(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】トンネル消火栓装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20221215BHJP
A62C 37/50 20060101ALI20221215BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20221215BHJP
E05B 47/04 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C37/50
E05B47/00 H
E05B47/00 J
E05B47/04 A
(21)【出願番号】P 2018218878
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-106329(JP,A)
【文献】特開2005-054494(JP,A)
【文献】特開2009-291507(JP,A)
【文献】特開2018-078915(JP,A)
【文献】特開2018-153279(JP,A)
【文献】特開2003-148015(JP,A)
【文献】特開平10-088933(JP,A)
【文献】特開2003-164541(JP,A)
【文献】特開2011-120717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/20
A62C 37/50
E05B 47/00
E05B 47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体前面の扉開口に前傾扉が開閉自在に設けられたトンネル消火栓装置
であって、
前記前傾扉
に設けられ、当該前傾扉を閉鎖位置に保持すると共に
、扉ハンドルの操作により前記前傾扉の閉鎖保持を解除
する扉ラッチ機構と、
前記前傾扉の外部に設けられ、前記扉ラッチ機構
を押圧により作動させて前記前傾扉の閉鎖保持を解除すると共に
、閉鎖状態の前記前傾扉
の開放
動作の開始を当該押圧の継続により補助する扉開放アシスト機構と、
前記扉ハンドルの操作を検出するセンサーと、
前記センサーにより前記扉ハンドルの操作を検出した場合に、前記扉開放アシスト機構を動作して前記前傾扉を開放
動作させる制御部と、
を備えたことを特徴とするトンネル消火栓装置。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル消火栓装置に於いて、
前記扉ラッチ機構は、
筐体側のラッチ穴に係合する閉鎖位置と前記ラッチ穴から離脱した閉鎖解除位置との間でスライド移動自在
に設けられたラッチ部材と、
前記扉ハンドルの開操作により回動
し、前記ラッチ部材を前記閉鎖位置から閉鎖解除位置にスライド移動させて前記前傾扉の閉鎖保持を解除させるリンクアームと、
を備え、
前記扉開放アシスト機構は、
前記扉ラッチ機構の前記リンクアームから延在された押圧レバーと、
前記押圧レバーを押圧して前記リンクアームを回動させるリニアアクチュエータと、
を備え、
前記制御部は、前記センサーによる前記扉ハンドルの操作を検出した場合に、前記リニアアクチュエータにより前記押圧レバーを押し込んで前記リンクアームを回動させることにより、前記ラッチ部材を前記閉鎖位置から閉鎖解除位置にスライド移動させて前記前傾扉の閉鎖保持を解除させることを特徴とするトンネル消火栓装置。
【請求項3】
請求項1記載のトンネル消火栓装置に於いて、
前記扉ラッチ機構は、
前記扉ハンドルの
開操作により回動
し、先端のラッチ爪を筐体側
のラッチ穴に係合
する閉鎖位置から閉鎖解除位置に回転移動させて前記前傾扉
の閉鎖保持を解除させるラッチアームを備え、
前記扉開放アシスト機構は、
前記扉ラッチ機構の前記ラッチアームから延在された押圧レバーと、
前記押圧レバーを押圧して前記ラッチアームを回動させるリニアアクチュエータと、
を備え、
前記制御部は、前記センサーによる前記扉ハンドルの操作を検出した場合に、前記リニアアクチュエータにより前記押圧レバーを押し込んで前記ラッチアームを
回動させることにより、前記ラッチ爪を前記閉鎖位置から閉鎖解除位置に回動させて前記前傾扉の閉鎖保持を解除させることを特徴とするトンネル消火栓装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載のトンネル消火栓装置に於いて、
前記リニアアクチュエータは、前記前傾扉の閉鎖状態
で前記押圧レバーから離れた
位置に配置されていることを特徴とするトンネル消火栓装置。
【請求項5】
請求項1記載のトンネル消火栓装置に於いて、
前記センサーとして、前記扉ハンドルに対する人の操作力に応じた検出値を出力する接触センサーが前記扉ハンドルに設けられ、
前記制御部は、前記接触センサーからの前記検出値が所定値以上の場合に、前記扉ハンドルの操作を判定して前記扉開放アシスト機構を動作させることを特徴とするトンネル消火栓装置。
【請求項6】
請求項1記載のトンネル消火栓装置に於いて、
前記センサーとして
、前記扉ハンドルに対する人の接触を検出する複数の接触センサーが設けられ、
前記制御部は、前記複数の接触センサーから検知出力が得られた場合に、前記扉ハンドルの操作を判定して前記扉開放アシスト機構を動作させることを特徴とするトンネル消火栓装置。
【請求項7】
請求項1記載のトンネル消火栓装置に於いて
、
前記制御部は
、前記前傾扉の開放を検知した場合に、前記扉開放アシスト機構を動作前の初期位置に復帰させることを特徴とするトンネル消火栓装置。
【請求項8】
