(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】エレクトロクロミック組成物及びそれを用いたエレクトロクロミックデバイス
(51)【国際特許分類】
C09K 9/02 20060101AFI20221215BHJP
G02F 1/15 20190101ALI20221215BHJP
【FI】
C09K9/02 A
G02F1/15 508
(21)【出願番号】P 2018538516
(86)(22)【出願日】2015-10-07
(86)【国際出願番号】 US2015054335
(87)【国際公開番号】W WO2017061995
(87)【国際公開日】2017-04-13
【審査請求日】2018-09-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】521058715
【氏名又は名称】ヴィトロ フラット グラス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】ワシリーエフ、エフゲニー、ウラジーミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ボリソフ、セルゲイ、オレゴヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ザイキン、パーヴェル、アナトーリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クルグリコフ、ニキータ、ヴァレリエヴィチ
【合議体】
【審判長】蔵野 雅昭
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】門前 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-500635(JP,A)
【文献】特表2012-501007(JP,A)
【文献】国際公開第2015/040033(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/040029(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/040030(WO,A2)
【文献】特開昭57-57779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K9
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジピリジンの第4級塩の形態のカソード成分と、2つの酸化状態の間で切り替わることができるフェロセン誘導体又は複素環式化合物の形態のアノード成分と、高分子増粘剤と、溶媒と、を含むエレクトロクロミック組成物であって、
前記カソード成分は、1,1’-ジアルキル-4,4’-ジピリジニウムカチオンと弱配位性アニオンとの塩及び1,1-(アルカン-アルファ,オメガ-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)カチオンと弱配位性アニオンとの塩を含
み、
前記アルキルが、C
1
-C
8
飽和アルキルから選択される、
エレクトロクロミック組成物。
【請求項2】
前記アルカンが、C
3-C
5アルカンから選択される、請求項1に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項3】
第4級塩の前記アニオンが、非求核性であり、BF
4
-、PF
6
-、ClO
4
-、CF
3SO
3
-、又は(CF
3SO
2)
2N
-若しくは(CF
3SO
2)
3C
-を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項4】
前記高分子増粘剤は、メタクリル酸メチル若しくはメタクリル酸メチルとアクリル及びメタクリル酸若しくはその塩とのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、又はポリ-3-ヒドロキシ酪酸若しくはそのコポリマーを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項5】
前記溶媒は、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、又はジ-,トリ-ポリエチレングリコール若しくはそれらのエステルを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項6】
0.4質量%~3.6質量%の前記カソード成分と、30質量%~45質量%の前記高分子増粘剤と、0.3質量%~3.0質量%の前記アノード成分と、前記溶媒である残部と、を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの酸化防止剤をさらに含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの酸化防止剤が、ポリフェノールを含む、請求項
