(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 29/06 20060101AFI20221215BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20221215BHJP
F02D 29/04 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F02D29/06 H
B60H1/32 622Z
F02D29/04 B
F02D29/06 E
(21)【出願番号】P 2018196151
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】虻川 卓憲
(72)【発明者】
【氏名】竹内 良樹
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-088239(JP,A)
【文献】特開2012-041830(JP,A)
【文献】特開2012-111270(JP,A)
【文献】特開2013-194708(JP,A)
【文献】特開2014-005816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
F02D 29/02
F02D 41/00-45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの発生する動力により発電する発電機と、
前記エンジンの発生する動力により冷媒を圧縮する圧縮機と、を備えた車両に搭載される車両の制御装置であって、
前記発電機の駆動トルクおよび前記圧縮機の駆動トルクを制御する駆動トルク制御部を備え、
前記駆動トルク制御部は、
前記発電機および前記圧縮機が前記エンジンの発生する動力により作動している場合に、
前記エンジンを燃料消費効率に優れる所定の目標運転状態にするように、前記発電機または前記圧縮機の少なくとも一方の駆動トルクを調整
し、
前記発電機および前記圧縮機により生成されるエネルギを保存する保存装置が前記車両に設けられ、
前記発電機の駆動を開始すべき保存エネルギの閾値である発電機基準閾値と、前記圧縮機の駆動を開始すべき保存エネルギの閾値である圧縮機基準閾値と、が設定され、
前記発電機または前記圧縮機の駆動トルクの調整を行うと前記保存装置のエネルギが前記発電機基準閾値未満または前記圧縮機基準閾値未満に低下することが推定される場合、前記駆動トルクの調整量を少なくすることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記発電機に並列に接続された第1蓄電池と、前記発電機と並列に接続され前記第1蓄電池よりも内部抵抗が高い第2蓄電池とを含む蓄電池が前記車両に設けられ、
前記圧縮機により作られた低い温度を蓄冷する蓄冷器が前記車両に設けられ、
前記蓄電池の蓄電量が所定蓄電量以上または前記蓄冷器の蓄冷量が所定蓄冷量以上である場合に前記エンジンのアイドルストップを許可するアイドルストップ許可部を有し、
前記駆動トルク制御部は、
前記発電機または前記圧縮機の駆動トルクの調整を終了した後の所定時間内に前記蓄電池の蓄電量が所定蓄電量以上または前記蓄冷器の蓄冷量が所定蓄冷量以上に回復することが推定されることを条件に、前記駆動トルクの調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の制御装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のものは、エンジンから伝達されたトルクにより発電機が発電し、発電した電気が電気負荷とバッテリに供給されるようになっている。従来の車両の制御装置は、発電機の出力電流の大きさ、エンジン回転数、発電機回転数またはエンジントルクに応じて発電機の出力調整をしている。また、従来の車両の制御装置は、発電機の出力を調整することにより、発電機からエンジンに作用する負荷トルクを調整し、エンジンの動作点を燃料消費効率の良い動作点に調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両の制御装置にあっては、出力の調整をする機器が発電機だけであるため、発電機だけの出力調整ではエンジンを所望の動作点に調整できない場合はエンジンの燃費を向上させることができなかった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に着目してなされたものであり、エンジンの燃費を向上させることができる車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジンの発生する動力により発電する発電機と、前記エンジンの発生する動力により冷媒を圧縮する圧縮機と、を備えた車両に搭載される車両の制御装置であって、前記発電機の駆動トルクおよび前記圧縮機の駆動トルクを制御する駆動トルク制御部を備え、前記駆動トルク制御部は、前記発電機および前記圧縮機が前記エンジンの発生する動力により作動している場合に、前記エンジンを燃料消費効率に優れる所定の目標運転状態にするように、前記発電機または前記圧縮機の少なくとも一方の駆動トルクを調整し、前記発電機および前記圧縮機により生成されるエネルギを保存する保存装置が前記車両に設けられ、前記発電機の駆動を開始