の犠牲層に被覆するように堆積するステップと、前記底電極材料層をパターニングすることにより、順に接続される底電極ブリッジ部、前記底電極凹み部及び底電極共振部を形成するステップであって、前記底電極共振部と前記圧電共振層とが重なり、前記底電極ブリッジ部の一端が前記キャビティの外周における前記基板上に当接するステップとを含む、ことを特徴とする請求項119のいずれか1項に記載のバルク音響波共振器の製造方法。
【請求項21】
前記頂電極層を形成するステップは、頂電極材料層を前記第2の溝を有する前記第2の犠牲層及び前記圧電共振層に被覆するように堆積するステップと、前記頂電極材料層をパターニングすることにより、順に接続される頂電極ブリッジ部、前記頂電極凹み部及び頂電極共振部を形成するステップであって、前記頂電極共振部と前記圧電共振層とが重なり、前記頂電極ブリッジ部の一端が前記キャビティの外周における前記基板の上方まで延在しており、前記頂電極ブリッジ部と前記底電極ブリッジ部とが相互にずれるステップとを含む、ことを特徴とする請求項2に記載のバルク音響波共振器の製造方法。
【請求項22】
前記底電極共振部及び前記頂電極共振部がいずれも多角形であり、
前記底電極凹み部は、前記底電極共振部の辺に沿って設けられるとともに、前記底電極ブリッジ部と前記底電極共振部とが位置合わせされる領域に少なくとも設けられ、
前記頂電極凹み部は、前記頂電極共振部の辺に沿って設けられるとともに、前記頂電極ブリッジ部と前記頂電極共振部とが位置合わせされる領域に少なくとも設けられる、ことを特徴とする請求項2に記載のバルク音響波共振器の製造方法。
【請求項23】
前記底電極凹み部と前記圧電共振層との間の水平距離は、前記底電極凹み部を製造するプロセスにおいて許容される最小距離であり、
前記頂電極凹み部と前記圧電共振層との間の水平距離は、前記頂電極凹み部を製造するプロセスにおいて許容される最小距離である、ことを特徴とする請求項119及び請求項2~2のいずれか1項に記載のバルク音響波共振器の製造方法。
【請求項24】
前記底電極凹み部の線幅は、前記底電極凹み部を製造するプロセスにおいて許容される最小線幅であり、
前記頂電極凹み部の線幅は、前記頂電極凹み部を製造するプロセスにおいて許容される最小線幅である、ことを特徴とする請求項119及び請求項2~2のいずれか1項に記載のバルク音響波共振器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線周波数通信の技術分野に関し、特にバルク音響波共振器及びその製造方法並びにフィルタ、無線周波数通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話で使用される通信などの無線周波数(RF)通信は、無線周波数フィルタを用いる必要があり、各無線周波数フィルタは、いずれも所要の周波数を伝達し、全ての他の周波数を制限することができる。移動通信技術の発展とともに、移動データの転送量も急速に上昇している。従って、周波数リソースが限られており、可能な限り少ない移動通信デバイスを使用する必要があるという前提で、無線基地局、マイクロ基地局又はリピータなどの無線電力送信デバイスの送信パワーを向上させることは、考慮すべき問題となり、また、移動通信装置のフロントエンド回路におけるフィルタパワーの要求も高くなることを意味する。
【0003】
従来、無線基地局などのデバイスでのハイパワーフィルタは主にキャビティフィルタを主とし、そのパワーが100ワットに達するが、このようなフィルタのサイズが大きすぎる。誘電体フィルタを使用するデバイスもあり、その平均パワーが5ワット以上に達することができ、このフィルタのサイズも大きい。サイズが大きいので、この2つのフィルタは無線周波数フロントエンドチップに集積できない。
【0004】
MEMS技術が成熟するにつれて、バルク音響波(BAW)共振器で構成されるフィルタは、上記の2つのフィルタの存在する欠陥をうまく克服することができる。バルク音響波共振器はセラミック誘電体フィルタとは比較できない体積上の利点、弾性表面波(SAW)共振器とは比較できない作動周波数及びパワー容量上の利点を持ち、現在の無線通信システムの発展傾向になっている。
【0005】
バルク音響波共振器の本体部分は、底電極-圧電薄膜-頂電極で構成される「サンドイッチ」構造であり、圧電薄膜の逆圧電効果を利用して電気エネルギーを機械的エネルギーに変換し、バルク音響波共振器で構成されるフィルタにおいて定常波を音響波の形で形成する。音響波の速度が電磁波より5桁小さいので、バルク音響波共振器で構成されるフィルタのサイズが従来の誘電体フィルタなどより小さい。
【0006】
そのうちの1種のキャビティ型バルク音響波共振器の作動原理は、音響波を利用して、底電極又は支持層と空気の交界面で反射し、音響波を圧電層に制限し、共振を実現することであり、高いQ値、低い挿入損失、集積可能であるなどの利点を持っており、広く採用されている。
【0007】
しかし、従来製作されたキャビティ型バルク音響波共振器は、その品質係数(Q)をさらに向上させることができず、高性能の無線周波数システムの需要を満たすことができない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、品質係数を向上させ、さらにデバイスの性能を向上させることができるバルク音響波共振器及びその製造方法並びにフィルタ、無線周波数通信システムを提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を実現するために、本発明によれば、
基板と、
前記基板上に設けられる底電極層であって、前記底電極層と前記基板との間にキャビティが形成され、前記底電極層は、前記キャビティの領域に位置するとともに、前記キャビティの底面に近接する方向に凹んでいる底電極凹み部を有する底電極層と、
前記キャビティの上方の前記底電極層上に形成される圧電共振層と、
前記圧電共振層上に形成される頂電極層であって、前記頂電極層は、前記キャビティの領域に位置するとともに、前記キャビティの底面に近接する方向に凹んでいる頂電極凹み部を有し、前記頂電極凹み部及び前記底電極凹み部がいずれも前記圧電共振層の外周における前記キャビティの領域に位置し、前記底電極凹み部及び前記頂電極凹み部がいずれも前記圧電共振層を囲んだ周辺方向に延在しており、両者が少なくとも部分的に対向する頂電極層とを含むバルク音響波共振器が提供される。
【0010】
本発明は、少なくとも1つの本発明に記載のバルク音響波共振器を備えるフィルタをさらに提供する。
【0011】
本発明は、少なくとも1つの本発明に記載のフィルタを備える無線周波数通信システムをさらに提供する。
【0012】
また、本発明によれば、
基板を提供し、第1の犠牲層を一部の前記基板上に形成するステップと、
前記第1の犠牲層の下方における基板の表面を露出しない第1の溝を前記第1の犠牲層のエッジ部分に形成するステップと、
底電極層を前記第1の犠牲層上に形成し、前記第1の溝の表面を被覆する前記底電極層の部分を底電極凹み部として形成するステップと、
前記底電極凹み部を露出させる圧電共振層を前記底電極層上に形成するステップと、
第2の溝が形成される第2の犠牲層を前記圧電共振層の周囲において露出する領域に形成するステップと、
頂電極層を前記圧電共振層及び圧電共振層の周囲における一部の第2の犠牲層上に形成し、前記第2の溝を被覆する前記頂電極層の部分を頂電極凹み部として形成するステップと、
前記第2の犠牲層及び前記第1の犠牲層を除去し、前記第2の犠牲層及び前記第1の犠牲層の位置にキャビティを形成するステップであって、前記頂電極凹み部及び前記底電極凹み部がいずれも前記圧電共振層の外周における前記キャビティの領域に位置し、前記底電極凹み部及び前記頂電極凹み部がいずれも前記圧電共振層を囲んだ周辺方向に延在しており、両者が少なくとも部分的に対向するステップとを含むバルク音響波共振器の製造方法が提供される。
【0013】
従来技術に比べて、本発明の技術的解決手段は、以下の有益な効果を有する。
1、電気エネルギーを底電極及び頂電極に印加するとき、圧電共振層において生じた圧電現象により、厚さ方向に伝播する望ましい縦波及び圧電共振層の平面に沿って伝播する望ましくない横波を生成し、該横波は、圧電共振層の外周に浮いたキャビティ上の底電極凹み部及び頂電極凹み部に遮断され、圧電共振層に対応する領域に反射され、さらに横波がキャビティの外周における膜層に伝播すること起因する損失を減少させ、これによって、音響波損失を改善し、共振器の品質係数を向上させ、最終的にデバイスの性能を向上させることができる。
【0014】
2、圧電共振層の周辺とキャビティの周辺とが相互に分離され、すなわち、圧電共振層がキャビティの外周における基板の上方まで連続的に延在しておらず、バルク音響波共振器の有効作動領域をキャビティ領域に完全に制限することができ、底電極ブリッジ部及び頂電極ブリッジ部がいずれもキャビティの一部の辺のみまで延在しており(すなわち、底電極層及び頂電極層がキャビティを完全に被覆することない)、これによって、キャビティの周囲の膜層による、圧電共振層において生じた縦方向振動への影響を減少させ、性能を向上させる。
【0015】
