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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】樹脂発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/12 20060101AFI20221215BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20221215BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20221215BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08J9/12 CEY
C08L33/04
C08L69/00
C08L9/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019013092
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020122044
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】大西 隆司
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼原 進悟
(72)【発明者】
【氏名】河野 晃丈
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-044105(JP,A)
【文献】特許第6151421(JP,B2)
【文献】特開平05-093082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60、67/20
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環構造を有する構造単位を主鎖に有するアクリル系重合体と、
前記アクリル系重合体以外の他の重合体と、
を含み、
150℃以上のガラス転移温度を有する樹脂発泡体であって、
前記環構造は、N-置換マレイミド単量体に由来する構造であり、
前記樹脂発泡体中の前記アクリル系重合体の含有率は50重量%以上であり、
前記他の重合体がポリカーボネートを含み、
前記アクリル系重合体のガラス転移温度と前記他の重合体のガラス転移温度との差が15℃以下であり、
前記樹脂発泡体中の前記他の重合体の含有率は10重量%以上である樹脂発泡体。
【請求項2】
前記ポリカーボネートの重量平均分子量が1.5万以上である、請求項に記載の樹脂発泡体。
【請求項3】
環構造を有する構造単位を主鎖に有するアクリル系重合体と、
ゴム質重合体粒子と、
を含み、
150℃以上のガラス転移温度を有する樹脂発泡体であって、
前記環構造は、N-置換マレイミド単量体に由来する構造であり、
前記樹脂発泡体中の前記アクリル系重合体の含有率は50重量%以上であり、
前記ゴム質重合体粒子は、コアと、前記コアを被覆しているシェルとを有し、
前記コアは、共役ジエン単量体に由来する構造単位を含み、
前記共役ジエン単量体は、ブタジエン単量体を含み、
前記樹脂発泡体中の前記ゴム質重合体粒子の含有率は5重量%以上である樹脂発泡体。
【請求項4】
前記シェルは、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を含む、請求項に記載の樹脂発泡体。
【請求項5】
前記ゴム質重合体粒子の平均粒子径が1μm以下である、請求項3又は4に記載の樹脂発泡体。
【請求項6】
前記アクリル系重合体における前記環構造の含有率は15~50重量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂発泡体。
【請求項7】
前記アクリル系重合体は、芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位を含み、
前記アクリル系重合体における前記芳香族ビニル化合物に由来する前記構造単位の含有率が30重量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂発泡体。
【請求項8】
みかけ密度が1.1g/cm3以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂発泡体。
【請求項9】
シートの形状を有するとともに、全光線透過率が50%以下であり、かつヘイズが70%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂発泡体。
【請求項10】
曲げひずみが2.8%よりも大きい、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体は、樹脂自体を射出成形又は押出成形することによって得られる成形体に比べて、軽量であるとともに断熱性及び緩衝性に優れている。
【0003】
近年では、高温条件下で使用可能な樹脂発泡体が求められている。このような樹脂発泡体として、例えば、特許文献1には、ポリアミドの発泡体が開示されている。特許文献2には、メタクリル酸メチル単量体に由来する構造単位及び無水グルタル酸構造を有する構造単位を含む共重合体の樹脂発泡体が開示されている。特許文献3には、メタクリル酸メチル及び無水マレイン酸を含む重合性溶液から得られた重合体の樹脂発泡体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-126545号公報
【文献】特開昭60-152533号公報
【文献】特開2006-45256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によると、高い耐熱性を有する樹脂発泡体は、機械的強度に劣ることがある。
【0006】
本発明は、耐熱性及び機械的強度の両立に適した樹脂発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
環構造を有する構造単位を主鎖に有するアクリル系重合体と、
前記アクリル系重合体以外の他の重合体と、
を含み、
140℃以上のガラス転移温度を有する樹脂発泡体を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、
環構造を有する構造単位を主鎖に有するアクリル系重合体と、
ゴム質重合体粒子と、
を含み、
140℃以上のガラス転移温度を有する樹脂発泡体を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性及び機械的強度の両立に適した樹脂発泡体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一形態では、アクリル系重合体のガラス転移温度と、他の重合体のガラス転移温度との差が15℃以下である。
【0011】
本発明の一形態では、他の重合体がポリカーボネートを含む。
【0012】
本発明の一形態では、ポリカーボネートの重量平均分子量が1.5万以上である。
【0013】
本発明の一形態では、ゴム質重合体粒子は、コアと、コアを被覆しているシェルとを有する。
【0014】
本発明の一形態では、コアは、共役ジエン単量体に由来する構造単位を含む。
【0015】
本発明の一形態では、共役ジエン単量体は、ブタジエン単量体を含む。
【0016】
本発明の一形態では、シェルは、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を含む。
【0017】
本発明の一形態では、ゴム質重合体粒子の平均粒子径が1μm以下である。
【0018】
本発明の一形態では、環構造は、N-置換マレイミド単量体に由来する構造、グルタルイミド構造及びラクトン環構造からなる群より選ばれる少なくとも1つである。
【0019】
本発明の一形態では、アクリル系重合体は、芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位を含み、アクリル系重合体における芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有率が30重量%以下である。
【0020】
本発明の一形態では、樹脂発泡体のみかけ密度が1.1g/cm3以下である。
【0021】
本発明の一形態では、樹脂発泡体は、シートの形状を有するとともに、全光線透過率が50%以下であり、かつヘイズが70%以上である。
【0022】
以下、本発明の詳細を説明するが、以下の説明は、本発明を特定の実施形態に制限する趣旨ではない。
【0023】
本実施形態の樹脂発泡体は、環構造を有する構造単位を主鎖に有するアクリル系重合体(A)と、アクリル系重合体(A)以外の他の重合体(B)とを含む。
【0024】
本明細書において、「樹脂」の語は、重合体よりも広い概念を示す。樹脂は、1種又は2種以上の重合体を含んでいてもよく、必要に応じて、重合体以外の材料をさらに含んでいてもよい。重合体以外の材料としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、難燃剤、色素などの添加剤が挙げられる。すなわち、本実施形態の樹脂発泡体は、必要に応じて、添加剤(C)をさらに含んでいてもよい。
【0025】
[アクリル系重合体(A)]
アクリル系重合体(A)は、環構造を有する構造単位を主鎖に有するアクリル系重合体であれば特に限定されない。本明細書において、「アクリル系重合体」は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を主成分として含む重合体を意味する。「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを意味する。「主成分」は、重合体に重量基準で最も多く含まれる構造単位を意味する。
【0026】
アクリル系重合体(A)は、例えば、以下の式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を有する。
【0027】
【化1】
【0028】
式(1)において、R1は、水素原子又はメチル基である。R2は、炭素数1~12の炭化水素基である。R2の炭化水素基の炭素数は、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下が特に好ましい。R2の炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよい。R2の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基及びスルホン基が挙げられる。R2の炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子によって置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。R2の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基及びラウリル基が挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、例えば、以下の式(2)で表される。
【0030】
【化2】
【0031】
式(2)において、R1及びR2は、式(1)と同じである。
【0032】
式(2)の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸t-ペンチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸へキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸t-ペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリルなどのメタクリル酸エステルが挙げられる。アクリル系重合体(A)は、式(2)の単量体に由来する構造単位を2種以上含んでいてもよい。アクリル系重合体(A)は、メタクリル酸メチル(MMA)単量体に由来する構造単位を含むことが好ましい。このとき、樹脂発泡体は、良好な光線透過性及び熱安定性を有する。
【0033】
アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は、樹脂発泡体の硬質性と柔軟性とのバランス、樹脂発泡体の光線透過性、及び、アクリル系重合体(A)の発泡安定性の観点から、例えば30重量%以上であり、好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは50重量%以上であり、さらに好ましくは60重量%以上であり、特に好ましくは70重量%以上であり、とりわけ好ましくは80重量%以上である。アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は、好ましくは99重量%以下であり、より好ましくは95重量%以下であり、さらに好ましくは90重量%以下であり、特に好ましくは85重量%以下である。アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は、30~85重量%であることが好ましく、40~85重量%であることがより好ましく、50~85重量%であることがさらに好ましい。
【0034】
環構造を有する構造単位における環構造は、特に限定されず、例えば、N-置換マレイミド単量体に由来する構造、グルタルイミド構造、ラクトン環構造、無水マレイン酸単量体に由来する構造及び無水グルタル酸構造からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、耐熱性及び耐湿性の観点から、好ましくはN-置換マレイミド単量体に由来する構造、グルタルイミド構造及びラクトン環構造からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、特に好ましくはN-置換マレイミド単量体に由来する構造である。N-置換マレイミド単量体を含む溶液において重合反応を行ったとき、当該溶液では、ゲル化が抑制されることがある。すなわち、N-置換マレイミド単量体に由来する構造の含有率が高いアクリル系重合体(A)は、作製が容易である。
【0035】
N-置換マレイミド単量体に由来する構造及び無水マレイン酸単量体に由来する構造の一例を以下の式(3)に示す。
【0036】
【化3】
【0037】
式(3)において、R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基である。R3及びR4のアルキル基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよい。R3及びR4のアルキル基の炭素数は、好ましくは1~6である。R3及びR4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基が挙げられる。R3及びR4のアリール基としては、例えば、ベンジル基及びフェニル基が挙げられる。R3及びR4は、互いに独立して、水素原子、メチル基、ベンジル基又はフェニル基であることが好ましい。R3及びR4は、水素原子であることがより好ましい。
【0038】
式(3)のX1は、酸素原子又は窒素原子である。X1が酸素原子のとき、R5は存在せず、式(3)の環構造は、無水マレイン酸単量体に由来する構造である。X1が窒素原子のとき、R5は、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~12のアルケニル基、炭素数6~14のアリール基、シアノ基又はヒドロキシ基であり、式(3)の環構造は、N-置換マレイミド単量体に由来する構造である。R5のアルキル基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよい。R5のアルキル基は、炭素数3~12のシクロアルキル基であってもよい。R5のアルキル基は、置換基を有していてもよい。R5のアルキル基が有する置換基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基及びヒドロキシ基が挙げられる。R5のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基が挙げられる。
【0039】
5のアルケニル基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよい。R5のアルケニル基は、置換基を有していてもよい。R5のアルケニル基が有する置換基としては、例えば、フェニル基及びベンジル基が挙げられる。R5のアルケニル基としては、例えば、ビニル基が挙げられる。
【0040】
5のアリール基の炭素数は、好ましくは6~12である。R5のアリール基は、置換基を有していてもよい。R5のアリール基が有する置換基としては、例えば、アルキル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基及びカルボキシル基が挙げられる。R5のアリール基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子によって置換されていてもよい。R5のアリール基としては、例えば、フェニル基、クロロフェニル基、メチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、ニトロフェニル基、カルボキシフェニル基、トリブロモフェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0041】
N-置換マレイミド単量体及び無水マレイン酸単量体は、例えば、以下の式(4)で表される。
【0042】
【化4】
【0043】
式(4)において、R3、R4、R5及びX1は、式(3)と同じである。
【0044】
式(4)のN-置換マレイミド単量体としては、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-イソブチルマレイミド、N-t-ブチルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ステアリルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロプロピルマレイミド、N-シクロブチルマレイミド、N-シクロペンチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-ニトロフェニルマレイミド、N-トリブロモフェニルマレイミド、N-ヒドロキシエチルマレイミドが挙げられる。アクリル系重合体(A)は、式(4)のN-置換マレイミド単量体に由来する構造単位を2種以上含んでいてもよい。アクリル系重合体(A)は、耐熱性及び耐湿熱性の観点から、N-フェニルマレイミド単量体に由来する構造単位及びN-シクロヘキシルマレイミド単量体に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。N-フェニルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミドによれば、アクリル系重合体(A)を容易に作製できる。アクリル系重合体(A)がN-シクロヘキシルマレイミド単量体に由来する構造を有するとき、アクリル系重合体(A)の着色が抑制されるとともに、アクリル系重合体(A)の耐候性を向上できる。式(4)の無水マレイン酸単量体としては、例えば、無水マレイン酸が挙げられる。
【0045】
グルタルイミド構造及び無水グルタル酸構造の一例を、以下の式(5)に示す。
【0046】
【化5】
【0047】
式(5)において、R6及びR7は、互いに独立して、水素原子又はメチル基である。式(5)のX2は、酸素原子又は窒素原子である。X2が酸素原子のとき、R8は存在せず、X2が窒素原子のとき、R8は、水素原子、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はベンジル基である。R8のフェニル基及びベンジル基では、ベンゼン環の1以上の水素原子が置換されていてもよい。X2が窒素原子のとき、R8は、好ましくは、メチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基であり、より好ましくは、メチル基、シクロヘキシル基、フェニル基である。
【0048】
2が窒素原子のとき、式(5)の環構造はグルタルイミド構造である。グルタルイミド構造は、例えば、メチルアミン等のイミド化剤によりアクリル系重合体を環化して(イミド化して)形成できる。X2が酸素原子のとき、式(5)の環構造は無水グルタル酸構造である。無水グルタル酸構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体と(メタ)アクリル酸単量体との共重合体に対して、分子内の環化反応(脱アルコール環化縮合反応)を進行させて形成できる。
【0049】
ラクトン環構造の一例を以下の式(6)に示す。
【0050】
【化6】
【0051】
式(6)において、R9及びR10は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、当該炭化水素基は酸素原子を含んでいてもよい。R9及びR10の炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれであってもよい。R9及びR10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシフェニル基、ベンジル基、ナフチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ラウリル基及びステアリル基が挙げられる。R9の炭化水素基は、式-COOR12で表されるエステル基であってもよい。なお、R12は、水素原子又は炭素数1~19の炭化水素基であり、当該炭化水素基は酸素原子を含んでいてもよい。R12の炭化水素基としては、例えば、R9及びR10の炭化水素基として例示したものが挙げられる。
【0052】
式(6)において、R11は、炭素数0~3のアルキレン基を表す。ただし、R11の炭素数が0の場合、R11は結合手のみを表す。このとき、式(6)のラクトン環構造は、5員環構造である。R11の炭素数が2の場合、ラクトン環構造は、7員環構造であってもよく、側鎖にメチル基を有する6員環構造であってもよい。R11の炭素数が0であり、ラクトン環構造が5員環構造である場合、ラクトン環構造は、以下の式(7)で表される。
【0053】
【化7】
【0054】
式(7)において、R9及びR10は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、当該炭化水素基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0055】
式(6)に示すラクトン環構造は、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)と2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)とを含む単量体群を共重合させた後、得られた共重合体において、隣り合ったMMA単位とMHMA単位とを脱アルコール環化縮合させることによって形成できる。このとき、以下の式(8)に示すとおり、式(6)におけるR9はCO2CH3基であり、R10はメチル基であり、R11はメチレン基である。
【0056】
【化8】
【0057】
ラクトン環構造を有するアクリル系重合体(A)は、例えば、特開2000-230016号公報及び特開2007-262396号公報に記載の方法で作製できる。なお、本実施形態では、脱アルコール環化縮合反応で生じるアルコールをそのまま発泡剤として使用してもよい。
【0058】
アクリル系重合体(A)における環構造(環構造を有する構造単位)の含有率は、例えば、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上又は30重量%以上である。アクリル系重合体(A)における環構造の含有率は、例えば、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下又は5重量%以下である。アクリル系重合体(A)における環構造の含有率は、耐熱性の観点から、15~50重量%であることが好ましく、20~50重量%がより好ましく、25~50重量%がさらに好ましい。
【0059】
アクリル系重合体(A)は、以下の式(9)で表される芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位をさらに有していてもよい。
