(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ネジ構造、油圧駆動装置、ナット及び軸部材
(51)【国際特許分類】
F16B 39/02 20060101AFI20221215BHJP
F16C 35/073 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F16B39/02 C
F16B39/02 P
F16C35/073
(21)【出願番号】P 2018165440
(22)【出願日】2018-09-04
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】矢田部 倫章
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-232037(JP,A)
【文献】特開2014-206196(JP,A)
【文献】実開昭57-143416(JP,U)
【文献】特開昭49-116443(JP,A)
【文献】実開昭50-045561(JP,U)
【文献】特開2005-147175(JP,A)
【文献】特開2016-023804(JP,A)
【文献】実開昭60-127111(JP,U)
【文献】仏国特許出願公開第02566482(FR,A1)
【文献】特開2011-043168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00-43/02
F16C 35/00-39/06
43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のネジ部を内周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動するナットと、
前記ナットの前記第一のネジ部と噛み合う第二のネジ部を外周面に有し、変形又は移動した前記ナットと接触することで前記ナットとの相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記ナットとの相対回転が許容される、軸部材と、
全体がテーパ状に形成されるか又は一部にテーパ状部分を有する雄ネジ部材と、を備え、
前記ナットは、軸方向に延び且つ前記テーパ状の前記雄ネジ部材又は前記雄ネジ部材のテーパ状部分と噛み合う雌ネジ部を有する回転規制操作用ネジ穴を備え、
前記ナットは、前記回転規制操作用ネジ穴に対する前記雄ネジ部材の締め付けに応じてテーパ状の前記雄ネジ部材又は前記雄ネジ部材のテーパ状部分から径方向内側への前記力が作用することで変形し、
前記雄ネジ部材には、その大径側から小径側に向けて延びる、工具を挿入される工具穴が形成されるとともに、前記工具穴に連通して前記雄ネジ部材の小径側端部を貫通する通し穴が形成され、
前記雄ネジ部材は、前記通し穴を通して前記工具穴に挿入した工具を回転させることで、前記回転規制操作用ネジ
穴に対して締め付け可能となっている、ネジ構造。
【請求項2】
第一のネジ部を内周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動するナットと、
前記ナットの前記第一のネジ部と噛み合う第二のネジ部を外周面に有し、変形又は移動した前記ナットと接触することで前記ナットとの相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記ナットとの相対回転が許容される、軸部材と、
全体がテーパ状に形成されるか又は一部にテーパ状部分を有する雄ネジ部材と、を備え、
前記ナットは、軸方向に延び且つ前記テーパ状の前記雄ネジ部材又は前記雄ネジ部材のテーパ状部分と噛み合う雌ネジ部を有する回転規制操作用ネジ穴を備え、
前記ナットは、前記回転規制操作用ネジ穴に対する前記雄ネジ部材の締め付けに応じてテーパ状の前記雄ネジ部材又は前記雄ネジ部材のテーパ状部分から径方向内側への前記力が作用することで変形する接触部を備え、
前記軸部材は、変形した前記接触部と接触する受け部を備え、
前記軸部材の前記受け部は、前記第二のネジ部における、そのネジ山が他の部分のネジ山よりも低くなる部分を含み、変形した前記ナットの前記接触部と接触する、ネジ構造。
【請求項3】
第二のネジ部を外周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動する軸部材と、
前記軸部材の前記第二のネジ部と噛み合う第一のネジ部を内周面に有し、変形又は移動した前記軸部材と接触することで前記軸部材との相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記軸部材との相対回転が許容される、ナットと、を備え、
前記軸部材は、前記軸部材の軸方向端面に形成された回転規制操作用ネジ穴に噛み合わされる雄ネジ部材をさらに備え、
前記雄ネジ部材は、前記雄ネジ部材を移動させるための前記力が作用することで前記回転規制操作用ネジ穴から前記ナットの側に径方向に向けて突出し、
前記軸部材の外周面には、前記軸方向端面から離間して前記雄ネジ部材をねじ込む側に位置する前記第二のネジ部と、前記軸方向端面と前記第二のネジ部との間に位置し、前記第二のネジ部のネジ山よりも小径となる非ネジ部とが設けられ、前記非ネジ部に前記雄ネジ部材が位置しており、
前記ナットを緩める側と前記雄ネジ部材を緩める側とが同一の方向であり、
前記力の解除後、前記ナットと前記雄ネジ部材とが干渉せず且つ前記雄ネジ部材が前記第一のネジ部に干渉しない、ネジ構造。
【請求項4】
第一のネジ部を内周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動するナットと、
前記ナットの前記第一のネジ部と噛み合う第二のネジ部を外周面に有し、変形又は移動した前記ナットと接触することで前記ナットとの相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記ナットとの相対回転が許容される円筒状の固定ケースを有する油圧モータと、
前記固定ケースの外周面に設けられ前記ナットによって軸方向移動を規制される軸受を介して前記固定ケースに対して回転自在に支持された回転ケースと、
全体がテーパ状に形成されるか又は一部にテーパ状部分を有する雄ネジ部材と、を備え、