3、底電極凹み部と頂電極凹み部とが相互に重なる部分を有しても、重なる部分の間が隙間構造であり、これによって、寄生パラメータを大幅に低減させることができ、頂電極層及び底電極層のキャビティ領域における電気的接触などの問題を回避し、デバイスの信頼性を向上させることができる。
【0016】
底電極ブリッジ部及び頂電極ブリッジ部とキャビティとが重なる部分は、いずれも浮いており、底電極ブリッジ部及び頂電極ブリッジ部は、キャビティの領域とは、相互にずれ(すなわち、両者は、キャビティ領域において重ならない)、これによって、寄生パラメータを大幅に低減させることができ、底電極ブリッジ部と頂電極ブリッジ部とが接触することにより引き起こされるリークや短絡などの問題を回避し、デバイスの信頼性を向上させることができる。
【0017】
5、前記底電極ブリッジ部は、それ自体が位置するキャビティの一部の上方において、キャビティを完全にカバーし、これによって、大面積の底電極ブリッジ部を用いて、その上方の膜層に強力な機械的支持を提供し、ことにより、キャビティの崩れのため、デバイスが失効してしまうという問題を回避する。
【0018】
6、頂電極凹み部が頂電極共振部の全周を囲み、底電極凹み部が底電極共振部の全周を囲み、圧電共振層の周辺から横波を全方位に遮断し、さらに好ましい品質係数を取得することができる。
【0019】
7、底電極凹み部、底電極共振部及び底電極ブリッジ部は、同じ膜層で形成され、膜厚が均一であり、頂電極凹み部、頂電極共振部及び頂電極ブリッジ部は、同じ膜層で形成され、膜厚が均一であり、これによって、プロセスを簡略化し、コストを削減することができ、底電極凹み部の膜厚が底電極層の他の部分とほぼ同じであり、頂電極凹み部の膜厚が頂電極層の他の部分とほぼ同じであるため、底電極凹み部及び頂電極凹み部が切断してしまう状況が発生することなく、デバイスの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】本発明の一実施例のバルク音響波共振器の上面構造模式図である。
図1B図1でのXX’及びYY’線に沿う断面構造模式図である。
図1C図1でのXX’及びYY’線に沿う断面構造模式図である。
図2A】本発明の他の実施例のバルク音響波共振器の上面構造模式図である。
図2B】本発明の他の実施例のバルク音響波共振器の上面構造模式図である。
図2C】本発明の他の実施例のバルク音響波共振器の上面構造模式図である。
図2D】本発明の他の実施例のバルク音響波共振器の上面構造模式図である。
図2E】本発明の別の実施例のバルク音響波共振器の断面構造模式図である。
図3】本発明の一実施例のバルク音響波共振器の製造方法のフローチャートである。
図4A】本発明の一実施例のバルク音響波共振器の製造方法における図1AでのXX’に沿う断面模式図である。
図4B】本発明の一実施例のバルク音響波共振器の製造方法における図1AでのXX’に沿う断面模式図である。
図4C】本発明の一実施例のバルク音響波共振器の製造方法における図1AでのXX’に沿う断面模式図である。
図4D】本発明の一実施例のバルク音響波共振器の製造方法における図1AでのXX’に沿う断面模式図である。
図4E】本発明の一実施例のバルク音響波共振器の製造方法における図1AでのXX’に沿う断面模式図である。
図4F】本発明の一実施例のバルク音響波共振器の製造方法における図1AでのXX’に沿う断面模式図である。
図4G】本発明の一実施例のバルク音響波共振器の製造方法における図1AでのXX’に沿う断面模式図である。
図4H】本発明の一実施例のバルク音響波共振器の製造方法における図1AでのXX’に沿う断面模式図である。
図5】本発明の他の実施例のバルク音響波共振器の製造方法における図1AでのXX’に沿う断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら、本発明の技術的解決手段についてさらに詳細説明する。以下の説明に基づいて、本発明の効果及び特徴はより明確になる。なお、図面は、いずれも非常に簡略化される形式、不正確な比例を用いており、本発明の実施例を容易、明瞭かつ補助的に説明するためのものに過ぎない。同様に、本明細書に記載の方法が一連のステップを含むと、本明細書に示されるこれらのステップの順序は、これらのステップを実行できる唯一の順序ではなく、いくつかの前記ステップは、省略されてもよく、及び/又は、本明細書で説明されていないいくつかの他のステップは、該方法に追加されてもよい。さらに本明細書におけるある物とある物とが「相互にずれる」ことの意味は、両者がキャビティ領域において重ならず、すなわち、両者のキャビティの底面での投影が重ならないことである。
【0022】
図1A図1Cを参照し、図1Aは、本発明の一実施例のバルク音響波共振器の上面構造模式図であり、図1Bは、図1でのXX’に沿う断面構造模式図であり、図1Cは、図1AでのYY’線に沿う断面構造模式図であり、本実施例のバルク音響波共振器は、基板と、底電極層104と、圧電共振層1051と、頂電極層108とを含む。
【0023】
前記基板は、ベース100と、前記ベース100上に被覆されるエッチング保護層101とを含む。前記ベース100は、当業者にとって周知される任意の適宜な基材であってもよく、たとえば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、炭化ケイ素(SiC)、シリコンゲルマニウム炭化(SiGeC)、ヒ化インジウム(InAs)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、又は、他のIII/V化合物半導体、これらの半導体で構成される多層構造などのうちの少なくともの1つであってもよいし、又は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、積層シリコン・オン・インシュレータ(SSOI)、積層シリコン・ゲルマニウム・オン・インシュレータ(S-SiGeOI)、積層シリコン・ゲルマニウム・オン・インシュレータ(SiGeOI)及びゲルマニウム・オン・インシュレータ(GeOI)であってもよいし、又は、両面研磨シリコンウエハー(Double Side Polished Wafers、DSP)であってもよいし、酸化アルミニウムなどのセラミックベース、セキエイ、又は、ガラスベースなどであってもよい。前記エッチング保護層101の材料は、任意の適宜な誘電体材料であってもよく、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒素酸化ケイ素、炭化窒化ケイ素などの材料のうちの少なくとも1つを含むがこれらに限られない。該エッチング保護層は、一方、最終的に製造されるバルク音響波共振器の構造安定性を向上させ、バルク音響波共振器とベース100との間の分離を強化させ、ベース100に対する抵抗率要求を低減させることができ、他方、バルク音響波共振器の製造過程で、基板の他の領域がエッチングされないように保護し、それにより、デバイスの性能及び信頼性を向上させる。
【0024】
底電極層104と基板との間にキャビティ102が形成される。図1A図1Cを参照し、本実施例では、前記キャビティ102は、エッチングプロセスにより、前記エッチング保護層101及びベース100の一部の厚さを順にエッチングすることで形成されてもよく、底部全体が前記基板に凹んだ溝構造となる。しかし、本発明の技術は、これに限定されず、図2Eを参照し、本発明の他の実施例では、前記キャビティ102は、エッチング保護層101の面に突設された犠牲層を後続に除去する方法を用いて除去するプロセスにより、エッチング保護層101の頂面の上方に形成されてもよく、全体が前記エッチング保護層101の面に突設されるキャビティ構造となる。また、本実施例では、キャビティ102の底面の形状は、矩形であってもよいが、本発明の他の実施例では、キャビティ102の底面形状は、さらに、円形、楕円形、又は、矩形以外の多角形(例えば、五角形、六角形)であってもよい。
【0025】
