(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】チュービング装置及びチュービング装置の足場形成方法
(51)【国際特許分類】
E02D 13/00 20060101AFI20221215BHJP
E02D 7/20 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
E02D13/00 Z
E02D7/20
(21)【出願番号】P 2019017962
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩司
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040434(JP,A)
【文献】特開2001-090462(JP,A)
【文献】特開2017-210835(JP,A)
【文献】実公平07-006231(JP,Y2)
【文献】特開平10-025983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/00
E02D 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に据え付けられるベースフレームと、該ベースフレームの上方に昇降シリンダを介して昇降可能に設けられたドライブフレームと、該ドライブフレームの上方にチャックシリンダを介して昇降可能に設けられたチャックフレームと、前記ベースフレーム、ドライブフレーム及びチャックフレームの中央部を鉛直方向に貫通するケーシング挿通孔とを備え、前記チャックフレームの上に、前記ケーシング挿通孔の内径に対応した内径を有する開口部を備えた作業デッキと、該作業デッキの外縁に沿って着脱可能に設けられた複数の手摺部材とを備えたチュービング装置において、前記開口部に、ケーシングチューブの複数の外径にそれぞれ対応した内径を有し、かつ、互いに内外径の異なる複数の円環状足場を一組として、これを内外径の大きいものから順次入れ子状に重合保持する着脱可能な作業用足場を設け
、
前記円環状足場は、前記ケーシングチューブの外径に対応した内径を有する円筒状の胴部と、該胴部の上端周縁に径方向外側に向けて突出するように設けられた円環状の踏み板とを有して形成され、前記複数の円環状足場のうちの外側に配置された円環状足場の前記踏み板の内周縁部には、内側に配置された円環状足場の前記踏み板の外周縁部を受け止めることにより、互いの踏み板の上面同士を面一に揃えた重合位置に保持する環状段差部を設け、
前記胴部は、上方に向けて拡径した円錐部を有して形成されるとともに、外周面に前記円錐部の傾斜に対応する傾斜部を備えた複数の立板を放射状に設けていることを特徴とするチュービング装置。
【請求項2】
前記踏み板は、前記円環状足場を吊り上げるための吊り部を設けていることを特徴とする請求項
1記載のチュービング装置。
【請求項3】
前記複数の円環状足場のうちの内側に配置される円環状足場は、前記踏み板を円環状に代えて円板状に形成した円板状足場であることを特徴とする請求項
1又は2のいずれか1項記載のチュービング装置。
【請求項4】
請求項
1乃至3のいずれか1項記載のチュービング装置の足場形成方法であって、前記ケーシングチューブを外径の小さいものから大きいものに変更して施工する際に、前記複数の円環状足場を前記開口部に重合保持した状態から、
前記複数の円環状足場の一つの円環状足場を、当該円環状足場より内側に配置される円環状足場と一体にして、取り出す動作のみによって、前記ケーシングチューブの所望する大きい外径に対応した作業用足場を形成することを特徴とするチュービング装置の足場形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チュービング装置及びチュービング装置の足場形成方法に関し、詳しくは、建築、土木の基礎工事で地中へのケーシングの圧入や引き抜きを行うチュービング装置及びチュービング装置の足場形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシングチューブを回転させながら地中に圧入したり、引き抜いたりするチュービング装置では、ケーシングの挿入や着脱、コンクリートの注入などの作業をする際の足場として、チュービング装置本体の上面に作業デッキを設けている。