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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/475 20060101AFI20221215BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20221215BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20221215BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20221215BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A61F13/475 200
A61F13/56 110
A61F13/532 100
A61F13/512 300
A61F13/511 110
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019035124
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020137731
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】大野 陽平
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-46425(JP,A)
【文献】特表2003-500165(JP,A)
【文献】特開2007-143696(JP,A)
【文献】特開平11-19107(JP,A)
【文献】特開2004-337314(JP,A)
【文献】特開平2-142565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
肌側の前端部及び後端部の少なくとも一方に、長手方向中央に向けて開口するポケットを形成するポケットシートが配設され、前記ポケットシートの一部が開口側端部から長手方向に折り返し可能に設けられるとともに、前記ポケットシートの折り返し部分が吸収性物品の長手方向端縁より外側において下着に固定し得るように設けられており、
前記ポケットシートを折り返さずに下着に装着する形態と、前記ポケットシートを折り返し、この折り返し部分を、吸収性物品の長手方向の端縁より外側において下着に固定して装着する形態とが選択可能に成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
長手方向の中間部において肌側に起立する立体ギャザーを形成するサイドシートが、肌側の両側部に長手方向の全長に亘って配設されるとともに、長手方向の両端部において、前記サイドシートの幅方向中央側の部分が、幅方向に折り畳まれて積層された状態で前記表面シートの肌側面に接合されており、
前記ポケットシートの両側部が、前記サイドシートの積層部分より幅方向外側に延在して配設されるとともに、前記積層部分より幅方向外側に延在する部分が、前記サイドシートの肌側面に接合されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ポケットシートは、開口側端部から吸収性物品の長手方向の所定区間における全てのポケットシートが、長手方向に折り返し可能に設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記ポケットシートは、長手方向に折り返し可能な部分の両側部が、長手方向に折り返さない状態において、下層側の部材に対し、剥離可能接合部によって接合されている請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記ポケットシートは、吸収性物品の長手方向端部側の縁部がほぼ全幅に亘って下層側の部材に剥離不能に接合されるとともに、両側部の長手方向端部寄りの部分が下層側の部材に剥離不能に接合されている請求項3、4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記ポケットシートが2層以上の積層シート材からなり、少なくとも最上層のシート材が開口側端部から長手方向に折り返し可能に設けられており、それより下層側のシート材が長手方向に折り返し不能に設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
長手方向に折り返し不能に設けられた前記下層側のシート材に、防水シートが積層されている請求項6記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記ポケットシートは、連続する1枚のシート材が長手方向に折り畳まれることによって前記2層以上の積層シート材を構成している請求項6、7いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記ポケットシートは、長手方向に折り返し可能に設けられた上層側のシート材と、長手方向に折り返し不能に設けられた下層側のシート材とが接合されて前記2層以上の積層シート材を構成している請求項6、7いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記ポケットシートの開口側端部に、長手方向に折り返した端縁折り返し部が設けられ、この端縁折り返し部の内面に、前記ポケットシートを折り返して装着する形態において下着に固定するための粘着剤層が備えられている請求項1~9いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項11】
吸収性物品の後端部に配設されるポケットシートは、吸収性物品の幅方向中間部に配置されるか、吸収性物品の全幅に亘って配置されている請求項1~10いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記吸収体は、前記ポケットと重なる領域の肌側面に、非肌側に窪む凹部が形成されており、前記凹部は、前記ポケットの開口側端部より長手方向の中央側に延在して形成されている請求項1~11いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収体がパルプと高吸水性ポリマーとを含み、