筐体前面の扉開口に前傾扉が開閉自在に設けられたトンネル消火栓装置
であって、
前記前傾扉を閉鎖位置に保持すると共に前記扉ハンドルの操作により前記前傾扉の閉鎖保持を解除して開放させる扉ラッチ機構と、
前記扉ラッチ機構による前記前傾扉の閉鎖保持を解除すると共に前記前傾扉を押して開放させる扉開放アシスト機構と、
前記扉ハンドルの操作を検出するセンサーと、
前記センサーにより前記扉ハンドルの操作を検出した場合に、前記扉開放アシスト機構を動作して前記前傾扉を開放させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、点検が指示された場合に、前記扉ラッチ機構による前傾扉の閉鎖保持を解除しない所定範囲で前記扉開放アシスト機構を動作させる点検動作を行って
、前記扉ラッチ機構が正常に動作するか否か判定することを特徴とするトンネル消火栓装置。
【請求項9】
請求項8記載のトンネル消火栓装置に於いて、
前記扉ラッチ機構
は、前記
扉ハンドルの操作に連動する部位の回転を検出
して検出値を出力する回転センサー
を備え、
前記制御部は、前記扉開放アシスト機構による点検動作を行ったときの前記回転センサーからの前記検出値の変化から
、前記扉ラッチ機構が正常に動作するか否か判定することを特徴とするトンネル消火栓装置。
【請求項10】
請求項8記載のトンネル消火栓装置に於いて、
前記制御部は、前記扉開放アシスト機構による点検動作に先立ち又は点検動作後に、前記扉開放アシスト機構により前記扉ラッチ機構を反復動作させることを特徴とするトンネル消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉ハンドルの操作により前傾扉を開放し、ノズル付きのホースを引き出して消火するトンネル消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内に設置するトンネル非常用設備として消火栓装置が設けられており、消火栓装置は開放自在な前傾扉を備え、先端にノズルを装着したホースと消火栓弁を含むバルブ類を収納している。
【0003】
消火栓装置は、一般的に、トンネル側壁に沿って例えば50メートル間隔でトンネル壁面に埋込み設置され、火災時に通行中の道路利用者を主な操作者として想定し、トンネル内で発生する比較的小規模の火災や初期段階での火災を消火するために設置されている。
【0004】
トンネル消火栓装置は道路トンネルにおいては、初期消火手段として極めて重要な設備であり、道路管理者は定期的に点検を行い、保守維持管理に努めている。
【0005】
しかしながら、道路供用後は、自動車が通行している中で点検を実施するなど、あるいは他の施設と合わせて実施する道路規制はまたは道路通行止めの際に点検を実施するなど、時間的制約、また安全上の規制など、維持管理には課題が多い。
【0006】
さらに、近年、都市型の長大トンネルが出現するにあたり、消火栓装置一台当りの点検時間と設置台数を掛け合わせた最低必要時間を考えると、連日の点検が必要となることもあり、点検の質の維持、向上を実現することは、さらに難しくなってきている。また、今後、社会的には少子高齢化が進むことが確実であり、技術の承継だけでなく、そもそも人員不足により、点検要員が確保できなくなるという問題の解決も喫緊の課題である。
【0007】
このような課題を解決する方法として、特許文献1に示すトンネル消火栓装置の点検システムが提案されている。この点検システムでは、消火栓弁に並列して電動弁を設けると共と、これに続く自動調圧弁装置の二次側に三方切替電動弁を設け、自動点検を行う場合には、遠隔操作により三方切替電動弁をホースへの給水側から排水側に切替えた後に消火栓弁に並列した電動弁を開放して消火用水を排水側に流し、ノズル付きホースから放水したと同等な放水試験を行い、自動調圧弁により正常な放水圧力が得られるか否か点検している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-120717号公報
【文献】特開2001-246007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の消火栓装置の自動点検は、放水機能に関わる点検を中心に行われているが、トンネル消火栓装置に起きる故障としては、扉ハンドルの操作により前傾扉のラッチを解除して開放させるための扉ラッチ機構の故障による作動不良も考えられる。
【0010】
トンネル消火栓装置に設けられた前傾扉は、扉ハンドルにより操作されるラッチ機構により前傾扉を筐体前面の扉開口を閉鎖する位置に保持されており、扉ラッチ機構は扉ハンドルの動きをリンク機構によりラッチアームに伝えてアーム先端を筐体側のラッチ穴から外すことで、前傾扉を自重により扉下側を軸として前開きさせている。
【0011】
しかし、トンネル供用が開始されてから期間が経過すると、ラッチ機構の可動部に粉塵や湿気が進入して付着し、これにより錆等が発生して固着し、道路利用者が消火栓装置を使用するために扉ハンドルを引こうとしても固着して動かず、消火栓装置を使用することができない場合が想定される。
【0012】
本発明は、前傾扉の扉ラッチ機構に作動不良が起きても確実に開放操作ができ、また、扉ラッチ機構の自動点検による保守管理を可能とするトンネル消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(トンネル消火栓装置)
本発明は、筐体前面の扉開口に前傾扉が開閉自在に設けられたトンネル消火栓装であって、
