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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】レーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/082 20140101AFI20221215BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20221215BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20221215BHJP
   B23K 26/361 20140101ALI20221215BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B23K26/082
B23K26/00 N
B23K26/38 Z
B23K26/361
G02B26/10 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018247240
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020104163
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】溝口 祐也
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-319878(JP,A)
【文献】特開2017-148853(JP,A)
【文献】特開平10-015682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/082
B23K 26/00
B23K 26/38
B23K 26/361
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長の第1レーザ光を反射し第1波長とは異なる第2波長の第2レーザ光を透過するベンドミラーを用い、
前記第1レーザ光を、前記ベンドミラーで反射させた後、集束レンズでワークの第1位置に集束するよう照射して前記ワークにレーザ加工を施し、
前記第1レーザ光によって前記ワークにレーザ加工を施すのと同時に、前記第2波長の第2レーザ光を、光偏向部によって所望の方向に二次元で偏向して前記ベンドミラーを透過させた後、前記第2レーザ光を、前記集束レンズで前記ワークの前記第1位置とは異なる第2位置に集束するよう照射する際に、
前記第1位置を前記ワークの加工経路に沿って移動させ、
前記第2レーザ光を、前記第1レーザ光よりも大きい幅、かつ一定時間の平均エネルギ密度が小さい光束として前記第2位置に集束させ、前記第2位置を前記第1位置よりも移動方向の前方として、前記第1位置を前記加工経路に沿って移動させるのと同時に前記第2位置を前記ワークの加工経路に沿って移動させる、ことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
第1波長の第1レーザ光を反射し第1波長とは異なる第2波長の第2レーザ光を透過するベンドミラーを用い、
前記第1レーザ光を、前記ベンドミラーで反射させた後、集束レンズでワークの第1位置に集束するよう照射して前記ワークにレーザ加工を施し、
前記第1レーザ光によって前記ワークにレーザ加工を施すのと同時に、前記第2波長の第2レーザ光を、光偏向部によって所望の方向に二次元で偏向して前記ベンドミラーを透過させた後、前記第2レーザ光を、前記集束レンズで前記ワークの前記第1位置とは異なる第2位置に集束するよう照射する際に、
前記第1位置を前記ワークの加工経路に沿って移動させることで前記ワークを切断し、
前記第2レーザ光を、前記第1レーザ光による前記ワークの切断で形成されたカーフにおける少なくとも一方の縁部に集束させて、前記第1位置を前記加工経路に沿って移動させるのと同時に前記縁部に沿って移動させる、ことを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、保護フィルムが貼られたワークをレーザ光で切断するレーザ加工方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3405799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたレーザ加工方法は、保護フィルムが貼られたワークに対し、まず、エネルギ密度が小さいレーザ光を切断加工経路に沿って照射して保護フィルムをワークに焼き付ける。その後、ワークに対し、エネルギ密度が大きいレーザ光を再度切断加工経路に沿って照射し、ワークを切断する。