圧電共振層1051は、圧電共振部と呼ばれてもよく、前記キャビティ102の上方領域に位置し(つまり、前記キャビティ102の領域内に位置する)、バルク音響波共振器の有効作動領域に対応し、底電極層104と頂電極層108との間に設けられる。底電極層104は、順に接続される底電極ブリッジ部1040、底電極凹み部1041及び底電極共振部1042を含み、頂電極層108は、順に接続される頂電極ブリッジ部1080、頂電極凹み部1081及び頂電極共振部1082を含み、底電極共振部1042、頂電極共振部1082がいずれも圧電共振層1051と重なり、重なる底電極共振部1042、圧電共振層1051、及び頂電極共振部1082に対応する前記キャビティ102の領域は、前記バルク音響波共振器の有効作動領域102Aを構成し、キャビティ102の有効作動領域102A以外の部分は、無効領域102Bであり、圧電共振層1051は、有効作動領域102Aに位置するとともに、キャビティ102の周囲の膜層と分離され、バルク音響波共振器の有効作動領域をキャビティ102の領域に完全に制限することができ、キャビティの周囲の膜層による、圧電共振層において生じた縦方向振動に対する影響を減少させ、無効領域102Bにおいて生じた寄生パラメータを低減させ、デバイスの性能を向上させることができる。底電極共振部1042、圧電共振層1051、頂電極共振部1082は、いずれも上下面が平面である平坦構造であり、前記底電極凹み部1041は、前記有効作動領域102Aの外周におけるキャビティ102Bの上方に位置するとともに、前記底電極共振部1042に電気的に接続され、前記キャビティの底面に近接する方向に凹んでおり、前記頂電極凹み部1081は、前記有効作動領域102Aの外周におけるキャビティ102Bの上方に位置するとともに、前記頂電極共振部1082に電気的に接続され、前記キャビティ102の底面に近接する方向に凹んでいる。底電極凹み部1041全体が底電極共振部1042の頂面より低く、頂電極凹み部1081全体が頂電極共振部1082の頂面より低く、前記頂電極凹み部1081及び前記底電極凹み部1041がいずれも前記圧電共振層1051の外周におけるキャビティ領域(すなわち、102B)に位置する。底電極凹み部1041と頂電極凹み部1081とは、中実構造であってもよく、中空構造であってもよく、好ましくは中空構造であり、これによって、底電極層104と頂電極層108の膜厚を均一にすることができ、中実の底電極凹み部1041の重力のため、底電極共振部1042と圧電共振層1051とが分離されてしまうことを回避し、中実の頂電極凹み部1081により引き起こされる、頂電極共振部1082及びその下方の圧電共振層1051と底電極共振部1042の崩れ変形を回避し、さらに共振係数を改善する。前記底電極共振部1042、前記頂電極共振部1082は、いずれも多角形であり(頂面及び底面がいずれも多角形である)、前記底電極共振部1042と前記頂電極共振部1082の形状は、類似してもよいし(図2A~2B及び2Dに示す)、又は、完全に同じであってもよい(図1A及び図2Cに示す)。圧電共振層1051は、前記底電極共振部1042及び前記頂電極共振部1082の形状に類似する多角形構造である。
【0026】
図1A図1Cを参照し、本実施例では、底電極層104、圧電共振層1051及び頂電極層108が「腕時計」状の膜層構造を構成し、底電極ブリッジ部1040が底電極共振部1042の1つの角と位置合わせされ、頂電極ブリッジ部1080が頂電極共振部1082の1つの角と位置合わせされ、底電極ブリッジ部1040及び頂電極ブリッジ部1080が「腕時計」の2つのバンドに相当し、前記底電極凹み部1041は、前記底電極共振部1042の辺に沿って設けられるとともに、前記底電極ブリッジ部1040と前記底電極共振部1042とが位置合わせされる領域のみに設けられ、前記頂電極凹み部1081は、前記頂電極共振部1082の辺に沿って設けられるとともに、前記頂電極ブリッジ部1080と前記頂電極共振部1082とが位置合わせされる領域のみに設けられ、前記底電極凹み部1041及び前記頂電極凹み部1081は、「腕時計」の文字盤と2つのバンドとの間の接続構造に相当し、有効領域102Aでの底電極共振部1042、圧電共振層1051、頂電極共振部1082の積層構造が「腕時計」の文字盤に相当し、該文字盤は、バンド部がキャビティ102の周囲の基板上の膜層に接続されるほか、残りの部分がいずれもキャビティ102を介してキャビティ102の周囲の基板上の膜層と分離される。すなわち、本実施例では、前記底電極凹み部1041及び前記頂電極凹み部1081がいずれも前記圧電共振層1051の周辺方向を囲んで延在しており、前記底電極凹み部1041及び前記頂電極凹み部1081は、それぞれ圧電共振層1051の周辺方向に沿って、圧電共振層1051の一部の辺のみに囲まれ、圧電共振層1051が位置する平面を参照とし、前記頂電極凹み部1081及び前記底電極凹み部1041は、それぞれ圧電共振層1051の両側に位置するとともに、完全に対向し、これによって、所定の横波遮断効果を実現するとともに、頂電極ブリッジ部1080及び底電極ブリッジ部1040で被覆されていない無効領域102Bの面積の減少に寄与し、さらにデバイスのサイズの減少に寄与し、また、頂電極ブリッジ部1080及び底電極ブリッジ部1040の面積の減少に寄与し、寄生パラメータをさらに減少させ、デバイスの電気的性能を向上させる。前記底電極ブリッジ部1040は、前記底電極凹み部1041の前記底電極共振部1042と背向する側に電気的に接続され、前記底電極凹み部1041の上から、前記底電極凹み部1041の外側に浮いたキャビティ(すなわち、102B)の上方を経由した後に、前記キャビティ102の外周における一部のエッチング保護層101の上方まで延在しており、前記頂電極ブリッジ部1080は、前記頂電極凹み部1081の前記頂電極共振部1082と背向する側に電気的に接続され、前記頂電極凹み部1081の上から、前記頂電極凹み部1081の外側に浮いたキャビティ(すなわち、102B)の上方を経由した後に、前記キャビティ102の外周における一部のエッチング保護層101の上方まで延在しており、前記底電極ブリッジ部1040及び前記頂電極ブリッジ部1080が前記キャビティ102の2つの対向する辺の外側の基板の上方まで延在しており、このとき、前記底電極ブリッジ部1040と前記頂電極ブリッジ部1080とは、キャビティ102領域において相互にずれ(すなわち、両者が重ならない)、これによって、寄生パラメータを低減させ、底電極ブリッジ部と頂電極ブリッジ部とが接触することによる、リークや短絡などの問題を回避し、デバイスの性能を向上させることができる。前記底電極ブリッジ部1040は、対応する信号線を接続することにより、底電極凹み部1041を介して底電極共振部1042に対応する信号を転送するために用いられ、前記頂電極ブリッジ部1080は、対応する信号線を接続することにより、頂電極凹み部1081を介して頂電極共振部1082に対応する信号を転送するために用いられ、それにより、バルク音響波共振器が正常に作動できるようにし、具体的には、底電極ブリッジ部1040、頂電極ブリッジ部1080を介してそれぞれ底電極共振部1042及び頂電極共振部1082に時変電圧を印加することにより、縦方向延在モード、又は、「ピストン」モードを励起し、圧電共振層1051は、電気エネルギー形態のエネルギーを縦波に変換し、この過程で寄生横波を生成し、底電極凹み部1041及び頂電極凹み部1081は、これらの横波がキャビティの外周における膜層に伝播することを遮断し、それをキャビティ102の領域内に制限することができ、それにより、横波によるエネルギー損失を回避し、品質係数を向上させる。
【0027】
好ましくは、頂電極凹み部1081及び底電極凹み部1041の線幅は、それぞれ対応するプロセスに許容される最小線幅であり、底電極凹み部1041と圧電共振層1051との間の水平距離及び頂電極凹み部1081と圧電共振層1051との間の水平距離は、いずれも対応するプロセスに許容される最小距離であり、これによって、頂電極凹み部1081及び底電極凹み部1041が所定の横波遮断効果を実現できるとともに、デバイス面積の減少に寄与する。
【0028】
また、前記頂電極凹み部1081の側壁は、前記圧電共振層の頂面に対して、傾斜した側壁であり、図1Bに示すように、前記頂電極凹み部1081の図1AでのXX’線に沿う断面は、台形、又は、台形に類似する形状であり、前記頂電極凹み部1081の2つの側壁と前記圧電共振層1051の頂面との間の角度β1、β2がいずれも45度以下であり、これによって、頂電極凹み部1081の側壁が垂直過ぎるため、頂電極凹み部1081が切断してしまい、さらに頂電極共振部1082に信号を転送する効果に影響を与えることを回避し、また、頂電極層108全体の厚さ均一性をさらに向上させることができ、前記底電極凹み部1041の側壁は、前記圧電共振層の底面に対して、傾斜した側壁であり、図1Bに示すように、前記底電極凹み部1041の図1AでのXX’線に沿う断面は、台形、又は、台形に類似する形状であり、前記底電極凹み部1041の2つの側壁と前記圧電共振層1051の底面との間の角度α1、α2がいずれも45度以下であり、これによって、前記底電極凹み部1041の側壁が垂直過ぎるため、底電極層104が切断してしまい、さらに底電極共振部1042に信号を転送する効果に影響を与えることを回避し、また、底電極層104の厚さ均一性をさらに向上させることができる。
【0029】
本発明の1つの好適な実施例では、底電極共振部1042、底電極凹み部1041及び底電極ブリッジ部1040は、同じ膜層の製造プロセス(すなわち、同じ膜層製造プロセス)で形成され、頂電極共振部1082、頂電極凹み部1081及び頂電極ブリッジ部1080は、同じ膜層の製造プロセス(すなわち、同じ膜層製造プロセス)で形成され、すなわち、底電極共振部1042、底電極凹み部1041及び底電極ブリッジ部1040は、一体に製作される膜層であり、頂電極共振部1082、頂電極凹み部1081及び頂電極ブリッジ部1080は、一体に製作される膜層であり、これによって、プロセスを簡略化し、コストを削減し、底電極共振部1042、底電極凹み部1041及び底電極ブリッジ部1040を製作するための膜層材料と、頂電極共振部1082、頂電極凹み部1081及び頂電極ブリッジ部1080を製作するための膜層材料とは、それぞれ、本分野技術において周知される任意の適宜な導電性材料又は半導体材料を用いてもよく、導電性材料は、導電性を有する金属材料であってもよく、たとえば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、白金(Pt)、金(Au)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びルテニウム(Ru)のうちの1種又は複数種であり、前記半導体材料は、たとえば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiGeCなどである。当然ながら、本発明の他の実施例では、プロセスコスト及びプロセス技術で許容される前提で、底電極共振部1042、底電極凹み部1041及び底電極ブリッジ部1040は、異なる膜層製造プロセスで形成されてもよく、頂電極共振部1082、頂電極凹み部1081及び頂電極ブリッジ部1080は、異なる膜層製造プロセスで形成されてもよい。