この作業デッキでは、最大径のケーシングチューブを把持したときには、作業デッキとケーシングチューブとの間の隙間は狭いが、チャックカラーを用いて小径のケーシングチューブを把持した場合には、作業デッキとケーシングチューブとの間に広い隙間ができることから、安全性や作業性が低下するという問題があった。そこで、リング状に形成した足乗せ板と称する足場をアタッチメントとして付設し、小径のケーシングチューブを把持したときに、この付設の足場で作業デッキとケーシングとの間の隙間を塞ぐようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、チュービング装置が使用される現場の多様化に伴い、例えば、複数の施工径を必要とする場合が増えている。しかしながら、上述の特許文献1に記載された付設の足場では、ケーシングチューブの径に応じた足場板を個別に用意する必要があることから、足場板の輸送や保管にスペースを取り、また、使用時には足場板の付替え作業に時間が掛かるという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、複数の施工径に対応した足場板の着脱を容易に行え、かつ、省スペースで輸送、保管することができる作業用足場を備えたチュービング装置及びチュービング装置の足場形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のチュービング装置は、地上に据え付けられるベースフレームと、該ベースフレームの上方に昇降シリンダを介して昇降可能に設けられたドライブフレームと、該ドライブフレームの上方にチャックシリンダを介して昇降可能に設けられたチャックフレームと、前記ベースフレーム、ドライブフレーム及びチャックフレームの中央部を鉛直方向に貫通するケーシング挿通孔とを備え、前記チャックフレームの上に、前記ケーシング挿通孔の内径に対応した内径を有する開口部を備えた作業デッキと、該作業デッキの外縁に沿って着脱可能に設けられた複数の手摺部材とを備えたチュービング装置において、前記開口部に、ケーシングチューブの複数の外径にそれぞれ対応した内径を有し、かつ、互いに内外径の異なる複数の円環状足場を一組として、これを内外径の大きいものから順次入れ子状に重合保持する着脱可能な作業用足場を設け、前記円環状足場は、前記ケーシングチューブの外径に対応した内径を有する円筒状の胴部と、該胴部の上端周縁に径方向外側に向けて突出するように設けられた円環状の踏み板とを有して形成され、前記複数の円環状足場のうちの外側に配置された円環状足場の前記踏み板の内周縁部には、内側に配置された円環状足場の前記踏み板の外周縁部を受け止めることにより、互いの踏み板の上面同士を面一に揃えた重合位置に保持する環状段差部を設け、前記胴部は、上方に向けて拡径した円錐部を有して形成されるとともに、外周面に前記円錐部の傾斜に対応する傾斜部を備えた複数の立板を放射状に設けていることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記踏み板は、前記円環状足場を吊り上げるための吊り部を設けていることを特徴とし、また、前記複数の円環状足場のうちの内側に配置される円環状足場は、前記踏み板を円環状に代えて円板状に形成した円板状足場であることを特徴としている。
【0009】
また、本発明のチュービング装置の足場形成方法は、前記チュービング装置の足場形成
方法であって、前記ケーシングチューブを外径の小さいものから大きいものに変更して施工する際に、前記複数の円環状足場を前記開口部に重合保持した状態から、前記複数の円環状足場の一つの円環状足場を、当該円環状足場より内側に配置される円環状足場と一体にして、取り出す動作のみによって、前記ケーシングチューブの所望する大きい外径に対応した作業用足場を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チュービング装置に備わる作業デッキの開口部に、ケーシングチューブの複数の外径にそれぞれ対応した内径を有し、かつ、互いに内外径の異なる複数の円環状足場を一組として、これを内外径の大きいものから順次入れ子状に重合保持する着脱可能な作業用足場を設けているので、複数の施工径を必要とする現場であっても、異径の円環状足場同士を入れ子の方向に抜き差しするだけの簡単な組替え作業で、ケーシングチューブの所望する外径に対応した作業用足場を形成することができる。一方、不使用時には各円環状足場を纏めて収納できることから、全体での質量低減が図れて、輸送性、保管性を向上させることができるだけでなく、作業用足場の製作や補修も容易に行うことができる。