すべき保存エネルギの閾値である発電機基準閾値と、前記圧縮機の駆動を開始すべき保存エネルギの閾値である圧縮機基準閾値と、が設定され、前記発電機または前記圧縮機の駆動トルクの調整を行うと前記保存装置のエネルギが前記発電機基準閾値未満または前記圧縮機基準閾値未満に低下することが推定される場合、前記駆動トルクの調整量を少なくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように上記の本発明によれば、エンジンの燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置が搭載された車両のエンジンの燃料消費効率と動作点との相関を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、エンジンの発生する動力により発電する発電機と、エンジンの発生する動力により冷媒を圧縮する圧縮機と、を備えた車両に搭載される車両の制御装置であって、発電機の駆動トルクおよび圧縮機の駆動トルクを制御する駆動トルク制御部を備え、駆動トルク制御部は、発電機および圧縮機がエンジンの発生する動力により作動している場合に、エンジンを燃料消費効率に優れる所定の目標運転状態にするように、発電機または圧縮機の少なくとも一方の駆動トルクを調整することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、エンジンの燃費を向上させることができる。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の一実施例に係る車両の制御装置について図面を用いて説明する。
図1から
図3は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置を説明する図である。
【0011】
図1において、本実施例に係る車両の制御装置を搭載する車両10は、発電機としてのオルタネータ1と、鉛蓄電池からなるメインバッテリ2と、サブバッテリユニット4と、を備えている。サブバッテリユニット4は、リチウムイオン蓄電池からなるサブバッテリ3を有する。メインバッテリ2及びサブバッテリ3は、一方がオルタネータ1に対してそれぞれ並列に接続されており、他方はアースされている。
【0012】
サブバッテリ3は、メインバッテリ2に比べて出力密度、及びエネルギ密度の高い高密度蓄電池である。サブバッテリ3は、複数の単電池を直列に接続した組電池からなる。メインバッテリ2の蓄電可能容量は、サブバッテリ3の蓄電可能容量よりも大きくされている。
【0013】
また、メインバッテリ2を構成する鉛蓄電池は、サブバッテリ3を構成するリチウムイオン蓄電池よりも内部抵抗が高いという特性を有している。サブバッテリ3は本発明における第1蓄電池を構成し、メインバッテリ2は本発明における第2蓄電池を構成している。また、サブバッテリ3およびメインバッテリ2は、本発明における保存装置を構成している。
【0014】
車両10は、一般の電気負荷である一般負荷5と、一般負荷5より安定した作動が要求される電気負荷である被保護負荷9と、エンジンコントローラ20と、ボディコントローラ21とを備えている。
【0015】
一般負荷5は、ヘッドライト、パワーウィンドウモータ等、供給電圧の変動により作動状態が変化することが許容される電気負荷である。被保護負荷9は、車両10の走行時に必要なナビゲーション装置、オーディオ装置等、一定電流で安定して駆動されることが要求される電気負荷(定電流負荷)である。
【0016】
一般負荷5および被保護負荷9は、本発明における電気負荷を構成している。エンジンコントローラ20及びボディコントローラ21は、CPUや各種メモリを有するマイクロコンピュータからなる電子制御装置である。
【0017】
一般負荷5、被保護負荷9及びボディコントローラ21は、オルタネータ1に対して並列に接続されている。したがって、オルタネータ1、メインバッテリ2、サブバッテリ3及び被保護負荷9は、互いに並列に接続されている。
【0018】
車両10は、エンジン24を備えている。オルタネータ1は、エンジン24の図示しないクランク軸(出力軸)に図示しないベルトを介して連結されており、クランク軸から伝達された回転エネルギにより発電する。
【0019】
オルタネータ1は、交流の電気を発電する発電機からなる。オルタネータ1のロータがクランク軸により回転すると、ロータコイルに流れる励磁電流に応じてステータコイルに交流電流が誘起され、交流電流が整流器により直流電流に変換される。
【0020】
そして、ロータコイルに流れる励磁電流がレギュレータにより調整されることにより、発電された直流電流の電圧が設定電圧となるよう調整される。オルタネータ1のレギュレータに対する制御はエンジンコントローラ20により実施される。
【0021】
オルタネータ1の発電に伴う駆動トルクは、発電量(電圧)の増減に応じて増減する。オルタネータ1の駆動トルクは、エンジン24に対しては負荷トルクとして作用する。
【0022】
車両10は、車室の空調を行うヒートポンプ式のエアコン14を備えている。エアコン14は、冷媒を圧縮するコンプレッサ14Aと、コンプレッサ14Aの作動により発生した低温を蓄冷する蓄冷器14Bとを備えている。
【0023】