前記ナットは、軸方向に延び且つ前記テーパ状の前記雄ネジ部材又は前記雄ネジ部材のテーパ状部分と噛み合う雌ネジ部を有する回転規制操作用ネジ穴を備え、
前記ナットは、前記回転規制操作用ネジ穴に対する前記雄ネジ部材の締め付けに応じてテーパ状の前記雄ネジ部材又は前記雄ネジ部材のテーパ状部分から径方向内側への前記力が作用することで変形し、
前記雄ネジ部材には、その大径側から小径側に向けて延びる、工具を挿入される工具穴が形成されるとともに、前記工具穴に連通して前記雄ネジ部材の小径側端部を貫通する通し穴が形成され、
前記雄ネジ部材は、前記通し穴を通して前記工具穴に挿入した工具を回転させることで、前記回転規制操作用ネジ
穴に対して締め付け可能となっている油圧駆動装置。
【請求項5】
第一のネジ部を内周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動するナットと、
前記ナットの前記第一のネジ部と噛み合う第二のネジ部を外周面に有し、変形又は移動した前記ナットと接触することで前記ナットとの相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記ナットとの相対回転が許容される円筒状の固定ケースを有する油圧モータと、
前記固定ケースの外周面に設けられ前記ナットによって軸方向移動を規制される軸受を介して前記固定ケースに対して回転自在に支持された回転ケースと、
全体がテーパ状に形成されるか又は一部にテーパ状部分を有する雄ネジ部材と、を備え、
前記ナットは、軸方向に延び且つ前記テーパ状の前記雄ネジ部材又は前記雄ネジ部材のテーパ状部分と噛み合う雌ネジ部を有する回転規制操作用ネジ穴を備え、
前記ナットは、前記回転規制操作用ネジ穴に対する前記雄ネジ部材の締め付けに応じてテーパ状の前記雄ネジ部材又は前記雄ネジ部材のテーパ状部分から径方向内側への前記力が作用することで変形する接触部を備え、
前記
固定ケースは、変形した前記接触部と接触する受け部を備え、
前記
固定ケースの前記受け部は、前記第二のネジ部における、そのネジ山が他の部分のネジ山よりも低くなる部分を含み、変形した前記ナットの前記接触部と接触する、油圧駆動装置。
【請求項6】
第二のネジ部を外周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動する円筒状の固定ケースを有する油圧モータと、
前記固定ケースの前記第二のネジ部と噛み合う第一のネジ部を内周面に有し、変形又は移動した前記固定ケースと接触することで前記固定ケースとの相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記固定ケースとの相対回転が許容される、ナットと、
前記固定ケースの外周面に設けられ前記ナットによって軸方向移動を規制される軸受を介して前記固定ケースに対して回転自在に支持された回転ケースと、を備え、
前記固定ケースは、前記固定ケースの軸方向端面に形成された回転規制操作用ネジ穴に噛み合わされる雄ネジ部材をさらに備え、
前記雄ネジ部材は、前記雄ネジ部材を移動させるための前記力が作用することで前記回転規制操作用ネジ穴から前記ナットの側に径方向に向けて突出し、
前記固定ケースの外周面には、前記軸方向端面から離間して前記雄ネジ部材をねじ込む側に位置する前記第二のネジ部と、前記軸方向端面と前記第二のネジ部との間に位置し、前記第二のネジ部のネジ山よりも小径となる非ネジ部とが設けられ、前記非ネジ部に前記雄ネジ部材が位置しており、
前記ナットを緩める側と前記雄ネジ部材を緩める側とが同一の方向であり、
前記力の解除後、前記ナットと前記雄ネジ部材とが干渉せず且つ前記雄ネジ部材が前記第一のネジ部に干渉しない、油圧駆動装置。
【請求項7】
第一のネジ部を内周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動するナットであって、
第二のネジ部を外周面に有する軸部材に接触することで、前記軸部材との相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記軸部材との相対回転が許容される、ナットであり、
前記ナットは、軸方向に延び、雌ネジ部を有する回転規制操作用ネジ穴を備え、
前記回転規制操作用ネジ穴には、全体がテーパ状に形成されるか又は一部にテーパ状部分を有する雄ネジ部材が前記雌ネジ部に噛み合う状態で設けられ、
前記ナットは、前記回転規制操作用ネジ穴に対する前記雄ネジ部材の締め付けに応じてテーパ状の前記雄ネジ部材又は前記雄ネジ部材のテーパ状部分から径方向内側への前記力が作用することで変形し、
前記雄ネジ部材には、その大径側から小径側に向けて延びる、工具を挿入される工具穴が形成されるとともに、前記工具穴に連通して前記雄ネジ部材の小径側端部を貫通する通し穴が形成され、
前記雄ネジ部材は、前記通し穴を通して前記工具穴に挿入した工具を回転させることで、前記回転規制操作用ネジ
穴に対して締め付け可能となっている、ナット。
【請求項8】
第二のネジ部を外周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動する軸部材であって、
第一のネジ部を内周面に有するナットに接触することで、前記ナットとの相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記ナットとの相対回転が許容される軸部材であり、
前記軸部材の軸方向端面に形成された回転規制操作用ネジ穴に噛み合わされる雄ネジ部材を備え、
前記雄ネジ部材は、前記雄ネジ部材を移動させるための前記力が作用することで前記回転規制操作用ネジ穴から前記ナットの側に径方向に向けて突出し、
前記軸部材の外周面には、前記軸方向端面から離間して前記雄ネジ部材をねじ込む側に位置する前記第二のネジ部と、前記軸方向端面と前記第二のネジ部との間に位置し、前記第二のネジ部のネジ山よりも小径となる非ネジ部とが設けられ、前記非ネジ部に前記雄ネジ部材が位置しており、
前記ナットを緩める側と前記雄ネジ部材を緩める側とが同一の方向とされ、
