(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20221215BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B62D25/06 A
B60R1/04 Z
(21)【出願番号】P 2019057001
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】坂本 康
(72)【発明者】
【氏名】大坂 雅宏
【審査官】谷川 啓亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-212053(JP,A)
【文献】実開昭60-62350(JP,U)
【文献】実開平5-10169(JP,U)
【文献】特開2018-184120(JP,A)
【文献】特開2019-104337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/00 ー 25/24
B60R 1/00 - 1/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルとの間に空間を有するように前記ルーフパネルの前端部に片持ち支持されるヘッダパネルを備える車体構造であって、
前記ヘッダパネルは、車両幅方向の中央部において、車両後方側に膨出する膨出部を備え、
前記膨出部を車両幅方向に跨ぐように前記ヘッダパネルの車両上方側の面に取り付けられる横リーンフォースメントと、
前記ルーフパネルに前記ヘッダパネルが片持ち支持される第一接合部と前記膨出部における車両後方側の端部とにわたるように前記ヘッダパネルの車両上方側の面に取り付けられる縦リーンフォースメントと、
前記横リーンフォースメントと前記縦リーンフォースメントとが交差する箇所で互いに接合される第二接合部とを備え、
前記膨出部は、前記第二接合部の車両下方側の近傍に、インナミラーの取付部を備える、
車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフパネルとの間に空間を有するようにルーフパネルの前端部に片持ち支持されるヘッダパネルを備える車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ルーフパネルの前端部に片持ち支持されるヘッダパネルにルームミラー(インナミラー)を支持させる構造を開示している。片持ち支持されるヘッダパネルにインナミラーの取付部を設定すると、車体の振動等によってインナミラーも振動し易い。特許文献1では、ルーフパネルとヘッダパネルの後端部との間の隙間を埋めるように弾性変形可能な閉塞部材を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッダパネルにおける車両幅方向の中央部が車両後方側に膨出されることがある。例えば、ウインドシールドの上部にカメラが配置されると、インナミラーが車両後方側に押し出され、ヘッダパネルにおけるインナミラーの取付部が車両後方側に膨出されることがある。インナミラーの取付部が車両後方側に膨出すると、ルーフパネルにヘッダパネルが片持ち支持される接合部とインナミラーの取付部との距離が長くなり、インナミラーの取付部の剛性が悪化し、インナミラーがより振動し易くなる。
【0005】
ヘッダパネルにおける車両後方側への膨出箇所(インナミラーの取付部)の剛性を向上することが望まれる。特許文献1に記載の技術では、閉塞部材がルーフパネルの下面に接着固定されているだけであり、建付け剛性が低く、インナミラーの振動を抑制し難い。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、ルーフパネルの前端部に片持ち支持されるヘッダパネルの剛性を効果的に向上できる車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る車体構造は、
ルーフパネルとの間に空間を有するように前記ルーフパネルの前端部に片持ち支持されるヘッダパネルを備える車体構造であって、
前記ヘッダパネルは、車両幅方向の中央部において、車両後方側に膨出する膨出部を備え、
前記膨出部を車両幅方向に跨ぐように前記ヘッダパネルの車両上方側の面に取り付けられる横リーンフォースメントと、
前記ルーフパネルに前記ヘッダパネルが片持ち支持される第一接合部と前記膨出部における車両後方側の端部とにわたるように前記ヘッダパネルの車両上方側の面に取り付けられる縦リーンフォースメントと、