【0060】
【化9】
【0061】
式(9)において、R13は、芳香族基である。R14は、水素原子である。R15及びR16は、互いに独立して、水素原子又はメチル基である。R13の芳香族基としては、例えば、炭素数6~14のアリール基、及び、炭素数3~12の複素芳香族基が挙げられる。R13のアリール基及び複素芳香族基は、置換基を有していてもよい。R13のアリール基及び複素芳香族基が有する置換基としては、例えば、アルキル基及びアルコキシ基が挙げられる。R13のアリール基及び複素芳香族基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子によって置換されていてもよい。R13のアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基及びメトキシフェニル基が挙げられる。R13の複素芳香族基としては、例えば、カルバゾリル基、ピリジル基、イミダゾリル基及びチエニル基が挙げられる。
【0062】
芳香族ビニル化合物単量体は、例えば、以下の式(10)で表される。
【0063】
【化10】
【0064】
式(10)において、R13~R16は、式(9)と同じである。
【0065】
式(10)の単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、メトキシスチレン、ハロゲン化スチレン、N-ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール及びビニルチオフェンが挙げられる。アクリル系重合体(A)は、式(10)の単量体に由来する構造単位を1種又は2種以上含んでいてもよい。アクリル系重合体(A)は、例えば、スチレン単量体に由来する構造単位を含む。
【0066】
アクリル系重合体(A)における芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位の含有率は、例えば30重量%以下であり、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。このとき、アクリル系重合体(A)は、良好な硬質性及び透明性を有する。特に、アクリル系重合体(A)が黄色味を帯びることを抑制できる。アクリル系重合体(A)がスチレン単量体に由来する構造単位を有するとき、アクリル系重合体(A)におけるスチレン単量体に由来する構造単位の含有率は、耐候性及び耐油性の観点から、10重量%以下であることが好ましい。アクリル系重合体(A)におけるスチレン単量体に由来する構造単位の含有率は、1重量%以上であってもよく、5重量%以上であってもよい。アクリル系重合体(A)におけるスチレン単量体に由来する構造単位の含有率は、0~10重量%であってもよく、1~10重量%であってもよく、5~10重量%であってもよい。アクリル系重合体(A)におけるスチレン単量体に由来する構造単位の含有率の他の例としては、例えば0~30重量%であり、好ましくは5~30重量%である。
【0067】
アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位、環構造を有する構造単位及び芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位以外の他の構造単位を含んでいてもよい。他の構造単位を形成する単量体としては、例えば、式(10)の単量体以外の他のビニル化合物が挙げられる。他のビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル及びN-ビニルピロリドンが挙げられる。アクリル系重合体(A)は、他の構造単位として、マクロモノマーから形成される構造単位を含んでいてもよい。アクリル系重合体(A)におけるアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物単量体に由来する構造単位の含有率は、5重量%以下であることが好ましい。アクリル系重合体(A)は、シアン化ビニル化合物単量体に由来する構造単位を含んでいなくてもよい。
【0068】
アクリル系重合体(A)における他の構造単位の含有率は、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。アクリル系重合体(A)における芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位の含有率及び他の構造単位の含有率を調節することによって、樹脂発泡体の強度、硬度などを調節できるとともに、樹脂発泡体に柔軟性、難燃性などの特性を付与できる。
【0069】
アクリル系重合体(A)の構造単位は、酸性基を含まなくてもよい。本明細書において、酸性基は、解離性のプロトンを有する置換基を意味する。酸性基は、例えば、カルボキシル基である。アクリル系重合体(A)の構造単位が酸性基を有する場合、アクリル系重合体(A)における酸性基を有する単量体に由来する構造単位の含有率は、耐湿性の観点から、0.8重量%以下であってもよい。
【0070】
アクリル系重合体(A)は、直鎖状であってもよく、分岐構造又は網目構造を有していてもよい。アクリル系重合体(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体、星形共重合体のいずれであってもよい。例えば、アクリル系重合体(A)がX-Y-Xで表されるブロック共重合体構造を有する場合、X又はYのいずれかが、アクリル系重合体(A)に柔軟性などの特性を付与する成分であってもよい。柔軟性を付与する成分としては、例えば、ポリブチルアクリレートが挙げられる。他の特性を付与する成分としては、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。例えば、アクリル系重合体(A)がグラフト共重合体である場合、グラフト共重合体の幹部分又は枝部分のいずれかが、アクリル系重合体(A)に柔軟性などの特性を付与する成分であってもよい。
【0071】
アクリル系重合体(A)のガラス転移温度TgAは、例えば140℃以上であり、好ましくは142℃以上であり、より好ましくは144℃以上であり、さらに好ましくは146℃以上であり、特に好ましくは148℃以上であり、とりわけ好ましくは150℃以上である。アクリル系重合体(A)のガラス転移温度TgAの上限値は、特に限定されないが、例えば180℃であってもよく、170℃であってもよく、160℃であってもよい。ガラス転移温度TgAは、JIS K7121:1987の規定に準拠して求められる値である。詳細には、ガラス転移温度TgAは、アクリル系重合体(A)を示差走査熱量測定することによって得られるDSC曲線に基づいて、始点法により求められる値(補外ガラス転移開始温度(Tig))である。
【0072】
アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求められる値である。アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、3000~1000000であることが望ましい。アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が3000以上であるとき、アクリル系重合体(A)は、高分子として必要な強度を有する。アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が1000000以下であれば、アクリル系重合体(A)を含む樹脂を容易に成形加工できる。アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、より好ましくは5000~800000であり、さらに好ましくは10000~500000であり、特に好ましくは50000~500000である。
【0073】
アクリル系重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、1~10であることが望ましい。分子量分布は、GPC測定法によって得られる。アクリル系重合体(A)の分子量分布は、例えば、アクリル系重合体(A)の組成によって調整できる。アクリル系重合体(A)を含む樹脂の粘度を成形加工に適した範囲に調整する観点から、アクリル系重合体(A)の分子量分布は、好ましくは1.1~7.0であり、より好ましくは1.2~5.0であり、さらに好ましくは1.5~4.0である。
【0074】
アクリル系重合体(A)の酸価は、特に限定されないが、耐湿性の観点から、好ましくは0.5mmol/g以下であり、より好ましくは0.4mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.3mmol/g以下であり、特に好ましくは0.1mmol/g以下である。酸価は、アクリル系重合体(A)1g中に含まれる酸性基、及び、酸無水物基が加水分解されることによって生じた酸性基を中和するために必要な水酸化ナトリウムの物質量を表している。
【0075】
アクリル系重合体(A)の重合方法は、特に限定されず、例えば、キャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、リビングラジカル重合、アニオン重合などの一般的な重合方法を利用できる。
【0076】
アクリル系重合体(A)の重合形式は、特に限定されず、例えば、バッチ重合法及び連続重合法のいずれも利用できる。バッチ重合法によれば、重合操作が容易である。連続重合法によれば、均一な組成を有するアクリル系重合体(A)を連続して得ることができる。
【0077】
本実施形態の樹脂発泡体におけるアクリル系重合体(A)の含有率は、特に限定されないが、耐熱性及び発泡性の観点から、50重量%以上であることが好ましい。本実施形態の樹脂発泡体におけるアクリル系重合体(A)の含有率は、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上であってもよい。本実施形態の樹脂発泡体におけるアクリル系重合体(A)の含有率は、50重量%以下であってもよい。なお、本実施形態の樹脂発泡体は、アクリル系重合体(A)を含むため、スチレン系重合体の樹脂発泡体よりも耐候性、耐油性などに優れている。
【0078】
アクリル系重合体(A)は、環構造を有する構造単位を主鎖に有するため、優れた耐熱性を有する。特に、N-置換マレイミド単量体に由来する構造、グルタルイミド構造及びラクトン環構造は、高温多湿条件下で加水分解されにくいため、これらの構造を有するアクリル系重合体(A)は、高温多湿条件下でも優れた耐熱性を有する。
【0079】
[他の重合体(B)]
本実施形態の樹脂発泡体は、アクリル系重合体(A)以外の他の重合体(B)を含む。他の重合体(B)は、例えば、ガラス転移温度Tgb1を有し、かつ当該ガラス転移温度Tgb1とアクリル系重合体(A)のガラス転移温度TgAとの差Dが15℃以下である重合体(b1)、及び、ゴム質重合体粒子に含まれる重合体(b2)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。
【0080】
重合体(b1)のガラス転移温度Tgb1は、例えば140℃以上であり、好ましくは142℃以上であり、より好ましくは145℃以上であり、さらに好ましくは147℃以上であり、特に好ましくは150℃以上である。重合体(b1)のガラス転移温度Tgb1の上限値は、特に限定されないが、例えば180℃であってもよく、170℃であってもよく、160℃であってもよい。ガラス転移温度Tgb1は、アクリル系重合体(A)について上述した方法によって測定することができる。
【0081】
ガラス転移温度Tgb1とガラス転移温度TgAとの差Dは、好ましくは13℃以下であり、より好ましくは10℃以下であり、さらに好ましくは8℃以下であり、特に好ましくは5℃以下であり、特に好ましくは4℃以下である。ガラス転移温度Tgb1とガラス転移温度TgAとの差Dは、0℃であってもよい。
【0082】
