IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-空気入りタイヤ 図1
  • 特許-空気入りタイヤ 図2
  • 特許-空気入りタイヤ 図3
  • 特許-空気入りタイヤ 図4
  • 特許-空気入りタイヤ 図5
  • 特許-空気入りタイヤ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/08 20060101AFI20221215BHJP
   B60C 9/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B60C9/08 J
B60C9/02 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018240181
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020100302
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】下村 和生
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0021678(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0051163(US,A1)
【文献】特開2017-109517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/08
B60C 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向の両側に配置されるビードコアと、
前記ビードコアに掛け渡されるカーカスプライと、
前記カーカスプライのタイヤ径方向外側に配置されるベルトと、
を備え、
前記カーカスプライは、
前記ベルトのタイヤ径方向内側に位置する中央部と、前記中央部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部と、前記サイド部から延び、前記ビードコアに巻き上げられる巻上部とを有する第1プライと、
前記第1プライに対してタイヤ径方向外側に配置され、前記第1プライの中央部の両側に位置する内端部と、前記内端部から前記タイヤ径方向内側に延びるサイド部と、前記サイド部から延び、前記ビードコアに巻き上げられる巻上部とを有する一対のプライ片からなる不連続な第2プライと、
を備え、
前記第1プライは、前記一対のプライ片の内端部の間にプライ重なり部を有し、
前記プライ重なり部のタイヤ幅方向の寸法をW1とし、前記プライ片の内端部の間隔をW2としたとき、
5%≦W1/W2≦60%
を満足する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1プライは、タイヤ幅方向中央部分に位置する内端部と、前記各ビードコア側にそれぞれ延びる一対のサイド部とを有する一対のプライ片からなり、
前記プライ重なり部は、前記第1プライの各プライ片の内端部同士を重ね合わせることにより形成されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ幅方向の両側に配置されるビードコアと、
前記ビードコアに掛け渡されるカーカスプライと、
前記カーカスプライのタイヤ径方向外側に配置されるベルトと、
を備え、
前記カーカスプライは、
前記ベルトのタイヤ径方向内側に位置する中央部と、前記中央部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部と、前記サイド部から延び、前記ビードコアに巻き上げられる巻上部とを有する第1プライと、
前記第1プライに対してタイヤ径方向外側に配置され、前記第1プライの中央部の両側に位置する内端部と、前記内端部から前記タイヤ径方向内側に延びるサイド部と、前記サイド部から延び、前記ビードコアに巻き上げられる巻上部とを有する一対のプライ片からなる不連続な第2プライと、
を備え、
前記第1プライは、前記一対のプライ片の内端部の間にプライ重なり部を有し、
前記第1プライは、前記ビードコア間に掛け渡されており、
前記プライ重なり部は、前記第1プライとは別体で設けた第3プライ片によって形成されている、空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1プライ及び前記第2プライは、複数本のコードを平行に配置し、ゴムで被覆した帯状であり、前記第1プライ及び前記第2プライのコードは、タイヤ周方向に直交する方向に延びている、請求項1からのいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の有機繊維コードまたは金属コードを含む少なくとも1層から形成され、トレッド部で分断する分断部を有するカーカスを備えた空気入りタイヤが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来の空気入りタイヤでは、カーカスの分断部が熱可塑性エラストマーで構成されたカーカス分断部補強層で補強されているだけである。