前記横リーンフォースメントと前記縦リーンフォースメントとが交差する箇所で互いに接合される第二接合部とを備え、
前記膨出部は、前記第二接合部の車両下方側の近傍に、インナミラーの取付部を備える。
【発明の効果】
【0008】
第一接合部は、ヘッダパネルとルーフパネルとの接合箇所であり、剛性が高い。上記車体構造は、横リーンフォースメントによって膨出部を車両前後方向に区画し、かつ縦リーンフォースメントによって剛性が高い第一接合部と膨出部の車両後方側の端部とを繋ぐことにより、膨出部の剛性を高めることができる。また、上記車体構造は、横リーンフォースメントと縦リーンフォースメントとで交差箇所を形成し、この交差箇所に互いに接合される第二接合部を設けることで、膨出部の剛性をより高めることができる。以上より、上記車体構造は、ヘッダパネルがルーフパネルの前端部に片持ち支持され、かつヘッダパネルにおけるインナミラーの取付部が車両後方側に膨出される形態であっても、膨出部を含むヘッダパネルの剛性を効果的に向上できる。特に、上記車体構造は、剛性が高い第二接合部の車両下方側の近傍に、インナミラーの取付部を設けることで、インナミラーの振動を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の車体構造をルーフパネルを外した状態で車外側から見た概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1の(II)-(II)線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の車体構造を、
図1及び
図2を参照して説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」とは、車両の正面を「前」とし、これを基準とする方向を意味し、図中、矢印FRは車両前後方向の前側、矢印RRは後側、矢印LHは車両左右方向(車両幅方向)の左側、矢印RHは右側、矢印UPは車両上下方向の上側、矢印LWRは下側を示す。
【0011】
〔全体構成〕
実施形態の車体構造1は、
図1及び
図2に示すように、ルーフパネル60(
図2)の前端部60aに片持ち支持されるヘッダパネル10を備える。ヘッダパネル10は、車両幅方向の中央部において、車両後方側に膨出する膨出部12を備える。ヘッダパネル10は、膨出部12に、インナミラー100(
図2)の取付部120(
図1及び
図2においてクロスハッチングで示す領域)を備える。実施形態の車体構造1は、ヘッダパネル10の車両上方側の面に取り付けられる横リーンフォースメント20及び縦リーンフォースメント30と、横リーンフォースメント20と縦リーンフォースメント30とが互いに接合される接合部(第二接合部52、
図2)とを備える点を特徴の一つとする。また、実施形態の車体構造1は、膨出部12における第二接合部52の車両下方側の近傍に、インナミラー100の取付部120を備える点を特徴の一つとする。
【0012】
〔ヘッダパネル〕
ヘッダパネル10は、
図1に示すように、車両幅方向に延設され、フロントピラーインナパネル70間に架け渡される。ヘッダパネル10は、車両幅方向に延びる本体部11と、車両幅方向の中央部において、本体部11から車両後方側に膨出する膨出部12とを備える。
【0013】
ヘッダパネル10は、
図2に示すように、前端部11aがルーフパネル60の前端部60aに接合され、後端部12bが開放しており、ルーフパネル60に対して片持ち支持されている。
図2では、膨出部12の後端部12bが開放した状態を示しているが、ヘッダパネル10の車両幅方向の全域にわたって後端部が開放している。ルーフパネル60にヘッダパネル10が片持ち支持される接合部(第一接合部51)は、溶接による接合で構成される。溶接方法としては、例えば、焼抜き栓溶接(SPW)やスポット溶接が挙げられる。本例では、第一接合部51は、SPWによる接合で構成される。第一接合部51の数は適宜選択できる。
【0014】
ヘッダパネル10の後端部12bは、
図2に示すように、ルーフパネル60に接合されない。よって、ヘッダパネル10の後端部12bとルーフパネル60との間には空間が形成される。この空間には、天井部材90が差し込まれる。上記空間に天井部材90が差し込み可能であることで、クリップ等を用いずに、車室上部に天井部材90を配置することができる。
図1では、ルーフパネル60及び天井部材90を外した状態で車外側から見た車体構造1を示す。
【0015】
ルーフパネル60の前端部60aには、
図2に示すように、ウインドシールド80が図示しないシール部材を介して取り付けられる。つまり、ヘッダパネル10は、ウインドシールド80(