7に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの酸化防止剤が、立体障害型フェノールを含む、請求項
7に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの酸化防止剤が、イオノールを含む、請求項
7に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項11】
紫外線フィルタをさらに含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項12】
前記紫外線フィルタが、ベンゾフェノンを含む、請求項
11に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項13】
前記紫外線フィルタが、シンナメートを含む、請求項
11に記載のエレクトロクロミック組成物。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック組成物を含むエレクトロクロミックデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される実施形態は、一般に、応用電気化学の分野に関し、特に、可変光学濃度の光フィルタ、発光変調器、及び情報画像ディスプレイなどの光の吸収を電気的に制御するデバイスにおいて使用されるエレクトロクロミック組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミズムは、制御電圧と呼ばれる電圧の印加により色又は光の透過率などの所定の光学特性を可逆的に変化させる特定の組成物において見られる物理的現象である。エレクトロクロミズムは、当業者に周知のスマートガラスなどの様々なエレクトロクロミックデバイスの動作の基礎を提供する。様々なタイプの光学材料及び構造を用いて、エレクトロクロミック特性を有する前述の化合物を構築することができ、その特定の構造はエレクトロクロミックデバイスの特定の目的又は用途に依存する。
【0003】
当業界では、ジピリジンの第4級塩をベースとするエレクトロクロミック組成物が知られている。そのようなエレクトロクロミック組成物の1つは、1,1’-ジベンジル-4,4’-ジピリジニウムジペルクロレート、1,1’-ジエチルフェロセン、メチルメタクリレートとアクリル酸とのコポリマー、及びプロピレンカーボネートを含む組成物である。このタイプの組成物の主な欠点は、印加電圧の影響下での光透過率の変化率が低く、広い表面積で使用するためのコーティングの製造において問題が生じることである。加えて、上記タイプのエレクトロクロミック組成物は、青色でのみ着色することができる。
【0004】
したがって、従来技術の上記欠点の影響を受けない新規かつ改善されたエレクトロクロミック組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の方法論は、従来のエレクトロクロミック組成物及びエレクトロクロミックデバイスに関連する上記及び他の問題の1つ又は複数を実質的に回避する方法及びシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載の実施形態の1つの態様によれば、ジピリジンの第4級塩の形態のカソード成分、2つの酸化状態の間で切り替わることができるフェロセン誘導体又は複素環式化合物の形態のアノード成分、高分子増粘剤及び溶媒を含むエレクトロクロミック組成物が提供され、カソード成分は、1,1’-ジアルキル-4,4’-ジピリジニウム又は1,1-(アルカン-アルファ,オメガ-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)のカチオンと弱配位性アニオンとの塩を含む。アルキル基は、C1-C8飽和アルキル、ベンジル、フェニル又は置換アリールから選択することができる。アルカンスペーサは、C3-C5アルカン鎖から選択することができる。第4級塩のアニオンは非求核性であるべきであり、その例としては、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、CF3SO3
-、又は(CF3SO2)2N-若しくは(CF3SO2)3C-が挙げられる。高分子増粘剤は、メタクリル酸メチル若しくはメタクリル酸メチルとアクリル及びメタクリル酸若しくはその塩とのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、又はポリ-3-ヒドロキシ酪酸若しくはそのコポリマーを含む。溶媒は、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、又はジ-,トリ-ポリエチレングリコール若しくはそれらのエステルを含む。当該成分は、以下の質量パーセント[%]量で使用される:合計で0.4~3.6のBF4
-、PF6
-、ClO4
-、CF3SO3
-若しくは(CF3SO2)2N-などのアニオンを有する1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウム又はBF4
