(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】コバエ防除用スプレー製品、及びコバエの発生を予防する方法
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20221215BHJP
A01N 25/06 20060101ALI20221215BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20221215BHJP
A01N 53/06 20060101ALI20221215BHJP
A01N 53/04 20060101ALI20221215BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A01M7/00 S
A01N25/06
A01P7/04
A01N53/06 110
A01N53/04 510
B05B9/04
(21)【出願番号】P 2018233161
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2017249251
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】田村 悠記子
(72)【発明者】
【氏名】原田 悠耶
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋子
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰史
(72)【発明者】
【氏名】引土 知幸
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-330264(JP,A)
【文献】特開2012-130295(JP,A)
【文献】特開2012-116774(JP,A)
【文献】特開2015-180196(JP,A)
【文献】特開2015-117242(JP,A)
【文献】特開2011-251922(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0335004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
A01N 25/06
A01P 7/04
A01N 53/06
A01N 53/04
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を封入する容器と、
前記容器から前記エアゾール剤を噴射する噴射ノズルと、
を備えたコバエ防除用スプレー製品であって、
前記エアゾール剤は、トランスフルトリン、プロフルトリン、及びメトフルトリンからなる群から選択される少なくとも一つのピレスロイド系殺虫成分を含有し、
前記噴射ノズルから噴射される噴射粒子の粒子径が、25℃、噴射距離15cmにおける体積積算分布での50%粒子径(D50)が10~45μmの範囲に存在するように構成されており、
噴射対象物において、コバエの発生を予防するためのコバエ防除用スプレー製品。
【請求項2】
前記容器に封入されるエアゾール剤において、前記薬液と前記噴射剤との配合比率が、9:91~50:50に調整されている請求項1に記載のコバエ防除用スプレー製品。
【請求項3】
前記噴射ノズルは、直径が0.2~1.0mmの噴射口を有する請求項1又は2に記載のコバエ防除用スプレー製品。
【請求項4】
前記ピレスロイド系殺虫成分を1.0~7.0w/v%含有する
請求項1~3の何れか一項に記載のコバエ防除用スプレー製品。
【請求項5】
廃棄物を入れる廃棄物容器においてコバエの発生を予防する方法であって、
前記廃棄物容器の内部に薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を噴射する噴射工程と、
前記廃棄物を前記廃棄物容器へ入れる投入工程と、
を包含
し、
前記エアゾール剤は、トランスフルトリン、プロフルトリン、及びメトフルトリンからなる群から選択される少なくとも一つのピレスロイド系殺虫成分を含有し、
前記噴射工程において、前記エアゾール剤を、25℃、噴射距離15cmにおける体積積算分布での50%粒子径(D50)が10~45μmの範囲に存在するように噴射する、コバエの発生を予防する方法。
【請求項6】
廃棄物を入れる廃棄物容器においてコバエの発生を予防する方法であって、
前記廃棄物に薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を噴射する噴射工程と、
前記廃棄物を前記廃棄物容器へ入れる投入工程と、
を包含
し、
前記エアゾール剤は、トランスフルトリン、プロフルトリン、及びメトフルトリンからなる群から選択される少なくとも一つのピレスロイド系殺虫成分を含有し、
前記噴射工程において、前記エアゾール剤を、25℃、噴射距離15cmにおける体積積算分布での50%粒子径(D50)が10~45μmの範囲に存在するように噴射する、コバエの発生を予防する方法。
【請求項7】
廃棄物を入れる廃棄物容器においてコバエの発生を予防する方法であって、
前記廃棄物容器の内部に前記廃棄物を入れる投入工程と、
前記廃棄物が入っている廃棄物容器の内部に薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を噴射する噴射工程と、
を包含
し、
