IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 江崎グリコ株式会社の特許一覧

特許7194516賦香されたカカオ原料の製造方法及び賦香されたカカオ製品の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】賦香されたカカオ原料の製造方法及び賦香されたカカオ製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/02 20060101AFI20221215BHJP
   A23G 1/30 20060101ALI20221215BHJP
   A23G 1/56 20060101ALI20221215BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20221215BHJP
   A23C 9/156 20060101ALI20221215BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A23G1/02
A23G1/30
A23G1/56
A23L2/38 C
A23C9/156
A23L2/38 P
A23L2/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018097064
(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公開番号】P2019201553
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高場 雅人
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0324798(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105248561(CN,A)
【文献】特開2005-261391(JP,A)
【文献】特開平01-312985(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03114940(EP,A1)
【文献】特開平03-043044(JP,A)
【文献】国際公開第2017/005373(WO,A1)
【文献】特表2011-502541(JP,A)
【文献】特許第6262387(JP,B1)
【文献】柚子マーマレード入りのチョコレートケーキ,[クックパッド] 簡単おいしいみんなのレシピが368万品[online],2016年06月10日,[検索日:2022.5.2],https://cookpad.com/recipe/3912345
【文献】とろける口解け!ラズベリーガトーショコラ,[クックパッド] 簡単おいしいみんなのレシピが368万品[online],2009年02月01日,[検索日:2022.5.2],https://cookpad.com/recipe/725523
【文献】しっとり和風抹茶ガトーショコラ,[クックパッド] 簡単おいしいみんなのレシピが368万品[online],2017年03月07日,[検索日:2022.5.2],https://cookpad.com/recipe/4398646
【文献】★☆チョコレートの簡単ケーキ☆★,[クックパッド] 簡単おいしいみんなのレシピが368万品[online],2004年02月17日,[検索日:2022.5.2],https://cookpad.com/recipe/130232
【文献】FLOURLESS CHOCOLATE LIME CAKE WITH MARGARITA CREAM,Nigella. Featured in KITCHEN,2017年,[検索日:2022.5.9],https://web.archive.org/web/20170805225658/https://www.nigella.com/recipes/flourless-chocolate-lime-cake-with-margarita-cream
【文献】MOELLEUX AU CHOCOLAT ET FRUIT DE LA PASSION,2009年,[検索日:2022.5.9],https://www.750g.com/moelleux-au-chocolat-et-fruit-de-la-passion-r30000.htm
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/02- 1/56
AGRICOLA/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオ原料を流動性賦香用副原料の存在下でローストする工程を含み、前記カカオ原料がカカオニブであり、前記流動性賦香用副原料がパッションフルーツ、ゆず、しょうゆ、マンゴー、ラズベリー、レモン及びライムからなる群から選ばれる、賦香されたカカオ原料の製造方法。