【0030】
図2A図2Dを参照し、横波遮断効果をさらに向上させるために、底電極凹み部1041が底電極共振部1042のより多くの連続辺まで延在しており、頂電極凹み部1081が頂電極共振部1082のより多くの連続辺まで延在しており、頂電極凹み部1081と底電極凹み部1041とが垂直方向に重なる場合、頂電極凹み部1081と底電極凹み部1041とが垂直方向に隙間を有するため、層間接触することない。たとえば、図2Aを参照し、底電極凹み部1041と頂電極凹み部1081とのキャビティ102の底面での投影は、ちょうど接続され、又は、ほぼ接続されてもよく、すなわち、底電極凹み部1041と頂電極凹み部1081とのキャビティ102底面での投影は、完全に密閉な環、又は、ほぼ密閉な環を構成してもよく、これによって、底電極凹み部1041と頂電極凹み部1081とが嵌合されることで、圧電共振層1051の全ての周辺に対して横波遮断を行うことができ、この場合、底電極凹み部1041と頂電極凹み部1081とのキャビティ102底面での投影大きさは、両者を組み合わせてなる環を均一に分割してもよく(このとき、底電極凹み部1041と頂電極凹み部1081とは、それぞれ圧電共振層1051に位置するとともに、全ての部分がいずれも完全に対向する)、均一に分割しなくてもよい(このとき、底電極凹み部1041と頂電極凹み部1081とは、それぞれ圧電共振層1051の両側に位置するとともに、一部だけ対向する)。またたとえば、図2Bを参照し、圧電共振層1051、頂電極共振部1082及び底電極共振部1042は、いずれも五角形の平面構造であり、圧電共振層1051の面積が最小であり、頂電極共振部1082がそれより大きく、底電極共振部1042の面積が最大であり、前記底電極凹み部1041は、底電極共振部1042の各辺に沿って設けられるとともに、各辺に接続されており、前記頂電極凹み部1081の前記頂電極ブリッジ部1080より接続される境界のキャビティ102の底面での一部の投影又は全ての投影は、底電極凹み部1041のキャビティ102の底面での投影から露出され、前記頂電極凹み部1081は、頂電極共振部1082の各辺に沿って設けられるとともに、各辺に接続されており、前記底電極凹み部1041の前記底電極ブリッジ部1040より接続される境界のキャビティ102の底面での一部の投影又は全ての投影は、頂電極凹み部1081のキャビティ102の底面での投影から露出され、これによって、底電極凹み部1041と頂電極ブリッジ部1080とが重ならず、頂電極凹み部1081と底電極ブリッジ部1040とが重ならないようにし、さらに寄生パラメータを低減させることができ、また、底電極凹み部1041と頂電極凹み部1081とは、相互に少しずれてもよく、さらに完全にずれてもよく、すなわち、このとき、底電極凹み部1041と頂電極凹み部1081とは、圧電共振層1051に垂直な方向に、一部が上下に位置合わせされる(又は、重なると呼ばれる)、又は、完全にずれるが、圧電共振層1051の周辺方向に、全ての部分がいずれも対向し、それにより、キャビティ102の底面での投影構造において、底電極凹み部1041が頂電極凹み部1081を部分的に囲むことができ、このようにして、底電極凹み部1041と頂電極凹み部1081とが嵌合されることで、圧電共振層1051の全ての周辺に対して横波遮断を行うことができ、底電極凹み部1041と頂電極凹み部1081との位置合わせ要求を低減させることができ、プロセスの製作難度の低減に寄与する。またたとえば、図2Cを参照し、圧電共振層1051、頂電極共振部1082及び底電極共振部1042は、いずれも五角形の平面構造であり、圧電共振層1051の面積が最小であり、頂電極共振部1082と底電極共振部1042とは、面積、形状などが同じであるか、又は、ほぼ同じであり、底電極凹み部1041は、底電極共振部1042の全周を囲み、頂電極凹み部1081は、頂電極共振部1082の全周を囲み、底電極凹み部1041と頂電極凹み部1081とのキャビティ102底面での投影が重なり、頂電極共振部1082と底電極共振部1042とのキャビティ102底面での投影が重なり、これによって、垂直方向に位置する異なる高さの底電極凹み部1041及び頂電極凹み部1081がいずれも密閉な環状を呈することにより、圧電共振層1051の生じた異なる高さの横波を遮断することができる。つまり、底電極凹み部1041が底電極共振部1042のより多くの連続辺まで延在しており、頂電極凹み部1081が頂電極共振部1082のより多くの連続辺まで延在している場合、前記底電極凹み部1041及び前記頂電極凹み部1081がいずれも前記圧電共振層1051の周辺方向を囲んで延在しており、前記底電極凹み部1041及び前記頂電極凹み部1081は、それぞれ圧電共振層1051の周辺方向に沿って圧電共振層1051の周辺を部分的に囲み(図2A~2Bに示す)、このとき、前記頂電極凹み部1081及び前記底電極凹み部1041の両者の少なくとも一部が対向し、又は、前記底電極凹み部1041及び前記頂電極凹み部1081は、それぞれ圧電共振層1051の周辺方向に沿って圧電共振層1051の全周を囲み(図2Cに示す)、このとき、前記頂電極凹み部1081及び前記底電極凹み部1041の両者の全ての部分がいずれも対向する。
【0031】
図2A~2Dを参照し、本発明のこれらの実施例では、前記底電極ブリッジ部1040は、前記底電極凹み部1041の前記底電極共振部1042と背向する少なくとも1つの辺、又は、少なくとも1つの角に電気的に接続され、前記底電極凹み部1041の対応する辺から、前記底電極凹み部1041の外側に浮いたキャビティ(すなわち、102B)の上方を経由した後に、前記キャビティ102の外周における一部のエッチング保護層101の上方まで延在しており、前記頂電極ブリッジ部1080は、前記頂電極凹み部1081の前記頂電極共振部1082と背向する少なくとも1つの辺又は少なくとも1つの角に電気的に接続され、前記頂電極凹み部1081から、前記頂電極凹み部1081の外側に浮いたキャビティ(すなわち、102B)の上方を経由した後に、前記キャビティ102の外周における一部のエッチング保護層101の上方まで延在しており、前記頂電極ブリッジ部1080と前記底電極ブリッジ部1040との前記キャビティ102の底面での投影は、ちょうど接続されてもよいし、相互に分離されてもよく、これによって、前記頂電極ブリッジ部1080と前記底電極ブリッジ部1040とは、キャビティ102の領域において、重ならずに相互にずれる。たとえば、図1A図2A~2Cに示すように、底電極ブリッジ部1040は、前記キャビティ102の1本の辺のみの外周における一部の基板の上方まで延在しており、前記頂電極ブリッジ部1080は、前記キャビティ102の1本の辺のみの外周における一部の基板の上方まで延在しており、前記頂電極ブリッジ部1080と前記底電極ブリッジ部1040との前記キャビティ102の底面での投影が相互に分離され、これによって、前記頂電極ブリッジ部1080と前記底電極ブリッジ部1040とが重なるとき、寄生パラメータの導入や、引き起こす可能性があるリークや短絡などの問題を回避する。しかし、好ましくは、図2Dを参照し、前記底電極凹み部1041が前記底電極共振部1042の複数の連続辺に沿って設けられるとき、前記底電極ブリッジ部1040は、前記底電極凹み部1041の前記底電極共振部1042と背向する全ての辺に沿って設けられるとともに、前記キャビティ102の外周における基板まで連続的に延在しており、これによって、底電極ブリッジ部1040は、前記キャビティ102の外周におけるより多くの方向での一部の基板の上方まで延在していることができ、すなわち、このとき、前記底電極ブリッジ部1040は、それ自体が位置するキャビティの一部の上方においてキャビティ102を完全にカバーし、それにより、大面積の底電極ブリッジ部1040の敷設により、有効作動領域102Aの膜層に対する支持力を増加させ、キャビティ102の崩れを防止する。さらに好ましくは、前記底電極ブリッジ部1040が前記キャビティ102の外周におけるより多くの方向での一部の基板の上方まで延在しているとき、前記頂電極ブリッジ部1080は、前記キャビティ102の外周における1つの方向のみでの一部の基板の上方まで延在しており、たとえば、キャビティ102の上面形状が矩形である場合、前記頂電極ブリッジ部1080がキャビティ102の1本の辺のみの外周における基板の上方まで延在しており、底電極ブリッジ部1040が前記キャビティ102の他の3本の辺まで延在しており、このとき、前記頂電極ブリッジ部1080と前記底電極ブリッジ部1040との前記キャビティ102の底面での投影は、ちょうど接続されるか、又は、相互に分離され、すなわち、このとき、前記底電極ブリッジ部1040は、それ自体が位置するキャビティの一部の上方において、キャビティ102を完全にカバーし、前記頂電極ブリッジ部1080の幅方向に、前記頂電極ブリッジ部1080と重ならない。これによって、頂電極ブリッジ部を大面積設けると、底電極ブリッジ部などの構造と垂直方向に重なるため、多すぎる寄生パラメータが導入されることを回避し、デバイスの電気的性能及び信頼性をさらに向上させることができる。