前記力の解除後、前記ナットと前記雄ネジ部材とが干渉せず且つ前記雄ネジ部材が前記第一のネジ部に干渉しない、軸部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナットを軸部材に対して回転規制した状態で取り付けるネジ構造、そのような構造を有する油圧駆動装置、ナット及び軸部材に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧モータの円筒状のケースに軸受を外嵌し、このケースの径方向外側に配置した円筒状のリングギアを軸受によって回転自在に支持する油圧駆動装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の油圧駆動装置では、油圧モータのケースにリングナットをさらに取り付け、リングナットを軸受に向けて締め込むことで軸受の軸方向移動を制約する。また外周面に突起を有するピンをケースに差し込み、ピンの突起をリングナットの内周面の雌ネジ部に食い込ませることで、リングナットが回転規制されている。
【0004】
上記のような回転規制構造として、特許文献2に開示されるような止めネジを利用する構造も従来から知られている。この構造では、ケースにねじ込んだ止めネジの雄ネジ部をリングナットの内周面の雌ネジ部に食い込ませ、これによりリングナットが回転規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-14318号公報
【文献】実公昭62-30579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の構造では、リングナットを回転規制した際にリングナットの雌ネジ部が復元不能に変形し、リングナットをケース(軸部材)から取り外す際に変形した雌ネジ部との干渉によってケース側の雄ネジ部も復元不能に変形し得る。そのため、リングナットの雌ネジ部及びケースの雄ネジ部のうちの少なくともいずれか一方が再利用不能となることで、再締結の際にリングナット及びケースのうちの少なくとも一方を新たな部品に交換する必要があった。
【0007】
本発明は上記実情を考慮してなされたものであって、軸部材に対して回転規制されたナットを軸部材から取り外した際に、軸部材及びナットを交換することなくナットを再び軸部材に対して回転規制した状態で取り付けることができるネジ構造、油圧駆動装置、ナット及び軸部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、第一のネジ部を内周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動するナットと、前記ナットの前記第一のネジ部と噛み合う第二のネジ部を外周面に有し、変形又は移動した前記ナットと接触することで前記ナットとの相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記ナットとの相対回転が許容される、軸部材と、を備える、ネジ構造である。
【0009】
(2)本発明は、第二のネジ部を外周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動する軸部材と、前記軸部材の前記第二のネジ部と噛み合う第一のネジ部を内周面に有し、変形又は移動した前記軸部材と接触することで前記軸部材との相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記軸部材との相対回転が許容される、ナットと、を備える、ネジ構造である。
【0010】
(1),(2)に係るネジ構造では、前記力によって径方向に変形又は移動した前記ナットおよび前記軸部材のうちの一方が、前記力の解除後、前記ナットおよび前記軸部材のうちの他方のネジ部によって押し戻された後に前記他方のネジ部上を移動する或いはネジ部に干渉しないように移動してもよい。
【0011】
(1),(2)に係るネジ構造は、前記ナット及び前記軸部材のうちの一方は、前記力が作用することで変形又は移動する接触部を備え、前記ナット及び前記軸部材のうちの他方は、変形又は移動した前記接触部と接触する受け部を備え、前記力の解除後、前記接触部と前記受け部とが干渉せず且つ前記接触部及び前記受け部が相手側のネジ部に干渉しなくてもよい。
【0012】
(1)に係るネジ構造は、全体がテーパ状に形成されるか又は一部にテーパ状部分を有する雄ネジ部材をさらに備え、前記ナットは、軸方向に延び且つ前記テーパ状の前記雄ネジ部材又は前記雄ネジ部材のテーパ状部分と噛み合う雌ネジ部を有する回転規制操作用ネジ穴を備え、前記ナットは、前記回転規制操作用ネジ穴に対する前記雄ネジ部材の締め付けに応じてテーパ状の前記雄ネジ部材又は前記雄ネジ部材のテーパ状部分から径方向内側への前記力が作用することで変形してもよい。
この場合、前記軸部材は、前記第二のネジ部における、そのネジ山が他の部分のネジ山よりも低くなる部分で、変形した前記ナットと接触してもよい。
【0013】
(1),(2)に係るネジ構造は、ねじ込み側に先細りとなるテーパ状部分を先端に有する雄ネジ部材をさらに備え、前記力によって変形又は移動する前記ナットおよび前記軸部材のうちの一方は、軸方向に延び前記雄ネジ部材が噛み合う回転規制操作用ネジ穴と、前記回転規制操作用ネジ穴から前記前記ナットおよび前記軸部材のうちの他方に向けて径方向に貫通する連通穴とを有し、前記ナットおよび前記軸部材のうちの一方は、前記雄ネジ部材の締め付けに応じて前記テーパ状部分に接触するように前記連通穴に配置される移動体を備えており、前記移動体は、前記雄ネジ部材の前記テーパ状部分に接触される前の状態において前記ナットおよび前記軸部材のうちの他方のネジ部のネジ山の頂部と干渉しない位置まで前記ネジ山に対して退避可能に前記連通穴に配置され、前記雄ネジ部材の締め付けに伴う前記テーパ状部分との接触に応じて前記力が作用することで前記ナットおよび前記軸部材のうちの他方に向けて移動してもよい。
この場合、前記回転規制操作用ネジ穴は、前記ナットに形成されており、前記ナットの内周面には、前記雄ネジ部材を緩める側に位置する前記第一のネジ部と、前記雄ネジ部材をねじ込む側に位置し、前記第一のネジ部のネジ山よりも大径となる非ネジ部とが設けられ、前記非ネジ部に前記連通穴が形成されており、前記ナットを緩める側と前記雄ネジ部材を緩める側とが同一の方向であり、前記力によって径方向に移動した前記移動体が、前記力の解除後、前記軸部材の前記第二のネジ部によって押し戻された後に当該第二のネジ部上を移動する或いは当該第二のネジ部に干渉しなくてもよい。