【請求項2】
流動性賦香用副原料のローストにより生じる賦香成分を含むカカオ原料を含むカカオ製品であって、前記流動性賦香用副原料がパッションフルーツ、ゆず、しょうゆ、マンゴー、ラズベリー、レモン及びライムからなる群から選ばれ、前記カカオ原料がカカオニブである、カカオ製品。
【請求項3】
以下の工程(1)~(2):
(1)カカオ原料を流動性賦香用副原料の存在下でローストする工程
(2)ローストされたカカオ原料を用いてカカオ製品を製造する工程
を含み、前記流動性賦香用副原料がパッションフルーツ、ゆず、しょうゆ、マンゴー、ラズベリー、レモン及びライムからなる群から選ばれ、カカオ原料がカカオニブである、賦香されたカカオ製品の製造方法。
【請求項4】
カカオ製品がチョコレート、ココアパウダー、ココア、カカオマス、ココアバター、ココアケーキ、チョコレート飲料、チョコレート入り清涼飲料、チョコレート入り乳飲料からなる群から選ばれる、請求項に記載の賦香されたカカオ製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賦香されたカカオ原料の製造方法及び賦香されたカカオ製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年チョコレート製品のトレンドは、カカオ含量の高いハイカカオチョコレートが牽引している。これはカカオに含まれる健康機能が注目されていることに加え、チョコレートのおいしさの要素として、いわゆる“シングルオリジンチョコレート”のようにカカオの産地による特徴的な風味を楽しむなど、チョコレートの風味に対する嗜好性がますます高まっていることを示している。
【0003】
チョコレートの風味に寄与する要素としては、原料であるカカオ豆の産地やその加工方法 (発酵、ロースト等)、チョコレート化するための砂糖や乳原料等との配合比、好ましい風味に整えるコンチングといった製造工程が挙げられるが、カカオ豆の風味に最も影響を与えるのはその産地 (品種) と発酵工程である。カカオ豆は、総じてカカオ風味と呼ばれるチョコレートを想起させる風味以外にもフルーティ、フローラル、スパイシー、スモーキー、ナッティ等、カカオが育った土地の特有の環境、土壌、気候によって醸成される特徴的な風味を有している (非特許文献1)。近年、このような特徴を活かした、特定地域のカカオのみで作られたシングルオリジンのチョコレートが好まれているが、産地を限定することによりカカオ豆の調達コストが上がってしまうため、こうしたカカオ豆を使用したチョコレートは比較的高価なものになってしまう。また、カカオ豆は天然物であるため、天候等によって品質や収穫量が変動する可能性があるため、原料の調達が不安定になったり、製品の風味を安定化させるために風味のコントロールが必要であったり、大量生産を行う際には課題が多い。
【0004】
一方、ロースト、コンチング工程は、カカオ豆が持つ香気成分を引き出す工程であり、使用したカカオ豆に含まれていない全く異なる風味を付与することはできない。すなわちチョコレート製品の風味を、原料のカカオ豆を変えずに抜本的に変化させるためには、風味を付与する副原料を新たに添加する必要がある。
【0005】
特許文献1は、チョコレートにフルーティな風味を付与するために、フルーツの果汁やドライフルーツ等を添加する方法を提案している。しかし、チョコレートは油性食品であるため、果汁のような水溶液を添加すると生地が容易に増粘し、成形・固化が困難になるため、添加量が非常に限定的になり、好ましい風味を付与するための十分量を添加することができない。
【0006】
特許文献2は、スプレードライや凍結乾燥によってパウダー状に加工した果汁を添加する方法を提案している。パウダー状に加工した果汁は水分量が極めて少ないため、水分による増粘は防ぐことができるものの、スプレードライの際に使用される大量の賦形剤 (デキストリン等) や、フリーズドライ後に残る果実由来の繊維質などの固形分により、チョコレートがザラついたりボテたりしてしまうため、やはり添加量は非常に限定的になる。ドライフルーツ等の乾燥果実を添加することで水分の影響を軽減することは可能であるが (特許文献3、4)、果物自体の食感が際立ったチョコレート製品となってしまうため、チョコレートのなめらかな口溶けが犠牲になる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3950159号
【文献】特開平5-304892号公報
【文献】特開2008-263853号公報
