(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-14
(45)【発行日】2022-12-22
(54)【発明の名称】攪拌装置及びこれを利用した機械攪拌工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2019053216
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新町 修一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 元二
(72)【発明者】
【氏名】木下 尊義
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-066738(JP,A)
【文献】特開2005-054375(JP,A)
【文献】特開2003-184067(JP,A)
【文献】特開2002-004320(JP,A)
【文献】実開昭56-176239(JP,U)
【文献】特開平08-134888(JP,A)
【文献】特開平10-227028(JP,A)
【文献】特開平09-100549(JP,A)
【文献】特開2000-017654(JP,A)
【文献】特開2004-176266(JP,A)
【文献】特開2015-137485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重機の作業機に取り付けられ、改良材及び/又はエアを供給しながら地盤を攪拌する攪拌装置であって、
ロッド部と、
前記重機から供給される動力を利用して回転しながら、外周に設けられた複数の切削刃によって地盤を攪拌し、その回転軸が前記ロッド部の延在方向と直交或いは略直交するように前記ロッド部の先端に取り付けられた一対の攪拌翼と、
前記重機の前方において前記ロッド部の先端が下方を向きつつ、前記一対の攪拌翼が前記重機の側方向の左側及び右側に位置するように、前記ロッド部を前記作業機に取り付けるための取付部と、を含み、
前記重機から供給される動力を利用して、前記ロッド部の中途部分から先端までを、前記ロッド部の延在方向に対して前記重機側へ屈折させるための屈折機構を備え
、
前記重機から供給される動力を利用して、前記ロッド部の非屈折状態での延在方向と平行な軸を回転軸として、前記ロッド部を左回り及び右回りの夫々で少なくとも最大で90°軸回転させるための軸回転機構を備え、
前記重機から供給される動力を利用して、前記一対の攪拌翼を回転させるための回転駆動部が、前記ロッド部の先端に攪拌翼毎に別個で設けられ、各々の前記回転駆動部に、前記攪拌翼の回転方向、回転数及び回転トルクを制御可能な回転制御機構が具備され、
前記軸回転機構により前記ロッド部が軸回転される際に、該軸回転を補助する方向に前記一対の攪拌翼を回転させるように、前記回転制御機構の各々を制御する回転補助制御部を含むことを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記一対の攪拌翼の近傍に前記改良材及び/又は前記エアを供給するための配管が、前記ロッド部の少なくとも一部に沿って該ロッド部の外側に着脱可能に、かつ、前記配管の吐出口の位置が調整可能に、1本又は2本取り付けられることを特徴とする請求項
1記載の攪拌装置。
【請求項3】
外周に螺旋状にガイド板が設けられた直管状をなし、前記重機から供給される動力を利用して軸回転可能なスパイラル管が、その先端を前記一対の攪拌翼の上方近傍に向ける態様で、前記ロッド部の少なくとも一部に沿って取り付けられることを特徴とする請求項1
又は2記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記一対の攪拌翼は、各々の回転軸と前記ロッド部の延在方向との間で成される角度が、前記ロッド部の先端側へ向けて90°よりも小さくなるように僅かに傾斜した状態で、前記ロッド部を挟んで互いに反対向きに取り付けられ、又、前記複数の切削刃として、前記ロッド部の先端の側方向中心の直下を掘削及び攪拌するための、着脱可能な先端切削刃を含むことを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項記載の攪拌装置。
【請求項5】
