(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】配管部材
(51)【国際特許分類】
E03F 5/10 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
E03F5/10 A
(21)【出願番号】P 2019013384
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】水野 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
(72)【発明者】
【氏名】圓谷 昭博
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095969(JP,A)
【文献】特開2002-155574(JP,A)
【文献】特開2005-036595(JP,A)
【文献】特開2015-145582(JP,A)
【文献】特開2015-145583(JP,A)
【文献】特開2017-057666(JP,A)
【文献】特開2018-204245(JP,A)
【文献】特開平04-047041(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2009-0002149(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
E03C 1/12-1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水が流入する流入口、
排水が流出する第1流出口
、および
、排水が流出する第2流出口が形成され、上下に延びた縦筒部と、前記縦筒部の上方に設けられ、上方に向かって開口した点検口が形成された点検筒部と、を有する本体と、
前記第2流出口と繋がった流出筒部と、
前記縦筒部の内部に着脱可能であって、前記第1流出口の少なくとも下半分を閉鎖する位置と、前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖する位置とに配置可能な閉鎖部と、
インバートが形成され、前記縦筒部の内部に着脱可能に配置される流路部と、
を備え、
前記流路部は、前記閉鎖部が前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖しているときに前記インバートが前記流入口と前記第1流出口とを繋ぐ位置と、前記閉鎖部が前記第1流出口の少なくとも下半分を閉鎖しているときにインバートが前記流入口と前記第2流出口とを繋ぐ位置と、に配置可能に構成されており、
前記本体または前記閉鎖部には、前記閉鎖部が前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖しているときに、前記第2流出口の中心よりも上方の位置において、前記流出筒部と連通するオーバーフロー孔が形成され
、
前記本体は、前記点検筒部と前記縦筒部との間に配置された連結部を有し、
前記オーバーフロー孔は、前記連結部に形成され、
前記流出筒部の側部には、連結孔が形成され、
前記オーバーフロー孔と前記連結孔とを繋ぐ連結通路を備えた、配管部材。
【請求項2】
平面視において、前記オーバーフロー孔と前記連結孔とは重なっている、請求項
1に記載された配管部材。
【請求項3】
前記オーバーフロー孔に架け渡された架設部を備えた、請求項
1または
2に記載された配管部材。
【請求項4】
前記縦筒部は、前記第2流出口が形成された流出周壁部を有し、
前記連結部は、前記流出周壁部に接続され、かつ、平面視において前記点検口を通じて視認可能に構成され、
前記架設部には、排水が前記本体から流出することを示す流出目印が付されている、請求項
3に記載された配管部材。
【請求項5】
前記第1流出口と繋がった他の流出筒部を備え、
前記本体は、前記点検筒部と前記縦筒部との間に配置された他の連結部を有し、
前記他の連結部には、他のオーバーフロー孔が形成され、
前記他の流出筒部の側部には、他の連結孔が形成され、
前記他のオーバーフロー孔と前記他の連結孔とを繋ぐ他の連結通路を備えた、請求項
1から
4までの何れか一つに記載された配管部材。
【請求項6】
排水が流入する流入口、排水が流出する第1流出口、および、排水が流出する第2流出口が形成され、上下に延びた縦筒部と、前記縦筒部の上方に設けられ、上方に向かって開口した点検口が形成された点検筒部と、を有する本体と、
前記第2流出口と繋がった流出筒部と、
前記縦筒部の内部に着脱可能であって、前記第1流出口の少なくとも下半分を閉鎖する位置と、前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖する位置とに配置可能な閉鎖部と、
インバートが形成され、前記縦筒部の内部に着脱可能に配置される流路部と、
を備え、
前記流路部は、前記閉鎖部が前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖しているときに前記インバートが前記流入口と前記第1流出口とを繋ぐ位置と、前記閉鎖部が前記第1流出口の少なくとも下半分を閉鎖しているときにインバートが前記流入口と前記第2流出口とを繋ぐ位置と、に配置可能に構成されており、
前記本体または前記閉鎖部には、前記閉鎖部が前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖しているときに、前記第2流出口の中心よりも上方の位置において、前記流出筒部と連通するオーバーフロー孔が形成され、
前記オーバーフロー孔に着脱可能に設けられ、かつ、前記オーバーフロー孔を閉鎖可能な閉鎖キャップを備えた、配管部材。
【請求項7】
前記オーバーフロー孔は、前記閉鎖部に形成され、かつ、前記閉鎖部が前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖しているときに、前記第2流出口と連通するように構成された、請求項
6に記載された配管部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水の流路を切り替えることができる配管部材(例えば、排水ます、管継手など)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、排水の流路を切り替えることが可能な排水ますが開示されている。特許文献1に開示された排水ますは、ます本体と、ます本体内に配置され、上下に延びた中心軸を中心に回動可能な流路切替部材とを備えている。ます本体は、側方に開口する流入口、第1流出口および第2流出口と、上方に開口する点検口とを有している。
【0003】
流路切替部材には、連通路が形成されている。流路切替部材は、連通路を通じて流入口と第1流出口とを連通させ、かつ、第2流出口を閉鎖する第1位置と、連通路を通じて流入口と第2流出口とを連通させ、かつ、第1流出口を閉鎖する第2位置とに位置変更が可能である。この排水ますは、流路切替部材の位置を変更することで排水の流路を切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記排水ますでは、例えば流路切替部材の位置が第1位置のときにおいて、第1流出口に接続された他の配管が詰まるおそれがあり得る。上記他の配管が詰まることで、第1流出口から流出しようとする排水の流れが塞き止められることがあり得る。このような場合、流路切替部材の位置を第2位置に変更することで、排水の排出先を確保することができる。しかしながら、このように排水の流れが塞き止められた直後に、排水の流路を切り替えることができるとは限らず、排水の流路を切り替えるタイミングが遅い場合には、ます本体内の排水が点検口から溢れ出すおそれがある。また、上記のように排水の流路を切り替えるタイミングが遅い場合には、ます本体内の排水が、流入口に接続されたトイレなどの排水設備から溢れ出すおそれがある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、排水の排出先の配管が詰まった場合であっても、排水が溢れ出難くすることが可能な配管部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る配管部材は、本体と、流出筒部と、閉鎖部と、流路部と、を備えている。