【文献】特表2016-537007号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】日本チョコレート・ココア協会のホームページ(http://www.chocolate-cocoa.com/index.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、賦香されたカカオ原料及び賦香されたカカオ製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の賦香されたカカオ原料の製造方法及び賦香されたカカオ製品の製造方法を提供するものである。
項1. カカオ原料を流動性賦香用副原料の存在下でローストする工程を含み、前記カカオ原料がカカオ豆又はカカオニブである、賦香されたカカオ原料の製造方法。
項2. カカオ原料がカカオニブである、項1に記載の賦香されたカカオ原料の製造方法。
項3. 項1又は項2に記載の製造方法により得られたカカオ原料を含むカカオ製品。
項4. 流動性賦香用副原料のローストにより生じる賦香成分を含むカカオ原料を含むカカオ製品。
項5. 以下の工程(1)~(2):
(1)カカオ原料を流動性賦香用副原料の存在下でローストする工程
(2)ローストされたカカオ原料を用いてカカオ製品を製造する工程
を含む、賦香されたカカオ製品の製造方法。
項6. カカオ原料がカカオニブである、項5に記載の賦香されたカカオ製品の製造方法。
項7. カカオ製品がチョコレート、ココアパウダー、ココア、カカオマス、ココアバター、ココアケーキ、チョコレート飲料、チョコレート入り清涼飲料、チョコレート入り乳飲料からなる群から選ばれる、項5又は6に記載の賦香されたカカオ製品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明で使用するロースト工程はカカオ豆を加熱焙煎する工程であり、発酵のように複雑なプロセスを必要とするものではなく、近代的なロースターで正確な温度管理のもとに実施することが可能であるため、風味の管理・コントロールが容易である。
【0012】
また、流動性賦香用副原料は最終製品であるチョコレート、ココアパウダー、カカオマスなどのカカオ製品と同じ熱履歴を有するため、チョコレート、ココアパウダー、カカオマスなどのカカオ製品の風味と、マッチする香りを付与することができる。
【0013】
さらに、ロースト工程前に果汁、ピューレ等の流動性原料を添加することにより一時的に水分量が増加するが、ロースト工程において通常のチョコレートと同等レベルまで水分量をコントロールすることが可能であるため、水分に起因するチョコレート生地の増粘等を抑制できる。カカオ豆のロースト時には、カカオ豆に加水をすることで豆の水分量を調節したり、水蒸気により殺菌効果を高めることが一般的に行われているが、この加水の代わりに透明果汁等の液体原料を加えても良い。この場合、実質的に固形分を含まないため、固形分に由来するザラつきなどチョコレートの口どけに影響することがない。また、ピューレ、混濁果汁など果汁と果肉もしくは繊維質を含む液体原料を用いる場合、果肉に含まれる繊維質がロースト後のカカオ豆に残存することになるが、一般的に粒子のサイズが20μm以下になると、人間の舌ではざらつきを感じることができないと言われており、本発明における添加量では、その後のレファイニング工程で混濁果汁、果肉に含まれる繊維質などの固形分を十分に微細化することが可能であり、ざらつきのないチョコレートを製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で使用するカカオ原料としては、カカオ豆、カカオニブが挙げられる。カカオ豆は、特に限定されないが、好ましくは発酵、乾燥させたものを使用することができる。
【0015】
本発明により賦香したカカオ豆を製造した場合、カカオ豆から賦香したカカオニブを取り出し、このカカオニブをさらに本発明により流動性賦香用副原料を用いて賦香させてもよい。賦香されたカカオ原料の製造にカカオニブを用いると、カカオニブの賦香がより強くなるので好ましい。
【0016】
流動性賦香用副原料としては、果汁(透明果汁、混濁果汁)、濃縮果汁、果実ピューレ、醤油、ヨーグルト、乳酸菌飲料、野菜ジュース、野菜ピューレ、ウスターソース、酢(バルサミコ酢など)、トマトケチャップ、魚醤、酒類(日本酒、ワイン、焼酎、ビール、ウイスキーなど)、めんつゆ、ポン酢、みりん等が挙げられ、果汁、濃縮果汁、果実ピューレ、醤油が好ましい。果汁、濃縮果汁、果実ピューレの原料となる果物としては、イチゴ、柑橘類(オレンジ、レモン、温州ミカン、でこぽん、ポンカン、ハッサク、いよかん、甘夏、文旦、かぼす、ゆず、すだち、ライムなど)、バナナ、リンゴ、ブドウ、マスカット、パイナップル、マンゴー、柿、梨、キウイ、メロン、梅、アボカド、アセロラ、スイカ、グレープフルーツ、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ、ブルーベリー、ラズベリー、桃などが挙げられ、好ましくは、ゆず果汁、パッションフルーツ果汁、マンゴーピューレなどが挙げられる。