【0011】
とりわけ、作業用足場が作業デッキの開口部において、複数の円環状足場を外側から順次入れ子状に重合保持する構成であることから、ケーシングチューブを外径の小さいものから大きいものに変更して施工する際には、内側に配置される円環状足場を単体で取り出す動作のみで作業用足場を形成することができるのは勿論のこと、外側に配置される円環状足場を取り出す動作のみで内側に配置される円環状足場を一挙に、つまり道連れにして取り出すことによって作業用足場を形成することもできるので、施工径の大きさが変わるときの段取り替えの作業を極めて効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一形態例を示すチュービング装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図6は、本発明のチュービング装置の一形態例を示している。本形態例に示すチュービング装置11は、
図1乃至
図3に示すように、地上に据え付けられるベースフレーム12と、該ベースフレーム12の上方に昇降シリンダ13を介して昇降可能に設けられたドライブフレーム14と、該ドライブフレーム14の上方にチャックシリンダ15を介して昇降可能に設けられたチャックフレーム16とを備えており、前記ベースフレーム12、ドライブフレーム14及びチャックフレーム16の中央部には、鉛直方向に貫通して同軸上に配置されたケーシング挿通孔17が設けられている。
【0014】
チャックフレーム16の内周には、ケーシングチューブ(図示せず)を把持するための複数のチャック18が周方向に等間隔で設けられている。また、チャックフレーム16の上面には、ケーシング挿通孔17の内径に対応した内径を有する開口部19を備えた作業デッキ20が設けられている。さらに、チャックフレーム16の側面には、作業デッキ20に昇降するための梯子21が設けられている。
【0015】
作業デッキ20は、作業者が歩行可能な足場22が設けられており、この足場22には、4枚に分割された足場板23,24,25,26を組み合わせて配置することによって中央部に前記開口部19が形成されている。また、チャックフレーム16の一方の長辺16a側に配置される足場板23,24は、該長辺16a側の側辺23a,24aを長辺16aから外方に突出する形状に形成され、他方の長辺16b側に配置される足場板25,26は、該長辺16b側の側辺25a,26aを長辺16bから突出しない形状に形成されている。足場板25,26の側辺25a,26a部分には、踏み板27を備えた拡幅デッキ28,28が着脱可能に設けられている。この踏み板27,27は、足場板23,24が長辺16aから外方に突出する幅と略同幅に形成されている。これにより、開口部19の周縁と作業デッキ20の外縁とが接近している両側部分の足場領域は、渡り通路29,29となって足場板23,24間又は足場板25,26間の行き来を可能にしている。
【0016】
作業デッキ20及び拡幅デッキ28の外縁部には、転落防止用の複数の手摺部材30が着脱可能に設けられている。手摺部材30は、パイプ材などを組み合わせて形成されることによって安全基準に対応するもので、高さ寸法を共通にして幅寸法が異なる3種類の第1手摺部材31、第2手摺部材32及び第3手摺部材33が用いられている。開口部19を囲む四方の位置には幅寸法が最大の第1手摺部材31が6本、四隅部の位置には第1手摺部材31に対して半分の幅寸法の第2手摺部材32が4本、渡り通路29が設けられていない作業デッキ20の両側部分であって梯子21と並ぶ位置には、第2手摺部材32よりも僅かに幅狭の第3手摺部材33が2本、合計で12本の手摺部材30が設けられている。
【0017】
