(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】合成樹脂製多重ボトルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/00 20060101AFI20221215BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20221215BHJP
B65D 83/62 20060101ALI20221215BHJP
B29C 49/22 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B65D1/00 120
B65D1/02 111
B65D83/62
B29C49/22
(21)【出願番号】P 2019021178
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃広
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0312979(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00- 51/46
B65D 1/00- 1/48
B65D 83/00- 83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭ボトルと、前記外郭ボトルの内部に配置され、合成樹脂によって形成された変形可能な内容器体とを備え、
前記外郭ボトルは、外口部と、前記外口部に連接された外郭ボトル本体とを有し、
前記内容器体は、前記外口部の内周側に配設された内口部と、前記内口部に連接され、前記外郭ボトル本体の内面形状に沿う形状の内容器体本体とを有し、
前記外口部と前記内口部との間に、前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に流体を導入する通路が形成された合成樹脂製多重ボトルの製造方法であって、
前記通路から前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に加圧流体を導入する、又は、前記内容器体本体の内部を減圧することにより、前記内容器体本体を
前記外郭ボトルから離間
させつつ、所定の減容変形
を生じさせるとともに、前記内容器体本体と前記外郭ボトル本体との間に空間を形成する変形工程を備え、
前記変形工程で、前記内容器体本体の離間が開始される前に、前記内口部から前記内容器体本体の内部に規制部材を挿入し、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に当接させて固定する、又は、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に所定の間隔を存して対向する位置に固定することを特徴とする合成樹脂製多重ボトルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の合成樹脂製多重ボトルの製造方法において、
前記変形工程の前に、前記外郭ボトルを形成する外プリフォームの内周側に前記内容器体を形成する内プリフォームを配設した後、金型の内部でブロー成形を行うことにより前記合成樹脂製多重ボトルを形成する形成工程を備え、
前記変形工程で、前記内容器体本体を減容変形させて、前記外郭ボトルから前記内容器体を離間
させることを特徴とする合成樹脂製多重ボトルの製造方法。
【請求項3】
外郭ボトルと、前記外郭ボトルの内部に配置され、合成樹脂によって形成された変形可能な内容器体とを備え、
前記外郭ボトルは、外口部と、前記外口部に連接された外郭ボトル本体とを有し、
前記内容器体は、前記外口部の内周側に配設された内口部と、前記内口部に連接され、前記外郭ボトル本体の内面形状に沿う形状の内容器体本体とを有し、
前記外口部と前記内口部との間に、前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に流体を導入する通路が形成された合成樹脂製多重ボトルの製造方法であって、
前記通路から前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に加圧流体を導入する、又は、前記内容器体本体の内部を減圧することにより、前記内容器体本体を離間し減容変形させるとともに、前記内容器体本体と前記外郭ボトル本体との間に空間を形成する変形工程と、
前記変形工程の前に、前記外郭ボトルを形成する外プリフォームの内周側に前記内容器体を形成する内プリフォームを配設した後、金型の内部でブロー成形を行うことにより前記合成樹脂製多重ボトルを形成する形成工程とを備え、
前記変形工程で、前記内容器体本体の離間が開始される前に、前記内口部から前記内容器体本体の内部に規制部材を挿入し、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に当接させて固定する、又は、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に所定の間隔を存して対向する位置に固定し、且つ、前記内容器体本体を減容変形させて、前記外郭ボトルから前記内容器体を離間し、
前記変形工程は、前記合成樹脂製多重ボトルを前記形成工程における前記金型の内部から前記合成樹脂製多重ボトルを取り出した後に行われることを特徴とする合成樹脂製多重ボトルの製造方法。
【請求項4】
外郭ボトルと、前記外郭ボトルの内部に配置され、合成樹脂によって形成された変形可能な内容器体とを備え、
前記外郭ボトルは、外口部と、前記外口部に連接された外郭ボトル本体とを有し、
前記内容器体は、前記外口部の内周側に配設された内口部と、前記内口部に連接され、前記外郭ボトル本体の内面形状に沿う形状の内容器体本体とを有し、
前記外口部と前記内口部との間に、前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に流体を導入する通路が形成された合成樹脂製多重ボトルの製造方法であって、
前記通路から前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に加圧流体を導入する、又は、前記内容器体本体の内部を減圧することにより、前記内容器体本体を離間し減容変形させるとともに、前記内容器体本体と前記外郭ボトル本体との間に空間を形成する変形工程と、
前記変形工程の後、前記内口部で前記内容器体から排出される流体の有無を検知する、又は、前記空間の内部の圧力の変化を検知することにより、リークの有無を検出する検査工程