コンプレッサ14Aは、エンジン24の発生する動力により作動する。エアコン14は、エンジン24のアイドルストップによりコンプレッサ14Aが停止しているときも、蓄冷器14Bに蓄冷しておいた低温を用いて空調を継続する。蓄冷器14Bは、本発明における保存装置を構成している。
【0024】
コンプレッサ14Aは、固定容量式または可変容量式の何れであってもよい。コンプレッサ14Aが固定容量式である場合、コンプレッサ14Aの作動時の駆動トルクは一定値となる。コンプレッサ14Aが可変容量式である場合、コンプレッサ14Aの作動時の駆動トルクは変更可能である。コンプレッサ14Aの駆動トルクは、エンジン24に対しては負荷トルクとして作用する。
【0025】
サブバッテリユニット4には入力側端子6と出力側端子7とが設けられており、それら両端子を接続するようにして給電線8が設けられている。入力側端子6にはオルタネータ1とメインバッテリ2とが接続されている。
【0026】
また、出力側端子7には、サブバッテリ3からの電力供給先である各種の被保護負荷9が接続されている。
【0027】
サブバッテリユニット4は、上記のサブバッテリ3以外に、第1スイッチ11と、第2スイッチ12と、これらの各スイッチのオン/オフ(導通/遮断)の切り替えを制御するバッテリコントローラ13とを備えている。
【0028】
バッテリコントローラ13は、CPUや各種メモリを有するマイクロコンピュータからなる電子制御装置である。本実施例では、バッテリコントローラ13はエンジンコントローラ20に対して下位のコントローラであり、エンジンコントローラ20からの指令に基づいて、第1スイッチ11および第2スイッチ12の切り替え制御を実施する。
【0029】
第1スイッチ11は、MOSFET等からなる半導体スイッチであり、給電線8における入力側端子6と出力側端子7との間に設けられている。第1スイッチ11は、オルタネータ1及びメインバッテリ2と、サブバッテリ3との間で、導通状態又は遮断状態に切り替えられる。第1スイッチ11は、オルタネータ1及びメインバッテリ2に対するサブバッテリ3の導通(オン)と遮断(オフ)とを切り替えるスイッチとして機能する。
【0030】
また、第2スイッチ12は、第1スイッチ11と同様に、MOSFET等からなる半導体スイッチにより構成されており、給電線8における第1スイッチ11と出力側端子7の間とサブバッテリ3との間に設けられている。
【0031】
第2スイッチ12は、オルタネータ1及びメインバッテリ2と、サブバッテリ3との間で、導通状態又は遮断状態に切り替えられる。第2スイッチ12は、入力側端子6と出力側端子7とを接続する電力経路に対するサブバッテリ3の導通(オン)と遮断(オフ)とを切り替えるスイッチとして機能する。
【0032】
第1スイッチ11及び第2スイッチ12のオン状態・オフ状態は、バッテリコントローラ13にて常時監視され、その監視結果はバッテリコントローラ13からエンジンコントローラ20等に対して所定時間周期で送信される。
【0033】
オルタネータ1での発電により生じた電力は、一般負荷5、被保護負荷9、メインバッテリ2及びサブバッテリ3に供給される。エンジン24の駆動が停止してオルタネータ1で発電が実施されていない場合には、メインバッテリ2及びサブバッテリ3から車載電気負荷に電力が供給される。
【0034】
メインバッテリ2及びサブバッテリ3から車載電気負荷への放電量、及びオルタネータ1からメインバッテリ2及びサブバッテリ3への充電量は、メインバッテリ2及びサブバッテリ3のSOC(State of charge:充電状態)が過充放電とならない範囲(適正範囲)となるよう制御される。なお、SOCとは、満充電時の充電量に対する実際の充電量の割合をいう。
【0035】
本実施例では、メインバッテリ2の端子電圧がサブバッテリ3の端子電圧よりも高くなるように設定されている。具体的には、メインバッテリ2の内部抵抗をサブバッテリ3の内部抵抗より高くすることにより、メインバッテリ2の端子電圧をサブバッテリ3の端子電圧よりも高くしている。
【0036】
そのため、第1スイッチ11及び第2スイッチ12がともにオンにされてメインバッテリ2及びサブバッテリ3が互いに接続された状態では、オルタネータ1からサブバッテリ3への充電に加え、メインバッテリ2からサブバッテリ3への充電も実施される。
【0037】
エンジンコントローラ20は、車両走行中において所定の自動停止条件を満たした場合にエンジン24を自動停止させ、エンジン24の自動停止中に所定の再始動条件を満たした場合にエンジン24を自動で再始動させる、アイドルストップ機能を有する。
【0038】
自動停止条件としては、例えば車速が所定以下であること、アクセル操作量がゼロであること(又はブレーキオンであること)、SOCが閾値以上であること等が含まれる。また、エンジン再始動条件としては、例えばアクセル操作が行われたこと、ブレーキ操作が解除されたこと等が含まれる。
【0039】
前述のエンジンコントローラ20、ボディコントローラ21及びバッテリコントローラ13は制御部25を構成している。制御部25は、本発明における駆動トルク制御部、アイドルストップ許可部、発電機回復エネルギ算出部および圧縮機回復エネルギ算出部を構成している。制御部25は、オルタネータ1の駆動トルクおよびコンプレッサ14Aの駆動トルクを制御する。
【0040】
ここで、エンジン24の運転状態は、