前記高吸水性ポリマーの目付は、前記ポケットと重なる領域の方が他の領域より低く設定されている請求項1~12いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記表面シートは、前記ポケットと重なる領域に、表裏を貫通する多数の開孔が形成されている請求項1~13いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記表面シートは、前記ポケットと重なる領域に、吸収性物品の幅方向に亘って延びる畝部及び溝部を吸収性物品の長手方向に交互に多数配置した畝溝構造が形成されている請求項1~14いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッド、トイレタリー等に使用される吸収性物品であって、詳しくは吸収性物品の前端部及び後端部の少なくとも一方に長手方向中央に向けて開口するポケットが形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、主に就寝時に装着する夜用の生理用ナプキンなどとして、吸収量を増やし漏れを防止するため、前後方向の長さを長くして、着用者の臀部まで広く覆うようにした吸収性物品が知られている。
【0003】
ところが、吸収性物品の前後方向の長さをいくら長くしても、肌面を伝って前後方向に流れる体液が前後端部から漏れる場合があり、このような前後端部からの漏れをより確実に防止するため、前後端部に長手方向中央に向けて開口するポケットを形成したものが種々提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1においては、防漏シートが、表面シートの前端部若しくは後端部を覆うように且つ押圧溝及び防漏シートでポケットが形成されるように表面シートに接合されている吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2においては、前後において、立体ギャザーの収縮力を利用して縦断面Z字状の折り畳みによるポケットを形成した吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-95697号公報
【文献】特開2015-24070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2に記載の吸収性物品では、前後端部にポケットが形成されるため、肌面を伝って流れた体液がポケットで塞き止められ、前後端部からの漏れ防止効果の向上が期待できる。
【0008】
しかしながら、夜用の生理用ナプキンなどのように、前後方向の長さが長い吸収性物品では、着用中の身体の動きなどによって装着位置がずれる場合があった。吸収性物品の本体部には、下着との対向面にずれ止め用の粘着剤層が設けられているが、これだけでは着用中のずれを抑えるのに不充分であり、特に、吸収性物品の前後端部がずれやすいという問題があった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、吸収性物品の前後端部からの漏れを防止するとともに、前後端部の着用中のずれを防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
肌側の前端部及び後端部の少なくとも一方に、長手方向中央に向けて開口するポケットを形成するポケットシートが配設され、前記ポケットシートの一部が開口側端部から長手方向に折り返し可能に設けられるとともに、前記ポケットシートの折り返し部分が吸収性物品の長手方向端縁より外側において下着に固定し得るように設けられており、
前記ポケットシートを折り返さずに下着に装着する形態と、前記ポケットシートを折り返し、この折り返し部分を、吸収性物品の長手方向の端縁より外側において下着に固定して装着する形態とが選択可能に成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、肌側の前端部及び後端部の少なくとも一方に、長手方向中央に向けて開口するポケットが形成されているため、長手方向端部に向けて流れた体液が、前記ポケットに流入して塞き止められることにより、前後端部からの体液の漏れが防止できるようになる。
【0012】
また、本吸収性物品では、前記ポケットシートを折り返さずに下着に装着する形態と、前記ポケットシートを折り返し、この折り返し部分を、吸収性物品の長手方向の端縁より外側において下着に固定して装着する形態とが選択可能に成されているため、前記ポケットシートを折り返さない装着形態では、前記ポケットによって確実に体液が塞き止められるようになり、前記ポケットシートを折り返して下着に固定する装着形態では、着用時における吸収性物品の長手方向端部のずれが防止でき、装着感が良好になるとともに、体液の漏れが防止できるようになる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、長手方向の中間部において肌側に起立する立体ギャザーを形成するサイドシートが、肌側の両側部に長手方向の全長に亘って配設されるとともに、長手方向の両端部において、前記サイドシートの幅方向中央側の部分が、幅方向に折り畳まれて積層された状態で前記表面シートの肌側面に接合されており、
前記ポケットシートの両側部が、前記サイドシートの積層部分より幅方向外側に延在して配設されるとともに、前記積層部分より幅方向外側に延在する部分が、前記サイドシートの肌側面に接合されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明では、立体ギャザーを形成するサイドシートが配設された吸収性物品において、前記ポケットシートの両側部を、前記サイドシートの幅方向中央側の積層部分より幅方向外側に延在して配設するとともに、この積層部分より幅方向外側に延在した部分において、サイドシートの肌側面に接合するようにしている。これによって、肌側に増厚されたサイドシートの積層部分がポケットの両側に位置するため、ポケットシートと表面シートとの間に空間が形成されやすくなり、ポケット内部に体液が流れ込みやすくなる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記ポケットシートは、開口側端部から吸収性物品の長手方向の所定区間における全てのポケットシートが、長手方向に折り返し可能に設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明は、前記ポケットを形成する第1形態例である。本形態例では、開口側端縁から吸収性物品の長手方向の所定区間における全てのポケットシートが長手方向に折り返し可能に設けられている。これによって、簡単な構造でポケットが形成できるようになる。