とを備え
、
前記変形工程で、前記内容器体本体の離間が開始される前に、前記内口部から前記内容器体本体の内部に規制部材を挿入し、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に当接させて固定する、又は、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に所定の間隔を存して対向する位置に固定することを特徴とする合成樹脂製多重ボトルの製造方法。
【請求項5】
外郭ボトルと、前記外郭ボトルの内部に配置され、合成樹脂によって形成された変形可能な内容器体とを備え、
前記外郭ボトルは、外口部と、前記外口部に連接された外郭ボトル本体とを有し、
前記内容器体は、前記外口部の内周側に配設された内口部と、前記内口部に連接され、前記外郭ボトル本体の内面形状に沿う形状の内容器体本体とを有し、
前記外口部と前記内口部との間に、前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に流体を導入する通路が形成された合成樹脂製多重ボトルの製造方法であって、
前記通路から前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に加圧流体を導入する、又は、前記内容器体本体の内部を減圧することにより、前記内容器体本体を離間し減容変形させるとともに、前記内容器体本体と前記外郭ボトル本体との間に空間を形成する変形工程と、
前記変形工程の後、前記通路を介して前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間の空間を減圧する、又は、前記内容器体本体の内部に加圧流体を導入することにより、前記内容器体本体を原形復帰させて、前記内容器体本体に変形の痕跡として、前記内容器体本体の変形を案内する変形案内部を形成する復帰工程
とを備え
、
前記変形工程で、前記内容器体本体の離間が開始される前に、前記内口部から前記内容器体本体の内部に規制部材を挿入し、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に当接させて固定する、又は、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に所定の間隔を存して対向する位置に固定することを特徴とする合成樹脂製多重ボトルの製造方法。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の合成樹脂製多重ボトルの製造方法において、
前記外郭ボトル及び前記内容器体の少なくとも一方は、ポリエステル樹脂、又は、ポリオレフィン樹脂で形成されていることを特徴とする合成樹脂製多重ボトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外郭ボトルと、その外郭ボトルの内部に配置され、合成樹脂によって形成された変形可能な内容器体とを備えた合成樹脂製多重ボトルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外郭ボトルの内部に、減容変形する合成樹脂製の内容器体を配置した合成樹脂製多重ボトル(以下、単に「多重ボトル」ということがある。)がある。
【0003】
この種の多重ボトルとしては、外郭ボトルと内容器体との間に形成された空間、又は、内容器体本体の内部のいずれか一方に、加圧ガスを収容するとともに、他方に、内容物を収容したエアゾール容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
外郭ボトルと内容器体との間に形成された空間に加圧ガスを収容するタイプのエアゾール容器では、収容された加圧ガスのガス圧によって、内容器体の内部から内容物が吐出された際に、内容器体は減容変形させられ、また、内容物が吐出された後にも、内容器体は変形された状態のまま維持される。
【0005】
一方、内容器体本体の内部に加圧ガスを収容するタイプのエアゾール容器では、収容された加圧ガスのガス圧によって、外郭ボトルと内容器体との間に形成された空間に収容された内容物が吐出された際に、内容器体は膨張するように変形させられ、また、内容物が吐出された後にも、内容器体は変形された状態のまま維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のような多重ボトルの内容器体は、多重ボトルの製造過程において、内容物又は加圧ガスを充填する前に、外郭ボトルと内容器体との間に加圧ガスを導入し、内容器体を一旦外郭ボトルから離間させ減容変形し、その後、減容変形前の原形に復帰させるという工程をとることがある。これは、内容器体にリークの原因となるピンホール等の欠陥が無いかどうかの確認のため、さらには減容変形のための好ましい折り癖をつけるために行われる。
【0008】
しかし、この減容変形が不均一なものであると、その変形によって、リークの原因となる欠陥が生じてしまうおそれがあった。また、不均一な変形によって内容器体に不規則な折り癖(変形案内部)が形成されてしまうと、内容器体に充填した内容物を吐出する際に、その折り癖によって内容器体に好ましくない変形が生じ、内容物の吐出が阻害されてしまうおそれもあった。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、製造工程における内容器体の不均一な減容変形を防止することができる合成樹脂製多重ボトルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の合成樹脂製多重ボトルの製造方法は、
外郭ボトルと、前記外郭ボトルの内部に配置され、合成樹脂によって形成された変形可能な内容器体とを備え、
前記外郭ボトルは、外口部と、前記外口部に連接された外郭ボトル本体とを有し、
前記内容器体は、前記外口部の内周側に配設された内口部と、前記内口部に連接され、前記外郭ボトル本体の内面形状に沿う形状の内容器体本体とを有し、
前記外口部と前記内口部との間に、前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に流体を導入する通路が形成された合成樹脂製多重ボトルの製造方法であって、
前記通路から前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に加圧流体を導入する、又は、前記内容器体本体の内部を減圧することにより、前記内容器体本体を前記外郭ボトルから離間させつつ、所定の減容変形を生じさせるとともに、前記内容器体本体と前記外郭ボトル本体との間に空間を形成する変形工程を備え、