図2に示すように、エンジントルクとエンジン回転速度とからなる領域で表わすことができる。また、エンジン24の運転状態には、燃料消費効率の最適な領域が存在する。例えば、エンジン24の現在の動作点がA1である場合、エンジン24への負荷トルクを減少させ、燃料消費効率の最適な領域内のA2に動作点を調整することにより、燃料消費効率を向上させることができる。そのためには、A1からA2への動作点の調整量に対応する分だけ、エンジントルクを調整(低減)する必要がある。
【0041】
エンジン24の負荷トルクを低減するためには、エンジン24の発生する動力により作動する機器(補機類)の駆動トルクを低減する必要がある。本実施例では、制御部25は、エンジン24の発生する動力により作動する機器であるオルタネータ1およびエアコン14のうち少なくとも一方の駆動トルクを低減する。なお、エンジン24を燃費の良い動作点で運転するために駆動トルクを増加させる必要がある場合、駆動トルクを増加させてもよい。
【0042】
制御部25は、エンジン24の動作点を燃料消費効率の最適な領域内の動作点に移動させるために必要なエンジントルクの調整量を満たすように、オルタネータ1とエアコン14とで駆動トルクのトルク調停を行う。例えば、オルタネータ1とエアコン14の両方を停止させるとエンジン24の動作点が最適な動作点よりも下方に移動してしまうような場合、制御部25は、オルタネータ1またはエアコン14の一方に対して停止または駆動トルクを低減させる。
【0043】
ここで、オルタネータ1の駆動トルクを無条件に調整した場合、メインバッテリ2とサブバッテリ3のSOCを適正範囲未満に低下させてしまったり、一般負荷5と被保護負荷9に十分な電力を給電できなくなったりするおそれがある。SOCが適正範囲未満に低下すると、エンジン24のアイドルストップの自動停止条件を満たさず、燃費を向上させることができない。また、エアコン14の駆動トルクを無条件に調整した場合、車室の快適性を損なってしまうおそれがある。
【0044】
そこで、制御部25は、トルク調停を行う際、電気系への悪影響を及ぼさないように定められた所定の実行条件を満たした場合にオルタネータ1の駆動トルクの調整を実行する。また、制御部25は、トルク調停を行う際に、車室の快適性に悪影響を及ぼさないように定められた所定の実行条件を満たした場合にコンプレッサ14Aの駆動トルクの調整を実行する。本明細書では、オルタネータ1の駆動トルクの調整を許可する所定の実行条件を「オルタ停止実行条件」という。また、コンプレッサ14Aの駆動トルクの調整を許可する所定の実行条件を「コンプ停止実行条件」という。
【0045】
このように、制御部25は、オルタネータ1およびコンプレッサ14Aがエンジン24の発生する動力により作動している場合に、エンジン24を燃料消費効率に優れる所定の目標運転状態にするように、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの少なくとも一方の駆動トルクを調整する。
【0046】
また、オルタネータ1およびコンプレッサ14Aの駆動トルクの調整の実行条件がそれぞれ定められており、制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aのうち実行条件を満たした機器の駆動トルクを調整する。
【0047】
また、制御部25は、オルタネータ1を停止させた場合に、保存エネルギ(SOC)が元の状態に戻るまでに必要なエネルギ量である発電機回復エネルギと、コンプレッサ14Aを停止させた場合に、保存エネルギ(蓄冷量)が元の状態に戻るまでに必要なエネルギである圧縮機回復エネルギとを算出する。そして、制御部25は、発電機回復エネルギと圧縮機回復エネルギとを比較し、その回復エネルギの小さい方の機器に対し、優先して駆動トルクの低減を行うことが好ましい。
【0048】
また、オルタネータ1の駆動を開始すべき保存エネルギ(SOC)の閾値である発電機基準閾値と、コンプレッサ14Aの駆動を開始すべき保存エネルギ(蓄冷量)の閾値である圧縮機基準閾値と、が予め設定されている。
【0049】
制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aのうち、保存装置に保存されているエネルギから発電機基準閾値を減じた差分、または保存装置内に保存されているエネルギから圧縮機基準閾値を減じた差分が大きい方の機器に対して、優先して駆動トルクの低減を行うことが好ましい。
【0050】
言い換えれば、発電機基準閾値とは、例えばSOCの適正範囲の下限の値である。また、圧縮機基準閾値とは、例えば車室の空調状態を適正範囲に保つことができる蓄冷器14Bの蓄冷量の下限の値である。
【0051】
ここで、差分が大きいとは、保存装置におけるエネルギ保存量(蓄電量、蓄冷量)が十分に大きく、保存エネルギに余裕がある状態をいう。したがって、発電機基準閾値または圧縮機基準閾値との差分が大きい状態では、電気負荷の作動状態や空調状態を悪化させることなく、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの駆動トルクを低減させることができる。
【0052】
制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの駆動トルクの調整を行うと保存装置のエネルギが発電機基準閾値未満または圧縮機基準閾値未満に低下することが推定される場合、駆動トルクの調整量を少なくすることが好ましい。