【0032】
本発明の各実施例では、前記キャビティ102の上面形状が多角形である場合、底電極ブリッジ部1040及び頂電極ブリッジ部1080のそれぞれから、前記キャビティの少なくとも1つの辺が露出され、これによって、底電極凹み部1041が接続される底電極共振部1042、及び頂電極凹み部1081が接続される頂電極共振部1082は、それぞれ少なくとも一端が完全に浮いており、このように、無効領域102Bの面積の減少に寄与し、さらに無効領域102Bにおいて生じた寄生コンデンサなどの寄生パラメータを減少させ、デバイスの性能を向上させる。好ましくは、前記底電極凹み部1041は、前記キャビティ102の上方において少なくとも前記頂電極ブリッジ部1080と相互にずれ(すなわち、両者がキャビティ領域において重ならない)、前記頂電極凹み部1081は、前記キャビティ102の上方において少なくとも前記底電極ブリッジ部1040と相互にずれ(すなわち、両者がキャビティ領域において重ならない)、前記頂電極凹み部1081と前記底電極凹み部1041との前記キャビティ102の底面での投影は、ちょうど接続されるか、又は、相互にずれるか、又は、一部だけ重なる。これによって、無効領域102Bにおいて生じた寄生コンデンサなどの寄生パラメータをさらに低減させ、デバイスの性能を向上させる。
【0033】
なお、最適な横波遮断効果を実現し、小さいサイズのデバイスの製作に寄与するために、頂電極凹み部1081及び底電極凹み部1041が有効作動領域102Aに近接するほど、好ましく、頂電極凹み部1081及び底電極凹み部1041の線幅が小さいほど、好ましく、好ましくは、頂電極凹み部1081及び底電極凹み部1041の線幅はそれぞれ、対応するプロセスに許容される最小線幅であり、頂電極凹み部1081及び底電極凹み部1041と有効作動領域102Aと(すなわち、圧電共振層1051と)の水平距離はそれぞれ、対応するプロセスに許容される最小距離である。
【0034】
なお、上記各実施例では、頂電極共振部1082と底電極共振部1042とは、形状が類似し又は同じであり、面積が同じであるか、又は、底電極共振部1042の面積が頂電極共振部1082の面積より大きいが、本発明の技術的解決手段は、これに限られない。本発明の他の実施例では、頂電極共振部1082と底電極共振部1042との形状は、類似しなくてもよいが、頂電極凹み部1081及び底電極凹み部1041は、形状が圧電共振層1051の形状に一致し、圧電共振層1051の少なくとも1つの辺に沿って延在できることが好ましい。さらに、研究によれば、バルク音響波共振器の寄生横波のほとんどが有効作動領域102A上の膜層とキャビティの外周における基板との間の接続構造を介して伝達されることを発見し、従って、本発明の各実施例では、有効作動領域102Aの膜層を効果的に支持できることを確保する前提で、頂電極ブリッジ部1080の面積(つまり、線幅)を最小、底電極ブリッジ部1040の面積(つまり、線幅)を最小にできる限り制御することができる。
【0035】
本発明の一実施例は、上記の任意の本発明の実施例に記載の少なくとも1つのバルク音響波共振器を備えるフィルタをさらに提供する。
【0036】
本発明の一実施例は、本発明の一実施例に記載の少なくとも1つのフィルタを備える無線周波数通信システムをさらに提供する。
【0037】
図3を参照し、本発明の一実施例は、本発明のバルク音響波共振器(たとえば、図1A図2Dに示すバルク音響波共振器)の製造方法であって、
基板を提供し、第1の犠牲層を一部の前記基板上に形成するステップS1と、
前記第1の犠牲層の下方の基板の面が露出されていない第1の溝を前記第1の犠牲層のエッジ部分に形成するステップS2と、
底電極層を前記第1の犠牲層上に形成し、前記底電極層の前記第1の溝の面に被覆される部分が底電極凹み部を形成するステップS3と、
圧電共振層を前記底電極層上に形成し、圧電共振層から前記底電極凹み部を露出させるステップS4と、
第2の溝が形成される第2の犠牲層を前記圧電共振層の周囲から露出される領域に形成するステップS5と、
頂電極層を前記圧電共振層及び圧電共振層の周囲の一部の第2の犠牲層上に形成し、前記頂電極層の前記第2の溝に被覆される部分が頂電極凹み部を形成するステップS6と、
前記第2の犠牲層及び前記第1の犠牲層を除去し、前記第2の犠牲層及び前記第1の犠牲層の位置にキャビティを形成するステップS7と、を含む、製造方法をさらに提供する。
【0038】
図1A、1B及び図4A~4Bを参照し、本実施例のステップS1で、基板をエッチングして溝を形成し、溝に材料を充填するプロセスにより、第1の犠牲層を一部の基板上に形成し、具体的な実現過程は、以下を含む。
【0039】
まず、図1A及び図4Aを参照し、基板を提供し、具体的には、ベース100を提供し、ベース100にエッチング保護層101を被覆する。前記エッチング保護層101は、熱酸化、熱窒化、熱酸窒化などの熱処理方法、又は、化学気相堆積、物理気相堆積又はアトミックレイヤデポジションなどの堆積方法など、任意の適宜なプロセス方法によって、ベース100上に形成されてもよい。さらに、保護層101のエッチング厚さは、実際のデバイスプロセスのニーズに応じて合理的に設定されてもよく、ここで具体的には限定しない。
【0040】
続いて、図1A、1B及び図4Aを参照し、ホトエッチング及びエッチングプロセスにより、基板をエッチングすることにより、少なくとも1つの第3の溝102’を形成する。該エッチングプロセスは、湿式エッチング又は乾式エッチングプロセスであってもよく、乾式エッチングプロセスを用いることが好ましく、乾式エッチングは、反応性イオンエッチング(RIE)、イオンビームエッチング、プラズマエッチング、又は、レーザ切断を含むがこれらに限られない。第3の溝102’の深さ及び形状は、全て、製造すべきバルク音響波共振器に必要なキャビティの深さ及び形状に決められ、第3の溝102’の横断面形状は、矩形であり、本発明の他の実施例では、第3の溝102’の横断面は、さらに、円形、楕円形又は矩形以外の他の多角形(五角形、六角形など)など、他の任意の適宜な形状であってもよい。
【0041】
次に、図1A、1B及び図4Bを参照し、第1の犠牲層103を形成して第3溝102’に充填する。前記第1の犠牲層103は、材質が異なるとともに、下から上に積層される第1のサブ犠牲層1031及び第2のサブ犠牲層1032を含み、第1のサブ犠牲層1031及び第2のサブ犠牲層1032を設けることにより、この後に第1の溝をエッチングして形成するときに、エッチングの停止点を正確に制御し、さらに、この後に形成される底電極凹み部1041の凹み深さを正確に制御することができ、上記から分かるように、第2のサブ犠牲層1032の厚さにより、この後に形成される底電極凹み部1041の凹み深さが決められる。2つの方法を用いて第1の犠牲層103を形成してもよい。
【0042】
続いて図1A、1B及び図4Bを参照し、第3溝102’に第1の犠牲層103を充填する1つの方法は、以下を含む。まず、気相堆積又はエピタキシャル成長プロセスにより、第1のサブ犠牲層1031を前記第3溝102’に充填し、前記第1のサブ犠牲層1031として選択される材料は、いくつかのプロセスにより処理された後に、ベース100及びエッチング保護層101と異なる材料に変換することができ、本実施例では、前記第1のサブ犠牲層1031は、ベース100と異なる半導体材料を選択し、化学気相堆積プロセスにより基板上に形成し、このとき、前記第1のサブ犠牲層1031は、前記第3溝102’に充填されるだけではなく、第3溝102’の周囲のエッチング保護層101の面に被覆され、次に、化学機械平坦化(CMP)プロセスにより、前記第1のサブ犠牲層1031の頂部を前記エッチング保護層101の頂面まで平坦化することにより、前記第1のサブ犠牲層1031を第3溝102’のみに位置させ、続いて、第1のサブ犠牲層1031の材質に基づいて、酸化処理、窒化処理及びイオン注入のうちの少なくとも1種など、適宜な表面改質処理プロセスを選択し、前記第1のサブ犠牲層1031の頂部の所定の厚さに対して表面改質処理を行うことにより、この一部の厚さの第1のサブ犠牲層1031を他の材質の第2のサブ犠牲層1032に変換し、前記第2のサブ犠牲層1032及び表面改質処理されていないその下方の残りの前記第1のサブ犠牲層1031は、前記第3溝102’に満充填される第1の犠牲層を構成し、たとえば、ベース100がSiベースであり、第1のサブ犠牲層1031がGeであり、エッチング保護層101が酸化ケイ素であると、酸素ガス雰囲気において、第1のサブ犠牲層1031の頂部の所定の厚さに対して酸化処理を行って、第2のサブ犠牲層1032として酸化ゲルマニウムに変換してもよく、第2のサブ犠牲層1032の厚さは、この後に形成する必要がある底電極凹み部1041の凹み深さに決められ、この後に、表面処理プロセスのため、充填された第1の犠牲層103の頂面とその周囲のエッチング保護層101の頂面とが面一でなくなる可能性があり、平坦な音響薄膜の後続形成に不利であり、従って、化学機械平坦化(CMP)プロセスにより、さらに前記第2のサブ犠牲層1032の頂部を前記エッチング保護層101の頂面まで平坦化する必要があり、それにより、前記第1の犠牲層103の頂面とその周囲のエッチング保護層101の頂面とを再び面一にし、それにより、後続のプロセスに平坦な操作面を提供する。