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記ポケットシートは、長手方向に折り返し可能な部分の両側部が、長手方向に折り返さない状態において、下層側の部材に対し、剥離可能接合部によって接合されている請求項3記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、前記ポケットシートの長手方向に折り返し可能な部分の両側部を、長手方向に折り返さない状態において、下層側の部材に対し、剥離可能接合部によって接合している。このため、ポケットシートを開口側端部から長手方向に折り返す際には、前記剥離可能接合部によって接合された部分を剥離してポケットシートの開口側の所定区間を長手方向に折り返すことができるようになる。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記ポケットシートは、吸収性物品の長手方向端部側の縁部がほぼ全幅に亘って下層側の部材に剥離不能に接合されるとともに、両側部の長手方向端部寄りの部分が下層側の部材に剥離不能に接合されている請求項3、4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明では、前記ポケットシートを下層側の部材に剥離不能に接合する部分として、吸収性物品の長手方向端部側の縁部と、両側部の長手方向端部寄りの部分とによって平面視略コの字形又は略U字形に形成している。このため、ポケットシートを開口側端部から長手方向に折り返した際、折り返さない部分によって小さなポケットが形成されることとなり、この小さなポケットによって長手方向端部に向けて流れる体液の漏れが防止できるようになる。
【0021】
請求項6に係る本発明として、前記ポケットシートが2層以上の積層シート材からなり、少なくとも最上層のシート材が開口側端部から長手方向に折り返し可能に設けられており、それより下層側のシート材が長手方向に折り返し不能に設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項6記載の発明は、前記ポケットを形成する第2形態例である。本形態例では、前記ポケットシートを2層以上の積層シート材で構成している。そして、少なくとも最上層のシート材は、開口側端部から長手方向に折り返し可能に設けられている。一方、これより下層側のシート材は、下層側の部材に剥離不能に接合され、長手方向への折り返しが不能に設けられている。このため、ポケットシートを開口側端部から長手方向に折り返した場合においても、下層のシート材によって吸収性物品の前後端部にポケットが形成されるため、前後端部からの漏れ防止と吸収性物品の前後端部のずれ防止をより確実に図ることができるようになる。
【0023】
請求項7に係る本発明として、長手方向に折り返し不能に設けられた前記下層側のシート材に、防水シートが積層されている請求項6記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
上記請求項7記載の発明では、長手方向に折り返し不能に成された下層側のシート材は、常にポケットを形成するため、ポケットに流れ込んだ体液が肌側に滲出するのをより確実に防止できるように防水シートを積層するのが好ましい。
【0025】
請求項8に係る本発明として、前記ポケットシートは、連続する1枚のシート材が長手方向に折り畳まれることによって前記2層以上の積層シート材を構成している請求項6、7いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0026】
上記請求項8記載の発明は、2層以上の積層シート材からなるポケットシートを形成する1つの形態例であり、連続する1枚のシート材を長手方向に折り畳むことによって構成している。連続する1枚のシート材で構成することにより、複数のシート材を接合する手間が省略でき、製造が容易になる。
【0027】
請求項9に係る本発明として、前記ポケットシートは、長手方向に折り返し可能に設けられた上層側のシート材と、長手方向に折り返し不能に設けられた下層側のシート材とが接合されて前記2層以上の積層シート材を構成している請求項6、7いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0028】
上記請求項9記載の発明は、2層以上の積層シート材からなるポケットシートを形成する変形例であり、長手方向に折り返し可能に設けられた上層側のシート材と、長手方向に折り返し不能に設けられた下層側のシート材とを接合することによって構成している。複数の積層シート材で構成することにより、1枚当たりのシート材の長さが短くでき、製造上の取扱いが容易になる。
【0029】
請求項10に係る本発明として、前記ポケットシートの開口側端部に、長手方向に折り返した端縁折り返し部が設けられ、この端縁折り返し部の内面に、前記ポケットシートを折り返して装着する形態において下着に固定するための粘着剤層が備えられている請求項1~9いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0030】
上記請求項10記載の発明では、前記ポケットシートの開口側端部に、長手方向に折り返した端縁折り返し部を設けることにより、開口側端縁のコシが増し、ポケットが口開きしやすくなる。また、この端縁折り返し部の内面に下着に固定する際の粘着剤層を備えることができる。
【0031】
請求項11に係る本発明として、吸収性物品の後端部に配設されるポケットシートは、吸収性物品の幅方向中間部に配置されるか、吸収性物品の全幅に亘って配置されている請求項1~10いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0032】
上記請求項11記載の発明では、吸収性物品の平面形状として、特に夜用の生理用ナプキンなどにおいて後端部の幅寸法が前端部の幅寸法より大きく形成されるため、吸収性物品の長手方向をライン流れ方向と一致させた縦流れ方式の製造ラインにおいて、吸収性物品の後端部に配置されるポケットシートと、これに続く吸収性物品の前端部に配置されるポケットシートとを連続するシート材で構成し、その後の工程で吸収性物品の外形線に沿って裁断することにより、前後端部にポケットが配設されるようにした場合、吸収性物品の前端部の幅寸法を基準にポケットシートを形成すると、吸収性物品の後端部に配設されるポケットシートが、吸収性物品の幅方向中間部に配置されることとなり、また、吸収性物品の後端部の幅寸法を基準にポケットシートを形成すると、吸収性物品の全幅に亘って配置されるようになる。
【0033】
請求項12に係る本発明として、前記吸収体は、前記ポケットと重なる領域の肌側面に、非肌側に窪む凹部が形成されており、前記凹部は、前記ポケットの開口側端部より長手方向の中央側に延在して形成されている請求項1~11いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0034】