前記本体は、流入口、第1流出口および第2流出口が形成され、上下に延びた縦筒部と、前記縦筒部の上方に設けられ、上方に向かって開口した点検口が形成された点検筒部と、を有する。前記流出筒部は、前記第2流出口と繋がっている。前記閉鎖部は、前記縦筒部の内部に着脱可能であって、前記第1流出口の少なくとも下半分を閉鎖する位置と、前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖する位置とに配置可能である。前記流路部は、インバートが形成され、前記縦筒部の内部に着脱可能に配置されている。前記流路部は、前記閉鎖部が前記第1流出口の少なくとも下半分を閉鎖しているときに前記インバートが前記流入口と前記第1流出口とを繋ぐ位置と、前記閉鎖部が前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖しているときにインバートが前記流入口と前記第2流出口とを繋ぐ位置と、に配置可能に構成されている。前記本体または前記閉鎖部には、前記閉鎖部が前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖しているときに、前記第2流出口の中心よりも上方の位置において、前記流出筒部と連通するオーバーフロー孔が形成されている。
【0008】
また、本発明に係る他の配管部材は、本体と、第1インバートと、第2インバートと、流出筒部と、閉鎖部と、を備えている。前記本体は、底壁部と、前記底壁部から上方に延び、流入口、第1流出口および第2流出口が形成された縦筒部と、前記縦筒部の上方に設けられ、上方に向かって開口した点検口が形成された点検筒部と、を有する。前記第1インバートは、前記底壁部に形成され、前記流入口と前記第1流出口とを繋ぐ。前記第2インバートは、前記底壁部に形成され、前記第1インバートと前記第2流出口とを繋ぐ。前記流出筒部は、前記第2流出口と繋がっている。前記閉鎖部は、前記縦筒部の内部に着脱可能であって、前記第1流出口の少なくとも下半分を閉鎖する位置と、前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖する位置とに配置可能である。前記本体または前記閉鎖部には、前記閉鎖部が前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖しているときに、前記第2流出口の中心よりも上方の位置において、前記流出筒部と連通するオーバーフロー孔が形成されている。
【0009】
これら配管部材によれば、閉鎖部によって第2流出口の少なくとも下半分が閉鎖されている場合、流入口から本体内に流入した排水は、第1流出口から流出する。例えば第1流出口に接続された他の配管が詰まった場合、排水の流れが塞き止められる。このとき、本体内において排水の水位が上昇する。水位が上昇した排水は、オーバーフロー孔の高さに到達したとき、オーバーフロー孔から流出筒部に排出される。よって、排水の排出先である他の配管が詰まった場合であっても、オーバーフロー孔から排水が流出するため、例えば点検口から排水が溢れ出難くすることができる。
【0010】
本発明の好ましい一態様によれば、前記本体は、前記点検筒部と前記縦筒部との間に配置された連結部を有している。前記オーバーフロー孔は、前記連結部に形成されている。前記流出筒部の側部には、連結孔が形成されている。前記配管部材は、前記オーバーフロー孔と前記連結孔とを繋ぐ連結通路を備えている。
【0011】
上記態様によれば、閉鎖部によって第2流出口の少なくとも下半分が閉鎖されている場合において、例えば第1流出口に接続された他の配管が詰まって、本体内において排水の水位が上昇したとき、排水はオーバーフロー孔、連結通路および連結孔を通じて流出筒部に排出される。よって、上記他の配管が詰まった場合であっても、例えば点検口から排水が溢れ出ることを抑制することができる。
【0012】
本発明の好ましい他の一態様によれば、平面視において、前記オーバーフロー孔と前記連結孔とは重なっている。
【0013】
上記態様によれば、オーバーフロー孔の高さにまで到達した排水を、オーバーフロー孔から連結孔に落下させることで、流出筒部に排出させることができる。よって、排水に含まれる汚物が連結通路に付着し難くすることができる。
【0014】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記配管部材は、前記オーバーフロー孔に架け渡された架設部を備えている。
【0015】
連結部にオーバーフロー孔が形成されているため、連結部の強度が弱くなる。しかしながら、上記態様によれば、オーバーフロー孔には架設部が架け渡されている。よって、架設部によって連結部の強度を強くすることができるため、連結部が破損し難い。
【0016】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記縦筒部は、前記第2流出口が形成された流出周壁部を有している。前記架設部は、前記流出周壁部に接続され、かつ、平面視において前記点検口を通じて視認可能に構成されている。前記架設部には、排水が前記本体から流出することを示す流出目印が付されている。
【0017】
上記態様によれば、作業者は、点検口を通じて流出目印を視認することで、第2流出口の位置を確認することができる。よって、第2流出口の位置を把握しながら、排水の流路を正確に切り替えることができる。
【0018】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記配管部材は、前記第1流出口と繋がった他の流出筒部を備えている。前記本体は、前記点検筒部と前記縦筒部との間に配置された他の連結部を有している。前記他の連結部には、他のオーバーフロー孔が形成されている。前記他の流出筒部の側部には、他の連結孔が形成されている。前記配管部材は、前記他のオーバーフロー孔と前記他の連結孔とを繋ぐ他の連結通路を備えている。
【0019】
上記態様によれば、閉鎖部によって第1流出口の少なくとも下半分が閉鎖されている場合、流入口から本体内に流入した排水は、第2流出口から流出する。例えば第2流出口に接続された他の配管が詰まった場合、排水の流れが塞き止められる。このとき、本体内において排水の水位が上昇する。水位が上昇した排水は、他のオーバーフロー孔の高さに到達したとき、他のオーバーフロー孔、他の連結通路および他の連結孔を通じて流出筒部に排出される。よって、第2流出口に接続された他の配管が詰まった場合であっても、例えば点検口から排水が溢れ出難くすることができる。
【0020】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記オーバーフロー孔は、前記閉鎖部に形成され、かつ、前記閉鎖部が前記第2流出口の少なくとも下半分を閉鎖しているときに、前記第2流出口と連通するように構成されている。
【0021】
上記態様によれば、閉鎖部によって第2流出口の少なくとも下半分が閉鎖されている場合において、例えば第1流出口に接続された他の配管が詰まって、本体内において排水の水位が上昇したとき、排水はオーバーフロー孔および第2流出口を通じて流出筒部に排出される。よって、第1流出口に接続された他の配管が詰まった場合であっても、例えば点検口から排水が溢れ出ることを抑制することができる。
【0022】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記配管部材は、前記オーバーフロー孔に着脱可能に設けられ、かつ、前記オーバーフロー孔を閉鎖可能な閉鎖キャップを備えている。
【0023】
例えば流出筒部に接続された他の配管内の悪臭がオーバーフロー孔から漏れることがあり得る。上記態様では、オーバーフロー孔から排水を流出筒部に排出させなくてもよい場合には、オーバーフロー孔に閉鎖キャップを装着する。よって、流出筒部に接続された他の配管内の悪臭が、オーバーフロー孔から漏れることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、排水の排出先の配管が詰まった場合であっても、排水が溢れ出難くすることが可能な配管部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排水ますの斜視図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に沿った排水ますの断面図である。