-、PF6
-、ClO4
-、CF3SO3
-若しくは(CF3SO2)2N-などのアニオンを有する1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウムと1,1-(ブタン-1,4-ジイル)-ビス-(1’-メチル-4,4’-ジピリジニウム)との混合物の形態のカソード成分;0.3~3.0のフェロセン誘導体の形態のアノード成分;30~45のメタクリル酸メチル若しくはメタクリル酸メチルとアクリル及びメタクリル酸若しくはその塩とのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、又はポリ-3-ヒドロキシ酪酸若しくはそのコポリマーの形態の高分子増粘剤;及び、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、又はジ-,トリ-ポリエチレングリコール若しくはそれらのエステルの形態の溶媒である残部。
【0007】
本明細書に記載の実施形態の別の態様によれば、ジピリジンの第4級塩の形態のカソード成分、2つの酸化状態の間で切り替わることができるフェロセン誘導体又は複素環式化合物の形態のアノード成分、高分子増粘剤、及び溶媒を含むエレクトロクロミック組成物を含むエレクトロクロミックデバイスが提供され、カソード成分は、1,1’-ジアルキル-4,4’-ジピリジニウム又は1,1-(アルカン-アルファ,オメガ-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)のカチオンと弱配位性アニオンとの塩を含む。アルキル基は、C1-C8飽和アルキル、ベンジル、フェニル又は置換アリールから選択することができる。アルカンスペーサは、C3-C5アルカン鎖から選択することができる。第4級塩のアニオンは非求核性であるべきであり、その例としては、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、CF3SO3
-、又は(CF3SO2)2N-若しくは(CF3SO2)3C-が挙げられる。高分子増粘剤は、メタクリル酸メチル若しくはメタクリル酸メチルとアクリル及びメタクリル酸若しくはその塩とのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、又はポリ-3-ヒドロキシ酪酸若しくはそのコポリマーを含む。溶媒は、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、又はジ-,トリ-ポリエチレングリコール若しくはそれらのエステルを含む。当該成分は、以下の質量パーセント[%]量で使用される:0.4~3.6のBF4
-、PF6
-、ClO4
-、CF3SO3
-若しくは(CF3SO2)2N-などのアニオンを有する1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウム塩又はBF4
-、PF6
-、ClO4
-、CF3SO3
-若しくは(CF3SO2)2N-などのアニオンを有する1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウムと1,1-(ブタン-1,4-ジイル)-ビス-(1’-メチル-4,4’-ジピリジニウム)との混合物の形態のカソード成分;0.3~3.0のフェロセン誘導体の形態のアノード成分;30~45のメタクリル酸メチル若しくはメタクリル酸メチルとアクリル及びメタクリル酸若しくはその塩とのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、又はポリ-3-ヒドロキシ酪酸若しくはそのコポリマーの形態の高分子増粘剤;及び、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、又はジ-,トリ-ポリエチレングリコール若しくはそれらのエステルの形態の溶媒である残部。
【0008】
本明細書に記載の実施形態のさらに別の態様によれば、エレクトロクロミック組成物を調製する方法が提供され、この方法は、ジピリジンの第4級塩の形態のカソード成分を提供することと、2つの酸化状態の間で切り替わることができるフェロセン誘導体又は複素環式化合物の形態のアノード成分を提供することと、高分子増粘剤を提供することと、溶媒を提供することと、を含み、カソード成分は、1,1’-ジアルキル-4,4’-ジピリジニウム又は1,1-(アルカン-アルファ,オメガ-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)のカチオンと弱配位性アニオンとの塩を含む。アルキル基は、C1-C8飽和アルキル、ベンジル、フェニル又は置換アリールから選択することができる。アルカンスペーサは、C3-C5アルカン鎖から選択することができる。第4級塩のアニオンは非求核性であるべきであり、その例としては、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、CF3SO3