前記一対の攪拌翼が回転したときに、各攪拌翼において該攪拌翼の回転軸と平行な方向について異なる位置で回転する、2つ以上の前記切削刃の間へ向かって突出するように、前記ロッド部に対して着脱可能に取り付けられる、複数の突出部を含むことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項記載の攪拌装置。
【請求項6】
前記重機が油圧ショベルであることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項記載の攪拌装置。
【請求項7】
前記重機がリーダ付油圧式大口径削孔機であることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項記載の攪拌装置。
【請求項8】
重機の作業機に取り付けられ、改良材及び/又はエアを供給しながら地盤を攪拌する攪拌装置を利用して、地盤を改良する機械攪拌工法であって、
前記攪拌装置は、ロッド部と、前記重機から供給される動力を利用して回転しながら、外周に設けられた複数の切削刃によって地盤を攪拌し、その回転軸が前記ロッド部の延在方向と直交或いは略直交するように前記ロッド部の先端に取り付けられた一対の攪拌翼と、前記重機から供給される動力を利用して、前記ロッド部の中途部分から先端までを屈折させる屈折機構と、を含み、
前記重機の前方において前記ロッド部の先端が下方を向きつつ、前記一対の攪拌翼が前記重機の側方向の左側及び右側に位置するように、前記攪拌装置を前記作業機へ取り付け、
地盤中に支障物がある場合に、前記屈折機構により、前記ロッド部の中途部分から先端までを、前記ロッド部の延在方向に対して前記重機側へ屈折させた状態で、前記支障物を避けながら地盤を攪拌
し、
前記攪拌装置は、前記重機から供給される動力を利用して、前記ロッド部の非屈折状態での延在方向と平行な軸を回転軸として、前記ロッド部を左回り及び右回りの夫々で少なくとも最大で90°軸回転させるための軸回転機構を含み、
少なくとも、施工範囲の、前記重機の側方向に位置する端部を施工する際に、前記軸回転機構によって前記ロッド部を軸回転させた状態で地盤を攪拌し、
前記攪拌装置は、前記重機から供給される動力を利用して、前記一対の攪拌翼を回転させるための回転駆動部を、前記ロッド部の先端に攪拌翼毎に別個で備えると共に、前記回転駆動部の各々に、前記攪拌翼の回転方向、回転数及び回転トルクを制御可能な回転制御機構を具備するものであり、
前記軸回転機構により前記ロッド部を軸回転させる際に、該軸回転を補助する方向に前記一対の攪拌翼を回転させるように、前記回転制御機構の各々を制御することを特徴とする機械攪拌工法。
【請求項9】
前記屈折機構により前記ロッド部を屈折させた状態又は屈折させない状態で、前記軸回転機構により前記ロッド部を左回り及び右回りに交互に軸回転させて揺動させながら、かつ、前記回転制御機構により前記一対の攪拌翼の各々の回転方向及び回転数を変化させながら、地盤を攪拌することを特徴とする請求項
8記載の機械攪拌工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重機の作業機に取り付けられ、改良材及び/又はエアを供給しながら地盤を攪拌する攪拌装置と、これを利用した機械攪拌工法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な建築物を構築するにあたり、現地の地盤が軟弱な場合には地盤改良が行なわれる。地盤改良には種々の工法が存在し、その中の1つである機械攪拌工法は、回転する攪拌翼により地盤形成土と改良材とを混合攪拌し、地中に改良体を造成する工法である。そのような攪拌翼を備えた攪拌装置は、通常、重機に装着して使用され、又、施工の効率化等を目的として、様々な工夫が為されている(例えば特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-277955号公報
【文献】特許第5203167号公報