このため、コーナリング時の浮き上がり対策は十分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-111224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、トレッド部で分断されたカーカスプライを有する構成であるにも拘わらず、コーナリング時の浮き上がりを防止できる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、前記課題を解決するための手段として、タイヤ幅方向の両側に配置されるビードコアと、前記ビードコアに掛け渡されるカーカスプライと、前記カーカスプライのタイヤ径方向外側に配置されるベルトと、を備え、前記カーカスプライは、前記ベルトのタイヤ径方向内側に位置する中央部と、前記中央部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部と、前記サイド部から延び、前記ビードコアに巻き上げられる巻上部とを有する第1プライと、前記第1プライに対してタイヤ径方向外側に配置され、前記第1プライの中央部の両側に位置する内端部と、前記内端部から前記タイヤ径方向内側に延びるサイド部と、前記サイド部から延び、前記ビードコアに巻き上げられる巻上部とを有する一対のプライ片からなる不連続な第2プライと、を備え、前記第1プライは、前記一対のプライ片の内端部の間にプライ重なり部を有前記プライ重なり部のタイヤ幅方向の寸法をW1とし、前記プライ片の内端部の間隔をW2としたとき、5%≦W1/W2≦60%を満足する、空気入りタイヤを提供する。
【0007】
この構成により、タイヤ幅方向の中央部分に第2プライが位置しないため軽量化を図ることができる。しかも、第1プライはプライ重なり部を有し、剛性が高められているので、コーナリング時であっても、タイヤ幅方向中央部分での接地面の浮き上がりが抑制される。
【0009】
前記第1プライは、タイヤ幅方向中央部分に位置する内端部と、前記各ビードコア側にそれぞれ延びる一対のサイド部とを有する一対のプライ片からなり、前記プライ重なり部は、前記第1プライの各プライ片の内端部同士を重ね合わせることにより形成されているのが好ましい。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記課題を解決するための手段として、タイヤ幅方向の両側に配置されるビードコアと、前記ビードコアに掛け渡されるカーカスプライと、前記カーカスプライのタイヤ径方向外側に配置されるベルトと、を備え、前記カーカスプライは、前記ベルトのタイヤ径方向内側に位置する中央部と、前記中央部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部と、前記サイド部から延び、前記ビードコアに巻き上げられる巻上部とを有する第1プライと、前記第1プライに対してタイヤ径方向外側に配置され、前記第1プライの中央部の両側に位置する内端部と、前記内端部から前記タイヤ径方向内側に延びるサイド部と、前記サイド部から延び、前記ビードコアに巻き上げられる巻上部とを有する一対のプライ片からなる不連続な第2プライと、を備え、前記第1プライは、前記一対のプライ片の内端部の間にプライ重なり部を有し、前記第1プライは、前記ビードコア間に掛け渡されており、前記プライ重なり部は、前記第1プライとは別体で設けた第3プライ片によって形成されている空気入りタイヤを提供する
【0011】
前記第1プライ及び前記第2プライは、複数本のコードを平行に配置し、ゴムで被覆した帯状であり、前記第1プライ及び前記第2プライのコードは、タイヤ周方向に直交する方向に延びているのが好ましい。
【0013】
この構成により、より一層、プライ重なり部での剛性を高めてコーナリング時の浮き上がりを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、タイヤ幅方向中央部分で不連続となったプライを有する構成であるにも拘わらず、この位置でのコーナリング時の浮き上がりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午線断面図。
図2】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部及びその周辺の子午線断面図。
図3図1の部分IIIの拡大図。
図4図1の部分IVの拡大図。
図5】本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す子午線断面図。
図6】本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す子午線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図4は、本発明の実施形態に係るゴム製の空気入りタイヤ(以下、タイヤという)1を示す。
【0017】
タイヤ1は、トレッド部2、一対のサイドウォール部3、及びリング状の一対のビード部4を備える。
【0018】
トレッド部2はタイヤ幅方向(図1において符号TWで示す。)に延びている。トレッド部2の表面、つまり踏面には溝2aが設けられている。
【0019】
一対のサイドウォール部3は、トレッド部2の両端からタイヤ径方向(図1において符号TRで示す。)の内側にそれぞれ延びている。
【0020】