重合体(b1)は、ガラス転移温度Tgb1が上述の条件を満たしていれば特に限定されず、アクリル系重合体(A)と相溶するものであってもよく、アクリル系重合体(A)と相溶しないものであってもよい。「相溶する」とは、重合体(b1)及びアクリル系重合体(A)を混合したときにガラス転移温度(Tg)が1点のみ測定される状態をいう。換言すれば、「相溶していない」状態(非相溶の状態)のときは、重合体(b1)及びアクリル系重合体(A)を混合したときに複数のTgが測定される。なお、重合体(b1)及びアクリル系重合体(A)のTgがほぼ同一である場合、Tgによる相溶・非相溶の判断ができないことがある。この場合は、これら重合体の混合物(例えば、ペレットなどの成形体)に白化が生じるか否か(非相溶である場合、白化する)により、重合体の相溶・非相溶を判断することができる。白化により、例えば、ヘイズが上昇する。
【0083】
本実施形態では、ガラス転移温度Tgb1とガラス転移温度TgAとの差Dが小さいため、重合体(b1)とアクリル系重合体(A)の最適な発泡温度が同程度である。そのため、重合体(b1)がアクリル系重合体(A)と相溶しない場合であっても、これらの重合体を含む樹脂組成物を均一に発泡させることができる。
【0084】
重合体(b1)は、例えばポリカーボネート及びポリアミドからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、好ましくはポリカーボネートである。
【0085】
ポリカーボネートは、例えば、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法又は溶融法で反応させることによって得られる。二価フェノールは、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンであり、なかでもビスフェノールAが好ましい。2種以上の二価フェノールの混合物をカーボネート前駆体と反応させてもよい。
【0086】
カーボネート前駆体は、例えば、カルボニルハライド、カーボネートエステル、ハロホルメートであり、これらの具体例は、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、二価フェノールのジハロホルメートである。
【0087】
二価フェノールとカーボネート前駆体との反応時には、必要に応じて、触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤などを用いてもよい。
【0088】
ポリカーボネートは、三官能以上の多官能芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネートであってもよいし、芳香族又は脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートであってもよい。
【0089】
ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、樹脂発泡体の機械的強度を向上させる観点から、例えば1.5万以上であり、好ましくは2.0万以上であり、より好ましくは2.2万以上であり、さらに好ましくは2.5万以上であり、特に好ましくは2.8万以上であり、とりわけ好ましくは3.0万以上である。アクリル系重合体(A)と混練する際の分散性の観点から、ポリカーボネートの重量平均分子量は、例えば4.0万未満であってもよい。
【0090】
ポリカーボネートの具体例としては、三菱エンジニアリングプラスチック社製のユーピロンHL4000(重量平均分子量1.7万)、帝人社製のパンライト1225Y(重量平均分子量2.3万)、パンライト1250Y(重量平均分子量2.5万)、パンライト1300Y(重量平均分子量3.0万)などが挙げられる。
【0091】
本実施形態の樹脂発泡体における重合体(b1)の含有率は、特に限定されないが、樹脂発泡体の機械的特性を向上させる観点から、例えば10重量%以上であり、好ましくは12重量%以上であり、より好ましくは15重量%以上であり、さらに好ましくは18重量%以上であり、特に好ましくは20重量%以上である。本実施形態の樹脂発泡体における重合体(b1)の含有率は、重合体(b1)を含む樹脂組成物の発泡性を十分に確保する観点から40重量%未満であることが好ましい。
【0092】
重合体(b2)は、例えば、ゴム質重合体粒子に含まれるゴム質重合体である。本明細書において、「ゴム質重合体」は、ゴム弾性を有する重合体を意味する。ゴム質重合体粒子は、例えば、コアと、コアを被覆しているシェルとを有する。シェルは、コアの表面全体を被覆していてもよく、コアの表面を部分的に被覆していてもよい。コアの形状は、例えば、球状である。シェルの形状は、例えば、層状である。シェルは、多層構造を有していてもよく、例えば2層構造又は3層構造を有していてもよい。一例として、重合体(b2)は、ゴム質重合体粒子のコアを構成しているポリマー鎖(P1)、及び、シェルを構成しているポリマー鎖(P2)を有している。重合体(b2)は、例えば、ポリマー鎖(P1)及びポリマー鎖(P2)を有するグラフト共重合体である。
【0093】
重合体(b2)のポリマー鎖(P1)は、樹脂発泡体の機械的特性を向上させる観点から、共役ジエン単量体に由来する構造単位を含むことが好ましい。共役ジエン単量体に由来する構造単位を与える共役ジエン単量体の一例を以下の式(11)に示す。
【0094】
【化11】
【0095】
式(11)において、R17~R22は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~6の鎖状炭化水素基である。R17~R22の鎖状炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。R17~R22の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基が挙げられる。R17~R22のそれぞれは、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0096】
共役ジエン単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン(ブタジエン)、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン及びミルセンが挙げられる。共役ジエン単量体は、好ましくはブタジエン単量体を含む。ポリマー鎖(P1)は、式(11)の単量体に由来する構造単位を2種以上含んでいてもよい。
【0097】
ポリマー鎖(P1)における共役ジエン単量体に由来する構造単位の含有率は、例えば50重量%以上であり、好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。ポリマー鎖(P1)は、例えば、実質的に共役ジエン単量体に由来する構造単位からなる。
【0098】
ポリマー鎖(P1)は、共役ジエン単量体に由来する構造単位以外の他の構造単位を有していてもよい。他の構造単位を与える単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル単量体;エチレン、プロピレン、イソブテン等のオレフィン単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体が挙げられる。ゴム質重合体粒子のコアは、ポリマー鎖(P1)を含む重合体(b2)以外の他の重合体、例えばジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン等のシリコーン又はポリウレタン、を別途含んでいてもよい。
【0099】
他の構造単位を与える単量体は、多官能であり、かつ架橋性を有していてもよい。このような単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステル単量体;ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル化合物単量体;アリル(メタ)アクリレート、アリルマレエート、アリルフマレート、ジアリルフマレート、トリアリルシアヌレート等のアリル基含有化合物単量体が挙げられる。
【0100】
ポリマー鎖(P1)における他の構造単位の含有率は、例えば50重量%以下であり、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。
【0101】
ポリマー鎖(P2)は、アクリル系重合体(A)との相溶性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位としては、例えば、アクリル系重合体(A)について上述したものが挙げられる。ポリマー鎖(P2)は、架橋構造を有していてもよく、架橋構造を有していなくてもよい。
【0102】
ポリマー鎖(P2)における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は、例えば50重量%以上であり、好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。ポリマー鎖(P2)は、例えば、実質的に(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位からなる。
【0103】
ポリマー鎖(P2)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位以外の他の構造単位を有していてもよい。他の構造単位を与える単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル単量体が挙げられる。ポリマー鎖(P2)は、例えば、アクリロニトリル(AN)とスチレン(St)を重合することによって形成される構造単位(以下、AN/St構造単位と呼ぶことがある)を有していてもよい。このとき、ANとStとの割合は、重量比で、5:95~50:50が好ましく、10:90~40:60がより好ましい。
【0104】
ポリマー鎖(P2)における他の構造単位の含有率は、例えば50重量%以下であり、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。
【0105】
重合体(b2)において、ポリマー鎖(P1)とポリマー鎖(P2)との割合は、重量比で、20:80~80:20が好ましく、40:60~60:40がより好ましい。
【0106】
重合体(b2)を作製する方法は、特に限定されない。重合体(b2)は、例えば、ポリマー鎖(P1)にポリマー鎖(P2)を形成する単量体群を付加重合することにより作製することができる。重合体(b2)を作製する方法は、例えば、特開2014-149395号公報に記載されている弾性有機微粒子の作製方法を参考にできる。
【0107】
重合体(b2)は、ゴム質重合体粒子のシェルを構成していなくてもよい。言い換えれば、ゴム質重合体粒子について、重合体(b2)がコアを構成しており、かつ重合体(b2)以外の他の重合体(b3)がシェルを構成していてもよい。このとき、重合体(b2)は、例えば、上述したポリマー鎖(P1)を有しており、好ましくはポリマー鎖(P1)で構成されている。重合体(b3)は、例えば、上述したポリマー鎖(P2)を有しており、好ましくはポリマー鎖(P2)で構成されている。ゴム質重合体粒子は、コア・シェル構造を有しておらず、ポリマー鎖(P1)を有する重合体(b2)によって構成されていてもよい。
【0108】
ゴム質重合体粒子の平均粒子径は、例えば1μm以下であり、好ましくは0.8μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.35μm以下であり、特に好ましくは0.30μm以下である。ゴム質重合体粒子の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが0.01μmであってもよく、0.05μmであってもよい。ゴム質重合体粒子の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定された粒度分布において累積体積百分率が50%に相当する粒径(メディアン径又はD50)である。ゴム質重合体粒子の形状は、球状であってもよく、楕円体状であってもよく、鱗片状であってもよく、繊維状であってもよい。
【0109】