【0053】
制御部25は、オルタネータ1の発電量の調整によって、電気負荷の正常な作動に要求される要求電圧よりオルタネータ1の発電する発電電圧が小さくなる場合、オルタネータ1の駆動トルクの調整を制限することが好ましい。なお、オルタネータ1の駆動トルクの調整の制限とは、駆動トルクの調整の禁止および駆動トルクの徐変を含む。
【0054】
また、制御部25は、サブバッテリ3およびメインバッテリ2を充電しており、オルタネータ1の発電電圧が電気負荷の要求電圧よりも小さい場合、オルタネータ1とサブバッテリ3との間の通電を遮断することが好ましい。
【0055】
また、制御部25は、メインバッテリ2およびサブバッテリ3の蓄電量が所定蓄電量以上または蓄冷器14Bの蓄冷量が所定蓄冷量以上である場合にエンジン24のアイドルストップを許可する。言い換えれば、アイドルストップの実行条件には、メインバッテリ2およびサブバッテリ3の蓄電量が所定蓄電量以上であること、および蓄冷器14Bの蓄冷量が所定蓄冷量以上であること、が含まれている。
【0056】
そして、制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの駆動トルクの調整を終了した後に蓄電量が所定蓄電量以上または蓄冷器14Bの蓄冷量が所定蓄冷量以上に回復することが推定されることを条件に、駆動トルクの調整を行うことが好ましい。つまり、制御部25は、予め見込まれている駆動トルクの調整の実行時間(時間の長さ)から、駆動トルクの調整の終了時の蓄電量または蓄冷量を算出し、その後の所定時間内に蓄電量が所定蓄電量以上または蓄冷量が所定蓄冷量以上に回復することが推定される場合は駆動トルクの調整を行い、そうでない場合は駆動トルクの調整を行わない。
【0057】
本実施例では、アイドルストップを許可する条件は、サブバッテリ3およびメインバッテリ2の両方が規定の蓄電量以上であることとしている。なお、アイドルストップを許可する条件は、サブバッテリ3およびメインバッテリ2の両方が規定のバッテリ電圧を上回っていること、としてもよい。
【0058】
上記の目標運転状態は、エンジン24のエンジントルクとエンジン回転速度とから定まる燃料消費効率に優れる動作点であることが好ましい。
【0059】
また、本実施例では、制御部25は、車速が所定車速以上になることが予測される場合に、コンプレッサ14Aが停止される停止領域が拡大されるようにコンプレッサ基準閾値を変更する。
【0060】
次に、オルタネータ1およびコンプレッサ14Aの駆動トルクのトルク調停の手法の一例について以下説明する。以下、エンジン24の動作点が最適な動作点より高い位置にある場合に、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの停止または駆動トルクの調整(低減)をして、エンジン24の動作点を最適な動作点に到達させる場合について説明する。また、コンプレッサ14Aが可変容量式である場合と固定容量式である場合とに分けて説明する。
【0061】
コンプレッサ14Aが可変容量式である場合のトルク調停の手法について説明する。コンプレッサ14Aが可変容量式である場合、コンプレッサ14Aの駆動トルクは所定の調整可能範囲内で連続的に調整可能である。
【0062】
まず、オルタ停止実行条件およびコンプ停止実行条件を満たしていない場合、制御部25は、オルタネータ1の停止または駆動トルク調整ができず、コンプレッサ14Aの停止もできないため、これらの機器の駆動状態を維持する。この場合、エンジン24を最適な動作点に到達させることはできない。
【0063】
次に、オルタ停止実行条件を満たさず、コンプ停止実行条件を満たす場合について説明する。制御部25は、コンプレッサ14Aの出力調整をすればエンジン24の動作点を最適な動作点に到達可能な場合、コンプレッサ14Aの駆動トルクを調整する。
【0064】
また、制御部25は、コンプレッサ14Aを停止すればエンジン24の動作点を最適な動作点に到達可能な場合、コンプレッサ14Aを停止する。また、制御部25は、コンプレッサ14Aを停止すればエンジン24の動作点を最適な動作点に近づけることができる場合、コンプレッサ14Aを停止する。
【0065】
次に、オルタ停止実行条件を満たし、コンプ停止実行条件を満たさない場合について説明する。制御部25は、オルタネータ1の出力調整をすればエンジン24の動作点を最適な動作点に到達可能な場合、オルタネータ1の駆動トルクを調整する。
【0066】
また、制御部25は、オルタネータ1を停止すればエンジン24の動作点を最適な動作点に到達可能な場合、オルタネータ1を停止する。また、制御部25は、オルタネータ1を停止すればエンジン24の動作点を最適な動作点に近づけることが可能な場合、オルタネータ1を停止する。
【0067】
次に、オルタ停止実行条件を満たし、かつ、コンプ停止実行条件を満たす場合について説明する。制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの一方を停止してもエンジン24を最適な動作点に到達させることができないが、両方を停止すればエンジン24を最適な動作点に到達可能な場合、両方を停止する。
【0068】