この方法は、レーザ加工ヘッドを切断加工経路に沿って2回移動させることから加工時間が長くなり、加工時間短縮の改善が望まれている。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、加工時間が短くて済むレーザ加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の手順を有する。
1) 第1波長の第1レーザ光を反射し第1波長とは異なる第2波長の第2レーザ光を透過するベンドミラーを用い、
前記第1レーザ光を、前記ベンドミラーで反射させた後、集束レンズでワークの第1位置に集束するよう照射して前記ワークにレーザ加工を施し、
前記第1レーザ光によって前記ワークにレーザ加工を施すのと同時に、前記第2波長の第2レーザ光を、光偏向部によって所望の方向に二次元で偏向して前記ベンドミラーを透過させた後、前記第2レーザ光を、前記集束レンズで前記ワークの前記第1位置とは異なる第2位置に集束するよう照射する際に、
前記第1位置を前記ワークの加工経路に沿って移動させ、
前記第2レーザ光を、前記第1レーザ光よりも大きい幅、かつ一定時間の平均エネルギ密度が小さい光束として前記第2位置に集束させ、前記第2位置を前記第1位置よりも移動方向の前方として、前記第1位置を前記加工経路に沿って移動させるのと同時に前記第2位置を前記ワークの加工経路に沿って移動させる、ことを特徴とするレーザ加工方法である。
2) 第1波長の第1レーザ光を反射し第1波長とは異なる第2波長の第2レーザ光を透過するベンドミラーを用い、
前記第1レーザ光を、前記ベンドミラーで反射させた後、集束レンズでワークの第1位置に集束するよう照射して前記ワークにレーザ加工を施し、
前記第1レーザ光によって前記ワークにレーザ加工を施すのと同時に、前記第2波長の第2レーザ光を、光偏向部によって所望の方向に二次元で偏向して前記ベンドミラーを透過させた後、前記第2レーザ光を、前記集束レンズで前記ワークの前記第1位置とは異なる第2位置に集束するよう照射する際に、
前記第1位置を前記ワークの加工経路に沿って移動させることで前記ワークを切断し、
前記第2レーザ光を、前記第1レーザ光による前記ワークの切断で形成されたカーフにおける少なくとも一方の縁部に集束させて、前記第1位置を前記加工経路に沿って移動させるのと同時に前記縁部に沿って移動させる、ことを特徴とするレーザ加工方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加工プログラムの作成時間及び加工時間が短い、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の実施例であるレーザ加工装置51の構成図である。
図2図2は、レーザ加工装置51のブロック図である。
図3図3は、レーザ加工装置51のレーザ加工ヘッド3からワークWに照射される第1レーザ射出光Ls1a及び第2レーザ射出光Ls2aを示す平面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係るレーザ加工方法を用いたワークWの切断方法の例1を示す斜視図である。
図5】ワークWの切断方法の例2を示す斜視図である。
図6】ワークWの切断方法の例3を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置を、その実施例であるレーザ加工装置51により説明する。
【0010】
(実施例)
図1及び図2は、それぞれレーザ加工装置51の構成図及びブロック図である。
レーザ加工装置51は、第1レーザ発振器1,第2レーザ発振器2,レーザ加工ヘッド3,ヘッド駆動装置4,及び制御装置6を含んで構成されている。
レーザ加工装置51は、ワークWに対し、レーザ加工ヘッド3の先端の射出口3bから第1レーザ射出光Ls1aを照射して、切断及び孔明けなどの加工を行う。
【0011】
第1レーザ発振器1は、第1波長として波長λ1の第1レーザ光Ls1を生成して第1ファイバケーブル11を介しレーザ加工ヘッド3に供給する。
第2レーザ発振器2は、第2波長として波長λ2の第2レーザ光Ls2を生成して第2ファイバケーブル12を介しレーザ加工ヘッド3に供給する。
波長λ1と波長λ2とは異なる波長であり、少なくとも1(nm)以上の差を有する値で設定される。具体的には、波長λ1は1070(nm)、波長λ2は1080(nm)である。
第1レーザ発振器1から供給された第1レーザ光Ls1は、ワークWの切断加工に用いられる。