上記請求項12記載の発明では、前記ポケットと重なる領域の吸収体の肌側面に、非肌側に窪む凹部を形成することによって、ポケットに体液流入用の空間部を形成しやすくしている。また、この凹部を、ポケットの開口側端部より長手方向の中央側に延在して形成することによって、表面シートの表面を流れる体液が、先ず吸収体の凹部に入り込み、その後、ポケットの空間内部にスムーズに流入するようになる。
【0035】
請求項13に係る本発明として、前記吸収体がパルプと高吸水性ポリマーとを含み、
前記高吸水性ポリマーの目付は、前記ポケットと重なる領域の方が他の領域より低く設定されている請求項1~12いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0036】
上記請求項13記載の発明では、吸収体に含まれる高吸水性ポリマーの目付を前記ポケットと重なる領域で相対的に低くすることによって、ポケット領域における高吸水性ポリマーの吸水による膨潤が抑えられ、ポケットの空間が維持されやすくなる。
【0037】
請求項14に係る本発明として、前記表面シートは、前記ポケットと重なる領域に、表裏を貫通する多数の開孔が形成されている請求項1~13いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0038】
上記請求項14記載の発明では、前記ポケットで塞き止められた体液を、効率よく吸収体に吸収・保持できるようにするため、ポケットと重なる領域の表面シートに表裏を貫通する多数の開孔を設けている。
【0039】
請求項15に係る本発明として、前記表面シートは、前記ポケットと重なる領域に、吸収性物品の幅方向に亘って延びる畝部及び溝部を吸収性物品の長手方向に交互に多数配置した畝溝構造が形成されている請求項1~14いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0040】
上記請求項15記載の発明では、ポケットまで流れた体液が、それ以上長手方向の端部に向けて流れるのを抑制するため、ポケットと重なる領域の表面シートに、吸収性物品の幅方向に亘って延びる畝部及び溝部を吸収性物品の長手方向に交互に多数配置した畝溝構造を形成している。
【発明の効果】
【0041】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収性物品の前後端部からの漏れが防止できるとともに、前後端部の着用中のずれが防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】第1形態例に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII-II線矢視図である。
図3図1のIII-III線矢視図である。
図4】非折り返し時の装着形態を示す下着の斜視図である。
図5】折り返し時の装着形態を示す生理用ナプキン1の平面図である。
図6】折り返し時の装着形態を示す下着の斜視図である。
図7図1のVII-VII線矢視図である。
図8】生理用ナプキン1の製造要領を示す平面図である。
図9】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図である。
図10】その製造要領を示す平面図である。
図11】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図である。
図12図11のXII-XII線矢視図である。
図13】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図である。
図14】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図である。
図15図14のXV-XV線矢視図である。
図16】第2形態例に係る生理用ナプキン1の平面図である。
図17図16のXVII-XVII線矢視図である。
図18】折り返し時の装着形態を示す生理用ナプキン1の平面図である。
図19】第2形態例の変形例に係る生理用ナプキン1の断面図(図16のXVII-XVII線矢視図に対応する図)である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0044】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性の裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性の表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌側の両側部に長手方向のほぼ全長に亘って配設され、長手方向の中間部において肌側に起立する立体ギャザーBS、BSを形成するサイドシート7、7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記裏面シート2と表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記裏面シート2と前記サイドシート7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されることにより、吸収体が介在しないフラップ部が形成されたものである。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。また、図示しないが、前記表面シート3の非肌側に隣接して、前記表面シート3とほぼ同形状の親水性の不織布などからなるセカンドシートを配設してもよい。
【0045】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記吸収体4が介在する本体部分の前記裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン長手方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。前記裏面シート2の外面側であって、表面シート3と裏面シート2との間に吸収体4が介在された本体部分の非肌面には、下着に対する固定のために適宜の塗布パターンによって複数条の粘着剤層が形成されている。
【0046】
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0047】
前記裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと高吸水性ポリマーとにより構成されている。前記高吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。前記吸収体4の目付は、250~650g/m、好ましくは300~400g/mとするのがよい。
