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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ケミカルルーピング燃焼システム
(51)【国際特許分類】
   F23C 10/01 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
F23C10/01
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017177585
(22)【出願日】2017-09-15
(65)【公開番号】P2019052805
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-09-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 信一
(72)【発明者】
【氏名】熊田 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】細野 隆道
(72)【発明者】
【氏名】中島 隆博
(72)【発明者】
【氏名】中山 耕輔
(72)【発明者】
【氏名】清瀧 元
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雄介
【合議体】
【審判長】松下 聡
【審判官】槙原 進
【審判官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特許第5820669(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0030304(US,A1)
【文献】特開2015-229603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 10/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に酸素キャリア粒子を含む流動層が配置された複数の反応室と、
前記複数の反応室に個別に接続され、燃料が流通し且つ前記複数の反応室の各反応室に対する燃料流量を個別に調節可能な複数の第1供給装置が設けられた燃料供給路と、
前記複数の反応室に個別に接続され、酸化性ガスが流通し且つ前記各反応室に対する酸化性ガス流量を個別に調節可能な複数の第2供給装置が設けられた酸化性ガス供給路と、
前記複数の第1及び第2供給装置を制御する制御装置と、
前記複数の反応室の排出ガスから熱回収する熱回収装置と、を備え、
前記制御装置は、前記複数の第1及び第2供給装置を個別に制御することにより、
第1タイミングで、前記複数の反応室のうち特定数の反応室を、酸化されて流動化された前記酸素キャリア粒子により前記燃料を酸化させ且つ前記酸素キャリア粒子を還元させる還元室に設定すると共に、残りの反応室を、前記燃料の酸化に伴って還元された前記酸素キャリア粒子を酸化性ガスにより酸化する酸化室に設定し、
前記第1タイミング後の第2タイミングで、前記第1タイミングで前記還元室に設定した反応室を前記酸化室に設定すると共に、前記第1タイミングで前記酸化室に設定した反応室のうち前記特定数と同数の反応室を前記還元室に設定するように、前記複数の反応室を切り替える切替制御を、前記酸化室と還元室とを一定比率で存在させながら繰り返し実行し、
前記燃料が固体燃料であり、
各々の前記還元室において、酸化された酸素キャリア粒子と前記固体燃料とを含む流動層が前記複数の反応室間では流動しない状態で、酸化された酸素キャリア粒子と前記固体燃料とが、前記燃料をガス化させる燃料ガス化剤により流動化される、ケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項2】
前記複数の反応室は、少なくとも3つ以上の反応室を含み、
前記制御装置は、前記複数の反応室のうち1つの反応室を前記還元室に設定し且つ前記還元室以外の反応室を前記酸化室に設定すると共に、前記各反応室を順次前記還元室に設定するように、前記切替制御を繰り返し実行する、請求項1に記載のケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項3】
前記複数の反応室に個別に接続され、燃料ガス化剤が流通し且つ前記各反応室に対する燃料ガス化剤流量を個別に調節可能な複数の第3供給装置が設けられた燃料ガス化剤供給路を更に備え、
前記燃料は固体燃料であり、
前記制御装置は、前記複数の第1、第2、及び第3供給装置を個別に制御することにより、前記第1タイミングで、前記還元室において、酸化された前記酸素キャリア粒子と前記固体燃料とを燃料ガス化剤により流動化させて、酸化された前記酸素キャリア粒子により燃料ガス化剤でガス化した前記固体燃料を酸化させ且つ前記酸素キャリア粒子を還元させる、請求項1又は2に記載のケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項4】
前記複数の反応室の各内部には、前記流動層の上方で、前記流動層に含まれる前記酸素キャリア粒子とは別の酸素キャリア粒子を支持するガス透過性の支持部材が設けられている、請求項3に記載のケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項5】
