(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】シーリング材用硬化性組成物、シーリング方法及び建築物外壁
(51)【国際特許分類】
C08L 71/02 20060101AFI20221215BHJP
C08K 5/57 20060101ALI20221215BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20221215BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08L71/02
C08K5/57
C08L33/04
C09K3/10 Z
(21)【出願番号】P 2018201670
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 理子
(72)【発明者】
【氏名】坂部 正臣
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/192842(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/192914(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/047249(WO,A1)
【文献】特開2016-216633(JP,A)
【文献】特開2014-114434(JP,A)
【文献】特開2018-076513(JP,A)
【文献】特開2017-137745(JP,A)
【文献】特開2004-107608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/02
C08K 5/57
C08L 33/04
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)加水分解性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、
(B)加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体、及び
(C)数平均分子量が2000~15000で、かつ、末端基のうち水酸基の割合が10%以下であるポリオキシアルキレン系高分子可塑剤、
を含有し、
前記(メタ)アクリル系重合体(B)が有する加水分解性ケイ素基が、下記式(2)で表す官能基であ
り、
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)と前記(メタ)アクリル系重合体(B)の合計重量に対する前記ポリオキシアルキレン系重合体(A)の重量割合が、5~90重量%である、多孔質基材に対するシーリング材用硬化性組成物。
-SiR
2
3-bY
b (2)
(式中、R
2は、それぞれ独立に炭素原子数1から20の置換あるいは非置換のアルキル基、炭素原子数6から20のアリール基、炭素原子数7から20のアラルキル基、または、-OSiR’
3(R’は、それぞれ独立に炭素原子数1から20の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基である。また、Yは、それぞれ独立にヒドロキシ基または加水分解性基である。更に、bは1或いは2の整数である。)
【請求項2】
前記ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤(C)が、末端基として、アルキル基、アリル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも1種の炭化水素基を有し、末端基のうち前記炭化水素基の割合が80%以上である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
有機錫触媒をさらに含有する、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記多孔質基材が、モルタル、石材、又は、サイディングボードである、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性組成物を、多孔質基材の継ぎ目又は隙間に充填した後、硬化させることを特徴とする、シーリング方法。
【請求項6】
多孔質基材と、
該多孔質基材の継ぎ目又は隙間に充填された、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物を有する、建築物外壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材用硬化性組成物、シーリング方法、及び、建築物外壁に関する。
【背景技術】
【0002】
加水分解性シリル基を有する重合体は、湿分反応性ポリマーとして知られており、接着剤、シーリング剤、コーティング剤、塗料、粘着剤等の多くの工業製品に含まれており、幅広い分野で利用されている。
【0003】
このような重合体の主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン系重合体、飽和炭化水素系重合体、(メタ)アクリル系重合体などが知られているが、特に、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、室温において比較的低粘度で取り扱い易く、また、反応後に得られる硬化物も良好な弾性を示すなどの特徴から、その適用範囲は広い。
【0004】
当該加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体の耐候性を改善して経時的なクラックの発生や色の変化を抑制するために、当該加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体をブレンドした組成物を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-172631号公報
【文献】特開2003-221501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体をブレンドしてなる組成物は、耐候性が大幅に向上するため、30年程度屋外で暴露されても良好な物性を維持することが期待され、建築用の高耐候性シーリング材として使用されている。しかしながら、当該組成物を、サイディングボードのような多孔質基材に対するシーリング材として使用した場合、耐候性は高くても、施工後1年半程度経過すると、施工直後と比較してシーリング材が硬くなり、伸びが低下するといった、引張物性が変化する場合があることが判明した。
【0007】
このような施工後の引張物性の変化は、一般的な金属製の基板に対するシーリング材として使用した時には見られず、多孔質基材に対するシーリング材として使用した時に特有の現象である。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、加水分解性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体および加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体を含んでおり、多孔質基材に対するシーリング材として使用した時の施工後の引張物性の変化が抑制された硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、加水分解性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体および加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体を含む硬化性組成物において、可塑剤として、一般的に使用されている末端基が水酸基であるポリオキシアルキレン系高分子可塑剤ではなく、末端基の水酸基の割合を特定値以下に低減したポリオキシアルキレン系高分子可塑剤を使用すると、多孔質基材に対するシーリング材として使用した時の施工後の物性の変化を抑制できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(A)加水分解性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、(B)加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体、及び(C)数平均分子量が2000~15000で、かつ、末端基のうち水酸基の割合が10%以下であるポリオキシアルキレン系高分子可塑剤、を含有する、多孔質基材に対するシーリング材用硬化性組成物に関する。好ましくは、前記ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤(C)が、末端基として、アルキル基、アリル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも1種の炭化水素基を有し、末端基のうち前記炭化水素基の割合が80%以上である。前記硬化性組成物は、有機錫触媒をさらに含有することが好ましい。好ましくは、前記多孔質基材が、モルタル、石材、又は、サイディングボードである。