【0048】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0049】
前記吸収体4の肌側面には、着用者の体液排出部Hを含む領域に、肌側に増厚された吸収体の中高部6を形成するのが好ましい。前記吸収体4及び中高部6は、それぞれ別個に製造した後、組立工程で積層してもよいし、吸収体を立体的に積繊することによって一体的に形成してもよい。また、吸収体4の上段に中高部6を積繊する二段積繊構造としてもよい。
【0050】
前記中高部6は、吸収体4の肌側面に隣接するとともに、吸収体4の幅方向中央部に配置され、吸収体4より幅寸法及び長手寸法が小さく形成されている。前記中高部6の厚みは、厚すぎると剛性が上がり身体への密着性が低下するし、薄すぎると体液排出部Hとの密着性が低下するため3~25mm、好ましくは5~18mmとするのがよい。また、前記中高部6が配置された部分の中高部6と吸収体4との合計目付は、400~900g/m、特に600~800g/mとするのがよい。
【0051】
前記表面シート3の幅寸法は、図示例では、図2及び図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記表面シート3とは別のサイドシート7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイドシート7が配設されている。かかるサイドシート7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13~23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0052】
前記サイドシート7は、図2及び図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイドシート7と裏面シート2との積層シート部分により吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないフラップ部が形成されている。このフラップ部は、ほぼ体液排出部Hに相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側(後部側)位置にヒップホールド用フラップW、Wを形成してもよい。これらウイング状フラップW、Wおよびヒップホールド用フラップW、Wの外面側にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)が備えられ、下着に対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを基端部の折返し線RL位置にて反対側に折り返し、下着のクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、前記ヒップホールド用フラップWを下着の内面に止着するようになっている。
【0053】
一方、前記サイドシート7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材9、9…が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、外側に1回折り返して積層された状態で吸収体4側に接着された積層部分7aが設けられることによって、図2に示されるように、少なくとも体液排出部Hを含む長手方向の中間部において、外側に傾斜しながら肌側に向けて起立する直線状の立体ギャザーBS、BSが左右対で形成されている。立体ギャザーBSの断面形状は、図示例の直線状に限定されず、起立中間部で折れ曲がったく字状やZ字状などとしてもよく、また中空のループ状であってもよい。
【0054】
〔ポケット〕
(第1形態例)
本生理用ナプキン1では、図1に示されるように、肌側の前端部及び後端部にそれぞれ、長手方向中央に向けて開口するポケットP、Pを形成するポケットシート10、11が配設されていることが特徴的である。前記ポケットは、前端部及び後端部の少なくとも一方に設けられていればよく、図示例のように前端部及び後端部の両方に設けてもよいし、図示しないが前端部及び後端部のいずれか一方のみに設けてもよい。前記ポケットシート10、11は、生理用ナプキン1の長手方向中央側に位置する開口側端縁12を除く3方の辺部が、平面視略コの字形又はU字形に設けられた所定の形態の接合部によって、下層側の部材に接合されている。
【0055】
このように、本生理用ナプキン1では、肌側の前端部及び後端部の少なくとも一方に、長手方向中央に向けて開口するポケットP、Pが形成されているため、着用者の体液排出部Hに対応する領域から長手方向に流れた体液が、長手方向の端部においてポケットP、Pに流れ込んで塞き止められ、このポケット内で吸収体4に吸収保持されることによって、前後端部からの体液の漏れが防止できるようになる。
【0056】
前記ポケットシート10、11としては、撥水性の不織布を用いるのが好ましい。前記撥水性の不織布としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を用いることにより素材自体に撥水性を有するものを用いるのが好ましいが、綿繊維等の親水性繊維の不織布を使用する場合は、撥水剤を外添塗布して使用する。撥水剤としては、パラフィン系、シリコン系等の既知のもののうち、肌への刺激性の少ないものを適宜選択して使用することができるが、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸マグネシウム等の刺激性の少ない油脂を適宜選択して使用することがより好ましく、この他にも繊維に塗布される撥水剤として公知の撥水剤であればどのようなものを適用しても良い。前記撥水剤の塗布は、ポケットシート10、11の一方の面のみでもよいし、両面に施してもよい。少なくともポケットP、Pの内側の面に撥水処理を施すことにより、ポケットP、Pに流れ込んだ体液が肌側に滲出するのが防止できる。
【0057】
前記ポケットシート10、11の一部は、開口側端部から長手方向に折り返し可能に設けられるととももに、このポケットシートの折り返し部分が生理用ナプキン1の長手方向端縁より外側において下着40に固定し得るように設けられている。つまり、前記ポケットシート10、11を長手方向に折り返した状態で、この折り返し部分の先端部が、生理用ナプキン1の長手方向の端縁より外側に延在するようになっている。
【0058】
