(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】成形したスポーツ用品、スポーツ用品およびスポーツシューズの少なくとも一部を製造するための複数の個別発泡粒子をポストプロセス処理する方法
(51)【国際特許分類】
A43B 13/04 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
A43B13/04 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018071971
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2018-07-31
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】10 2017 205 830.7
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510204998
【氏名又は名称】アディダス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【氏名又は名称】藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ギリドハラン キルパナンタム
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エドワード ホームズ
(72)【発明者】
【氏名】フー ミン チュー ラ
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】田合 弘幸
【審判官】関口 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-158708(JP,A)
【文献】特開2016-141153(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0119482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/04
B29C 44/12
C08J 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形したスポーツ用品の少なくとも一
部を製造するための複数の個々の発泡粒子をポストプロセス処理する方法であって、
(a)粒子フォームの複数の個々の発泡粒子を供給するステップ、および
(b)前記スポーツ用品を成形する前に、熱処理を制御して前記個々の発泡粒子の密度
を増大させるステップを含む、方法。
【請求項2】
前記個々の発泡粒子の密度の増大が、前記個々の発泡粒子のサイズの収縮
による、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記密度が300%を超えて増大する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱処理が、前記個々の発泡粒子を粒子の融解開始よりも低い温度でアニールすることを含む、請求項1から3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記熱処理が0.1分から60分の持続時間にわたって実施される、請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記増大した密度を有する前記個々の発泡粒子を冷却するステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記冷却ステップが、前記個々の発泡粒子が周囲温度まで冷却されるのを可能にすることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記個々の発泡粒子が能動的に冷却される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記増大した密度を有する前記個々の発泡粒子を含む前記スポーツ用品の少なくとも一部を成形するステップをさらに含む、請求項1から8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記スポーツ用品の少なくとも一部を成形するステップが、異なる密度を有する少なくとも2組の個々の発泡粒子を成形することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(b)
の前記熱処理が
、前記複数の個々の発泡粒子に高周波
又は電磁誘導を適用すること