前記エアゾール剤は、トランスフルトリン、プロフルトリン、及びメトフルトリンからなる群から選択される少なくとも一つのピレスロイド系殺虫成分を含有し、
前記噴射工程において、前記エアゾール剤を、25℃、噴射距離15cmにおける体積積算分布での50%粒子径(D50)が10~45μmの範囲に存在するように噴射する、コバエの発生を予防する方法。
【請求項8】
前記ピレスロイド系殺虫成分を1.0~7.0w/v%含有する
請求項5~7の何れか一項に記載のコバエの発生を予防する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を封入する容器と、容器からエアゾール剤を噴射する噴射ノズルとを備えたコバエ防除用スプレー製品、及びこれを用いたコバエの発生を予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガーデニングや昆虫飼育の流行、消費者の害虫防除意識の向上に伴い、コバエ類は屋内でよく見られる害虫として広く注目を集め、人に不快感を与えることから問題となっている。一般家庭で見かけるコバエの代表種として、生ゴミや食品まわり等で発生するショウジョウバエやノミバエ、屋内の観葉植物やベランダのプランターまわり等で発生するクロバネキノコバエ等があげられ、一般家庭での防除対象害虫としては蚊に次いで2番目に多い。そのため、操作が容易なスプレー製品を用いて、コバエ類を防除する要望が増加している。
【0003】
例えば、殺虫成分として天然ピレトリンを用いたコバエ防除用スプレー剤があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の製品は、屋内での使用を考慮して人畜に対する安全性の高い天然ピレトリンを用いており、コバエに対して速効的な防除効果を奏することができるものである。
【0004】
また、噴射力を2~15gf/15cmに設定したコバエ防除用エアゾール製品があった(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2の製品は、上記の噴射力に設定することで、コバエに噴霧した際に、噴霧の勢いでコバエを吹き飛ばすことなく効率よく虫体に薬液を付着させることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-251922号公報
【文献】特開2012-116774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2の製品は、屋外から飛来したコバエを直接的に殺虫することを目的としたものである。しかしながら、コバエ類は、孵化から10日~2週間程度で産卵が可能であり、台所等に設置された生ゴミ等の廃棄物を入れるゴミ箱(以下、「廃棄物容器」という。)が発生源となりやすいため、屋外から飛来したコバエを直接的に殺虫するだけでは、長期間にわたって防除することは困難である。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、コバエを長期間にわたって防除することができるコバエ防除用スプレー製品、及びコバエの発生を予防する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係るコバエ防除用スプレー製品の特徴構成は、
薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を封入する容器と、
前記容器から前記エアゾール剤を噴射する噴射ノズルと、
を備えたコバエ防除用スプレー製品であって、
噴射対象物において、コバエの発生を予防するために用いることにある。
【0009】
本構成のコバエ防除用スプレー製品によれば、噴射対象物において、コバエの発生を予防するため、操作が容易なスプレー製品を用いてコバエを長期間にわたって防除することができる。
【0010】
本発明に係るコバエ防除用スプレー製品において、
前記容器に封入されるエアゾール剤において、前記薬液と前記噴射剤との配合比率が、9:91~50:50に調整されていることが好ましい。
【0011】
本構成のコバエ防除用スプレー製品によれば、薬液と噴射剤との配合比率を上記の範囲に調整することによって、噴射対象物に付着しやすく、付着後は薬液の害虫防除成分の揮散を十分に抑制することができる大きさの噴射粒子が形成されるため、噴射粒子が付着した噴射対象物において、コバエの発生を長期間にわたって予防することができる。
【0012】
本発明に係るコバエ防除用スプレー製品において、
前記噴射ノズルは、直径が0.2~1.0mmの噴射口を有することが好ましい。
【0013】
本構成のコバエ防除用スプレー製品によれば、上記の範囲の直径の噴射口を有することによって、適切な噴射パターンが得られ、噴射対象物に付着させやすくなるため、噴射対象物において、コバエの発生を効果的に予防することができる。
【0014】
本発明に係るコバエ防除用スプレー製品において、
前記噴射ノズルから噴射される噴射粒子の粒子径が、25℃、噴射距離15cmにおける体積積算分布での50%粒子径(D50)が10~45μmの範囲に存在するように構成されていることが好ましい。
【0015】
本構成のコバエ防除用スプレー製品によれば、噴射粒子のD50粒子径が上記の範囲となるように構成されていることによって、生ゴミ等の廃棄物を入れた廃棄物容器を噴射対象物とした場合に、廃棄物容器の内側の表面だけではなく、嵩高く立体的に積み上がった廃棄物の隙間にも噴射粒子が拡散して付着するため、コバエの発生を効果的に予防することができる。