前傾扉に設けられ、当該前傾扉を閉鎖位置に保持すると共に、扉ハンドルの操作により前傾扉の閉鎖保持を解除する扉ラッチ機構と、
前傾扉の外部に設けられ、扉ラッチ機構を押圧により作動させて前傾扉の閉鎖保持を解除すると共に、閉鎖状態の前傾扉の開放動作の開始を当該押圧の継続により補助する扉開放アシスト機構と、
扉ハンドルの操作を検出するセンサーと、
センサーにより扉ハンドルの操作を検出した場合に、扉開放アシスト機構を動作して前傾扉を開放動作させる制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
(扉ラッチ機構と扉アシスト機構その1)
扉ラッチ機構は、
筐体側のラッチ穴に係合する閉鎖位置とラッチ穴から離脱した閉鎖解除位置との間でスライド移動自在に設けられたラッチ部材と、
扉ハンドルの開操作により回動し、ラッチ部材を閉鎖位置から閉鎖解除位置にスライド移動させて前傾扉の閉鎖保持を解除させるリンクアームと、
を備え、
扉開放アシスト機構は、
扉ラッチ機構のリンクアームから延在された押圧レバーと、
押圧レバーを押圧してリンクアームを回動させるリニアアクチュエータと、
を備え、
制御部は、センサーによる扉ハンドルの操作を検出した場合に、リニアアクチュエータにより押圧レバーを押し込んでリンクアームを回動させることにより、ラッチ部材を閉鎖位置から閉鎖解除位置にスライド移動させて前傾扉の閉鎖保持を解除させる。
【0015】
(扉ラッチ機構と扉アシスト機構その2)
扉ラッチ機構は、
扉ハンドルの開操作により回動し、先端のラッチ爪を筐体側のラッチ穴に係合する閉鎖位置から閉鎖解除位置に回転移動させて前傾扉の閉鎖保持を解除させるラッチアームを備え、
扉開放アシスト機構は、
扉ラッチ機構のラッチアームから延在された押圧レバーと、
押圧レバーを押圧してラッチアームを回動させるリニアアクチュエータと、
を備え、
制御部は、センサーによる扉ハンドルのタッチ操作を検出した場合に、リニアアクチュエータにより押圧レバーを押し込んでラッチアームを回動させることにより、ラッチ爪を閉鎖位置から閉鎖解除位置に回動させて前傾扉の閉鎖保持を解除させる。
【0016】
(扉ラッチ機構と扉開放アシスト機構の切離し構造)
リニアアクチュエータは、前傾扉の閉鎖状態で押圧レバーから離れた位置に配置されている。
【0017】
(接触センサーによるハンドル操作の検知)
センサーとして、扉ハンドルに対する人の操作力に応じた検出値を出力する接触センサーが扉ハンドルに設けられ、
制御部は、接触センサーからの検出値が所定値以上の場合に、扉ハンドルの操作を判定して扉開放アシスト機構を動作させる。
【0018】
(複数の接触センサーによるハンドル操作の検知)
センサーとして、扉ハンドルに対する人の接触を検出する複数の接触センサーが設けられ、
制御部は、複数の接触センサーから検知出力が得られた場合に、扉ハンドルの操作を判定して扉開放アシスト機構を動作させる。
【0019】
(扉開放による扉開放アシスト機構の復旧)
制御部は、前傾扉の開放を検知した場合に、扉開放アシスト機構を動作前の初期位置に復帰させる。
【0020】
(扉ラッチ機構の自動点検)
制御部は、点検が指示された場合に、扉ラッチ機構による前傾扉の閉鎖保持が解除されない所定範囲で扉開放アシスト機構を動作させる点検動作を行って、扉ラッチ機構が正常に動作するか否か判定する。
【0021】
(回転センサーによる扉ラッチ機構の動作判定)
扉ラッチ機構は、扉ハンドルの操作に連動する部位の回転を検出して検出値を出力する回転センサーを備え、
制御部は、扉開放アシスト機構による点検動作を行ったときの回転センサーからの検出値から、扉ラッチ機構が正常に動作するか否か判定する。
【0022】
(点検機構による扉ラッチ機構の反復動作)
制御部は、扉開放アシスト機構による点検動作に先立ち又は点検動作後に、扉開放アシスト機構により扉ラッチ機構を反復動作させる。
【発明の効果】
【0023】
(基本的な効果)
本発明は、筐体前面の扉開口に前傾扉が開閉自在に設けられたトンネル消火栓装置であって、前傾扉に設けられ、当該前傾扉を閉鎖位置に保持すると共に、扉ハンドルの操作により前傾扉の閉鎖保持を解除する扉ラッチ機構と、前傾扉の外部に設けられ、扉ラッチ機構を押圧により作動させて前傾扉の閉鎖保持を解除すると共に、閉鎖状態の前傾扉の開放動作の開始を当該押圧の継続により補助する扉開放アシスト機構と、扉ハンドルの操作を検出するセンサーと、センサーにより扉ハンドルのタッチ操作を検出した場合に、扉開放アシスト機構を動作して前傾扉を開放動作させる制御部とを備えたため、道路利用者が前傾扉を開くために扉ハンドルに手をかけると、これがセンサーにより検出され、扉開放アシスト機構が動作して扉ラッチ機構による前傾扉の閉鎖保持が解除されると共に前傾扉が内側から押されることで開放され、人為的な扉ハンドルを引く操作を必要とすることなく前傾扉を自動的に開放させることができ、トンネルの供用期間が経過して、ラッチ機構の可動部に粉塵や湿気が進入して付着し、これにより錆等が発生して固着していたとしても、確実に前傾扉を開放させて消火栓装置を使用することができる。
【0024】
(扉ラッチ機構と扉アシスト機構その1の効果)