【
図5】
図3のV-V線に沿った排水ますの断面図である。
【
図8】閉鎖部材の係合突起およびレールのスライド溝の断面図である。
【
図10】流路切替部材が第2位置に配置された状態の排水ますの平面図である。
【
図11】第2実施形態に係る排水ますの断面図であり、
図4相当図である。
【
図12】第2実施形態に係る排水ますの閉鎖部材の正面図である。
【
図13】第3実施形態に係る排水ますの平面図であり、第2流出口を閉鎖部材が閉鎖している状態を示す図である。
【
図14】第3実施形態に係る排水ますの平面図であり、第1流出口を閉鎖部材が閉鎖している状態を示す図である。
【
図15】
図13のXV-XV線に沿った排水ますの断面図である。
【
図16】
図14のXVI-XVI線に沿った排水ますの断面図である。
【
図17】第3実施形態に係る閉鎖部材の平面図である。
【
図18】第3実施形態に係る閉鎖部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る配管部材の一例である排水ますについて説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の一実施形態に過ぎず、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。
【0027】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る排水ます1の斜視図である。
図2は排水ます1の一部を示す斜視図であり、
図3は排水ます1の平面図である。
図4は
図3のIV-IV線に沿った断面図であり、
図5は
図3のV-V線に沿った断面図である。排水ます1は、排水の流路を切り替えることが可能なますであり、地中に埋設されている。排水ます1は、
図1に示すように、ます本体5と、ます本体5の後述する点検口19を塞ぐ蓋8とを備えている。ます本体5は、
図2に示す主要部10と、2つの流出筒部21、22(
図3参照)と、流入筒部23(
図3参照)と、点検筒部20(
図1参照)とを有している。なお、
図2では、排水ます1の構造上の特徴が分かり易いように、ます本体5に関しては主要部10のみを切り出して図示している。
図2に示すように、排水ます1は、さらにます本体5に着脱自在に装着される流路切替部材35を備えている。
【0028】
まず、ます本体5について説明する。ます本体5は、本発明の本体の一例である。
図4に示すように、ます本体5は、底壁部14と、底壁部14から起立した縦筒部15と、縦筒部15の上部に設けられた傾斜部16と、を備えている。図示は省略するが、底壁部14は、平面視において略三角形状を有している。縦筒部15は、筒状の形状を有している。本実施形態では、縦筒部15は、
図3に示すように、平面視において略三角形状になるように配置された第1流出周壁部15A、第2流出周壁部15Bおよび流入周壁部15Cを有している。本実施形態では、第2流出周壁部15Bは、本発明の流出周壁部に対応している。
図4および
図5に示すように、第2流出周壁部15Bおよび第1流出周壁部15Aは、それぞれ下方に向かうほど底壁部14の中心に近づくように、鉛直線から傾いている。また、
図5に示すように、流入周壁部15Cも同様に、下方に向かうほど底壁部14の中心に近づくように鉛直線から傾いている。換言すると、第1流出周壁部15A、第2流出周壁部15Bおよび流入周壁部15Cは、上方に向かうほど互いに離反するように鉛直線から傾いている。
【0029】
図2に示すように、縦筒部15には、第1流出口11、第2流出口12および流入口13が形成されている。詳しくは、第1流出周壁部15Aには第1流出口11が形成され、第2流出周壁部15Bには第2流出口12が形成されている。また、流入周壁部15Cには流入口13が形成されている。流入口13、第1流出口11および第2流出口12は、それぞれ内径が等しく、側方に向かって開口している。
【0030】
図3に示すように、第1流出周壁部15Aと流入周壁部15Cとの交差部分の上部には、第1係合部61が設けられている。第2流出周壁部15Bの上部には、第2係合部62が設けられている。第2流出周壁部15Bと流入周壁部15Cとの交差部分の上部には、第3係合部63が設けられている。第1流出周壁部15Aの上部には、第4係合部64が設けられている。これら第1~第4係合部61~64には、それぞれ係合孔30が形成されている。第1係合部61の係合孔30と、第2係合部62の係合孔30とは、平面視においてます本体5の中心5cを挟んで互いに向かい合っている。第3係合部63の係合孔30と、第4係合部64の係合孔30とは、平面視においてます本体5の中心5cを挟んで互いに向かい合っている。本実施形態では、流入周壁部15C、および、第1流出周壁部15Aと第2流出周壁部15Bとの交差部分には、上述のような係合部が設けられておらず、係合孔は形成されていない。なお、以下の説明では、ます本体5の中心5c(または流路切替部材35の中心)に近づく方向を内方と称し、ます本体5の中心5c(または流路切替部材35の中心)から遠ざかる方向を外方と称する。
【0031】
本実施形態では、係合部61~64は、流出周壁部15A、15Bおよび流入周壁部15Cとは別部材であり、縦筒部15に組み付けられている。しかしながら、係合部61~64と、流出周壁部15A、15Bおよび流入周壁部15Cとは、単一の部材であってもよい。なお、
図2では、第4係合部64の図示は省略されている。
【0032】
図3に示すように、傾斜部16は、ます本体5の点検口19を通じて視認することが可能な部分である。
図4に示すように、傾斜部16は、縦筒部15と点検筒部20との間に配置されている。傾斜部16は、縦筒部15の上端から上方に向かうに連れて、ます本体5の外方に向かって斜めに延びている。換言すると、傾斜部16は、下方に向かうに連れてます本体5の内方に向かって傾斜している。傾斜部16は、
図3に示すように、第1傾斜部16A、第2傾斜部16Bおよび第3傾斜部16Cを有している。
図2に示すように、第1傾斜部16Aは、第1流出周壁部15Aの上端に接続され、第1流出口11の上方に配置されている。詳しい図示は省略するが、第2傾斜部16Bは、第2流出周壁部15Bの上端に接続され、第2流出口12の上方に配置されている。
図2に示すように、第3傾斜部16Cは、流入周壁部15Cの上端に接続され、流入口13の上方に配置されている。なお、本実施形態では、第1傾斜部16Aおよび第2傾斜部16Bは、それぞれ本発明の他の連結部および連結部に対応している。
【0033】
図3に示すように、第1流出筒部21、第2流出筒部22および流入筒部23は、側方に延びている。ここでは、第1流出筒部21は、第1流出周壁部15Aから径方向の外方に向かって延びており、第1流出口11(
図2参照)と繋がっている。第1流出筒部21には第1流出管91の一端が接続される。第1流出管91の他端には、例えば下水本管(図示せず)が接続される。第2流出筒部22は、第2流出周壁部15Bから径方向の外方に向かって延びており、第2流出口12(
図2参照)と繋がっている。第2流出筒部22には第2流出管92の一端が接続される。第2流出管92の他端には、例えば貯留槽(図示せず)が接続されている。流入筒部23は、流入周壁部15Cから径方向の外方に向かって延びており、流入口13(
図2参照)と繋がっている。流入筒部23には流入管93の一端が接続される。流入管93の他端には、例えば、排水が排出されるトイレなどの排水設備(図示せず)が接続されている。
【0034】
本実施形態では、流出筒部21、22および流入筒部23は、縦筒部15と単一の部材である。しかしながら、流出筒部21、22および流入筒部23は、縦筒部15とは別部材であり、縦筒部15に組み付けられていてもよい。
【0035】
図4に示すように、点検筒部20は主要部10の上方において、上下に延びている。点検筒部20は、傾斜部16の上端に接続されている。点検筒部20は上方に開口しており、点検筒部20の開口が点検口19を構成している。
図1に示すように、点検口19には、蓋8が着脱自在に嵌め込まれる。本実施形態では、