【0011】
また本発明は、前記硬化性組成物を、多孔質基材の継ぎ目又は隙間に充填した後、硬化させることを特徴とする、シーリング方法にも関する。さらに本発明は、多孔質基材と、該多孔質基材の継ぎ目又は隙間に充填された、前記硬化性組成物の硬化物を有する、建築物外壁にも関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加水分解性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体および加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体を含んでおり、多孔質基材に対するシーリング材として使用した時の施工後の物性の変化が抑制された硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明の硬化性組成物は、多孔質基材に対するシーリング材を構成するものとして使用されるものである。ここで、多孔質基材とは、金属製の平板を除き、基材表面に微細な小孔が多数形成されているものをいい、例えば、モルタル、御影石や大理石に代表される石材、又は、サイディングボード等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
また、シーリング材とは、建築物等の構造物の防水性または気密性を保持するために、外壁等の構造材の継ぎ目や隙間に充填する材料のことをいう。本発明において、シーリング材は、硬化前の流動性を有する状態で、多孔質基材の継ぎ目又は隙間に充填、施工された後、必要に応じて加熱して、硬化させることができるものをいう。
【0016】
本発明の硬化性組成物は、少なくとも、
(A)加水分解性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、
(B)加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体、及び
(C)数平均分子量が2000~15000で、かつ、末端基のうち水酸基の割合が10%以下であるポリオキシアルキレン系高分子可塑剤、を含有するものである。
【0017】
<加水分解性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)>
加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)(「ポリオキシアルキレン系重合体(A)」ともいう)が有する加水分解性ケイ素基は、加水分解反応および縮合反応をすることでシロキサン結合を形成することによって架橋し得る官能基を指し、下記一般式(1)で表すことができる。
-SiR1
3-aXa (1)
(式中、R1は、それぞれ独立に炭素原子数1から20の置換あるいは非置換のアルキル基、炭素原子数6から20のアリール基、炭素原子数7から20のアラルキル基、または、-OSiR’3(R’は、それぞれ独立に炭素原子数1から20の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基である。また、Xは、それぞれ独立にヒドロキシ基または加水分解性基である。更に、aは1から3の整数である)
【0018】
加水分解性基としては、特に限定されず、具体的には、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基等が挙げられる。これらの中では、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基が活性が高いため好ましく、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことからメトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。またエトキシ基やイソプロペノキシ基は、加水分解または縮合反応により脱離する化合物がそれぞれエタノール、アセトンであり、安全性の点で好ましい。
【0019】
加水分解性基やヒドロキシ基は、1個のケイ素原子に1から3個の範囲で結合することができる。加水分解性基やヒドロキシ基が加水分解性ケイ素基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。
【0020】
上記一般式(1)におけるaは、硬化性の点から、2または3であることが好ましく、特に速硬化性を求める場合には3であることが好ましく、貯蔵中の安定性を求める場合には2であることが好ましい。
【0021】
また上記一般式(1)におけるR1の具体例としては、例えばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、トリメチルシロキシ基、クロロメチル基、メトキシメチル基等が挙げられる。これらの中ではメチル基が特に好ましい。
【0022】
加水分解性ケイ素基のより具体的な例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(エトキシメチル)ジメトキシシリル基が挙げられる。汎用で活性が高く良好な硬化性が得られることから、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基がより好ましく、ジメトキシメチルシリル基が特に好ましい。また、貯蔵安定性の点からはジメトキシメチルシリル基、トリエトキシシリル基が特に好ましい。クロロメチルジメトキシシリル基、メトキシメチルジメトキシシリル基は特に高い硬化性を示すため好ましい。トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などの3官能性ケイ素基を有する有機重合体から得られる硬化物は復元性が高くなる傾向があり、好ましい。
【0023】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)に含有される加水分解性ケイ素基は、重合体1分子中に平均して少なくとも0.5個、好ましくは1~5個、より好ましくは1.3~4個、更に好ましくは1.5~3個存在するのがよい。重合体1分子中に含まれる加水分解性ケイ素基の数が平均して0.5個未満になると、硬化性が不十分になり、良好なゴム弾性挙動を発現しにくくなる。重合体1分子中に含まれる加水分解性ケイ素基の数が平均して5個を超えると、硬化物が硬くなり、伸び物性が低下する傾向がある。
【0024】
加水分解性ケイ素基は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の分子鎖の主鎖の末端あるいは側鎖の末端にあってもよいし、また、両方にあってもよい。特に、加水分解性ケイ素基が分子鎖の主鎖の末端にのみあるときは、最終的に形成される硬化物に含まれる有機重合体成分の有効網目長が長くなるため、高強度、高伸びを示すゴム状硬化物が得られやすくなり、好ましい。
【0025】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体などが挙げられる。その中でも、ポリオキシプロピレンが好ましい。
【0026】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量は、GPC測定におけるポリスチレン換算において800から50,000程度、より好ましくは1,500から40,000であり、特に好ましくは2,000から30,000である。(A)成分の数平均分子量が小さいと、加水分解性ケイ素基の導入量が多くなり、製造コストの点で不都合になる場合がある。一方、分子量が大きいと、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0027】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、狭いことが好ましく、2.0未満が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましい。
【0028】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61-215623号に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46-27250号、特公昭59-15336号、米国特許3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、米国特許3427335号等に示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平10-273512号に例示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、特開平11-060722号に例示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0029】
