(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
A47C 7/02 20060101AFI20221215BHJP
B60N 2/005 20060101ALI20221215BHJP
B60N 2/015 20060101ALI20221215BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20221215BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A47C7/02 A
B60N2/005
B60N2/015
B60N2/90
B60N2/68
(21)【出願番号】P 2019045925
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2021-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 秀和
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-086935(JP,A)
【文献】特開2001-017263(JP,A)
【文献】登録実用新案第3062267(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/02
B60N 2/005
B60N 2/015
B60N 2/90
B60N 2/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物のフロアに固定されるスライドレールと、
前記スライドレールに固定可能なシートマウントブラケットと、
前記スライドレールと前記シートマウントブラケットの間に介装されるスペーサ
と、を備える乗り物用シートであって、
前記スペーサは、
前記スライドレールに接する第1壁部と、
前記第1壁部に対向し且つ前記第1壁部と平行に延びており、前記シートマウントブラケットに接する第2壁部と、
を備え、
前記第1壁部及び前記第2壁部の延在方向に垂直な断面において
、閉断面形状に形成されて
おり、
前記第1壁部と前記第2壁部とを互いに接続しており、前記第1壁部及び前記第2壁部とともに前記閉断面形状を形成している第3壁部及び第4壁部と、
前記第3壁部と前記第4壁部との間で、前記第1壁部と前記第2壁部とに架け渡され、且つ、前記第3壁部と前記第4壁部との対向方向に間隔をあけて配置されたた一対の補強壁部と、
前記一対の補強壁部の間を通って前記第1壁部及び前記第2壁部をそれぞれ貫通する複数のボルト孔と、を更に備え、
前記ボルト孔に挿通されたボルトが前記一対の補強壁部に当接している、乗り物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗り物用シートであって、
前記スペーサは、アルミニウム合金製の押し出し成型材からなる乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物のフロアに固定されるスライドレールと、スライドレールに固定可能なシートマウントブラケットとの間に介装されるスペーサ及びそのスペーサを備える乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に設置されるシートにおいて、車両のフロアからのシートクッションの座面の高さ位置(以下、座面位置ともいう。)は、例えばシートに着座した乗員の視野の確保、乗員の快適性の向上等の観点に基づいて設定されており、通常、車種毎に異なる。一方、例えばシートの製造コストの低減等を目的として、シートの骨格となるフレームが、異なる車種の間で共通に用いられる場合がある。この場合に、必要に応じてシートライザが用いられ、座面位置が車種に応じて適切に調整される。
【0003】
シートライザは、例えばフロアに固定されるスライドレールと、シートのマウントブラケットとの間に介装され、両者にボルト止めされる。シートライザは、一般に鋼板からなり、スライドレール及びマウントブラケットにボルト止めされるフランジがプレス加工によって形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鋼板をプレス加工してなるシートライザでは、必要な強度を得るために比較的厚い鋼板が用いられるが、シートの重量の増加が懸念される。また、鋼板をプレス加工してなるシートライザでは、プレス加工のための金型が必要であり、シートライザが新設される度に金型も新設される。このため、汎用性に欠け、製造コストの増加も懸念される。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、シートの軽量化及び製造コストの低減を図ることが可能なスペーサ及び乗り物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のスペーサは、乗り物のフロアに固定されるスライドレールと、前記スライドレールに固定可能なシートマウントブラケットと、の間に介装されるスペーサであって、前記スライドレールに接する第1壁部と、前記第1壁部に対向し且つ前記第1壁部と平行に延びており、前記シートマウントブラケットに接する第2壁部と、を備え、前記第1壁部及び前記第2壁部の延在方向に垂直な断面において、一定の閉断面形状に形成されている。
【0008】