また、制御部25は、コンプレッサ14Aを停止してもエンジン24を最適な動作点に到達させることができないがオルタネータ1の駆動トルクを調整すればエンジン24を最適な動作点に到達させることが可能な場合、オルタネータ1の駆動トルクを調整する。
【0069】
また、制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの一方を停止すればエンジン24を最適な動作点に到達可能な状況において、オルタネータ1を停止した方がオルタネータ1の再駆動後の回復エネルギが小さい場合、オルタネータ1を停止させる。この回復エネルギとは、オルタネータ1の駆動によって得られる発電エネルギを指す。
【0070】
また、制御部25は、オルタネータ1を停止してもエンジン24を最適な動作点に到達させることができないがコンプレッサ14Aを停止すればエンジン24を最適な動作点に到達させることが可能な場合、コンプレッサ14Aを停止する。
【0071】
また、制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの一方を停止すればエンジン24を最適な動作点に到達可能な状況において、コンプレッサ14Aを停止した方がコンプレッサ14Aの再駆動後の回復エネルギが小さい場合、コンプレッサ14Aを停止させる。この回復エネルギとは、コンプレッサ14Aの駆動によって得られる蓄冷エネルギを指す。
【0072】
コンプレッサ14Aの回復エネルギとは、コンプレッサ14Aの再駆動後に目標制御状態(車室温度等)に到達するために必要なエネルギをいう。つまり、現在の車室温度が目標車室温度に近いような場合、コンプレッサ14Aを停止させる余裕があるため、オルタネータ1は停止させず、コンプレッサ14Aを停止させる。
【0073】
コンプレッサ14Aが固定容量式である場合のトルク調停の手法について説明する。コンプレッサ14Aが固定容量式である場合、コンプレッサ14Aの駆動トルクは、駆動時の駆動トルクと、停止時の駆動トルクとの何れかに調整可能である。
【0074】
まず、オルタ停止実行条件およびコンプ停止実行条件を満たしていない場合、制御部25は、駆動トルク調整を行わない。この場合、エンジン24を最適な動作点に到達させることはできない。
【0075】
次に、オルタ停止実行条件を満たさず、コンプ停止実行条件を満たす場合について説明する。制御部25は、コンプレッサ14Aを停止するとエンジン24の動作点が最適な動作点より低い動作点に移動してしまう場合、駆動状態を維持する。
【0076】
また、制御部25は、コンプレッサ14Aを停止すればエンジン24の動作点を最適な動作点に到達可能な場合、コンプレッサ14Aを停止する。また、制御部25は、コンプレッサ14Aを停止すればエンジン24の動作点を最適な動作点に近づけることが可能な場合、コンプレッサ14Aを停止する。
【0077】
次に、オルタ停止実行条件を満たし、コンプ停止実行条件を満たさない場合について説明する。制御部25は、オルタネータ1の出力を調整すればエンジン24の動作点を最適な動作点に到達可能な場合、オルタネータ1の駆動トルクを調整する。
【0078】
また、制御部25は、オルタネータ1を停止すればエンジン24の動作点を最適な動作点に到達可能な場合、オルタネータ1を停止する。また、制御部25は、オルタネータ1を停止すればエンジン24の動作点を最適な動作点に近づけることが可能な場合、オルタネータ1を停止する。
【0079】
次に、オルタ停止実行条件を満たし、かつ、コンプ停止実行条件を満たす場合について説明する。制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの一方を停止してもエンジン24を最適な動作点に到達させることができないが、両方を停止すればエンジン24を最適な動作点に到達可能な場合、両方を停止する。
【0080】
また、制御部25は、コンプレッサ14Aを停止してもエンジン24を最適な動作点に到達させることができないがオルタネータ1の駆動トルクを調整すればエンジン24を最適な動作点に到達させることが可能な場合、オルタネータ1の駆動トルクを調整する。
【0081】
また、制御部25は、コンプレッサ14Aを停止するよりもオルタネータ1を停止した方がエンジン24を最適な動作点に近づけることができる場合、オルタネータ1を停止する。
【0082】
また、制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの一方を停止すればエンジン24を最適な動作点に到達可能な状況において、オルタネータ1の再駆動後の回復エネルギが小さい場合、オルタネータ1を停止させる。
【0083】
また、制御部25は、オルタネータ1を停止してもエンジン24を最適な動作点に到達させることができないがコンプレッサ14Aを停止すればエンジン24を最適な動作点に到達させることが可能な場合、コンプレッサ14Aを停止する。
【0084】
また、制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの一方を停止すればエンジン24を最適な動作点に到達可能な状況において、コンプレッサ14Aを停止した方が停止からの再駆動後の回復エネルギが小さい場合、コンプレッサ14Aを停止させる。
【0085】