【0017】
野菜ジュース、野菜ピューレの原料となる野菜としては、トマト、にんじん、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、ケール、レタス、キャベツ、アスパラガス、パセリ、セロリ、ヨモギ、カボチャ、ピーマン、カリフラワー、たまねぎ、大根、ラディッシュなどが挙げられる。
【0018】
本発明のロースト工程のロースト温度として、好ましくは90~170℃、より好ましくは110~150℃であり、ロースト時間は、好ましくは20分間~80分間、より好ましくは30分間~60分間である。カカオ原料は、流動性賦香用副原料と撹拌・混合し、両者を馴染ませた後にロースト処理を行うことが好ましい。流動性賦香用副原料が果汁、濃縮果汁、醤油などの液体の場合には、カカオ原料をこれらの流動性賦香用副原料に浸漬し、カカオ原料内に流動性賦香用副原料を浸み込ませ、必要に応じて乾燥したカカオ原料を使用してもよい。
【0019】
ロースト工程は、カカオ原料100質量部に対し、流動性賦香用副原料を好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは5~12.5質量部使用して行う。
【0020】
カカオ原料がカカオ豆の場合、ロースト工程後にカカオ豆を砕き、外皮と胚芽を取り除いて、賦香されたカカオニブを得ることができる。
【0021】
ロースト工程において、カカオ原料に加水して、豆や流動性賦香用副原料の水分量を調節したり、水蒸気の殺菌効果を高めてもよい。流動性賦香用副原料が水分を十分に含む場合、加水をしなくてもよい。
【0022】
カカオ製品としては、チョコレート、ココアパウダー、ココア、カカオマス、ココアバター、ココアケーキ、チョコレート飲料、チョコレート入り清涼飲料、チョコレート入り乳飲料が挙げられ、好ましくはチョコレートである。
【0023】
ローストされたカカオ原料を用いてチョコレートを製造することができる。ローストされたカカオ原料から得たカカオニブを用いたチョコレートの製造は、多段階の工程により常法に従い行うことができる。チョコレートを製造するための多段階の工程としては、賦香されたカカオニブの摩砕工程、カカオニブ以外の原料の混合工程、レファイニング工程、コンチング工程、テンパリング工程、成形工程などが挙げられる。カカオニブを摩砕することにより、カカオマスが得られる。市販のメランジャー等を用いることで、レファイニング工程とコンチング工程を同時に行うこともできる。ノンテンパリングタイプのチョコレートまたはチョコレート油脂と組み合わせる場合や、ガナッシュに用いる場合など、製品の最終形態によってはテンパリング工程が省略可能である。また、レファイニング工程により、流動性賦香用副原料に含まれる繊維質などの固形分を微細化し、最終製品であるチョコレートのざらつきを抑えることができる。
【0024】
カカオニブ以外のチョコレートの原料としては、ココアバター、ココアバター代用脂(テンパー型およびノーテンパー型)、ココアバター分別脂等の油脂、単糖類、二糖類、糖アルコール、オリゴ糖類、多糖類、乳製品、粉末卵、穀粉、ココアパウダー、乾燥果実、ナッツ、パフ、乳化剤などが挙げられる。
【0025】
乳製品として、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、加糖粉乳、練乳パウダー、発酵乳パウダー、チーズパウダー等の粉乳や牛乳、クリーム、バター、チーズ、濃縮乳、加糖練乳などがあり、チョコレート生地に配合してもしなくてもよい。
【0026】
チョコレートとしては、ビターチョコレート、ブラックチョコレート、ミルクチョコレート、クリームチョコレート、生チョコレートなどが挙げられ、例えば板チョコレート、チョコレートバー、シェルチョコレート(チョコレートを型に流し込み、殻(シェル)をつくり、この中にクリーム、ジャム、ナッツ類、フルーツ類などを入れ、さらにチョコレートで蓋をしたもの)、エンローバー(被覆)チョコレート、ホローチョコレートなどが挙げられる。
【0027】
本発明でいうチョコレートとは、チョコレート類の表示に関する公正競争規約(以下、チョコレート規約という)の種類別名称の定義によると、カカオビーンズから調製したカカオマス、ココアバター、ココアケーキ又はココアパウダーを原料とし、必要により糖類、乳製品、他の食用油脂、香料等を加え、通常の工程を経て製造したものであって、「チョコレート生地」の基準に適合したチョコレート生地が60%以上のチョコレート加工品及びチョコレート生地のみのものをいう(チョコレート規約第2条第3項)。本発明のチョコレートは、賦香されたカカオ原料に由来するカカオマス、ココアバター、ココアケーキ又はココアパウダーを含むものである。
【0028】