本生理用ナプキン1では、図1及び図4に示されるように、ポケットシート10、11を折り返さずに下着40に装着する形態(非折り返し時の装着形態)と、図5及び図6に示されるように、ポケットシート10、11を長手方向に折り返し、この折り返し部分を、生理用ナプキン1の長手方向の端縁より外側において下着40に固定して装着する形態(折り返し時の装着形態)とが選択可能となっている。
【0059】
図1及び図4に示される非折り返し時の装着形態においては、前記ポケットP、Pによって確実に体液が塞き止められ、前後端部からの体液の漏れがより確実に防止できるようになっている。
【0060】
また、図5及び図6に示される折り返し時の装着形態においては、ポケットシート10、11の折り返し部分が生理用ナプキン1の長手方向端縁より外側において下着に固定されるため、着用時における生理用ナプキン1の長手方向端部のずれが確実に防止でき、装着感が良好になる。また、生理用ナプキン1がずれずに着用者の適切な部位に装着されるため、体液の漏れが生じにくくなる。図6に示されるように、折り返し時の装着形態において、前端部のポケットシート10は、折り返し部分の先端部に設けられた後述する粘着剤層16が生理用ナプキン1の前側端縁より外側において下着40の内面に貼着される。また、後端部のポケットシート11は、折り返し部分の先端部が下着40のウエスト開口縁で下着40の外面側に折り返され、この下着40の外面側に折り返された部分の先端部に設けられた後述する粘着剤層16が下着40の外面に貼着される。このように、後端部のポケットシート11が下着40のウエスト開口縁で下着40の外面側に折り返されて固定されるため、装着時における生理用ナプキン1の後端部のずれがより確実に防止できるようになる。なお、前記後端部のポケットシート11は、折り返し部分の先端部に設けられた粘着剤層16を生理用ナプキン1の後側端縁より外側において下着40の内面に貼着するようにしてもよい。
【0061】
また、前記ポケットシート10、11は、使用済み生理用ナプキンを廃棄する際の包み込み用シートとして利用することも可能である。
【0062】
前記ポケットシート10、11は、図1に示されるように、長手方向に折り返さない状態において、それぞれ生理用ナプキン1の前側及び後側寄りの長手方向中間位置から長手方向端縁に亘って配設されている。
【0063】
本第1形態例に係るポケットでは、図5及び図6に示されるように、前記ポケットシート10、11の開口側端部から生理用ナプキン1の長手方向の所定区間におけるポケットシートの全てが、長手方向に折り返し可能に設けられている。つまり、ポケットシート10、11を開口側端部から長手方向に折り返すことにより、折り返されたポケットシートが位置していた部分には、ポケットシート10、11によるポケットP、Pが存在しなくなり、下層側の部材、つまり表面シート3及びサイドシート7が肌側面に露出するようになっている。
【0064】
このように、本第1形態例では、所定区間に配置されたポケットシート部分の全部が折り返し可能に成されているため、前記ポケットシート10、11は、折り返される区間及び折り返さない区間のそれぞれにおいて、所定部位が所定の接合形態で下層側の部材(表面シート3又はサイドシート7)に接合されている。
【0065】
具体的には、前記ポケットシート10、11は、長手方向に折り返し可能な部分の両側部が、長手方向に折り返さない状態において、下層側の部材(サイドシート7)に対し、剥離可能接合部13によって接合されている。前記剥離可能接合部13は、着用者の通常の引き剥がし力によって簡単に剥離できるように形成された接合部であり、熱融着やホットメルト接着剤層などによって形成することができる。前記剥離可能接合部13は、ポケットシート10、11の両側部にそれぞれ、ポケットシート10、11の開口側端部から、生理用ナプキン1の長手方向に沿って、所定の区間に設けられている。
【0066】
前記剥離可能接合部13としては、前記ポケットシート10、11とサイドシート7との当接面に夫々形成された自己接着性粘着剤層を用いてもよい。前記自己接着性粘着剤とは、粘着剤同士では接着性を示すが他の物質とは粘着性を示さない粘着剤を言い、天然ゴム、ブチルゴム、ポリイソプレンゴム、アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系等各種のものを挙げることができ、入手は容易である。この自己接着性粘着剤によれば、ポケットシート10、11を長手方向に折り返さない状態においてポケットシート10、11をサイドシート7に接着させておくことを可能としながら、ポケットシート10、11の折り返し時には前記ポケットシート10、11およびサイドシート7に肌面が接触しても接着性を示すことが無いため装着性が著しく向上するようになる。
【0067】
一方、前記ポケットシート10、11は、生理用ナプキン1の長手方向端部側の縁部がほぼ全幅に亘って下層側の部材(表面シート3、サイドシート7)に剥離不能接合部14によって剥離不能に接合されるとともに、両側部の長手方向端部寄りの部分、即ち前記剥離可能接合部13より長手方向端部側の部分が、下層側の部材(サイドシート7)に剥離不能接合部14によって剥離不能に接合されている。つまり、ポケットシート10、11の両側部は、図7に示されるように、長手方向中央側の所定区間が剥離可能接合部13によって剥離可能に接合される一方で、長手方向端部側の所定区間が剥離不能接合部14によって剥離不能に接合されている。この剥離不能に接合された部分が、長手方向に折り返し不能な部分である。
【0068】
折り返し不能な部分(前記剥離不能接合部14による接合部)が、生理用ナプキン1の長手方向端部側の縁部に加え、両側部の長手方向端部寄りの部分にも設けられているため、図5に示されるように、ポケットシート10、11の折り返し状態において、折り返さないポケットシート部分によって小さなポケットが形成されるようになる。このため、折り返し時の装着形態においても、この小さなポケットに体液が流れ込んで塞き止められることにより、長手方向端部からの体液の漏れが防止できるようになる。
【0069】
本生理用ナプキン1のように、肌側の両側部に長手方向の中間部において肌側に起立する立体ギャザーBSを形成するサイドシート7が配設される場合において、前記ポケットシート10、11は、前記サイドシート7が長手方向の両端部において、幅方向中央側の端部を幅方向に折り畳んで積層した状態で表面シート3の肌側面に接合された積層部分7aより、幅方向外側に延在して配設されるとともに、前記ポケットシート10、11の両側部に設けられる剥離可能接合部13が、前記積層部分7aより幅方向外側に配置されるようにするのが好ましい。これによって、肌側に増厚されたサイドシート7の積層部分7aが、両側の剥離可能接合部13、13の間に形成されるポケットP、P内の両側に位置するため、ポケットシート10、11が表面シート3から浮いた状態となって、ポケットシート10、11と表面シート3との間に空間が形成されやすくなり、ポケットP、P内に体液が流れ込みやすくなる。