-、又は(CF3SO2)2N-若しくは(CF3SO2)3C-が挙げられる。高分子増粘剤は、メタクリル酸メチル若しくはメタクリル酸メチルとアクリル及びメタクリル酸若しくはその塩とのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、又はポリ-3-ヒドロキシ酪酸若しくはそのコポリマーを含む。溶媒は、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、又はジ-,トリ-ポリエチレングリコール若しくはそれらのエステルを含む。当該成分は、以下の質量パーセント[%]量で使用される:0.4~3.6のBF4
-、PF6
-、ClO4
-、CF3SO3
-若しくは(CF3SO2)2N-などのアニオンを有する1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウム塩又はBF4
-、PF6
-、ClO4
-、CF3SO3
-若しくは(CF3SO2)2N-などのアニオンを有する1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウムと1,1-(ブタン-1,4-ジイル)-ビス-(1’-メチル-4,4’-ジピリジニウム)との混合物の形態のカソード成分;0.3~3.0のフェロセン誘導体の形態のアノード成分;30~45のメタクリル酸メチル若しくはメタクリル酸メチルとアクリル及びメタクリル酸若しくはその塩とのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、又はポリ-3-ヒドロキシ酪酸若しくはそのコポリマーの形態の高分子増粘剤;及び、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、又はジ-,トリ-ポリエチレングリコール若しくはそれらのエステルの形態の溶媒である残部。
【0009】
本発明に関連するさらなる態様は、以下の説明に一部が記載され、一部はその説明から明らかになるか、又は本発明の実施によって習得され得る。本発明の態様は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲で特に指摘される要素及び様々な要素の組み合わせ並びに態様によって実現及び達成され得る。
【0010】
上記及び下記の説明は、例示的及び説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載の発明又はその応用をいかなる形でも限定するものではないことを理解されたい。
【0011】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本発明の実施形態を例示し、説明と共に、本発明の技術の原理を説明し示す役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、光変調デバイス、自動車のガラス若しくはミラー、建物の窓、又は他の透明な面若しくは反射面などのエレクトロクロミックデバイスにおける説明された組成物の実施形態の例示的な適用を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明では、同一の機能要素が同様の番号で示されている添付図面を参照する。前述の添付図面は、本発明の原理に従った特定の実施形態及び実施例を示すものであって、限定としてではなく、例示として示す。これらの実施態様は、当業者が本発明を実施することができるように十分に詳細に記載されており、他の実施態様を利用してもよく、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく様々な要素の構造の変化及び/又は置換が行われてもよい。したがって、以下の詳細な説明は、限定された意味で解釈されるべきではない。
【0014】
本明細書に記載の実施形態の1つの態様によれば、可変光学濃度の光フィルタ、発光変調器、及び情報画像ディスプレイなどの光の吸収を電気的に制御する(電圧制御する)デバイスで使用するための新規なエレクトロクロミック組成物が提供される。記載されたエレクトロクロミック組成物の様々な実施形態は、例えば、自然光の流れを調節することによって室内の微気候を制御することができる建築物の可変光透過コーティングを作るために建設業界で使用できる。具体的には、生体適合性及び生分解性成分に基づいて製造された有機エレクトロクロミック組成物の例示的な実施形態が記載される。記載された例示的なエレクトロクロミック組成物は、制御された電圧の所定の変化に応答して、延びた耐用年数及び光透過率の高い変化率を特徴とする。加えて、記載された新規な製造技術は、広い範囲の光吸収スペクトル及びコーティングカラーでエレクトロクロミック組成物を調製することを可能にする。
【0015】
1又は複数の態様において、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、CF3SO3
-又は(CF3SO2)2N-のアニオンを有する1,1’-ジアルキル-4,4’-ジピリジニウムなどのカソード成分と、0.3~3.0%の5,10-ジヒドロフェナジン誘導体などのアノード成分と、0.5%のBF4