また、扉ラッチ機構は、筐体側のラッチ穴に係合する閉鎖位置とラッチ穴から離脱した閉鎖解除位置との間でスライド移動自在に設けられたラッチ部材と、扉ハンドルの開操作により回動し、ラッチ部材を閉鎖位置から閉鎖解除位置にスライド移動させて前傾扉の閉鎖保持を解除させるリンクアームと、を備え、扉開放アシスト機構は、扉ラッチ機構のリンクアームから延在された押圧レバーと、押圧レバーを押圧してリンクアームを回動させるリニアアクチュエータとを備え、制御部は、センサーによる扉ハンドルの操作を検出した場合に、リニアアクチュエータにより押圧レバーを押し込んでリンクアームを回動させることにより、ラッチ部材を閉鎖位置から閉鎖解除位置にスライド移動させて前傾扉の閉鎖保持を解除させるため、扉ラッチ機構は、ラッチ部材がスライドしリンクアームが軸により回転することで可動部を少なくしており、粉塵や湿気が進入して付着した場合の錆等の発生による可動部の固着が起きにくくなっている。また、扉開放アシスト機構を設けていても、扉ラッチ機構のハンドル操作による前傾扉の手動開放が可能であり、扉開放アシスト機構が故障に対しフェイルセーフが確保できる。
【0025】
また、扉開放アシスト機構は、扉ラッチ機構の可動部、即ちアームリンクの回転軸やラッチ部材のスライド部に錆などが発生して固着していても、リニアアクチュエータによる押圧レバーの押し込みで扉ラッチ機構のリンクアームをラッチ解除方向に回動させてラッチ部材を閉鎖解除位置に移動させることで、前傾扉の閉鎖保持を開放させることができる。
【0026】
また、扉ラッチ機構が正常に機能する場合には、人による操作力と扉開放アシスト機構の作動により扉ラッチ機構の閉鎖保持が解除され、続いて、前傾扉が押し出されることで、人による扉ハンドルの操作が非常に軽くなり、高い操作性が得られる。
【0027】
(扉ラッチ機構と扉アシスト機構その2の効果)
また、扉ラッチ機構は、扉ハンドルの開操作により回動し、先端のラッチ爪を筐体側のラッチ穴に係合する閉鎖位置から閉鎖解除位置に回転移動させて前傾扉の閉鎖保持を解除させるラッチアームを備え、扉開放アシスト機構は、扉ラッチ機構のラッチアームから延在された押圧レバーと、押圧レバーを押圧してラッチアームを回動させるリニアアクチュエータとを備え、制御部は、センサーによる扉ハンドルの操作を検出した場合に、リニアアクチュエータにより押圧レバーを押し込んでラッチアームを回動させることにより、ラッチ爪を閉鎖位置から閉鎖解除位置に回動させて前傾扉の閉鎖保持を解除させるため、扉ラッチ機構の可動部は、ラッチアームを軸により回転自在に設けられているだけで可動部が更に少なくなり、粉塵や湿気が進入して付着した場合の錆等の発生による可動部の固着が起きにくくなっている。また、扉開放アシスト機構を設けていても、扉ラッチ機構のハンドル操作による前傾扉の手動開放が可能であり、扉開放アシスト機構が故障に対しフェイルセーフが確保できる。
【0028】
また、扉開放アシスト機構は、扉ラッチ機構の可動部、即ちラッチアームの回転軸に錆などが発生して固着していても、リニアアクチュエータによる押圧レバーの押し込みで扉ラッチ機構のラッチアームをラッチ解除方向に回動させてラッチ部材を閉鎖解除位置に移動させることで、前傾扉の閉鎖保持を開放させることができる。
【0029】
また、扉ラッチ機構が正常に機能する場合には、人による操作力と扉開放アシスト機構の作動により扉ラッチ機構の閉鎖保持か解除され、続いて、前傾扉が押し出されることで、人による扉ハンドルの操作が非常に軽くなり、高い操作性が得られる。
【0030】
(扉ラッチ機構と扉開放アシスト機構の切離し構造)
また、リニアアクチュエータは、前傾扉の閉鎖状態で押圧レバーから離れた位置に配置されているため、扉開放アシスト機構は前傾扉の閉鎖状態では、扉ラッチ機構から機械的に切り離されており、扉開放アシスト機構が故障しても、道路利用者はこれに影響されることなく扉ハンドルを従来と同様に操作して前傾扉を開放することができ、フェイルセーフが確保できる。
【0031】
(接触センサーによるハンドル操作の検知による効果)
また、センサーとして、扉ハンドルに対する人の接触力に応じた検出値を出力する接触センサーが設けられ、制御部は、接触センサーからの検出値が所定値以上の場合に、扉ハンドルの操作を判定して扉開放アシスト機構を動作させるため、道路利用者による扉ハンドルの開操作を確実に検出して、扉開放アシスト機構の動作により前傾扉を開放させることができる。また、点検等の際に、扉ハンドルに手が触れても、扉ハンドルを引く力を加えない限り、扉開放アシスト機構により誤って前傾扉を開いてしまうことがない。
【0032】
(複数の接触センサーによるハンドル操作の検知による効果)
また、センサーとして、扉ハンドルに対する人の接触を検出する複数の接触センサーが設けられ、制御部は、少なくとも2つの接触センサーから検知出力が得られた場合に、扉ハンドルの操作を判定して扉開放アシスト機構を動作させるため、道路利用者が扉ハンドルに手を入れて手前に引こうとする開操作を、少なくとも2つの接触センサーにより確実に検出して扉開放アシスト機構の動作により前傾扉を開放させることができる。また、点検等の際に、扉ハンドルに手が触れても、扉を開くように扉ハンドルに手をかけない限り、扉開放アシスト機構により誤って前傾扉を開いてしまうことがない。
【0033】
(扉開放による扉開放アシスト機構の復旧による効果)
また、制御部は、前傾扉の開放を検知した場合に、扉開放アシスト機構を動作前の初期位置に復帰させるため、扉開放アシスト機構は、扉ラッチ機構を動作させて前傾扉を開放させると、開放された扉開口の中に、例えば、リニアアクチュエータの駆動部を前方に突出させた動作状態となるが、前傾扉が開放した後に初期位置に復帰させることで、ノズル付きホースの引き出しによる消火作業の妨げにならないようになる。
【0034】
(扉ラッチ機構の自動点検による効果)