一対のビード部4は、一対のサイドウォール部3のタイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置されている。個々のビード部4は、ビードコア5とビードフィラー6を備える。ビードコア5は、リング状に束ねられた多数の鋼線を備える。ビードフィラー6は、リング状で、トレッド部2及びサイドウォール部3を構成するゴムよりも硬質のゴムからなる。ビードフィラー6は、ビードコア5のタイヤ径方向外側に隣接して配置された基端6aと、基端6aとは反対側の先端6bとを備え、基端6aから先端6bに向かってタイヤ径方向外側へテーパ状に延びている。個々のビード部4は、ビードコア5とビードフィラー6とを包むように設けられたストリップゴム7を備える。
【0021】
タイヤ1は、ビード部4間にトロイダル状に掛け渡されたカーカス10を備える。本実施形態では、カーカス10は、第1カーカスプライ(以下、「第1プライ」と呼ぶ)11と、第2カーカスプライ(以下、「第2プライ」と呼ぶ)12とを備える。第2プライ12は中抜き部14bを有するプライである。第1,第2プライ11,12については後に詳述する。カーカス10の内側、つまりタイヤ1の最内周面には、インナーライナ8が設けられている。
【0022】
図2及び図3を参照すると、トレッド部2、より具体的にはカーカス10とトレッド部2との間に、無端状のベルト層20が設けられている。本実施形態では、ベルト層20は、2枚のベルト21,22を備える。ベルト21は、カーカス10のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、ベルト22は、ベルト21のタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。また、本実施形態では、下層のベルト21のタイヤ幅方向の寸法は、上層のベルト22のタイヤ幅方向の寸法よりも大きく、ベルト21の端部21aは、ベルト22の端部22aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。ベルト21,22は、スチール製又は有機繊維製のベルトコードをゴム被覆して形成されている。ベルト層20は、1枚のベルトで構成されていてもよいし、3枚以上のベルトを備えてもよい。
【0023】
ベルト層20のタイヤ径方向外側に隣接して、無端状のキャップ層30が設けられている。本実施形態のキャップ層30は、ベルト21,22の両方の端部21a,22aのいずれかをそれぞれ直接的に覆う幅狭の一対のエッジプライ31を備える。また、本実施形態のキャップ層30は、エッジプライ31のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、端部21a,22aを含むベルト21,22全体を1枚で覆う幅広のキャッププライ32を備える。キャップ層30は、1枚又は3枚以上のプライを備えてもよい。また、キャップ層30をなくしてもよい。
【0024】
ベルト層20のタイヤ幅方向外側の両端の部分とカーカス層10との間には、ゴム製で無端状の一対のパッド40がそれぞれ配置されている。パッド40の断面形状は偏平な三角形状である。ベルト21,22の端部21a,22a、エッジプライ31のタイヤ幅方向外側の端部31a、及びキャッププライ32の端部32aのタイヤ幅方向の位置は、パッド40のタイヤ幅方向の外側の端部40aと内側の端部40bとの間の領域、つまりパッド40が存在する領域に設定されている。パッド40をなくしてもよい。
【0025】
以下、カーカス10を構成する第1,第2プライ11,12について説明する。
【0026】
第1プライ11は、一部を重ね合わせた一対の第1プライ片13で構成されている。第2プライ12は前述のように中抜き部14bを有する不連続なプライであり、一対の第2プライ片14で構成されている。第1プライ片13と第2プライ片14はいずれも、間隔をあけて並設した複数本のコードをゴムで被覆した帯状のシートである。
【0027】
第1プライ片13と第2プライ片14は、モジュラス(一定のひずみを与えたときに生じる応力)が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第1プライ片13と第2プライ片14は、破断強度(破断が生じる引張荷重)が同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1プライ片13と第2プライ片14のモジュラスや破断強度が異なる場合については、後に詳述する。
【0028】
第1プライ11の第1プライ片13は、内端部13aがタイヤ幅方向中央部分に位置し、そこからビードコア5側へと延びている。各第1プライ片13の内端部13a側は、トレッド部2に配置されて中央部11aを構成している。各第1プライ片13の内端部13a同士は、タイヤ幅方向中央部11aで重なり合っており、この重なり部分がプライ重なり部14を構成している。プライ重なり部14のタイヤ幅方向の寸法をW1とし、後述する各第2プライ片14の内端部14aのタイヤ幅方向の間隔をW2としたとき、5%≦W1/W2≦60%を満足する。このようにプライ重なり部14の幅寸法を設定することにより、タイヤ幅方向中央部においてタイヤ幅方向のワイピングが抑制されコーナリング時に接地面の浮き上がりを抑制できる。また、各第1プライ片13は、タイヤ径方向内側にそれぞれ延びるサイド部13bを備える。サイド部13bはサイドウォール部3に配置されている。さらに、各第1プライ片13は、サイド部13bからタイヤ径方向内側にそれぞれ延び、ビードコア5に掛け渡される巻上部13cを備える。巻上部13cは、ビードフィラー6及びビードコア5の内面に沿って延びる内側部13dを備える。また、巻上部13cは、ビードコア5の下面に沿って延びる内径部13eを備える。さらに、巻上部13cは、ビードコア5及びビードフィラー6の外面に沿って延びる外側部13fを備える。外側部13fの端が巻上端13gである。巻上端13gは、サイドウォール部3のタイヤ最大幅位置3aの近傍に位置している。
