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特許7194576水抜き暗渠のスリット化方法及びその水抜き暗渠を有する砂防堰堤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】水抜き暗渠のスリット化方法及びその水抜き暗渠を有する砂防堰堤
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018232288
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020094377
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503008217
【氏名又は名称】一般財団法人砂防フロンティア整備推進機構
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】亀江 幸二
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-019270(JP,A)
【文献】特開2015-055076(JP,A)
【文献】特開2005-290714(JP,A)
【文献】実開昭56-016634(JP,U)
【文献】特開2002-121728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堤体110の上流側から下流側まで貫通するように設けられた水抜き暗渠120を鋼材140iでスリット化する水抜き暗渠のスリット化方法であって、
前記堤体110の前面FSからの前記水抜き暗渠120の上面における離隔Sepに基づいて決定した前記前面FSにおける鋼材切削孔埋込入口位置IPiからボーリング機材によって、所定角度で前記水抜き暗渠120の下面の所定深さまで前記鋼材140iを埋込むための複数の鋼材切削孔130iを削孔により空けて、
これらの鋼材切削孔130iに、前記鋼材140iを各々挿入して前記水抜き暗渠120をスリット化する水抜き暗渠のスリット化方法。
【請求項2】
前記鋼材切削孔130i内に前記鋼材140iを挿入した後に、前記鋼材切削孔130i内をコンクリート材でコーティングする請求項1記載の水抜き暗渠のスリット化方法。
【請求項3】
前記離隔Sepは、
前記水抜き暗渠120の上面からの前記鋼材140iの埋込長Lと、前記水抜き暗渠120の径rに応じた鋼材140iに対する礫の水抜き暗渠120内の速度に基づく許容せん断応力度τaと、鋼材140iの径と、前記鋼材140iに作用する堆砂圧と静水圧との加算値である水平力PHと、前記許容せん断応力度τaに抵抗させるための前記堤体110の前面FSと前記鋼材140iとの区間である有効縁端H´と、礫径に基づいていることを特徴とする請求項1記載の水抜き暗渠のスリット化方法。
【請求項4】
前記鋼材切削孔埋込入口位置IPiは、
前記水抜き暗渠120の中心軸ZLを通り、かつ水抜き暗渠120の上縁を通る水抜き暗渠上縁水平線TPkLから離隔Sep以上の所定距離をとる前記水抜き暗渠120に対向する位置にされていることを特徴とする請求項1記載の水抜き暗渠のスリット化方法。
【請求項5】
前記鋼材140iの間隔は、
前記鋼材140iの径と、礫径とに基づく間隔にしてスリットを形成していることを特徴とすう請求項1記載の水抜き暗渠のスリット化方法。
【請求項6】
堤体110の上流側から下流側まで貫通するように設けられた水抜き暗渠120を堤体110に備えた砂防堰堤であって、
前記堤体110の前面FSからの前記水抜き暗渠120の上面における離隔Sepに基づいて決定した前記前面FSにおける鋼材切削孔埋込入口位置IPiから所定角度で、前記水抜き暗渠120の下面の所定深さまで鋼材140iを埋込むための複数の鋼材切削孔130iが削孔により空けられて、