また、制御部は、点検が指示された場合に、扉ラッチ機構による前傾扉の閉鎖保持が解除されない所定範囲で扉開放アシスト機構を動作させる点検動作を行って、扉ラッチ機構が正常に動作するか否か判定するため、消火栓装置の定期点検などで、例えば、防災受信盤からの指示で扉開放アシスト機構を扉ラッチ機構による前傾扉の閉鎖保持が完全に解除されない程度に動作させて、正常に動作するか否かの自動点検が可能となり、錆の発生等による扉ラッチ機構の固着等の状態を点検により知って適切に対応できる。
【0035】
また、扉開放アシスト機構による扉ラッチ機構の点検動作による動きで、扉ラッチ機構における可動部の固着を解除することもできる。
【0036】
(回転センサーによる扉ラッチ機構の動作判定の効果)
また、扉ラッチ機構は、扉ハンドルの操作に連動する部位の回転を検出して検出値を出力する回転センサーを備え、制御部は、扉開放アシスト機構による点検動作を行ったときの回転センサーからの検出値から、扉ラッチ機構が正常に動作するか否か判定するため、扉開放アシスト機構の点検動作による押圧レバーの動きを回転センサーで検出することにより、回転が検出されれば正常と判定し、回転が検出されなければ可動部の固着等による異常と判定して必要な対応をとることができる。
【0037】
(扉開放アシスト機構による扉ラッチ機構の反復動作による効果)
また、制御部は、扉開放アシスト機構による点検動作に先立ち又は点検動作後に、扉開放アシスト機構により扉ラッチ機構を反復動作させるため、扉ラッチ機構の可動部に錆などが発生して動き難くなっていても、点検動作に加え、扉ラッチ機構を閉鎖位置と閉鎖解除位置との間で往復動作させることで、可動部の動きを回復させ、次の点検までの間、扉ハンドルの操作により前傾扉の開放が確実にできることが保証可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図2】消火栓装置の前傾扉を開いた状態における平面図
【
図3】消火栓装置の前傾扉を開いた状態における側面図
【
図4】前傾扉の扉ラッチ機構と扉開放アシスト機構の実施形態を示した説明図
【
図5】扉ハンドルを取り出して接触センサーの配置を示した説明図
【
図6】扉開放アシスト機構による扉ラッチ機構の閉鎖保持の解除動作を示した説明図
【
図7】扉開放アシスト機構の押し出しによる前傾扉の開放を示した説明図
【
図8】扉開放アシスト機構の制御系統を示したブロック図
【
図9】前傾扉の扉開放アシスト制御を示したフローチャート
【
図10】前傾扉の扉ラッチ機構と扉開放アシスト機構の他の実施形態を示した説明図
【
図11】
図10の扉開放アシスト機構による扉ラッチ機構の閉鎖保持の解除動作を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0039】
[消火栓装置の概要]
図1は消火栓装置の正面図、
図2は消火栓装置の前傾扉を開いた状態における平面図、
図3は消火栓装置の前傾扉を開いた状態における側面図である。
【0040】
図1乃至
図3に示すように、消火栓装置10は、装置本体(筐体)12の前面右側の扉開口11に、のとして機能する前傾扉14と保守扉15が設けられており、その内部がホース収納空間及びバルブ類収納空間となっている。
【0041】
前傾扉14は前倒し式の開閉扉であり、扉下側のヒンジ
25を中心に上側にある扉ハンドル16に手を入れて手前に引くことにより、
図3に示すように、前傾扉14を前方下側に開放することができる。
【0042】
前傾扉14の上には、上側のヒンジを中心に上向きに開閉する保守扉15が設けられており、点検時に前傾扉14を開いて上方向に持ち上げることで開くことができる。
【0043】
装置本体12の左側扉開口に設けられた消火器扉26の右側には通報装置扉18が設けられ、ここに押釦通報装置(発信機)20、赤色表示灯22が設けられている。押釦通報装置20は、透明な保護板の背後に押釦スイッチが配置されており、保護板を押し込むことで押釦スイッチがオンし、監視センターの防災受信盤に火災通報信号を送信して火災警報を出力させる。
【0044】
赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、押釦通報装置20を押して火災通報信号が監視センターの防災受信盤に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が防災受信盤から送られて、赤色表示灯22が点滅される。また、応答ランプ24が点灯する。
【0045】
通報装置扉18の左側には消火器扉26が設けられ、内部に2本の消火器28が収納されている。
【0046】
装置本体12の前傾扉14の背後に形成されたホース収納空間には放水ホース38が内巻きして収納され、放水ホース38の先端には消火栓ノズル40が装着され、消火栓ノズル40は前傾扉14の裏面に配置されたノズルホルダー42に着脱自在に保持されている。
【0047】
ホース収納空間の右側に配置したバルブ類収納空間には、ポンプ設備からの配管が接続される消火配管接続口30からホース接続口に至る配管系統に、給水弁32、消火栓弁を含む放水バルブ系統が設けられている。
【0048】
消火栓弁に対しては前傾扉14の裏側に配置された消火栓弁開閉レバー36が設けられ、消火栓弁開閉レバー36を操作すると、平行リンクワイヤー機構を介して消火栓弁の開閉操作が行われる。
【0049】
また、
図3に示すように、装置本体12内には、前傾扉14の開閉を検出するリミットスイッチ等を用いた扉開閉センサー44が設けられている。
【0050】
[前傾扉の扉ラッチ機構と扉開放アシスト機構]
図4は前傾扉の扉ラッチ機構と扉開放アシスト機構の実施形態を示した説明図である。
【0051】
(扉ラッチ機構)
図4に示すように、前傾扉14の扉ラッチ機構は、扉ハンドル