により行われる、請求項1から10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記個々の発泡粒子が発泡熱可塑性ポリウレタン、eTPUを含む、請求項1から11のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本発明は、成形したスポーツ用品の少なくとも一部、特に靴のミッドソールを製造するための複数の個別発泡粒子をポストプロセス処理する方法に関する。さらにそれは、スポーツ用品およびスポーツシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
2.先行技術
靴底、特にミッドソールは靴の構造において重要な役割を果たす。靴底は着用者の足を、例えば鋭利な物体による怪我から守る。加えて、靴底は靴が地面と接触するときに生じる力を和らげるための緩衝作用を提供し得る。このような複数の機能をもたらすために靴底、特にスポーツシューズ用靴底は通常、ポリマーを成形し、発泡させることによって製造される。靴底のための一般的なフォーム材料のいくつかの例としては、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、および熱可塑性ポリウレタン(TPU)が挙げられる。
【0003】
近年、靴底、特にスポーツシューズ用靴底の改善された性能特性に対する需要が増大している。向上した性能に対する需要は、性能要求を満たすための改善された材料、新規の材料および新規の処理方法の必要性をもたらした。
【0004】
一手法では、個別発泡粒子などがキャビティ内に充填され、成形される。例えば出願人は、欧州特許出願公開第2 786 670号明細書および欧州特許出願公開第2 649 896号明細書で、緩衝要素、および複数の発泡TPU粒子を含む靴底を製造するための方法を開示した。
【0005】
しかし、これらの製造方法の共通の欠点は、それらが非常に複雑であり、特に、顧客のニーズおよび要求に従った複数の機能を靴底に付与するように容易には適合していない点である。例えば、記載された出願である欧州特許出願公開第2 786 670号明細書および欧州特許出願公開第2 649 896号明細書の靴底中では、それらの外表面で熱の適用を通して粒子が溶融される。しかし、靴底の異なる部分中に異なる緩衝特性を与えることは困難である。異なる基本特性および組成を有する粒子を使用することにより、例えば、粒子の化学組成の変更を介して、例えばベースポリマーを変更することにより基本レシピを調節することを通して、異なる緩衝特性を与え得ることは可能である。しかし、異なる粒子の使用はサプライチェーンのロジスティクス、粒子の保管、および/または靴底の大量製造の間に正確な時間、量、および位置で製造ステップに粒子を配送することにおいて困難を引き起こし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願第2 786 670号明細書
【文献】欧州特許出願第2 649 896号明細書
【文献】国際公開第2008/087078号パンフレット
【文献】国際公開第2007/082838号パンフレット
【文献】国際公開第2010/136398号パンフレット
【文献】国際公開第2005/066250号パンフレット
【文献】独国特許出願公開第10 2014 216 992号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の根本的な課題は、成形されたスポーツ用品の少なくとも一部、特に靴底を個別発泡粒子から製造するための改善された方法を提供することであり、この方法は上述の先行技術の欠点のうちのいくつかを少なくとも部分的に克服できる。
【0008】
3.発明の概要
この課題は請求項1に記載の方法によって少なくとも部分的に解決される。一実施形態では、成形したスポーツ用品の少なくとも一部、特に靴のミッドソールを製造するための複数の個別発泡粒子をポストプロセス処理する方法は、(a)粒子フォームの複数の個別発泡粒子を供給するステップおよび(b)熱処理を制御して個別発泡粒子の密度を増大させるステップ、を含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、個別発泡粒子、例えばTPU、ポリアミド(PA)またはポリエーテルブロックアミド(PEBA)系の粒子の制御された熱処理は、粒子中に存在する内部応力に影響を及ぼし得ることを発見した。これらの応力は発泡粒子の生成中、例えば粒子の処理中に生成され得る。このような例示的一例は、発泡フォーム粒子の固体発泡中に生成される応力であろう。粒子に応力を与え得る他の好適な処理方法も考えられる。熱処理は個別発泡粒子の内部の内部応力に影響を及ぼし、それらの密度の増大をもたらす。
【0010】