加水分解性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の製造方法は、特公昭45-36319号、同46-12154号、特開昭50-156599号、同54-6096号、同55-13767号、同55-13468号、同57-164123号、特公平3-2450号、米国特許3632557、米国特許4345053、米国特許4366307、米国特許4960844等の各公報に提案されているもの、また特開昭61-197631号、同61-215622号、同61-215623号、同61-218632号、特開平3-72527号、特開平3-47825号、特開平8-231707号の各公報に提案されている数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いポリオキシアルキレン系重合体が例示できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0030】
加水分解性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0031】
<加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)>
加水分解性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体(B)(「(メタ)アクリル系重合体(B)」ともいう)の主鎖は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル系モノマーから構成される。当該(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3-トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸(3-ジメトキシメチルシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸(2-トリメトキシシリル)エチル、(メタ)アクリル酸(2-ジメトキシメチルシリル)エチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルメチル、(メタ)アクリル酸(ジメトキシメチルシリル)メチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ビス(トリフルオロメチル)メチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチル-2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマーが挙げられる。
【0032】
加水分解性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体(B)の主鎖は、上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー以外の(メタ)アクリル系単量体単位を有していてもよく、そのような単量体としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸;N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等の、アミド基を含む単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の、エポキシ基を含む単量体、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の、窒素含有基を含む単量体等が挙げられる。
【0033】
加水分解性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体(B)の主鎖は、上記以外のビニル系モノマー単位を有していても良い。当該ビニル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩などのスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;エチレン、プロピレンなどのアルケニル系モノマー;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコールなどがあげられ、これらは、複数を共重合成分として使用することも可能である。
【0034】
(メタ)アクリル系重合体のなかでも、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーからなる共重合体が、物性が優れることから好ましく、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーからなる(メタ)アクリル酸エステル系重合体がより好ましく、アクリル酸エステルモノマーからなるアクリル酸エステル系重合体が特に好ましい。
【0035】
(メタ)アクリル系重合体(B)が有する加水分解性ケイ素基は、上述のものと同様であり、加水分解反応および縮合反応をすることでシロキサン結合を形成することによって架橋し得る官能基を指し、下記一般式(2)で表すことができる。
-SiR2
3-aYb (2)
(式中、R2は、それぞれ独立に炭素原子数1から20の置換あるいは非置換のアルキル基、炭素原子数6から20のアリール基、炭素原子数7から20のアラルキル基、または、-OSiR’3(R’は、それぞれ独立に炭素原子数1から20の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基である。また、Yは、それぞれ独立にヒドロキシ基または加水分解性基である。更に、bは1から3の整数である)
【0036】
R2としては、メチル基、エチル基、クロロメチル基、メトキシメチル基、N,N-ジエチルアミノメチル基、を挙げることができるが、好ましくは、メチル基、エチル基、である。
【0037】
Yとしては、例えば、水酸基、水素、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などがあげられる。これらの中では、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことからメトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル系重合体(B)が有する加水分解性ケイ素基としては、具体的には、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(クロロメチル)ジエトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジエトキシシリル基などがあげられるが、これらに限定されない。これらの中では、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル基が高い活性を示し、良好な機械物性を有する硬化物が得られるため好ましく、ヤング率の高い硬化物が得られることから、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基がより好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系重合体(B)の加水分解性ケイ素基当量は特に限定はないが、0.2mmol/g以上が好ましく、0.5mmol/g以上がより好ましく、0.6mmol/g以上がさらに好ましい。前記加水分解性ケイ素当量の上限は2.0mmol/g以下が好ましく、硬化物の伸びの低下を抑える点から、1.0mmol/g以下がより好ましい。また、ヤング率の高い高剛性の硬化物を得るためには、前記加水分解性ケイ素基当量は0.6mmol/g以上、1.0mmol/g以下である事が特に好ましい。
【0040】
(メタ)アクリル系重合体に加水分解性ケイ素基を導入する方法は特に限定されず、たとえば、以下の方法を用いることができる。(i)重合性不飽和基と加水分解性ケイ素含有基を有する化合物を、上述のモノマーとともに共重合する方法。この方法を用いると加水分解性ケイ素基は重合体の主鎖中にランダムに導入される傾向がある。(ii)連鎖移動剤として、加水分解性ケイ素含有基を有するメルカプトシラン化合物を使用して(メタ)アクリル系重合体を重合する方法。この方法を用いると、加水分解性ケイ素基を重合体末端に導入することができる。(iii)重合性不飽和基と反応性官能基(V基)を有する化合物を、共重合した後、加水分解性ケイ素基とV基に反応する官能基とを有する化合物を反応させる方法。具体的には、アクリル酸2-ヒドロキシエチルを共重合した後、加水分解性ケイ素含有基を有するイソシアネートシランを反応させる方法や、アクリル酸グリシジルを共重合した後、加水分解性ケイ素含有基を有するアミノシラン化合物を反応させる方法などが例示できる。(iv)リビングラジカル重合法によって合成した(メタ)アクリル系重合体の末端官能基を変性して、加水分解性ケイ素基を導入する方法。リビングラジカル重合法によって得られる(メタ)アクリル系重合体は重合体末端に官能基を導入しやすく、これを変性することで重合体末端に加水分解性ケイ素基を導入することができる。