また、本発明の一態様の乗り物用シートは、乗り物のフロアに固定されるスライドレールと、前記スライドレールに固定可能なシートマウントブラケットと、前記スライドレールと前記シートマウントブラケットの間に介装されるスペーサと、を備える乗り物用シートであって、前記スペーサは、前記スライドレールに接する第1壁部と、前記第1壁部に対向し且つ前記第1壁部と平行に延びており、前記シートマウントブラケットに接する第2壁部と、を備え、前記第1壁部及び前記第2壁部の延在方向に垂直な断面において、閉断面形状に形成されており、前記第1壁部と前記第2壁部とを互いに接続しており、前記第1壁部及び前記第2壁部とともに前記閉断面形状を形成している第3壁部及び第4壁部と、前記第3壁部と前記第4壁部との間で、前記第1壁部と前記第2壁部とに架け渡され、且つ、前記第3壁部と前記第4壁部との対向方向に間隔をあけて配置されたた一対の補強壁部と、前記一対の補強壁部の間を通って前記第1壁部及び前記第2壁部をそれぞれ貫通する複数のボルト孔と、を更に備え、前記ボルト孔に挿通されたボルトが前記一対の補強壁部に当接している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シートの軽量化及び製造コストの低減を図ることが可能なスペーサ及び乗り物用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態を説明するための、乗り物用シートの一例を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態を説明するための、スペーサの一例の斜視図である。
【
図4】
図2のスペーサを用いてシートマウントブラケットがスライドレールに固定された状態の断面図である。
【
図5】本発明の実施形態を説明するための、スペーサの一例の斜視図である。
【
図7】
図5のスペーサを用いてシートマウントブラケットがスライドレールに固定された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態を説明するための、乗り物用シートの一例を示す。
【0012】
図1に示す乗り物用シート1は、例えば自動車等の車両に設置されるシートである。シート1は、シート1に着座した乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション2と、乗員の腰部及び背部を支持するシートバック3とを備える。
【0013】
シートクッション2は、シートクッション2の骨格をなす金属製のクッションフレームを有する。クッションフレームは、シート幅方向に間隔をあけて配置される一対のクッションサイドフレーム21を含む。クッションフレームは、ウレタンフォームなどの比較的軟質な樹脂発泡材からなるクッションパッドによって被覆され、クッションパッドは、皮革(天然皮革、合成皮革)、織物、編物等の表皮材からなるトリムカバーによって被覆される。
【0014】
シートバック3は、シートバック3の骨格をなす金属製のバックフレームを有する。バックフレームは、シート幅方向に間隔をあけて配置される一対のバックサイドフレーム31を含む。バックフレームはクッションパッドによって被覆され、クッションパッドはトリムカバーによって被覆される。
【0015】
シート1は、シート1を前後方向に移動可能に支持する一対のスライドレール4と、シート1を昇降可能に支持するリフター機構5と、一対のスペーサ6とをさらに備える。
【0016】
一対のスライドレール4は、シートクッション2の下側において、一対のクッションサイドフレーム21と同様にシート幅方向に間隔をあけて配置されており、シート前後方向に延びている。スライドレール4は、車両のフロアに固定されるロアレール41と、ロアレール41によってシート前後方向に移動可能に支持されているアッパーレール42とを有する。
【0017】
リフター機構5は、一対のフロントリンク51と、一対のリアリンク52とを有する。一対のフロントリンク51は、一対のクッションサイドフレーム21と同様にシート幅方向に間隔をあけて配置されており、一対のリアリンク52もまた、シート幅方向に間隔をあけて配置されている。フロントリンク51の一方の端部はクッションサイドフレーム21の前側端部に回動可能に連結されており、フロントリンク51の他方の端部には、マウントブラケット53が回動可能に連結されている。マウントブラケット53は、アッパーレール42の前側端部に固定可能である。リアリンク52の一方の端部は、クッションサイドフレーム21の後側端部に回動可能に連結されており、リアリンク52の他方の端部には、マウントブラケット54が回動可能に連結されている。マウントブラケット54は、アッパーレール42の後側端部に固定可能である。
【0018】
スペーサ6は、スライドレール4毎に設けられており、スライドレール4のアッパーレール42と、リフター機構5のマウントブラケット53,54との間に介装されている。マウントブラケット53,54は、スペーサ6を介してアッパーレール42に固定されている。
【0019】
スペーサ6が省略される場合と比較して、シートクッション2の座面位置はスペーサ6の高さだけかさ上げされている。また、シートクッション2の座面位置は、リフター機構5によって上下方向に微調整され得る。例えばリアリンク52が駆動されることによってリフター機構5が動作され、このリフター機構5の動作に応じてシートクッション2が昇降される。
【0020】
【0021】
図2から
図4に示すスペーサ6は、底壁部(第1壁部)61と、上壁部(第2壁部)62と、一対の側壁部(第3壁部及び第4壁部)63とを有する。上壁部62は、間隔をあけて底壁部61に対向しており、且つ底壁部61と平行に延びている。側壁部63は、底壁部61及び上壁部62それぞれの側部同士を連結している。底壁部61及び上壁部62並びに一対の側壁部63は、それらの延在方向に垂直な断面において、矩形状の一定の閉断面を形成している。
【0022】
図1に示したように、スペーサ6がスライドレール4のアッパーレール42と、マウントブラケット53,54との間に介装された状態で、底壁部61はアッパーレール42に接し、上壁部62はマウントブラケット53,54に接する。そして、底壁部61及び上壁部62には、底壁部61及び上壁部62を一続きに貫通するボルト孔Hが複数形成されている。