熱処理の熱および/または持続時間は、異なる密度の増大を達成するために変更し得る。
【0011】
したがって本発明は、成形に先立って、または成形の間に個別発泡粒子の密度を選択的に調節することを可能にする。結果として、インライン製造ステップとして、異なる種類の発泡粒子の供給および保管を必要とせずに、広範に異なる密度の個別発泡粒子を得ることができる。これに関して、生産または製造ステップは少なくとも部分的に同一の施設で行ってもよく、例えば熱処理ステップは成形ステップに隣接するか、または同一施設の別区域にあってもよく、あるいは代わりに、熱処理ステップは別の施設で行い、スポーツ用品を成形するために後で当該施設に輸送してもよいと理解しなければならない。
【0012】
発泡熱可塑性ポリウレタン(eTPU)から作製された個別発泡粒子は、特に国際公開第2008/087078号パンフレット、国際公開第2007/082838号パンフレット、国際公開第2010/136398号パンフレット、および国際公開第2005/066250号パンフレットから公知である。さらに、発泡ポリエーテルブロックアミド(ePEBA)から作製された個別発泡粒子は独国特許出願公開第10 2014 216 992号明細書から公知である。
【0013】
いくつかの実施形態では、個別発泡粒子の密度の増大は、個別発泡粒子のサイズの収縮を含み得る。さらに、密度は300%を超えて、好ましくは200%を超えて、より好ましくは100%を超えて、より好ましくは30%から70%の範囲内で増大し得る。
【0014】
一実施形態では、熱処理は、個別発泡粒子を粒子の融解開始よりも低い温度で、好ましくは粒子の融解開始よりも0~50℃の範囲内で低い温度で、好ましくは粒子の融解開始よりも0~30℃の範囲内で低い温度で、好ましくは粒子の融解開始よりも0~10℃の範囲内で低い温度で、より好ましくは粒子の融解開始よりも0~5℃の範囲内で低い温度でアニール(anneal)することを含む。融解の開始は材料によって、例えばeTPUとePEBAまたはePAとの間で異なることが、当業者には明らかであろう。本発明の本態様は、粒子同士を溶融させて最終組成物を形成する前に個別発泡粒子の密度の増大を得ることができるため、製造プロセス全体をさらに改善し得る。さらに、アニーリング(annealing)はよく知られたプロセスであり、容易に扱うことができるため、製造プロセス全体はさらに簡略化され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、熱処理は0.1分から60分、好ましくは1分から60分、好ましくは5分から60分、より好ましくは5分から30分、より好ましくは10分から25分の持続時間にわたって実施され得る。熱処理の持続時間と熱処理が実施される温度との間に関係があることおよびこれらの組み合わせが可能であることは明らかであろう。いくつかの場合において、異なるパラメーターの組み合わせを利用するとき、密度の変化について同一のまたは類似の結果を達成することは可能であり得る。例えば、融解の開始よりも5℃低い25分間にわたる熱処理が、融解の開始よりも0℃低い10分間にわたる熱処理と比較される。これらの数値は例示に過ぎないことが当業者には明らかであろう。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法は増大した密度を有する個別発泡粒子を冷却するステップをさらに含み得る。
【0017】
冷却ステップは個別発泡粒子が周囲温度まで冷却するのを可能にすることをさらに含み得る。周囲温度は製造の場所に依存し得るという点に留意しなければならない。例えば、アジアの一部の地域における周囲温度はヨーロッパの一部の地域においてよりも著しく高い。
【0018】
さらに、個別発泡粒子の冷却は能動的または受動的でもよい。受動的冷却は、本出願に関して、いかなる外的な冷却手段もなしに粒子が冷却して周囲温度に戻ることを許容するという意味を有する。能動的冷却は、本出願に関して、外的な冷却手段を粒子に適用して冷却ステップに影響を及ぼすという意味を有する。冷却処理の持続時間と冷却が適用される速度との間には関係があり、当業者は意図したその後の製造ステップに適するようにそれを選択することは、当業者にとって明らかであろう。
【0019】
いくつかの実施形態では、本方法はスポーツ用品の少なくとも一部、特に増大した密度を有する個別発泡粒子を含む靴のミッドソールを成形するステップをさらに含み得る。さらに、スポーツ用品の少なくとも一部、特に靴のミッドソールを成形するステップは、異なる密度を有する少なくとも2組の個別発泡粒子を成形することを含み得る。
【0020】