【0041】
上記の方法を用いて(メタ)アクリル系重合体(B)の加水分解性ケイ素基を導入するために使用できるケイ素化合物としては、以下の化合物が例示できる。方法(i)で使用する重合性不飽和基と加水分解性ケイ素基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸(ジメトキシメチルシリル)メチル、(メタ)アクリル酸(トリメトキシシリル)メチル、(メタ)アクリル酸(トリエトキシシリル)メチル、(メタ)アクリル酸3-((メトキシメチル)ジメトキシシリル)プロピルなどが挙げられる。入手性の観点から、(メタ)アクリル酸3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルが特に好ましい。
【0042】
方法(ii)で使用する加水分解性ケイ素含有基を有するメルカプトシラン化合物としては、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(メルカプトメチル)ジメトキシメチルシラン、(メルカプトメチル)トリメトキシシラン、などが挙げられる。
【0043】
方法(iii)で使用する加水分解性ケイ素基とV基に反応する官能基とを有する化合物としては、3-イソシアネートプロピルジメトキシメチルシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン化合物;3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルジメトキシメチルシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシランなどのエポキシシラン化合物;3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルジメトキシメチルシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリメトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、などのアミノシラン化合物などが挙げられる。
【0044】
上記(iv)の方法では、任意の変性反応を利用できるが、例えば、重合によって得られた末端反応性基と反応し得る官能基とケイ素基を有する化合物を用いる方法や、末端反応性基と反応し得る官能基と二重結合を有する化合物を用いて重合体末端に二重結合を導入し、これにヒドロシリル化等で加水分解性ケイ素基を導入する方法などが使用できる。
【0045】
なお、これらの方法は任意に組合せて用いてもよい。例えば方法(i)と方法(ii)を組合わせると、分子鎖末端および/または側鎖の両方に加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)を得ることができる。
【0046】
(メタ)アクリル系重合体(B)が、アルキルの炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルを全単量体中40重量%以上含有する重合体を含有することが高剛性となるため好ましく、さらに、アルキルの炭素数が4~30である(メタ)アクリル酸アルキルを全単量体中40重量%以上含有する重合体も含有し、両者を配合してなるものであることが剛性、伸び、強度が向上するため好ましい。
【0047】
また、(メタ)アクリル系重合体(B)が、アルキルの炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルを全単量体中40重量%以上およびアルキルの炭素数が4~30である(メタ)アクリル酸アルキルを全単量体中40重量%以上含有する単量体混合物を共重合した重合体を含有する事でも剛性、伸び、強度が向上するため好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル系重合体(B)の単量体組成は、用途、目的により選択することができ、強度を必要とする用途では、ガラス転位温度(Tg)が比較的高いものが好ましく、0℃以上200℃以下が好ましく、20℃以上100℃以下のTgを有するものがより好ましい。なおTgは下記Foxの式より求められる。
【0049】
Foxの式:
1/(Tg(K))=Σ(Mi/Tgi)
(式中、Miは重合体を構成する単量体i成分の重量分率、Tgiは単量体iのホモポリマーのガラス転移温度(K)を表す。)。
【0050】
(メタ)アクリル系重合体(B)の数平均分子量は特に限定されないが、GPC測定によるポリスチレン換算分子量で、500~50,000が好ましく、500~30,000がより好ましく、1,000~10,000が特に好ましい。
【0051】
(メタ)アクリル系重合体(B)とポリオキシアルキレン系重合体(A)をブレンドする方法は、特開昭59-122541号、特開昭63-112642号、特開平6-172631号、特開平11-116763号公報等に提案されている。他にも、加水分解性ケイ素基を有するポリオキシプロピレン系重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行う方法が利用できる。
【0052】
加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体(B)は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0053】
本発明の硬化性組成物中のポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル系重合体(B)の合計重量に対するポリオキシアルキレン系重合体(A)の重量割合は5~90重量%であることが好ましく、より好ましくは20~80重量%であり、さらに好ましくは30~75重量%であり、特に好ましくは40~70重量%である。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の重量割合が5重量%未満であると硬化物の伸びが低くなったり、表面のべたつきが悪くなる傾向にあり、90重量%を超えると硬化物の耐候性が不足することがある。
【0054】
<ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤(C)>
本発明の硬化性組成物は、可塑剤として、数平均分子量が2000~15000で、かつ、末端基のうち水酸基の割合が10%以下であるポリオキシアルキレン系高分子可塑剤を含有する。当該ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤(C)は、(A)成分や(B)成分とは異なって、加水分解性ケイ素基を有しないものであることが好ましい。(C)成分は高分子可塑剤であるため、低分子可塑剤と比較して、硬化物表面からのブリードアウトが抑制され得る。
【0055】
一般的なポリオキシアルキレン系高分子可塑剤は、ポリオキシアルキレン分子鎖の両末端又は片末端に水酸基を有するものであり、結果、末端基のうち水酸基の割合が50%以上になり得る。しかし、本発明で使用するポリオキシアルキレン系高分子可塑剤は、末端に存在する水酸基を他の基に変換することで、末端基のうち水酸基の割合を10%以下に低減したものである。このように末端基のうち水酸基の割合を10%以下に低減したポリオキシアルキレン系高分子可塑剤を用いることで、本発明の加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)と加水分解性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体(B)を共に含む硬化性組成物を、多孔質基材に対するシーリング材として使用した時に、施工後に硬化物が示す引張物性の変化を抑制することが可能となる。
【0056】
(メタ)アクリル系重合体(B)が配合されていない場合は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)とポリオキシアルキレン系高分子可塑剤は同じポリオキシアルキレン系重合体であるため相溶し易く、硬化した後も問題を生じない。しかし、耐候性を高めるために、この系に(メタ)アクリル系重合体(B)を配合した場合、たとえ硬化する前は各成分が相溶していても、(A)成分と(B)成分の加水分解性ケイ素基が加水分解及び縮合して架橋し、ネットワークが形成されると、ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤はこのネットワークから抜け出しやすくなると推定される。特に基材がスポンジのような多孔質は、金属やプラスチック基材に比べて液状物を吸収しやすい構造であるため、多孔質基材に対するシーリング剤として用いた場合、ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤が従来のように水酸基を多く含有していると極性が高く、前記ネットワークから抜け出しやすい傾向が高まり、結果、施工後時間が経過すると引張物性が変化するものと考えられる。しかし、本発明は、ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤として水酸基割合を低減したものを使用することで、前記傾向を抑制し、施工後の引張物性の変化を抑制することが可能になると考えられる。