これらの鋼材切削孔130iに、前記鋼材140iが各々挿入されて前記水抜き暗渠120内がスリット構造にされた砂防堰堤。
【請求項7】
前記鋼材切削孔130iは、
前記鋼材140iを挿入した後に、鋼材切削孔130i内がコンクリート材でコーティングされていることを特徴とする請求項6記載の砂防堰堤。
【請求項8】
前記離隔Sepは、
前記水抜き暗渠120の上面からの前記鋼材140iの埋込長Lと、前記水抜き暗渠120の径rに応じた鋼材140iに対する礫の水抜き暗渠120内の速度に基づく許容せん断応力度τaと、鋼材140iの径と、前記鋼材140iに作用する堆砂圧と静水圧との加算値である水平力PHと、前記許容せん断応力度τaに抵抗させるための前記堤体110の前面FSと前記鋼材140iとの区間である有効縁端H´と、礫径に基づいており、
前記鋼材切削孔埋込入口位置IPiは、
前記水抜き暗渠120の中心軸ZLを通り、かつ水抜き暗渠120の上縁を通る水抜き暗渠上縁水平線TPkLから離隔Sep以上の所定距離をとる前記水抜き暗渠120に対向する位置にされていることを特徴とする請求項6記載の砂防堰堤。
【請求項9】
前記鋼材140iの間隔は、
前記鋼材140iの径と、礫径とに基づく間隔にされてスリットを形成していることを特徴とする請求項6記載の砂防堰堤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水抜き暗渠のスリット化方法及びその水抜き暗渠を有する砂防堰堤に関する。
【背景技術】
【0002】
砂防堰堤は、下流への土石流の被害を防止するために設置される。この砂防堰堤は、水抜き暗渠を設けるのが一般的である。
【0003】
しかし、水抜き暗渠からは土砂が噴出して、下流に被害を及ぼすことがある。このため、例えば、水抜き暗渠に蓋を施し、水抜き暗渠からの土砂流出等を抑制する方法又は水抜き暗渠へコンクリート材を充填する等の水抜き暗渠を閉塞する方法が実施されている。
【0004】
しかし、水抜き暗渠が完全閉塞してしまうと、未対策の水抜き暗渠、前庭保護工、周辺地盤にかかる水圧が上昇し、新たな土砂流出やパイピング、地盤変状が生じる恐れがある。また、完全閉塞により堆砂敷きが湛水し、水質悪化や悪臭の要因となる可能性がある。
【0005】
このため、例えば、特許文献1は、砂防堰堤に設けられた排水孔の出口に、柱材を間隔をあけて堤体に溶接で貼り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-179695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は、堰体の排水孔(水抜き暗渠)の出口に、「小礫や土砂による目詰まりや閉塞を防止する装置(以下、閉鎖板という)」の端をアンカーボルトで固定した場合に、アンカーボルトが堤体から抜けないような工夫を施しているが、小礫や土砂、土石が衝突する際の衝撃力によってはアンカーボルトが引き抜かれてしまう。
【0008】
結果として、堰体の排水孔(水抜き暗渠)の出口に取り付けられた閉鎖板が外れて、下流側に被害を及ぼすことになる。
【0009】
また、水抜き暗渠の出口を鉄板等で塞いでしまう場合もある。水抜き暗渠の出口を塞いだ場合は、水抜き暗渠による水圧の低減効果がなくなり、水抜き暗渠閉塞に伴う機能の損失について懸念がある。
【0010】
本発明は以上の課題を解決するためになされたもので、閉鎖板を使用しないで、水抜き暗渠内の小礫や土砂、土石を押さえることができる水抜き暗渠のスリット化方法及びその水抜き暗渠を有する砂防堰堤を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る水抜き暗渠120のスリット化方法は、堤体110の水抜き暗渠120を鋼材140iでスリット化する水抜き暗渠のスリット化方法であって、