ゴム質重合体粒子の具体例としては、コアがブタジエン重合体(又は、ブタジエンに由来する構造単位を有するポリマー鎖)で構成され、かつ最外層(シェル)がメタクリル酸メチル重合体(又は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を有するポリマー鎖)で構成された粒子(MB樹脂粒子);コアがブタジエン重合体(又は、ブタジエンに由来する構造単位を有するポリマー鎖)で構成され、かつ最外層(シェル)がメタクリル酸メチル/スチレン共重合体(又は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位及びスチレンに由来する構造単位を有するポリマー鎖)で構成された粒子(MBS樹脂粒子);コアがスチレン/ブタジエン共重合体(又は、スチレンに由来する構造単位及びブタジエンに由来する構造単位を有するポリマー鎖)で構成され、かつ最外層(シェル)がメタクリル酸メチル/スチレン共重合体(又は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位及びスチレンに由来する構造単位を有するポリマー鎖)で構成された粒子(MBS樹脂粒子);コアがスチレン/ブタジエン共重合体(又は、スチレンに由来する構造単位及びブタジエンに由来する構造単位を有するポリマー鎖)で構成され、かつ最外層(シェル)がメタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン共重合体(又は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位、アクリロニトリルに由来する構造単位及びスチレンに由来する構造単位を有するポリマー鎖)で構成された粒子(MABS樹脂粒子)が挙げられる。MB樹脂粒子の市販品としては、ダウ・ケミカル社製のパラロイドBTA751J、パラロイドEXL2603、パラロイドEXL2690等が挙げられる。MBS樹脂粒子の市販品としては、ダウ・ケミカル社製のパラロイドEXL2620等が挙げられる。MABS樹脂の市販品としては、東レ社製のトヨラック930-355などが挙げられる。
【0110】
本実施形態の樹脂発泡体におけるゴム質重合体粒子(又は重合体(b2))の含有率は、特に限定されないが、樹脂発泡体の機械的特性を向上させる観点から、例えば5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは15重量%以上である。本実施形態の樹脂発泡体におけるゴム質重合体粒子(又は重合体(b2))の含有率は、樹脂発泡体の弾性率を維持する観点から、40重量%未満であることが好ましく、30重量%未満であることがより好ましい。
【0111】
ゴム質重合体粒子は、その形状により、アクリル系重合体(A)を含む樹脂組成物中に均一に分散しやすい。そのため、アクリル系重合体(A)及びゴム質重合体粒子を含む樹脂組成物を均一に発泡させることができる。
【0112】
他の重合体(B)は、重合体(b1)~(b3)以外の他の重合体(b4)をさらに含んでいてもよい。重合体(b4)は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)などのオレフィン系重合体;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などの含ハロゲン系重合体;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系重合体;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体などのスチレン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミドである。重合体(b4)は、これらの重合体を1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0113】
本実施形態の樹脂発泡体における重合体(b4)の含有率は、例えば、50重量%以下であることが好ましい。本実施形態の樹脂発泡体における重合体(b4)の含有率は、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下又は0.1重量%以下であってもよい。
【0114】
本実施形態の樹脂発泡体における他の重合体(B)の含有率は、特に限定されず、例えば10重量%以上であり、好ましくは15重量%以上であり、より好ましくは20重量%以上である。本実施形態の樹脂発泡体における重合体(B)の含有率は、40重量%未満であってもよい。
【0115】
[添加剤C]
上述のとおり、本実施形態の樹脂発泡体は、必要に応じて、添加剤(C)をさらに含んでいてもよい。
【0116】
添加剤(C)としては、物理型発泡剤、化学型発泡剤などの発泡剤又はその発泡残渣;発泡助剤又はその残渣;造核剤;酸化防止剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系又はノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー;無機フィラー;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;吸水剤;輻射抑制剤;充填剤などである。添加剤(C)は、これらを1種又は2種以上含んでいてもよい。本実施形態の樹脂発泡体には、発泡することなく残存した発泡剤が含まれていてもよい。
【0117】
物理型発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類;ジメチルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-イソプロピルケトン、メチル-ブチルケトン、メチル-アミルケトン、メチル-ヘキシルケトン、エチル-プロピルケトン、エチル-ブチルケトンなどのケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテルなどのエーテル類;フラン、テトラヒドロフラン、オキセタン、ジオキサン、1,3-ジオキソランなどの環状エーテル類;1-メトキシ-エタノン、1-メトキシ-2-プロパノン、1-メトキシ-イソプロパノン、1-メトキシ-2-ブタノンなどのエーテルケトン化合物;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのカルボン酸エステル類;液化天然ガス(LNG)などの揮発性の炭化水素化合物;フロン、代替フロン、塩化メチレン、塩化エチレン、塩化プロピレン、ジフルオロエタン、トリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素化合物;水;水蒸気、空気、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、アルゴンなどの気体が挙げられる。脱アルコール環化縮合によってラクトン環構造を形成した場合に発生するアルコールを物理型発泡剤として用いることもできる。化学型発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、p,p’-オキシビス-ベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、アミドグアニジン、トリメチレントリアミン、テレフタルアジド、5-フェニルテトラゾール、塩化アンモニウム、ジシアンジアミド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、尿素、チオ尿素、尿素誘導体、抱水クロラール、クエン酸などが挙げられる。化学型発泡剤は、例えば、熱などによって化学的に分解し、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、アンモニアなどの気体を発生させる。なお、アクリル系重合体(A)におけるラクトン環構造を脱アルコール環化縮合によって形成した場合、発生したアルコールをそのまま発泡剤として使用してもよい。添加剤(C)は、これらの発泡剤又はその発泡残渣を1種又は2種以上含んでいてもよい。添加剤(C)は、物理型発泡剤又は化学型発泡剤のいずれかを含んでいてもよく、物理型発泡剤又は化学型発泡剤のいずれかの発泡残渣を含んでいてもよい。添加剤(C)は、物理型発泡剤及び化学型発泡剤の両方を含んでいてもよく、物理型発泡剤及び化学型発泡剤の両方の発泡残渣を含んでいてもよい。
【0118】
本実施形態の樹脂発泡体における添加剤(C)の含有率は、0重量%以上99重量%以下であればよく、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上又は30重量%以上であってもよい。本実施形態の樹脂発泡体における添加剤(C)の含有率は、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下又は40重量%以下であってもよい。
【0119】
[樹脂発泡体の製造方法]
次に、本実施形態の樹脂発泡体の製造方法について説明する。本実施形態の樹脂発泡体の製造方法は、環構造を有する構造単位を主鎖に有するアクリル系重合体(A)、他の重合体(B)及び発泡剤を含む樹脂組成物を発泡させることを含む。本明細書において、発泡剤により発泡させて樹脂発泡体を得るための樹脂組成物のことを「樹脂発泡体前駆体」と呼ぶことがある。本発明は、その別の側面から、発泡剤により発泡させて樹脂発泡体を得るための樹脂発泡体前駆体としての、環構造を有する構造単位を主鎖に有するアクリル系重合体(A)と、アクリル系重合体(A)以外の他の重合体(B)とを含む樹脂組成物の使用を提供する。
【0120】
樹脂組成物(樹脂発泡体前駆体)は、アクリル系重合体(A)、他の重合体(B)及び添加剤(C)を混合することによって作製できる。樹脂発泡体前駆体において、添加剤(C)は、上述した発泡剤を含んでいる。混合方法は、特に限定されず、公知の混合方法を利用できる。例えば、アクリル系重合体(A)に対して、他の重合体(B)及び添加剤(C)を同時に、又は、順番に添加してもよい。アクリル系重合体(A)に対して、他の重合体(B)及び添加剤(C)を順番に添加する場合、他の重合体(B)を先に添加してもよく、添加剤(C)を先に添加してもよい。他の重合体(B)に対して、アクリル系重合体(A)及び添加剤(C)を同時に、又は、順番に添加してもよい。他の重合体(B)に対して、アクリル系重合体(A)及び添加剤(C)を順番に添加する場合、アクリル系重合体(A)を先に添加してもよく、添加剤(C)を先に添加してもよい。アクリル系重合体(A)と添加剤(C)とをあらかじめ混合したものを他の重合体(B)に添加してもよく、他の重合体(B)と添加剤(C)とをあらかじめ混合したものをアクリル系重合体(A)に添加してもよい。アクリル系重合体(A)、他の重合体(B)及び添加剤(C)をオムニミキサーなどの混合機でプレブレンドすることによって得られた混合物を混練機により混練することによってこれらの混合を行ってもよい。混練機は、特に限定されない。混練機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機及び加圧ニーダーが挙げられる。さらに、アクリル系重合体(A)又は他の重合体(B)の重合前において、アクリル系重合体(A)又は他の重合体(B)のモノマーに添加剤(C)を添加してもよい。アクリル系重合体(A)又は他の重合体(B)の重合中において、反応系に添加剤(C)を添加してもよい。アクリル系重合体(A)又は他の重合体(B)の輸送中において、アクリル系重合体(A)又は他の重合体(B)に添加剤(C)を添加してもよい。
【0121】
樹脂発泡体前駆体の形状は、特に限定されない。必要に応じて、ペレタイザーなどによって、樹脂発泡体前駆体をペレット化してもよく、樹脂発泡体前駆体に対して、予備加工を行ってもよい。例えば、アクリル系重合体(A)、他の重合体(B)、及び、発泡剤以外の添加剤(C)を混合した樹脂に、発泡剤を添加してから溶融成形加工を行ってもよく、発泡剤を添加しながら溶融成形加工を行ってもよい。
【0122】
次に、樹脂発泡体前駆体を発泡させる。これにより、本実施形態の樹脂発泡体が得られる。樹脂発泡体前駆体を発泡させる方法は、特に限定されない。樹脂発泡体前駆体を発泡させる方法としては、ビーズ状の樹脂発泡体前駆体を加熱して発泡させるビーズ発泡法;樹脂発泡体前駆体のエマルジョンを機械発泡させる方法;オートクレーブ内で超臨界流体の酸素、超臨界流体の二酸化炭素などの流体が含浸された樹脂発泡体前駆体について、樹脂発泡体前駆体の周囲の圧力を解放する、又は、樹脂発泡体前駆体を加熱することによって気泡を発生させる発泡成形(バッチ発泡)法;シート状の樹脂発泡体前駆体を加熱プレスの金型内で発泡させるプレス発泡法;押出成形機又は射出成形機を用いた液相発泡法;発泡ブロー法などの公知の方法が挙げられる。樹脂発泡体前駆体を発泡させる方法、及び、樹脂発泡体前駆体の組成によって、得られる樹脂発泡体の構造、みかけ密度、及び、樹脂発泡体が有する気泡の平均直径などを調節することができる。