前記複数の反応室と、前記複数の反応室を個別に仕切る仕切壁とが内部に形成された単一の炉体を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のケミカルルーピング燃焼システム。
【請求項6】
前記制御装置は、1回の前記切替制御により、前記酸化室において酸化性ガスにより酸化される酸素キャリア粒子量が、前記還元室において前記燃料の酸化により還元される酸素キャリア粒子量よりも多くなるように、前記切替制御を実行する、請求項1~5のいずれか1項に記載のケミカルルーピング燃焼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルルーピング燃焼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ケミカルルーピング燃焼(CLC : Chemical Looping Combustion)システム(以下、CLCシステムとも称する。)の形式として、例えば、循環式と切替式とが挙げられる。循環式CLCシステムは、燃料を酸素キャリア粒子により酸化し且つ酸素キャリア粒子を還元する還元反応室と、還元された酸素キャリア粒子を酸化性ガスにより酸化する酸化反応室とを有する。循環式CLCシステムの運転時には、酸素キャリア粒子は、各反応室間を配管により循環される。
【0003】
切替式CLCシステムは、特許文献1に開示されるように、酸化性ガスと燃料とが交互に供給される反応室を有する。切替式CLCシステムの運転時には、燃料を酸化させて還元された酸素キャリア粒子を酸化性ガスにより酸化する酸化反応と、酸素キャリア粒子により燃料を酸化させ且つ酸素キャリア粒子を還元させる還元反応とが、同一の反応室内で切り替えられながら交互に繰り返し行われる。
【0004】
CLCシステムの反応室から排出されるガスは、所定の熱回収装置により熱回収される。CLCシステムでは、燃料が空気に直接接触することなく酸化されるため、各反応室からの排ガスの成分は、ほぼ二酸化炭素(CO)と水蒸気(HO)のみとなる。従ってCLCシステムでは、燃料の酸化に伴って窒素酸化物(NO)が生じるのを防止できると共に、排ガスから二酸化炭素を低コスト且つ容易に分離・回収できる。CLCシステムは、火力発電所等の設備の排ガスから二酸化炭素を分離・回収するためのCCS技術の有力候補とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5820669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
運転中の切替式CLCシステムの反応室内では、異なる反応が交互に繰り返し行われるため、反応室から排出される排出ガスの排熱量は、例えば、循環式CLCシステムの運転中に反応室から排出される排出ガスの排熱量に比べて大きく変動する。このため切替式CLCシステムでは、熱回収装置により排出ガスから回収可能な回収熱量も大きく変動する。
【0007】
また一般に、切替式CLCシステムでは、所定のタイミング毎に反応室内に酸化性ガス又は燃料を供給するため、例えば、循環式CLCシステムに比べて、反応室に酸化性ガス又は燃料を供給する際の単位時間当たりの供給量が大きい。これにより切替式CLCシステムでは、反応室に酸化性ガスと燃料とを供給するための付帯設備が大型化するおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、切替式CLCシステムにおいて、付帯設備の大型化を防止しながら、熱回収装置における回収熱量の変動を抑制可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るケミカルルーピング燃焼システムは、内部に酸素キャリア粒子を含む流動層が配置された複数の反応室と、前記複数の反応室に個別に接続され、燃料が流通し且つ前記複数の反応室の各反応室に対する燃料流量を個別に調節可能な複数の第1供給装置が設けられた燃料供給路と、前記複数の反応室に個別に接続され、酸化性ガスが流通し且つ前記各反応室に対する酸化性ガス流量を個別に調節可能な複数の第2供給装置が設けられた酸化性ガス供給路と、前記複数の第1及び第2供給装置を制御する制御装置と、前記複数の反応室の排出ガスから熱回収する熱回収装置と、を備え、前記制御装置は、前記複数の第1及び第2供給装置を個別に制御することにより、第1タイミングで、前記複数の反応室のうち特定数の反応室を、酸化されて流動化された前記酸素キャリア粒子により前記燃料を酸化させ且つ前記酸素キャリア粒子を還元させる還元室に設定すると共に、残りの反応室を、前記燃料の酸化に伴って還元された前記酸素キャリア粒子を酸化性ガスにより酸化する酸化室に設定し、前記第1タイミング後の第2タイミングで、前記第1タイミングで前記還元室に設定した反応室を前記酸化室に設定すると共に、前記第1タイミングで前記酸化室に設定した反応室のうち前記特定数と同数の反応室を前記還元室に設定するように、前記複数の反応室を切り替える切替制御を、繰り返し実行する。
【0010】