前記堤体110の前面FSからの前記水抜き暗渠120の上面における離隔Sepに基づいて決定した前記前面FSにおける鋼材切削孔埋込入口位置IPiからボーリング機材によって、所定角度で前記水抜き暗渠120の下面の所定深さまで前記鋼材140iを埋込むための複数の鋼材切削孔130iを空けて、
これらの鋼材切削孔130iに、前記鋼材140iを各々挿入して前記水抜き暗渠120をスリット化することを要旨とする。
【0012】
また、本発明に係る砂防堰堤は、水抜き暗渠120を堤体110に備えた砂防堰堤であって、
前記堤体110の前面FSからの前記水抜き暗渠120の上面における離隔Sepに基づいて決定した前記前面FSにおける鋼材切削孔埋込入口位置IPiから所定角度で、前記水抜き暗渠120の下面の所定深さまで鋼材140iを埋込むための複数の鋼材切削孔130iが空けられて、
これらの鋼材切削孔130iに、前記鋼材140iが各々挿入されて前記水抜き暗渠120内がスリット構造にされていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、鋼材140iから伝達される水平荷重に対して、コンクリートが破壊されない最低必要な離隔Sepを確保する堤体110の前面FSの鋼材切削孔埋込入口位置IPi付近から斜めに鋼材切削孔130iを空けていくことになるので、ボーリング時間を短縮できるので工事費をおさえることができる。
【0014】
また、水抜き暗渠120内の土砂、小石等によって鋼材140i(例えば、140b、140a、140c)が押されたとしても堤体110が破損することがない。
【0015】
さらに、水抜き暗渠120内には、所定間隔で鋼材140i(例えば、140b、140a、140c)が貫通して複数のスリットSRが設けられるので、土砂が複数の鋼材140i(例えば、140b、140a、140c)によってせき止められると共に、水が複数のスリットSRを介して下流に流れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態の砂防堰堤の断面図である。
図2】水抜き暗渠120を下流側(A矢視)から見た場合の正面図である。
図3】水抜き暗渠120の堤体110の前面FS付近の詳細断面図である。
図4】離隔Sepを得るパラメータの説明図である。
図5】埋込長L(mm)と有効縁端H´(mm)との説明図である。
図6】実施の形態2の砂防堰堤の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に示す本実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想(構造、配置)は、下記のものに特定するものではない。
【0018】
本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。図面は模式的なものであり、装置やシステムの構成等は現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0019】
本実施の形態では、水抜き暗渠120と堤体110とを総称して砂防堰堤100と称する。
【0020】
図1は本実施の形態の砂防堰堤の断面図である。図1に示す砂防堰堤100は、ボーリング機材(図示せず)により、水抜き暗渠120の上側となる堤体110の前面FSの後述する鋼材切削孔埋込入口位置IPiから複数の切削孔(図示せず)を、概ね45度(所定角度ともいう)の角度θで直線状に水抜き暗渠120の下面の下の所定深さまで設け、これらの切削孔(以下、鋼材切削孔130iという:図示せず)に鋼材140iを挿入することで、水抜き暗渠120内に複数のスリットSR(図示せず)を形成するスリット化方法による砂防堰堤100である。
【0021】
なお、本実施の形態では水抜き暗渠120は、堤体110に複数設けられるが1個として説明する。また、図1においては、鋼材140iは前面FSから水抜き暗渠120の下面以下まで、挿入されている例としている。なお、iは複数を意味する。
【0022】