第1手摺部材31、第2手摺部材32及び第3手摺部材33は、基本的に同一の形状を有しており、水平方向の把持部31a,32a,33aと、各把持部31a,32a,33aの両端に曲げ部31b,32b,33bを介して設けられた左右一対の支柱部31c,32c,33cと、各支柱部31c,32c,33cの下部に設けられた鍔部31d,32d,33dと、各支柱部31c,32c,33c間を連結する上下一対の横桟31e,32e,33eとで形成され、幅広の第1手摺部材31には、把持部31aの中央部と上下の横桟31e,31eとを連結する縦桟31fが設けられている。
【0018】
一方、作業デッキ20及び拡幅デッキ28の外縁部には、各手摺部材31,32,33の支柱部31c,32c,33cに対応した位置に、筒状の手摺取付部材34がそれぞれ設けられており、各手摺取付部材34に対応した手摺部材31,32,33の支柱部31c,32c,33cの下部を手摺取付部材34の内部に挿入し、鍔部31d,32d,33dが手摺取付部材34の上端に当接した状態で固定部材35を取り付けることにより、各手摺部材31,32,33が所定の位置にそれぞれ固定される。
【0019】
作業デッキ20の開口部19には、ケーシングチューブの複数の外径にそれぞれ対応した内径を有し、かつ、互いに内外径の異なる外側円環状足場36、内側第1円環状足場37及び内側第2円環状足場38を一組として、これを内外径の大きいものから、つまり最大径の外側円環状足場36、中間径の内側第1円環状足場37、最小径の内側第2円環状足場38の順で3段の入れ子状に重合保持する着脱可能な作業用足場39が設けられている。
【0020】
外側円環状足場36、内側第1円環状足場37及び内側第2円環状足場38は、
図4乃至
図6に示すように、基本的に同一の形状であって、単体で、あるいは組み合わせた全体で、略偏平の円環形状を有し、ケーシングチューブの複数の外径にそれぞれ対応した内径を有する円筒状の胴部36a,37a,38aと、該胴部36a,37a,38aの上端周縁に径方向外側に向けて突出するように設けられた円環状の踏み板36b,37b,38bと、該踏み板36b,37b,38bよりもやや小径で、胴部36a,37a,38aの下部外周面に径方向外側に向けて突出するように設けられた円環状のフランジ板36c,37c,38cと、胴部36a,37a,38aの外周面の複数箇所に放射状に設けられて、踏み板36b,37b,38b及びフランジ板36c,37c,38cの互いの板面同士を繋ぐ立板36d,37d,38dとで形成されている。
【0021】
各円環状足場36,37,38の胴部36a,37a,38aは、胴部本体36e,37e,38eと、該胴部本体36e,37e,38e上に設けられるとともに、上方に向けて互いに同一の傾斜角度で拡径した円錐部36f,37f,38fとをそれぞれ有して形成されることにより、上下方向の全域に亘る内側周壁36g,37g,38gを形成するもので、円錐部36f,37f,38fの上端周縁には踏み板36b,37b,38bの内周縁部が固着されている。また、踏み板36b,37b,38bの内周縁部には、内側に隣接配置された円環状足場の踏み板37b,38bの外周縁部を受け止めることにより、抜け落ちを防止するとともに、互いの踏み板36b,37b,38bの上面同士を略面一に揃えた重合位置に保持する環状段差部36h,37h,38hがそれぞれ設けられている。
【0022】
また、最大径の外側円環状足場36は、踏み板36bの外周縁部が複数の立板36dの上部外端を囲繞したリング状の帯板36iにより支持され、足場としての剛性がより高められている。さらに、立板36dの外端は、ケーシング挿通孔17の開口形状や、ケーシング挿通孔17内に突出するチャック18などの位置に対応するように、上部に比べて下部の突出量が小さくなる形状に形成され、帯板36iの下端内周部分は段状に形成されている。一方、中間径の内側第1円環状足場37及び最小径の内側第2円環状足場38について、各立板37d,38dの外端は、外側に隣接配置された円環状足場36,37の胴部36a,37aの内側周壁36g,37gに対応する傾斜部(板端)37i,38iを有して形成されている。
【0023】