【0016】
本発明に係るコバエ防除用スプレー製品において、
前記エアゾール剤は、トランスフルトリン、プロフルトリン、及びメトフルトリンからなる群から選択される少なくとも一つのピレスロイド系殺虫成分を含有することが好ましい。
【0017】
本構成のコバエ防除用スプレー製品によれば、上記のピレスロイド系殺虫成分を使用することによって、常温でも殺虫成分が十分に揮散し、コバエの発生を効果的に予防することができる。
【0018】
本発明に係るコバエ防除用スプレー製品において、
前記ピレスロイド系殺虫成分を1.0~7.0w/v%含有することが好ましい。
【0019】
本構成のコバエ防除用スプレー製品によれば、ピレスロイド系殺虫成分を上記の範囲で含有することによって、少ない噴射量でもコバエの発生を予防することができる。
【0020】
上記課題を解決するための本発明に係るコバエの発生を予防する方法の特徴構成は、
廃棄物を入れる廃棄物容器においてコバエの発生を予防する方法であって、
前記廃棄物容器の内部に薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を噴射する噴射工程と、
前記廃棄物を前記廃棄物容器へ入れる投入工程と、
を包含することにある。
【0021】
本構成のコバエの発生を予防する方法によれば、廃棄物容器の内部に薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を噴射する噴射工程を実施することで、廃棄物容器の内部の表面に噴射粒子を付着させることができる。廃棄物を廃棄物容器へ入れた後に飛来したコバエは、廃棄物容器の内部の表面を徘徊することで、付着した噴射粒子に接触するため、薬液の害虫防除成分の効果によって、コバエが産卵することが抑制される。産卵されたとしても、その後の孵化が阻害されるか、或いは孵化後の幼虫が廃棄物容器の内部の表面を徘徊することで付着している噴射粒子に接触するため、その成育が抑制される。
【0022】
上記課題を解決するための本発明に係るコバエの発生を予防する方法の特徴構成は、
廃棄物を入れる廃棄物容器においてコバエの発生を予防する方法であって、
前記廃棄物に薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を噴射する噴射工程と、
前記廃棄物を前記廃棄物容器へ入れる投入工程と、
を包含することにある。
【0023】
本構成のコバエの発生を予防する方法によれば、廃棄物に薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を噴射する噴射工程を実施することで、廃棄物の表面や隙間に噴射粒子を付着させることができる。廃棄物を廃棄物容器へ入れた後に飛来したコバエは、廃棄物の表面を徘徊したり、廃棄物の隙間に入り込むことで、付着した噴射粒子に接触するため、薬液の害虫防除成分の効果によって、コバエが産卵することが抑制される。産卵されたとしても、その後の孵化が阻害されるか、或いは孵化後の幼虫が廃棄物の表面を徘徊したり、廃棄物の隙間に入り込むことで付着している噴射粒子に接触するため、その成育が抑制される。
【0024】
上記課題を解決するための本発明に係るコバエの発生を予防する方法の特徴構成は、
廃棄物を入れる廃棄物容器においてコバエの発生を予防する方法であって、
前記廃棄物容器の内部に前記廃棄物を入れる投入工程と、
前記廃棄物が入っている前記廃棄物容器の内部に薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を噴射する噴射工程と、
を包含することにある。
【0025】
本構成のコバエの発生を予防する方法によれば、廃棄物が入っている廃棄物容器の内部に薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を噴射する噴射工程を実施することで、廃棄物容器の内部の表面、及び廃棄物の表面や隙間に噴射粒子を付着させることができる。エアゾール剤の噴射後に飛来したコバエは、廃棄物容器の内部の表面や廃棄物の表面を徘徊したり、廃棄物の隙間に入り込むことで、付着した噴射粒子に接触するため、薬液の害虫防除成分の効果によって、コバエが産卵することが抑制される。産卵されたとしても、その後の孵化が阻害されるか、或いは孵化後の幼虫が廃棄物容器の内部の表面や廃棄物の表面を徘徊したり、廃棄物の隙間に入り込むことで付着している噴射粒子に接触するため、その成育が抑制される。
【0026】
本発明に係るコバエの発生を予防する方法において、
前記噴射工程において、前記エアゾール剤を、25℃、噴射距離15cmにおける体積積算分布での50%粒子径(D50)が10~45μmの範囲に存在するように噴射することが好ましい。
【0027】
本構成のコバエの発生を予防する方法によれば、D50粒子径が上記の範囲となるようにエアゾール剤を噴射することによって、嵩高く立体的に積み上がった廃棄物の隙間にも噴射粒子が拡散して付着する。ショウジョウバエ等の成虫、及び幼虫は、生ゴミ等の廃棄物に潜り込む習性を有するため、この時に廃棄物の隙間に付着した噴射粒子に接触しやすくなる。この結果、コバエが産卵することを抑制することができ、コバエの発生を効果的に予防することができる。この結果、コバエが産卵することを抑制することができ、産卵されたとしても、その後の孵化を阻害し、或いは孵化後の幼虫の成育を抑制することができ、コバエの発生を効果的に予防することができる。