-、PF6
-、ClO4
-、CF3SO3
-又は(CF3SO2)2N-のアニオンを有するリチウム又はテトラアルキルアンモニウム塩などの電極反応促進剤添加物と、30~45%のメタクリル酸メチル若しくはメタクリル酸メチルとアクリル及びメタクリル酸若しくはその塩とのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、又はポリ-3-ヒドロキシ酪酸若しくはそのコポリマーの形態の高分子増粘剤と、残部としてのプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、又はジ-,トリ-ポリエチレングリコール若しくはそれらのエステルなどの溶媒と、を含むエレクトロクロミック組成物が提供される。
【0016】
具体的には、1つの例示的な実施形態において、エレクトロクロミック組成物は、BF4
-、PF6
-などの錯フッ化物アニオン、及びCF3SO3
-又は(CF3SO2)2N-などの有機アニオンを有する1,1’-ジアルキル-4,4’-ビピリジニウムの形態のカソード成分と、5,10-ジヒドロフェナジン誘導体の形態のアノード成分と、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、又はジ-,トリ-ポリエチレングリコール若しくはそれらのエステルなどの溶媒と、メタクリル酸メチル若しくはメタクリル酸メチルとアクリル及びメタクリル酸若しくはその塩とのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、又はポリ-3-ヒドロキシ酪酸若しくはそのコポリマーの形態のポリマーを含み、当該成分は以下の質量パーセント量で使用される:0.3~3.2%のBF4
-、PF6
-、CF3SO3
-若しくは(CF3SO2)2N-などのアニオンを有する1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウム又は0.5~4.4のBF4
-、PF6
-、CF3SO3
-若しくは(CF3SO2)2N-などのアニオンを有する1,1’-ジベンジル-4,4’-ジピリジンの形態のカソード成分;0.3~3.0%の5,10-ジヒドロフェナジン誘導体の形態のアノード成分;30~45%の高分子増粘剤;及び、溶媒である残部。記載された例示的なエレクトロクロミック組成物は、緑色着色フィルムを調製するためのアノード成分の置換を特徴とする。
【0017】
具体的には、1つの例示的な実施形態において、エレクトロクロミック組成物は、BF4
-、PF6
-などの錯フッ化物アニオン及びCF3SO3
-又は(CF3SO2)2N-などの有機アニオンを有する1,1-(アルカン-アルファ,オメガ-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)塩の形態のカソード成分と、フェロセン誘導体の形態のアノード成分と、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、又はジ-,トリ-ポリエチレングリコール若しくはそれらのエステルなどの溶媒と、メタクリル酸メチル、メタクリル酸及びそのカルシウム塩のコポリマーの形態のポリマーと、を含み、当該成分は以下の質量パーセント量で使用される:0.3~3.2%のBF4
-などのアニオンを有する1,1-(プロパン-1,3-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)又は0.5~4.4のBF4
-などのアニオンを有する1,1-(ブタン-1,4-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)の形態のカソード成分;0.3~3.0%のフェロセン誘導体の形態のアノード成分;30~45%の高分子増粘剤;及び、溶媒である残部。記載されたエレクトロクロミック組成物は、紫色着色フィルムを調製するためのカソード成分の置換を特徴とする。
【0018】
具体的には、1つの例示的な実施形態において、エレクトロクロミック組成物は、BF4
-、PF6
-などの錯フッ化物アニオン及びCF3SO3
-又は(CF3SO2)2N-などの有機アニオンを有する1,1-(アルカン-アルファ,オメガ-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)塩の形態のカソード成分と、5,10-ジヒドロフェナジン誘導体の形態のアノード成分と、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、又はジ-,トリ-ポリエチレングリコール若しくはそれらのエステルなどの溶媒と、メタクリル酸メチル、メタクリル酸及びそのカルシウム塩のコポリマーの形態のポリマーと、を含み、当該成分は以下の質量パーセント量で使用される:0.3~3.2%のBF4
-などのアニオンを有する1,1-(プロパン-1,3-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)又は0.5~4.4%のBF4