そのうえ、個別発泡粒子の密度を増大させるための熱処理ステップは成形ステップと同一の施設内で実施され得るという点に留意すべきである。あるいは、上述のように、熱処理ステップは成形ステップとは別の施設内でも実施され得、増大した密度を有する個別発泡粒子はスポーツ用品を成形するために後で当該施設に輸送され得ることも考えられる。
【0021】
一実施形態では、熱処理ステップがスポーツ用品の少なくとも一部の成形ステップにも使用されるモールド内で実施され得る可能性もある。例えば、個別発泡粒子はこのモールド内に充填され、熱処理が実施され得るように変更可能なサイズを有するモールドを使用してもよい。個別発泡粒子の密度を増大させた後、スポーツ用品の少なくとも一部が増大した密度を有する粒子から成形され得るようにモールドのサイズを修正してもよい。当然両方のステップでモールドのサイズが固定されていることも考えられる。しかし、単一のモールドが熱処理およびその後の成形の両方で使用される場合でも、それらは依然として2つの独立したプロセスステップであり、その後の成形ステップの間に生じ得る物体全体のさらなる収縮と混同してはならない。
【0022】
いくつかの実施形態では、ステップbは複数の個別発泡粒子に高周波、すなわち30kHz~300MHzの範囲内の周波数を有する電磁放射線を適用することを含み得る。高周波を使用する利点は、生成が容易で個別発泡粒子の表面への供給が容易である点である。高周波によって個別発泡粒子の表面に供給されるエネルギーの量は例えば、発振源の出力の大きさ、放射線の強度、高周波の発振源のサイズもしくは放射された波長、表面までの発振源の距離、表面の形態係数、すなわち放射されたエネルギーのうち表面が遮断する量、または個別発泡粒子材料の放射率等を調節することによって制御され得る。さらに、高周波の使用は個別発泡粒子の表面の材料に対して電気伝導率等のいかなる特定の要件も課さない。
【0023】
いくつかの実施形態では、個別発泡粒子は発泡熱可塑性ポリウレタン、eTPUを含み得る。このような粒子は優れた緩衝特性をもたらす。さらに、eTPUはエラストマーであり、これは形状安定であり、引張および圧縮応力下で変形するが、応力のない状態では元の形状に大幅に戻る。したがって、eTPUは多大な負荷にさらされるスポーツシューズ用靴底の製造に非常に好適である。
【0024】
さらなる態様によると、本発明は少なくとも一部が複数の個別発泡粒子から成形されたスポーツ用品に関し、個別発泡粒子は、粒子を発泡させた後のポストプロセスとしての制御された熱処理によって増大した密度を含む。さらにスポーツ用品は少なくとも一部が、異なる密度を有する少なくとも2組の個別発泡粒子から成形され得る。さらに、スポーツ用品はスポーツシューズまたはすね当てであってもよく、個別発泡粒子はスポーツシューズのソール中、特にミッドソール中に含まれる。さらに、個別発泡粒子は上記の方法のうちの1つのポストプロセス処理を受けていてもよい。
【0025】
4.図面の簡単な説明
本発明の可能な実施形態は以下の「発明を実施するための形態」により詳細に記載されており、以下の図面は以下の内容を示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】成形されたスポーツ用品の少なくとも一部、特に靴のミッドソールを製造するための複数の個別発泡粒子をポストプロセス処理するシステムの本発明の実施形態の概略図である。
【
図1B】成形されたスポーツ用品の少なくとも一部、特に靴のミッドソールを製造するための複数の個別発泡粒子をポストプロセス処理するシステムの本発明の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
5.発明を実施するための形態
本発明の可能な実施形態および変形形態を、以下において、成形されたスポーツ用品の少なくとも一部、特に靴のミッドソールを製造するための複数の個別発泡粒子のポストプロセス処理に関して特に言及しながら説明する。しかし本発明のコンセプトは、スポーツ用品の少なくとも一部が個別発泡粒子から成形される任意のスポーツ用品、例えばテニスラケット、ゴルフクラブ、野球バット、バドミントンラケット、クリケットバット、アイスホッケースティック、ホッケースティック、スカッシュラケット、卓球ラケット、すね当て等に対してそのまままたは同様にして適用され得る。さらに、カジュアルシューズ、作業用ブーツ等のブーツのような他の種類の靴は部材を用いて、特に本発明に基づくソールを用いて製造され得る。最終的には、本発明のコンセプトはまた、物体の少なくとも一部が個別発泡粒子から成形される任意の他の種類の物体に対してもそのまままたは同様にして適用され得る。容易に考えられる例としては、ダッシュボードのような自動車産業における構成部品、建物建設のための断熱もしくは緩衝材料、または遊び場、陸上競技トラック、運動場およびスポーツ会場の面が挙げられる。
【0028】