16、軸45、リンクアーム48、ラッチ爪52を備えたラッチ部材50、固定プレート53に形成されたラッチ穴54で構成される。
【0052】
扉ハンドル16は前面開口にハンドルカバー16aが設けられたハンドルケース16bに収納されており、扉ハンドル16の背後に一体に形成されたリンクアーム48の付け根側の軸45により回動自在に設けられている。
【0053】
ハンドルケース16bの背後には縦方向にスライド穴47が形成され、スライド穴47の中にリンクアーム48が上下方向に移動自在に収納され、スライド穴47の下部にはスプリング49が組み込まれ、ラッチ部材50を上方に付勢している。
【0054】
ラッチ部材508はその途中にリンク穴46が形成されており、リンク穴46にリンクアーム48が通されている。ラッチ部材50の上端にはラッチ爪52が形成され、ラッチ爪52は扉枠部材12a側に固定された固定プレート53に形成されたラッチ穴54に下側から係合され、前傾扉14を扉開口11に閉じてゴムブッシュ70に当たる閉鎖位置に保持している。
【0055】
(扉開放アシスト機構)
扉ラッチ機構に対しては扉開放アシスト機構が設けられる。扉開放アシスト機構は、ネジシャフト58を進退させる直動モータ56を備えたリニアアクチュエータ55、ネジシャフト58の先端に設けられたプランジャー60,リンクアーム48から延在されて下向きに配置された押圧レバー62、回転センサー64及び接触センサ―72で構成される。
【0056】
リニアアクチュエータ55の直動モータ56はボルト66とナット68により扉枠部材12aに固定されている。直動モータ56は例えばステッピングモータであり、ネジ穴を備えたロータを回転させることで、ロータネジ穴に嵌め込まれたネジシャフト58を水平方向に前進又は後退させる。なお、リニアアクチュエータ55はプランジャー60を進退できるものであれば、適宜の構造が含まれる。
【0057】
また、リニアアクチュエータ55のプランジャー60は前傾扉14が閉鎖保持された状態で押圧レバー62から離れた初期位置に配置されており、これにより扉ラッチ機構と扉開放アシスト機構は通常状態では機械的に分離されており、扉ハンドル16の操作による前傾扉14の操作は扉開放アシスト機構を設けていても影響は受けない。
【0058】
押圧レバー62が一体に形成されたリンクアーム48に対してはリミットスイッチを用いた回転センサー64が設けられており、リニアアクチュエータ55のプランジャー60による押圧レバー62の回転を検出して回転検出信号を出力する。
【0059】
接触センサ―72は扉ハンドル16の裏側に配置され、道路利用者が扉ハンドル16を操作するためにハンドルケース16b内に下側から手を入れて引こうする場合の指の接触を検出する。接触センサ―72としては、指の接触により抵抗値の変化する感圧センサーや応力歪を検出する圧電センサー等が用いられる。
【0060】
図5は扉ハンドルを取り出して接触センサーの配置を示した説明図である。
図5(A)は扉ハンドル16の裏面に単一の接触センサー72を配置した場合である。この場合には、扉ハンドル16を操作しようとする道路利用者の接触力に応じた検出値を出力し、接触センサー72からの検出値が所定値以上の場合に、扉ハンドル16の操作を判定して扉開放アシスト機構を動作させる。
【0061】
図5(B)は扉ハンドル16の裏面に複数の接触センサ―72を配置した場合である。この場合には道路利用者が扉ハンドル16に手を入れて手前に引こうとするときの指の接触を、少なくとも2つの接触センサー72により検出したときに扉ハンドル16の操作を判定して扉開放アシスト機構を動作させる。
【0062】
また、接触センサー72に代えて、回転センサーが微少なリンクアームの動作を検出したときに扉開放アシスト機構を動作させるようにしても良い。扉開放アシスト機構を動作させるために扉ハンドル16の操作によるリンクアームの動きが必要となるが、簡単な構成とすることができる。
【0063】
[扉ラッチ機構の点検動作]
図6は扉開放アシスト機構による扉ラッチ機構の閉鎖保持の解除動作を示した説明図、
図7は扉開放アシスト機構の押し出しによる前傾扉の開放を示した説明図である。
【0064】
消火栓装置10の前傾扉14を開放させる場合、道路利用者は扉ハンドル16に手を入れて手前に引く操作を行う。このとき扉ハンドル16の裏側に設けられた接触センサ―72が検出信号を出力し、後の説明で明らかにする制御部がハンドル操作を判別し、リニアアクチュエータ55に設けた直動モータ56の駆動によりネジシャフト58を前進させ、これに伴いプランジャー60を押圧レバー62に向けて前進させる。
【0065】
プランジャー60の先端が押圧レバー62に当たると、押し込みを受けて押圧レバー62及びリンクレバー48が一体に軸45を中心に時計回りに回転し、リンクレバー48がリンク穴46に通しているラッチ部材50をスプリング49に抗して押し下げ、ラッチ部材50の先端のラッチ爪52によるラッチ穴54に対する係合が解除され、前傾扉14の閉鎖保持が解除される。
【0066】
また、リニアアクチュエータ55によるプランジャー55に移動量がL1に達すると、回動した押圧レバー62の下端が前傾扉14の内側に当接し、この状態でリニアアクチュエータ55は更にプランジャー
60を前進させる。このため
図7に示すように、前傾扉14はリニアアクチュエータ55によるプランジャー55の移動量がL2に増加することで、前方に押し出され、
図3に示したように下向きに開放される。
【0067】
前傾扉14が開放されると扉開閉センサ―44により前傾扉14の開放が検出され、制御部は
図7に示すように前方の押し出したプランジャー60を