例えば、水抜き暗渠120内は、複数のスリットSR(図示せず)を形成するための鋼材140iが数本斜めに通過するように設けられているので、英文字の「i」を付して説明する。
【0023】
前述の水抜き暗渠120を設ける理由は、堆砂Se後の浸透水の抜き水圧を減ずること、流出土砂の調節のため等である。図1においては、堆砂Seを斜線で示す。
【0024】
また、図1は側面が台形形状の砂防堰堤100としている。この砂防堰堤100は、高さが10m~15m、上辺が3m、下辺が8m、横幅が25m程度を一例としている。
【0025】
図2は水抜き暗渠120を下流側(A矢視)から見た場合の正面図である。図3は水抜き暗渠120の堤体110の前面FS付近の詳細断面図である。
【0026】
但し、図2及び図3においては、鋼材140iは鋼材切削孔130iより長さが短いとする。水抜き暗渠120は、図2に示すように、例えば直径rが1mの円柱を一例とする。なお、水抜き暗渠120は1辺が1mの四角柱であってもよい。
【0027】
以下に各部の名称について図2を用いて説明する。但し、鋼材切削孔130iは3本として説明する。
【0028】
図2に示すように、鋼材切削孔埋込入口位置IPi(例えば、IPa、IPb、IPc)は、中央鋼材切削孔埋込入口位置IPbと、左側鋼材切削孔埋込入口位置IPaと、右側鋼材切削孔埋込入口位置IPcとよりなる。
【0029】
また、図2に示すように、鋼材切削孔130i(例えば、130a、130b、130c)は、中央鋼材切削孔130bと、左側鋼材切削孔130aと、右側鋼材切削孔130cとよりなる。
【0030】
切削孔鋼材挿入口130IPi(例えば、130IPa、130IPb、130IPc)は、例えば25cm間隔に設けられており、中央の切削孔鋼材挿入口130IPiを切削孔鋼材挿入中央口130IPbと称し、左側を切削孔鋼材挿入左側口130IPaと称し、右側を切削孔鋼材挿入右側口130IPcと称する。
【0031】
この切削孔鋼材挿入口130IPi(例えば、130IPa、130IPb、130IPc)の中心を通る水平線を水抜き暗渠水平ラインXLと称する。この水抜き暗渠水平ラインXLの水抜き暗渠120に対向する範囲に切削孔鋼材挿入口130IPi(例えば、130IPb、130IPa、130IPc)が設けられている。
【0032】
また、切削孔鋼材挿入中央口130IPbを通る垂線を切削孔鋼材挿入中央口通過垂線YLbと称し、切削孔鋼材挿入左側口130IPaの中心を通る垂線を切削孔鋼材挿入左側口通過垂線YLaと称し、切削孔鋼材挿入右側口130IPcの中心を通る垂線を切削孔鋼材挿入右側口通過垂線YLcと称し、これらを総称して切削孔鋼材挿入口垂線YLiと称する。
【0033】
また、水抜き暗渠120の中心Pbを通る水平線を水抜き暗渠中心通過水平線Xoと称する。
【0034】
また、切削孔鋼材挿入口垂線YLiと水抜き暗渠120の上面(以下、水抜き暗渠上面TPという)とが交わる位置を切削孔鋼材挿入口直下暗渠上面位置ki(例えば、ka、kb、kc)と称する。
【0035】
切削孔鋼材挿入口直下暗渠上面位置kiは、切削孔鋼材挿入中央口通過垂線YLbと水抜き暗渠上面TPとが交わる切削孔鋼材中央口直下暗渠上面位置kbと、切削孔鋼材挿入左側口通過垂線YLaと水抜き暗渠上面TPとが交わる切削孔鋼材左側口直下暗渠上面位置kaと、切削孔鋼材挿入右側口通過垂線YLcと水抜き暗渠上面TPとが交わる切削孔鋼材左側口直下暗渠上面位置kcとよりなる。
【0036】
また、切削孔鋼材挿入口直下暗渠上面位置ki(例えば、ka、kb、kc)を通る水平線を水抜き暗渠上縁水平線TPkLと称する。
【0037】
水抜き暗渠上面TPと、切削孔鋼材挿入口130IPi(例えば、130IPa、130IPb、130IPc)の中心を水抜き暗渠水平ラインXLとの間の鋼材切削孔130iを水抜き暗渠上側切削孔130itと称する。
【0038】