【0028】
本発明に係るコバエの発生を予防する方法において、
前記エアゾール剤は、トランスフルトリン、プロフルトリン、及びメトフルトリンからなる群から選択される少なくとも一つのピレスロイド系殺虫成分を含有することが好ましい。
【0029】
本構成のコバエの発生を予防する方法によれば、上記のピレスロイド系殺虫成分を使用することによって、常温でも殺虫成分が十分に揮散し、コバエの発生を効果的に予防することができる。
【0030】
本発明に係るコバエの発生を予防する方法において、
前記ピレスロイド系殺虫成分を1.0~7.0w/v%含有することが好ましい。
【0031】
本構成のコバエの発生を予防する方法によれば、ピレスロイド系殺虫成分を上記の範囲で含有することによって、少ない噴射量でもコバエの発生を予防することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明のコバエ防除用スプレー製品は、薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を封入する容器と、容器からエアゾール剤を噴射する噴射ノズルとを備え、噴射対象物において、コバエの発生を予防するために用いられる。ここで、「コバエの発生を予防する」とは、「対象物にコバエが近付かないこと」、「対象物にコバエが産卵しないこと」、「対象物に産卵されたコバエの卵が孵化しないこと」、又は「対象物に産卵されたコバエの卵からコバエが孵化しても直ちにノックダウン又は致死すること」を意味する。以下、本発明のコバエ防除用スプレー製品について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0033】
<薬液>
[害虫防除成分]
薬液の主成分の一つである害虫防除成分は、ピレスロイド系殺虫成分の使用が好ましく、例えば、トランスフルトリン、プロフルトリン、メトフルトリンが好適に選択される。これらのピレスロイド系殺虫成分は、単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。なお、これらのピレスロイド系殺虫成分には、不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体が存在するが、それらも害虫防除成分に含まれる。
【0034】
薬液中の害虫防除成分の含有量は、有機溶剤に溶解させた後、噴射対象物に噴射されることを考慮して、1.0~50容量%とすることが好ましい。このような範囲であれば、害虫防除成分が有機溶剤に溶解し易く、また、薬液が噴射された際、噴射粒子が最適な状態で形成され、害虫防除成分の効果を奏することができる。薬液中の害虫防除成分の含有量が1.0容量%未満である場合、害虫防除成分を効果的に発揮することができず、コバエの防除効果が不十分となる虞がある。一方、薬液中の害虫防除成分の含有量が50容量%を超える場合、害虫防除成分の濃度が高くなるため、薬液を適切に調製し難くなる。
【0035】
上述のとおり、本発明のコバエ防除用スプレー製品に含有される害虫防除成分は、トランスフルトリン、プロフルトリン、メトフルトリン、又はこれらの組み合わせが好ましいが、これらの成分に加え、天然ピレトリン、モンフルオロトリン、エムペントリン、フタルスリン、レスメトリン、シフルトリン、フェノトリン、ぺルメトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、イミプロトリン、ビフェントリン、エトフェンプロックス等の他のピレスロイド系化合物、シラフルオフェン等のケイ素系化合物、ジクロルボス、フェニトロチオン等の有機リン系化合物、プロポクスル等のカーバメート系化合物等を含有させることも可能である。
【0036】
[有機溶剤]
薬液の主成分には、上記の害虫防除成分の他に有機溶剤が含まれる。有機溶剤は、上記の害虫防除成分を溶解して薬液を調製することができ、また、調製した薬液を噴射したとき、最適な噴射粒子を形成し得るものが使用される。本発明のコバエ防除用スプレー製品においては、有機溶剤としては、アルコール類、及び高級脂肪酸エステルが好ましい。アルコール類としては、炭素数が2~3の低級アルコールが好ましく、エタノールが特に好適である。高級脂肪酸エステルとしては、炭素数の総数が13~20のものが好ましく、さらに炭素数の総数が16~20のものがより好ましく、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸イソプロピル等が挙げられる。これらのうち、ミリスチン酸イソプロピルが特に好適である。有機溶剤には、例えば、n-パラフィン、及びイソパラフィン等の炭化水素系溶剤や、炭素数3~6のグリコールエーテル類、及びケトン系溶剤等を混合することもできる。
【0037】
[その他の成分]