【0057】
前記末端基のうち水酸基の割合は、10%以下であればよいが、小さい値であるほど好ましい。具体的には、8%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、2%以下がより更に好ましく、1%以下が特に好ましい。また、水酸基の割合は0%であってもよい。
【0058】
なお、ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤(C)が有する末端基のうち、水酸基の割合は、以下に記載する方法により測定することができる。
【0059】
(水酸基の測定方法)
ピリジン500mlに無水フタル酸70gを完全に溶解させ、室温で一夜熟成させたもの(無水フタル酸ピリジン試薬)を準備する。300mlマイヤーフラスコに試料20gを正確に量り、上記の無水フタル酸ピリジン試薬を35ml加えて試料を溶解した後、冷却管を付けて100℃に調整したオイルバルで2.5時間加熱する。室温まで冷却し、純水10mlを加え、よく振り混ぜて5分間放置する。エタノール50mlでコンデンサーに付着したフタル酸を洗い流し、N/2水酸化ナトリウム溶液50mlを加えてフェノールフタレイン指示薬を滴下し、N/2水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。
【0060】
ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤(C)は、末端基として、アルキル基、アリル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも1種の炭化水素基を有することが好ましい。ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤(C)が有する末端基のうち、前記炭化水素基の割合は、80%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、98%以上がより更に好ましい。前記アルキル基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは1~6である。前記アリール基の炭素数も特に限定されないが、好ましくは炭素数6~10である。
【0061】
ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤(C)の分子量は、可塑剤としての作用を実現するに足る分子量であればよいが、具体的には、GPC測定におけるポリスチレン換算において数平均分子量が2000~15000であればよい。(C)成分の数平均分子量がこの範囲内であれば、硬化物を柔軟にしつつ、硬化物表面からの可塑剤のブリードアウトを抑制することができる。(C)成分の数平均分子量が2000より小さい場合は、ブリードアウトを抑制することが難しく、一方15000より大きい場合は、硬化性組成物の粘度が高くなり作業性が低下するため好ましくない。(C)成分の数平均分子量は、好ましくは3000~13000であり、より好ましくは4000~12000であり、最も好ましくは5000~10000である。
【0062】
ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤(C)の製造方法は特に限定されないが、まず、ポリオキシアルキレン系重合体(A)について上述した合成方法を用いて水酸基末端ポリオキシアルキレン系重合体を製造し、次いで、末端の水酸基を他の置換基(特に前述した炭化水素基)に変換する方法によって製造することができる。例えば、末端の水酸基を、カルボキシル基やイソシアネート基を有する化合物と反応させることで、(C)成分中の水酸基を一定以下に減らすことができる。
【0063】
ポリオキシアルキレン系高分子可塑剤(C)の配合量としては、当該成分によって達成される物性を考慮して、当業者が適宜設定することができるが、通常、加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)と加水分解性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、1~300重量部の範囲が好ましい。より好ましくは10~200重量部、さらに好ましくは20~150重量部、より更に好ましくは30~120重量部である。
【0064】
なお、本発明の硬化性組成物には、(C)成分に加えて、末端基のうち水酸基の割合が10%を超えるような汎用のポリオキシアルキレン系高分子可塑剤を配合してもよいが、配合しないほうが、施工後の引張物性の変化を抑制することができ、好ましい。
【0065】
また、本発明の硬化性組成物は、低分子量の可塑剤を含有してもよい。その例としては、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル、等の炭化水素系油;プロセスオイル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤類をあげることができる。
【0066】
また、フタル酸ジメチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル等のフタル酸エステル類も使用することはできるが、人体や環境への影響を考慮すると、これらの使用量は少ない方が好ましく、使用しないことが好ましい。フタル酸エステルを水添化することにより安全性を改善した可塑剤が販売されており、例えばBASF社から販売されている商品名hexamoll DINCHを併用しても良い。またシリル基を有さないアクリル系可塑剤が販売されており、例えば東亞合成社から販売されている商品名アルフォンを併用しても良い。これらの低分子量可塑剤は、本発明の硬化性組成物の粘度を低下させるのに効果的で、特に低温での作業性改善に優れる。ただしブリード性を悪化させるため、少量併用することが好ましい。低分子量可塑剤の使用量としては、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して50重量部以下が好ましく、30重量部がさらに好ましく、使用しないことが最も好ましい。
【0067】
<シラノール縮合触媒>
本発明の硬化性組成物は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及び(メタ)アクリル系重合体(B)が有する加水分解性ケイ素基を加水分解・縮合させる反応、即ち硬化反応を促進する目的で、シラノール縮合触媒(硬化触媒ともいう)を配合することが好ましい。
【0068】
シラノール縮合触媒としては、従来公知のものを使用することができ、具体的には、有機錫化合物、カルボン酸金属塩、アミン化合物、カルボン酸、アルコキシ金属、無機酸等を使用することができる。
【0069】
有機錫化合物の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(2-エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ビス(メチルマレエート)、ジブチル錫ビス(エチルマレエート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ビス(トリデシルマレエート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ビス(ノニルフェノキサイド)、ジブテニル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(エチルアセトアセトナート)、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等が挙げられる。近年の環境への関心の高まりから、ジオクチル錫化合物が好ましい。
【0070】
カルボン酸金属塩の具体例としては、カルボン酸錫、カルボン酸鉛、カルボン酸ビスマス、カルボン酸カリウム、カルボン酸カルシウム、カルボン酸バリウム、カルボン酸チタン、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸ハフニウム、カルボン酸バナジウム、カルボン酸マンガン、カルボン酸鉄、カルボン酸コバルト、カルボン酸ニッケル、カルボン酸セリウム等が挙げられる。カルボン酸金属塩におけるカルボン酸種の具体例としては後述するものが挙げられる。カルボン酸金属塩における金属種としては、活性が高いため、二価の錫、ビスマス、二価の鉄、三価の鉄、ジルコニウム、チタンが好ましく、二価の錫が最も好ましい。
【0071】