図4に示すように、点検筒部20は、縦筒部15と別部材であり、縦筒部15に組み付けられているが、縦筒部15と単一の部材であってもよい。
【0036】
図3に示すように、第1傾斜部16Aには、第1オーバーフロー孔70Aが形成されている。第1オーバーフロー孔70Aは、本発明の他のオーバーフロー孔に対応している。
図5に示すように、第1オーバーフロー孔70Aは、第1流出口11の中心11cよりも上方の位置において、第1流出筒部21と連通する。本実施形態では、第1オーバーフロー孔70Aは、第1流出口11よりも上方に位置している。第1オーバーフロー孔70Aの形状は特に限定されず、第1オーバーフロー孔70Aの数も特に限定されない。本実施形態では、
図3に示すように、第1オーバーフロー孔70Aには、平面視において第1架設部71Aが架け渡されている。第1架設部71Aは、径方向に延びた板状の部材である。第1架設部71Aによって第1オーバーフロー孔70Aには、2つの孔部が形成されている。ここでは、第1オーバーフロー孔70Aの2つの孔部の形状は扇形状である。
【0037】
なお、本実施形態では、第1架設部71Aの数は1つであるが、2つ以上であってもよい。また、第1架設部71Aは、省略することが可能である。第1架設部71Aが省略された場合、第1オーバーフロー孔70Aの孔部は1つである。第1架設部71Aは、第1傾斜部16Aと別部材であり、第1傾斜部16Aに組み付けられている。しかしながら、第1架設部71Aは、第1傾斜部16Aと単一の部材であってもよい。
【0038】
図5に示すように、第1流出筒部21の上部であって、第1オーバーフロー孔70Aの下方に位置する第1流出筒部21の側部には、第1連結孔72Aが形成されている。第1連結孔72Aは、第1オーバーフロー孔70Aの下方に位置している。平面視において、第1オーバーフロー孔70Aは、第1連結孔72Aと重なっている。ここでは、第1連結孔72Aの数は1つであるが、第1連結孔72Aの数は特に限定されない。詳細な図示は省略するが、第1連結孔72Aは、平面視において半月形状である。しかしながら、第1連結孔72Aの形状は特に限定されない。第1連結孔72Aには、上述の第1架設部71Aのような部材が架け渡されていない。
【0039】
本実施形態では、排水ます1は、第1傾斜部16Aに形成された第1オーバーフロー孔70Aと、第1流出筒部21に形成された第1連結孔72Aとを繋ぐ第1連結通路73Aを備えている。ここでは、第1連結通路73Aは、上下に延びており、上方および下方に向かって開口している。第1連結通路73Aの上端は、第1傾斜部16Aに接続されている。第1連結通路73Aの下端は、第1流出筒部21に接続されている。ここでは、第1連結通路73Aは、縦筒部15および第1流出筒部21を形成する部材によって形成されている。しかしながら、第1連結通路73Aは、縦筒部15および第1流出筒部21とは別の部材に形成されていてもよい。本実施形態では、第1連結孔72Aおよび第1連結通路73Aは、それぞれ本発明の他の連結孔および他の連結通路に対応している。
【0040】
図3に示すように、第2傾斜部16Bには、第2オーバーフロー孔70Bが形成されている。第2オーバーフロー孔70Bは、本発明のオーバーフロー孔に対応している。
図4に示すように、第2オーバーフロー孔70Bは、第2流出口12の中心12cよりも上方の位置に配置され、第2流出筒部22と連通する。本実施形態では、第2オーバーフロー孔70Bは、第2流出口12よりも上方に位置している。第2オーバーフロー孔70Bは、第1オーバーフロー孔70Aと同様のものであり、形状および数は特に限定されない。本実施形態では、
図3に示すように、第2オーバーフロー孔70Bには、平面視において、第2架設部71Bが架け渡されている。第2架設部71Bは、第1架設部71Aと同様に径方向に延びた板状の部材である。そのため、第2架設部71Bによって第2オーバーフロー孔70Bには、2つの孔部が形成されている。第2オーバーフロー孔70Bの2つの孔部の形状は、扇形状である。
【0041】
なお、本実施形態では、第2架設部71Bの数は1つであるが、2つ以上であってもよい。第2架設部71Bは省略されてもよい。第2架設部71Bが省略された場合、第2オーバーフロー孔70Bの孔部は1つである。第2架設部71Bは、第2傾斜部16Bとは別部材であり、第2傾斜部16Bに組み付けられている。しかしながら、第2架設部71Bは、第2傾斜部16Bと単一の部材であってもよい。
【0042】
図4に示すように、第2流出筒部22の上部であって、第2オーバーフロー孔70Bの下方に位置する第2流出筒部22の側部には、第2連結孔72Bが形成されている。第2連結孔72Bは、第2オーバーフロー孔70Bの下方に位置している。平面視において、第2オーバーフロー孔70Bは、第2連結孔72Bと重なっている。ここでは、第2連結孔72Bの数は、第1連結孔72Aと同様に1つであるが、2つ以上であってもよい。詳細な図示は省略するが、第2連結孔72Bは、平面視において半月形状である。しかしながら、第2連結孔72Bの形状は特に限定されない。第2連結孔72Bには、第2架設部71Bのような部材が設けられていない。
【0043】
本実施形態では、排水ます1は、第2傾斜部16Bに形成された第2オーバーフロー孔70Bと、第2流出筒部22に形成された第2連結孔72Bとを繋ぐ第2連結通路73Bを備えている。第2連結通路73Bは、上下に延びており、上方および下方に向かって開口している。第2連結通路73Bの上端は、第2傾斜部16Bに接続されており、第2連結通路73Bの下端は、第2流出筒部22に接続されている。ここでは、第2連結通路73Bは、縦筒部15および第2流出筒部22を形成する部材によって形成されている。しかしながら、第2連結通路73Bは、縦筒部15および第2流出筒部22とは別の部材に形成されていてもよい。本実施形態では、第2連結孔72Bおよび第2連結通路73Bは、それぞれ本発明の連結孔および連結通路に対応している。
【0044】
本実施形態では、第2オーバーフロー孔70Bには、閉鎖キャップ75を設けることが可能である。閉鎖キャップ75は、第2オーバーフロー孔70Bに着脱可能に設けられ、第2オーバーフロー孔70Bを閉鎖可能なものである。閉鎖キャップ75は、第2オーバーフロー孔70Bに嵌め込まれる。閉鎖キャップ75は、第2オーバーフロー孔70Bに合致する形状である。詳しい図示は省略するが、閉鎖キャップ75は、平面視において扇形状である。本実施形態では、第2オーバーフロー孔70Bの数は2つであるため、閉鎖キャップ75の数も2つである。閉鎖キャップ75を形成する材料は特に限定されない。例えば、閉鎖キャップ75は、可撓性を有する部材、例えばプラスチックやゴムによって形成されている。
【0045】
なお、本実施形態では、第1オーバーフロー孔70Aの形状および大きさは、第2オーバーフロー孔70Bの形状および大きさと同じである。そのため、
図5に示すように、閉鎖キャップ75は、第1オーバーフロー孔70Aに着脱可能に設けられ、第1オーバーフロー孔70Aを閉鎖可能なものである。閉鎖キャップ75は、第1オーバーフロー孔70Aに嵌め込み可能である。
【0046】
ここでは、
図3に示すように、第1傾斜部16Aの第1架設部71Aには、下方に配置された第1流出口11から排水が流出することを示す流出目印17Aが付されている。第2傾斜部16Bの第2架設部71Bには、下方に配置された第2流出口12から排水が流出することを示す流出目印17Bが付されている。これら流出目印17A、17Bは、ます本体5の内方から外方に向かって指し示す矢印である。本実施形態では、第3傾斜部16Cには、下方に配置された流入口13に排水が流入することを示す流入目印17Cが付されている。この流入目印17Cは、ます本体5の外方から内方に向かって指し示す矢印である。なお、流出目印17A、17B、流入目印17Cの形状および矢印の向きは、特に限定されない。作業者は、点検筒部20の点検口19を通じて、流出目印17A、17Bおよび流入目印17Cを視認することが可能である。
【0047】
次に、流路切替部材35について説明する。流路切替部材35は、縦筒部15の内部に着脱可能に配置される。流路切替部材35は、第1流出口11および第2流出口12のうち何れかを閉鎖し、排水ます1の内部の排水の流路を区画すると共に、排水の流路の切り替えを可能にする部材である。
図6は、流路切替部材35の斜視図である。