前記変形工程で、前記内容器体本体の離間が開始される前に、前記内口部から前記内容器体本体の内部に規制部材を挿入し、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に当接させて固定する、又は、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に所定の間隔を存して対向する位置に固定することを特徴とする。
【0011】
ここで、規制部材と内容器体本体の底部との間の「所定の間隔」としては、内容器体本体の変形が開始された直後(初期段階)に、底部が規制部材に当接するような間隔のことを指す。具体的には、例えば、内口部の頂部から底部までの長さの0%~10%の長さに対応する間隔、好ましくは、0%~5%の長さに対応する間隔である。
【0012】
また、ここで、加圧流体とは、例えば、二酸化炭素、窒素、空気、及び、これらの混合ガス等の圧縮ガス、液化石油ガス、ジメチルエーテル、及び、これらの混合ガス等の液化ガス、並びに、炭酸ガス等の気体を含有する液体等が挙げられる。
【0013】
このように、本発明の合成樹脂製多重ボトルの製造方法では、内容器体本体を減容変形させて、内容器体本体と外郭ボトル本体との間に空間を形成する変形工程で、その減容変形が開始される前に、内口部から規制部材を挿入し、規制部材を内容器体本体の底部に当接させて固定する、又は、規制部材を内容器体本体の底部に所定の間隔を存して対向する位置に固定している。
【0014】
そのため、変形工程において生じる内容器体本体の減容変形のうち、底部側から内口部に向かって折り畳まれるような、多重ボトルの長さ方向の減容変形は、規制部材が内容器体本体の底部に当接することによって規制される。一方で、内容器体本体の周面部が多重ボトルの軸心に向かって折り畳まれるような、多重ボトルの径方向の減容変形は、規制部材によって規制されることはない。その結果、内容器体本体には、多重ボトルの径方向の減容変形が優先的に生じる。
【0015】
したがって、本発明の合成樹脂製多重ボトルの製造方法によれば、製造工程の一部である変形工程において、内容器体本体の減容変形は所定の変形になるように案内されるので、内容器体本体の不均一な変形を抑制することができる。
【0016】
また、本発明の合成樹脂製多重ボトルの製造方法においては、
前記変形工程の前に、前記外郭ボトルを形成する外プリフォームの内周側に前記内容器体を形成する内プリフォームを配設した後、金型の内部でブロー成形を行うことにより前記合成樹脂製多重ボトルを形成する形成工程を備え、
前記変形工程で、前記内容器体本体を減容変形させて、前記外郭ボトルから前記内容器体を離間させるようにしてもよい。
【0017】
このように、ブロー成形によって合成樹脂製多重ボトル(以下、単に「多重ボトル」ということがある。)を形成した場合、形成が終了した段階では、外郭ボトル本体の内面に沿って内容器体本体の外面が密着した状態になっている。
【0018】
そして、外郭ボトル本体の内面と内容器体本体の外面との間の空間に内容物又は加圧流体を収容するためには、その収容を行う前に、内容器体本体にリークの原因となる欠陥の有無を確認するリーク検査のために、内容器体本体を外郭ボトル本体から一旦を離間し減容変形させるという工程が行われる。
【0019】
そこで、このように、その工程に本発明の変形工程を適用すると、離間の際に内容器本体が不均一に変形することを防止することができる。
【0020】
また、本発明の合成樹脂製多重ボトルの製造方法は、
外郭ボトルと、前記外郭ボトルの内部に配置され、合成樹脂によって形成された変形可能な内容器体とを備え、
前記外郭ボトルは、外口部と、前記外口部に連接された外郭ボトル本体とを有し、
前記内容器体は、前記外口部の内周側に配設された内口部と、前記内口部に連接され、前記外郭ボトル本体の内面形状に沿う形状の内容器体本体とを有し、
前記外口部と前記内口部との間に、前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に流体を導入する通路が形成された合成樹脂製多重ボトルの製造方法であって、
前記通路から前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に加圧流体を導入する、又は、前記内容器体本体の内部を減圧することにより、前記内容器体本体を離間し減容変形させるとともに、前記内容器体本体と前記外郭ボトル本体との間に空間を形成する変形工程と、
前記変形工程の前に、前記外郭ボトルを形成する外プリフォームの内周側に前記内容器体を形成する内プリフォームを配設した後、金型の内部でブロー成形を行うことにより前記合成樹脂製多重ボトルを形成する形成工程とを備え、
前記変形工程で、前記内容器体本体の離間が開始される前に、前記内口部から前記内容器体本体の内部に規制部材を挿入し、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に当接させて固定する、又は、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に所定の間隔を存して対向する位置に固定し、且つ、前記内容器体本体を減容変形させて、前記外郭ボトルから前記内容器体を離間し、
前記変形工程は、前記合成樹脂製多重ボトルを前記形成工程における前記金型の内部から前記合成樹脂製多重ボトルを取り出した後に行われることを特徴とする。
【0021】
本発明の変形工程は、多重ボトルが金型の内部に配置されているか否かを問わずに実行できる。そして、このように変形工程を金型から取り出した後で行うようにすると、その変形工程を実施している最中に、その金型で次の製品を製造して、製造効率を向上させることができる。
【0023】
また、本発明の合成樹脂製多重ボトルの製造方法は、
外郭ボトルと、前記外郭ボトルの内部に配置され、合成樹脂によって形成された変形可能な内容器体とを備え、
前記外郭ボトルは、外口部と、前記外口部に連接された外郭ボトル本体とを有し、
前記内容器体は、前記外口部の内周側に配設された内口部と、前記内口部に連接され、前記外郭ボトル本体の内面形状に沿う形状の内容器体本体とを有し、
前記外口部と前記内口部との間に、前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に流体を導入する通路が形成された合成樹脂製多重ボトルの製造方法であって、