【0014】
(2)に係るネジ構造では、前記軸部材は、前記軸部材の軸方向端面に形成された回転規制操作用ネジ穴に噛み合わされる雄ネジ部材をさらに備え、前記雄ネジ部材は、前記雄ネジ部材を移動させるための前記力が作用することで前記回転規制操作用ネジ穴から前記ナットの側に径方向に向けて突出し、前記軸部材の外周面には、前記軸方向端面から離間して前記雄ネジ部材をねじ込む側に位置する前記第二のネジ部と、前記軸方向端面と前記第二のネジ部との間に位置し、前記第二のネジ部のネジ山よりも小径となる非ネジ部とが設けられ、前記非ネジ部に前記雄ネジ部材が位置しており、前記ナットを緩める側と前記雄ネジ部材を緩める側とが同一の方向であり、前記力の解除後、前記ナットと前記雄ネジ部材とが干渉せず且つ前記雄ネジ部材が前記第一のネジ部に干渉しなくてもよい。
【0015】
(2)に係るネジ構造では、前記軸部材は、前記軸部材の軸方向端面に形成された回転規制操作用ネジ穴に噛み合わされる雄ネジ部材と、前記雄ネジ部材とは別体であり、前記雄ネジ部材の締め付けに伴う接触に応じて前記力が作用することで前記ナットの側に向けて径方向に移動し且つ前記雄ネジ部材に接触される前の状態において前記ナットの前記第一のネジ部のネジ山の頂部と干渉しない位置まで退避可能な移動体とを備え、前記軸部材の外周面には、前記軸方向端面から離間して前記雄ネジ部材をねじ込む側に位置する前記第二のネジ部と、前記軸方向端面と前記第二のネジ部との間に位置し、前記第二のネジ部のネジ山よりも小径となる非ネジ部とが設けられ、前記非ネジ部に前記移動体が位置しており、前記ナットを緩める側と前記雄ネジ部材を緩める側とが同一の方向であり、前記力の解除後、前記ナットと前記移動体とが干渉せず且つ前記移動体が前記第一のネジ部に干渉しなくてもよい。
【0016】
また、本発明は、第一のネジ部を内周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動するナットと、前記ナットの前記第一のネジ部と噛み合う第二のネジ部を外周面に有し、変形又は移動した前記ナットと接触することで前記ナットとの相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記ナットとの相対回転が許容される円筒状の固定ケースを有する油圧モータと、前記固定ケースの外周面に設けられ前記ナットによって軸方向移動を規制される軸受を介して前記固定ケースに対して回転自在に支持された回転ケースと、を備える油圧駆動装置である。
【0017】
また、本発明は、第二のネジ部を外周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動する円筒状の固定ケースを有する油圧モータと、前記固定ケースの前記第二のネジ部と噛み合う第一のネジ部を内周面に有し、変形又は移動した前記固定ケースと接触することで前記固定ケースとの相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記固定ケースとの相対回転が許容される、ナットと、前記固定ケースの外周面に設けられ前記ナットによって軸方向移動を規制される軸受を介して前記固定ケースに対して回転自在に支持された回転ケースと、を備える油圧駆動装置である。
【0018】
また、本発明は、第一のネジ部を内周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動するナットであって、第二のネジ部を外周面に有する軸部材に接触することで、前記軸部材との相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記軸部材との相対回転が許容される、ナットである。
【0019】
また、本発明は、第二のネジ部を外周面に有し、径方向の力が作用することで変形又は移動する軸部材であって、第一のネジ部を内周面に有するナットに接触することで、前記ナットとの相対回転が規制され且つ前記力の解除後に前記ナットとの相対回転が許容される、軸部材である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、軸部材に対して回転規制されたナットを軸部材から取り外した際に、軸部材及びナットを交換することなくナットを再び軸部材に対して回転規制した状態で取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態にかかるネジ構造を有する油圧駆動装置を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態にかかるネジ構造を説明するための
図1の要部の拡大図である。
【
図3】第1の実施の形態にかかるネジ構造の接触状態を説明する図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態にかかるネジ構造を示す図である。
【
図5】本発明の第3の実施の形態にかかるネジ構造を示す図である。
【
図6】第3の実施の形態にかかるネジ構造の接触前の状態を示す図である。
【
図7】本発明の第4の実施の形態にかかるネジ構造を示す図である。
【
図8】本発明の第5の実施の形態にかかるネジ構造を示す図である。
【
図9】本発明の第6の実施の形態にかかるネジ構造を示す図である。
【
図10】本発明の第7の実施の形態にかかるネジ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の各実施の形態について説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態にかかるネジ構造を有する油圧駆動装置1の概略断面を示す図である。まず油圧駆動装置1の構成について説明する。
【0024】
図1に示される油圧駆動装置1は、減速機付き油圧モータ2を備え、減速機付き油圧モータ2は、油圧モータ2Aと減速機2Bとを一体化させて構成されている。油圧モータ2Aは、回転軸部材21と、作動油の給排に応じて回転軸部材21を駆動する油圧モータ機構22と、回転軸部材21と同軸状に配置される円筒形状に形成され、その内部に回転軸部材21及び油圧モータ機構22を収容する固定ケース23とを有している。
【0025】
回転軸部材21は、固定ケース23から軸方向の一方側(
図1の右側)に突出し、減速機2Bに連結されている。