図6に示すように、流路切替部材35は、流路部材38と、閉鎖部材37とを有している。本実施形態では、流路部材38が本発明の流路部の一例であり、閉鎖部材37が本発明の閉鎖部の一例である。
【0048】
流路部材38は、インバート57が形成され、縦筒部15の内部に着脱可能に配置されるものである。流路部材38は、底壁部49(
図4参照)と、側壁部36とを有している。
図3に示すように、底壁部49は平面視において略三角形状を有している。側壁部36は、平面視において、略三角形状となるように配置された第1側壁部36A、第2側壁部36Bおよび側壁閉鎖部36Cを含んでいる。ます本体5の第1流出周壁部15A、第2流出周壁部15Bおよび流入周壁部15Cと同様に、第1側壁部36A、第2側壁部36Bおよび側壁閉鎖部36Cは、それぞれ下方に向かうほど底壁部49の中心に近づくように鉛直線から傾いている(
図4および
図5参照)。
【0049】
図6に示すように、第1側壁部36Aには第1開口41が形成され、第2側壁部36Bには第2開口42が形成されている。
図4に示す底壁部49には、第1開口41と第2開口42とを繋ぐインバート57が形成されている。本実施形態では、インバート57は、流路切替部材35に形成されている。インバート57は、排水が流れる溝状の流路のことである。インバート57は、
図3に示すように、平面視において閉鎖部材37側に凹む曲部57aを有している。なお、側壁閉鎖部36Cには開口は形成されていない。
【0050】
図6に示すように、側壁閉鎖部36Cの外方の面の両側には、上下に延びるスライド溝39aが形成されたレール39が一対で設けられている。
【0051】
閉鎖部材37は、流路切替部材35がます本体5に装着されたときに第1流出口11および第2流出口12の何れか一方を閉鎖するための部材である。詳しくは、閉鎖部材37は、縦筒部15の内部に着脱可能であって、第1流出口11の少なくとも下半分を閉鎖する位置と、第2流出口12の少なくとも下半分を閉鎖する位置とに配置可能である。本実施形態では、
図6に示すように、閉鎖部材37には、環状のシール部材48が設けられている。シール部材48は、例えばゴムによって構成されており、可撓性を有している。シール部材48は、閉鎖部材37がます本体5の第1流出周壁部15A(
図2参照)に押し付けられたときには、第1流出口11の周囲を封止する。シール部材48は、閉鎖部材37がます本体5の第2流出周壁部15B(
図2参照)に押し付けられたときには、第2流出口12の周囲を封止する。
【0052】
図6に示すように、閉鎖部材37は板状に形成されており、流路部材38の側壁閉鎖部36Cに対し上下にスライド可能に構成されている。
図7は、閉鎖部材37の正面図である。
図7に示すように、閉鎖部材37の両側には、流路部材38のレール39のスライド溝39a(
図6参照)に係合する係合突起47が設けられている。
図8は、閉鎖部材37の係合突起47およびレール39のスライド溝39aの断面図である。本実施形態では、
図8に示すように、レール39のスライド溝39aの下端は閉じており、係合突起47がスライド溝39aの下端までスライドすると、係合突起47はレール39の下端部によって支持される。このことによって、係合突起47が下方に脱落することが防止される。そのため、流路部材38を持ち上げたときに、閉鎖部材37が流路部材38から脱落することが防止される(
図9参照)。
【0053】
図6に示すように、取っ手50は、流路切替部材35をます本体5から取り外すとき、および、ます本体5に装着するときに、作業者が掴む部分である。取っ手50は、流路切替部材35の側壁部36に架け渡されている。詳しくは、取っ手50は、側壁部36の第1側壁部36Aと第2側壁部36Bとの交差部分の上部と、側壁閉鎖部36Cの上部とに、架け渡されている。取っ手50は流路部材38に対して回動可能に構成されている。
【0054】
流路切替部材35は、第1位置P1(
図3参照)と第2位置P2(
図10参照)とに配置可能である。詳しい図示は省略するが、第1位置P1は、ます本体5の流入口13と第1流出口11とを繋ぐ位置である。第2位置P2は、ます本体5の流入口13と第2流出口12とを繋ぐ位置である。第1位置P1は、閉鎖部材37が第2流出口12の少なくとも下半分を閉鎖する位置であり、流路部材38のインバート57が流入口13と第1流出口11とを繋ぐ位置である。
図3に示すように、第1位置P1では、流路切替部材35の側壁部36の側壁閉鎖部36C、および閉鎖部材37は、ます本体5の縦筒部15の第2流出周壁部15Bと対向し、かつ、第2流出周壁部15Bに形成された第2流出口12(
図2参照)と対向している。第1位置P1では、流路切替部材35の第1開口41はます本体5の流入口13と重なり、第2開口42は第1流出口11と重なり、第2流出口12は閉鎖部材37によって閉鎖される。インバート57は、閉鎖部材37が第2流出口12を閉鎖しているとき、流入口13と第1流出口11とを繋いでいる。その結果、流入口13と第1流出口11とが連通し、流入口13から流入した排水は、第1流出口11から流出する。排水は、流入管93から排水ます1を経て第1流出管91に流れる。
【0055】
第1位置P1では、第2流出口12は閉鎖部材37によって閉鎖されているが、ます本体5の内部は、
図4に示すように、第2オーバーフロー孔70B、第2連結通路73Bおよび第2連結孔72Bを介して第2流出筒部22と連通している。そのため、例えば第1流出口11(詳しくは第1流出筒部21)に接続された流出管91または流出管91に接続された下水本管(図示せず)などが詰まった場合、第1流出口11から流出しようとする排水は、上記の詰まりなどによって塞き止められる。その結果、第1位置P1の状態では、第2流出口12は閉鎖されているため、ます本体5内の排水の水位が上昇する。そして、このまま水位が上昇すると、点検口19から排水が溢れ出すおそれがある。しかしながら、ます本体5内において水位が上昇した排水は、第2オーバーフロー孔70B、第2連結通路73Bおよび第2連結孔72Bを通じて第2流出筒部22に流出する。第2流出筒部22に流出した排水は、第2流出管92に流れる。このように、本実施形態では、第1位置P1において、第1流出口11に接続された流出管91などが詰まった場合であっても、排水がます本体5内から点検口19を通じて外部に溢れ難くすることができる。
【0056】
図10に示す第2位置P2は、
図3において流路切替部材35を反時計回りに120度回転させた位置である。第2位置P2は、閉鎖部材37が第1流出口11の少なくとも下半分を閉鎖している位置であり、流路部材38のインバート57が流入口13と第2流出口12とを繋ぐ位置である。
図10に示すように、第2位置P2では、流路切替部材35の側壁閉鎖部36Cおよび閉鎖部材37は、ます本体5の第1流出周壁部15Aに対向し、かつ、第1流出周壁部15Aに形成された第1流出口11(
図2参照)と対向している。第2位置P2では、流路切替部材35の第1開口41はます本体5の第2流出口12と重なり、第2開口42は流入口13と重なり、第1流出口11は閉鎖部材37によって閉鎖される。インバート57は、閉鎖部材37が第1流出口11を閉鎖しているとき、流入口13と第2流出口12とを繋いでいる。その結果、流入口13と第2流出口12とが連通し、流入口13から流入した排水は、第2流出口12から流出する。排水は、流入管93から排水ます1を経て第2流出管92に流れる。
【0057】
第2位置P2では、第1流出口11は閉鎖部材37によって閉鎖されているが、ます本体5の内部は、
図5に示すように、第1オーバーフロー孔70A、第1連結通路73Aおよび第1連結孔72Aを介して第1流出筒部21と連通している。そのため、例えば第2流出口12(詳しくは第2流出筒部22)に接続された流出管92または流出管92に接続された配管などが詰まった場合、第2流出口12から流出しようとする排水は塞き止められる。その結果、第2位置P2の状態では、第1流出口11は閉鎖されているため、ます本体5内の排水の水位が上昇する。このまま水位が上昇すると、点検口19から排水が溢れ出すおそれがある。しかしながら、本実施形態では、ます本体5内において水位が上昇した排水は、第1オーバーフロー孔70A、第1連結通路73Aおよび第1連結孔72Aを通じて第1流出筒部21に流出する。このように、第2位置P2において、第2流出口12に接続された流出管92などが詰まった場合であっても、排水がます本体5内から点検口19を通じて外部に溢れ難くすることができる。このように、流路切替部材35の位置を変更することにより、排水ます1の流路を切り替えることができる。