【0070】
前記ポケットシート10、11の長手方向に折り返し可能な部分は、サイドシート7の積層部分7aの肌側面に対しても、前記剥離可能接合部13によって接合してもよいし、接合しなくてもよい。
【0071】
前記ポケットシート10、11の開口側端縁12と、前記サイドシート7の前記積層部分7aの長手方向中央側の端縁とは、ほぼ同じ位置になるように形成してもよいし、異なる位置に形成してもよい。ポケットシート10、11の開口側端縁12を、前記積層部分7aの長手方向中央側の端縁より、長手方向中央側に延在させた場合には、サイドシート7の肌側に起立する立体ギャザーBSの部分までポケットシート10、11が延在することとなり、立体ギャザーBSが肌側に起立することによってポケットP、Pの開口側端縁12が口開きしやすくなる。
【0072】
図1及び図7に示されるように、前記ポケットシート10、11の開口側端部に、長手方向に折り返した端縁折り返し部15を設けるのが好ましい。前記端縁折り返し部15を設けることにより、ポケットシート10、11の開口側端部のコシが増し、ポケットP、Pが口開きしやすくなる。
【0073】
また、この端縁折り返し部15の内面には、前記ポケットシート10、11を開口側端部から長手方向に折り返した際、下着40に固定するための粘着剤層16を備えるのが好ましい。前記粘着剤層16が当接する部分のポケットシート10、11の対向面には剥離処理が施され、折り返し時の使用形態において、端縁折り返し部15の折り返しを展開したとき、粘着剤層16が容易に剥離できるようにするのが好ましい。
【0074】
ここで、前記ポケットP、Pの製造方法について、図8に基づいて説明すると、生理用ナプキン1の長手方向をライン流れ方向と一致させた縦流れ方式の製造ラインにおいて、隣り合う生理用ナプキン1、1の前後端部に配置されるポケットシート10、11を連続する等幅の連続シートで構成し、所定領域を所定の接合形態で接合した後、前記端縁折り返し部15を形成するため連続シートの前後両端を折り返し、生理用ナプキン1の外形線で裁断することによって行うことができる。
【0075】
本生理用ナプキン1は、後側の両側部に幅方向に突出するヒップホールド用フラップW、Wが形成された夜用の生理用ナプキンであるため、生理用ナプキンの平面形状は、前側より後側の方が幅寸法が大きく形成されている。このため、図8に示されるように、生理用ナプキン1の前側の幅寸法を基準として、ポケットシート10、11の連続シートを配置した場合、生理用ナプキン1の後端部に配設されるポケットシート11は、生理用ナプキン1の側縁まで達しない、生理用ナプキン1の幅方向中間部に配置されるようになる。
【0076】
一方、図9に示されるように、生理用ナプキン1の後端部に配設されるポケットシート11を、生理用ナプキン1の全幅に亘って配置するようにしてもよい。この場合には、図10に示されるように、生理用ナプキン1の後側の幅寸法を基準として、ポケットシート10、11の連続シートを配置する。全幅に亘ってポケットシート10、11を配置することによって、折り返し時の装着形態において、下着の広い範囲に固定できるようになるとともに、ポケットシート11を使用済み生理用ナプキンの包み込み用シートとして使用する場合でもより広い範囲を包み込むことができるようになる。ポケットシート11を幅広に形成する観点から、前記ポケットシート11の前側の端縁12は、ヒップホールド用フラップWが最も幅方向外側に突出する部分又はその近傍に位置するのが好ましい。また、前記ポケットシート10、11の接合は、生理用ナプキン1の周縁部を全周に亘って接合する全周シール部を利用してもよい。
【0077】
前記吸収体4の肌側面は、全面に亘って平坦でもよいが、図11及び図12に示されるように、前記ポケットP、Pと重なる領域の肌側面に、非肌側に窪む凹部17が形成されるようにしてもよい。前記凹部17を形成することにより、ポケット内に体液流入用の空間部が形成されやすくなり、表面シート3の表面を長手方向端部に向けて流れる体液が、前記凹部17に流れ込んで吸収体4に吸収されやすくなる。前記凹部17は、吸収体4の肌側からの圧搾によって形成してもよいが、吸収体4を構成する素材の目付を低くすることによって形成するのが好ましい。前記凹部17において表面シート3は、凹部17による空間の上方に配置するようにしてもよいし、表面シート3の表面を流れる体液が凹部17に流入しやすいように、凹部17に入り込むようにして凹部17の窪み形状に沿って配置してもよい。凹部17に沿って形成するには、凹部17の周縁に沿って表面シート3の外面からの圧搾により、連続する凹溝又は間欠的な多数の凹部を形成することにより成すことができる。
【0078】
また、前記凹部17の大きさ及び平面形状は任意であるが、両側のサイドシート7、7の間であって、吸収体4の端縁まで達しない中間部に、平面視略方形状に形成するのがよい。また、凹部17における生理用ナプキン1の長手方向中央側の端縁は、ポケットP、Pの開口側端縁12より長手方向の中央側に延在して形成するのが好ましい。これによって、表面シート3の表面を長手方向端部に向けて流れる体液が、前記凹部17に入り込んだ後、ポケットP、P内にスムーズに流入できるようになる。
【0079】
前記吸収体4に含まれる高吸水性ポリマーの目付は、吸収体4の全面に亘ってほぼ均等であってもよいが、前記ポケットP、Pと重なる領域において、吸収体4に含まれる高吸水性ポリマーの目付を、他の領域より低く設定してもよい。ポケットP、Pと重なる領域で高吸水性ポリマーの目付を低く設定することにより、ポケットP、Pの形成領域において高吸水性ポリマーの吸水による膨潤が抑えられ、体液の流入後においてもポケットP、Pの空間が維持しやすくなる。
【0080】
一方、ポケットP、Pの両側及び長手方向端部には、高吸水性ポリマーの目付を、ポケットP、Pを除く他の領域より高く設定したポリマー高目付領域を設けてもよい。これにより、ポリマー高目付領域の高吸水性ポリマーが吸水して膨潤することにより、ポケットP、Pの外周部が膨出し、より一層ポケットP、Pの空間が維持されやすくなる。
【0081】