【0123】
[樹脂発泡体の組成、構造、みかけ密度、発泡倍率、及び、樹脂発泡体が有する気泡の平均直径]
本実施形態の樹脂発泡体における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は、特に限定されず、例えば30重量%以上であり、好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは50重量%以上であり、さらに好ましくは60重量%以上であり、特に好ましくは70重量%以上であり、とりわけ好ましくは80重量%以上である。樹脂発泡体における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は、好ましくは95重量%以下であり、より好ましくは90重量%以下であり、さらに好ましくは85重量%以下である。樹脂発泡体における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は、30~85重量%であることが好ましく、40~85重量%であることがより好ましく、50~85重量%であることがさらに好ましい。
【0124】
本実施形態の樹脂発泡体における環構造(環構造を有する構造単位)の含有率は、例えば、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上又は30重量%以上である。樹脂発泡体における環構造の含有率は、例えば、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下又は5重量%以下である。樹脂発泡体における環構造の含有率は、耐熱性の観点から、15~50重量%であることが好ましく、20~50重量%がより好ましく、25~50重量%がさらに好ましい。
【0125】
本実施形態の樹脂発泡体における芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位の含有率は、例えば30重量%以下であり、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。樹脂発泡体がスチレン単量体に由来する構造単位を有するとき、樹脂発泡体におけるスチレン単量体に由来する構造単位の含有率は、耐候性及び耐油性の観点から、10重量%以下であることが好ましい。樹脂発泡体におけるスチレン単量体に由来する構造単位の含有率は、1重量%以上であってもよく、5重量%以上であってもよい。樹脂発泡体におけるスチレン単量体に由来する構造単位の含有率は、0~10重量%であってもよく、1~10重量%であってもよく、5~10重量%であってもよい。樹脂発泡体におけるスチレン単量体に由来する構造単位の含有率の他の例としては、例えば0~30重量%であり、好ましくは5~30重量%である。
【0126】
本実施形態の樹脂発泡体の構造は、特に限定されず、求められる特性及び用途に応じて適宜調整される。求められる特性とは、例えば、良好な圧縮永久歪み、圧縮回復性、耐折強度、耐衝撃強度、引張強度、保温・断熱性、制振性、防音性、シール性などである。樹脂発泡体は、連続気泡構造を有していてもよく、独立気泡構造を有していてもよく、その両方の構造を有していてもよい。連続気泡構造は、液体又は気体の透過性を必要とする用途(例えば、フィルターなど)、又は、柔軟性、防音性などを必要とする用途に適している。独立気泡構造は、剛性、断熱性などを必要とする用途に適している。
【0127】
本実施形態の樹脂発泡体のみかけ密度は、未発泡の樹脂発泡体前駆体(ソリッド成形品)の密度よりも小さければ、特に限定されず、求められる特性及び用途に応じて適宜調整される。未発泡のアクリル系重合体(A)の密度は、約1.2g/cm3である。みかけ密度は、例えば、JIS K7222:2005に記載の方法によって測定できる。本実施形態の樹脂発泡体のみかけ密度は、1.1g/cm3以下であることが好ましい。本実施形態の樹脂発泡体のみかけ密度は、例えば、0.01~1.1g/cm3である。一般的に、樹脂発泡体のみかけ密度が小さいほど、樹脂発泡体は、柔軟になり、所望の形状を維持しにくくなる傾向がある。樹脂発泡体のみかけ密度が大きいほど、樹脂発泡体の柔軟性が低下する。そのため、みかけ密度が大きい樹脂発泡体を作製するときに、樹脂発泡体前駆体が成形型の内面に沿って発泡しにくくなることがある。本実施形態の樹脂発泡体のみかけ密度は、例えば、断熱性の壁材として樹脂発泡体を用いる場合には、約0.05~0.8g/cm3の範囲にあり、制振性の金属シェルの芯材として樹脂発泡体を用いる場合には、約0.03~0.5g/cm3の範囲にあり、繊維によって強化された複合発泡体として樹脂発泡体を使用する場合には、約0.05~0.5g/cm3の範囲にあり、発泡粘着シートの基材として樹脂発泡体を使用する場合には、約0.01~1.0g/cm3の範囲にある。樹脂発泡体のみかけ密度は、樹脂発泡体全体において均一であってもよく、樹脂発泡体内部で偏りがあってもよい。例えば、樹脂発泡体の重心付近と樹脂発泡体の他の部分とで、みかけ密度が異なっていてもよい。すなわち、樹脂発泡体の重心付近と樹脂発泡体の他の部分とで、みかけ密度に分布を持たせてもよい。樹脂発泡体のみかけ密度は、例えば、1.0g/cm3以下、0.9g/cm3以下、0.8g/cm3以下、0.7g/cm3以下、0.6g/cm3以下、0.5g/cm3以下、0.4g/cm3以下、0.3g/cm3以下、0.2g/cm3以下、0.1g/cm3以下、0.05g/cm3以下、0.03g/cm3以下、0.02g/cm3以下又は0.01g/cm3以下であってもよい。樹脂発泡体のみかけ密度は、例えば、0.001g/cm3以上、0.005g/cm3以上、0.01g/cm3以上、0.05g/cm3以上、0.1g/cm3以上、0.2g/cm3以上、0.3g/cm3以上、0.4g/cm3以上、0.5g/cm3以上、0.6g/cm3以上、0.7g/cm3以上、0.8g/cm3以上又は0.9g/cm3以上であってもよい。
【0128】
本実施形態の樹脂発泡体の発泡倍率は、特に限定されないが、好ましくは1.5倍以上であり、より好ましくは3.0倍以上であり、さらに好ましくは5.0倍以上であり、特に好ましくは7.0倍以上であり、とりわけ好ましくは10.0倍以上である。このとき、本実施形態の樹脂発泡体は、実用上十分な耐衝撃性と軽量性とを両立できる。本実施形態の樹脂発泡体の発泡倍率は、例えば、30倍以下である。樹脂発泡体の発泡倍率は、以下の式に基づいて算出できる。
発泡倍率=樹脂発泡体前駆体の密度(g/cm3)/樹脂発泡体のみかけ密度(g/cm3
【0129】
本実施形態の樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、特に限定されず、求められる特性及び用途に応じて適宜調整される。気泡の平均直径は、例えば、次のように特定することができる。まず、樹脂発泡体を切断する。樹脂発泡体の切断面を電子顕微鏡で観察する。得られた電子顕微鏡像において、気泡の面積を画像処理によって算出する。算出された面積と同じ面積を有する円の直径をその特定の気泡の直径とみなす。任意の個数(少なくとも50個)の気泡の直径をそれぞれ算出し、算出値の平均値を気泡の平均直径とみなす。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、例えば、断熱性及び柔軟性の観点から、1000μm以下、900μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下又は50μm以下である。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、10μm以上、50μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、500μm以上、600μm以上、700μm以上、800μm以上又は900μm以上であってもよい。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、例えば、硬度の観点から、100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下又は1μm以下である。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上又は90μm以上であってもよい。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、例えば、ガラスの代替品などとして樹脂発泡体を用いる場合には、透明性の観点から、100nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下又は1nm以下である。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、0.5nm以上、1nm以上、2nm以上、3nm以上、4nm以上、5nm以上、10nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上又は50nm以上であってもよい。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、例えば、すりガラスのように、光線透過性を有するとともに、光を散乱させる性質が求められる用途に樹脂発泡体を用いる場合には、1μm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下又は100nm以下である。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、50nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、500nm以上、600nm以上、700nm以上、800nm以上又は900nm以上であってもよい。
【0130】
[樹脂発泡体の特性]
本実施形態の樹脂発泡体は、アクリル系重合体(A)と重合体(B)とを有するため、耐熱性及び機械的強度(耐衝撃性、靭性など)の両立に適している。本発明は、その別の側面から、樹脂発泡体の耐熱性及び機械的強度を向上させる成分としての、環構造を有する構造単位を主鎖に有するアクリル系重合体(A)と、アクリル系重合体(A)以外の他の重合体(B)との使用を提供する。
【0131】
本実施形態の樹脂発泡体は、例えば、高温条件下、場合によっては高温多湿条件下での寸法安定性に優れている。そのため、本実施形態の樹脂発泡体が炭素繊維又は金属のシェルと組み合わされ、軽量化された芯材として用いられる場合、本実施形態の樹脂発泡体は、高温条件下又は高温多湿条件下でも、炭素繊維又は金属のシェルに対して実用上十分な接着性を有する。
【0132】
樹脂発泡体の寸法安定性は、例えば、樹脂発泡体の寸法変化率によって評価できる。樹脂発泡体の寸法変化率は、例えば、以下の方法によって測定することができる。まず、樹脂発泡体から直方体形状(例えば、縦30mm、横30mm、厚さ1.5mm)のサンプルを3枚作製する。次に、それぞれのサンプルの主面(最も広い面積を有する面)における四辺の長さ(La1、La2、La3、La4)を測定する。次に、3枚のサンプルを所定の条件下で保管する。所定の条件下で保管したあとに、それぞれのサンプルの主面における四辺の長さ(Lb1、Lb2、Lb3、Lb4)を再度測定する。次に、それぞれのサンプルごとに、各辺における寸法変化率(X1、X2、X3、X4)を以下の式に基づいて求める。ただし、以下の式において、nは、1~4の整数である。3枚のサンプルのそれぞれから得られた寸法変化率X1~X4に基づいて、各辺の寸法変化率の平均値(Y1、Y2、Y3、Y4)を算出する。平均値Y1~Y4の合計値を4で除した値を樹脂発泡体の寸法変化率とみなすことができる。
[寸法変化率Xn(%)]=|(Lbn-Lan)/Lan|×100
【0133】