【0043】
続いて図1A、1B及び図4Bを参照し、第3溝102’に第1の犠牲層103を充填する他の方法は、以下を含む。まず、エピタキシャル成長プロセス、熱酸化プロセス、気相堆積プロセス又は塗布プロセスなどの適宜なプロセスにより、第1のサブ犠牲層1031とされる材料を前記第3溝102’に充填し、充填された前記第1のサブ犠牲層1031の材料は、当業者にとって周知される、エッチング保護層101及びベース100と異なる任意の材料であってもよく、例えば、アモルファス炭素、フォトレジスト、誘電体材料(たとえば、窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、多孔質材料など)、又は、半導体材料(たとえば、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム)などであり、このとき、形成される第1のサブ犠牲層1031が少なくとも前記第3溝102’に満充填され、次に、乾式エッチングプロセス、又は、湿式エッチングプロセスを用いて、前記第1のサブ犠牲層1031の材料をエッチングバックすることにより、前記第3溝102’以外の前記第1のサブ犠牲層1031の材料を除去し、前記第3溝102’での前記第1のサブ犠牲層1031の材料の頂面を前記ベース100の頂面より低くし、前記第1のサブ犠牲層1031を形成し、前記エッチングバックの深さは、この後に形成する必要がある第1の溝の深さ(すなわち、底電極での底電極凹み部の凹み深さ)に決められ、続いて、エピタキシャル成長プロセス、熱酸化プロセス、気相堆積プロセス、又は、塗布プロセスなどの適宜なプロセスにより、第2のサブ犠牲層1032を前記第3溝102’に充填し、前記第2のサブ犠牲層1032は、前記第3溝102’に満充填され、材質が前記第1のサブ犠牲層1031と異なり、前記第2のサブ犠牲層1032及びその下方の前記第1のサブ犠牲層1031は、前記第3溝102’に満充填された前記第1の犠牲層103を形成し、第2のサブ犠牲層1032の材質は、たとえば、窒化ケイ素、窒素酸化ケイ素、リンシリコンガラスなどの誘電体材料であってもよい。
【0044】
図1A、1B及び図4Cを参照し、ステップS2で、ホトエッチングとエッチングの組合せプロセスにより、第1の犠牲層103に対応する製作すべきバルク音響波共振器の有効作動領域(図4Hでの102A)の外周における第2のサブ犠牲層1032をエッチングしてもよく、エッチングを第1のサブ犠牲層1031の頂面まで停止してもよいし、第1のサブ犠牲層1031まで停止し、さらに第1の溝1033を形成するように、一定のオーバーエッチングが存在してもよい。第1の溝1033の線幅、大きさ、形状及び位置により、この後に形成される底電極での底電極凹み部の線幅、大きさ、形状及び位置が決められる。本実施例では、第1の溝1033の図2AのXX’に沿う縦断面は、いずれも台形であり、第1の溝1033の側壁と第2のサブ犠牲層1032の頂面との間の角度φ1、φ2が45度より小さく、これによって、後続の底電極材料層の堆積に寄与し、この後に形成される底電極層の第3溝102’領域内での厚さ均一性をさらに向上させる。本発明の他の実施例では、第1の溝1033の断面形状は、さらに上から下に狭くなる球冠であってもよく、すなわち、図1AのXX’線に沿う縦断面は、U字状である。好ましくは、前記第1の溝1033と前記有効作動領域102Aとの間の水平距離は、第1の溝1033のエッチング位置合わせプロセスに許容される最小距離であり、前記第1の溝1033の線幅は、対応するプロセスに許容される最小線幅である。
【0045】
図1A、1B及び4Dを参照し、ステップS3で、まず、予め形成される底電極の材料に応じて、適宜な方法を選択して、エッチング保護層101、第2のサブ犠牲層1032及び第1の溝1033の面に底電極材料層(図示せず)を被覆してもよく、たとえば、マグネトロンスパッタリング、蒸着などの物理気相堆積、又は、化学気相堆積方法によって底電極材料層を形成し、次に、底電極パターンが定義されるフォトレジスト層(図示せず)をリソグラフィプロセスで底電極材料層上に形成し、フォトレジスト層をマスクとして、前記底電極材料層をエッチングすることにより、底電極層(すなわち、残りの底電極材料層)104を形成し、この後に、フォトレジスト層を除去する。底電極材料層は、本分野技術において周知される任意の適宜な導電性材料又は半導体材料を用いることができ、導電性材料は、導電性を有する金属材料であってもよく、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、白金(Pt)、金(Au)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)及びルテニウム(Ru)のうちの1種又は複数種であり、前記半導体材料は、たとえば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiGeCなどである。本実施例では、底電極層(残りの底電極材料層)104は、この後に形成される有効作動領域102Aに被覆される底電極共振部1042と、第1の溝1033に被覆される底電極凹み部1041と、底電極凹み部1041の一側から第2のサブ犠牲層1032の面を経由して、第3の溝102’の外側での一部のエッチング保護層101上まで延在している底電極ブリッジ部1040と、底電極共振部1042及び底電極凹み部1041といずれも分離される底電極の外周部1043とを含み、該底電極の外周部1043は、該領域の形成すべきバルク音響波共振器の1つの金属接点として、底電極ブリッジ部1040の底電極共振部1042と背向する側に接続されてもよいし、隣接するバルク音響波共振器の底電極ブリッジ部の一部として、底電極ブリッジ部1040と分離されてもよく、本発明の他の実施例では、底電極の外周部1043は、省略されてもよい。底電極共振部1042の上面形状は、五角形であってもよく、本発明の他の実施例では、四角形又は六角形などであってもよく、底電極凹み部1041は、底電極ブリッジ部1040と底電極共振部1042との間に設けられ、前記底電極凹み部1041は、前記底電極共振部1042の少なくとも1つの辺に沿って設けられるとともに、前記底電極共振部1042の対応する辺に接続され、前記底電極ブリッジ部1040は、前記底電極凹み部1041の前記底電極共振部1042と背向する少なくとも1つの辺、又は、少なくとも1つの角に電気的に接続され、前記底電極凹み部1041の対応する辺から、前記底電極凹み部1041の外側に被覆された第2のサブ犠牲層1032の頂面を経由した後に、前記第3の溝102’の外周における一部のエッチング保護層101の頂面上まで延在しており、すなわち、前記底電極凹み部1041は、前記底電極共振部1042の辺に沿って設けられるとともに、前記底電極ブリッジ部1040と前記底電極共振部1042とが位置合わせされる領域に少なくとも設けられ、たとえば、前記底電極凹み部1041は、前記底電極共振部1042の全周を囲んで、閉環構造を構成してもよく(図2Cを参照)、前記底電極共振部1042の1つの辺のみに沿って設けられてもよく、前記底電極共振部1042の2本又は2本以上の連続辺に沿って設けられる開環構造であってもよい(図2A~2B、2Dを参照し)。底電極凹み部1041の形状、線幅及び有効作動領域102Aとの間の水平距離などは、いずれも第1の溝1033の成形プロセスに決められる。好ましくは、前記底電極ブリッジ部1040は、それ自体が位置するキャビティの一部の上方において、キャビティ102を完全にカバーし、前記頂電極ブリッジ部1080の幅方向に、前記頂電極ブリッジ部1080と重ならないことにより、後続の膜層に対する支持力を向上させ、前記頂電極ブリッジ部1080と重なるため、不必要な寄生パラメータが導入されることをできるだけ回避する。底電極共振部1042は、無線周波数(RF)信号などの電気信号を受信又は提供する入力電極又は出力電極として用いられてもよい。本実施例では、底電極凹み部1041は、第1の溝1033に満充填されておらず、その上面が中空構造を構成し、底電極凹み部1041、底電極共振部1042、及び底電極ブリッジ部1040は、同じ厚さを有するが、本発明は、これに限られない。本発明の他の実施例では、底電極凹み部1041は、第1の溝1033に満充填される中実構造であってもよい。
【0046】