図1において、符号C1は回転軸部材21の中心軸線を示し、回転軸部材21は、油圧モータ機構22によって中心軸線C1を中心に回転駆動される。なお、本実施の形態において軸方向と言う場合、その方向は中心軸線C1上を延びる方向又は中心軸線C1に沿う方向を意味する。また単に径方向と言う場合、その方向は中心軸線C1に直交する方向を意味する。
【0026】
油圧モータ機構22は、外部から作動油を供給されるとともに外部に作動油を排出することで固定ケース23に対して回転軸部材21を回転させる機構である。本実施の形態における油圧モータ2Aはプランジャモータであり、油圧モータ機構22はシリンダブロックや斜板等を有するが、油圧モータ2Aはベーンモータや歯車モータであってもよい。
【0027】
減速機2Bは、回転軸部材21における固定ケース23から軸方向の一方側に突出する部分に結合される減速機構26と、回転軸部材21と同軸状に配置される円筒形状に形成され、その内部に減速機構26を収容する回転ケース27とを有している。回転ケース27は、その軸方向の他方側(
図1の左側)の部分で固定ケース23の軸方向の一方側の部分を覆い、その軸方向の一方側の部分の内部において減速機構26を収容している。
【0028】
回転ケース27と固定ケース23との間には2つの軸受28が介装され、これにより回転ケース27は固定ケース23に回転自在に支持されている。減速機構26は、回転軸部材21の回転を減速させて回転ケース27に伝達し、回転ケース27は、固定ケース23に回転自在に支持されることで、減速機構26から回転を伝達された際に中心軸線C1を中心に回転するようになっている。
【0029】
本実施の形態では、固定ケース23の外周面に2つの軸受28が外嵌された後にリングナット30がねじ込まれ、リングナット30が軸受28の軸方向移動を制約するように配置される。これらリングナット30及び固定ケース23との間に本実施の形態にかかるネジ構造が適用され、リングナット30は固定ケース23に対し回転規制された状態で取り付けられている。なお、本実施の形態では、リングナット30が本発明でいうナットに対応し、固定ケース23が本発明でいう軸部材に対応する。
【0030】
図2は、固定ケース23に取り付けられたリングナット30の周辺の断面を概略的に示している。リングナット30の内周面には雌ネジ部として機能する第一のネジ部30Aが設けられ、固定ケース23の外周面には雄ネジ部として機能する第二のネジ部23Aが設けられている。リングナット30は、その第一のネジ部30Aを固定ケース23の第二のネジ部23Aと噛み合わせることにより固定ケース23に取り付けられている。
【0031】
2つの軸受28は固定ケース23の軸方向の一方側(
図1及び
図2の右側)から固定ケース23に外嵌され、軸方向の他方側(
図1及び
図2の左側)の軸受28は固定ケース23に形成された段差面に軸方向に沿って接し、軸方向の一方側の軸受28はスペーサを介して他方側の軸受28に軸方向に沿って接する。これにより、2つの軸受28が固定ケース23上の所定位置に位置決めされる。ここでリングナット30が軸方向の他方側に向けて軸受28を押圧するように固定ケース23の第二のネジ部23Aに締め付けられることで、軸受28の軸方向移動が制約されることになる。
【0032】
本実施の形態におけるリングナット30には、軸方向に延び且つ雌ネジ部31Aを有する回転規制操作用ネジ穴31が形成され、回転規制操作用ネジ穴31と、外周面の全体がテーパ状に形成された雄ネジ部材40とが噛み合っている。詳しくは、回転規制操作用ネジ穴31はリングナット30を軸方向に貫通しており、内周面の軸受28側(軸方向の他方側)の端部から軸受28側とは反対側(軸方向の一方側)に向けて延びる雌ネジ部31Aを内周面の一部に有する。雌ネジ部31Aはテーパ雌ネジであり、軸受28から離れる側(軸方向の一方側)に向けて先細りとなるように形成されている。
【0033】
一方、雄ネジ部材40は所謂テーパネジであり、円錐台状の外径を有し、その外周面に雌ネジ部31Aと噛み合うテーパ状の雄ネジを有する。雄ネジ部材40には、その中心軸線に沿って大径側から小径側に向けて延びる六角穴40Aが形成されるとともに、六角穴40Aに連通して小径側端部を貫通する通し穴40Bが形成されている。雄ネジ部材40は、通し穴40Bを通して六角穴40Aに挿入した工具(六角レンチ等)を回転させることで、回転規制操作用ネジ穴31に対して締め付け可能となるとともに、回転規制操作用ネジ穴31から取り外し可能となっている。
【0034】
本実施の形態では、リングナット30の内周面における第一のネジ部30Aのうちの回転規制操作用ネジ穴31の径方向内側に位置する部分であって、回転規制操作用ネジ穴31において雄ネジ部材40が移動可能な領域(雌ネジ部31Aの形成領域)の径方向内側に位置する部分により、径方向の力を作用されることで径方向に変形する接触部101が形成される。接触部101は、回転規制操作用ネジ穴31に対する雄ネジ部材40の締め付けに応じて雄ネジ部材40から径方向内側への力を作用されることで、固定ケース23の第二のネジ部23Aに設けられた受け部102に向けて変形するようになっている。
【0035】
接触部101と受け部102とが互いに接触状態となることで、リングナット30と固定ケース23との間の摩擦力が増加し、リングナット30が固定ケース23に対して回転規制される。このような接触部101と受け部102は、周方向において一つだけ形成されてもよいし、複数形成されてもよい。図示省略するが、本実施の形態では、接触部101と受け部102との組が周方向に複数設けられる。
【0036】
図3は
図2の要部拡大図であって、接触部101と受け部102との接触状態を説明する図である。
図3に示されるように、回転規制操作用ネジ穴31において雄ネジ部材40を軸方向の一方側(
図3の右側)に向けて締め付けた場合、雄ネジ部材40が固定ケース23側に向けて力を作用させて、締め付けが進むに従い、回転規制操作用ネジ穴31が次第に拡径する。これにより、図中の矢印αに示すように接触部101が固定ケース23の第二のネジ部23Aに設けられた受け部102に向けて変形する。
【0037】