本発明の個別実施形態は以下においてさらに詳細に記載される点についても留意すべきである。しかし、これらの特定の実施形態に関して記載された建設上の可能性および任意選択の特徴は、本発明の範囲内で異なるようにさらに改変し、相互に組み合わせ得ること、および当業者にとって不必要と思われる場合、個別ステップまたは特徴も省略できることは当業者には明白であろう。冗長を避けるため、前述の段落における説明に言及するが、これは以下の詳細な説明の実施形態にも当てはまる。
【0029】
図1a~
図1bは成形されたスポーツ用品の少なくとも一部、特に靴のミッドソールを製造するための複数の個別発泡粒子をポストプロセス処理するためのシステム100の本発明の実施形態の概略図である。システム100は、上述の方法、特に一連の方法のステップ、すなわち粒子フォームの複数の個別発泡粒子120を供給するステップ、熱処理を制御して個別発泡粒子120の密度を増大させるステップ、および増大した密度を有する個別発泡粒子120からミッドソールを成形するステップ、のうちの1つまたは複数の方法を完全にまたは部分的に実施するように適合され得る。この一連は、システム100の異なるステーション105a、105bおよび105cで実施され得ることが留意されている。さらに、ステーションの表現は概略的であり、
図1a~
図1bに示された寸法は、必ずしも本方法の現実の適用における実際の寸法と一致しないことも留意される。むしろ
図1a~
図1bは、潜在的なデザインの選択肢および方法の変更、ならびに本方法を所与の1組の要件に従って適合させる異なる可能性を含む本発明の範囲を当業者に示す目的を果たしている。さらに、システム100は好ましくは完全に自動であるが、本方法のステップのうちいくつかまたはさらにはすべてを人間の介在によって実施することは排除されない。以下において、熱処理を制御して個別発泡粒子120の密度を増大させるステップがさらに記載される。
【0030】
本発明の一実施形態に従って、個別発泡粒子120の密度は、成形に先立ってまたはその間に、制御された熱処理、例えば熱エネルギー130を制御しながら加えることによって増大させ得る。本発明に関する「制御された」という用語は、上述の所定の時間および/または所定の温度プロファイルの熱処理の使用を示す。さらに、熱処理ステップは成形ステップと同一の施設、例えば成形のための加工ステーション105cの隣で、もしくは同一施設の別区域で実施され得、または、別の施設で実施され、スポーツ用品の成形のために後で当該施設に輸送され得る。
【0031】
図1bの実施形態において概略的に理解できるように、システム100はさらに熱処理を制御し、複数の個別発泡粒子120の密度を増大させるステップ、および複数の個別発泡粒子120からミッドソールを成形するステップを実施し得る。成形ステップはモールド内で実施され得る。例えば、モールドは互いに対して移動可能な上部および下部を備え得る。さらに、モールドは変更可能なサイズを有することにより、密度を増大させるための熱処理ステップが、成形ステップ、例えば成形前の予備ステップと同一のモールド内で実施され得る。モールド部分は成形されるミッドソールに大まかに対応した形状を有するキャビティを形成する。さらに、粒子120はランダムに配置されてもよい。しかし、粒子120または粒子120のうちの少なくともいくつかは、互いに整列するか、またはそうでなければモールド内で意図的に配置されてもよい。または、モールドはその一定の部分のみに成形前の加熱をして、最終的に粒子から作製される物体が、物体の異なる部分で異なる密度を有するように適合させてもよい。
【0032】
一実施形態では、モールド部分は付加製造方法によって製造し得る。付加製造は従来の成形製造技術では得られないか、または製造が少なくとも困難もしくは製造コストが高い非常に微細な構造を生成し得る。したがって一利点は、成形プロセスの間のモールドの安定性を危険にさらさずに、モールド部分の質量が著しく削減され得る点である。その結果、より低い熱容量のモールド部分を得ることができる。この結果、モールド部分の加熱時のエネルギー損失が低減され、熱容量の低減はプロセスサイクルの最後でモールド部分の冷却を加速するため、より高速な冷却プロセスももたらす。
【0033】
一実施形態では、成形に先立ってまたは成形の間に熱処理を制御して個別発泡粒子120の密度を増大させるステップは複数の個別発泡粒子120に高周波を適用することを含み得る。本明細書では高周波、すなわち30kHzから300MHzまでの範囲内の周波数を有する放射線は、例えば電磁放射線のエネルギー形態で供給し、放射源から放射してもよい。
【0034】
さらにこの周波数の範囲とは異なる周波数の範囲内の放射線という形態でエネルギーが供給される可能性もある。特定の実施例としては、エネルギーは赤外(IR)線という形態で供給され得る。マイクロ波の範囲内の放射線、すなわち300MHzから300GHzまでの範囲内の周波数の放射線と同様、紫外(UV)線の使用も考慮され得る。