アミン化合物の具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂肪族第一級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミンなどの脂肪族第二級アミン類;トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミンなどの脂肪族第三級アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族不飽和アミン類;アニリン、ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミンなどの芳香族アミン類;ピリジン、2-アミノピリジン、2-(ジメチルアミノ)ピリジン、4-(ジメチルアミノピリジン)、2-ヒドロキシピリジン、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、モルホリン、N-メチルモルホリン、ピペリジン、2-ピペリジンメタノール、2-(2-ピペリジノ)エタノール、ピペリドン、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、6-(ジブチルアミノ)-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBA-DBU)、6-(2-ヒドロキシプロピル)-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(OH-DBU)、OH-DBUの水酸基をウレタン化などで変性した化合物、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、アジリジンなどの含窒素複素環式化合物;DBUのフェノール塩(具体的には、商品名:U-CAT SA1(サンアプロ製))、DBUのオクチル酸塩(具体的には、商品名:U-CAT SA102(サンアプロ製))、DBUのp-トルエンスルホン酸塩(具体的には、商品名:U-CAT SA506(サンアプロ製))、DBNのオクチル酸塩(具体的には、商品名:U-CAT 1102(サンアプロ製))などの含窒素複素環式化合物から誘導される塩、および、その他のアミン類として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3-ヒドロキシプロピルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、ベンジルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-ラウリルオキシプロピルアミン、3-ジメチルアミノプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、3-ジブチルアミノプロピルアミン、3-モルホリノプロピルアミン、2-(1-ピペラジニル)エチルアミン、キシリレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのアミン類;グアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ブチルビグアニド、1-o-トリルビグアニドや1-フェニルビグアニドなどのビグアニド類等が挙げられる。
【0072】
なかでも、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、DBU、DBA-DBU、DBNなどのアミジン類;グアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ブチルビグアニド、1-o-トリルビグアニドや1-フェニルビグアニドなどのビグアニド類は高い活性を示すことから好ましく、1-o-トリルビグアニドや1-フェニルビグアニドなどのアリール基置換ビグアニド類は、高い接着性を期待できることから好ましい。
【0073】
また、アミン化合物は塩基性を示すが、共役酸のpKa値が11以上の値を示すアミン化合物は触媒活性も高く好ましく、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、DBU、DBNなどは共役酸のpKa値が12以上であり、より高い触媒活性を示すため特に好ましい。
【0074】
本発明ではシラノール縮合触媒に使用されるアミン化合物として、アミノ基含有シランカップリング剤(アミノシランと記載する場合もある)、加水分解によって前記アミン化合物を生成するようなケチミン化合物も使用できる。
【0075】
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ピバル酸、2,2-ジメチル酪酸、2,2-ジエチル酪酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、2,2-ジエチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、2-エチル-2,5-ジメチルヘキサン酸、ネオデカン酸、バーサチック酸等が挙げられる。2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、バーサチック酸は活性が高く、入手性の点からも好ましい。また、カルボン酸無水物、カルボン酸アルキル、アミド、ニトリル、ハロゲン化アシルなどの上記カルボン酸の誘導体も使用できる。
【0076】
アルコキシ金属の具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ビス(アセチルアセトナート)ジイソプロポキシチタン、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトセテート)などのチタン化合物や、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどのアルミニウム化合物類、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)などのジルコニウム化合物類、テトラブトキシハフニウムなどのハフニウム化合物類が挙げられる。
【0077】
その他のシラノール縮合触媒として、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機スルホン酸類;塩酸、リン酸、ボロン酸などの無機酸類;三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体などの三フッ化ホウ素錯体;フッ化アンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化水素アンモニウム、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-ジエチルアミノプロパン(MEC81、通称石川試薬)、ヘキサフルオロリン酸カリウム、Na2SiF6、K2SiF6、(NH4)2SiF6などのフッ素アニオン含有化合物等が挙げられる。
【0078】
光によって酸や塩基を発生させる光酸発生剤や光塩基発生剤もシラノール縮合触媒として使用できる。光酸発生剤としては、p-フェニルベンジルメチルスルホニウム塩、p-ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム塩等のトリアリールスルホニウム塩、4,4-ビス[ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム塩、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム塩、(4-tert-ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム塩、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウム塩等のヨードニウム塩等のオニウム塩系光酸発生剤や、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、ニトロベンジル-9,10-ジエトキシアントラセン-2-スルホネート、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミドなどのスルホン酸誘導体、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-キシリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル(ベンゾイル)ジアゾメタン等のジアゾメタン類、カルボン酸エステル類、鉄アレーン錯体などが挙げられる。
【0079】
シラノール縮合触媒は、異なる2種類以上の触媒を併用して使用してもよく、例えば、前記のアミン化合物とカルボン酸を併用することで、反応性が向上する効果が得られる可能性がある。カルボン酸などの酸類とテトラブチルホスホニウムヒドロキシドなどのホスホニウム塩化合物を併用することでも触媒活性を高められる。また、ペンタフルオロフェノール、ペンタフルオロベンズアルデヒドなどのハロゲン置換芳香族化合物などとアミン化合物との併用で反応性が向上する可能性がある。