【0029】
第2プライ12の第2プライ片14は、第1プライ11に対してタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。各第2プライ片14は、ベルト層20と第1プライ片13の内端部13aとの間に配置された内端部14aを有する。内端部14aとベルト層20との間にはパッド40が介在している。第2プライ片14の内端部14aのタイヤ幅方向の位置は、トレッド部2におけるタイヤ幅方向外側の領域に、より具体的にはベルト層20を構成するベルト21,22の端部21a,22aのいずれよりもタイヤ幅方向内側の領域に設定されている。トレッド部2におけるタイヤ幅方向中央の領域、より具体的には一対の第2プライ片14の内端部14a間の領域に、中抜き部14bが設けられている。この中抜き部14bでは、第2プライ12は存在せず、第1プライ11の中央部11aのみが存在する。
【0030】
第2プライ片14は、さらにサイド部14c及び巻上部14dを備える。サイド部14cは、内端部14aからタイヤ径方向内側に延びている。サイド部14cは、第1プライ片13のサイド部13bのタイヤ幅方向外側に隣接して配置されている。巻上部14dは、ビードフィラー6のタイヤ幅方向内面に沿ってタイヤ径方向内側へと延び、ビードコア5の内面側で第1プライ片13の内側部13dを覆う内側部14eを備える。また、巻上部14dは、ビードコア5の内径側で第1プライ片13の内径部13eを覆う内径部14fを備える。さらに、巻上部14dは、ビードコア5の外面側で第1プライ片13の外側部13fを覆う外側部14gを備える。外側部14gの端が巻上端14hである。巻上端14hは、第1プライ片13の巻上端13gを超えてタイヤ径方向外側に位置している。
【0031】
前記構成の空気入りタイヤによれば、次のような効果が得られる。
【0032】
第1プライ11は一対の第1プライ片13で構成され、これらはタイヤ径方向内側の中央部分にプライ重なり部15を形成している。これにより、第1プライ11の部分的な補強を図ることができる。コーナリング時、トレッド部2の路面に接地しているタイヤ幅方向内側部分(内側部)に比べてタイヤ幅方向外側部分(外側部)の接地圧が大きくなる。この場合、外側部が位置ずれしにくくなる。一方、外側部に比べて接地圧が小さくなった内側部はタイヤ幅方向外側へと位置ずれしやすくなる。このため、第1プライ11の中央部11aが変形しやすくなるが、プライ重なり部15の存在により、この変形が抑制される。つまり、第1プライ11の中央部分が浮き上がりにくくなり、適正な形状を保持することができる。この結果、コーナリング性能を向上させることが可能となる。
【0033】
第2プライ12は一対の第2プライ片14を備える不連続なプライであり、一対の第2プライ片14の内端部14aの間には、プライが存在しない中抜き部14bがある。かかる中抜き部14bのある第2プライ12を採用したことにより、第2プライ12が1枚の連続のプライである場合と比較して、軽量化を図ることができる。
【0034】
サイドウォール部3の全域において、2層のプライ、つまり第1プライ片13のサイド部13bと第2プライ片14のサイド部14cとが配置されている。また、サイドウォール部3のビードコア5側の領域では、さらに1層のプライ、つまり第2プライ片14の巻上部14dが配置されている。このようにサイドウォール部3において、プライが2層又は3層設けられていることにより、必要な耐カット性が確保される。また、プライが2層又は3層設けられていることで、サイドウォール部3における必要な剛性が確保される。
【0035】
次に、第1プライ片13と第2プライ片14のモジュラスや破断強度を異ならせる場合について説明する。
【0036】
第1プライ片13のモジュラスは、第2プライ片14のモジュラスよりも低くてもよい。カーカスプライ10においては、一般に、モジュラスが低い程重量は軽く、モジュラスが高い程重量が重い傾向がある。第2プライ12は中抜き部14bを有するのに対して、第1プライ11はトレッド部2にプライ重なり部15を含む中央部11aを有する。第1プライ11の中央部11aは、第1プライ片13のサイド部13bや第2プライ12の第2プライ片14と比較すると、剛性向上と耐カット性向上の寄与度は低い。このようなプライ重なり部15を含む中央部11aを有する第1プライ11を、第2プライ12の第2プライ片14に比べて低モジュラス、従って相対的に軽量とすることで、剛性と耐カット性を損なうことなく、さらなる軽量化を図ることができる。
【0037】