しかし、本発明においては、チョコレート規約に定義するチョコレートに限ることなく、他の種類別名称である準チョコレート、チョコレート菓子及び準チョコレート菓子並びにミルクチョコレート、準ミルクチョコレート及び純チョコレートも含まれる。また、チョコレート規約で定められたチョコレート、準チョコレートなどに限らず、それ以外の油脂性菓子生地、例えば、ココアバターの代わりにココアバター代用脂として、動物、植物若しくは両者由来のテンパリング脂、ノンテンパリング脂又はそれらを混合した油脂を使用した各種油脂性菓子生地も含むものである。
【0029】
本発明においてはまた、上記のように製造したチョコレートやカカオマスを原料として用いて常法に従って、チョコレート飲料、チョコレート入りの清涼飲料や乳飲料などを調製することができる。1
単糖類としては、果糖、ブドウ糖、キシロース、ソルボース、ガラクトース、異性化糖などが挙げられる。
【0030】
二糖類としては、麦芽糖、乳糖、トレハロース、ショ糖、などがある。
【0031】
糖アルコールとしては、還元パラチノース、パラチノース、ラクチトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトールが挙げられる。
【0032】
オリゴ糖類としては、マルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ダイズオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラクトスクロース、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、シュクロオリゴ糖、テアンオリゴ糖、海藻オリゴ糖などが挙げられる。
【0033】
多糖類としては、澱粉、デキストリン、ガム質、カカオ多糖類などが挙げられる。
【0034】
乳化剤としては、大豆レシチン、卵黄レシチンなどのリン脂質;グリセリン脂肪酸エステル(例えば、ジグリセリンモノパルミテート)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ならびにプロピレン脂肪酸エステルのような脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【実施例
【0035】
以下、本発明を実施例に基づきより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されることはない。
【0036】
[比較例1]
カカオニブ1000 g に対し、水75 g (7.5質量%) を添加し、全体が馴染むように十分撹拌・混合した。
【0037】
上記カカオニブを、オーブンで120℃、50分加熱し、ローストした。
ロースト後のカカオニブ450 g と、粉糖 450 g、ココアバター 100 g を、メランジャーに入れて6時間摩砕し、チョコレート生地を作成した。このチョコレート生地に、ゆず香料を0.01質量%添加し、常法によりテンパリングを行った後に冷却固化し、チョコレートを得た。
【0038】
[比較例2]
カカオニブ1000 g に対し、水75 g (7.5質量%) を添加し、全体が馴染むように十分撹拌・混合した。
【0039】
上記カカオニブを、オーブンで120℃、50分加熱し、ローストした。ロースト後のカカオニブ450 g と、粉糖 450 g、ココアバター 100 g を、メランジャーに入れて6時間摩砕し、チョコレート生地を作成した。このチョコレート生地に対し、15質量%のパッションフルーツパウダーを添加した。パッションフルーツパウダーは、パッションフルーツの果汁をデキストリンと混合してスプレードライしたもので、その組成はパッションフルーツ果汁21.5質量%、デキストリン75.5質量%、水3質量%である。チョコレート生地中に含まれる、生換算のパッションフルーツ果汁含量は、3.4質量%である。得られたチョコレート生地を常法によりテンパリングした後に冷却固化し、チョコレートを得た。
【0040】
[比較例3]
カカオニブ1000 g に対し、水75 g (7.5質量%) を添加し、全体が馴染むように十分撹拌・混合した。
【0041】
上記カカオニブを、オーブンで120℃、50分加熱し、ローストした。ロースト後のカカオニブ450 g と、粉糖 450 g、ココアバター 100 g を、メランジャーに入れて6時間摩砕し、チョコレート生地を作成した。このチョコレート生地に対し、1.5質量%のパッションフルーツパウダーを添加した。パッションフルーツパウダーは、パッションフルーツの果汁をデキストリンと混合してスプレードライしたもので、その組成はパッションフルーツ果汁21.5質量%、デキストリン75.5質量%、水3質量%である。チョコレート生地中に含まれる、生換算のパッションフルーツ果汁含量は、0.3質量%である。得られたチョコレート生地を常法によりテンパリングした後に冷却固化し、チョコレートを得た。
【0042】
[実施例1]