【0058】
次に、排水ます1の排水の流路を切り替える手順について簡単に説明する。ここでは、流路切替部材35の位置を第1位置P1から第2位置P2に変更する手順について説明する。
【0059】
上述の通り、
図3は流路切替部材35が第1位置P1に配置されている状態を示している。流路切替部材35が第1位置P1に配置されているとき、取っ手50の一端は、第2流出周壁部15Bに設けられた第2係合部62の係合孔30に係合し、取っ手50の他端は、第1流出周壁部15Aと流入周壁部15Cの交差部分に設けられた第1係合部61の係合孔30に係合している。第1位置P1のとき、閉鎖部材37は第2流出周壁部15Bに形成された第2流出口12(
図2参照)に対向しており、第2流出口12を閉鎖している。
【0060】
排水の流路を切り替える際には、まず、作業者は蓋8(
図1参照)を取り外し、ます本体5の点検口19を開放する。次に、点検口19から腕を挿入し、取っ手50を掴んで引き上げる。このことで、取っ手50の両端と第1係合部61および第2係合部62の係合孔30との係合状態が解除される。
【0061】
取っ手50を引き上げると、閉鎖部材37の係合突起47がレール39のスライド溝39aの下端に当接するまで(
図8参照)、流路部材38は閉鎖部材37に対して上方にスライドする(
図9参照)。そして、閉鎖部材37がスライド溝39aの下端に当接した後、閉鎖部材37は流路部材38と共に上方に移動する。
【0062】
次に、作業者は、流路切替部材35をます本体5から取り出した後、閉鎖部材37が第1流出口11を閉鎖するような位置となるように、流路切替部材35の位置を変更する。このとき、作業者は、ます本体5の傾斜部16に付された流出目印17A(
図3参照)を、点検口19を通じて視認することで、第1流出口11の位置を把握するとよい。このように第1流出口11の位置を把握した後、作業者は、取っ手50の両端が第3係合部63および第4係合部64の係合孔30の真上に位置するよう、流路切替部材35を水平に120度回転させる。そして、流路切替部材35をます本体5に挿入する。
【0063】
流路切替部材35を挿入したとき、閉鎖部材37のシール部材48(
図7参照)はます本体5の第1流出周壁部15Aと接触する。しかしながら、閉鎖部材37は流路部材38の側壁閉鎖部36Cから下方にずれているので、シール部材48と第1流出周壁部15Aとの間の摺動抵抗は比較的小さい。よって、作業者は比較的小さな力で流路切替部材35をます本体5に挿入することができる。
【0064】
作業者が取っ手50を下方に移動させると、まず、閉鎖部材37の下端部がます本体5の底壁部14に当たる。取っ手50を更に下方に移動させると、流路部材38は閉鎖部材37に対して下方にスライドする。流路部材38の側壁閉鎖部36Cは鉛直線に対して傾斜しているので、流路部材38を下向きに押す力の一部は、閉鎖部材37をます本体5の第1流出周壁部15Aに押しつける力となる。よって、作業者は、取っ手50を下向きに押すだけで、閉鎖部材37のシール部材48を第1流出周壁部15Aに押しつけることができ、シール部材48のシール性を向上させることができる。これにより、排水が第1流出口11から漏れることをより確実に防止することができる。
【0065】
このようにして、
図10に示すように、流路切替部材35を第2位置P2に配置したとき、取っ手50の一端は、第1流出周壁部15Aに設けられた第4係合部64の係合孔30に係合し、取っ手50の他端は、第2流出周壁部15Bと流入周壁部15Cの交差部分に設けられた第3係合部63の係合孔30に係合する。第2位置P2のとき、閉鎖部材37は第1流出周壁部15Aに形成された第1流出口11(
図2参照)に対向している。
【0066】
以上、本実施形態では、
図3に示すように、閉鎖部材37によって第2流出口12が閉鎖されている場合、流入口13からます本体5内に流入した排水は、第1流出口11から流出する。例えば第1流出口11に接続された第1流出管91などが詰まった場合、排水の流れが塞き止められる。このとき、ます本体5内において排水の水位が上昇する。水位が上昇した排水は、第2オーバーフロー孔70Bの高さに到達したとき、
図4に示すように、第2オーバーフロー孔70B、第2連結通路73Bおよび第2連結孔72Bから第2流出筒部22に排出される。よって、排水の排出先である第1流出管91などが詰まった場合であっても、第2オーバーフロー孔70Bから排水が流出するため、排水の流路を切り替えるタイミングが遅くなった場合であっても、点検口19や流入口13に接続された上記排水設備から排水が溢れ出難くすることができる。
【0067】
本実施形態では、
図10に示すように、閉鎖部材37によって第1流出口11が閉鎖されている場合、流入口13からます本体5内に流入した排水は、第2流出口12から流出する。例えば第2流出口12に接続された第2流出管92などが詰まった場合、排水の流れが塞き止められる。このとき、ます本体5内において排水の水位が上昇する。水位が上昇した排水は、第1オーバーフロー孔70Aの高さに到達したとき、
図5に示すように、第1オーバーフロー孔70A、第1連結通路73Aおよび第1連結孔72Aを通じて第1流出筒部21に排出される。よって、第2流出口12に接続された第2流出管92などが詰まった場合であっても、点検口19や流入口13に接続された上記排水設備から排水が溢れ出難くすることができる。
【0068】
本実施形態では、平面視において、第1オーバーフロー孔70Aと第1連結孔72Aとは重なっている。このことによって、第1オーバーフロー孔70Aの高さにまで到達した排水を、第1オーバーフロー孔70Aから第1連結孔72Aに落下させることで、第1流出筒部21に排出させることができる。また、平面視において、第2オーバーフロー孔70Bと第2連結孔72Bとは重なっている。このことによって、第2オーバーフロー孔70Bの高さにまで到達した排水を、第2オーバーフロー孔70Bから第2連結孔72Bに落下させることで、第2流出筒部22に排出させることができる。よって、排水に含まれる汚物が連結通路73A、73Bに付着し難くすることができる。
【0069】
第1傾斜部16Aおよび第2傾斜部16Bには、それぞれオーバーフロー孔70A、70Bが形成されているため、傾斜部16A、16Bの強度が弱くなる。しかしながら、本実施形態では、
図3に示すように、第1オーバーフロー孔70Aに、第1架設部71Aが架け渡されている。第2オーバーフロー孔70Bに、第2架設部71Bが架け渡されている。よって、架設部71A、71Bによって傾斜部16A、16Bの強度を強くすることができるため、傾斜部16A、16Bが破損し難い。
【0070】
本実施形態では、架設部71A、71Bは、平面視において点検口19を通じて視認可能に構成されている。第1架設部71Aには、排水がます本体5から流出することを示す流出目印17Aが付されている。第2架設部71Bには、排水がます本体5から流出することを示す流出目印17Bが付されている。このことによって、作業者は、点検口19を通じて流出目印17A、17Bを視認することで、第1流出口11および第2流出口12の位置を確認することができる。よって、第1流出口11および第2流出口12の位置を把握しながら、排水の流路を正確に切り替えることができる。
【0071】
本実施形態では、
図4および
図5に示すように、閉鎖キャップ75は、オーバーフロー孔70A、70Bの何れかに着脱可能に設けられ、かつ、オーバーフロー孔70A、70Bを閉鎖可能である。例えば第2流出筒部22に接続された第2流出管92内の悪臭が第2オーバーフロー孔70Bから漏れることがあり得る。例えば第2オーバーフロー孔70Bから排水を第2流出筒部22に排出させなくてもよい場合(具体的には、流路切替部材35の位置を第2位置P2にしたとき)には、第2オーバーフロー孔70Bに閉鎖キャップ75を装着する。このことによって、第2流出筒部22に接続された第2流出管92内の悪臭が、第2オーバーフロー孔70Bから漏れることを抑制することができる。
【0072】
<第1実施形態の変形例>