【0080】
本発明の硬化性組成物では、シラノール縮合触媒として、有機錫化合物を用いることが好ましい。有機錫化合物は、他の縮合触媒に比べて活性が高く、組成物の接着性も高い傾向にあり、シーリング材と基材が長期間にわたって接着性を維持するため好ましい。有機錫化合物としては特に限定されないが、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物などが挙げられる。
【0081】
シラノール縮合触媒の配合量としては、硬化速度を考慮して当業者が適宜設定することができるが、通常、加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)と加水分解性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.001~20重量部の範囲が好ましい。より好ましくは0.01~15重量部であり、さらに0.01~10重量部である。シラノール縮合触媒の配合量が0.001重量部を下回ると硬化速度が不十分となる可能性がある。一方、シラノール縮合触媒の配合量が20重量部を上回ると反応速度が速すぎるため組成物の使用可能な時間が短くなることにより作業性が悪くなったり、貯蔵安定性が悪くなる傾向がある。さらに、シラノール縮合触媒の中には、硬化性組成物が硬化した後で、硬化物の表面に染み出したり、硬化物表面を汚染する場合がある。このような場合には、シラノール縮合触媒の配合量を0.01~2.0重量部とすることで、硬化性を確保しながら、硬化物の表面状態を良好に保つことができる。
【0082】
(その他の添加剤)
本発明の硬化性組成物には、その他の添加剤として、シリコン化合物、接着性付与剤、可塑剤、溶剤、希釈剤、シリケート、充填剤、タレ防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、物性調整剤、粘着付与樹脂、エポキシ基を含有する化合物、光硬化性物質、酸素硬化性物質、表面性改良剤、エポキシ樹脂、その他の樹脂、難燃剤、発泡剤を添加しても良い。また、本発明の硬化性組成物には、硬化性組成物又は硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、防かび剤等が挙げられる。
【0083】
(硬化性組成物)
本発明の硬化性組成物は、上述した各成分を混合することで調製することができる。本発明の硬化性組成物の調製方法には特に限定はなく、例えば、各成分を配合し、ミキサーやニーダー等を用いて常温又は加熱下で混練したり、溶剤を添加して各成分を溶解させ、混合したりするなど一般的な方法を適用することができる。また、本発明の硬化性組成物は、1液型の組成物であってよいし、2液以上の多液型の組成物であってもよい。
【0084】
本発明の硬化性組成物は、多孔質基材に対するシーリング材として使用されるものである。具体的な使用方法は常法に従えばよいが、例えば、多孔質基材の継ぎ目や隙間に、硬化前の流動性を有する状態の本発明の硬化性組成物を充填し、形を整えた後、必要に応じて加熱し養生することで、硬化性組成物を硬化させればよい。
【0085】
本発明の硬化性組成物を硬化させて得られたシーリング材は、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体をブレンドしてなるものであるため高い耐候性を有することに加え、高分子可塑剤を使用しているため可塑剤配合による良好な柔軟性を達成しながら、かつ可塑剤のブリードアウトが生じにくい利点がある。その上、多孔質基材に対するシーリング材として使用した時の施工後の引張物性の経時的変化が抑制される利点を有する。そのため、本発明の硬化性組成物は、建築物の外壁など、屋外で使用される多孔質基材に対するシーリング材として使用することで本発明の優れた効果を享受することができる。
【実施例】
【0086】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0087】
(合成例1)
分子量約15,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量約30,000(送液システムとして東ソー製HLC-8120GPCを用い、カラムは東ソー製TSK-GEL Hタイプを用い、溶媒はTHFを用いて測定したポリスチレン換算分子量)の水酸基末端ポリオキシプロピレンを得た。続いて、この水酸基末端ポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。得られた未精製のアリル末端ポリオキシプロピレン100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端がアリル基であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約30,000のポリオキシプロピレンを得た。得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として、メチルジメトキシシラン0.96重量部と90℃で2時間反応させ、末端に、1分子あたり平均して約1.6個のメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(重合体a1)を得た。
【0088】
フラスコに、n-ブチルアクリレート122g、メチルメタクリレート29g、ステアリルメタクリレート30g、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン9g、イソブタノール46gを入れ、さらに重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル2.6gを溶かしたモノマー混合液を作製した。攪拌機、温度計、及び窒素導入口を供えたセパラブルフラスコにイソブタノール88gを入れて105℃に加熱し、窒素をバブリングしてフラスコ系内を窒素で置換した後、攪拌しながら上記のモノマー混合液を4時間かけて滴下し、さらに2時間、後重合を行った。得られたメチルジメトキシシリル基含有アクリル系重合体(重合体a2)は、固形分濃度60%のイソブタノール溶液で、GPC(上記と同じ)によるポリスチレン換算の数平均分子量Mnは18,000であった。3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランの仕込み量と平均分子量から計算して、アクリル系重合体(重合体a2)のメチルジメトキシシリル基は一分子あたり平均して2.0個導入されている。
【0089】
上記で得られたメチルジメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン系重合体(重合体a1)とメチルジメトキシシリル基含有アクリル系重合体(重合体a2)のイソブタノール溶液とを固形分比(重量比)70/30で混合し、ロータリーエバポレーターを用いて110℃加熱、減圧条件下でイソブタノールの脱揮を行い、固形分濃度99%以上のポリマー(重合体1)を得た。重合体1は、メチルジメトキシシリル基末端ポリオキシプロピレン系重合体(重合体a1)とメチルジメトキシシリル基含有アクリル系重合体(重合体a2)の混合物である。
【0090】
(合成例2)
分子量約3,000のポリオキシプロピレントリオールと分子量約3,000のポリオキシプロピレンジオールの混合物を開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量約19,700(上記と同じ方法にて測定)の水酸基末端ポリオキシプロピレンを得た。続いて、この水酸基末端ポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。得られた未精製のアリル末端ポリオキシプロピレン100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端がアリル基であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約19,700のポリオキシプロピレンを得た。得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として、メチルジメトキシシラン1.3重量部と90℃で2時間反応させ、末端に、1分子あたり平均して約1.3個のメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(重合体2)を得た。
【0091】
(合成例3)