上記構成によれば、制御装置による切替制御が、酸化室と還元室とを一定比率で存在させながら繰り返し実行される。これにより、複数の反応室全体では、酸素キャリア粒子の酸化反応と還元反応とを一定の割合で行えるため、各反応室の排出ガスにより熱回収する熱回収装置の熱回収量を一定にできる。よって、システム運転時に熱回収量が大きく変動するのを防止できる。また、複数の反応室全体では、燃料と酸化性ガスとの供給量の変動を抑制できるため、本システムの複数の反応室に燃料と酸化性ガスとを供給するための供給設備の大型化を抑制できる。
【0011】
前記複数の反応室は、少なくとも3つ以上の反応室を含み、前記制御装置は、前記複数の反応室のうち1つの反応室を前記還元室に設定し且つ前記還元室以外の反応室を前記酸化室に設定すると共に、前記各反応室を順次前記還元室に設定するように、前記切替制御を繰り返し実行してもよい。
【0012】
上記構成によれば、複数の反応室のうちの各反応室を順次還元室に設定するように切替制御が実行されることにより、複数の反応室全体において、酸素キャリア粒子の酸化反応と、燃料の酸化反応とを偏りなく行わせることができ、システム運転時に熱回収量が大きく変動するのを一層防止できる。
【0013】
前記複数の反応室に個別に接続され、燃料ガス化剤が流通し且つ前記各反応室に対する燃料ガス化剤流量を個別に調節可能な複数の第3供給装置が設けられた燃料ガス化剤供給路を更に備え、前記燃料は固体燃料であり、前記制御装置は、前記複数の第1、第2、及び第3供給装置を個別に制御することにより、前記第1タイミングで、前記還元室において、酸化された前記酸素キャリア粒子と前記固体燃料とを燃料ガス化剤により流動化させて、酸化された前記酸素キャリア粒子により燃料ガス化剤でガス化した前記固体燃料を酸化させ且つ前記酸素キャリア粒子を還元させてもよい。
【0014】
上記構成によれば、燃料ガス化剤を用いることで、還元室において、酸化された酸素キャリア粒子と固体燃料とを効率よく流動化させながら、酸化された酸素キャリア粒子により燃料ガス化剤でガス化した固体燃料を酸化させることができる。
【0015】
前記複数の反応室の各内部には、前記流動層の上方で前記酸素キャリア粒子を支持するガス透過性の支持部材が設けられていてもよい。これにより、固体燃料を酸化させる際、流動層において未反応ガスが発生した場合でも、ガス透過性の支持部材に支持された酸素キャリア粒子により、支持部材を通過した未反応ガスを効率よく酸化させることができる。従って、燃料の二酸化炭素転換率を向上できると共に、未反応ガスが反応室外に排出されるのを防止でき、環境負荷を低減できる。
【0016】
また、支持部材とこれに支持される酸素キャリア粒子により構成される流動層が、流動層の上方に設けられるので、複数の反応室の設置面積が増大するのを防止でき、比較的低コストでシステムを構成できる。
【0017】
前記燃料はガス燃料であり、前記制御装置は、前記第1のタイミングで、前記還元室において、酸化された前記酸素キャリア粒子を前記ガス燃料により流動化させて、酸化された前記酸素キャリア粒子により前記ガス燃料を酸化させ且つ前記酸素キャリア粒子を還元させてもよい。
【0018】
このように、燃料にガス燃料を用いる場合には、燃料ガス化剤及び燃料ガス化剤供給路を省略することができ、制御装置によって還元室が設定された際は、ガス燃料によって酸素キャリア粒子を流動化させることで、酸素キャリア粒子の還元反応を得ることができる。
【0019】
前記複数の反応室と、前記複数の反応室を個別に仕切る仕切壁とが内部に形成された単一の炉体を備えていてもよい。これにより炉をコンパクトに構成でき、複数の反応室の設置面積を低減してシステムの大型化を良好に抑制できると共に、複数の反応室を一カ所に配置できることで、各反応室の監視を比較的容易にできる。
【0020】
前記制御装置は、1回の前記切替制御により、前記酸化室において酸化性ガスにより酸化される酸素キャリア粒子量が、前記還元室において前記燃料の酸化により還元される酸素キャリア粒子量よりも多くなるように、前記切替制御を実行してもよい。
【0021】
これにより、酸化性ガスとして空気のような比較的低酸素濃度のガスを用いる場合でも、還元室で燃料の酸化に伴って還元された酸素キャリア粒子を、酸化室で酸化性ガスにより適切に酸化し易くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の各態様によれば、切替式CLCシステムにおいて、付帯設備の大型化を防止しながら、熱回収装置における回収熱量の変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係るCLCシステムの概略図である。
図2】第1実施形態の切替制御におけるタイムチャートを示す図である。
図3】第2実施形態に係るCLCシステムの概略図である。
図4】第3実施形態に係るCLCシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、各実施形態について、図を参照して説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るCLCシステム1の概略図である。CLCシステム1は切替式であって、図1に示すように、CLC炉2、制御装置3、第1熱交換器4、第2熱交換器5、第1集塵機6、第2集塵機7、脱水機8、複数の第1(燃料)供給装置9、複数の燃料供給路R1、酸化性ガス供給路R2、燃料ガス化剤供給路R3、第1排出ガス排出路R4、及び第2排出ガス排出路R5を備える。
【0026】