図2)の上縁に沿って車両幅方向に延設される。本例では、ウインドシールド80の上部の車内側に、カメラ200が接着により配置されている。インナミラー100は、カメラ200の車両後方側に配置される。そのため、インナミラー100は、カメラ200が配置されない場合に比較して、車両後方側に押し出される。よって、ヘッダパネル10におけるインナミラー100の取付部120も車両後方側に移行される。膨出部12は、移行したインナミラー100の取付部120に対応して本体部11から車両後方側に膨出した部分である。
【0016】
膨出部12は、本体部11に対してヘッダパネル10の左右両端部側から車両幅方向の中央部に向かうに従って漸次車両後方側に延びるように配置される。本例では、膨出部12は、車両幅方向の中央部を境界にして左右対称に配置されている。インナミラー100の取付部120は、膨出部12における車両幅方向の略中央部に設けられている。膨出部12における本体部11からの膨出量は、インナミラー100が車両後方側に移行される量に対応して適宜選択できる。
【0017】
〔横リーンフォースメント〕
横リーンフォースメント20は、膨出部12を跨ぐようにヘッダパネル10の車両上方側の面に取り付けられる補強部材である。横リーンフォースメント20は、膨出部12を跨ぐ領域(以下、中央領域と呼ぶ)と、中央領域以外の領域(以下、端部領域と呼ぶ)とを備える。中央領域は、車両上方側に位置する辺と、車両後方側に位置する辺とを有する断面L字状に形成されている(
図2を参照)。端部領域は、車両上方側に位置する辺と、車両後方側に位置する辺と、車両下方側に位置する辺とを有する断面凹字状に形成されている。横リーンフォースメント20は、端部領域における車両下方側に位置する辺がヘッダパネル10の本体部11の車両上方側の面に溶接により接合されている。膨出部12の周辺、特に膨出部12の車両幅方向の中央部には、インナミラー100の近傍に設けられる図示しないルームランプ用のハーネスや、カメラ用のハーネス等が配策される。これらハーネスの配策作業を行い易くしたり、後述する第二接合部52の接合(溶接)作業を行い易くするため、膨出部12を跨ぐ中央領域では、車両下方側に位置する辺が切り欠かれて断面L字状に形成されている。
【0018】
〔縦リーンフォースメント〕
縦リーンフォースメント30は、ルーフパネル60にヘッダパネル10が片持ち支持される第一接合部51と膨出部12の後端部12bとにわたるようにヘッダパネル10の車両上方側の面に取り付けられる補強部材である。縦リーンフォースメント30は、車両幅方向の中央部から車両幅方向の一方側(本例では右側)にずれた位置に配置される。膨出部12の車両幅方向の中央部には、上述したように、カメラ200等の付加部品用のハーネスが配策されるからである。縦リーンフォースメント30は、カメラ200等の付加部品用のハーネスの配策作業の邪魔にならない程度に、可能な限り車両幅方向の中央部により近づけて取り付けられることが好ましい。本例では、縦リーンフォースメント30は、横リーンフォースメント20を車両上方側から覆うように設けられている(
図2を参照)。
【0019】
縦リーンフォースメント30の前端部30aは、ヘッダパネル10の前端部11a及びルーフパネル60の前端部60aと共に第一接合部51において溶接により接合される。本例では、ヘッダパネル10の前端部11aとルーフパネル60の前端部60aとの間に縦リーンフォースメント30の前端部30aが挟み込まれ、互いを溶接することにより第一接合部51が構成されている。縦リーンフォースメント30の後端部30bは、膨出部12の後端部12bに溶接により接合される。つまり、縦リーンフォースメント30の後端部30bと膨出部12の後端部12bとの接合部(第三接合部53、
図2)は、溶接による接合で構成される。溶接方法としては、例えば、焼抜き栓溶接(SPW)やスポット溶接が挙げられる。本例では、第三接合部53は、SPWによる接合で構成される。
【0020】
〔第二接合部〕
第二接合部52は、横リーンフォースメント20と縦リーンフォースメント30とが交差する箇所において、横リーンフォースメント20と縦リーンフォースメント30とが互いに接合される箇所である。本例では、横リーンフォースメント20の中央領域における車両上方側の辺と、縦リーンフォースメント30における上記辺を車両上方側から覆う箇所とが接合される。つまり、第二接合部52は、横リーンフォースメント20が車両下方側に位置し、縦リーンフォースメント30が車両上方側に位置する状態で構成される。なお、横リーンフォースメント20の中央領域に車両下方側の辺を有する場合、第二接合部52は、横リーンフォースメント20が車両上方側に位置し、縦リーンフォースメント30が車両下方側に位置する状態で構成されてもよい。第二接合部52は、溶接による接合で構成される。溶接方法としては、例えば、焼抜き栓溶接(SPW)やスポット溶接が挙げられる。本例では、第二接合部52は、SPWによる接合で構成される。第二接合部52の数は適宜選択できる。