図1A、1B及び図4Eを参照し、ステップS4で、まず、化学気相堆積、物理気相堆積又はアトミックレイヤデポジションなど、当業者にとって周知される任意の適宜な方法で圧電材料層105を堆積形成してもよく、次に、圧電薄膜パターンが定義されたフォトレジスト層(図示せず)をリソグラフィプロセスで圧電材料層105上に形成し、フォトレジスト層をマスクとして、前記圧電材料層105をエッチングすることにより、圧電共振層1051を形成し、この後に、フォトレジスト層を除去する。前記圧電材料層105の材料は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、セキエイ(Quartz)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、又は、タンタル酸リチウム(LiTaO3)など、ウルツ鉱型結晶構造を有する圧電材料及びそれらの組合せを用いてもよい。圧電材料層105は、窒化アルミニウム(AlN)を含むと、さらに、希土類金属を含んでもよく、例えば、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)及びランタン(La)のうちの少なくとも1種である。また、圧電材料層105は、窒化アルミニウム(AlN)を含むと、さらに、遷移金属(例えば、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)及びハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1種)を含んでもよい。パターニングした後に残りの圧電材料層105は、相互に分離される圧電共振層1051と圧電外周部1050とを含み、圧電共振層1051は、底電極共振部1042上に位置し、底電極凹み部1041が露出され、底電極共振部1042に完全に被覆されてもよいし、又は、部分的に被覆されてもよい。圧電共振層1051の形状は、底電極共振部1042の形状と同じであってもよく、異なってもよく、その上面形状は、五角形であってもよく、四角形、六角形、七角形、又は、八角形などの他の多角形であってもよい。圧電外周部1050と圧電共振層1051との間に隙間を形成することにより、底電極凹み部1041及び前記底電極共振部1042の周囲の第2のサブ犠牲層1032を露出させ、形成される隙間によって、後続の第2の犠牲層の形成領域を制限し、また、後続の第2の溝の形成に平坦なプロセス面を提供し、圧電外周部1050は、この後に形成される頂電極の外周部と、この前に形成される底電極の外周部1043とを分離させることを実現し、また、後続の第2の犠牲層及び頂電極の形成に平坦なプロセス面を提供することができる。
【0047】
図1A、1B及び図4Fを参照し、ステップS5で、まず、コーティングプロセスや気相堆積プロセスなどの適宜なプロセスにより、圧電外周部1050、圧電共振層1051、及び圧電外周部1050と圧電共振層1051との間の隙間に第2の犠牲層106を被覆してもよく、第2の犠牲層106が圧電外周部1050と圧電共振層1051との間の隙間を満充填することができ、該第2の犠牲層106の材料は、アモルファス炭素、フォトレジスト、誘電体材料(たとえば、窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、多孔質材料など)、又は、半導体材料(たとえば、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム)などから選択される少なくとも1種であってもよく、第2の犠牲層106の材質が第1の犠牲層103と異なることが好ましく、第2の溝107を形成する後続のエッチングプロセスにおいて、第1の犠牲層103の頂面をエッチング停止点として用い、さらにこの後に形成される第2の溝107の深さを制御することができ、次に、CMPプロセスにより第2の犠牲層106に対して頂部平坦化を行うことにより、第2の犠牲層106を圧電外周部1050と圧電共振層1051との間の隙間のみに充填し、圧電外周部1050、圧電共振層1051及び第2の犠牲層106が平坦な上面を構成する。本発明の他の実施例では、エッチングバックプロセスにより、圧電外周部1050及び圧電共振層1051の上面上の第2の犠牲層106を除去することにより、圧電外周部1050と圧電共振層1051との間の隙間のみに充填してもよい。次に、リソグラフィプロセス、又は、ホトエッチングとエッチングの組合せプロセスにより、第2の犠牲層106をパターニングし、第2の溝107を形成し、第2の溝107の形状、大きさ及び位置などにより、この後に形成される頂電極凹み部の形状、大きさ及び位置などが決められる。好ましくは、第2の溝107の側壁は、圧電共振層1051が位置する平面に対して、傾斜した側壁であり、第2の溝107の側壁と圧電共振層1051の頂面との間の角度θ1、θ2がいずれも45度以下であり、これによって、この後に頂電極凹み部1081に材料を被覆することに寄与し、切断の発生を回避し、厚さ均一性を向上させるに寄与する。さらに好ましくは、第2の溝107の線幅は、対応するプロセスに許容される最小線幅であり、第2の溝107と前記圧電共振層1051との間の水平距離は、対応するプロセスに許容される最小距離であり、これによって、好ましい横波遮断効果を実現するとともに、デバイスのサイズの減少に寄与する。本発明の他の実施例では、第2の溝107と第1の溝1033とは、垂直方向に全然重ならないとき、第2の犠牲層106をエッチングした後に、形成される第2の溝107の底面を第1の犠牲層103の所定の厚さまで停止するように、一定のオーバーエッチングが存在してもよく、例えば、第2の溝107が第1のサブ犠牲層1031の頂面と面一にされ、これによって、この後に形成される頂電極凹み部1081は、底電極凹み部1041で囲まれていない圧電共振層1051の辺の部分を補い、頂電極凹み部1081と底電極凹み部1041の組合せが圧電共振層1051の全周を囲むことができる。本発明の他の実施例では、第2の犠牲層106及び第2の溝107の形成については、ステップS1~S2での第1の犠牲層103及び第1の溝1033の形成方法を参照することができ、ここで詳しく説明しない。
【0048】
図1A図1B及び図4Gを参照し、ステップS6で、まず、予め形成された頂電極の材料に基づいて、適宜な方法を選択し、圧電外周部1050、圧電共振層1051、第2の犠牲層106及び第2の溝107の面に頂電極材料層(図示せず)を被覆してもよく、たとえば、マグネトロンスパッタリング蒸着などの物理気相堆積、又は、化学気相堆積方法によって、頂電極材料層を形成してもよく、頂電極材料層は、各位置で厚さが均一であってもよく、次に、頂電極パターンが定義されたフォトレジスト層(図示せず)をリソグラフィプロセスで頂電極材料層上に形成し、フォトレジスト層をマスクとして、前記頂電極材料層をエッチングすることにより、頂電極層(すなわち、パターニングされた頂電極材料層、又は、残りの頂電極材料層)108を形成し、この後に、フォトレジスト層を除去する。頂電極材料層は、本分野技術において周知される任意の適宜な導電性材料又は半導体材料を用いてもよく、導電性材料は、導電性を有する金属材料であってもよく、例えば、Al、Cu、Pt、Au、Mo、W、Ir、Os、Re、Pd、Rh及びRuのうちの1種又は複数種などであり、前記半導体材料は、たとえば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiGeCなどである。本実施例では、頂電極層108は、圧電共振層1051上に被覆される頂電極共振部1082と、第2の溝107上に被覆される頂電極凹み部1081と、頂電極凹み部1081から、一部の第2の犠牲層106の頂面を経由して、頂電極凹み部1081の外側の圧電外周部1050上まで延在している頂電極ブリッジ部1080と、頂電極共振部1082及び頂電極凹み部1081といずれも分離される頂電極の外周部1083とを含み、該頂電極の外周部1083は、該領域の形成すべきバルク音響波共振器の1つの金属接点として、頂電極ブリッジ部1080の頂電極共振部1082と背向する一側に接続されてもよく、隣接するバルク音響波共振器の頂電極ブリッジ部の一部として、頂電極ブリッジ部1080と分離されてもよく、本発明の他の実施例では、頂電極の外周部1083は省略されてもよい。頂電極共振部1082の上面形状は、圧電共振層1051の形状と同じであってもよく、異なってもよく、その上面形状がたとえば五角形であり、圧電共振層1051を頂電極共振部1082と底電極共振部1042との間に完全に挟み込むように、頂電極共振部1082の面積が圧電共振層1051より大きいことが好ましく、それにより、デバイスのサイズの減少及び寄生パラメータの低減に寄与する。本発明の他の実施例では、頂電極共振部1082の形状は、さらに四角形、六角形、七角形、又は、八角形などの多角形であってもよい。頂電極層108は、無線周波数(RF)信号などの電気信号を受信又は提供する入力電極、又は、出力電極として用いられてもよい。たとえば、底電極層104が入力電極として用いられると、頂電極層108が出力電極として用いられてもよく、底電極層104が出力電極として用いられると、頂電極層108が入力電極として用いられてもよく、圧電共振層1051は、頂電極共振部1082又は底電極共振部1042を介して入力された電気信号をバルク音響波に変換する。たとえば、圧電共振層1051は、物理振動により電気信号をバルク音響波に変換する。