本発明のコバエ防除用スプレー製品は、上記成分に加え、カビ類や菌類等を対象とした防カビ剤、抗菌剤、殺菌剤、芳香剤、消臭剤、安定化剤、帯電防止剤、消泡剤、賦形剤等を適宜配合することもできる。防カビ剤、抗菌剤、及び殺菌剤としては、ヒノキチオール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、トリホリン、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、オルト-フェニルフェノール等が挙げられる。芳香剤としては、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、シトロネラ油、ライム油、ユズ油、ジャスミン油、檜油、緑茶精油、リモネン、α-ピネン、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、アミルシンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド、ベンジルアセテート等の芳香成分、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド配合の香料成分等が挙げられる。
【0038】
<噴射剤>
本発明のコバエ防除用スプレー製品で用いる噴射剤としては、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気等が挙げられる。上記の噴射剤は、単独又は混合状態で使用することができるが、LPGを主成分としたものが使い易い。
【0039】
本発明のコバエ防除用スプレー製品は、薬液(a)と噴射剤(b)との配合比率(a/b)が、体積比で9/91~50/50となるように調整される。このような範囲に調整すれば、耐圧容器に設けられる定量噴射バルブに接続された噴射口から噴射粒子を最適に形成することができる。そして、一旦噴射された噴射粒子は、迅速に噴射対象物の表面に移動し、付着することができ、付着後は害虫防除成分の揮散を十分に抑制することができるため、噴射粒子が付着した噴射対象物において、コバエ発生予防効果を長期間にわたって発揮することができる。配合比率(a/b)が9/91に対して、噴射剤(b)の割合を大きくする、つまり、耐圧容器内に封入する噴射剤を多量にすると、噴射される薬液から形成される噴射粒子が必要以上に微細化されるため、噴射対象物の表面に付着した後に害虫防除成分の揮散を抑制することが困難になる虞がある。これにより、コバエの発生を長期間にわたって予防することができない場合がある。一方、配合比率(a/b)が50/50に対して、噴射剤(b)の割合を小さくする、つまり、耐圧容器内に封入する噴射剤を少量にすると、噴射粒子が大きくなり、生ゴミ等の嵩高く立体的に積み上がった廃棄物を噴射対象物とした場合に、噴射対象物の隙間に噴射粒子が十分に拡散することが困難になる虞がある。これにより、コバエの発生を効果的に予防することができない場合がある。
【0040】
本発明のコバエ防除用スプレー製品は、害虫防除成分として上記のピレスロイド系殺虫成分(トランスフルトリン、プロフルトリン、メトフルトリン、又はこれらの組み合わせ)を用いる場合、エアゾール剤に、ピレスロイド系殺虫成分を1.0~7.0w/v%含有するように調整される。このような範囲に調整すれば、少ない噴射量でもコバエの発生を予防することができる。ピレスロイド系殺虫成分の含有量が1.0w/v%未満であると、噴射粒子におけるピレスロイド系殺虫成分の量が不十分となり、コバエの発生を長期間にわたって予防することが困難となる虞がある。ピレスロイド系殺虫成分の含有量が7.0w/v%を超えると、必要以上の量のピレスロイド系殺虫成分が放出され、使用量が過大となるため、経済的に不利である。
【0041】
<コバエ防除用スプレー製品>
上記のように、害虫防除成分、有機溶剤、噴射剤、その他必要に応じて配合される成分を選択し、これらを耐圧容器に封入することで、スプレー製品が完成する。このスプレー製品は、本発明のコバエ防除用スプレー製品であり、噴射対象物に向けてエアゾール剤を噴射粒子として噴射する用途で使用されるものである。薬液は、主に、害虫防除成分と有機溶剤とから構成されるものであり、厳密には噴射剤とは別のものであるが、薬液は噴射剤と同時に耐圧容器の外部に放出されるため、以降の説明では、薬液及び噴射剤を含むエアゾール剤を「薬液」として取り扱う場合がある。ここで、本発明に係るコバエ防除用スプレー製品が備える噴射バルブについて説明する。本発明に係るコバエ防除用スプレー製品は、主に、耐圧容器(エアゾール容器)、定量噴射バルブ、及び噴射ノズルから構成されている。定量噴射バルブには、薬液を噴射するための作動部である噴射ボタンが接続されてあり、噴射ノズルには、薬液がエアゾール容器から外部へ噴出する噴射口が設けられてある。
【0042】
コバエ防除用スプレー製品の噴射ボタンを1回押下げた場合、噴射剤の圧力によって定量噴射バルブが作動し、耐圧容器内の薬液が噴射口に上昇し、噴射対象物に噴射される。このときの薬液の噴射容量は、0.1~0.4mLに調整され、より好ましくは0.1~0.2mLに調整される。このような範囲であれば、噴射された薬液から形成される噴射粒子は、噴射対象物において効果的に防除効果を発揮し得るものとなる。噴射容量が0.1mL未満の場合、噴射容量が少な過ぎて噴射対象物の表面に付着する噴射粒子の量が不十分となり、コバエが噴射粒子に接触する機会が少なくなり、コバエの発生を適切に予防することが困難となる虞がある。一方、0.4mLを超えると、必要以上の量の薬液が噴射粒子として放出され、薬液の使用量が過大となるため、経済的に不利である。
【0043】