CLC炉2は、複数の反応室2aと、複数の反応室2aを仕切る仕切壁2bとを有する。本実施形態の複数の反応室2aには、少なくとも3つ以上(一例として4つ)の反応室2aが含まれている。反応室2aの形状は、適宜設定可能である。本実施形態では、複数の反応室2aの形状は同様であり、上下方向に延びている。
【0027】
反応室2aの内部には、酸素キャリア粒子を含む流動層(流動床)2cが配置されている。流動層2cは、反応室2aの内部において、反応室2aの下側から外部より供給されるガスにより流動する。即ち流動層2cは、反応室2a内に封入されており、複数の反応室2a間では流動しない。
【0028】
本実施形態の酸素キャリア粒子は、鉄を含む。酸素キャリア粒子の主成分は、一例として、酸化された状態ではFe(酸化第二鉄(III))であり、還元された状態ではFe(四酸化三鉄(II,III))である。酸素キャリア粒子の材質は限定されない。酸素キャリア粒子は、例えばチタン、ニッケル、銅、マンガン、又はアルミニウム等の金属を含んでいてもよい。
【0029】
CLCシステム1の運転時には、各反応室2aは、後述する制御装置3が実行する切替制御により、所定のタイミング毎に、還元室又は酸化室に交互に繰り返し切り替えられる。還元室に設定された反応室2aは、酸化された酸素キャリア粒子と燃料とを燃料ガス化剤により流動化させて、酸化された酸素キャリア粒子により燃料ガス化剤でガス化した燃料を酸化させ且つ酸素キャリア粒子を還元させる。
【0030】
酸化室に設定された反応室2aは、燃料の酸化に伴って還元された酸素キャリア粒子を酸化性ガスにより酸化する。本実施形態の酸化室は、燃料の酸化に伴って還元された酸素キャリア粒子を酸化性ガスである空気により酸化する空気反応室である。
【0031】
仕切壁2bは、複数の反応室2aを個別に仕切る。仕切壁2bが設けられることで、各反応室2aの流動層2cよりも上方に位置する上方空間(フリーボード)は、反応室2a毎に隔離されている。これによりCLC炉2の内部において、各反応室2aの上方空間におけるガスが混合されることはない。
【0032】
このようにCLCシステム1は、複数の反応室2aと、複数の反応室2aを個別に仕切る仕切壁2bとが内部に形成された単一の炉体として、CLC炉2を備えている。本実施形態では、全ての反応室2aの容積は同様であり、全ての反応室2a内に配置された酸素キャリア粒子量も同様である。
【0033】
複数の燃料供給路R1は、各反応室2aに個別に接続され、燃料が流通し且つ複数の反応室2aのうち各反応室2aに対する燃料流量を個別に調節可能な複数の第1供給装置9が設けられている。本実施形態の燃料は、固体燃料であり、一例として石炭である。燃料供給路R1の上流端部は各第1供給装置9に接続され、燃料供給路R1の下流端部は各反応室2aに接続されている。
【0034】
なお図1に示す構成では、燃料は反応室2aの側方から流動層2cへ供給されるが、燃料の反応室2aへの供給方法や供給位置は、これに限定されない。また、固体燃料としては、炭素成分を含む固体であればよく、例えばバイオマスでもよい。
【0035】
酸化性ガス供給路R2は、複数の反応室2aに個別に接続され、酸化性ガスが流通し且つ各反応室2aに対する酸化性ガス流量を個別に調節可能な複数の第2供給装置13が設けられている。酸化性ガスは、一例として、空気もしくは酸素富化空気である。
【0036】
酸化性ガス供給路R2の上流端部は、外気を取り込むためのポンプ(不図示)に接続されている。酸化性ガス供給路R2の下流端部は分岐し、且つ、各分岐路が第2供給装置13を介して各反応室2aの下側に接続されている。
【0037】
燃料ガス化剤供給路R3は、複数の反応室2aに個別に接続され、燃料ガス化剤が流通し且つ各反応室2aに対する燃料ガス化剤流量を個別に調節可能な複数の第3供給装置14が設けられている。燃料ガス化剤は、一例として、水蒸気もしくは二酸化炭素ガス、或いは水蒸気と二酸化炭素ガスとの混合気である。
【0038】
燃料ガス化剤供給路R3の上流端部は、燃料ガス化剤供給源から燃料ガス化剤を取り込むためのポンプ(不図示)に接続されている。燃料ガス化剤供給路R3の下流端部は分岐し、且つ、各分岐路が第3供給装置14を介して各反応室2aの下側に接続されている。
【0039】
酸化性ガス供給路R2及び燃料ガス化剤供給路R3における分岐路の末端は、更に複数に分岐されて各反応室2aの下側に接続されている。これにより、反応室2aの下側の複数の位置から、酸化性ガス及び燃料ガス化剤が、それぞれ所定のタイミング毎に反応室2aに供給可能となっている。
【0040】
なお、複数の供給路R2,R3が、各反応室2aに対して個別に設けられていてもよい。この場合、各第2供給装置13は、各酸化性ガス供給路R2に対して個別に設けられてもよいし、各第3供給装置14は、各燃料ガス化剤供給路R3に対して個別に設けられてもよい。
【0041】
第1排出ガス排出路R4は、酸化室に設定された反応室2aから排出された第1排出ガスが流通する。第1排出ガスの主成分は、一例として窒素である。第1排出ガス排出路R4の上流端部は分岐し、且つ、分岐路が流路調節器15を介して各反応室2aの上側に接続されている。第1排出ガス排出路R4の下流端部は、その上流側から下流側に向けて、第1熱交換器4と第1集塵機6とを順に経た後、外部に開放されている。
【0042】