また、水抜き暗渠上側切削孔130it(例えば、130at、130bt、130ct)は、中央を水抜き暗渠上側中央切削孔130btと称し、左側を水抜き暗渠上側左切削孔130atと称し、右側を水抜き暗渠上側右切削孔130ctと称する。
【0039】
そして、水抜き暗渠120の水抜き暗渠上面TPにおける、水抜き暗渠上側中央切削孔130btの出口を水抜き暗渠上側中央切削孔出口130bteと称し、水抜き暗渠上側左切削孔130atの出口を水抜き暗渠上側左切削孔出口130ateと称し、水抜き暗渠上側右切削孔130ctの出口を水抜き暗渠上側右切削孔出口130cteと称し、これらを総称して水抜き暗渠上側切削孔出口130iteと称する。
【0040】
一方、水抜き暗渠120の下面を水抜き暗渠下面BSと称する。そして、この水抜き暗渠下面BSと切削孔鋼材挿入口垂線YLiとが交わる位置を切削孔鋼材挿入口直下暗渠下面位置ki´(例えば、ka´、kb´、kc´)と称する。
【0041】
切削孔鋼材挿入口直下暗渠下面位置ki´は、切削孔鋼材挿入中央口通過垂線YLbと水抜き暗渠下面BSとが交わる切削孔鋼材中央口直下暗渠下面位置kb´と、切削孔鋼材挿入左側口通過垂線YLaと水抜き暗渠下面BSとが交わる切削孔鋼材左側口直下暗渠下面位置ka´と、切削孔鋼材挿入右側口通過垂線YLcと水抜き暗渠下面BSとが交わる切削孔鋼材右側口直下暗渠下面位置kc´とよりなる。
【0042】
また、水抜き暗渠下面BSより下方に空けられた鋼材切削孔130iを水抜き暗渠下側切削孔130iuと称する。
【0043】
この水抜き暗渠下側切削孔130iu(例えば、130au、130bu、130cu)の内で中央を水抜き暗渠下側中央切削孔130buと称し、左側を水抜き暗渠下側左切削孔130auと称し、右側を水抜き暗渠下側右切削孔130cuと称する。
【0044】
なお、鋼材切削孔130iは、水抜き暗渠上側切削孔130itと、水抜き暗渠120の部分と、水抜き暗渠下側切削孔130iuとを含むとする。
【0045】
また、鋼材140iは、中央のものを中央鋼材140bと称し、左側を左側鋼材140aと称し、右側を右側鋼材140cと称する。鋼材切削孔130iは、鋼材140iが例えば径が50mmの場合は、鋼材切削孔130iは径が60mmである。
【0046】
さらに、切削孔鋼材挿入中央口130IPbと水抜き暗渠上側中央切削孔出口130bteとの区間を切削孔挿入中央口暗渠上縁区間YLSbと称し、切削孔鋼材挿入左側口130IPaと水抜き暗渠上側左切削孔出口130ateとの区間を切削孔挿入左側口暗渠上縁区間YLSaと称し、切削孔鋼材挿入右側口130IPcと水抜き暗渠上側右切削孔出口130cteとの区間を切削孔挿入右側口暗渠上縁区間YLScと称し、これらを総称して切削孔挿入口暗渠上縁区間YLSiと称する。
【0047】
また、切削孔鋼材挿入口130IPi(例えば、130IPb、130IPa、130IPc)を通る水抜き暗渠水平ラインXLと、切削孔鋼材挿入口直下暗渠上面位置ki(例えば、ka、kb、kc)を通る水抜き暗渠上縁水平線TPkLとの区間を暗渠上埋込位置区間LNと称する。また、図2における「L」は鋼材140iの埋込長である。
【0048】
次に図3を用いて説明する。但し、図3においては、鋼材切削孔130i(例えば、130a、130b、130c)は、中央鋼材切削孔130bを一例として説明する。
【0049】
また、水抜き暗渠120は、図3に示すように、水抜き暗渠120の中心Pbを通る直線を中心軸ZLと称し、前面FSの切削孔鋼材挿入中央口130IPbから中心軸ZLに交わる切削孔鋼材挿入中央口通過垂線YLbにおける切削孔鋼材中央口直下暗渠上面位置kbと水抜き暗渠上側中央切削孔出口130bteとの区間を離隔Sepと称する。
【0050】
また、切削孔鋼材挿入中央口通過垂線YLbと水抜き暗渠上面TPとが交わる切削孔鋼材中央口直下暗渠上面位置kbを通り、かつ切削孔鋼材挿入中央口通過垂線YLbに対して直角で中心軸ZLに平行な直線を水抜き暗渠中央上縁線TbkLと称する。