上記第1実施形態において、第1架設部71Aは省略されてもよいし、第2架設部71Bも省略されてもよい。上記第1実施形態では、2つのオーバーフロー孔70A、70Bが形成されていた。しかしながら、第1オーバーフロー孔70Aおよび第2オーバーフロー孔70Bのうち何れか一方は省略されてもよい。例えば、第1流出口11の上方に位置する第1傾斜部16Aに形成された第1オーバーフロー孔70Aは、省略されてもよい。
【0073】
上記第1実施形態において、本発明の流出筒部に対応した第2流出筒部22は、ます本体5の一部であり、縦筒部15と一体成形されていた。しかしながら、第2流出筒部22は、縦筒部15とは別部材であり、縦筒部15の第2流出口12に接続される配管であってもよい。
【0074】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る排水ます101について説明する。
図11は、第2実施形態に係る排水ます101の断面図であり、
図4相当図である。
図12は、第2実施形態に係る排水ます101の閉鎖部材137の正面図である。第1実施形態に係る排水ます101では、
図3に示すように、オーバーフロー孔70A、70Bは、ます本体5(詳しくは第1傾斜部16Aおよび第2傾斜部16B)に形成されていた。しかしながら、
図11に示すように、第2実施形態では、オーバーフロー孔170は、流路切替部材135の閉鎖部材137に形成されている。
【0075】
本実施形態では、排水ます101において、オーバーフロー孔170の位置以外の構成は、第1実施形態に係る排水ます1の構成と同じであるため、排水ます101の詳しい説明は省略する。本実施形態において、流路切替部材135は、第1実施形態の流路切替部材35に対応しており、流路部材138と、閉鎖部材137とを備えている。本実施形態では、流路部材138が本発明の流路部の一例であり、閉鎖部材137が本発明の閉鎖部の一例である。
【0076】
図12に示すように、閉鎖部材137には、オーバーフロー孔170が形成されている。オーバーフロー孔170は、
図11に示すように、流路切替部材135を第1位置P1(
図3参照)に配置して、第2流出口12を閉鎖しているとき、第2流出口12の中心12cよりも上方の位置に配置されている。言い換えると、オーバーフロー孔170は、流路切替部材135を第2位置P2(
図10参照)に配置して、第1流出口11を閉鎖しているとき、第1流出口11の中心11cよりも上方の位置に配置されている。ここでは、
図12に示すように、オーバーフロー孔170は、環状のシール部材48によって囲まれた閉鎖部材137の部分に形成されている。オーバーフロー孔170の形状は特に限定されないが、ここでは半月形状である。
【0077】
図11に示すように、流路部材138の側壁部36には、連結孔172が形成されている。詳しくは、連結孔172は、側壁部36の側壁閉鎖部36Cに形成されている。本実施形態では、連結孔172は、流路切替部材135を第1位置P1(
図3参照)に配置して、第2流出口12を閉鎖しているとき、第2流出口12の中心12cよりも上方の位置に配置されている。言い換えると、連結孔172は、流路切替部材135を第2位置P2(
図10参照)に配置して、第1流出口11を閉鎖しているとき、第1流出口11の中心11cよりも上方の位置に配置されている。また、連結孔172は、流路切替部材135がます本体5に収容されている状態において、オーバーフロー孔170と連通する。なお、詳しい図示は省略するが、連結孔172は、オーバーフロー孔170と同じ大きさであり、半月形状である。しかしながら、連結孔172の大きさや形状は特に限定されない。
【0078】
本実施形態では、オーバーフロー孔170および連結孔172は、流路切替部材135が第1位置P1に配置されているとき、第2流出口12の上部と連通し、流路切替部材135が第2位置P2に配置されているとき、第1流出口11の上部と連通している。
【0079】
本実施形態であっても、流路切替部材135の位置が第1位置P1のときに、ます本体5内の排水の水位が上昇した場合であっても、水位が上昇した排水を、オーバーフロー孔170、連結孔172および第2流出口12を通じて第2流出筒部22に排出することができる。また、流路切替部材135の位置が第2位置P2のときに、ます本体5内の排水の水位が上昇した場合であっても、水位が上昇した排水を、オーバーフロー孔170、連結孔173および第1流出口11を通じて第1流出筒部21に排出することができる。よって、第1流出管91または第2流出管92が詰まった場合であっても、点検口19や流入口13に接続された上記排水設備から排水が溢れ出ることを抑制することができる。
【0080】
なお、上記各実施形態では、流路切替部材35、135は、流路部材38、138と、閉鎖部材37、137との2つの部材によって構成されていたが、閉鎖部材37、137は省略されてもよい。この場合、流路切替部材35、135は、流路部材38、138によって構成されている。この場合、閉鎖部材37、137に設けられたシール部材48(
図7、
図12参照)は、流路部材38、138の側壁閉鎖部36C(
図9参照)の外側の面に設けられているとよい。このように閉鎖部材37、137が省略された場合、流路部材38、138の側壁閉鎖部36Cが本発明の閉鎖部に対応し、側壁閉鎖部36C以外の流路部材38、138の部分が本発明の流路部に対応する。
【0081】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る排水ます201について説明する。
図13、
図14は、第3実施形態に係る排水ます201の平面図であり、それぞれ第2流出口212、第1流出口211を閉鎖している状態を示す図である。
図15は、
図13のXV-XV線に沿った排水ます201の断面図である。
図16は、
図14のXVI-XVI線に沿った排水ます201の断面図である。以下の排水ます201の説明において、前、後、左、右、上、下とは、排水ます201を第2流出筒部222側から見たときの前、後、左、右、上、下を意味するものとする。
【0082】
本実施形態では、
図13に示すように、排水ます201は、ます本体205と、閉鎖部材237とを備えている。
図15に示すように、ます本体205は、底壁部214と、底壁部214から起立した縦筒部215と、縦筒部215の上部に設けられた傾斜部216と、点検筒部220と、第1流出筒部221(
図13参照)と、第2流出筒部222(
図13参照)と、流入筒部223(
図13参照)とを有している。
【0083】
図15および
図16に示すように、筒状の縦筒部215には、第1流出口211、第2流出口212および流入口213が形成されている。第1流出口211、第2流出口212および流入口213は、側方に向かって開口している。
図16に示すように、流入口213には、流入筒部223が繋がっている。第1流出口211には、第1流出筒部221が繋がっている。
図15に示すように、第2流出口212には、第2流出筒部222が繋がっている。流入筒部223、第1流出筒部221および第2流出筒部222は、側方に向かって延びている。
【0084】
図13および
図14に示すように、底壁部214には、第1インバート218Aおよび第2インバート218Bが形成されている。インバート218A、218Bには、排水が流れる。
図16に示すように、第1インバート218Aは、ます本体205の流入口213と第1流出口211とを繋ぐものであり、底壁部214に形成された溝である。第1インバート218Aの形状は特に限定されない。本実施形態では、第1インバート218Aは、略半管形状であり、一直線状に延びている。
【0085】
図15に示すように、第2インバート218Bは、ます本体205の第2流出口212と第1インバート218Aとを繋ぐものであり、底壁部214に形成された溝である。
図14に示すように、第2インバート218Bは、第1インバート218Aの左右方向の中央部分に接続されている。第2インバート218Bの形状は特に限定されない。本実施形態では、第2インバート218Bは、略半管形状であり、一直線状に延びている。
【0086】
傾斜部216は、
図15に示すように、縦筒部215と点検筒部220とに連結されている。傾斜部216は、