【0021】
上述したヘッダパネル10の膨出部12におけるインナミラー100の取付部120は、
図2に示すように、第二接合部52の車両下方側の近傍に設けられる。本例では、インナミラー100の取付部120は、第二接合部52よりも車両幅方向の左側に若干ずれる(
図1を参照)と共に、第二接合部52よりも車両後方側に若干ずれた(
図2を参照)位置に設けられている。インナミラー100の取付部120は、カメラ200等の付加部品用のハーネスの配策作業の邪魔にならない程度に、可能な限り第二接合部52の車両直下により近づけて設けられることが好ましい。
【0022】
〔サブリーンフォースメント〕
本例では、縦リーンフォースメント30は、車両幅方向の中央部から車両幅方向の一方側(本例では右側)にずれた位置に配置される。そのため、車両幅方向の中央部から車両幅方向の他方側(本例では左側)にずれた位置にサブリーンフォースメント40を配置してもよい。サブリーンフォースメント40は、横リーンフォースメント20と膨出部12の後端部12bとにわたるようにヘッダパネル10の車両上方側の面に取り付けられる補強部材である。サブリーンフォースメント40を取り付ける場合、本例では、サブリーンフォースメント40の前端部は、横リーンフォースメント20の中央領域における車両上方側の辺に溶接により接合され、サブリーンフォースメント40の後端部は、膨出部12の後端部12bに溶接により接合される。溶接方法としては、例えば、焼抜き栓溶接(SPW)やスポット溶接が挙げられる。本例では、各接合部は、SPWによる接合で構成される。
【0023】
〔作用効果〕
実施形態の車体構造1は、横リーンフォースメント20によって膨出部12を車両前後方向に区画し、かつ縦リーンフォースメント30によって剛性が高い第一接合部51と膨出部12の後端部12bとを繋ぐことにより、膨出部12の剛性を高めることができる。また、上記車体構造1は、横リーンフォースメント20と縦リーンフォースメント30との交差箇所に互いに接合される第二接合部52を設けることで、膨出部12の剛性をより高めることができる。以上より、上記車体構造1は、ヘッダパネル10がルーフパネル60の前端部60aに片持ち支持され、かつヘッダパネル10におけるインナミラー100の取付部120が車両後方側に膨出される形態であっても、膨出部12を含むヘッダパネル10の剛性を効果的に向上できる。
【0024】
実施形態の車体構造1は、縦リーンフォースメント30が、車両幅方向の中央部から車両幅方向の一方側にずれた位置に配置されることにより、カメラ200等の付加部品用のハーネスの取り回し作業を行い易い。このとき、車両幅方向の中央部から車両幅方向の他方側にずれた位置にサブリーンフォースメント40を配置することで、膨出部12の剛性をバランスよく向上できる。
【0025】
実施形態の車体構造1は、上述したように膨出部12の剛性を向上できた上に、剛性が高い第二接合部52の車両下方側の近傍に、インナミラー100の取付部120を設けることで、インナミラー100の振動を効果的に抑制できる。
【0026】
実施形態の車体構造1は、ヘッダパネル10に横リーンフォースメント20及び縦リーンフォースメント30を配置することによって剛性を向上しており、ヘッダパネル10の後端部12bとルーフパネル60との間に空間を形成することができる。この空間に天井部材90を配置することができる。よって、実施形態の車体構造1は、クリップ等を用いずに、車室上部に天井部材90を配置する構成に好適に利用できる。
【0027】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0028】
1 車体構造
10 ヘッダパネル
11 本体部、11a 前端部
12 膨出部、12b 後端部、120 取付部
20 横リーンフォースメント
30 縦リーンフォースメント、30a 前端部、30b 後端部
40 サブリーンフォースメント
51 第一接合部、52 第二接合部、53 第三接合部
60 ルーフパネル、60a 前端部
70 フロントピラーインナパネル
80 ウインドシールド
90 天井部材
100 インナミラー
200 カメラ