【0051】
また、切削孔鋼材挿入中央口通過垂線YLbと水抜き暗渠下面BSとが交わる切削孔鋼材中央口直下暗渠下面位置kb´を通り、かつ切削孔鋼材挿入中央口通過垂線YLbに対して直角で中心軸ZLに平行な直線を水抜き暗渠中央下縁線UbkLと称する。
【0052】
次に、図3を用いて切削孔鋼材挿入中央口130IPbから中央鋼材切削孔130bを空けるために、離隔Sepを決定する理由について説明する。
【0053】
切削孔鋼材挿入中央口130IPbと、離隔Sepとは、中央鋼材140bの埋込長Lによって変化する。このため、中央鋼材140bから伝達される水平荷重に対して、コンクリートが破壊されないように十分な離隔Sepを確保する必要がある。
【0054】
また、中央鋼材140bに対する礫の衝撃力はその礫径、速度によって大きく変化するため、現場条件に基づいて適切に決定する必要がある。
【0055】
例えば、礫径が0.40m、速度14.0m/sにおいては、離隔Sepは図4に示す長さにする必要がある。
【0056】
図4においては、コンクリートの許容せん断応力度τaが0.562、鋼材の外径D(mm)が50、埋込長L(mm)が500、水平押抜きせん断力に抵抗するフーチングの縁端(以下、有効縁端H´(mm)という)が200、水抜き暗渠120の鋼材に作用する堆砂圧と静水圧との加算値である水平力PH(kN)が122.0、水平方向の押抜きせん断応力度τh(mm)が0.42の場合に、判定結果(τa≧τh)がOKであり、離隔Sep(mm)は700でよい。
【0057】
また、許容せん断応力度τaが0.562、鋼材の径D(mm)が50、埋込長L(mm)が1000、有効縁端H´(mm)が100、水平力PH(kN)が122.0、水平押抜せん断応力度τh(mm)が0.54の場合に、判定結果(τa≧τh)がOKであり、離隔Sep(mm)は1000でよい。
【0058】
前述の埋込長L(mm)、有効縁端H´(mm)について図5に示す。
【0059】
τa≧τhと、許容せん断応力度τaと、鋼材の杭径D(mm)と、埋込長L(mm)と、有効縁端H´(mm)と、水平力PH(kN)と、水平押抜せん断応力度τh(mm)とは、以下の関係にある。
【0060】
τa≧τh=PH/H´(D+2H´+2L)
なお、図3は例えば、鋼材の埋め込み角度を約45度で埋込長Lを1mとした場合の切削孔鋼材挿入口130IPiを示している。
【0061】
つまり、離隔Sepは、埋込長Lと有効縁端H´とを加算した長さであるので、埋込長L(1000mm)+有効縁端H´(100mm)を加算した1100mm以上(離隔Sep以上ともいう)あればよい。
【0062】
すなわち、鋼材切削孔埋込入口位置IPiの中央鋼材切削孔埋込入口位置IPb(例えば、切削孔鋼材挿入中央口130IPb)は、切削孔鋼材中央口直下暗渠上面位置kbを通る水抜き暗渠上縁水平線TPkLから1100mm以上の位置(例えば、余裕をとって1300mm)とする。
【0063】
つまり、水抜き暗渠水平ラインXLと、切削孔鋼材中央口直下暗渠上面位置kbを水平に通る水抜き暗渠上縁水平線TPkLと区間である暗渠上埋込位置区間LNの距離(所定距離ともいう)は、例えば45度の斜度で打ち込むとすると約1300mmである。
【0064】
具体的には、図2及び図3に示すように、堤体110の前面FSからの水抜き暗渠120の水抜き暗渠上面TPにおける水抜き暗渠中央上縁線TbkL上の離隔Sepを前述のようにして決定する。
【0065】
そして、この離隔Sepに基づいて、水抜き暗渠120の水抜き暗渠上面TPの切削孔鋼材中央口直下暗渠上面位置kbを通る水抜き暗渠上縁水平線TPkLからの暗渠上埋込位置区間LNの距離を決める。
【0066】
そして、暗渠上埋込位置区間LNとなる位置に、水抜き暗渠水平ラインXLを定めて、上記の中央鋼材切削孔埋込入口位置IPb(但し、IPaとIPcとについては説明を省略する)を決める。