図13に示すように、第1傾斜部216A、第2傾斜部216Bおよび第3傾斜部216Cを有している。第1傾斜部216Aおよび第2傾斜部216Bは、平面視において、第1インバート218Aの第2インバート218B側に配置されている。第1傾斜部216Aは、第2インバート218Bの左方に設けられており、第2傾斜部216Bは、第2インバート218Bの右方に設けられている。第3傾斜部216Cは、平面視において、第1インバート218Aの第2インバート218Bとは反対側に配置されている。第1~第3傾斜部216A~216Cは、第1インバート218Aに向かうに従って下方に傾斜している。
図15に示すように、点検筒部220は、縦筒部215の上方において、上下に延びている。点検筒部220は上方に開口しており、点検筒部220の開口が点検口219を構成している。
【0087】
次に、閉鎖部材237について説明する。以下の閉鎖部材237の説明では、閉鎖部材237の前、後、左、右、上、下とは、
図13に示すように、それぞれ閉鎖部材237を第2インバート218Bに嵌合させたときの閉鎖部材237の前、後、左、右、上、下とする。
図13および
図14に示すように、閉鎖部材237は、縦筒部215の内部に着脱可能であって、第1流出口211の少なくとも下半分を閉鎖する位置と、第2流出口212の少なくとも下半分を閉鎖する位置とに配置可能なものである。閉鎖部材237は、一部が第1インバート218Aおよび第2インバート218Bの何れにも嵌合可能に構成されている。閉鎖部材237は、
図15および
図16に示すように、第1流出口211および第2流出口212の何れか一方を閉鎖可能な部材である。
【0088】
図17は、閉鎖部材237の平面図である。
図18は、閉鎖部材237の正面図である。
図17および
図18に示すように、閉鎖部材237は、挿入部241と、閉鎖板部242と、当接部243と、取っ手244と、を備えている。
【0089】
図15および
図16に示すように、挿入部241は、第1流出口211および第2流出口212の何れかに挿入される。本実施形態では、
図16に示すように、挿入部241は、第1流出口211に挿入された状態で第1流出筒部221に嵌合する。
図15に示すように、挿入部241は、第2流出口212に挿入された状態で第2流出筒部222に嵌合する。なお、
図17に示すように、挿入部241の外周部分にはシール部材253が設けられていてもよい。シール部材253の形状は、環状形状である。シール部材253は、ゴムなどの弾性部材によって形成されている。
【0090】
図18に示すように、閉鎖板部242は、挿入部241の一端を閉鎖するものである。
図16に示すように、挿入部241が第1流出口211に挿入されている際、閉鎖板部242は、ます本体205内の排水が第1流出口211に流れることを防止する。
図15に示すように、挿入部241が第2流出口212に挿入されている際、閉鎖板部242は、ます本体205内の排水が第2流出口212に流れることを防止する。本実施形態では、閉鎖板部242は、下方に向かうに従って、挿入部241から離れ、かつ、下方に凹むように湾曲している。
図17に示すように、閉鎖板部242は、平面視において閉鎖板部242の中心に向かって先細り形状に形成されている。
【0091】
図18に示すように、閉鎖板部242には、オーバーフロー孔270が形成されている。オーバーフロー孔270は、挿入部241の上下方向の中心241cよりも上方の閉鎖板部242の部分に形成されている。正面視において、オーバーフロー孔270は、挿入部241に囲まれている。オーバーフロー孔270は、
図16に示すように、閉鎖部材237が第1流出口211を閉鎖しているとき、第1流出口211の中心よりも上方の位置に配置されている。また、オーバーフロー孔270は、
図15に示すように、閉鎖部材237が第2流出口212を閉鎖しているとき、第2流出口212の中心よりも上方の位置に配置されている。
【0092】
当接部243は、
図15および
図16に示すように、挿入部241が第1流出口211および第2流出口212の何れか一方に挿入されたとき、縦筒部215の内周面に当接する部位である。本実施形態では、当接部243は、挿入部241の上方に設けられており、閉鎖板部242の上端から前方に向かって延びている。当接部243には、棒状であって、かつ、上方に延びた取っ手244が設けられている。
【0093】
次に、排水ます201の使用手順について説明する。例えば、
図13に示すように、流入口213と第1流出口211とを繋ぐ場合には、
図15に示すように、閉鎖部材237の挿入部241を第2流出口212に挿入して、閉鎖部材237を第2インバート218Bに嵌合させる。このことによって、流入口213からます本体205内に流入した排水は、第1インバート218Aに流入する。そして、第1インバート218Aに流入した排水は、第1流出口211から第1流出筒部221に流出する。ここで、例えば第1流出筒部221に接続された第1流出管91が詰まって、排水の流れが塞き止められた場合、ます本体205に排水が溜まり、排水の水位が上昇する。このように排水の水位が上昇した場合であっても、オーバーフロー孔270および第2流出口212を通じて、排水を第2流出筒部222に排出することができる。
【0094】
一方、流入口213と第2流出口212とを繋ぐ場合には、
図16に示すように、閉鎖部材237の挿入部241を第1流出口211に挿入して、閉鎖部材237を第1インバート218Aの第1流出口211側の部位に嵌合させる。このことによって、流入口213からます本体205内に流入した排水は、第1インバート218Aおよび第2インバート218Bに流入する。そして、第2インバート218Bに流入した排水は、第2流出口212から第2流出筒部222に流出する。ここで、例えば第2流出筒部222に接続された第2流出管92が詰まって、排水の流れが塞き止められた場合、ます本体205内において排水の水位が上昇する。このように排水の水位が上昇した場合であっても、オーバーフロー孔270および第1流出口211を通じて、排水を第1流出筒部221に排出することができる。
【0095】
以上のように、本実施形態であっても、第1流出筒部221または第2流出筒部222に接続された流出管91、92が詰まった場合において、点検口219や流入口223に接続された排水設備から排水が溢れ出ることを抑制することができる。
【0096】
<第3実施形態の変形例>
上記第3実施形態において、オーバーフロー孔270は、閉鎖部材237の閉鎖板部242に形成されていた。しかしながら、オーバーフロー孔270は、閉鎖部材237の閉鎖板部242の上端から前方に向かって延びた当接部243に形成されていてもよい。言い換えると、オーバーフロー孔270は、閉鎖部材237の上部を上下に貫通するように形成されていてもよい。
【0097】
上記第3実施形態において、第1実施形態と同様に、ます本体205には、オーバーフロー孔70A、70B(
図3参照)に対応した孔が形成されていてもよい。例えば、ます本体205の第3傾斜部216Cにオーバーフロー孔70Aに対応した孔が形成され、第1傾斜部216Aにオーバーフロー孔70Bに対応した孔が形成されていてもよい。この場合、第1流出筒部221、第2流出筒部222には、それぞれ連結孔72A、72Bが形成されてもよい。連結孔72Aとオーバーフロー孔70Aに対応した孔とを繋ぐ第1連結通路73A、および、連結孔72Bとオーバーフロー孔70Bに対応した孔とを繋ぐ第2連結通路73Bが設けられてもよい。
【0098】
<他の変形例>
上記各実施形態の排水ます1、101、201は、本発明に係る配管部材の一例である。しかしながら、点検口を有し、かつ、流路を切り替えることができる配管部材は、排水ます1、101、201に限定されない。配管部材は、例えば管継手であってもよい。配管部材は、地中に埋設されるものに限定されず、地上に設置されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0099】
1、101、201 排水ます(配管部材)
5 ます本体(本体)
11 第1流出口
12 第2流出口
13 流入口
15 縦筒部
19 点検口
20 点検筒部
22 第2流出筒部(流出筒部)
37 閉鎖部材
57 インバート
70A 第1オーバーフロー孔(他のオーバーフロー孔)
70B 第2オーバーフロー孔(オーバーフロー孔)