110℃の熱風乾燥器内で24時間の保管条件において、本実施形態の樹脂発泡体の寸法変化率は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下であり、とりわけ好ましくは1%以下である。120℃の熱風乾燥器内で24時間の保管条件において、本実施形態の樹脂発泡体の寸法変化率は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下であり、とりわけ好ましくは1%以下である。85℃、相対湿度85%の恒温恒湿器内で120時間の保管条件において、本実施形態の樹脂発泡体の寸法変化率は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下であり、とりわけ好ましくは1%以下である。
【0134】
本実施形態の樹脂発泡体のガラス転移温度は、140℃以上であり、好ましくは142℃以上であり、より好ましくは145℃以上であり、さらに好ましくは147℃以上であり、特に好ましくは150℃以上である。樹脂発泡体のガラス転移温度の上限値は、特に限定されないが、例えば180℃であってもよく、170℃であってもよく、160℃であってもよい。樹脂発泡体のガラス転移温度は、樹脂発泡体に含まれる気泡を除去してから、アクリル系重合体(A)について上述した方法によって測定することができる。樹脂発泡体に含まれる気泡の除去は、例えば、樹脂発泡体を加熱することによって実施できる。
【0135】
本実施形態の樹脂発泡体の機械的強度は、例えば、3点曲げ試験によって評価することができる。3点曲げ試験は、JIS K7171:2016の規定に準拠して、次の方法で実施できる。まず、樹脂発泡体から直方体形状(例えば、長さ80mm、幅20mm、厚さ4mm)の試験片を作製する。次に、試験片を曲げ試験機にセットし、曲げ試験を行う。曲げ試験のスパンは、例えば、60mmである。曲げ試験の試験速度は、例えば、2mm/minである。3点曲げ試験によって、樹脂発泡体の曲げ強度及び曲げひずみを測定できる。本明細書において、樹脂発泡体の曲げ強度は、試験片が耐える最大曲げ応力(曲げ強さσfM)である。樹脂発泡体の曲げひずみは、試験片が破壊されたときの曲げひずみ(曲げ破壊ひずみεfB)である。
【0136】
樹脂発泡体の曲げ強度は、例えば1.8MPa以上であり、好ましくは2.0MPa以上であり、より好ましくは2.5MPa以上であり、さらに好ましくは3.0MPa以上である。樹脂発泡体の曲げ強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、5.0MPaである。
【0137】
樹脂発泡体の曲げひずみは、例えば2.8%以上であり、好ましくは3.0%以上であり、より好ましくは3.5%以上であり、さらに好ましくは4.0%以上であり、特に好ましくは4.5%以上であり、とりわけ好ましくは5.0%以上である。樹脂発泡体の曲げひずみの上限値は、特に限定されないが、例えば、10%である。曲げひずみの算出方法は、JIS K7171:2016に規定されている。
【0138】
本実施形態の樹脂発泡体の酸価は、耐湿性の観点から、好ましくは0.5mmol/g以下であり、より好ましくは0.4mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.3mmol/g以下であり、特に好ましくは0.1mmol/g以下である。
【0139】
本実施形態の樹脂発泡体のヘイズ、全光線透過率及び明度L*は、特に限定されず、求められる特性及び用途に応じて適宜調整される。樹脂発泡体のヘイズ及び全光線透過率は、例えば、市販の濁度計などで測定することができる。樹脂発泡体の明度L*は、市販の色差計などで測定することができる。樹脂発泡体の透明性が高い場合、樹脂発泡体の全光線透過率は、JIS K7361-1:1997の規定に準拠した方法で測定できる。樹脂発泡体のヘイズは、JIS K7136:2000の規定に準拠した方法で測定できる。ヘイズは、全光線透過率に対する拡散透過率の比率である。全光線透過率及びヘイズのそれぞれは、例えば、D65光源の波長域で測定される。樹脂発泡体の明度L*は、L***表色系に基づいている。なお、ヘイズ、全光線透過率及び明度L*は、例えば、樹脂発泡体が平滑な表面を備えたシートの形状を有するときの値である。例えば、平滑な表面を備えた樹脂発泡体のヘイズの値は、樹脂発泡体の表面ではなく、樹脂発泡体の内部の気泡の状態に応じて変化する。透明性が重視される用途に樹脂発泡体を用いる場合、樹脂発泡体のヘイズは、例えば、10%以下、5%以下、3%以下、2%以下又は1%以下である。柔軟性又は断熱性が重視される用途に樹脂発泡体を用いる場合、樹脂発泡体のヘイズは、例えば、10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、80%以上又は90%以上である。透明性が重視される用途に樹脂発泡体を用いる場合、樹脂発泡体の全光線透過率は、例えば、1%以上、10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、80%以上又は90%以上である。柔軟性又は断熱性が重視される用途に樹脂発泡体を用いる場合、樹脂発泡体の全光線透過率は、例えば、50%以下、10%以下、5%以下、3%以下、2%以下又は1%以下である。樹脂発泡体の明度L*は、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下又は10以下である。樹脂発泡体の明度L*は、例えば、5以上である。本実施形態の樹脂発泡体は、例えば、低い全光線透過率を有するとともに、高いヘイズを有する。本実施形態の樹脂発泡体は、例えば、50%以下の全光線透過率を有するとともに、70%以上のヘイズを有する。本実施形態の樹脂発泡体の全光線透過率の下限値は、例えば、1%である。
【0140】
さらに、本実施形態の樹脂発泡体は、従来の樹脂発泡体に比べて、反発弾性率、硬度、剛性、圧縮永久歪みなどの特性が良好でありうる。反発弾性率は、例えば、JIS K6400-3:2011の規定に準拠した方法で測定できる。本実施形態の樹脂発泡体の反発弾性率は、特に限定されないが、衝撃吸収性の観点から、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは20%以下である。
【0141】
硬度(デュロメータ硬度)は、例えば、ASTM D2240の規定に準拠した方法で測定できる。デュロメータ硬度は、市販のD型硬度計を用いて測定することができる。本実施形態の樹脂発泡体のデュロメータ硬度は、特に限定されないが、好ましくは20以上であり、より好ましくは25以上であり、さらに好ましくは30以上であり、特に好ましくは35以上である。このとき、本実施形態の樹脂発泡体は、適度な耐衝撃性を有する。本実施形態の樹脂発泡体のデュロメータ硬度の上限値は、特に限定されない。本実施形態の樹脂発泡体のデュロメータ硬度は、80以下であってもよい。このとき、樹脂発泡体は、実用上十分な緩衝性を有している。
【0142】
剛性は、例えば、ショアA硬度(デュロメータA硬度)又はショアD硬度(デュロメータD硬度)の値の変化ΔHSから判断することができる。ショアA硬度又はショアD硬度は、JIS K6253-3:2012の規定に準拠した方法で測定できる。硬度の値の変化ΔHSは、硬度計の押針が試料に接触した直後における試料の硬度と、硬度計の押針が試料に接触してから15秒後における試料の硬度との差である。本実施形態の樹脂発泡体の硬度の値の変化ΔHSは、特に限定されないが、樹脂発泡体の変形を抑制する観点から、好ましくは35以下であり、より好ましくは30以下であり、さらに好ましくは25以下であり、特に好ましくは20以下であり、とりわけ好ましくは2以下である。
【0143】
圧縮永久歪みは、例えば、JIS K6262:2013の規定に準拠した方法で測定できる。本実施形態の樹脂発泡体の圧縮永久歪みは、特に限定されないが、好ましくは80%以下であり、より好ましくは70%以下であり、さらに好ましくは60%以下であり、特に好ましくは50%以下である。このとき、樹脂発泡体は、適度な形状回復性を有する。そのため、樹脂発泡体を繰り返し使用しても、樹脂発泡体の変形を抑制できる。
【0144】
本実施形態の樹脂発泡体は、その発泡倍率によっては、従来の樹脂発泡体に比べて、圧縮強度などの特性も良好でありうる。圧縮強度は、例えば、ASTM D1621の規定に準拠した方法で測定できる。
【0145】
本実施形態の樹脂発泡体は、緩衝材、保温・断熱材、制振材、防音材、シール材、パッキング材、建築部材、車両部材、航空・宇宙機部材などの各種用途に使用できる。一例において、厚さ10mm以上の断熱材が、環構造を有する構造単位を主鎖に有するアクリル系重合体(A)と、アクリル系重合体(A)以外の他の重合体(B)とを含む樹脂発泡体を備えている。他の例において、車両の構造に沿うように成形された車両部材が、環構造を有する構造単位を主鎖に有するアクリル系重合体(A)と、アクリル系重合体(A)以外の他の重合体(B)とを含む樹脂発泡体を備えている。さらに他の例において、航空機の構造に沿うように成形された航空機部材が、環構造を有する構造単位を主鎖に有するアクリル系重合体(A)と、アクリル系重合体(A)以外の他の重合体(B)とを含む樹脂発泡体を備えている。本実施形態の樹脂発泡体は、炭素繊維又は金属のシェルと組み合わされ、軽量化された芯材、耐熱性の粘着剤と組み合わされ、耐熱性、耐候性及び耐衝撃性を有する接合用粘着材などの用途にも使用できる。本実施形態の樹脂発泡体は、アクリル系重合体の特長である透明性及び耐候性に基づいて、高い光線透過率と保温・断熱性とを両立できるため、拡散フィルムの機能を有する偏光子保護フィルムとしても使用できる。樹脂発泡体に含まれる気泡がナノサイズの独立気泡である場合、本実施形態の樹脂発泡体は、保温・断熱性が向上した透明又は透光性断熱ガラスの用途にも使用できる。
【0146】
本実施形態の樹脂発泡体は、典型的には、発泡プラスチックである。発泡プラスチックは、JIS K6900:1994に定義されているように、その塊全体にわたって分散している連続又は不連続の多数の小さな空洞の存在によって密度が減少しているプラスチックである。本実施形態の樹脂発泡体は、平滑な表面を備えたシートの形状を有していてもよい。このとき、樹脂発泡体の厚さは、50μm~500mmであってもよい。
【実施例
【0147】
以下に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下では、特にことわりのない場合、「%」は「重量%」を示し、「部」は「重量部」を示す。
【0148】
実施例及び比較例における各種物性の測定及び評価は、以下の方法で行った。
【0149】
[重量平均分子量]
重合体の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置及び測定条件は以下の通りである。
システム:東ソー株式会社製GPCシステム HLC-8220
測定側カラム構成
・ガードカラム:東ソー株式会社製、TSKguardcolumn SuperHZ-L
・分離カラム:東ソー株式会社製、TSKgel SuperHZM-M 2本直列接続
リファレンス側カラム構成
・リファレンスカラム:東ソー株式会社製、TSKgel SuperH-RC
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業株式会社製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
【0150】
[モノマー転化率の算出]
転化率は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、装置名:GC-2014)を用いて残存モノマー量を測定することで求めた。
【0151】
[ガラス転移温度]
重合体及び樹脂発泡体のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121:1987の規定に準拠して始点法により求めた。具体的には、示差走査熱量計(株式会社リガク製、DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを25℃から毎分10℃の昇温速度で200℃まで昇温する操作を複数回繰り返すことで得られた安定したDSC曲線から求めた。リファレンスにはα-アルミナを用いた。
【0152】
[みかけ密度]
樹脂発泡体のみかけ密度は、JIS K7222:2005の規定に準拠して求めた。詳細には、樹脂発泡体のみかけ密度は、以下の方法で算出した。まず、樹脂発泡体のセル構造を変えないように、直方体状にサンプルを切り出した。次に、切り出したサンプルについて、ノギスを用いて、各辺の長さを測定した。さらに、サンプルの重量(g)を精密天秤で測定した。得られた測定値に基づいて、以下の式により、樹脂発泡体のみかけ密度を算出した。