第2排出ガス排出路R5は、還元室に設定された反応室2aから排出された第2排出ガスが流通する。第2排出ガスの主成分は、一例として二酸化炭素と水である。第2排出ガス排出路R5の上流端部は、流路調節器15と第1排出ガス排出路R4の分岐路とを介して、各反応室2aの上側に接続されている。第2排出ガス排出路R5の下流端部は、その上流側から下流側に向けて、第2熱交換器5、第2集塵機7、及び脱水機8を順に経た後、外部に開放されている。
【0043】
第1熱交換器4及び第2熱交換器5は、各反応室2aの排出ガス(第1排出ガス及び第2排出ガス)から熱回収する熱回収装置である。第1熱交換器4は、第1排出ガスから熱回収し、第2熱交換器5は、第2排出ガスから熱回収する。脱水機8は、第2排出ガスを脱水する。脱水機8により脱水されることで、第2排出ガスの成分は、ほぼ二酸化炭素のみとなる。
【0044】
制御装置3は、複数の供給装置9,13,14を個別に制御する。制御装置3は、複数の供給装置9,13,14に接続され、複数の供給装置9,13,14が設けられた流路を流通する流通物の流量を調節するように、複数の供給装置9,13,14を制御する。
【0045】
また制御装置3は、複数の流路調節器15を個別に制御する。制御装置3は、複数の流路調節器15に接続され、流路R4,R5のいずれかに流通物を流通させるように、複数の流路調節器15を制御する。
【0046】
制御装置3は、一例として、CPU、ROM、及びRAMを備えたコンピュータである。ROMには、所定の制御プログラムが格納されている。制御装置3は、この制御プログラムに基づいて、各要素9,13,14,15を制御する。
【0047】
ここで制御装置3は、所定のタイミングで供給装置9,13,14を個別に制御することにより、第1タイミングで、複数の反応室2aのうち特定数の反応室2aを還元室に設定すると共に、残りの反応室2aを酸化室に設定し、第1タイミング後の第2タイミングで、第1タイミングで還元室に設定した反応室2aを酸化室に設定すると共に、第1タイミングで酸化室に設定した反応室2aのうち前記特定数と同数の反応室2aを還元室に設定するように、複数の反応室2aを切り替える切替制御を、繰り返し実行する。
【0048】
本実施形態の制御装置3は、この切替制御として、第1及び第2タイミングの各々で、CLC炉2が有する4つの反応室2a(A~D)のうち、3つを酸化室に設定し、1つを還元室に設定しながら(即ち、前記特定数を1としながら)、切替制御を繰り返し実行する。これにより制御装置3は、酸化室と還元室とを一定比率で存在させながら、切替制御を繰り返し実行する。
【0049】
なお図1に示す例では、制御装置3は、1つの反応室2a(A)に対して、供給装置9,14による供給を開放し且つ供給装置13による供給を停止し、流路調節器15を第2排出ガス排出路R5側にガスが流れるように調整している。また制御装置3は、前記1つの反応室2a(A)以外の残余の反応室2a(B~D)に対して、供給装置9,14による供給を停止し且つ供給装置13による供給を開放し、流路調節器15を第1排出ガス排出路R4側にガスが流れるように調整している。これにより図1では、制御装置3が、前記1つの反応室2a(A)を還元室とし、残りの反応室2a(B~D)を酸化室とするように切替制御を実行した状態を示している。
【0050】
以下、本実施形態におけるCLCシステム1の運転方法について具体的に説明する。CLCシステム1の運転時には、制御装置3は、特定数の反応室2aに対して燃料及び燃料ガス化剤を供給すると共に、残りの反応室2aに対して酸化性ガスを供給するように、供給装置9,13,14を制御する。また制御装置3は、前記特定数の反応室2aから排出される第2排出ガスを第2排出ガス排出路R5に流通させると共に、前記残りの反応室2aから排出される第1排出ガスを第1排出ガス排出路R4に流通させるように、流路調節器15を制御する。これにより、制御装置3は、前記特定数の反応室2aを還元室に設定し、前記残余の反応室2aを酸化室に設定する。
【0051】
酸化室では、酸化性ガス供給路R2を通過した酸化性ガスが、酸化室の下側の複数位置から酸化室内に噴出する。酸化性ガスは、酸化室内の流動層2cに気泡として混入する。酸化室内に噴出する酸化性ガスにより、酸化室の酸素キャリア粒子は、酸化されて反応熱により発熱する。このとき発生する熱量は、酸化室の流動層2cに蓄熱される。この酸素キャリア粒子の酸化により第1排ガスが発生する。第1排ガスは、酸化室の上方空間を通過して第1排出ガス排出路R4の分岐路へ排出され、流路調節器15を介して第1排出ガス排出路R4を下流側に向けて流通する。
【0052】
酸化性ガスとして空気を用いた場合、第1排ガスの成分は、ほぼ窒素(N)と酸素(O)のみとなる。なお、酸素キャリア粒子の酸化温度はそれほど高くないため、窒素成分を含む酸化性ガスを用いても、酸素キャリア粒子の酸化によって窒素酸化物が生じるおそれは小さい。
【0053】
還元室では、燃料供給路R1を通過した燃料が、還元室内に供給されると共に、燃料ガス化剤供給路R3を通過した燃料ガス化剤が、還元室の下側の複数位置から還元室内に噴出する。燃料ガス化剤は、還元室内の流動層2cに気泡として混入する。
【0054】
還元室内に噴出する燃料ガス化剤により、還元室の酸素キャリア粒子は、燃料と混合されて流動する。燃料は燃料ガス化剤によりガス化されて、酸素キャリア粒子の酸素により酸化されると共に、酸素キャリア粒子が還元される。
【0055】