前記通路から前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に加圧流体を導入する、又は、前記内容器体本体の内部を減圧することにより、前記内容器体本体を離間し減容変形させるとともに、前記内容器体本体と前記外郭ボトル本体との間に空間を形成する変形工程と、
前記変形工程の後、前記内口部で前記内容器体から排出される流体の有無を検知する、又は、前記空間の内部の圧力の変化を検知することにより、リークの有無を検出する検査工程とを備え、
前記変形工程で、前記内容器体本体の離間が開始される前に、前記内口部から前記内容器体本体の内部に規制部材を挿入し、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に当接させて固定する、又は、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に所定の間隔を存して対向する位置に固定することを特徴とする。
【0024】
合成樹脂製多重ボトルでは、一般的に、製造後、内容物の充填が行われる前に、リーク検査が行われる。そのリーク検査の方法としては、例えば、内容器体本体を減容変形させた後、内容器体本体と外郭ボトル本体との間に空間の圧力の変化に基づいて、リークの有無を検出する方法がある。
【0025】
しかし、このようなリーク検査を行う場合、内容器体本体の減容変形が不均一なものであると、その減容変形によって、内容器体本体にピンホール等のリークの原因となる欠陥が生じてしまうおそれがある。
【0026】
そこで、リーク検査のために内容器体本体を減容変形させる工程として、本発明の変形工程を適用すると、リーク検査のための減容変形で内容器体本体が不均一に変形してしまうことを防止できるので、リーク検査のための減容変形によって、内容器体本体にリークの原因となる欠陥が生じてしまうことを防止することができる。
【0027】
また、本発明の合成樹脂製多重ボトルの製造方法においては、
外郭ボトルと、前記外郭ボトルの内部に配置され、合成樹脂によって形成された変形可能な内容器体とを備え、
前記外郭ボトルは、外口部と、前記外口部に連接された外郭ボトル本体とを有し、
前記内容器体は、前記外口部の内周側に配設された内口部と、前記内口部に連接され、前記外郭ボトル本体の内面形状に沿う形状の内容器体本体とを有し、
前記外口部と前記内口部との間に、前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に流体を導入する通路が形成された合成樹脂製多重ボトルの製造方法であって、
前記通路から前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間に加圧流体を導入する、又は、前記内容器体本体の内部を減圧することにより、前記内容器体本体を離間し減容変形させるとともに、前記内容器体本体と前記外郭ボトル本体との間に空間を形成する変形工程と、
前記変形工程の後、前記通路を介して前記外郭ボトル本体と前記内容器体本体との間の空間を減圧する、又は、前記内容器体本体の内部に加圧流体を導入することにより、前記内容器体本体を原形復帰させて、前記内容器体本体に変形の痕跡として、前記内容器体本体の変形を案内する変形案内部を形成する復帰工程とを備え、
前記変形工程で、前記内容器体本体の離間が開始される前に、前記内口部から前記内容器体本体の内部に規制部材を挿入し、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に当接させて固定する、又は、前記規制部材を前記内容器体本体の底部に所定の間隔を存して対向する位置に固定することを特徴とする。
【0028】
多重ボトルでは、使用時に内容物を吐出させるために内容器体本体を減容変形させる際に、その減容変形が不均一なものであると、その減容変形によって、内容器体本体の内部に内容物の移動を阻害するような部分が形成されてしまい、内容物を十分に吐出することができなくなるおそれがある。
【0029】
しかし、本発明の多重ボトルの変形工程における減容変形は、規制部材により多重ボトルの長さ方向の変形が抑制されており、また、径の収縮するような比較的規則的な変形となるように規制されたものである。そのため、この減容変形によっては、内容器体本体の内部に流体の移動を阻害するような部分は形成されにくい。
【0030】
そこで、このように、本発明の変形工程の痕跡を利用して、使用時における減容変形を案内するための変形案内部を形成すると、使用時にも内容器体本体の内部に内容物の移動を阻害するような部分が形成されることを抑制することができる。
また、本発明の合成樹脂製多重ボトルの製造方法においては、
前記外郭ボトル及び前記内容器体の少なくとも一方は、ポリエステル樹脂、又は、ポリオレフィン樹脂で形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の合成樹脂製多重ボトルの製造方法によって製造された合成樹脂製多重ボトルの断面図。
【
図2】
図1の合成樹脂製多重ボトルの口部の断面図。
【
図3】
図1の合成樹脂製多重ボトルの内容器体が減容変形した状態を示す断面図。
【
図4】
図1の合成樹脂製多重ボトルの形成工程を説明する模式的断面図。
【
図5】
図1の合成樹脂製多重ボトルの内容器体本体が本発明の製造方法の第1検査工程において減容変形した状態を示す模式的断面図。
【
図6】
図1の合成樹脂製多重ボトルの第1検査工程を説明する模式的断面図。
【
図7】合成樹脂製多重ボトルの内容器体本体が従来の製造方法の第1検査工程において減容変形した状態を示す模式的断面図。
【
図8】
図1の合成樹脂製多重ボトルの第2検査工程を説明する模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、実施形態に係る合成樹脂製多重ボトル(以下、単に「多重ボトル」ということがある。)の製造方法について説明する。
【0033】
まず、
図1~
図3を参照して、本発明の合成樹脂製多重ボトルの製造方法を用いて製造される合成樹脂製多重ボトル(以下、単に「多重ボトル1」ということがある。)の概略構成について説明する。
【0034】
図1に示すように、多重ボトル1は、合成樹脂製の外郭ボトル2と、外郭ボトル2の内部に配置され、変形可能な内容器体3とを備えている。外郭ボトル2及び内容器体3は、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂によって形成されている。
【0035】
なお、本発明の外郭ボトル及び内容器体を形成するための合成樹脂としては、ポリエステル樹脂に限定されるものではなく、ブロー成形性に優れ、減容変形可能な合成樹脂であればよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂も好適樹脂材料として用いることができる。
【0036】
すなわち、本発明の製造方法は、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂を外郭ボトル又は内容器体に用いてブロー成形により形成された多重ボトルで、外郭ボトル本体の底部と内容器体本体の底部とが強固に密着固定されていない合成樹脂製ブロー成形多重ボトルに好適に用いられる。
【0037】
外郭ボトル2は、円筒状の外口部20と、外口部20に連接する肩部21と、肩部21に連接する胴部22と、胴部22に連接する底部23とを備えている。外郭ボトル2では、肩部21、胴部22及び底部23によって、有底筒状の外郭ボトル本体24が形成されている。
【0038】
外口部20は、外周面に雄ネジ部20aと、雄ネジ部20aの下方に設けられたサポートリング20bとを有している。雄ネジ部20aには、トリガー式噴射ノズル(不図示)の内周面に形成されている雌ネジ部が螺合する。これにより、外口部20にトリガー式噴射ノズルが取り付けられる。
【0039】
底部23は、その中央部で外郭ボトル2の内側に膨出して多重ボトル1に自立性を付与する凹部23aを備えている。底部23の凹部23aの周縁部は、環状の接地部23bとなっている。
【0040】
内容器体3は、外口部20の内周側に配設されている円筒状の内口部30と、内口部30に連接し、外郭ボトル本体24の内面形状に沿う形状の内容器体本体31とを備えている。
【0041】
内口部30は、その上端部に外口部20の上端よりも上方に延出された筒状の延出部30aと、延出部30aの上端部の周縁から径方向外方に張り出す鍔部30bとを有している。内口部30は、鍔部30bにより外口部20の上端縁に係止されている。
【0042】
図1及び
図2に示すように、内口部30は、その外周面に、内口部の軸線に沿って上下方向に延びる複数の縦溝30cが形成されている。なお、縦溝30cは、1つだけであってもよい。また、内口部30は、鍔部30bの下面に、内口部30の径方向に延びる横溝30dが形成されている。
【0043】
横溝30dは、縦溝30cの上端に連続しており、鍔部30bの外周面で開放されている。すなわち、横溝30dは、縦溝30cと同数設けられている。
【0044】
縦溝30c及び横溝30dによって、外口部20と内口部30との間に、外郭ボトル本体24と内容器体本体31との間に流体を導入して、それらの間に空間5(
図3参照)を形成する通路4が形成されている。
【0045】
このようにして構成された多重ボトル1では、例えば、内容器体3の内部に内容物が収容され、外郭ボトル本体24と内容器体本体31との間の空間5(
図3参照)に加圧流体が収容され、外口部20にトリガー式噴射ノズル(不図示)が取り付けられて使用される。
【0046】
ここで、加圧流体とは、例えば、二酸化炭素、窒素、空気、及び、これらの混合ガス等の圧縮ガス、液化石油ガス、ジメチルエーテル、及び、これらの混合ガス等の液化ガス、並びに、炭酸ガス等の気体を含有する液体等が挙げられる。
【0047】
そして、トリガー式噴射ノズルのトリガーがひかれることによって、内容物が噴射されて内容器体3の内部の内容物の残存量が減少すると、
図3に示すように、空間5に収容されている加圧ガスの膨張によって、内容器体3が押しつぶされて減容変形する。
【0048】
トリガー式噴射ノズルが多重ボトル1に装着されている状態では、通路4は閉塞された状態となるので、通路4を介して流体の流通が生じない。すなわち、加圧ガスの膨張以外の要因によって、空間5の容積は変動しない。そのため、内容物の噴射に起因して内容器体3に減容変形が生じると、内容器体3の減容変形はそのまま維持される。
【0049】
次に、
図4~
図11を参照して、多重ボトル1の製造方法について説明する。この製造方法には、多重ボトル1をブロー成形により形成するための形成工程、並びに、リーク検査ための第1検査工程及び第2検査工程が含まれる。
【0050】
まず、
図4を参照して、ブロー成形多重ボトル用プリフォーム(以下、単に「プリフォーム」という)を用いて、多重ボトル1をブロー成形により形成する形成工程について説明する。
図4は、ブロー成形工程(形成工程)を説明するための模式的断面図である。
【0051】
ここで、
図4を参照して、ブロー成形に用いるプリフォーム6、及び、ブロー成形装置7について説明する。
【0052】
図4に示すように、プリフォーム6は、外郭ボトル2を形成する外プリフォーム60と、その外プリフォーム60の内側に配設され、内容器体3を形成する内プリフォーム61とを備えている。
【0053】
外プリフォーム60は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を材料として射出成形により形成されている。外プリフォーム60は、外郭ボトル2の外口部20と同一形状の外プリフォーム口部60aと、外プリフォーム口部60aの下方に連設された有底円筒状の外胴部60bとを備えている。また、外プリフォーム口部60aの外周面には、外郭ボトル2のサポートリング20bと同一形状のサポートリング部60cが設けられている。
【0054】
内プリフォーム61は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を材料として射出成形により形成されている。内プリフォーム61は、内容器体3の内口部30と同一形状の内プリフォーム口部61aと、内プリフォーム口部61aの下方に連設された有底円筒状の内胴部61bとを備えている。
【0055】
また、
図4に要部を示すように、ブロー成形装置7は、金型70と、ブローノズル71と、ストレッチロッド72とを備えている。
【0056】
金型70は、外郭ボトル2の外口部20から下の外郭ボトル本体24の外形に沿う形状の成形部70aと、外プリフォーム60の外プリフォーム口部60aのサポートリング部60cを下方から支持する第1支持開口部70bとを備えている。金型70は割型構造であり、左右側と底部側とで分割することによって成形後の多重ボトル1が脱型できるようになっている。
【0057】