【0035】
一実施形態では、電磁誘導の使用も考慮され得る。電磁誘導は磁束の一時的な変動による電界の生成を示す。したがって、電磁誘導の場合もエネルギーは一時的に変化する電磁場という形態で供給される。電磁誘導は、特に粒子またはそれらの表面が一定の電気伝導性を含む材料を含むか、もしくはその材料でコーティングされている場合、粒子表面を溶融させるために使用され得る。そして、電磁誘導によって生成された電界は、この材料内に電流を生成し得、粒子表面を加熱する。これは制御された熱処理のための選択的かつ局所集中させたエネルギー供給を可能にし得る。したがって、個別発泡粒子の密度およびそれらの表面での粒子の溶融の制御の程度は、プラスチック構成要素の内部に配置された粒子にも影響され、非常に正確に制御され得る。
【0036】
マイクロ波の範囲内の放射線、高周波の範囲内の放射線、または電磁誘導のいずれの使用がより有利であるかは、例えばどの材料からモールドが作製されたかという問題に依存する。モールドが使用した電磁場から可能な最小量のエネルギーを吸収する選択肢を選択することが好ましい。上述の選択肢の組み合わせが使用されることも当然可能である。
【0037】
さらに、成形に先立ってまたは成形の間に熱処理を制御して個別発泡粒子120の密度を増大させるステップは、個別発泡粒子120の第1の組に熱エネルギー130を適用すること、および個別発泡粒子120の第2の組(
図1bには示されず)に熱エネルギーを適用することを含み得、2つの組に適用される熱エネルギーの量は異なり得る。これは、2つのモールド部分のうちの第1のモールド中に配置され得る第1の組は、周波数f
1を有する熱エネルギーで処理され、2つのモールド部分のうちの第2のモールド中に配置され得る第2の組(図面には示されず)は、別の周波数を有する熱エネルギーで処理され、この場合、周波数f
1は、もう一方の周波数と異なり、例えばそれより高いので達成される。その結果、熱エネルギー130は、もう一方の熱エネルギーが第2の組に輸送し得るよりもより多くのエネルギーを第1の組に「輸送」し得、2組の個別発泡粒子は異なる密度を有し得る。個別発泡粒子の1組のみが、例えば上述の第2の組が熱によって処理され得ることも考えられる。あるいは、両方の周波数は例えば上述の周波数の範囲(ラジオ波、マイクロ波、赤外、UV)または1つもしくは複数の異なる周波数範囲から選択され得る。
【0038】
図2a~
図2bは、本発明に従って熱処理を制御して密度を増大させるステップの間の、例えば個別発泡粒子120と同様の例示的な個別発泡粒子200の図を示す。本発明に関する「密度」という用語は、発泡粒子の充填密度ではなく、個別発泡粒子のそれぞれの体積質量密度、すなわちその単位体積当たりの質量を示す。
図2a中の図は、対流式オーブン内で熱エネルギーを個別発泡粒子200に適用することを含む熱処理の前および後に撮影された。さらに、粒子は発泡熱可塑性ポリウレタン、eTPUを含む。
【0039】
図2aに示される図は熱処理の前および後の複数の個別発泡粒子200を平面図で示す。実施形態205a中の個別発泡粒子200は、熱で処理されず、増大した密度を有する実施形態205b中の個別発泡粒子200は熱処理の後である。
【0040】
図2bに見ることができるように、実施形態205aは熱処理前の個別発泡粒子200のうちの1つを示す。個別発泡粒子を粒子の融解開始よりも低い温度、好ましくは粒子の融解開始よりも0~50℃の範囲内で低い温度で、好ましくは粒子の融解開始よりも0~30℃の範囲内で低い温度で、好ましくは粒子の融解開始よりも0~10℃の範囲内で低い温度で、より好ましくは粒子の融解開始よりも0~5℃の範囲内で低い温度で、アニールすることを含み得る制御された熱処理は、時点t
0=0分の後に開始し、適用された熱は一定に留まる。実施形態205bは熱処理の後の時点t
1、例えば10分後における発泡粒子を示し、そこでは発泡粒子の収縮が均一に(実施形態205b中の破線矢印で示されるように)生じ、その単位体積当たりの質量が増大し、結果的に発泡粒子の密度が増大する。したがって、制御された熱処理は個別発泡粒子の密度を、すなわちそれが発泡した後で増大させることを可能にする。例えば熱処理が適用されている間、発泡粒子を撹拌することによって融解開始温度を移動した場合、粒子の融解開始は、その材料クラスから予測されるものとは異なる温度範囲内であり得ることも考えられる。
【0041】
以下において、本発明の理解を促進するためにさらなる実施形態が記載される。
【0042】