-などのアニオンを有する1,1-(ブタン-1,4-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)の形態のカソード成分;0.3~3.0%の5,10-ジヒドロフェナジン誘導体の形態のアノード成分;30~45%の高分子増粘剤;及び、溶媒である残部。記載されたエレクトロクロミック組成物は、茶色着色フィルムを調製するためのカソード及びアノード成分の置換を特徴とする。
【0019】
具体的には、1つの例示的な実施形態において、エレクトロクロミック組成物は、BF4
-、PF6
-などの錯フッ化物アニオン及びCF3SO3
-又は(CF3SO2)2N-などの有機アニオンを有する1,1’-ジアルキル-4,4’-ビピリジニウムと、BF4
-、PF6
-などの錯フッ化物アニオン及びCF3SO3
-又は(CF3SO2)2N-などの有機アニオンを有する1,1-(アルカン-アルファ,オメガ-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)塩と、の混合物の形態のカソード成分と、5,10-ジヒドロフェナジン誘導体の形態のアノード成分と、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、N-メチルピロリドン、又はジ-,トリ-ポリエチレングリコール若しくはそれらのエステルなどの溶媒と、メタクリル酸メチル、メタクリル酸及びそのカルシウム塩のコポリマーの形態のポリマーと、を含み、当該成分は以下の質量パーセント量で使用される:0.1~1.2%のBF4
-などのアニオンを有する1,1-(プロパン-1,3-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)又は0.5~4.4%のBF4
-などのアニオンを有する1,1-(ブタン-1,4-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)の形態のカソード成分;0.2~2.4%のアニオンBF4
-を有する1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウムの形態のカソード成分;0.3~3.0%の5,10-ジヒドロフェナジン誘導体の形態のアノード成分;30~45%の高分子増粘剤;及び、溶媒である残部。記載されたエレクトロクロミック組成物は、黒色着色フィルムを調製するためのカソード及びアノード成分の置換を特徴とする。
【0020】
1又は複数の実施形態において、添加剤は、ポリフェノール、立体障害型フェノール、及び/又はイオノールを包含するがこれらに限定されない酸化防止剤と、ベンゾフェノン及びトリアジン及びシンナメートなどのUVフィルタと、を包含する。
【0021】
記載された成分の改変は、組成物に新しい特性、すなわち改善された耐用年数及び制御電圧の適用による光透過率の変化率の増加、異なる着色カラー、及び印可された電圧に応じてフィルムの色を変化させる機能を与えることに留意すべきである。
【0022】
1又は複数の実施形態において、組成物を試験するためのエレクトロクロミックデバイスは、ドーピング添加剤を有するITO(インジウム-スズ酸化物)フィルムの半導体コーティング又は導電性金属メッシュで被覆されたフィルムで内側が被覆された2つのポリマーフィルムからなる。デバイス内のフィルム間の距離は、エレクトロクロミック層の一定の厚さを維持するためにエレクトロクロミック組成物に導入された不活性充填剤の厚さによって決定された。エレクトロクロミック組成物をフィルムの間に導入し、次いで両フィルムを周囲にわたって互いに結合させた。
【0023】
記載されたエレクトロクロミック組成物のある特定の実施例を、以下に記載する。
【0024】
実施例1
【0025】
第1の例示的組成物は、1,1’-ジメチル-4,4’-ジピリジニウムビス(テトラフルオロボレート)を濃度1.2%で、5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジンを濃度0.8%で、メチルメタクリレートとメタクリル酸とメタクリル酸のカルシウム塩とのコポリマーを濃度35%で、プロピレンカーボネートに溶解することによって調整された。得られた組成物を用いて、電極間スペースの厚さが100μmであるエレクトロクロミックデバイスを作製した。初期状態では、組成物は淡緑色を呈していた。1.5Vの電圧を印加すると、色が深緑色に変わった。初期透過率は70%であった。エレクトロクロミックデバイスを、以下の条件下で、1日につき8時間試験した:U=1.5Vでの30秒間の着色及び電極を回路にすることによる30秒間の退色。非着色状態での3ヶ月及び6ヶ月の作業の後、光透過率はそれぞれ65%及び61%であった。
【0026】
実施例2
【0027】