ブローノズル71は、昇降手段(不図示)により昇降され、第1Oリング71aを介して、内プリフォーム61の内プリフォーム口部61aの上端面に気密に当接する。また、ブローノズル71の第1Oリングよりも内周側の部分には、高圧気体供給手段(不図示)に接続された第1気体通路71bが形成されている。第1気体通路71bには、ストレッチロッド72が上下方向に移動自在に挿通している。
【0058】
ストレッチロッド72は、進退駆動手段(不図示)によってブロー成形時に前進される。なお、ブロー成形の初期状態を示す
図4Aにおいては、ストレッチロッド72は、ブローノズル71の先端から突出しているが、未使用時には後退されてブローノズル71の内方(図中上方)に収納されている。
【0059】
図4を参照して、ブロー成形装置7及びプリフォーム6を用いて、多重ボトル1をブロー成形により形成する形成工程について説明する。
【0060】
なお、
図4は、左から順に、初期状態(
図4A)、ブロー成形中の状態(
図4B)、ブロー成形完了後の状態(
図4C)を示す。
【0061】
この形成工程においては、まず、
図4Aに示すように、内プリフォーム61が内側に配設された外プリフォーム60(すなわち、プリフォーム6)を金型70にセットした後、内プリフォーム61の内プリフォーム口部61aにブローノズル71を接続する。
【0062】
このとき、外プリフォーム60及び内プリフォーム61は、金型70にセットされる前に、ブロー成形可能な温度に加熱される。
【0063】
次に、ブローノズル71の第1気体通路71bから内プリフォーム61の内部に加圧空気を導入するとともに、ストレッチロッド72を下方に伸長させる。
【0064】
これにより、
図4Bに示すように、まず、内プリフォーム61の内胴部61bが膨張して未膨張状態の外プリフォーム60の外胴部60bの内面に密着する。その後、さらに内プリフォーム61の内部に加圧空気を導入しつつ、ストレッチロッド72を下方に伸長させると、膨張した内プリフォーム61の内胴部61bにより外プリフォーム60の外胴部60bが押し広げられる。
【0065】
そして、
図4Cに示すように、外プリフォーム60の外胴部60bが、金型70の成形部70aの内面形状に沿うように成形されて、外郭ボトル2の外郭ボトル本体24が形成される。また、内プリフォーム61の内胴部61bが、外郭ボトル2の外郭ボトル本体24の内面形状に沿うように成形されて、内容器体3の内容器体本体31が形成される。
【0066】
以上の工程によって、多重ボトル1が形成される。このとき、外郭ボトル2の外郭ボトル本体24の内面には、内容器体3の内容器体本体31の外面が密着した状態になっている。また、これらの工程が終了した後、多重ボトル1の内部からストレッチロッド72が退避させられて、金型70から多重ボトル1が取り外される。
【0067】
次に、
図5~
図7を参照して、外郭ボトル本体24から内容器体本体31を離間し減容変形させて、リーク検査を行う第1検査工程について説明する。この第1検査工程には、内容器体本体31を外郭ボトル本体24から離間し減容変形させる変形工程が含まれている。
【0068】
図5は、多重ボトル1にリーク検査装置8が取り付けられた後、内容器体3の内容器体本体31が、本実施形態の第1検査工程において、離間し減容変形した状態を示す模式的断面図である。
図6は、第1検査工程の各工程の説明的断面図である。
図7は、第1検査工程において、後述したストッパーロッド82を用いずに外殻ボトルと内容器体の間に加圧ガスを注入した場合(すなわち、従来の第1検査工程を実施した場合)に、内容器体3が、不均一に減容変形した状態を示す模式的断面図である。
【0069】
ここで、
図5を参照して、第1検査工程の詳細な説明に先立ち、第1検査工程及び後述する第2検査工程において用いるリーク検査装置8について説明する。
【0070】
図5に示すように、リーク検査装置8は、多重ボトル1を支持する支持部80と、多重ボトル1の外口部20及び内口部30を覆うように把持するリークノズル81と、細長い円柱状のストッパーロッド82(規制部材)を備えている。
【0071】
支持部80には、多重ボトル1の外口部20の筒状の部分の外径に略一致し、且つ、サポートリング20bよりも小さい内径を有する第2支持開口部80aが形成されている。多重ボトル1は、外口部20が第2支持開口部80aに嵌装されるとともに、サポートリング20bが第2支持開口部80aの周縁部で下方から支持されることによって、リーク検査装置8に固定した状態で支持される。
【0072】
リークノズル81は、第2Oリング81aを介して、外郭ボトル2の外口部20の雄ネジ部20aの外周面に気密に当接する。リークノズル81には、第2Oリング81aよりも上方となる部分に、高圧気体供給手段(不図示)に接続された第2気体通路81bが形成されている。
【0073】
そのため、多重ボトル1にリークノズル81を装着した状態では、雄ネジ部20aの上方で開放されている通路4(ひいては、通路4に連通している外郭ボトル本体24と内容器体本体31との間の空間5)と、第2気体通路81bとが、連通した状態になっている。
【0074】
また、リークノズル81の内口部30の開口に対向する部分には、内容器体3の内部の空間と外部の空間とを連通する第3気体通路81cが形成されている。第3気体通路81cには、ストッパーロッド82が上下方向に移動自在に挿通している。
【0075】
ストッパーロッド82は、進退駆動手段(不図示)によってリーク検査時に前進される。なお、ストッパーロッド82は、未使用時には後退されてリークノズル81の内方(図中上方)に収納されている。
【0076】
図5~
図7を参照して、内容器体本体31を減容変形させて、リーク検査を行う第1検査工程について説明する。
【0077】
なお、
図6は、左側から順に、検査を開始する前の多重ボトルをリーク検査装置8にセットしたときの多重ボトル1とストッパーロッド82の初期状態(
図6A)、ストッパーロッド82を挿入した状態(
図6B)、外郭ボトル2と内容器体3の間に検査用の加圧ガスを注入した状態(
図6C)、内容器体本体31の減容変形が十分行われた状態で検査実行中の状態(
図6D)、内容器体本体31の内部に加圧ガスを注入し、空間5から検査用の加圧ガスを排出している状態(
図6E)、検査を終了しストッパーロッド82を初期位置にもどした状態(
図6F)を示す。
【0078】
この第1検査工程においては、まず、
図6Aに示すように、リーク検査装置8(
図6では不図示)に、多重ボトル1をセットして、内口部30から内容器体本体31の内部にストッパーロッド82の挿入を開始する。
【0079】
次に、
図6Bに示すように、ストッパーロッド82の先端を内容器体本体31の底部に当接させて固定する。