第2レーザ発振器2から供給された第2レーザ光Ls2は、第1レーザ光Ls1よりも小出力で、切断加工の前加工又は後加工に用いられる。
第1レーザ発振器1及び第2レーザ発振器2それぞれのON/OFF動作及び出力は、制御装置6によって独立に制御される。
【0012】
レーザ加工ヘッド3は、筒状の筐体3aを有する。筐体3aの内部には、第1コリメーションレンズ31,ベンドミラー32,集束レンズ33,第2コリメーションレンズ34,及び光偏向部であるガルバノスキャナ部7が収容されている。
【0013】
第1コリメーションレンズ31は、第1コリメーションレンズ駆動部31aの動作によって光軸方向に移動可能である。
第2コリメーションレンズ34は、第2コリメーションレンズ駆動部34aの動作によって光軸方向に移動可能である。
集束レンズ33は、集束レンズ駆動部33aの動作によって光軸方向に移動可能である。
第1コリメーションレンズ駆動部31a,第2コリメーションレンズ駆動部34a,及び集束レンズ駆動部33aの動作は、制御装置6によってそれぞれ独立に制御される。
【0014】
ガルバノスキャナ部7は、第1ミラー71及び第2ミラー72を有する。
ガルバノスキャナ部7は、第1ミラー71に入射した光を、第1ミラー71,第2ミラー72の順に反射してベンドミラー32に向け出力する。
第1ミラー71は、第1ミラー駆動部71aの動作によって第1の方向に揺動し、第2ミラー72は、第2ミラー駆動部72aの動作によって第1の方向と直交する第2の方向に揺動するようになっている。
第1ミラー駆動部71a及び第2ミラー駆動部72aの動作は、制御装置6によってそれぞれ独立に制御される。
【0015】
これにより、ガルバノスキャナ部7は、第1ミラー駆動部71a及び第2ミラー駆動部72aの独立した動作によって、ベンドミラー32に向かう出力光を二次元で偏向し、その出力方向を第1ミラー71及び第2ミラー72の動作範囲内の任意の方向にすることができる。
【0016】
ベンドミラー32は、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過させるダイクロイックミラーである。ベンドミラー32における特定の波長は、波長λ1である。
従って、ベンドミラー32は、波長λ1の第1レーザ光Ls1を反射し、波長λ2の第2レーザ光Ls2を透過させる。
【0017】
ワークWは、不図示のワークテーブル上に水平に載置される。ヘッド駆動装置4は、制御装置6の制御により、レーザ加工ヘッド3を、ワークテーブル上に載置されたワークWに沿う水平方向とワークWに対し離接する鉛直方向との直交2方向に独立に、又は2方向同時に移動可能である。
【0018】
上述の構成により、レーザ加工ヘッド3に供給された第1レーザ光Ls1及び第2レーザ光Ls2は、次の光学的処理を施されて、それぞれ第1レーザ射出光Ls1a及び第2レーザ射出光Ls2aとして射出口3bから射出する。
ここでは、説明の便宜上、集束レンズ33によって集束する光束とされた第1レーザ光Ls1及び第2レーザ光Ls2を、それぞれ第1レーザ射出光Ls1a及び第2レーザ射出光Ls2aとして呼称上、区別する。
【0019】
第1レーザ発振器1で生成され、第1ファイバケーブル11を介しカプラ11aからレーザ加工ヘッド3内に発散光として供給された第1レーザ光Ls1は、第1コリメーションレンズ31によって平行光とされる。
平行光とされた第1レーザ光Ls1の波長は、波長λ1であることからベンドミラー32で反射し、集束レンズ33に入射する。
集束レンズ33に入射した第1レーザ光Ls1は、集束レンズ33の光軸方向の位置に対応した所望の位置で焦点を結ぶ第1レーザ射出光Ls1aとされて射出口3bから外部に射出する。
第1レーザ射出光Ls1aが焦点を結ぶ位置は、集束レンズ駆動部33aの動作による集束レンズ33の光軸方向位置で調整され、例えばワークWの切断部位の表面とされる。
【0020】
また、第1コリメーションレンズ駆動部31aの動作によって第1コリメーションレンズ31を光軸方向に移動させることで、第1コリメーションレンズ31を通過した後の光束を非平行にすることもできる。これにより、集束レンズ33の位置を変えずに、第1レーザ射出光Ls1aの光束径を変えることができ、ワークWにおける第1レーザ射出光Ls1aの照射範囲の平均エネルギ密度を調整できる。
【0021】
第2レーザ発振器2で生成され、第2ファイバケーブルを介してカプラ12aからレーザ加工ヘッド3に発散光として供給された第2レーザ光Ls2は、第2コリメーションレンズ34によって、原則平行光とされ、ガルバノスキャナ部7へ入射する。