カカオニブ1000 g に対し、パッションフルーツ果汁75 g (7.5質量%) を添加し、全体が馴染むように十分撹拌・混合した。
【0043】
上記カカオニブを、オーブンで120℃、50分加熱し、ローストした。ロースト後のカカオニブ450 g と、粉糖 450 g、ココアバター 100 g を、メランジャーに入れて6時間摩砕し、チョコレート生地を作成した。チョコレート生地中に含まれる、生換算のパッションフルーツ果汁含量は、3.4質量%である。得られたチョコレート生地を常法によりテンパリングした後に冷却固化し、チョコレートを得た。
【0044】
[実施例2]
実施例1のカカオニブ700 g と、粉糖 300 gを、メランジャーに入れて6時間摩砕し、チョコレート生地を作成した。チョコレート生地中に含まれる、生換算のパッションフルーツ果汁含量は、5.3質量%である。得られたチョコレート生地を常法によりテンパリングした後に冷却固化し、チョコレートを得た。
【0045】
[実施例3]
カカオニブ1000 g に対し、ゆず果汁75 g (7.5質量%) を添加し、全体が馴染むように十分撹拌・混合した。
【0046】
上記カカオニブを、オーブンで120℃、50分加熱し、ローストした。ロースト後のカカオニブ450 g と、粉糖 450 g、ココアバター 100 g を、メランジャーに入れて6時間摩砕し、チョコレート生地を作成した。チョコレート生地中に含まれる、生換算のゆず果汁含量は、3.4質量%である。得られたチョコレート生地を常法によりテンパリングした後に冷却固化し、チョコレートを得た。
【0047】
[実施例4]
カカオニブ1000 g に対し、ゆず果汁30 g (3.0質量%) を添加し、全体が馴染むように十分撹拌・混合した。
【0048】
上記カカオニブを、オーブンで120℃、50分加熱し、ローストした。ロースト後のカカオニブ450 g と、粉糖 450 g、ココアバター 100 g を、メランジャーに入れて6時間摩砕し、チョコレート生地を作成した。チョコレート生地中に含まれる、生換算のゆず果汁含量は、1.4質量%である。得られたチョコレート生地を常法によりテンパリングした後に冷却固化し、チョコレートを得た。
【0049】
[実施例5]
カカオニブ1000 g に対し、しょうゆ50 g (5質量%) を添加し、全体が馴染むように十分撹拌・混合した。
【0050】
上記カカオニブを、オーブンで120℃、50分加熱し、ローストした。
【0051】
ロースト後のカカオニブ200 g と、粉糖 450 g、ココアバター 250 g 、全粉乳100 g、をメランジャーに入れて6時間摩砕し、チョコレート生地を作成した。チョコレート生地中に含まれる、生換算のしょうゆ含量は、1質量%である。得られたチョコレート生地を常法によりテンパリングした後に冷却固化し、チョコレートを得た。
【0052】
[実施例6]
カカオニブ1000 g に対し、マンゴーピューレ75 g (7.5質量%) を添加し、全体が馴染むように十分撹拌・混合した。
【0053】
上記カカオニブを、オーブンで120℃、50分加熱し、ローストした。ロースト後のカカオニブ450 g と、粉糖 450 g、ココアバター 100 g を、メランジャーに入れて6時間摩砕し、チョコレート生地を作成した。チョコレート生地中に含まれる、生換算のマンゴーピューレ含量は、3.4質量%である。得られたチョコレート生地を常法によりテンパリングした後に冷却固化し、チョコレートを得た。
【0054】
[実施例7]
カカオニブ1000 g に対し、5倍濃縮ラズベリー果汁125 g (12.5質量%) を添加し、全体が馴染むように十分撹拌・混合した。
【0055】
上記カカオニブを、オーブンで120℃、50分加熱しローストしたところ、果汁に含まれる糖分によりカカオニブがわずかに結着して塊になっていたが、物理的な衝撃を与えると容易に分離することができた。ロースト後のカカオニブ450 g と、粉糖 450 g、ココアバター 100 g を、メランジャーに入れて6時間摩砕し、チョコレート生地を作成した。チョコレート生地中に含まれる、生換算の5倍濃縮ラズベリー果汁含量は、28.1質量%である。得られたチョコレート生地を常法によりテンパリングした後に冷却固化し、チョコレートを得た。
【0056】
比較例1~3、実施例1~7で得られたチョコレートをパネラー10名で試食し、チョコレートのざらつきとチョコレートにおける副原料の風味について評価した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
チョコレートにおける副原料の風味の評価は、以下の基準で行った。
◎:チョコレートにマッチした副原料の風味がしっかり感じられる。
○:チョコレートにマッチした副原料の風味が感じられるが、◎よりも弱い。
×:副原料の風味がほとんど感じられない。またはチョコレートにマッチしていない。