【文献】特許第4038525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来の攪拌装置を用いた機械攪拌工法では、例えば、地盤内に支障物が存在している場合には、支障物を避けて攪拌を行うために、その都度重機を移動させる必要があった。又、改良体の端部を平面的に形成するためには、その平面に対して略直交する向きに重機を配置する必要があり、この場合にも重機の移動を余儀なくされていた。このような施工中の重機の移動は、作業効率を悪化させる要因となっている。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、機械攪拌工法における重機の移動頻度を抑制し、作業効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)重機の作業機に取り付けられ、改良材及び/又はエアを供給しながら地盤を攪拌する攪拌装置であって、ロッド部と、前記重機から供給される動力を利用して回転しながら、外周に設けられた複数の切削刃によって地盤を攪拌し、その回転軸が前記ロッド部の延在方向と直交或いは略直交するように前記ロッド部の先端に取り付けられた一対の攪拌翼と、前記重機の前方において前記ロッド部の先端が下方を向きつつ、前記一対の攪拌翼が前記重機の側方向の左側及び右側に位置するように、前記ロッド部を前記作業機に取り付けるための取付部と、を含み、前記重機から供給される動力を利用して、前記ロッド部の中途部分から先端までを、前記ロッド部の延在方向に対して前記重機側へ屈折させるための屈折機構を備える攪拌装置。
【0007】
本項に記載の攪拌装置は、ロッド部と、このロッド部の先端に取り付けられた一対の攪拌翼と、ロッド部を作業機に取り付けるための取付部とを含んでいる。一対の攪拌翼の各々は、重機から供給される動力によって回転するものであり、回転しながら外周に設けられた複数の切削刃によって地盤を攪拌する。又、一対の攪拌翼は、夫々の回転軸がロッド部の延在方向と直交或いは略直交するように、ロッド部の先端に取り付けられる。これにより、ロッド部の先端が向く方向に、攪拌翼の外周に沿って回転移動する複数の切削刃が向けられることになる。更に、ロッド部は、重機の前方においてロッド部の先端が下方を向き、かつ、一対の攪拌翼が重機の側方向の左側及び右側に位置するように、取付部によって作業機に対して取り付けられる。このため、攪拌翼の複数の切削刃は、主に下方へ向けて使用され、このような一対の攪拌翼によって地盤が掘削されながら、地盤形成土と改良材及び/又はエアとが混合攪拌される。
【0008】
更に、本項に記載の攪拌装置は、屈折機構を備えており、この屈折機構は、重機から供給される動力を利用して、ロッド部の中途部分から先端までを、ロッド部の延在方向に対して重機側へ屈折させるものである。これにより、ロッド部の先端が、ロッド部の延在方向だけでなく、ロッド部が屈折した重機側の方向にも向けられるため、重機の移動を伴わずして、掘削や攪拌の方向が切り替えられることになる。特に、地盤中に配管等の支障物が存在する場合でも、重機を移動させることなく、屈折したロッド部によって支障物を避けながら、支障物の下方等が攪拌されるものである。このため、施工中の重機の移動頻度を抑制され、作業効率が向上されることとなる。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記重機から供給される動力を利用して、前記ロッド部の非屈折状態での延在方向と平行な軸を回転軸として、前記ロッド部を左回り及び右回りの夫々で少なくとも最大で90°軸回転させるための軸回転機構を備える攪拌装置。
本項に記載の攪拌装置は、更に軸回転機構を備えるものであり、この軸回転機構は、重機から供給される動力を利用して、ロッド部の非屈折状態での延在方向と平行な軸を回転軸として、ロッド部を軸回転させるものである。この軸回転機構によるロッド部の軸回転は、左回り及び右回りの夫々で少なくとも最大で90°、すなわち、作業機の正面方向を基準とした少なくとも180°の範囲内で回転される。
【0010】
ここで、攪拌装置を用いて地盤を改良する際に、その施工範囲(改良体)の端部を平面的に形成するためには、攪拌翼の取り付け方向を考慮すると、通常、改良体の平面に対して略直交する向きに重機を配置する必要がある。しかしながら、本項に記載の攪拌装置は、上述したように、軸回転機構によりロッド部が軸回転されるため、施工範囲の、重機の正面方向やその反対の手前方向に位置する平面的な端部のみではなく、重機の側方向に位置する平面的な端部の施工にも対応するものとなる。これにより、重機を移動させることなく、施工範囲の様々な方向に位置する平面的な端部を施工するものとなるため、これによっても重機の移動頻度が抑制され、作業効率がより向上されることになる。更に、施工範囲の平面的な端部を施工するタイミング以外でも、例えば、施工の仕上げ等のタイミングで地盤を攪拌する際に、軸回転機構によりロッド部を左回りと右回りとに交互に軸回転させて揺動させてもよい。このようにすることで、ロッド部を揺動させない場合と比較して、同じ軌道でロッド部の先端を移動させたときに攪拌される範囲が広がるため、施工効率が向上されるものである。