第1プライ片13の破断強度は、第2プライ片14の破断強度よりも低くてもよい。カーカスプライ10においては、一般に、破断強度が低い程重量は軽く、破断強度が高い程重量が重い傾向がある。第2プライ12は中抜き部14bを有するのに対して、第1プライ11はトレッド部2にプライ重なり部15を有する。第1プライ片13の内端部13aは、第1プライ片13のサイド部13bや第2プライ片14と比較すると、剛性向上と耐カット性向上の寄与度は低い。かかる内端部13aを有する第1プライ片13を、第2プライ片14と比較して低破断強度、従って相対的に軽量とすることで、剛性と耐カット性を損なうことなく、さらなる軽量化を図ることができる。
【0038】
コード材質、コード径、エンド数、ゴム硬さ、及びゴム厚みのうちの少なくとも1つを異ならせることで、第1プライ片13モジュラスを第2プライ片14のモジュラスよりも低く設定し、あるいは第1プライ片13の破断強度を第2プライ片14の破断強度よりも低く設定できる。
【0039】
コード径、エンド数、ゴム硬さ、及びゴム厚みについては、一般に、以下の傾向がある。まず、コード径が太い程、モジュラスと破断強度が高くなる。また、エンド数が多い程、モジュラスと破断強度が高くなる。さらに、ゴム硬さが高い程、モジュラスと破断強度が高くなる。さらにまた、ゴム厚みが厚い程、モジュラスと破断強度が高くなる。
【0040】
コード材質については、金属(スチール)、アラミド、レーヨン、ポリエステル、及びナイロンの順でモジュラスが高い。また、コード材質については、金属(スチール)、アラミド、ナイロン、ポリエステル、及びレーヨンの順で破断強度が高い。
【0041】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0042】
前記実施形態では、プライ重なり部15を、第1プライ片13の内端部13a同士を重ね合わせることにより形成するようにしたが、次のように構成することもできる。
【0043】
図5では、第1プライ11が中抜き部を有しない通常の単一プライで構成されている。第1プライ11の中央部11aには、タイヤ径方向内側に隣接して第3プライ16が配置されている。そして、第3プライ16によりプライ重なり部が形成されている。ここでは、第3プライ16は、トレッド部2のタイヤ幅方向中央部分でタイヤ周方向に形成される2本の主溝2aに対応する位置に配置されている。これにより、トレッド部2が接地した際、最も接地圧が大きくなるタイヤ幅方向中央部分での補強を図ることができる。また、第3プライ16は、1箇所に限らず、複数箇所に配置することも可能である。第3プライ16の幅寸法や数は、軽量化を阻害しない範囲で自由に設定できる。
【0044】
前記実施形態では、第1プライ片13の内端部13aを重ね合わせただけとしたが、図6に示すように、両面が粘着性を有するテープ17で張り合わせて接合してもよい。テープ17には、弾性率が10MPa以上50MPa以下で、粘着力が4.9N以上の粘着テープが使用されている。テープ17の弾性率が10MPa未満では、第1プライ11と第2プライ12の拘束力が不十分となる。一方、テープ17の弾性率が50MPaを超えると、テープ17による拘束力が大きくなり過ぎて柔軟性が損なわれる。また、テープ17の両面の粘着力が4.9N未満では、テープ17と第1プライ11あるいはテープ17と第2プライ12の間の接合状態が不十分となり、第1プライ11及び第2プライ12の全体に所望の張力が得られない。
【0045】
テープ17のタイヤ幅方向の内端位置は、ほぼトレッド部の両端位置(接地端)に対応する位置である。またテープ17のタイヤ幅方向の外端位置17aは、幅が広い方のベルトの端部21aと、タイヤ最大幅位置3aとの間のタイヤ幅方向の最短距離SDの50%を超えないように設定されている。
【0046】
前記実施形態では、カーカスプライ10を第1,第2プライ11,12で構成したが、第2プライ12と同様の中抜き部を有するプライや第1プライ11と同様の通常のプライをさらに備えてもよい。第1プライ片13の個々のサイド部13bを第2プライ片14に接合するテープ17が複数あってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
2a 溝
3 サイドウォール部
3a タイヤ最大幅位置
4 ビード部
5 ビードコア
6 ビードフィラー
6a 基端
6b 先端
7 ストリップゴム
8 インナーライナ
10 カーカスプライ
11 第1カーカスプライ(第1プライ)
11a 中央部
12 第2カーカスプライ(第2プライ)
13 第1プライ片
13a 内端部
13b サイド部
13c 巻上部
13d 内側部
13e 内径部
13f 外側部
13g 巻上端
14 第2プライ片
14a 内端部
14b 中抜き部
14c サイド部
14d 巻上部
14e 内側部
14f 内径部
14g 外側部
14h 巻上端
15 プライ重なり部
16 第3カーカスプライ(第3プライ)
17 テープ
17a 外端位置
20 ベルト層
21 ベルト
21a 端部
22 ベルト
22a 端部
30 キャップ層
31 エッジプライ
31a 端部
32 キャッププライ
32a 端部
40 パッド
40a 端部
40b 端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6