【0080】
このとき、ストッパーロッド82の先端は、必ずしも、内容器体本体31の底部に当接させる必要はなく、ストッパーロッド82を内容器体本体31の底部に所定の間隔を存して対向する位置に固定してもよい。
【0081】
ここで、ストッパーロッド82と内容器体本体31の底部との間の「所定の間隔」としては、内容器体本体31の変形が開始された直後で、内容器体本体31の底部がストッパーロッド82に当接するような間隔のことを指す。
【0082】
具体的には、例えば、内口部30の頂部(本実施形態では、延出部30aの上端面)から内容器体本体31の底部までの長さの0%~10%の長さに対応する間隔、好ましくは、0%~5%の長さに対応する間隔である。
【0083】
次に、
図6Cに示すように、第2気体通路81bを介して、通路4から外郭ボトル本体24と内容器体本体31との間に、加圧ガスを導入する。
【0084】
これにより、外郭ボトル本体24と内容器体本体31との間に導入された加圧ガスは、内容器体本体31の外面を外郭ボトル本体24の内面から離間させつつ、内容器体本体31を減容変形させる。その結果、外郭ボトル本体24と内容器体本体31との間には、空間5が形成される。
【0085】
本実施形態においては、変形工程が実行される前に(すなわち、内容器体本体31が減容変形される前に)、内口部30からストッパーロッド82を挿入し、ストッパーロッド82を内容器体本体31の底部に当接させて固定している。
【0086】
そのため、変形工程において生じる内容器体本体31の減容変形のうち、底部側から内口部30に向かって折り畳まれるような、多重ボトル1の長さ方向の減容変形(すなわち、複雑で不均一な形状に収縮するような変形)は、ストッパーロッド82が内容器体本体31の底部に当接することによって規制される。
【0087】
一方で、内容器体本体31の胴部の周面部が多重ボトル1の軸心に向かって折り畳まれるような、多重ボトル1の径方向の減容変形(すなわち、収縮するような変形)は、ストッパーロッド82によって規制されることはない。
【0088】
その結果、
図5に示すように、内容器体本体31には、多重ボトル1の径方向の減容変形が優先的に生じる。すなわち、本実施形態の変形工程においては、内容器体本体31の減容変形は、リークの原因となるピンホール等の欠陥が生じにくく、また、充填された内容物を注出する際に注出を阻止するような折り癖の原因となる折り畳み皺が形成されにくい所定の変形になるように案内される。
【0089】
これにより、内容器体本体31を外郭ボトル本体24から離間する際にも、内容器体本体31が不均一に変形してしまうことを抑制することができる。
【0090】
これに対し、
図7に示すように、従来の製造方法のように、変形工程においてストッパーロッド82のような底部を固定する規制手段を用いない場合には、内容器体本体31は、その底部が外郭ボトル本体24の底部から離間して内口部30の方向に引かれるように、減容変形する。そのため、内容器体本体31の胴部には、多重ボトル1の径方向に不均一な折り畳み皺が形成され、また、胴部が長さ方向でも不揃いに減容変形するので、内容器体本体31の減容変形が複雑で不均一な変形となってしまう。
【0091】
そして、このように内容器体本体31の減容変形が不均一なものであると、その減容変形によって、内容器体本体31にピンホール等のリークの原因となる欠陥が生じてしまうおそれがある。さらに、内容器体3に収容した内容物を吐出する際に、折り畳み皺に導かれて再び内容器体本体31が不規則に減容変形して、その減容変形した内容器体本体31に内容物の動きが阻害されて、内容物を出し切ることができなくなるというおそれがある。
【0092】
これに対し、本実施形態における減容変形では、内容器体本体の長さ方向の変形が規制され均一なものになっているので、そのような欠陥が生じたり、内容器体本体31によって内容物の動きが阻害されたりすることは抑制されている。
【0093】
再度、第1検査工程の説明に戻る。第1検査工程においては、次に、
図6Cに示す状態を経て、
図6Dに示すように内容器体本体31が十分に減容変形した状態において、第2気体通路81bを閉塞することによって、通路4を閉塞状態にしたうえで、空間5の内部の圧力、又は、内口部30で内容器体3から排出される気体の有無を検知して、リークの有無を検出する。
【0094】
内容器体本体31にピンホール等のリークの原因となる欠陥がある場合、空間5の内部の気体はその欠陥部から、内容器体本体31の内部にリークし、空間5の内部の圧力が減少する。その一方で、内口部30から外部に気体が排出される。
【0095】
そこで、このように、空間5の内部の圧力の変化、又は、内口部30で内容器体3から排出される気体の有無を検知することによって、内容器体本体31のリーク有無を検出することができる。
【0096】
次に、
図6Eに示すように、第2気体通路81bを開放することによって、通路4を開放状態にする。。
【0097】
次に、
図6Fに図に示すように、内口部30から内容器体本体31の外部にストッパーロッド82を引き抜いて、第1検査工程を終了する。
【0098】
ところで、内容器体本体31は、このような減容変形の後に原形復帰が行われると、原形復帰のための変形過程において、新たなピンホール等のリークの原因となる欠陥が生じることがある。そのため、その原形復帰の際にも、リーク検査を行うことが望ましい。
【0099】
以下において、
図8を参照して、内容器体本体31を減容変形した状態から原形復帰させたときにリーク検査を行う工程(第2検査工程)について説明する。
【0100】
図8は、第2検査工程の各工程を説明的断面図であり、左側から順に、検査を開始する前の状態(
図8A)、一次復元状態(
図8B)、二次復元状態(
図8C)、検査実行中の状態(
図8D)、検査を終了した状態(
図8E)を示す。
【0101】
ここで、本実施形態では、第2検査工程は、第1検査工程と連続して行われる。そのため、
図8Aに示す初期状態は、
図6Fに示した第1検査工程の検査を終了した状態と同一の状態である。すなわち、第2検査工程の初期状態において、多重ボトル1は、引き続き、リーク検査装置8にセットされた状態となっている。
【0102】
この第2検査工程においては、まず、
図8Bに示すように、第3気体通路81cを介して、内口部30から内容器体本体31の内部に検査用気体を導入する。
【0103】
このとき、内容器体本体31は、内圧の上昇によって膨張して、ある程度原形復帰する(一次復元)。具体的には、内容器体本体31は、