さらに、各踏み板36b,37b,38bには、4箇所の吊り部36j,37j,38jが立板36d,37d,38d間の周方向に略均等間隔になる位置に設けられている。吊り部36j,37j,38jは、踏み板36b,37b,38bに開口36k,37k,38kを形成し、踏み板36b,37b,38bの下面に、開口36k,37k,38kを横切る方向の丸棒36m,37m,38mを固着して形成されている。これにより、踏み板36b,37b,38bの上面から突出させない状態で吊り部36j,37j,38jが形成される。
【0024】
このように形成された作業用足場39を備えたチュービング装置11は、ケーシングチューブの圧入などの作業を行う際には、対応した内径寸法の円環状足場36,37,38を作業デッキ20の開口部19に適宜に組み合わせて装着する。具体的には、例えば、最小径のケーシングチューブに対応した内側第2円環状足場38を使用する場合、地上において、あらかじめ各円環状足場36,37,38を入れ子状に組み合わせた状態で、外側円環状足場36の吊り部36jを使用してクレーンなどで作業用足場39を吊り上げ、作業デッキ20の上方に移動させるとともに、ケーシング挿通孔17の真上に位置合わせして作業用足場39を降下させる。これにより、作業用足場39が作業デッキ20の開口部19内に挿入され、帯板36iの下端がチャックフレーム16上面に設けた係合部16cに係合し、ケーシング挿通孔17の上部側の所定位置に作業用足場39が設置されることで、各踏み板36b,37b,38bによって開口部19の周縁が閉塞され、デッキからの転落事故を防止する。
【0025】
ここで、ケーシングチューブの外径を変更して施工する際には、作業用足場39の組替え作業が行われる。例えば、ケーシングチューブを外径の小さいものから大きいものに変更して施工する場合、各円環状足場36,37,38を開口部19に重合保持した状態から、内側第2円環状足場38の吊り部38jを使用して内側第2円環状足場38を単体で取り出すとすれば、中間径のケーシングチューブに対応した内側第1円環状足場37が作業用足場として扱われる。また、内側第1円環状足場37の吊り部37jを使用して内側第1円環状足場37と内側第2円環状足場38とを一体で取り出すとすれば、より大きい外径寸法のケーシングチューブに対応した外側円環状足場36が作業用足場として扱われる。さらに、外側円環状足場36の吊り部36jを使用して外側円環状足場36と内側第1円環状足場37と内側第2円環状足場38とを一体で取り出すとすれば、最大径のケーシングチューブに対応したデッキ上の足場22が作業用足場として扱われる。すなわち、各円環状足場36,37,38のうちのいずれか一つを取り出す動作のみによってケーシングチューブの所望する大きい外径に対応した作業用足場が形成される。
【0026】
一方、作業終了後にチュービング装置11を輸送する際には、地上において組み合わせた作業用足場39をクレーンで一体に吊り上げ、輸送トラックの荷台に搭載する。ここで、作業用足場39をチュービング装置11と共に輸送する場合、作業用足場39は、踏み板が円環状に代えて円板状に形成された円板状足場(図示せず)を、内側第2円環状足場38の内側に隣接配置させる。そして、作業用足場39をクレーンで一体に吊り上げて作業デッキ20の開口部19に装着することにより、該開口部19を完全に閉塞した状態のままで輸送される。
【0027】
このように、チュービング装置11に備わる作業デッキ20の開口部19に、ケーシングチューブの複数の外径にそれぞれ対応した内径を有し、かつ、互いに内外径の異なる円環状足場36,37,38を一組として、これを内外径の大きいものから順次入れ子状に重合保持する着脱可能な作業用足場39を設けているので、複数の施工径を必要とする現場であっても、異径の円環状足場36,37,38同士を入れ子の方向に抜き差しするだけの簡単な組替え作業で、ケーシングチューブの所望する外径に対応した作業用足場を形成することができる。一方、不使用時には各円環状足場36,37,38を纏めて収納できることから、全体での質量低減が図れて、輸送性、保管性を向上させることができるだけでなく、作業用足場39の製作や補修も容易に行うことができる。
【0028】