ガルバノスキャナ部7において、第2レーザ光Ls2は、第1ミラー駆動部71aにより所定角度にて保持された第1ミラー71で反射し、次いで、第2ミラー駆動部72aによって所定角度にて保持された第2ミラー72で反射する。第2ミラー72で反射した第2レーザ光Ls2は、第1ミラー71及び第2ミラー72それぞれの角度に応じた所定方向に延びる光軸CL2を有する光束とされて、ベンドミラー32に対し、集束レンズ33とは反対側から入射する。
【0022】
すなわち、図1に示されるように、ガルバノスキャナ部7の動作により、第2レーザ射出光Ls2aの光軸CL2は、例えば、第1レーザ射出光Ls1aの光軸CL1に対して非平行とされる。さらに、第2レーザ射出光Ls2aのワークWにおける照射位置が、第1レーザ射出光Ls1aの照射位置である第1位置P1とは異なる第2位置P2に調整される。
第2位置P2は、ガルバノスキャナ部7の動作で偏向可能な照射範囲内の任意の位置として設定される。その照射範囲は、第2レーザ光Ls2が、第1コリメーションレンズ31及び第2コリメーションレンズ34の揺動動作による偏向で照射され得る範囲である。
【0023】
このように、制御装置6の制御によるガルバノスキャナ部7の動作により、ワークWに照射される第2レーザ射出光Ls2aの位置を、第1レーザ射出光Ls1aの照射位置に対し、ガルバノスキャナ部7の動作可能範囲に対応した所定範囲内の任意の位置に設定できる。
図3は、ワークWにおいて、第1レーザ射出光Ls1aが照射された部分を含むその近傍範囲の平面図である。
図3に示された例では、ワークWにおいて、第2レーザ射出光Ls2aの光軸CL2の位置を、第1レーザ射出光Ls1aの光軸CL1の位置を中心とする半径Raの円の中に、任意に設定することができる。
換言するならば、レーザ加工ヘッド3は、第2レーザ射出光Ls2aを、第1レーザ射出光Ls1aの光軸CL1に直交する仮想平面上における所定範囲内の任意の位置に集束可能である。
【0024】
図3に示されるように、集束レンズ33を通過した第2レーザ射出光Ls2aの光束径は、第2コリメーションレンズ駆動部34aを動作させ第2コリメーションレンズ34を光軸方向に移動させることで(A)の径とそれよりも大きい(B)の径との間で自由に調整できる。
また、同様に、第1レーザ射出光Ls1aの光束径も、第1コリメーションレンズ駆動部31aを動作させ第1コリメーションレンズ31を光軸方向に移動させることで、調整可能である。
第1レーザ射出光Ls1aの光束径と、第2レーザ射出光Ls2aの光束径を調整することで、それぞれのレーザ光の光束がワークWに与える平均エネルギ密度の大きさを調整することができる。
【0025】
図4は、上述のレーザ加工装置51を用いて、保護フィルム付きのワークWを切断する方法の例を示す斜視図である。
ワークWは、金属の基材Waの表面に保護フィルムWsが貼付されたものである。
【0026】
制御装置6は、ワークWに対し、第1レーザ射出光Ls1aを照射し、切断方向を示す矢印DRaの方向に移動させることでワークWを切断する。
その際、制御装置6は、第2レーザ射出光Ls2aを、第1レーザ射出光Ls1aの切断方向の前方に位置させると共に、第1レーザ射出光Ls1aよりも小出力かつ大きい光束でワークWに対し照射する。制御装置6は、第2レーザ射出光Ls2aのワークWへの照射を、単に出力及び光束の大小で制御するのみならず、連続照射及びパルス照射のいずれかの選択も含め、一定時間の平均エネルギ密度の大小を調整することでも制御する。
【0027】
これにより、ワークWの切断加工経路上にある部位は、第1レーザ射出光Ls1aが到達するよりも前に、一定時間の平均エネルギ密度が小さい第2レーザ射出光Ls2aが照射され保護フィルムWsが溶解する。保護フィルムWsが溶解した範囲をフィルム除去領域ARaとする。フィルム除去領域ARaは、図4において点描により示されている。
第1レーザ射出光Ls1aは、先行する第2レーザ射出光Ls2aによって形成されたフィルム除去領域ARaに対して照射され、ワークWの基材Waを切断する。
そのため、レーザ加工装置51は、レーザ加工ヘッド3を切断加工経路上に1回移動させるだけでワークWを切断すすることが可能である。よって、レーザ加工装置51によれば、加工プログラムが簡便で、加工プログラムの作成時間及びワークWの切断加工時間が短くて済む。
第1レーザ射出光Ls1aの光束の横断面形状は、円形に限らない。例えば、楕円形状であってもよい。光束が円形ではない場合は、少なくとも、加工に伴う第1レーザ射出光Ls1aの光束の、加工に伴う移動方向に直交する方向の幅を大きくすればよい。
【0028】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0029】