図4に示すように、マウントブラケット53,54は、ボルト孔Hに挿通されたボルトB及びナットNによってアッパーレール42に締結される。
【0023】
スペーサ6は、閉断面形状の内側に設けられた補強壁部64をさらに有する。補強壁部64は、底壁部61と上壁部62との間で一対の側壁部63に架け渡されている。ボルト孔Hは、底壁部61及び上壁部62並びに補強壁部64を一続きに貫通して形成されている。
【0024】
図2から
図4に示したスペーサ6は、閉断面形状に形成されており、鋼板をプレス成形してなる従来のシートライザに比べて構造的な強度に優れる。したがって、スペーサ6の各壁部61,62,63,64を薄くでき、また、スペーサ6の材料として、アルミニウム合金等の鋼よりも軽量な材料を用いることができる。これにより、シート1の軽量化を図ることができる。さらに、スペーサ6は、長手方向に垂直な断面において一定の閉断面形状に形成されており、スペーサ6として、例えばアルミニウム合金製の押し出し成型材からなるフレーム材等の汎用品を用いることができる。これにより、シート1の製造コストを低減できる。
【0025】
また、スペーサ6は、底壁部61と上壁部62との間で一対の側壁部63に架け渡された補強壁部64を有しており、このように一つ以上の補強壁部が閉断面形状の内側に設けられることにより、スペーサ6の強度がさらに高まる。
【0026】
【0027】
図5から
図7に示すスペーサ6は、底壁部61と上壁部62との間で一対の側壁部63に架け渡される補強壁部64に替えて、一対の補強壁部65を有する。一対の補強壁部65は、一対の側壁部63の間で底壁部61と上壁部62とに架け渡されており、互いに間隔をあけて底壁部61及び上壁部62並びに一対の側壁部63と平行に延びている。ボルトBは、一対の補強壁部65の間を通ってボルト孔Hに挿通される。
【0028】
図5から
図7に示したスペーサ6もまた、閉断面形状に形成されており、鋼板をプレス成形してなる従来のシートライザに比べて構造的な強度に優れる。したがって、スペーサ6の各壁部61,62,63,65を薄くでき、また、スペーサ6の材料として、アルミニウム合金等の鋼よりも軽量な材料を用いることができる。これにより、シート1の軽量化を図ることができる。さらに、スペーサ6は、長手方向に垂直な断面において一定の閉断面形状に形成されており、スペーサ6として、例えばアルミニウム合金製の押し出し成型材からなるフレーム材等の汎用品を用いることができる。これにより、シート1の製造コストを低減できる。
【0029】
また、スペーサ6は、一対の側壁部63の間で底壁部61と上壁部62とに架け渡された補強壁部65を有しており、このように一つ以上の補強壁部が閉断面形状の内側に設けられることにより、スペーサ6の強度がさらに高まる。好ましくは、一対の補強壁部65が互いに間隔をあけて設けられ、ボルトBが一対の補強壁部65の間を通ってボルト孔Hに挿通される。これにより、ボルトBをボルト孔Hに円滑に挿通できる。また、ボルトBと一対の補強壁部65との当接により、一対の側壁部63の対向方向に生じるせん断変形に対する強度をさらに高められる。
【0030】
ここまで、一対の側壁部63が平坦であり、スペーサ6の閉断面形状が矩形状であるものとして説明したが、スペーサ6の強度が保たれる限りにおいて側壁部63は平坦に限定されず、例えば湾曲していてもよい。また、シート1の構成は、自動車等の車両に設置されるシートに限定されず、船舶や航空機といった車両以外の乗り物用シートにも適用可能である。
【0031】
以上、説明したとおり、本明細書に開示されたスペーサは、乗り物のフロアに固定されるスライドレールと、前記スライドレールに固定可能なシートマウントブラケットと、の間に介装されるスペーサであって、前記スライドレールに接する第1壁部と、前記第1壁部に対向し且つ前記第1壁部と平行に延びており、前記シートマウントブラケットに接する第2壁部と、を備え、前記第1壁部及び前記第2壁部の延在方向に垂直な断面において、一定の閉断面形状に形成されている。
【0032】
また、本明細書に開示されたスペーサは、前記第1壁部と前記第2壁部とを互いに接続しており、前記第1壁部及び前記第2壁部とともに前記閉断面形状を形成している第3壁部及び第4壁部と、前記第1壁部と前記第2壁部との間で、前記第3壁部と前記第4壁部とに架け渡された一つ以上の補強壁部と、を備える。
【0033】
また、本明細書に開示されたスペーサは、前記第1壁部と前記第2壁部とを互いに接続しており、前記第1壁部及び前記第2壁部とともに前記閉断面形状を形成している第3壁部及び第4壁部と、前記第3壁部と前記第4壁部との間で、前記第1壁部と前記第2壁部とに架け渡された一つ以上の補強壁部と、をさらに備える。
【0034】
また、本明細書に開示されたスペーサは、前記第3壁部と前記第4壁部との対向方向に間隔をあけて配置された一対の前記補強壁部を備え、前記一対の補強壁部の間を通って前記第1壁部及び前記第2壁部をそれぞれ貫通する複数のボルト孔を有する。
【0035】
また、本明細書に開示されたスペーサは、アルミニウム合金製の押し出し成型材からなる。
【0036】
また、本明細書に開示された乗り物用シートは、前記スライドレールと、前記シートマウントブラケットと、前記スライドレールと前記シートマウントブラケットとの間に介装された、前記スペーサと、を備える。
【符号の説明】
【0037】
1 ノリ物用シート
2 シートクッション
3 シートバック
4 スライドレール
5 リフター機構
6 スペーサ
21 クッションサイドフレーム
31 バックサイドフレーム
41 ロアレール
42 アッパーレール
51 フロントリンク
52 リアリンク
53 ブラケット
54 ブラケット
61 底壁部(第1壁部)
62 上壁部(第2壁部)
63 側壁部(第3壁部及び第4壁部)
64 補強壁部
65 補強壁部
B ボルト
H ボルト孔
N ナット