とりわけ、作業用足場39が作業デッキ20の開口部19において、円環状足場36,37,38を外側から順次入れ子状に重合保持する構成であることから、ケーシングチューブを外径の小さいものから大きいものに変更して施工する際には、内側に配置される円環状足場37,38を単体で取り出す動作のみで作業用足場39を形成することができるのは勿論のこと、例えば、外側に配置される円環状足場37を取り出す動作のみで内側に配置される円環状足場38を一挙に、つまり道連れにして取り出すことによって作業用足場を形成することもできるので、施工径の大きさが変わるときの段取り替えの作業を極めて効率的に行うことができる。
【0029】
また、踏み板36b,37b,38bの内周縁部には、内側に隣接配置された円環状足場の踏み板の外周縁部を受け止めることにより、互いの踏み板36b,37b,38bの上面同士を面一に揃えた重合位置に保持する環状段差部36h,37h,38hを設けているので、作業時につまずくといった心配がなくなる。さらに、踏み板36b,37b,38bに円環状足場36,37,38を吊り上げるための吊り部36j,37j,38jを設けているので、円環状足場36,37,38の纏まった移動や一部のみの取り出しも容易に行うことができる。
【0030】
また、円環状足場36,37,38の胴部36a,37a,38aが、上方に向けて拡径した円錐部36f,37f,38fを有して形成されるとともに、内側円環状足場37,38の外周面において、円錐部36f,37fの傾斜に対応する傾斜部37i,38iを備えた複数の立板37d,38dを放射状に設けているので、開口部19に対して内側円環状足場37,38の装着性を良好なものにするとともに、必要な足場強度を確保しつつ、装着位置におけるガタつきや、せり上がりを防止して足場の安全性を向上させることができる。
【0031】
なお、本発明は、前記形態例に限るものではなく、作業用足場は3段式の他に2段式や4段式など、作業デッキの構造や開口部の寸法などの条件に応じて円環状足場の構造、配置を適宜に変更することができる。特に、段数を増やした場合であっても、円環状足場を追加するか、取り外すかの一回の工程で足場の組替えが行えるという利点は維持されることから、施工径の大きさが変わるときの段取り替えの作業を迅速に行え、さらには施工径の大径化のニーズにも柔軟に応えることができる。また、各円環状足場は、互いに組み合わせたときに上面を平坦に形成できれば、踏み板の板面に滑り止めなどの凹凸加工を施してもよい。さらに、円板状足場は、非作業時においてデッキ上での安全な移動を確実なものとすることができるが、装着は任意であり、必要に応じて配置することができる。
【符号の説明】
【0032】
11…チュービング装置、12…ベースフレーム、13…昇降シリンダ、14…ドライブフレーム、15…チャックシリンダ、16…チャックフレーム、16a,16b…長辺、16c…係合部、17…ケーシング挿通孔、18…チャック、19…開口部、20…作業デッキ、21…梯子、22…足場、23…足場板、23a…側辺、24…足場板、24a…側辺、25…足場板、25a…側辺、26…足場板、26a…側辺、27…踏み板、28…拡幅デッキ、29…渡り通路、30…手摺部材、31…第1手摺部材、31a…把持部、31b…曲げ部、31c…支柱部、31d…鍔部、31e…横桟、31f…縦桟、32…第2手摺部材、32a…把持部、32b…曲げ部、32c…支柱部、32d…鍔部、32e…横桟、33…第3手摺部材、33a…把持部、33b…曲げ部、33c…支柱部、33d…鍔部、33e…横桟、34…手摺取付部材、35…固定部材、36…外側円環状足場、36a…胴部、36b…踏み板、36c…フランジ板、36d…立板、36e…胴部本体、36f…円錐部、36g…内側周壁、36h…環状段差部、36i…帯板、36j…吊り部、36k…開口、36m…丸棒、37…内側第1円環状足場、37a…胴部、37b…踏み板、37c…フランジ板、37d…立板、37e…胴部本体、37f…円錐部、37g…内側周壁、37h…環状段差部、37i…傾斜部、37j…吊り部、37k…開口、37m…丸棒、38…内側第2円環状足場、38a…胴部、38b…踏み板、38c…フランジ板、38d…立板、38e…胴部本体、38f…円錐部、38g…内側周壁、38h…環状段差部、38i…傾斜部、38j…吊り部、38k…開口、38m…丸棒、39…作業用足場