本実施の形態では、接触部101を塑性変形させて受け部102に接触するまで雄ネジ部材40が締め付けられる。接触部101が受け部102に接触した際には、接触部101上に形成される第一のネジ部30Aが受け部102上に形成される第二のネジ部23Aに軸方向で接触して、リングナット30が固定ケース23に対して回転規制されることになる。
【0038】
ここで
図3から明らかなように、受け部102は、固定ケース23の第二のネジ部23Aの一部であって、そのネジ山が他の部分のネジ山よりも低くなる逃がし部分として形成される。なお本例では、受け部102を構成するネジ部のネジ山が、他の部分のネジ溝の底部よりも高くなっている。このような周囲から落ち込んだ受け部102に接触部101を接触させることで、接触部101が受け部102に過剰に食い込むことが抑制されるようになっている。
【0039】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0040】
リングナット30を固定ケース23に取り付ける際には、まず固定ケース23に2つの軸受28が外嵌され、次いでリングナット30を固定ケース23の第二のネジ部23Aに噛み合わせて、リングナット30を軸受28に接触させる。この際、リングナット30の回転規制操作用ネジ穴31と雄ネジ部材40とが噛み合っているが、雄ネジ部材40は回転規制操作用ネジ穴31を拡径させない初期状態で保持されている。
【0041】
次いで雄ネジ部材40を軸方向の一方側(
図3の右側)に向けて締め付けることで、固定ケース23側に向けた力を雄ネジ部材40から回転規制操作用ネジ穴31に作用させて、回転規制操作用ネジ穴31が拡径される。本実施の形態では、接触部101を塑性変形させて受け部102に接触するまで雄ネジ部材40が締め付けられる。そして接触部101が受け部102に係止、つまり接触することで、接触部101上に形成される第一のネジ部30Aが受け部102上に形成される第二のネジ部23Aに軸方向で接触し、リングナット30が固定ケース23に対して回転規制される。つまり、リングナット30と固定ケース23との相対回転が規制される。これにより、リングナット30の軸方向位置が保持されることで、軸受28の軸方向移動を確実に制約できる状態となる。
【0042】
そしてリングナット30を取り外す際には、まず雄ネジ部材40を軸方向の他方側(
図3の左側)に向けて例えば上述した初期状態まで緩めることで、接触部101と受け部102との係止、つまり接触のために接触部101に作用させた径方向の力を解除する。ここで接触部101は塑性変形しているが、緩められた雄ネジ部材40との間には隙間が生じており、径方向外側へ向けて変形することが容易な状態となる。
【0043】
次いでリングナット30が緩められ、この際、リングナット30の軸方向の一方側の移動に伴って、接触部101は固定ケース23の第二のネジ部23A上を移動し、この移動に応じて径方向外側へ変形される。その後、接触部101は支障無く第二のネジ部23Aを移動する状態となり、つまり、リングナット30と固定ケース23との相対回転が許容される状態となり、リングナット30が固定ケース23から取り外される。すなわち本実施の形態では、接触部101と受け部102との接触のために接触部101に作用させた径方向の力を解除してリングナット30を取り外す際に、径方向に変形した接触部101が受け部102側の第一のネジ部30Aによって押し戻された後に受け部102側の第一のネジ部30Aを移動するようにリングナット30を取り外すことが可能となっている。
【0044】
以上のようにして本実施の形態にかかるネジ構造では、接触部101と受け部102との接触状態の解除後のリングナット30の軸方向移動時に、接触部101及び受け部102に起因してリングナット30及び固定ケース23の各ネジ部に損傷が生じることをなくすことができる。これにより、固定ケース23に対して回転規制されたリングナット30を取り外した場合であっても、固定ケース23及びリングナット30を交換することなくリングナット30を再び固定ケース23に対して回転規制状態で取り付けることができる。
【0045】
また本実施の形態では、接触部101がリングナット30の一部により形成されることで、回転規制構造のために用いる部品の点数を抑制することができる。
【0046】
また受け部102は、固定ケース23の第二のネジ部23Aの一部であって、そのネジ山が他の部分のネジ山よりも低くなる逃がし部分として形成される。これにより、接触部101によって受け部102が過剰に変形することを抑制でき、リングナット30を取り外す又は取り付ける際に、特に受け部102の変形に起因して接触部101が設けられる側の部品(本例では、リングナット30)に損傷が生じることを確実に抑制することができる。その結果、長期にわたりリングナット30及び固定ケース23を反復的に使用することが可能となる。また受け部102は第二のネジ部23Aの一部であり、その他のネジ領域ととともにねじ切りによって形成できるため、回転規制構造を容易に作製することも可能となっている。
【0047】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の構成部分のうちの第1の実施の形態と同様のものについては同一の符号を付して、説明を省略する。
図4は第2の実施の形態にかかるネジ構造を示す図であって、固定ケース23に取り付けられたリングナット30の周辺の断面を概略的に示している。
【0048】
図4に示されるように、本実施の形態におけるリングナット30では、回転規制操作用ネジ穴31が内周面の軸受28側(軸方向の他方側)の端部から軸受28側とは反対側(軸方向の一方側)に向けて延びるように内周面の一部に形成された非ネジ部であるテーパ穴部31Bと、テーパ穴部31Bから軸受28側とは反対側に向けて貫通する雌ネジ部31Aとを有している。テーパ穴部31Bは、軸受28側とは反対側に向けて先細りとなるように形成され、雌ネジ部31Aは、テーパ穴部31Bの小径側端部から軸方向に沿って延びている。
【0049】
回転規制操作用ネジ穴31と噛み合わされた雄ネジ部材40は、テーパ穴部31Bの内部に挿入されるテーパ状部分41と、テーパ状部分41から突出し、回転規制操作用ネジ穴31の雌ネジ部31Aと噛み合わされるネジ棒部分42とを有している。ネジ棒部分42は、リングナット30から突出し、突出した部分に締め付けナット43が取り付けられている。図示の例では、締め付けナット43とリングナット30との間にワッシャが配置されている。