頂電極凹み部1081は、前記頂電極共振部1082の少なくとも1つの辺に沿って設けられるとともに、前記頂電極共振部1082の対応する辺に接続され、すなわち、前記頂電極凹み部1081は、前記頂電極共振部1082の辺に沿って設けられるとともに、前記頂電極ブリッジ部1080と前記頂電極共振部1082とが位置合わせされる領域に少なくとも設けられ、たとえば、頂電極凹み部1081は、前記頂電極共振部1082の全周を囲んで、閉環構造を構成し(図2C及び2Dに示すように)、またたとえば、頂電極凹み部1081は、前記頂電極共振部1082の複数の連続辺において延在することにより、開環構造を構成する(図2A及び2Bに示す)、前記頂電極ブリッジ部1080は、前記頂電極凹み部1081の前記頂電極共振部1082と背向する側に電気的に接続され、前記頂電極凹み部1081上から、一部の第2の犠牲層106の頂面を経由して、第3の溝102’の外側の一部のエッチング保護層101の頂面まで延在しており、前記頂電極ブリッジ部1080と前記底電極ブリッジ部1040とは、相互にずれ(すなわち、両者がキャビティ102の領域において重ならない)、前記頂電極ブリッジ部1080及び前記底電極ブリッジ部1040のそれぞれから、第3の溝102’の少なくとも1つの辺が露出される。本発明の一実施例では、図2A及び図2Bを参照し、前記第3の溝102’の底面に垂直な方向に、前記頂電極凹み部1081が前記底電極ブリッジ部1040の前記底電極凹み部1041に面する辺と重ならず、前記底電極凹み部1041が前記頂電極ブリッジ部1080の前記頂電極凹み部1081に面する辺と重ならない。前記頂電極ブリッジ部1080と前記底電極ブリッジ部1040との前記第3の溝102’の底面での投影は、ちょうど接続されるか、又は、相互に分離され、前記頂電極ブリッジ部1080は、前記第3の溝102’の1本の辺のみの外周における一部の基板の上方まで延在してもよい。
【0049】
図1A、1B及び図4Hを参照し、ステップS7で、ホトエッチングとエッチングプロセス、又は、レーザ切断との組合せプロセスにより、圧電外周部1050の第3の溝102’に面する辺、又は、バルク音響波共振器のデバイス領域の外周に穴を開けてもよく、一部の103、一部の第2の溝107又は第2の溝107に露出される第2の犠牲層106のうちの少なくとも1つを露出可能な開放穴(図示せず)を形成し、次に、前記開放穴にガス及び/又は薬液を導入することにより、前記第2の溝107、前記第2の犠牲層106、及び前記第1の犠牲層103を除去し、さらに第3の溝を改めて空にすることにより、キャビティ102を形成し、該キャビティ102は、底電極凹み部1041で制限される第3の溝102’の空間と、頂電極凹み部1081で増加される空間と、頂電極凹み部1081の下方において、元々第2の犠牲層106で占有された空間とを含む。キャビティ102の上方に浮くとともに、順に積層される底電極共振部1042、圧電共振層1051及び頂電極共振部1082は、独立したバルク音響薄膜を構成し、底電極共振部1042、圧電共振層1051、頂電極共振部1082及びキャビティ102が垂直方向に沿ってお互いに重なる部分は、有効領域であり、有効作動領域102Aとして定義され、該有効作動領域102Aは、無線周波数信号などの電気エネルギーを底電極共振部1042及び頂電極共振部1082に印加するとき、圧電共振層1051において生じた圧電現象のため、圧電共振層1051の厚さ方向(すなわち、縦方向)に振動及び共振が発生し、キャビティ102の他の領域は、無効領域102Bであり、該無効領域102Bは、電気エネルギーを頂電極層108及び底電極層104に印加しても、圧電現象のため共振しない領域である。有効作動領域102Aの上方に浮くとともに、順に積層される底電極共振部1042、圧電共振層1051及び頂電極共振部1082で構成されるバルク音響薄膜は、圧電共振層1051の圧電現象の振動に対応する共振周波数の無線周波数信号を出力することができる。具体的には、電気エネルギーを頂電極共振部1082と底電極共振部1042に印加するとき、圧電共振層1051において生じた圧電現象により、バルク音響波を生じる。この場合、生じたバルク音響波は、望ましい縦波のほか、寄生横波もあり、該横波が頂電極凹み部1081及び底電極凹み部1041で遮断され、有効作動領域102Aに制限され、キャビティの外周における膜層に伝播されることを防止し、これによって、横波がキャビティの外周における膜層に伝播することによる音響波損失を改善し、それにより、共振器の品質係数を向上させ、最終的にデバイスの性能を向上させることができる。
【0050】
なお、ステップS7は、形成すべきキャビティ102の上方の全ての膜層が製作された後に、実行されてもよく、これによって、続いて、第1の犠牲層103及び第2の犠牲層106を用いて、キャビティ102が位置する空間及びその上に形成される底電極層104~頂電極層108で積層される膜層構造を保護することができ、キャビティ102が形成された後に、続いて後続のプロセスを行うときに引き起こされるキャビティの崩れリスクを回避する。また、ステップS7で形成される開放穴は、残されてもよく、それにより、後続の2つの基板の結合などのパッケージングプロセスで開放穴を密封し、さらにキャビティ102を密閉することができる。
【0051】
なお、上記各実施例のバルク音響波共振器の製造方法のステップS1で、基板をエッチングして第3の溝102’を形成し、第3の溝102’を充填するプロセスにより、第1の犠牲層103を一部の基板上に形成することにより、ステップS7で形成されるキャビティ102は、底部全体が前記基板に凹んだ溝構造であるが、本発明の技術的解決手段は、これに限られない。本発明の他の実施例のステップS1で、さらに膜層堆積とホトエッチング及びエッチングとの組み合わせプロセスにより、基板上に突設される第1の犠牲層103を形成することにより、ステップS7で形成されるキャビティ102は、全体が前記基板面に突設されるキャビティ構造になり、具体的には、図2E及び図5を参照し、ステップS1で、提供される基板に、キャビティ102を製作するための第3溝102’を形成せずに、まず、ベース100の面のエッチング保護層101に第1のサブ犠牲層1031及び第2のサブ犠牲層1032を順に被覆し、第1のサブ犠牲層1031及び第2のサブ犠牲層1032の形成プロセスは、上記実施例を参照することができ、すなわち、異なる材質の2層の膜層を連続的に堆積するプロセス、又は、予め堆積された厚い膜層の頂部の所定の厚さに対して材質変換を行うプロセスにより、積層される第1のサブ犠牲層1031及び第2のサブ犠牲層103を形成し、次にホトエッチングとエッチングの組合せプロセスにより、第2のサブ犠牲層1032及び第1のサブ犠牲層1031をパターニングし、対応するキャビティ102の領域に被覆される第2のサブ犠牲層1032及び第1のサブ犠牲層1031のみを残し、さらに第1の犠牲層103を一部の基板上に形成し、該第1の犠牲層103は、上から下に広くなる構造であってもよく、第1の犠牲層103の厚さにより、この後に形成されるキャビティ102の深さが決められる。該実施例では、形成される底電極の外周部1043、底電極ブリッジ部1040、圧電外周部1050、頂電極の外周部1083、頂電極ブリッジ部1080の対応する側壁は突出する第1の犠牲層103に適応するように変形し、縦断面がいずれも「Z」字状構造になる必要があるほか、後続のステップは、図4A図4Hに示す実施例のバルク音響波共振器の製造方法での対応する部分と完全に同じであり、ここで詳しく説明しない。
【0052】
本発明のバルク音響波共振器は、好ましくは、本発明のバルク音響波共振器の製作方法を用いることで、底電極ブリッジ部、底電極凹み部及び底電極共振部を同じプロセスで製作し、頂電極ブリッジ部、頂電極凹み部及び頂電極共振部を同じプロセスで製作し、さらにプロセスを簡略化し、製作コストを低減させる。
【0053】
当然ながら、当業者は、本発明の要旨および範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な変更および修正を行うことができる。このように、本発明のこれらの修正および変形が本発明の特許請求の範囲およびそれらの同等の技術の範囲に属すると、本発明はこれらの修正および変形を含むことを意図する。
【符号の説明】
【0054】
100 ベース
101 エッチング保護層
102 キャビティ
102’ 第3の溝
102A 有効作動領域
102B 無効領域
103 第1の犠牲層
1031 第1のサブ犠牲層
1032 第2のサブ犠牲層
1033 第1の溝
104 底電極層(すなわち、残りの底電極材料層)
1040 底電極ブリッジ部
1041 底電極凹み部
1042 底電極共振部
1043 底電極の外周部
105 圧電材料層
1050 圧電外周部
1051 圧電共振層(又は、圧電共振部と呼称される)
106 第2の犠牲層
107 第2の溝
108 頂電極層(すなわち、残りの頂電極材料層)
1080 頂電極ブリッジ部
1081 頂電極凹み部
1082 頂電極共振部
1083 頂電極の外周部
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5