図8Bに示す状態から
図8Cに示す状態まで変形する。これにより、外郭ボトル2の外郭ボトル本体24と内容器体3の内容器体本体31との間の空間5の容積が減少する。その結果、空間5に連通している通路4から、第2気体通路81bを介して、空間5に導入されていた加圧ガスが排出される。
【0104】
次に、
図8Cに示すように、内容器体3への検査ガスの導入を維持しつつ、第2気体通路81bを介して、通路4、ひいては、空間5から、気体加圧ガスを強制排気する。
【0105】
このとき、内容器体本体31は、内圧の上昇に外圧の低下が加わってさらに膨張して、減容変形する前の状態にまで原形復帰する(二次復元)。具体的には、
図8Cに示す状態から
図8Dに示す状態まで変形する。
【0106】
そこで、
図8Dに示すように、内容器体3に加圧検査気体を入れて内容器体本体31がほぼ原形復帰した状態において、第2気体通路81bを開放して、通路4を開放状態にした状態で、内容器体3の内口部30で内容器体3の内部の圧力の変化を検知して、リークの有無を検出する。
【0107】
内容器体本体31にピンホール等のリークの原因となる欠陥がある場合、内容器体本体31の内部の空気はその欠陥部から、離間により形成された狭い空間である空間5にリークし、内容器体本体31の内部の圧力が減少する。そのため、このように、内容器体本体31の内部の圧力の変化を検知することによって、内容器体本体31のリーク有無を検出することができる。
【0108】
次に、
図8Eに示すように、第2気体通路81b、第3気体通路を開放し、リーク検査装置8とボトルを分離して通路4を開放状態にして、第2検査工程を終了する。
【0109】
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではない。
【0110】
例えば、上記実施形態においては、変形工程を含む第1検査工程の後、内容器体本体31を原形復帰させる復帰工程を含む第2検査工程を行っている。しかし、本発明の製造方法は、そのような構成に限定されるものではない。
【0111】
例えば、減容変形させた後、内容器体本体に内容物を収容するとともに、その内容物によって内容器体本体を原形復帰させる構成の場合には、合成樹脂製多重ボトルの製造方法に、独立して、又は、検査工程等とともに復帰工程を行う必要はない。
【0112】
逆に、合成樹脂製多重ボトルを、内口部に逆止弁を設け、外圧によって外郭ボトル及び内容器体を減容変形させた後に、内容器体のみにその減容変形を維持させる構成(例えば、液体調味料等を収容するもの)とした場合には、その合成樹脂製多重ボトルの製造工程に、積極的に復帰工程を含ませるとよい。
【0113】
上記実施形態と同様にして減容変形をさせた後に、復帰工程を実行すると、内容器体本体に変形の痕跡として、使用時(内容物を吐出させた際)に内容器体本体の変形を案内する変形案内部(折り癖)が形成されることになる。
【0114】
このとき、その変形案内部となる折り癖は、規制部材により長さ方向の変形が規制され径の収縮するような比較的規則的な変形によって形成されたものであるので、比較的規則的なものになる。ひいては、その変形案内部によって案内される内容器体本体の減容変形も比較的規則的なものになる。その結果、使用時にも内容器体本体の内部に内容物の移動を阻害するような部分が形成されることを抑制することができる。
【0115】
また、例えば、上記実施形態では、変形工程を含む第1検査工程において、通路4を介して、外郭ボトル本体24と内容器体本体31との間に加圧ガスを導入することによって、内容器体本体31を減容変形させて、外郭ボトル本体24から内容器体本体31を離間するとともに、それらの間に空間5を形成している。しかし、本発明の変形工程はそのような構成に限定されるものではない。
【0116】
例えば、内容器体本体の内部を減圧することによって、内容器体本体を減容変形させてもよい。なお、この場合には、内容器体本体を原形復帰させる際に、内容器体本体の内部に加圧流体を導入するようにしてもよい。さらに、外郭ボトル本体と内容器体本体との間への加圧ガス導入と、内容器体本体の内部減圧とを併用してもよい。また、内容器体本体を減容変形させる前に、内容器体本体を外郭ボトル本体から剥離しておいてもよい。
【0117】
また、例えば、上記実施形態では、規制部材として、細長い円柱状のストッパーロッド82を採用している。しかし、本発明の規制部材は、そのような構成に限定されるものではなく、内容器体の底部に内側から当接して、内容器体の減容変形を規制するものであればよい。例えば、円柱状(棒状)ではなく、板状であってもよいし、先端部の形状を、内容器体の底面の形状に対応させたものであってもよい。
【0118】
また、例えば、上記実施形態では、形成工程において多重ボトル1をブロー成形によって形成し、金型70の内部から多重ボトル1を取り出した後に、変形工程に該当するリーク検査を行っている。これは、変形工程を金型から取り出した後で行うようにすると、変形工程を実施している最中に、その金型で次の製品を製造して、製造効率を向上させることができるためである。しかし、本発明の合成樹脂製多重ボトルの製造方法は、そのような構成に限定されるものではない。
【0119】
例えば、形成工程の後、金型から合成樹脂製多重ボトルを取り出さずに、その金型の内部で、ブロー成形装置のストレッチロッドを規制部材として利用して、変形工程を行ってもよい。また、例えば、ブロー成形以外の方法によって形成された合成樹脂製多重ボトルに対して本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0120】
1…多重ボトル(合成樹脂製多重ボトル)、2…外郭ボトル、3…内容器体、4…通路、5…空間、6…プリフォーム、7…ブロー成形装置、8…リーク検査装置、20…外口部、20a…雄ネジ部、20b…サポートリング、21…肩部、22…胴部、23…底部、23a…凹部、23b…接地部、24…外郭ボトル本体、30…内口部、30a…延出部、30b…鍔部、30c…縦溝、30d…横溝、31…内容器体本体、60…外プリフォーム、60a…外プリフォーム口部、60b…外胴部、60c…サポートリング部、61…内プリフォーム、61a…内プリフォーム口部、61b…内胴部、70…金型、70a…成形部、70b…第1支持開口部、71…ブローノズル、71a…第1Oリング、71b…第1気体通路、72…ストレッチロッド、80…支持部、80a…第2支持開口部、81…リークノズル、81a…第2Oリング、81b…第2気体通路、81c…第3気体通路、82…ストッパーロッド(規制部材)。