コンプレッサ14Aの回復エネルギとは、コンプレッサ14Aの再駆動後に目標制御状態(車室温度等)に到達するために必要なエネルギをいう。つまり、現在の車室温度が目標車室温度に近いような場合、コンプレッサ14Aを停止させる余裕があるため、オルタネータ1は停止させず、コンプレッサ14Aを停止させる。
【0086】
次に、図3を参照し、制御部25が行う駆動トルク調整動作について説明する。この駆動トルク調整動作は、オルタネータ1およびコンプレッサ14Aの作動中に、エンジン24の動作点が燃費のよい所定の領域に入るように、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの少なくとも一方の駆動トルクを調整する動作である。
【0087】
図3に示すように、まず、制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの駆動トルク調整は可能であるか否かを繰り返し判定する(ステップS1)。ここでは、蓄電池のSOCがオルタ停止許可閾値を超えていること、または車室の快適性が成立することを満たす場合、制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの停止が可能と判断する。
【0088】
ステップS1でオルタネータ1またはコンプレッサ14Aの停止が可能と判断した場合、制御部25は、オルタネータ1とコンプレッサ14Aの両方の駆動トルクを調整する必要があるか否かを判定する(ステップS2)。ここでは、制御部25は、オルタネータ1とコンプレッサ14Aの両方の駆動トルクを調整する必要があるか、または一方の駆動トルクを調整する必要があるかを判定する。
【0089】
ステップS2でオルタネータ1とコンプレッサ14Aの両方の駆動トルクを調整する必要があると判断した場合、制御部25は、オルタネータ1とコンプレッサ14Aの両方の駆動トルクを調整し(ステップS3)、今回の動作を終了する。
【0090】
ステップS3において、制御部25は、蓄電池のSOC、車内空調の必要度合い等に基づいて、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aのうち優先度の高い方の機器の駆動を維持し、優先度の低い方の機器の駆動トルクを調整する。
【0091】
また、このステップ3では、制御部25は、オルタネータ1およびコンプレッサ14Aの駆動トルクをそれぞれどのように制御したらエンジン24が最適熱効率で運転できるかを判断し、その結果に基づいてオルタネータ1およびコンプレッサ14Aを制御する。
【0092】
ステップS2でオルタネータ1とコンプレッサ14Aの一方の駆動トルクを調整する必要があると判断した場合、制御部25は、オルタネータ1の駆動トルクを調整することが好ましいか否かを判定する(ステップS4)。
【0093】
ステップS4でオルタネータ1の駆動トルクを調整することが好ましいと判断した場合、制御部25は、オルタネータ1の駆動トルクを調整し(ステップS5)、今回の動作を終了する。
【0094】
ステップS4でオルタネータ1の駆動トルクを調整することが好ましくないと判断した場合、制御部25は、コンプレッサ14Aの駆動トルクを調整し(ステップS6)、今回の動作を終了する。
【0095】
以上のように、本実施例では、制御部25は、オルタネータ1およびコンプレッサ14Aがエンジン24の発生する動力により作動している場合に、エンジン24を燃料消費効率に優れる所定の目標運転状態にするように、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの少なくとも一方の駆動トルクを調整する。
【0096】
これにより、エンジン24を燃料消費効率に優れる目標運転状態にするように、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの少なくとも一方の駆動トルクが調整される。このため、駆動トルクの調整によりエンジン24の負荷を調整でき、エンジン24を燃料消費効率に優れる目標運転状態で運転させることができる。この結果、エンジン24の燃費を向上させることができる。
【0097】
また、本実施例では、オルタネータ1およびコンプレッサ14Aの駆動トルクの調整の実行条件がそれぞれ定められており、制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aのうち実行条件を満たした機器の駆動トルクを調整する。
【0098】
これにより、実行条件を満たさない機器の駆動トルクを調整して電気負荷の作動状態や車室の空調に悪影響を及ぼすことを回避できる。
【0099】
また、本実施例では、オルタネータ1およびコンプレッサ14Aにより生成されるエネルギを保存する保存装置として、メインバッテリ2、サブバッテリ3および蓄冷器14Bが車両10に設けられている。制御部25は、保存エネルギ(SOC)が、元の状態に戻るまでに必要なエネルギ量である発電機回復エネルギと、保存エネルギ(蓄冷量)が元の状態に戻るまでに必要なエネルギである圧縮機回復エネルギとを算出する。制御部25は、発電機回復エネルギと圧縮機回復エネルギとを比較し、その回復エネルギの小さい方の機器に対し、優先して駆動トルクの低減を行う。
【0100】
これにより、保存エネルギ(SOC)または保存エネルギ(蓄冷量)が、元の状態に戻るまでの必要な回復エネルギの小さい方の機器を優先して、駆動トルクの低減を行うことができる。なお、元の状態とは、例えばオルタネータ1やコンプレッサ14Aが停止するときの状態を指す。