【0067】
そして、この中央鋼材切削孔埋込入口位置IPbから水抜き暗渠120を約45度の角度θで抜けて中央鋼材切削孔130bが削孔されるように、ボーリング機材のビット位置を前面FSに定めて切削孔鋼材挿入中央口130IPbを空けて所定の長さの中央鋼材切削孔130bを削孔する。
【0068】
なお、他の左側鋼材切削孔130aと右側鋼材切削孔130cとにおいても同様な条件で切孔する。
【0069】
すなわち、図2に示すように、鋼材切削孔埋込入口位置IPi(例えば、IPa、IPb、IPc)に切削孔鋼材挿入口130IPi(例えば、130IPa、130IPb、130IPc)が約45度の角度θで空けられて、この切削孔鋼材挿入口130IPi(例えば、130IPa、130IPb、130IPc)から鋼材切削孔130i(例えば、130a、130b、130c)が水抜き暗渠120の下面の所定深さまで空けられる。
【0070】
そして、鋼材140i(例えば、140a、140b、140c)を切削孔鋼材挿入口130IPi(例えば、130IPa、130IPb、130IPc)から鋼材切削孔130i(例えば、130a、130b、130c)に埋め込む。
【0071】
従って、鋼材切削孔位置である鋼材切削孔埋込入口位置IPiは、鋼材140iから伝達される水平荷重に対して、コンクリートが破壊されない最低必要な離隔Sepを確保する鋼材切削孔位置付近から斜めに鋼材切削孔130iを空けていくことになるので、ボーリング時間を短縮できるので工事費をおさえることができる。
【0072】
また、水抜き暗渠120内の土砂、小石等によって鋼材140i(例えば、140b、140a、140c)が押されたとしても堤体110が破損することがない。
【0073】
さらに、水抜き暗渠120内には、所定間隔で鋼材140i(例えば、140b、140a、140c)が貫通して水抜き暗渠120内をスリット化(スリット構造)しているので、土砂が複数の鋼材140i(例えば、140b、140a、140c)によってせき止められると共に、水が複数のスリットSRを介して下流に流れる。
【0074】
<実施の形態2>
図6は実施の形態2の砂防堰堤の断面図である。図6に示すように、堤体110の上側には水抜き暗渠120が存在する場合がある。このような場合は、堤体110の上面から離隔Sepを決定して鋼材140iを打ち込んでも構わない。
【0075】
また、 鋼材140iの間隔は、透過部断面の水平純間隔は最大礫径の1.0倍~1.5倍程度とする。ただし、最大礫径)が水抜き暗渠120の幅の半分よりも大きい場合は、水抜き暗渠120の中央に鋼材を1本挿入することとする(暗渠に最低限1本は鋼材を挿入して暗渠からの土砂流出を確実に防止するため)。
【0076】
また、鋼材140iは、丸鋼が好ましく、かつ径が50mmの丸鋼に亜鉛メッキによる防錆を施すのが好ましい(ステンレス鋼管でも構わない)。
【0077】
なお、 鋼材140iの固定については、挿入した鋼材が鋼材の腐食や損傷等による更新を前提とする場合は、固定することなく鋼材切削孔130iに挿入した状態としておく。また、更新しない場合は、挿入後にコンクリート材で充填(コーティング)する。
【0078】
さらに、水抜き暗渠120の水抜き暗渠下面BSを削孔して水抜き暗渠下側切削孔130iu(例えば、130bu、130au、130cu)を設けた際に、削孔によりできた水抜き暗渠下側切削孔130iu(例えば、130bu、130au、130cu)に水抜き暗渠120内の堆積土砂が入らないようにするため、レーザー測距儀等で水抜き下流の端(前面FS)から堆積土砂までの距離を確認し、堆積土砂にボーリングがかからない位置を決定するのが好ましい。
【符号の説明】
【0079】
砂防堰堤100
堤体110
水抜き暗渠120
前面FS
鋼材切削孔埋込入口位置IPi
鋼材切削孔130i
鋼材140i
スリットSR
図1
図2
図3
図4
図5
図6