1.成形したスポーツ用品の少なくとも一部、特に靴のミッドソールを製造するための複数の個別発泡粒子をポストプロセス処理する方法であって、(a)粒子フォームの複数の個別発泡粒子(120、200)を供給するステップおよび(b)熱処理を制御して個別発泡粒子(120、200)の密度を増大させるステップを含む、方法。
【0043】
2.個別発泡粒子(120、200)の密度の増大が、個別発泡粒子(120、200)のサイズの収縮を含む、実施形態1に記載の方法。
【0044】
3.密度が300%を超えて、好ましくは200%を超えて、より好ましくは100%を超えて、より好ましくは30%から70%の範囲内で増大する、実施形態2に記載の方法。
【0045】
4.熱処理が、個別発泡粒子(120、200)を粒子の融解開始よりも低い温度で、好ましくは粒子の融解開始よりも0~50℃の範囲内で低い温度で、好ましくは粒子の融解開始よりも0~30℃の範囲内で低い温度で、好ましくは粒子の融解開始よりも0~10℃の範囲内で低い温度で、より好ましくは粒子の融解開始よりも0~5℃の範囲内で低い温度でアニールすることを含む、実施形態1から3のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
5.熱処理が0.1分から60分、好ましくは1分から60分、好ましくは5分から60分、より好ましくは5分から30分、より好ましくは10分から25分の持続時間にわたって実施される、実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
6.増大した密度を有する個別発泡粒子(120、200)を冷却するステップをさらに含む、実施形態1から5のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
7.冷却ステップが、個別発泡粒子(120、200)が周囲温度まで冷却されるのを可能にすることをさらに含む、実施形態6に記載の方法。
【0049】
8.個別発泡粒子(120、200)が能動的に冷却される、実施形態6または7に記載の方法。
【0050】
9.スポーツ用品の少なくとも一部、特に増大した密度を有する個別発泡粒子(120、200)を含む靴のミッドソールを成形するステップをさらに含む、実施形態1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
10.スポーツ用品の少なくとも一部、特に靴のミッドソールを成形するステップが、異なる密度を有する少なくとも2組の個別発泡粒子を成形することを含む、実施形態9に記載の方法。
【0052】
11.ステップ(b)が複数の個別発泡粒子(120、200)に高周波(130)を適用することを含む、実施形態1から10のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
12.個別発泡粒子(120、200)が発泡熱可塑性ポリウレタン、eTPUを含む、実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
13.少なくとも一部が複数の個別発泡粒子から成形されたスポーツ用品であって、個別発泡粒子が、粒子を発泡させた後のポストプロセスとしての制御された熱処理によって増大され密度を含む、スポーツ用品。
【0055】
14.異なる密度を有する少なくとも2組の個別発泡粒子から少なくとも部分的に成形されている、実施形態13に記載のスポーツ用品。
【0056】
15.スポーツ用品がスポーツシューズである、実施形態13または14のいずれか1つに記載のスポーツ用品。
【0057】
16.個別発泡粒子がスポーツシューズのソール中に、特にミッドソール中に含まれる、実施形態15に記載のスポーツシューズ。
【0058】
17.個別発泡粒子が実施形態1から12のいずれか1つのポストプロセス処理を受けたものである、実施形態16に記載のスポーツシューズ。
【0059】
図面中に描かれたまたは上記の構成要素の異なる配置、ならびに示されていないかまたは記載されていない構成要素およびステップが、可能である。同様に、いくつかの特徴およびサブコンビネーションが有用であり、他の特徴およびサブコンビネーションと無関係に用いてもよい。本発明の実施形態は例証を目的として記載されており、制限目的ではなく、本特許の読者には代替的実施形態が明らかとなるであろう。したがって、本発明は上記または図面に描かれた実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲から逸脱せずに様々な実施形態および修正が行われ得る。
【符号の説明】
【0060】
100 システム
105a ステーション
105b ステーション
105c ステーション
120 複数の個別発泡粒子
130 熱エネルギー
200 例示的な個別発泡粒子
205a 実施形態
205b 実施形態