【0101】
また、本実施例では、オルタネータ1の駆動を開始すべき保存エネルギの閾値である発電機基準閾値と、コンプレッサ14Aの駆動を開始すべき保存エネルギの閾値である圧縮機基準閾値と、が設定されている。
【0102】
そして、制御部25は、保存装置に保存されているエネルギから発電機基準閾値を減じた差分、または保存装置内に保存されているエネルギから圧縮機基準閾値を減じた差分が大きい方の機器に対して、優先して駆動トルクの低減を行う。
【0103】
これにより、保存エネルギと発電機基準閾値との差分、保存エネルギとコンプレッサ基準閾値との差分を検出し、その差分が大きく余裕のある側の機器を優先して、駆動トルクの低減を行うことができる。
【0104】
また、本実施例では、制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの駆動トルクの調整を行うと保存装置のエネルギが発電機基準閾値未満または圧縮機基準閾値未満に低下することが推定される場合、駆動トルクの調整量を少なくする。
【0105】
これにより、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの発電量の調整を行った場合に発電機基準閾値以上またはコンプレッサ基準閾値以上を維持できるか否かの推定に基づいて、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの駆動トルクの調整の可否を判断できるので、より的確にオルタネータ1またはコンプレッサ14Aの駆動トルクを調整できる。
【0106】
また、本実施例では、制御部25は、オルタネータ1の発電量の調整によって、電気負荷の正常な作動に要求される要求電圧よりオルタネータ1の発電する発電電圧が小さくなる場合、オルタネータ1の駆動トルクの調整を制限する。
【0107】
これにより、電気負荷の要求電圧よりもオルタネータ1の要求電圧が小さくなる場合、オルタネータ1の駆動トルクの調整を制限するので、オルタネータ1の駆動トルクを調整している間も、可能な限り電気負荷の正常な作動を維持することができる。
【0108】
また、本実施例では、オルタネータ1に並列に接続されたサブバッテリ3と、オルタネータ1と並列に接続されサブバッテリ3よりも内部抵抗が高いメインバッテリ2とを含む蓄電池を車両10が備えている。
【0109】
そして、制御部25は、サブバッテリ3およびメインバッテリ2を充電しており、オルタネータ1の発電電圧が電気負荷の要求電圧よりも小さい場合、オルタネータ1とサブバッテリ3との間の通電を遮断する。
【0110】
これにより、オルタネータ1の発電電圧が電気負荷の要求電圧よりも小さい場合、オルタネータ1と内部抵抗がメインバッテリ2よりも低いサブバッテリ3との間の通電を遮断することで、メインバッテリ2への供給電圧が低下することを抑制しつつエンジン24の負荷を低減できるので、メインバッテリ2から給電される電気負荷の作動状態が変化することを抑制でき、エンジン24の負荷を低減できる。
【0111】
また、本実施例では、コンプレッサ14Aにより作られた低い温度を蓄冷する蓄冷器14Bと、メインバッテリ2およびサブバッテリ3の蓄電量が所定蓄電量以上または蓄冷器14Bの蓄冷量が所定蓄冷量以上である場合にエンジン24のアイドルストップを許可する制御部25と、を車両10が有している。
【0112】
そして、制御部25は、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの駆動トルクの調整を終了した後に蓄電量が所定蓄電量以上または蓄冷器14Bの蓄冷量が所定蓄冷量以上に回復することが推定されることを条件に、駆動トルクの調整を行う。
【0113】
これにより、アイドルストップの実施頻度を低下させることなく、駆動トルクの調整を行うことができるので、より燃費の向上を図ることができる。
【0114】
上記の目標運転状態は、エンジン24のエンジントルクとエンジン回転速度とから定まる燃料消費効率に優れる動作点であることが好ましい。
【0115】
これにより、燃料消費効率に優れる目標運転状態の動作点でエンジン24が運転するように、オルタネータ1またはコンプレッサ14Aの駆動トルクを制御でき、燃費を向上させることができる。
【0116】
また、本実施例では、制御部25は、車速が所定車速以上になることが予測される場合に、コンプレッサ14Aが停止される停止領域が拡大されるようにコンプレッサ基準閾値を変更する。
【0117】
これにより、車両が所定車速以上の高速で走行することが予測される場合、コンプレッサ14Aの停止領域が拡大され、コンプレッサ14Aが停止されやすくなるので、エンジン負荷の低減量を拡大でき、燃費の改善を図ることができる。
【0118】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0119】
1 オルタネータ(発電機)
2 メインバッテリ(第2蓄電池、保存装置)
3 サブバッテリ(第1蓄電池、保存装置)
5 一般負荷(電気負荷)
9 被保護負荷(電気負荷)
10 車両
14A コンプレッサ(圧縮機)
14B 蓄冷器(保存装置)
24 エンジン
25 制御部(駆動トルク制御部、アイドルストップ許可部、発電機回復エネルギ算出部、圧縮機回復エネルギ算出部)