図5は、レーザ加工装置51を用いて、保護フィルムが貼付されていないワークW2を切断する方法の例を説明するための斜視図である。
制御装置6は、ガルバノスキャナ部7を動作させ、第2レーザ射出光Ls2aの照射位置を、第1レーザ射出光Ls1aの進行方向DRbに対する後方の、切断したカーフW2aの一方の縁部W2b1に設定する。
【0030】
縁部W2b1は、第1レーザ射出光Ls1aによる切断加工によって、カーフW2aに対して鋭いエッジになる場合があり、取り扱いに注意を要する。
制御装置6は、第2レーザ発振器2の出力及び第2レーザ射出光Ls2aの光束径の少なくとも一方を調整して、縁部W2b1に照射された第2レーザ射出光Ls2aの一定時間の平均エネルギ密度を、縁部W2b1が適度に溶融し、冷却硬化後に滑らかに面取りされた角部W2b2が形成されるように設定する。
【0031】
これにより、ワークW2の切断後の図5における奥側が製品で手前側が端材となる場合に、レーザ加工ヘッド3を切断加工経路上に一回移動させるのみで、製品の切断角部を滑らかに仕上げることができる。そのため、加工プログラムが簡便で、その作成時間及び切断加工時間が短くて済む。
【0032】
図6は、ワークW3を切断直後の一対の縁部W3b1の両方を、第2レーザ射出光Ls2aの照射によって滑らかに仕上げる加工方法の例を示す斜視図である。
制御装置6は、ガルバノスキャナ部7を動作させて第2レーザ射出光Ls2aの照射位置を、第1レーザ射出光Ls1aの切断方向DRcの後方の切断加工経路上に設定する。
また、制御装置6は、第2レーザ射出光Ls2aの照射光束を、第2コリメーションレンズ駆動部34aを動作させて第1レーザ射出光Ls1aによる切断で生じた一対の縁部W3b1,W3b1の両方に跨る大きさに設定する。
また、一対の縁部W3b1,W3b1に跨る大きさにした光束でも、縁部W3b1,W3b1を溶融して硬化後に滑らかな縁部W3b,W3bが形成されるように、第2レーザ発振器2の出力を大きくするよう調整する。
【0033】
これにより、ワークW3の切断で分離した二つの部材の両方が製品となる場合に、レーザ加工ヘッド3を切断加工経路上に一回移動させるのみで、両方の製品の切断角部を滑らかに仕上げることができる。そのため、加工プログラムが簡便で、その作成時間及び切断加工時間が短くて済む。
【0034】
第1レーザ発振器1及び第2レーザ発振器2の種類は、ファイバレーザに限定されるものではない。炭酸ガスレーザ,ディスクレーザ,YAGレーザ,ダイオードレーザ,エキシマレーザなどであってもよい。
制御装置6は、レーザ加工装置51に構造として一体的に備えていなくてもよい。制御装置6を、第1レーザ発振器1,第2レーザ発振器2,及びレーザ加工ヘッド3に対して別体とし、これらと無線又は有線で通信可能なように配置してもよい。
【0035】
第2レーザ射出光Ls2aの照射位置を移動して設定する機構としてガルバノスキャナを説明したが、ガルバノスキャナによらず、光学系を回転させるウイービングレンズ構造など、他の周知の構造を用いてもよい。
【0036】
レーザ加工装置51は、第1レーザ光Ls1のみを射出できる構成を基本モデルとし、第2レーザ光Ls2の射出機能はオプションにして使用者の選択によって備えるように構成してもよい。
この場合、第2レーザ光Ls2の射出機能は、使用者の希望に応じ、製造メーカからの納入当初から、或いは納入後のいわゆる後付けとして利用可能とされてもより。
そのため、レーザ加工ヘッド3は、ガルバノスキャナ部7と、第2コリメーションレンズ34及び第2コリメーションレンズ駆動部34aとを含む第2レーザ光ユニットとして筐体3aに対し着脱可能に構成しておくとよい。
【符号の説明】
【0037】
1 第1レーザ発振器
11 第1ファイバケーブル
11a カプラ
12 第2ファイバケーブル
12a カプラ
2 第2レーザ発振器
3 レーザ加工ヘッド
3a 筐体
3b 射出口
31 第1コリメーションレンズ
31a 第1コリメーションレンズ駆動部
32 ベンドミラー
33 集束レンズ
33a 集束レンズ駆動部
34 第2コリメーションレンズ
34a 第2コリメーションレンズ駆動部
4 ヘッド駆動装置
51 レーザ加工装置
6 制御装置
7 ガルバノスキャナ部
71 第1ミラー
71a 第1ミラー駆動部
72 第2ミラー
72a 第2ミラー駆動部
51 レーザ加工装置
CL1,CL2 光軸
Ls1 第1レーザ光
Ls1a 第1レーザ射出光
Ls2 第2レーザ光
Ls2a 第2レーザ射出光
P1,P2 位置
Ra 半径
W ワーク
Wa 基材
Ws 保護フィルム
λ1,λ2 波長
図1
図2
図3
図4
図5
図6