噴射ノズルに設けられた噴射口の噴口径は0.2~1.0mmに設定することが好ましく、0.7~1.0mmに設定することがより好ましい。この範囲であれば、適切な噴射パターンが得られ、噴射粒子を噴射対象物に付着させやすくなる。そのため、噴射対象物において、コバエの発生を適切に予防することができる。噴口径が0.2mm未満の場合、噴射パターンが狭くなり過ぎ、噴射対象物の表面において噴射粒子が付着する範囲が限られる。噴口径が1.0mmを超えると、噴射パターンが過度に広がり、噴射時に噴射粒子が噴射対象物から外れることで、噴射対象物に適切な量の噴射粒子を付着させることが困難になる虞がある。そのため、噴射対象物の表面を徘徊するコバエが噴射粒子に接触する機会が少なくなり、コバエの発生を適切に予防することができない虞がある。
【0044】
[噴射粒子]
本発明のコバエ防除用スプレー製品から薬液を1回噴射すると、薬液から噴射粒子が形成される。噴射された噴射粒子は、噴射対象物の表面に付着する。噴射粒子の粒子径は、例えば、噴射ノズルの噴口径、薬液と噴射剤との配合比率、使用する噴射剤の組成、スプレー製品の内圧等のパラメータを調整することにより、種々設定可能である。これらのパラメータの調整は、一つだけ行ってもよいし、複数を組み合わせて行ってもよい。噴射粒子の好ましい粒子径は、25℃、噴射距離15cmにおける体積積算分布での50%粒子径(D50)が10~45μmである。このような範囲であれば、噴射対象物に噴射された噴射粒子は、噴射対象物の表面に確実に付着する。特に、嵩高く立体的に積み上がった生ゴミ等の廃棄物を噴射対象物として噴射した場合、廃棄物の外側の表面だけではなく、廃棄物の隙間にも噴射粒子が拡散して付着する。コバエは、廃棄物の表面を徘徊したり、産卵のために廃棄物に潜り込んだりする習性を有するため、これらのコバエに、害虫防除成分を含む噴射粒子を接触させることができる。その結果、害虫防除成分に接触したコバエをノックダウン又は致死させることで、産卵抑制効果を発揮することができる。また、噴射粒子の粒子径が適度に大きいことで、噴射対象物に付着した後も噴射粒子から害虫防除成分が揮発することを抑制することができる。そのため、噴射対象物に付着した後も噴射粒子からは、長期間にわたって徐々に害虫防除成分が揮散することになり、その間も産卵が抑制される。コバエが噴射対象物に産卵した場合にも、噴射対象物に付着した害虫防除成分と卵が直接触れることにより、或いは付着した噴射粒子から長期間にわたって揮散される害虫防除成分によって、孵化阻害効果を発揮することができる。そして、孵化したとしても、幼虫が噴射対象物に付着した害虫防除成分と接触することにより、或いは付着した噴射粒子から揮散される害虫防除成分により、幼虫を致死させることができる。噴射粒子のD50粒子径が10μm未満であると、粒子径が小さ過ぎて噴射対象物まで到達せず付着に至らない噴射粒子の割合が多くなったり、付着したとしても付着後に噴射粒子から害虫防除成分が揮発することを十分に抑制することが困難になる虞がある。一方、D50粒子径が45μmを超えると、粒子径が大き過ぎて、嵩高く立体的に積み上がった生ゴミ等の廃棄物の隙間に噴射粒子が入り込まない虞がある。
【0045】
噴射対象物に付着した噴射粒子から害虫防除成分の揮散が継続する期間は、1日以上であることが好ましく、3日以上であることがより好ましく、7日以上であることがさらに好ましい。コバエ類は、総じて産卵から1日程度で孵化するため、害虫防除成分の揮散が継続する期間が1日以上であれば、このようなコバエ類の孵化を阻害することができ、孵化した場合にも、幼虫を致死させることができる。また、コバエ類は、10日~2週間程度のライフサイクルを有するため、害虫防除成分の揮散が継続する期間が7日以上であれば、ライフサイクルにおける卵、幼虫、蛹、及び成虫の殆どのステージをカバーすることができ、コバエに対して強い発生予防効果が得られる。
【0046】
上記のように、本発明のコバエ防除用スプレー製品は、薬液を噴射対象物に1回噴射することで、噴射粒子が、噴射対象物内の表面、及び隙間へと拡散して付着する。これにより、噴射対象物の表面を徘徊するコバエに、害虫防除成分を効率的に接触させてコバエをノックダウン又は致死させることで、産卵抑制効果を発揮することができる。また、噴射対象物に付着した噴射粒子からは、害虫防除成分が長期間にわたって徐々に揮散されるため、コバエが噴射対象物に産卵した場合にも、害虫防除成分がコバエの卵に影響を及ぼして、孵化阻害効果を発揮することができる。また、幼虫が孵化したとしても、幼虫が噴射対象物の表面、隙間等を徘徊することで付着している噴射粒子に接触するため、害虫防除成分によってノックダウン又は致死させることができる。このように、本発明のコバエ防除用スプレー製品は、噴射対象物において、コバエの発生を予防するために使用することができる。その結果、コバエを長期間にわたって防除することができる。
【0047】
<コバエの発生を予防する方法>
本発明のコバエの発生を予防する方法は、上記のコバエ防除用スプレー製品を用いて実行される。まず、コバエ防除用スプレー製品の噴射口を廃棄物容器の内部に向けて、噴射ボタンを1回押すと、コバエ防除用スプレー製品から薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤が廃棄物容器の内部に噴射される(噴射工程)。噴射されたエアゾール剤は噴射粒子となり、廃棄物容器の内側の表面に付着する。このとき、廃棄物容器には、生ゴミ等の廃棄物が入れられた状態、及び廃棄物が入れられていない状態の何れであってもよい。この状態の廃棄物容器に、廃棄物を入れる(投入工程)。その後、廃棄物に誘引されて廃棄物容器にコバエが侵入しても、コバエは廃棄物容器の内側の表面を徘徊するため、付着している噴射粒子に接触して害虫防除成分の影響によりノックダウン又は致死することになる。噴射粒子に接触せずに廃棄物に産卵した場合にも、噴射粒子から長期間にわたって徐々に揮散される害虫防除成分により、卵の孵化を阻害することができる。