分子量約3,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量約16,200(上記と同じ方法にて測定)の水酸基末端ポリオキシプロピレンを得た。続いて、この水酸基末端ポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。得られた未精製のアリル末端ポリオキシプロピレン100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端がアリル基であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約16,200のポリオキシプロピレンを得た。得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対し、白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液150ppmを触媒として、メチルジメトキシシラン1.3重量部と90℃で2時間反応させ、末端に、1分子あたり平均して約1.3個のメチルジメトキシシリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(重合体3)を得た。
【0092】
(合成例4)
分子量約3,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量約7,500(上記と同じ方法にて測定)のポリオキシプロピレン系重合体(重合体7)を得た。重合体7において末端基のうち水酸基の割合は、上述の水酸基の測定方法により測定したところ、90%であった。
【0093】
続いて、この水酸基を有するポリオキシプロピレン(重合体7)の水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。得られた未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、両末端がアリル基であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約7,500のポリオキシプロピレン系重合体(重合体4)を得た。重合体4において末端基のうち水酸基の割合は、上述の水酸基の測定方法により測定したところ、1%であった。
【0094】
(合成例5)
分子量約1,200のポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(三洋化成工業(株)製、商品名:ニューポールLB-285)を開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量約7,500(上記と同じ方法にて測定)のポリオキシプロピレン(重合体6)を得た。重合体6は、片末端が水酸基で、別の末端がブチル基を有する重合体である。重合体6において末端基のうち水酸基の割合は、上述の水酸基の測定方法により測定したところ、50%であった。
【0095】
続いて、このポリオキシプロピレン(重合体6)の水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。得られた未精製の片末端にのみアリル基を有するポリオキシプロピレン100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、片末端がアリル基で、別の末端がブチル基であり、GPCでのポリスチレン換算の数平均分子量が約7,500のポリオキシプロピレン系重合体(重合体5)を得た。重合体5において末端基のうち水酸基の割合は、上述の水酸基の測定方法により測定したところ、1%であった。
【0096】
(実施例1)
合成例1で得られた(重合体1)を100重量部、合成例4で得られた両末端にアリル基を有するポリオキシプロピレン系重合体(重合体4)を90重量部、表面処理膠質炭酸カルシウム(竹原化学工業(株)製、商品名:Neolight SP)160重量部、重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、商品名:LM2200)54重量部、白色顔料として酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:タイペークR-820)20重量部、タレ防止剤(Cray Valley社製、商品名:Crayvallac SL)2重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン(株)製、商品名:チヌビン328)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン(株)製、商品名:チヌビン770)1重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン(株)製、商品名:イルガノックス1010)1重量部を混合して充分混練し、120℃で混合しながら減圧にして2時間攪拌することで物理的脱水を行った。これを50℃以下に冷却した後、脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:Silquest A-171)3重量部、接着性付与剤としてγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:Silquest A-1120)3重量部、硬化触媒としてジブチル錫ビスアセチルアセトナート(日東化成(株)製、商品名:ネオスタンU-220H)2重量部を加えて混練し、硬化性組成物を得た。
【0097】
(実施例2、比較例1~2、参考例1~4)
実施例1における(重合体1)と(重合体4)の代わりに、表1に示す重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。
【0098】
次に、評価方法を示す。
(引張物性)
窯業系サイディング用シーリング材JTC規格(JTC S-0001)に準拠して実施した。具体的には、サイディングボード(旭トステム外装(株)製、商品名:窯業AT-WALL、大きさは30mm×50mm×厚み14mm)を基材とし、ウレタン系プライマー(サンライズ(株)製、SRシールS70専用プライマー)を用いて、シーリング材部分は10mm×50mm×厚み8mmでバットジョイント型試験体を作成した。初期の硬化養生として、23℃50%RHで14日、その後50℃で14日間を施した。硬化したシーリング材の引張物性を測定するため、島津(株)製オートグラフを用いて23℃50%RH条件下で、50mm/分の引張速度で、100%モジュラス、破断強度、及び破断時の伸びを測定した。
【0099】
(屋外暴露試験)
上記と同様の養生を施した別のバットジョイント型試験体を兵庫県高砂市の日当たりの良い場所で、南面向きで45度傾斜の暴露台に設置し、18ヶ月後に取り出して、上記と同様にして、100%モジュラス、破断強度、及び破断時の伸びを測定した。
【0100】
表1に、実施例、比較例、及び参考例の組成とそれぞれの物性を示す。
【0101】
【0102】
実施例1、2と比較例1、2では、加水分解性シリル基含有ポリオキシプロピレン系重合体と加水分解性シリル基含有アクリル系重合体を使用し、可塑剤として分子量がほぼ同じポリオキシプロピレン系重合体を用い、多孔質基材であるサイディングボードに対するシーリング材としての評価を行なった。
【0103】
比較例1では片末端に水酸基を有し水酸基割合が50%であるポリオキシプロピレン系重合体(重合体6)を、比較例2では両末端に水酸基を有し水酸基割合が90%であるポリオキシプロピレン系重合体(重合体7)を可塑剤として用いた。いずれの場合でも、初期の硬化物は低モジュラスで伸びも高い値を発現したが、18カ月屋外で暴露した後ではモジュラスが1.6倍と大きくなり、かつ伸びも半分以下になり、引張物性に大きな変化が見られた。
【0104】
一方、実施例1では両末端にアリル基を有し水酸基割合が1%であるポリオキシプロピレン系重合体(重合体4)を、実施例2では片末端にブチル基、もう一方の末端にアリル基を有し水酸基割合が1%であるポリオキシプロピレン系重合体(重合体5)を可塑剤として使用した。いずれの場合も、比較例1や2に比べると、18ヶ月の屋外暴露後もモジュラスの変化率が大幅に小さく、また、伸びが低下する程度も抑制されていた。
【0105】
参考例1~4では、シリル基含有ポリマーとして加水分解性シリル基含有ポリオキシプロピレン系重合体のみを使用し、加水分解性シリル基含有アクリル系重合体は配合せずに、可塑剤として実施例又は比較例で用いたものと同じポリオキシプロピレン系重合体を用いて、同様にサイディングボードに対するシーリング材としての評価を行なった。
【0106】
しかし、この系では、水酸基割合が50%または90%であるポリオキシプロピレン系重合体(重合体6又は重合体7)を可塑剤として使用しても、18カ月の屋外暴露後の引張物性の変化は小さいものであった(参考例3及び4)。このことより、18ヶ月の屋外暴露により引張物性が大きく変化するという課題は、実施例及び比較例で示したような加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体とのブレンド物に特有のものであることが分かる。
【0107】
また、参考例1~4では、可塑剤であるポリオキシプロピレン系重合体の水酸基割合に関わらず、18カ月の屋外暴露後の引張物性の変化の度合いは同程度であった。このことより、実施例1及び2において、比較例1及び2と比べて18カ月の屋外暴露後の引張物性の変化が小さくなっていることは顕著な効果であることが分かる。