【0050】
そして接触部101は、リングナット30の内周面における第一のネジ部30Aのうちの回転規制操作用ネジ穴31の径方向内側に位置する部分であって、回転規制操作用ネジ穴31においてテーパ状部分41が移動可能な領域(テーパ穴部31Bの形成領域)の径方向内側に位置する部分により形成されている。
【0051】
本実施の形態では、締め付けナット43を軸受28側に締め付けることで、雄ネジ部材40が軸受28から離れる側に向けて締め付けられる。この際に、雄ネジ部材40のテーパ状部分41が固定ケース23側に向けて力を作用させて、締め付けが進むに従い、回転規制操作用ネジ穴31が次第に拡径する。これにより、接触部101が固定ケース23の第二のネジ部23Aに設けられた受け部102に向けて変形する。これにより、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。本実施の形態の構成部分のうちの第1及び第2の実施の形態と同様のものについては同一の符号を付して、説明を省略する。
図5及び
図6は第3の実施の形態にかかるネジ構造を示す図であって、固定ケース23に取り付けられたリングナット30の周辺の断面を概略的に示している。
【0053】
図5に示されるように、リングナット30には回転規制操作用ネジ穴31が形成されるとともに、回転規制操作用ネジ穴31から固定ケース23に向けて径方向に貫通する連通穴34が形成されている。そして回転規制操作用ネジ穴31には、ねじ込み側に先細りとなるテーパ状部分41を先端に有する雄ネジ部材40が噛み合っている。
【0054】
雄ネジ部材40のねじ込み側は軸受28側(軸方向の他方側)となっており、リングナット30を緩める側と雄ネジ部材40を緩める側とは同一の方向となっている。雄ネジ部材40のテーパ状部分41側とは反対側の端部には、工具を挿入させる操作用穴44が形成され、操作用穴44に挿入させた工具を回転させることで雄ネジ部材40を回転規制操作用ネジ穴31に対してねじ込む又は緩めることができる。
【0055】
また雄ネジ部材40は、テーパ状部分41と、回転規制操作用ネジ穴31の雌ネジ部31Aに噛み合わされるネジ棒部分42と、テーパ状部分41とネジ棒部分42との間に位置する円柱状の非ネジ部分45とを有している。
【0056】
リングナット30の内周面には、雄ネジ部材40を緩める側に位置する第一のネジ部30Aと、雄ネジ部材40をねじ込む側に位置し、第一のネジ部30Aのネジ山よりも大径となる非ネジ部30Bとが設けられており、非ネジ部30Bに連通穴34が形成されている。
【0057】
一方で、接触部101は
図6に示すように、雄ネジ部材40のテーパ状部分41に接触される前の状態において固定ケース23の第二のネジ部23Aのネジ山の頂部と干渉しない位置まで退避可能に連通穴34に配置される移動体であって、
図5に示すように、雄ネジ部材40の締め付けに応じて固定ケース23に向けて移動する移動体により形成されている。接触部101は鋼球により形成されるが、その材質は特に限られるものではない。また
図5に示されるように、本実施の形態では、接触部101がテーパ状部分41を超えて非ネジ部30Bの外周面に至るまで雄ネジ部材40が締め付けられるようになっている。
【0058】
本実施の形態にかかるネジ構造では、雄ネジ部材40を緩めることにより、
図6に示すように、接触部101と受け部102との接触のために接触部101に作用させた径方向の力が解除される。そしてリングナット30を取り外す際に、固定ケース23側に向けて径方向に移動した接触部101が受け部102側の第二のネジ部23Aによって押し戻された後に受け部102側の第二のネジ部23Aを移動するように或いは第二のネジ部23Aに干渉しないようにリングナット30を取り外すことが可能となっている。
【0059】
これにより、接触部101と受け部102との接触状態の解除後のリングナット30の軸方向移動時に、接触部101及び受け部102に起因してリングナット30及び固定ケース23の各ネジ部に損傷が生じることをなくすことができる。特に接触部101は、雄ネジ部材40の締め付けを緩めた際に受け部102側の第二のネジ部23Aのネジ山の頂部から退避して受け部102側の第二のネジ部23Aと干渉しない状態となり得るため、本実施の形態では、リングナット30の取り外しの際に接触部101によって受け部102側の第二のネジ部23Aが損傷することを確実に抑制できる。
【0060】
また接触部101によって受け部102側の第二のネジ部23Aが変形したとしても、リングナット30を取り外す際に接触部101側の第一のネジ部30Aは受け部102を通過せず、受け部102側の変形部分によって接触部101が設けられる側の第一のネジ部30Aが損傷されることがなく、接触部101も引っ込む。そのため、リングナット30を取り外す際にリングナット30及び固定ケース23の両方において損傷が生じることを確実に抑制することができ、長期にわたりリングナット30及び固定ケース23を反復的に使用することが可能となる。
【0061】
(第4の実施の形態)
次に第4の実施の形態について説明する。本実施の形態の構成部分のうちの第1乃至第3の実施の形態と同様のものについては同一の符号を付して、説明を省略する。
図7は第4の実施の形態にかかるネジ構造を示す図であって、固定ケース23に取り付けられたリングナット30の周辺の断面を概略的に示している。
【0062】
図7に示されるように、本実施の形態における雄ネジ部材40は、テーパ状部分41と、回転規制操作用ネジ穴31の雌ネジ部31Aに噛み合わされるネジ棒部分42と、テーパ状部分41とネジ棒部分42との間に位置する円柱状の非ネジ部分45と、テーパ状部分41側とは反対側のネジ棒部分42の端部に結合されてネジ棒部分42から張り出した頭部46とを有している。頭部46には、工具を挿入させる操作用穴44が形成されている。その他の構成部分は、第3の実施の形態と同一である。この形態においても第4の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0063】
(第5の実施の形態)
次に第5の実施の形態について説明する。本実施の形態の構成部分のうちの第1乃至第4の実施の形態と同様のものについては同一の符号を付して、説明を省略する。