図4に示した初期位置に戻すようにリニアアクチュエータ55を動作させ、プランジャー60の飛び出しでホース引き出し作業等の邪魔にならないようにする。
【0068】
[扉ハンドルによる開操作]
扉開放アシスト機構が故障して動作しない場合には、
図4に示した前傾扉14の閉鎖保持状態で扉ハンドル16の下に手をいれて手前に引く操作を行うと、軸45を中心にリンクアーム48が時計回りに回転してラッチ部材50を引き下げ、ラッチ爪52がラッチ穴54から抜け出すことで前傾扉14の閉鎖保持が解除され、閉鎖保持が解除された前傾扉14は扉下側を軸として回動し、
図3に示したように前傾扉14を開放させることができる。
【0069】
このような扉ハンドル16の操作による前傾扉14の開放は、扉開放アシスト機構が初期位置で機械的に分離されているため、即ち、前傾扉14側の押圧レバー62に対し装置本体12側のリニアアクチュエータ55のプランジャー60が初期位置で離れているため、扉開放アシスト機構に影響されることなく、扉ハンドル16の操作により前傾扉14を開放させることができる。
【0070】
[扉開放アシスト制御動作]
図8は扉開放アシスト機構に設けられた制御系統を示したブロック図である。
図8に示すように、消火栓装置に設けられた扉ラッチ機構をアシストする扉開放アシスト機構には制御部74が設けられる。制御部74は、コンピュータ回路を用いた制御回路部と有線通信を行う通信部を備える。通信部による通信は無線通信としても良い。
【0071】
制御部74には接触センサ―72、扉開閉センサ―44及び回転センサー64からの信号線が入力され、また、
図4に示したプランジャー60を進退させる直動モータ56を備えたリニアクチュエータ55に対し信号線が出力される。また、制御部74に設けられた通信部からトンネルの監視室等に設置された防災受信盤に対し通信線が接続されている。
【0072】
制御部74は、接触センサー72により扉ハンドル16のタッチ操作を検出した場合に、扉開放アシスト機構のリニアアクチュエータ55を動作して前傾扉14を開放させる制御を行う。
【0073】
また、制御部74は、防災受信盤からの点検指示信号が受信された場合に、扉ラッチ機構による前傾扉14の閉鎖保持を解除しない所定範囲で扉開放アシスト機構を動作させる点検動作を行い、扉ラッチ機構が正常に動作するか否か判定する点検動作を行う。
【0074】
図9は前傾扉の扉開放アシスト制御を示したタイムチャートであり、
図8に示した制御部74による制御動作となる。
【0075】
図9に示すように、制御部74はステップS1で接触センサー72の検出出力ありを判別するとステップS2に進み、ここで
図5(A)に示したように扉ハンドル16の裏側に単一の接触センサ―72が設けられていた場合を例にとると、接触センサ―72の検出値が所定の閾値以上であることを判別した場合に、扉ハンドル16の操作を認識してステップS3に進み、リニアアクチュエータ55によりプランジャー60を前進させる開放駆動を行う。
【0076】
なお、
図5(B)に示したように、扉ハンドル16の裏側に複数の接触センサ-72が設けられた場合には、制御部74はステップS2で2以上の接触センサ-72からの検出出力が得られた場合に扉ハンドル16の操作を認識してステップS3に進むことになる。
【0077】
ステップS3でリニアアクチュエータ55の開放駆動を開始した制御部74は、ステップS4で扉開閉センサ―44による前傾扉14の開放検出を判別するとステップS5に進み、リニアアクチュエータ55を押圧レバー62からプランジャー60が離れた初期位置に復帰させる。
【0078】
続いて、制御部74は、ステップS6で防災受信盤からの点検指示信号の受信を判別するとステップS7に進み、リニアアクチュエータ55により扉ラッチ機構を前傾扉14の閉鎖保持が解除されない所定範囲でリニアアクチュエータ55を開放駆動させる点検動作を行う。
【0079】
例えば、リニアアクチュエータ55は、ラッチ爪52がラッチ穴54から外れない範囲でラッチ部材50を引き下げるように押圧レバー62を回動させるプランジャー60の移動量となるようにリニアアクチュエータ55を動作させる点検動作を行う。
【0080】
続いて制御部74は、ステップS8で点検動作に伴う回転センサー64の検出信号を読み込み、回転検出信号が得られて正常に動作したことをステップS9で判別するとステップS9に進み、扉ラッチ機構が正常に動作することを示す点検正常信号を防災受信盤に送信する。
【0081】
これに対し制御部74がステップS9で回転センサー64の検出信号から回転検出が判別されなかった場合は、扉ラッチ機構が錆などによりラッチ部材50や軸45が固着して動かないことを示す点検異常信号を防災受信盤に送信し、障害警報を出力させる。
【0082】
続いて制御部4はステップS10またはS11で点検結果の送信を行うとステップS12に進み、リニアアクチュエータ55を複数回往復移動させて扉ラッチ機構を反復動作させ、扉ラッチ機構の軸45を往復回転させると共にラッチ部材50をスライド移動させて動き易くし、これにより次に点検制御を行うまでに軸45やラッチ部材50の固着が起きにくいようにする。なお、ステップS12のリニアアクチュエータ55の反復動作は、ステップS6で点検指示を判別して点検動作を行う前に行うようにしても良い。
【0083】
続いて、制御部
74は、リニアアクチュエータ55により、
図4に示すように、プランジャー60を押圧レバー62から離れて機械的に分離された初期位置に復帰させ、ステップS1に戻る。
【0084】