この燃料の酸化及び酸素キャリア粒子の還元と、流動層2cを通過した燃料ガス化剤により、第2排ガスが発生する。第2排ガスは、還元室の上方空間を通過して第1排出ガス排出路R4の分岐路へ排出され、流路調節器15を介して第2排出ガス排出路R5を下流側へ向けて流通する。燃料ガス化剤として水蒸気を用いた場合、第2排ガス成分は、ほぼ二酸化炭素と水蒸気のみとなる。
【0056】
ここで、酸化室と還元室とは仕切壁2bにより仕切られているため、還元室内における未反応の炭素成分が酸化室に侵入するのが防止される。よってCLC炉2では、酸化室内で炭素成分が酸化して第1排ガスの組成に炭素成分が混入したり、還元室内での固体燃料の炭素転換率が低下するのが、比較的簡素な構成により防止される。このようにCLC炉2は、還元室内における未反応の炭素成分が酸化室に侵入するのを防止するためのセパレータ構造(カーボンセパレータ)を備えている。
【0057】
制御装置3は、還元室内における燃料の酸化が、予め定められた所定基準まで終了したと判定した場合、還元室に設定していた特定数(本実施形態では1つ)の反応室2aを酸化室に設定すると共に、酸化室に設定していた前記残余(本実施形態では3つ)の反応室2aのうち、前記判定直前に還元室に設定していた反応室2aと同数の反応室2aを還元室に設定する。制御装置3は、前記判定を行うたびに、この切替制御を所定のタイミングで繰り返し実行する。
【0058】
図2は、第1実施形態の切替制御におけるタイムチャートを示す図である。図2中、「AR」は、反応室2aが、還元された酸素キャリア粒子と酸化性ガス(空気)との反応が行われる酸化室に設定されていることを表し、「FR」は、反応室2aが、酸化された酸素キャリア粒子と燃料との反応が行われる還元室に設定されていることを表す。
【0059】
本実施形態の制御装置3は、後述する第1及び第2タイミングで、複数の反応室2aのうち1つの反応室2aを還元室に設定し且つ還元室以外の反応室2aを酸化室に設定すると共に、複数の反応室2aのうちの各反応室2aを順次還元室に設定するように、切替制御を繰り返し実行する。
【0060】
具体的に図2に示す例では、制御装置3は、時刻t1~t8の各々を経過するたびに切替制御を実行する。一例として、時刻t1(第1タイミング)の切替制御では、反応室Aが還元室に設定され、反応室B~Dが酸化室に設定される。
【0061】
時刻t2(第2タイミング)の切替制御では、反応室Bが還元室に設定され、反応室A,C,及びDが酸化室に設定される。時刻t3(第1タイミング)の切替制御では、反応室Cが還元室に設定され、反応室A,B,及びDが酸化室に設定される。
【0062】
時刻t4(第2タイミング)の切替制御では、反応室Dが還元室に設定され、反応室A~Cが酸化室に設定される。以降、時刻t5~t8においては、制御装置3は、時刻t1~t4と同様の切替制御を順に実行する。
【0063】
このように、図2に示す例では、制御装置3は、切替制御を行うたび、一方向に並ぶ複数の反応室2aの一方側から他方側に向けて(図1参照)、1つの反応室2aを順に還元室に設定し、一方向の最も他方側の反応室2aを還元室に設定した後は、一方向の最も一方側の反応室2aを再び還元室に設定するように切替制御を行う。
【0064】
即ち制御装置3は、1回の切替制御により、酸化室において酸化性ガスにより酸化される酸素キャリア粒子量が、還元室において燃料の酸化により還元される酸素キャリア粒子量よりも多くなるように、切替制御を実行する。
【0065】
なお、図2に示すタイムチャートは例示に過ぎない。CLC炉が3つ以上の反応室2aを有する場合、制御装置3が所定のタイミングで実行する各切替制御において還元室とする反応室2aの順は、適宜設定可能である。
【0066】
また制御装置3が、還元室内における燃料の酸化が終了したと判定するための所定基準は、燃料投入量から算出する所定の基準時間でもよいし、還元室内の温度を測定する温度計が示す所定の基準値や、還元室内で発生する第2排ガス中の二酸化炭素濃度を測定する濃度計が示す所定の基準値でもよい。
【0067】
また本実施形態では、1の切替制御後から還元室における燃料の酸化が実質的に終了するまでの燃料反応時間が、前記1の切替制御後から酸化室における酸素キャリア粒子の酸化が実質的に終了するまでの酸素キャリア酸化時間より長い。このため、切替制御を行うタイミング(t1~t8)は、燃料反応時間に合わせられている。しかしながら、酸素キャリア酸化時間が燃料反応時間よりも長い場合、切替制御を行うタイミングは、酸素キャリア酸化時間に合わせられてもよい。また、切替制御を行うタイミングは、燃料反応時間と酸素キャリア酸化時間とのうちいずれか長い方よりも更に長い時間に合わせられてもよい。
【0068】
また、図2に示す例では、各反応室2aは連続する複数(ここでは3つ)の切替制御にわたって酸化室に設定されているが、反応室2aが酸化室として維持される時間が、反応室2aが還元室として維持される時間より長くても実質的な問題はない。
【0069】
以上に説明したように、CLCシステム1によれば、制御装置3による切替制御が、酸化室と還元室とを一定比率で存在させながら繰り返し実行される。これにより、複数の反応室2a全体では、酸素キャリア粒子の酸化反応と還元反応とを一定の割合で行えるため、各反応室2aの排出ガスから熱回収する熱交換器4,5の熱回収量を一定にできる。よって、CLCシステム1運転時に熱回収量が大きく変動するのを防止できる。また、複数の反応室2a全体では、燃料と酸化性ガスとの供給量の変動を抑制できるため、本CLCシステム1の複数の反応室2aに燃料と酸化性ガスとを供給するための供給設備の大型化を抑制できる。