みかけ密度(g/cm3)=樹脂発泡体の重量(g)/樹脂発泡体の体積(cm3
【0153】
[発泡倍率]
樹脂発泡体の発泡倍率は、以下の式に基づいて算出した。一例として、樹脂発泡体前駆体がアクリル系重合体からなるとき、樹脂発泡体前駆体の密度は、約1.2g/cm3である。
発泡倍率=樹脂発泡体前駆体の密度(g/cm3)/樹脂発泡体のみかけ密度(g/c
3
【0154】
[3点曲げ試験]
3点曲げ試験は、JIS K7171:2016の規定に準拠して、次の方法で実施した。後述する例9-14で得られた樹脂発泡体を曲げ試験機(インストロン万能試験機 model185)にセットし、スパン60mm、試験速度2mm/minで曲げ試験を行い、最大曲げ応力(曲げ強さσfM)と試験片破壊時の曲げひずみ(曲げ破壊ひずみεfB)を測定した。
【0155】
<製造例1>
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸メチル(MMA)60部、N-フェニルマレイミド(PMI)33部、n-ドデシルメルカプタン(nDM)0.03部、重合溶媒としてトルエン100部を仕込んだ。反応器内に窒素を通じつつ、内容物を105℃まで昇温させた。その後、開始剤としてt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ社製、カヤカルボン(登録商標)Bic75)0.01部を反応器内に加えた。次に、スチレン(St)7部を5.5時間かけて一定速度で反応器内に滴下するとともに、1部のトルエンに希釈した0.05部のt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを5.5時間かけて一定速度で反応器内に滴下しながら105~110℃で溶液重合を行った。スチレン及びt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートの滴下終了後、さらに3.5時間熟成を行った。これにより、MMAとPMIとStから重合形成されたアクリル系共重合体を含む樹脂組成物が得られた。重合反応液中の残存単量体量より算出したMMAの転化率は96.0%であった。PMIの転化率は99.3%であった。Stの転化率は98.0%であった。
【0156】
次に、得られた重合反応液を、リアベント数が1個、フォアベント数が2個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に樹脂換算で600g/hの処理速度で導入し、この押出機内で脱揮を行い、押し出すことにより、アクリル系重合体を含む樹脂組成物のペレット(1A)を得た。ペレット(1A)の重量平均分子量は21万、ガラス転移温度は155℃であった。なお、二軸押出機の運転条件は、バレル温度260℃、回転数150rpm、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)であった。
【0157】
<例1>
製造例1で得られたペレット(1A)とポリカーボネート樹脂(1B)(ユーピロンHL4000、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、重量平均分子量1.7万、ガラス転移温度143℃)のペレットを1A/1B=80/20の重量比となるように二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)を用いて285℃で混練し、ペレット状の樹脂組成物(1C)を得た。ペレット(1C)のガラス転移温度は151℃であった。なお、ペレットのガラス転移温度は、ペレットを発泡させることによって得られる樹脂発泡体のガラス転移温度と同一である。
【0158】
得られたペレット(1C)をオートクレーブに入れ、オートクレーブ内にCO2を供給した。これによって、CO2がペレットに含侵した。CO2の含浸は、20℃の温度で24時間、1.4MPaの圧力下で行った。次に、オートクレーブ内を急速に減圧し、ペレットを取り出した。次に、オイルバスによって、ペレットのガラス転移温度よりも30℃高い温度で30秒間、ペレットを加熱した。これにより、ペレットが発泡した。ペレットを加熱した後に、1分間水中で冷却することによって、例1の樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の発泡倍率等の物性を表1に示す。
【0159】
<例2>
製造例1で得られたペレット(1A)とポリカーボネート樹脂(1B)の重量比を1A/1B=70/30に変更した以外は、例1と同様の方法でペレット状の樹脂組成物(2C)及び例2の樹脂発泡体を得た。ペレット(2C)のガラス転移温度は149℃であった。得られた樹脂発泡体の発泡倍率等の物性を表1に示す。
【0160】
<例3>
ポリカーボネート樹脂(1B)をポリカーボネート樹脂(2B)(パンライトL1225Y、帝人社製、重量平均分子量2.3万、ガラス転移温度150℃)に変更した以外は、例2と同様の方法でペレット状の樹脂組成物(3C)及び例3の樹脂発泡体を得た。ペレット(3C)のガラス転移温度は149℃であった。得られた樹脂発泡体の発泡倍率等の物性を表1に示す。
【0161】
<例4>
ポリカーボネート樹脂(1B)をポリカーボネート樹脂(3B)(パンライトL1250Y、帝人社製、重量平均分子量2.5万、ガラス転移温度151℃)に変更した以外は、例2と同様の方法でペレット状の樹脂組成物(4C)及び例4の樹脂発泡体を得た。ペレット(4C)のガラス転移温度は151℃であった。得られた樹脂発泡体の発泡倍率等の物性を表1に示す。
【0162】
<例5>
ポリカーボネート樹脂(1B)をポリカーボネート樹脂(4B)(パンライトK1300Y、帝人社製、重量平均分子量3.0万、ガラス転移温度152℃)に変更した以外は、実施例2と同様の方法でペレット状の樹脂組成物(5C)及び例5の樹脂発泡体を得た。ペレット(5C)のガラス転移温度は153℃であった。得られた樹脂発泡体の発泡倍率等の物性を表1に示す。
【0163】
<例6>
ポリカーボネート樹脂(1B)をブタジエン系架橋ゴム(5B)(パラロイドEXL2620、ダウ・ケミカル社製)に変更した以外は、例1と同様の方法でペレット状の樹脂組成物(6C)及び例6の樹脂発泡体を得た。パラロイドEXL2620は、ブタジエン単量体に由来する構造単位を70重量%有するポリマー鎖(P1)で構成されたコアと、スチレン単量体に由来する構造単位及びメチルメタクリレート単量体に由来する構造単位を有するポリマー鎖(P2)で構成されたシェルとを含むグラフト共重合体(ゴム質重合体粒子)であった。ペレット(6C)のガラス転移温度は151℃であった。得られた樹脂発泡体の発泡倍率等の物性を表1に示す。
【0164】
<例7>
ポリカーボネート樹脂(1B)をブタジエン系架橋ゴム(6B)(パラロイドBTA751J、ダウ・ケミカル社製)に変更した以外は、例1と同様の方法でペレット状の樹脂組成物(7C)及び例7の樹脂発泡体を得た。パラロイドBTA751Jは、ブタジエンスチレン系エラストマーでできたコアと、架橋ポリメタクリル酸メチルでできたシェルとを含むコア・シェル構造を有する微粒子(ゴム質重合体粒子)であった。ペレット(7C)のガラス転移温度は151℃であった。得られた樹脂発泡体の発泡倍率等の物性を表1に示す。
【0165】
<例8>
ペレット(1C)をペレット(1A)に変更した以外は、例1と同様の方法で例8の樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の発泡倍率等の物性を表1に示す。
【0166】
【表1】
【0167】
表1からわかるとおり、他の重合体を含む樹脂発泡体(例1~例7)の発泡倍率は、他の重合体を含まない樹脂発泡体(例8)に比べて低いものの、実用上十分な値であった。
【0168】
<例9>
例1で得られたペレット(1C)を以下の方法でビーズ発泡させることによって、樹脂発泡体を得た。まず、ペレット(1C)をオートクレーブに入れた。オートクレーブにCO2を供給することによって、CO2をペレットに含侵させた。CO2の含浸は、20℃の温度で、15時間、4.0MPaの圧力下で行った。次に、オートクレーブ内を急速に減圧し、ペレットを取り出した。このペレット1.2gを金型内に充填した。金型のサイズは、長さ80mm×幅20mm×厚さ4mmであった。次に、オイルバスによって、ペレット(1C)のTg+30℃の温度(181℃)で3分間、金型内のペレットを加熱した。これにより、ペレットが発泡した。発泡したペレットを1分間、水中で冷却することによって、例9の平板状の樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表2に示す。
【0169】
<例10>
製造例1で得られたペレット(1A)とポリカーボネート樹脂(4B)の重量比を1A/4B=80/20に変更した以外は、例5と同様の方法でペレット状の樹脂組成物(8C)を得た。ペレット(8C)のガラス転移温度は153℃であった。得られたペレット(8C)の加熱をペレット(8C)のTg+30℃の温度(183℃)で行ったこと以外は、例9と同様の方法でペレット(8C)をビーズ発泡させることによって、例10の平板状の樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表2に示す。
【0170】
<例11>
例5で得られたペレット(5C)を用いたこと、及び、得られたペレット(5C)の加熱をペレット(5C)のTg+30℃の温度(183℃)で行ったことを除き、例9と同様の方法でペレット(5C)をビーズ発泡させることによって、例11の平板状の樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表2に示す。
【0171】
<例12>
ポリカーボネート樹脂(1B)をポリカーボネート樹脂(4B)及びMABS樹脂(7B)(トヨラック930-355、東レ社製)に変更し、さらに、ペレット(1A)、ポリカーボネート樹脂(4B)及びMABS樹脂(7B)を1A/4B/7B=82.5/15/2.5の重量比となるように混練した以外は、例1と同様の方法でペレット状の樹脂組成物(9C)を得た。ペレット(9C)のガラス転移温度は152℃であった。得られたペレット(9C)の加熱をペレット(9C)のTg+30℃の温度(182℃)で行ったこと以外は、例9と同様の方法でペレット(9C)をビーズ発泡させることによって、例12の平板状の樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表2に示す。
【0172】
<例13>
例6で得られたペレット(6C)を用いたこと以外は、例9と同様の方法でペレット(6C)をビーズ発泡させることによって、例13の平板状の樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表2に示す。
【0173】
<例14>
ペレット(1C)をペレット(1A)に変更した以外は、例9と同様の方法でペレット(1A)をビーズ発泡させることによって、例14の平板状の樹脂発泡体を得た。得られた樹脂発泡体の評価結果を表2に示す。
【0174】
【表2】
【0175】
表2からわかるとおり、他の重合体を含む樹脂発泡体(例9~例13)の曲げ破壊ひずみは、他の重合体を含まない樹脂発泡体(例14)に比べて良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本実施形態の樹脂発泡体は、緩衝材、保温・断熱材、制振材、防音材、シール材、パッキング材、建築部材、車両部材、航空・宇宙機部材などの各種用途に使用できる。本実施形態の樹脂発泡体は、炭素繊維又は金属のシェルと組み合わされ、軽量化された芯材、耐熱性の粘着剤と組み合わされ、耐熱性、耐候性及び耐衝撃性を有する接合用粘着材などの用途にも使用できる。本実施形態の樹脂発泡体は、アクリル系重合体の特長である透明性及び耐候性に基づいて、高い光線透過率と保温・断熱性とを両立できることがあるため、拡散フィルムの機能を有する偏光子保護フィルムとしても使用できる。樹脂発泡体に含まれる気泡がナノサイズの独立気泡である場合、本実施形態の樹脂発泡体は、保温・断熱性が向上した透明断熱ガラスの用途にも使用できる。