図8は第5の実施の形態にかかるネジ構造を示す図であって、固定ケース23に取り付けられたリングナット30の周辺の断面を概略的に示している。
【0064】
図8に示されるように、本実施の形態における雄ネジ部材40は、テーパ状部分41と、回転規制操作用ネジ穴31の雌ネジ部31Aに噛み合わされるネジ棒部分42と、テーパ状部分41側とは反対側のネジ棒部分42の端部に結合されてネジ棒部分42から張り出した頭部46とを有し、非ネジ部分45が存在しない。その他の構成部分は、第4の実施の形態と同一である。この形態においても第4の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0065】
(第6の実施の形態)
次に第6の実施の形態について説明する。本実施の形態の構成部分のうちの第1乃至第5の実施の形態と同様のものについては同一の符号を付して、説明を省略する。
図9は第6の実施の形態にかかるネジ構造を示す図であって、固定ケース23に取り付けられたリングナット30の周辺の断面を概略的に示している。
【0066】
図9に示されるように、本実施の形態では、固定ケース23の軸方向端面23E(詳しくは軸方向の一方側の端面)に回転規制操作用ネジ穴61が形成されるとともに、回転規制操作用ネジ穴61に雄ネジ部材40が噛み合っている。回転規制操作用ネジ穴61は軸方向に沿って延び、固定ケース23の軸方向端面23Eにおける外周側に形成されている。
【0067】
接触部101は、雄ネジ部材40とは別体であり、雄ネジ部材40がねじ込まれることによりリングナット30の側に向けて径方向に移動し且つ雄ネジ部材40に接触される前の状態においてリングナット30の第一のネジ部30Aのネジ山の頂部と干渉しない位置まで退避可能な移動体により形成されている。接触部101は、第3の実施の形態と同様に鋼球により形成されるが、その材質は特に限られるものではない。
【0068】
より詳しくは、固定ケース23には回転規制操作用ネジ穴61からリングナット30に向けて径方向に貫通する連通穴64が形成され、接触部101は連通穴64に配置されている。雄ネジ部材40は、第3の実施の形態と同様の構成を有し、ねじ込み側に先細りとなるテーパ状部分41と、回転規制操作用ネジ穴61の雌ネジ部に噛み合わされるネジ棒部分42とを有する。またリングナット30を緩める側と雄ネジ部材40を緩める側とが同一の方向となっている。
【0069】
また固定ケース23の外周面には、固定ケースの軸方向端面23Eから離間して雄ネジ部材40をねじ込む側に位置する第二のネジ部23Aと、軸方向端面23Eと第二のネジ部23Aとの間に位置し、第二のネジ部23Aのネジ山よりも小径となる非ネジ部23Fとが設けられている。ここで、連通穴64及び接触部101は非ネジ部23Fに設けられている。
【0070】
本実施の形態にかかるネジ構造では、雄ネジ部材40をねじ込んで接触部101を固定ケース23側からリングナット30側に向けて径方向に移動させることで、接触部101をリングナット30の第一のネジ部30Aの受け部102に接触させることができる。これにより、リングナット30が回転規制される。そして接触部101と受け部102との接触のために接触部101に作用させた径方向の力を解除してリングナット30を取り外す際に、接触部101はリングナット30の第一のネジ部30Aのネジ山の頂部と干渉しない位置まで退避し得る。これにより、接触部101と受け部102とが干渉せず且つ接触部101及び受け部102が相手側のネジ部に干渉しないようにリングナット30を移動させることが可能となっている。
【0071】
以上により、接触部101と受け部102との接触状態の解除後のリングナット30の軸方向移動時に、接触部101及び受け部102に起因してリングナット30及び固定ケース23の各ネジ部に損傷が生じることをなくすことができる。したがって、固定ケース23に対して回転規制されたリングナット30を取り外した場合であっても、固定ケース23及びリングナット30を交換することなくリングナット30を再び固定ケース23に対して回転規制状態で取り付けることができる。
【0072】
特に接触部101によって受け部102が変形したとしても、リングナット30を取り外す際に受け部102が接触部101側の第二のネジ部23Aを通過せず、受け部102側の変形部分によって接触部101が設けられる側の第二のネジ部23Aが損傷されることがなく、接触部101も引っ込ませることが可能となる。そのため、リングナット30を取り外す際にリングナット30及び固定ケース23の両方において損傷が生じることを確実に抑制することができ、長期にわたりリングナット30及び固定ケース23を反復的に使用することが可能となる。
【0073】
(第7の実施の形態)
次に第7の実施の形態について説明する。本実施の形態の構成部分のうちの第1乃至第6の実施の形態と同様のものについては同一の符号を付して、説明を省略する。
図10は第7の実施の形態にかかるネジ構造を示す図であって、固定ケース23に取り付けられたリングナット30の周辺の断面を概略的に示している。
【0074】
図10に示されるように、本実施の形態では、固定ケース23の軸方向端面23Eに回転規制操作用ネジ穴61が形成されるとともに、回転規制操作用ネジ穴61と雄ネジ部材40とが噛み合っている。回転規制操作用ネジ穴61は軸方向端面23Eから斜め外側に向けて延びている。本実施の形態では、接触部101が雄ネジ部材40の先端によって形成され、ねじ込まれることによりリングナット30の側に径方向に向けて突出するように移動する。本実施の形態においても第6の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、上述の各実施の形態においては、各種の変更が行われてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…油圧駆動装置
2…減速機付き油圧モータ
2A…油圧モータ
2B…減速機
23…固定ケース
23A…第二のネジ部
23E…軸方向端面
23F…非ネジ部
28…軸受
30…リングナット
30A…第一のネジ部
30B…非ネジ部
31,61…回転規制操作用ネジ穴
34,64…連通穴
40…雄ネジ部材
41…テーパ状部分
42…ネジ棒部分
101…接触部
102…受け部