【0070】
またCLCシステム1は、制御装置3による切替制御が、酸化室と還元室とを一定比率で存在させながら繰り返し実行されることで、例えば上記した特許文献1に開示される従来の切替式CLCシステムに比べて、運転時の吸気系及び排気系の脈動を無くせる点で優れている。またCLCシステム1は、ガス燃料だけでなく、固体燃料も酸化できる点においても優れている。
【0071】
また、複数の反応室2aは、少なくとも3つ以上の反応室2aを含み、制御装置3は、複数の反応室2aのうち1つの反応室2aを還元室に設定し且つ還元室以外の反応室2aを酸化室に設定すると共に、複数の反応室2aのうちの各反応室2aを順次還元室に設定するように、切替制御を繰り返し実行する。
【0072】
これにより、複数の反応室2a全体において、酸素キャリア粒子の酸化反応と、燃料の酸化反応とを偏りなく行わせることができ、CLCシステム1運転時に熱回収量が大きく変動するのを一層防止できる。
【0073】
またCLCシステム1は、複数の第3供給装置14が設けられた燃料ガス化剤供給路R3を備え、一例として、燃料が固体燃料であり、制御装置3は、複数の供給装置9,13,14を個別に制御することにより、第1タイミングで、還元室において、酸化された酸素キャリア粒子と固体燃料とを燃料ガス化剤により流動化させて、酸化された酸素キャリア粒子により燃料ガス化剤でガス化した固体燃料を酸化させ且つ酸素キャリア粒子を還元させる。
【0074】
このように、燃料ガス化剤を用いることで、還元室において、酸化された酸素キャリア粒子と固体燃料とを効率よく流動化させながら、酸化された酸素キャリア粒子により燃料ガス化剤でガス化した固体燃料を酸化させることができる。
【0075】
またCLCシステム1は、複数の反応室2aと、複数の反応室2aを個別に仕切る仕切壁2bとが内部に形成された単一のCLC炉2(炉体)を備えているので、これによりCLC炉2をコンパクトに構成でき、複数の反応室2aの設置面積を低減してCLCシステム1の大型化を良好に抑制できると共に、複数の反応室2aを一カ所に配置できることで、各反応室2aの監視を比較的容易にできる。
【0076】
また制御装置3は、1回の切替制御により、酸化室において酸化性ガスにより酸化される酸素キャリア粒子量が、還元室において燃料の酸化により還元される酸素キャリア粒子量よりも多くなるように、切替制御を実行するので、酸化性ガスとして空気のような比較的低酸素濃度のガスを用いる場合でも、還元室で燃料の酸化に伴って還元された酸素キャリア粒子を、酸化室で酸化性ガスにより適切に酸化し易くすることができる。
【0077】
また、単一の炉体であるCLC炉2の内部に複数の反応室2aを形成したことにより、各反応室2aを接続するための配管を省略できる。よって、酸素キャリア粒子量を低減できると共に、複数の反応室2aをコンパクトに構成して、CLCシステム1の設置面積を抑制できる。よって、固体燃料を酸化するCLC炉2を備えるCLCシステム1において、設備の大型化を防止できると共に、設備構造を簡素化し、動作信頼性の低下を防止できる。このためCLCシステム1は、例えば、中小産業規模での産業用発電用の中小型炉や、ゴミ・バイオマスを燃焼するための燃焼炉として有効に利用できる。
【0078】
また、各反応室2aを接続するための配管を省略できることにより、例えば、配管に酸素キャリア粒子を高速で流通・搬送するために供給するガスや制御が不要になると共に、酸素キャリア粒子と配管との接触によって、配管が腐食や摩耗等の不具合を生じたり酸素キャリア粒子が粉化する問題を回避できる。これにより、CLCシステム1の制御を簡素化できると共に、CLCシステム1を経済的且つ安定して駆動できる。以下、第2実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0079】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係るCLCシステム11の概略図である。図3に示すように、第2実施形態のCLC炉12は、複数の反応室2aの各内部に、流動層2cの上方で酸素キャリア粒子を支持するガス透過性の支持部材2dが設けられている。
【0080】
支持部材2dは、一例として多孔性の板状に形成され、反応室2aの径方向に延びて、反応室2aの内面に対して反応室2aの全周で接している。支持部材2dの上方には、酸素キャリア粒子を含む補助流動層2eが、流動層2cとは別に設けられている。
【0081】
一例として、補助流動層2eの底面は、反応室2aの上下方向中央よりも上方に配置されている。補助流動層2eの上面は、反応室2aの上端よりも下方に配置されている。補助流動層2eの最大深さ寸法は、流動層2cの最大深さ寸法よりも小さい値に設定されている。
【0082】
CLCシステム11の運転時において、支持部材2dが設けられた反応室2aが還元室に設定されたとき、流動層2cで酸化される燃料(固体燃料)の揮発分中に、一酸化炭素(CO)や水素(H)等の未反応ガスが生じると、未反応ガスは支持部材2dを通過して補助流動層2e内に入り込む。その後、未反応ガスは、補助流動層2eの酸素キャリア粒子により酸化される。