【0048】
なお、本発明のコバエの発生を予防する方法は、廃棄物容器へ入れる前に、コバエ防除用スプレー製品の噴射口を廃棄物へ向けて薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を廃棄物に直接噴射(噴射工程)してもよい。噴射されたエアゾール剤は噴射粒子となり、廃棄物の表面だけではなく、廃棄物の隙間にも入り込んで付着する。この状態の廃棄物を廃棄物容器へ入れる(投入工程)。或いは、本発明のコバエの発生を予防する方法は、廃棄物容器の内部に廃棄物を入れ(投入工程)、その後、コバエ防除用スプレー製品の噴射口を廃棄物が入っている廃棄物容器の内部に向けて、薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を噴射(噴射工程)してもよい。噴射されたエアゾール剤は噴射粒子となり、廃棄物容器の内側の表面、及び廃棄物の表面だけではなく、廃棄物の隙間にも入り込んで付着する。その後、廃棄物に誘引されて廃棄物容器にコバエが侵入しても、コバエは廃棄物容器の内側の表面や廃棄物の表面を徘徊したり、産卵のために廃棄物の隙間に潜り込んだりするため、付着している噴射粒子に接触して害虫防除成分の影響によりノックダウン又は致死することになる。噴射粒子に接触せずに廃棄物に産卵した場合にも、噴射粒子から長期間にわたって徐々に揮散される害虫防除成分により、卵の孵化を阻害することができる。
【0049】
本発明に係るコバエ防除用スプレー製品は、上記のとおり、噴射対象物に噴射粒子が付着し、付着した噴射粒子から害虫防除成分を長期間にわたって徐々に揮散させることができる。このため、このコバエ防除用スプレー製品を用いて実行されるコバエの発生を予防する方法であれば、1回の噴射によって、廃棄物、及び廃棄物容器において、コバエの発生を長期間にわたって予防することができる。
【実施例】
【0050】
本発明のコバエ防除用スプレー製品について、コバエ発生予防効果を確認するため、エアゾール剤と噴射剤とを定量噴射バルブ付エアゾール容器(耐圧容器)に加圧充填した、本発明の特徴構成を備えた複数のコバエ防除用スプレー製品(実施例1~13)を準備し、コバエ発生予防効果確認試験を実施した。また、比較のため、本発明の特徴構成を備えていないコバエ防除用スプレー製品(比較例1~3)を準備し、同様のコバエ発生予防効果確認試験を実施した。
【0051】
実施例1~13として表1に示すように、組成及び条件を各実施例に応じてコバエ防除用スプレー製品を調製し、下記に示す試験を行った。比較例1~3についても、表1に示す組成及び条件にてコバエ防除用スプレー製品を調製し、実施例と同様の試験を行った。なお、表1において害虫防除成分については、薬液中の濃度(w/v%)に加えて、括弧内にエアゾール剤中の濃度(w/v%)を示している。
【0052】
【0053】
(1)効力試験(直撃噴霧)
プラスチック製円筒(内径20cm、高さ43cm)にキイロショウジョウバエ成虫、及びオオキモンノミバエ成虫を計100匹放ち、供試薬剤を約10~15cmの距離から1回噴射し、2時間暴露させた後、全ての供試虫を回収し致死率を求めた。その間、時間経過に伴い落下仰転したコバエ成虫を数え、KT50値を求めた。試験結果を表2に示す。
【0054】
【0055】
表2の結果から、コバエ成虫に直撃噴霧した場合、害虫防除成分としてトランスフルトリンを含むものを用いた実施例1~11、比較例1~2は、何れも致死率が100%であり、KT50値も優位な数値に維持されており、直接的な殺虫効果に大きな差はないことが確認された。害虫防除成分としてプロフルトリンを含む実施例12、及びメトフルトリンを含む実施例13についても、実用上問題の無い殺虫効果が確認された。トランスフルトリン、プロフルトリン、メトフルトリンよりも常温揮散性が低いフタルスリンを害虫防除成分に用いた比較例3は、殺虫効果、及び速効性の何れも、実施例1~13、比較例1~2よりも劣ることが確認された。
【0056】
(2)コバエ発生予防効果確認試験1
プラスチック製円筒(内径20cm、高さ43cm)の内側に供試薬剤を約10~15cmの距離から1回噴射し、これを処理区とした。また、無処理円筒も準備し対照区とした。それらを室温に静置保管し、処理から1日後、各円筒内に、生ゴミ(豚肉5g、りんご10g、キャベツ10g)を入れたプラスチックカップ(内径10cm、高さ10cm)を挿入して、キイロショウジョウバエ、オオキモンノミバエ成虫を約100匹程度放した室内に併置した。併置から1日後、各円筒内のプラスチックカップに蓋をして回収し、カップ内の死虫を含む全成虫数を計数し、産卵有無を確認した。さらに、このプラスチックカップを25℃で保存し、1週間後に発生した幼虫数を計数した。供試薬剤の処理から7日後の円筒でも、同様の試験を行った。試験は処理から1日後、及び7日後のそれぞれで3回繰り返した。この試験手順は、廃棄物容器の内部に向けて薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を噴射し(噴射工程)、その後、廃棄物容器に廃棄物を入れる(投入工程)という手順でコバエの発生を予防する方法を実施することを想定したものである。試験結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