回転センサー64は所定角度の回転を検出するものであっても、回転角度量を検出するものどちらを用いても良いが、回転角度量を検出するものが好適である。回転角度量を検出するものであれば、機器ごとの細かい角度調整が可能となり、開放しない程度に押圧レバー62を押すことが実施しやすくなる。
【0085】
[前傾扉の扉ラッチ機構と扉開放アシスト機構の他の実施形態]
図10は前傾扉の扉ラッチ機構と扉開放アシスト機構の他の実施形態を示した説明図、
図11は
図10の扉開放アシスト機構による扉ラッチ機構の閉鎖保持の解除動作を示した説明図である。
【0086】
(扉ラッチ機構)
図10に示すように、本実施形態の扉ラッチ機構は、扉ハンドル
16、軸45、ラッチ爪78を備えたラッチアーム76、固定プレート53に形成されたラッチ穴80で構成される。
【0087】
ラッチアーム76は扉ハンドル16の背後から延在され、上方に屈曲された先端にラッチ爪78が形成されており、ラッチアーム76の付け根側の軸45により回動自在に設けられ、軸45に設けられた図示しないバネにより閉鎖位置に保持されている。
【0088】
本実施形態の扉ラッチ機構は、可動部がラッチアーム76の軸45による回転部分のみであり、
図4の扉ラッチ機構に比べ可動部が少ないことから、粉塵や湿気が進入して付着し、錆等が発生して固着しにくい構造としている。
【0089】
(扉開放アシスト機構)
扉ラッチ機構に対しては扉開放アシスト機構が設けられる。本実施形態の扉開放アシスト機構は、ネジシャフト58を進退させる直動モータ56を備えたリニアアクチュエータ55、ネジシャフト58の先端に設けられたプランジャー60,ラッチアーム76から延在されて下向きに配置された押圧レバー82、回転センサー64及び接触センサー72で構成される。
【0090】
本実施形態の扉開放アシスト機構は、ラッチアーム76と一体に設けられた押圧レバー82以外は、
図4に示した扉開放アシスト機構と同じになることから、同一符号を付してその説明は省略する。
【0091】
(扉ラッチ機構のアシスト動作)
図8に示した制御部74は接触センサー72の検出出力により扉ハンドル16の操作を判別すると、
図11に示すように、リニアアクチュエータ55によりプランジャー60を前進させ、押圧レバー82の押し込みによりラッチレバー76を時計回りに回転し、ラッチ爪78をラッチ穴80から抜いて前傾扉14の閉鎖保持を解除する。
【0092】
続いて制御部74はリニアアクチュエータ55の駆動によりプランジャー60を更に前進させ、閉鎖保持が解除された前傾扉14を押し出して開放させ、扉開閉センサー44により前傾扉14の開放が検出されると、リニアアクチュエータ55を押圧レバー62からプランジャー60が離れた初期位置に復帰させる。
【0093】
(点検制御)
制御部74は、防災受信盤からの点検指示信号を受信すると、リニアアクチュエータ55により扉ラッチ機構を前傾扉14の閉鎖保持が解除されない所定範囲で開放駆動させる点検動作を行う。
【0094】
例えば、リニアアクチュエータ55は、ラッチ爪78がラッチ穴80から外れず、且つ回転センサー64がオンする範囲でラッチアーム76を押圧レバー82により回動させるプランジャー60の移動量となるようにリニアアクチュエータ55を動作させる点検動作を行う。この点検動作により、制御部74は、回転センサー64の検出信号から回転が判別された場合は点検正常信号を防災受信盤に送信し、回転センサー64の検出信号から回転が判別されなかった場合は、点検異常信号を防災受信盤に送信し、障害警報を出力させる。
【0095】
また、制御部74は点検動作が終了すると、リニアアクチュエータ55を複数回往復移動させて扉ラッチ機構を反復動作させ、ラッチアーム76を軸45に対し往復回転させて動き易くし、これにより次に点検制御を行うまでに軸45の固着が起きにくいようにする。
【0096】
最終的に、制御部
74は、リニアアクチュエータ55により、
図10に示すように、プランジャー60を押圧レバー62から離れて機械的に分離された初期位置に復帰させる。
【0097】
[本発明の変形例]
(点検動作の検出)
上記の実施形態は、扉開放アシスト機構により点検動作された扉ラッチ機構の動きを、押圧レバー62,82の回転を検出する回転センサー64で行っているが、ラッチ爪52,78が係合するラッチ穴54,80の開口部に歪センサー等の応力センサーを設け、扉開放アシスト機構の点検動作による扉ラッチ機構の動きで、例えばラッチ穴54に係合しているラッチ爪52により加わる応力を応力センサーで検出するようにし、応力検出値が低下すれば点検正常と判定し、応力検出値が変化しなければ点検異常と判定して必要な対応をとるようにしても良い。
【0098】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0099】
10:消火栓装置
11:扉開口
12:装置本体
14:前傾扉
15:保守扉
16:扉ハンドル
16a:ハンドルカバー
16b:ハンドルケース
18:通報装置扉
20:押釦通報装置
22:赤色表示灯
24:応答ランプ
25:ヒンジ
26:消火器扉
28:消火器
30:消火配管接続口
32:給水弁
36:消火栓弁開閉レバー
38:ホース
40:消火栓ノズル
42:ノズルホルダー
44:扉開閉センサー
45:軸
46:リンク穴
48:リンクアーム
50:ラッチ部材
52,78:ラッチ爪
53:固定プレート
54,80:ラッチ穴
55:リニアアクチュエータ
56:直動モータ
58:ネジシャフト
60:プランジャー
62,82:押圧レバー
64:回転センサー
70:ゴムブッシュ
72:接触センサー
74:制御部
76:ラッチアーム