ところで、前記表面シート3は、全面に亘ってほぼ均一に形成してもよいが、図13に示されるように、ポケットP、Pと重なる領域に、表裏を貫通する多数の開孔18、18…を形成し、それ以外の領域には開孔を形成しないようにしてもよい。前記ポケットと重なる領域のみに多数の開孔18、18…を形成することにより、表面シート3の表面を流れてポケットP、Pで塞き止められた体液を、ポケットP、P内で効率よく吸収体4に吸収・保持できるようになる。また、ポケットP、P部分以外の領域での開孔18…からの体液の逆戻りが防止できる。吸収体4に前記凹部17を形成した上で、この凹部17と重なる領域に前記開孔18…を形成してもよい。前記開孔18は、ピンによる突き刺しなど、常用に従って形成することができる。
【0082】
また、前記表面シート3は、図14及び図15に示されるように、ポケットP、Pと重なる領域に、生理用ナプキン1の幅方向に亘って延びる畝部及び溝部を生理用ナプキン1の長手方向に交互に多数配置した畝溝構造が形成されるようにしてもよい。この畝溝構造は、ポケットP、Pが形成される位置又はそれより若干長手方向中央側の位置から、生理用ナプキン1の端部にかけて形成するのが好ましい。前記畝溝構造を形成することにより、ポケットP、Pまで流れた体液が、それ以上長手方向の端部に向けて流れるのが抑制することができる。前記表面シート3には畝溝構造のみを施してもよいし、前記多数の開孔18…を施した上で前記畝溝構造を施すようにしてもよい。
【0083】
(第2形態例)
次に、前記ポケットP、Pの第2形態例について説明する。第2形態例に係るポケットP、Pでは、図16図18に示されるように、ポケットシート20、21が2層以上の積層シート材からなり、少なくとも最上層のシート材22が開口側端部から長手方向に折り返し可能に設けられており、それより下層側のシート材23は長手方向に折り返し不能に設けられる点で、上記第1形態例に係るポケットと相違する。
【0084】
このように、ポケットシート20、21を2層以上の積層シート材で構成し、少なくとも最上層のシート材22のみを開口側端部から長手方向に折り返し可能とし、これより下層側のシート材23は折り返さずにポケットP、Pを形成した状態を維持することによって、前後端部からの漏れ防止と生理用ナプキン1の前後端部のずれをより確実に図ることができるようになる。また、折り返し可能なシート材22は、折り返さない装着形態においても、使用済み生理用ナプキンを廃棄する際の包み込み用シートとして利用することが可能である。
【0085】
長手方向に折り返し可能なシート材22と、折り返し不能なシート材23とは、剥離可能接合部24によって接合されている。前記剥離可能接合部24は、開口側端部の近傍に1箇所又は複数箇所設けられている。この剥離可能接合部24としては、前述の剥離可能接合部13と同様のものを用いることができる。
【0086】
長手方向に折り返し不能に設けられた下層側のシート材23には、図17に示されるように、防水シート25を積層してもよい。これにより、ポケットP、Pに流れ込んだ体液の滲出が防止できるようになる。前記防水シート25を配置した場合には、前記ポケットシート20、21として、撥水性を有するものの他、親水性を有するものを用いてもよい。
【0087】
長手方向に折り返し不能なシート材23は、高吸水性ポリマーやパルプ繊維、エアレイド吸収体など、体液を吸収する機能を有する部材が配設されていてもよい。これにより、ポケットP、Pにおける体液の吸収機能がより向上するようになる。前記防水シート25を配置する場合は、この防水シート25より下層側に、前述の体液吸収機能部材を配置するようにする。
【0088】
前記ポケットシート20,21は、図16及び図17に示されるように、連続する1枚のシート材を長手方向に折り畳むことによって2層以上の積層シート材を構成することができる。具体的に、図17に示される形態例では、長手方向端部側から長手方向中央側に延在するポケットシート21が、長手方向中央側位置の第1折返し部26aで長手方向に折り返されるとともに、長手方向端部側位置の第2折り返し部26bで更に長手方向に折り返されることにより、下層側から順に、第1シート部21a、第2シート部21b、第3シート部21cが形成されている。
【0089】
前記第1シート部21aと第2シート部21bとの間に防水シート25が配設されるとともに、これらの間が剥離不能に接合されている。また、前記第2シート部21bと第3シート部21cとが、剥離可能接合部24によって剥離可能に接合されている。
【0090】
前記第3シート部21cは長手方向に折り返し可能なシート材22を構成しており、前記第1シート21aと第2シート21bとの積層体は長手方向に折り返し不能なシート材23を構成している。
【0091】
前記第3シート部21cは、前記第2折り返し部26bを基端として長手方向に折り返し可能に設けられており、先端部に下着40に貼着可能な前記粘着剤層16が設けられている。
【0092】
このように、連続する1枚のシート材を長手方向に折り畳むことによって構成しているため、複数のシート材を接合する手間が省略でき、製造が容易化できる。
【0093】
前述の長手方向に折り返し可能なシート材22(第3シート部21c)は、複数に折り返すことにより、長さを長くしてもよい。これにより、下着のより広い範囲に固定できるようになるとともに、使用済み生理用ナプキンを廃棄する際、より長く包み込むことができるようになる。
【0094】
図17に示されるように、前記第1折返し部26aの近傍に、生理用ナプキン1の幅方向に沿って、弾性伸縮部材27を配設してもよい。これにより、ポケットP、Pが口開きしやすくなる。
【0095】
本第2形態例の変形例として、図19に示されるように、前記ポケットシート20、21が、長手方向に折り返し可能に成された上層側のシート材28と、長手方向に折り返し不能に成された下層側のシート材29とを剥離不能な接合部30によって接合することにより、2層以上の積層シート材を構成するようにしてもよい。前記接合部30は、生理用ナプキン1の後端部に、生理用ナプキン1の幅方向に沿って設けられている。
【0096】
これによって、2層以上の積層シート材が2つに分割されるため、1枚当たりのシート材の長さが短くでき、製造上の取扱いが容易になる。
【符号の説明】
【0097】
1…生理用ナプキン、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…中高部、7…サイドシート、9…糸状弾性伸縮部材、10・111…ポケットシート、12…端縁、13…剥離可能接合部、14…剥離不能接合部、15…端縁折り返し部、16…粘着剤層、17…凹部、18…開孔、20・21…ポケットシート、22…折り返し可能なシート材、23…折り返し不能なシート材、24…剥離可能接合部、25…防水シート、27…弾性伸縮部材、28…上層側のシート材、29…下層側のシート材、30…接合部、40…下着、P、P…ポケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19