(評価基準)
産卵
- :0個
+- :0~1個
+ :2~10個
++ :10~50個
+++ :50個以上
幼虫発生
- :0匹
+- :0~1匹
+ :2~30匹
++ :30~100匹
+++ :100~200匹
++++:200匹以上
【0058】
表3の結果から、実施例1~13では、処理1日後サンプル、及び処理7日後サンプルともに、併置から1日後の産卵数、及び1週間後の幼虫発生数が、対照区よりも大幅に抑制されることが確認された。処理1日後サンプル、及び処理7日後サンプルで同様の効果を奏することから、実施例1~13では、コバエ発生予防効果が長期間にわたって持続することが確認された。
【0059】
処理7日後サンプルでの幼虫発生数は、噴射粒子のD50粒子径が20μmである実施例2では1匹のみであったが、噴射粒子のD50粒子径が本発明に規定の範囲外である比較例1では、幼虫発生数が104匹、比較例2では、幼虫発生数が32匹であった。このように、比較例1~2は、長期間にわたるコバエ発生予防効果が劣るものであった。なお、併置から1日後に回収した時点でカップ内に侵入していた初期成虫数は、実施例1~13、比較例1~3の何れでも、処理1日後サンプル、及び処理7日後サンプルともに処理区と対照区とで大きな差がなかった。このことから、実施例1~13による優れたコバエ発生予防効果は、害虫防除成分による初期の忌避効果に由来するものではなく、円筒内に付着した噴射粒子にコバエが接触したこと、或いは噴射粒子から害虫防除成分が長期間にわたって揮散したことによりコバエ発生予防効果が発現したものであると推定される。また、実施例2と比較例3とは、何れも噴射粒子のD50粒子径が20μmであるが、処理1日後サンプル、及び処理7日後サンプルの何れでも、産卵数、及び幼虫発生数は、実施例2の方が大きく抑制されていることから、害虫防除成分としてトランスフルトリンの使用が特に好ましいことが確認された。
【0060】
(3)コバエ発生予防効果確認試験2
生ゴミ(豚肉5g、りんご10g、キャベツ10g)を入れたプラスチックカップ(内径10cm、高さ10cm)に供試薬剤を約10~15cmの距離から1回噴射し、これを処理区とした。また、同量の生ゴミを入れた無処理カップも準備し、それらを室温に静置保管した。1週間後、これらのカップを、キイロショウジョウバエ、オオキモンノミバエ成虫を約100匹程度放したチャンバー(180cm×180cm×180cm)内に併置した。1日後、各プラスチックカップに蓋をして回収し、カップ内の成虫数を計数し、産卵有無を確認した。さらに、このプラスチックカップを25℃で保存し、1週間後に発生した幼虫数を計数した。供試薬剤の処理から7日後のプラスチックカップでも、同様の試験を行った。試験は処理から1日後、及び7日後のそれぞれで3回繰り返した。この試験手順は、廃棄物容器へ入れる前に廃棄物に向けて薬液と噴射剤とを含むエアゾール剤を噴射し(噴射工程)、その後、廃棄物容器に廃棄物を入れる(投入工程)という手順でコバエの発生を予防する方法を実施することを想定したものである。試験結果を表4に示す。評価基準は、表3に示したコバエ発生予防効果確認試験1と同一である。
【0061】
【0062】
表4の結果から、実施例1~13では、処理1日後サンプル、及び処理7日後サンプルともに、併置から1日後の産卵数、及び1週間後の幼虫発生数が、対照区よりも大幅に抑制されることが確認された。処理1日後サンプル、及び処理7日後サンプルで同様の効果があることから、実施例1~13では、コバエ発生予防効果が長期間にわたって持続することが確認された。特に、表4の結果では、処理1日後サンプル、及び処理7日後サンプルの何れでも、実施例1~13での幼虫発生数が0匹であり、表3の結果と比較して、より優れたコバエ発生予防効果が発揮されていた。コバエ発生予防効果確認試験2においてより優れたコバエ発生予防効果が発揮されたのは、生ゴミに供試薬剤を直接噴射することで、生ゴミの隙間から内部に噴射粒子が入り込んで付着するため、生ゴミに潜り込むコバエに作用し、産卵が抑制され、産卵された場合でも、その卵についても孵化を阻害することができ、たとえ孵化できたとしても、その後の幼虫の成育が阻害されたためと考えられる。また、害虫防除成分としてトランスフルトリンを含むものを用いた実施例1~11の中うち、実施例2~4、7及び8は、噴射粒子のD50粒子径が最も小さい実施例6及びD50粒子径が最も大きい実施例5よりも産卵数が少なく、特に優れた産卵抑制効果を発揮することが確認された。
【0063】
一方、比較例1~3では、処理1日後サンプル、及び処理7日後サンプルの何れでも、幼虫発生数が実施例1~13より多く、コバエ発生予防効果が劣るものであった。特に、処理7日後サンプルでは、比較例1で幼虫発生数が139匹、比較例2で幼虫発生数が66匹であった。これは、比較例1及び2は、噴射粒子のD50粒子径が本発明に規定の範囲外であるため、生ゴミの隙間に噴射粒子が十分に入り込まず、生ゴミの隙間において卵が孵化し、幼虫が成育したためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のコバエ防除用スプレー製品は、コバエの発生を予防する用途に利用可能であり、特に、ショウジョウバエ、ノミバエ、チョウバエ、キノコバエ等に対して好適に利用可能である。