第2の例示的組成物は、1,1-(ブタン-1,4-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)テトラキス(テトラフルオロボレート)を濃度1%で、5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジンを濃度0.5%で、メチルアクリレートとアクリル酸とのコポリマーを35%の濃度で、プロピレンカーボネートに溶解することによって調整された。得られた組成物を用いてエレクトロクロミックデバイスの100μmの電極間スペースを充填した。初期状態では組成物は実質的に無色であった。1.5Vの電圧を印加すると、色は茶色に変わった。初期透過率は78%であった。エレクトロクロミックデバイスを、以下の条件下で、1日につき8時間試験した:U=1.5Vでの30秒間の着色及び電極を回路にすることによる30秒間の退色。非着色状態での3ヶ月及び6ヶ月の作業後、透過率はそれぞれ75%及び69%であった。
【0028】
実施例3
【0029】
第3の例示的組成物は、1,1-(ブタン-1,4-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)テトラキス(テトラフルオロボレート)を濃度1%で、フェロセンを濃度0.5%で、メチルアクリレートとアクリル酸と0.5%のそのカルシウム塩とのコポリマーを濃度35%で、プロピレンカーボネートに溶解することによって調整された。得られた組成物を用いてエレクトロクロミックデバイスの100μmの電極間スペースを充填した。初期状態では、組成物はわずかに黄色であった。1Vの電圧を印加すると、組成物は色が青色に変わり、電圧が1.5Vに上昇すると濃い紫色になった。初期透過率は77%であった。エレクトロクロミックデバイスを、以下の条件下で、1日につき8時間試験した:U=1.5Vでの30秒間の着色及び電極を回路にすることによる30秒間の退色。非着色状態での3ヶ月及び6ヶ月の作業後、透過率はそれぞれ73%及び65%であった。
【0030】
実施例4
【0031】
第4の例示的組成物は、1,1-(ブタン-1,4-ジイル)-ビス-(1’-アルキル-4,4’-ジピリジニウム)テトラキス(テトラフルオロボレート)を濃度0.5%で、1,1’-ジメチル-4,4’-ビピリジニウムビス(テトラフルオロボレート)を濃度1.2%で、5,10-ジメチル-5,10-ジヒドロフェナジンを濃度1%で、メチルアクリレートとアクリル酸と0.5%のそのカルシウム塩とのコポリマーを濃度35%で、プロピレンカーボネートに溶解することによって調整された。得られた組成物を用いてエレクトロクロミックデバイスの100μmの電極間スペースを充填した。初期状態では組成物は実質的に無色であった。1.5Vの電圧を印加すると、組成物は黒色に変わった。初期透過率は77%であった。エレクトロクロミックデバイスを、以下の条件下で、1日につき8時間試験した:U=1.5Vでの30秒間の着色及び電極を回路にすることによる30秒間の退色。非着色状態での3ヶ月及び6ヶ月の作業後、透過率はそれぞれ74%及び69%であった。
【0032】
1又は複数の実施形態において、濃度の上限は、使用される溶媒中のジピリジンの第4級塩の溶解度によって決定され、下限は、実用には適さなくなった電気的に着色した状態の光吸収の最小値によって定義された。さらに、提案された組成物は、電極反応を加速ししたがってデバイスのスイッチング時間を短縮する添加剤を含む。
【0033】
本明細書に記載のエレクトロクロミック組成物の実施形態は、延びた耐用年数を有し、その期間に、主な光学的な光の特性、すなわち光の透過率、が維持される。
【0034】
図1は、光変調デバイス、自動車のガラス若しくはミラー、建物の窓、又は他の透明な面若しくは反射面などのエレクトロクロミックデバイスにおける説明された組成物の実施形態の例示的な適用を示す。
【0035】
図1に示す例示的な実施形態では、記載されたエレクトロクロミック組成物(3)は、2つの透明導電層(2)の間に位置する任意の厚さの層(3)として具体化される。エレクトロクロミック層の厚さは、特定の用途によって規定され、25~200μmの範囲であり得る。透明導電層(2)は、保護及び固定層として機能する基板(1)上に配置される。制御電圧は、(4)ワイヤ又はループによって、透明導電層に供給される。
【0036】
最後に、本明細書で説明されるプロセス及び技術は、本質的に特定の装置に関連しているわけではなく、成分の任意の適切な組み合わせによって実施され得ることを理解されたい。さらに、本明細書に記載の教示に従って、様々なタイプの汎用デバイスを使用することができる。また、本明細書に記載の方法を実行するための特殊化された装置を構築することが有利であることが示されてもよい。本発明を特定の実施例に関連して説明してきたが、これらはあらゆる点で限定的ではなく例示的であることが意図されている。
【0037】
さらに、本明細書の考察及び本明細書に開示された本発明の実施から当業者には本発明の他の実施形態が明らかであろう。記載された実施形態の様々な態様及び/又は成分は、電気的に制御された光の吸収を有するデバイス及び対応するエレクトロクロミックデバイスで使用するためのエレクトロクロミック組成物において、単独で又は任意の組み合わせで使用できる。本明細書及び実施例は、例示的なものとして考えられることが意図され、本発明の真の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。