【0083】
このように第2実施形態では、還元室において、流動層2cで燃料の固形分が酸化され、更に補助流動層2eで燃料の未反応ガスが酸化されることにより、燃料の二段階の酸化反応が行われる。即ち、補助流動層2eは、揮発分反応器として機能する。
【0084】
また、支持部材2dが設けられた反応室2aが酸化室に設定されたとき、酸化室に供給される酸化性ガスにより、流動層2cと補助流動層2eとの酸化キャリア粒子は共に酸化される。酸化室の下側から酸化室に酸化性ガスを供給することで、下方から上方に向けて酸化室を流通する酸化性ガスにより、流動層2cと補助流動層2eとの酸化キャリア粒子が一度のプロセスで効率よく酸化される。
【0085】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。また第2実施形態では、複数の反応室2aの各内部に、流動層2cの上方で酸素キャリア粒子を支持するガス透過性の支持部材2dが設けられているので、固体燃料を酸化させる際、流動層2cにおいて未反応ガスが発生した場合でも、ガス透過性の支持部材2dに支持された酸素キャリア粒子により、支持部材2dを通過した未反応ガスを効率よく酸化させることができる。従って、燃料の二酸化炭素転換率を向上できると共に、未反応ガスが反応室2a外に排出されるのを防止でき、環境負荷を低減できる。
【0086】
また、支持部材2dとこれに支持される酸素キャリア粒子により構成される補助流動層2eが、流動層2cの上方に設けられるので、複数の反応室2aの設置面積が増大するのを防止でき、比較的低コストでCLCシステム11を構成できる。
【0087】
なお第2実施形態では、複数の補助流動層2eを上下方向に間隔をおいて設けてもよい。また補助流動層2eは、流動層2cの酸素キャリア粒子とは異なる酸素キャリア粒子を含んでいてもよい。この場合、補助流動層2eが含む酸素キャリア粒子と、流動層2cが含む酸素キャリア粒子とは、粒径、形状、サイズ、及び材質の少なくともいずれかが異なっていてもよい。
【0088】
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態に係るCLCシステム21の概略図である。CLCシステム21は、燃料がガス燃料である。この場合、燃料ガス化剤は不要であるため、CLCシステム21では、燃料ガス化剤供給路R3及び供給装置14が省略されている。
【0089】
CLCシステム21は、ガス燃料供給路R6を備える。ガス燃料供給路R6は、複数の反応室2aに個別に接続され、ガス燃料が流通し且つ各反応室2aに対するガス燃料流量を個別に調節可能な複数の第4供給装置16が設けられている。第4供給装置16は制御装置3に接続され、制御装置3に制御される。
【0090】
ガス燃料供給路R6の上流端部は、ガス燃料供給源からガス燃料を取り込むためのポンプ(不図示)に接続されている。ガス燃料供給路R6の下流端部は分岐し、且つ、各分岐路が第4供給装置16を介して各反応室2aの下側に接続されている。
【0091】
ガス燃料供給路R6における分岐路の末端は、更に複数に分岐されて各反応室2aの下側に接続されている。これにより、反応室2aの下側の複数の位置から、ガス燃料が、それぞれ所定のタイミング毎に反応室2aに供給可能となっている。
【0092】
制御装置3は、第1のタイミングで、還元室において、酸化された酸素キャリア粒子をガス燃料により流動化させて、酸化された酸素キャリア粒子によりガス燃料を酸化させ且つ酸素キャリア粒子を還元させる。即ち、第3実施形態では、ガス燃料を用いることで、燃料ガス化剤の代りにガス燃料により酸素キャリア粒子を流動化させる。
【0093】
このように、燃料にガス燃料を用いる場合には、燃料ガス化剤及び燃料ガス化剤供給路R3を省略することができ、制御装置3によって還元室が設定された際は、ガス燃料によって酸素キャリア粒子を流動化させることで、酸素キャリア粒子の還元反応を得ることができる。
【0094】
本発明は、各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明の構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。各実施形態は、互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1実施形態中の一部構成を、他の実施形態に適用してもよい。また燃料として固体燃料を用いる場合、固体燃料と共にガス燃料や液体燃料を併用してもよい。
【0095】
また、上記各実施形態では、単一の炉体(CLC炉2)内を分割することで複数の反応室2aを設ける構成例を示したが、少なくとも1つの反応室2aは、残余の反応室2aと離隔した位置に設けられていてもよい。この場合、例えば、複数の反応室2aの各々が離隔した位置に並設されていてもよい。
【符号の説明】
【0096】
R1 燃料供給路
R2 酸化性ガス供給路
R3 燃料ガス化剤供給路
1,11,21 ケミカルルーピング燃焼システム
2,12 CLC炉(炉体)
2a,A~D 反応室
2b 仕切壁
2c 流動層
2d 支持部材
3 制御装置
4 第1熱交換器(熱回収装置)
5 第2熱交換器(熱回収装置)
9 第1供給装置
13 第2供給装置
14 第3供給装置
図1
図2
図3
図4