【0011】
(3)上記(2)項において、前記重機から供給される動力を利用して、前記一対の攪拌翼を回転させるための回転駆動部が、前記ロッド部の先端に攪拌翼毎に別個で設けられ、各々の前記回転駆動部に、前記攪拌翼の回転方向、回転数及び回転トルクを制御可能な回転制御機構が具備され、前記軸回転機構により前記ロッド部が軸回転される際に、該軸回転を補助する方向に前記一対の攪拌翼を回転させるように、前記回転制御機構の各々を制御する回転補助制御部を含む攪拌装置(請求項1)。
【0012】
本項に記載の攪拌装置は、重機から供給される動力によって一対の攪拌翼を回転させるための回転駆動部を、ロッド部の先端に攪拌翼毎に別個で具備し、更に、各々の回転駆動部に、攪拌翼の回転方向、回転数及び回転トルクを制御可能な回転制御機構を備えたものである。これにより、例えば、一対の攪拌翼を同方向に回転させた場合は、回転に抵抗する力によって意図しない方向に攪拌翼が進み、随処に攪拌不足が生じてしまうことがあるが、一対の攪拌翼を互いに反対方向に回転させることで、攪拌翼の回転に抵抗する力が相殺され、攪拌翼の進む方向が安定するため、攪拌不足の発生が抑制されるものとなる。更に、攪拌翼が意図しない方向に進んだ場合でも、それまでとは反対方向に攪拌翼を回転させることによって方向修正が容易になるため、施工時間のロスが低減されるものである。又、回転トルク等の制御によって、地盤への押込み力に対する先端荷重の制御が行われることになるため、孔曲がりやそれによる攪拌不足の発生が抑制されるものとなる。
【0013】
加えて、本項に記載の攪拌装置は、軸回転機構によりロッド部が軸回転される際に、この軸回転を補助する方向に一対の攪拌翼を回転させるように、回転制御機構の各々を制御する回転補助制御部を含むものである。ここで、回転補助制御部による制御を受けた一対の攪拌翼の回転方向は、通常、攪拌翼同士で反対方向になる。これにより、特に、上記(2)項に記載したようにロッド部が揺動されるようにして軸回転される場合に、その軸回転の方向に合わせて一対の攪拌翼の回転方向が切り替えられることで、ロッド部の軸回転や軸回転方向の切り替えがスムーズに行われるようになり、作業効率が向上するものである。
【0014】
(4)上記(3)項において、前記一対の攪拌翼の近傍に前記改良材及び/又は前記エアを供給するための配管が、前記ロッド部の少なくとも一部に沿って該ロッド部の外側に着脱可能に、かつ、前記配管の吐出口の位置が調整可能に、1本又は2本取り付けられる攪拌装置(請求項2)。
本項に記載の攪拌装置は、地盤改良用の改良材及び/又はエア(空気)を一対の攪拌翼の近傍に供給するための配管が、ロッド部の少なくとも一部に沿ってロッド部の外側に着脱可能に、1本或いは2本取り付けられるものである。このとき、各配管は、改良材のみを供給するものであってもよく、エアのみを供給するものであってもよく、改良材とエアとを同時に供給するものであってもよい。そして、配管が2本取り付けられる場合は、上記のような3通りの供給パターンから、任意の2つの供給パターンを選択してよく、それには同じ供給パターンの組み合わせも含まれる。又、各配管の供給パターンを、使用途中で変更してもよい。
【0015】
ここで、従来の攪拌装置は、ロッド部の内部に改良材供給用の配管が設置されたものが多く、配管の付け替え等に対応していなかったため、予め設置された配管が対応し得る改良材のみしか供給できなかった。特に、従来の配管は鋼材で作られていたため、スラリーや粉体専用として用いられ、腐食性材料の供給が困難であった。これに対し、本項に記載の攪拌装置は、改良材及び/又はエア供給用の配管が、ロッド部の外側に着脱可能に取り付けられるため、必要に応じて配管の付け替えが行われる。これにより、適切な材質や配管径を有する配管が予め選択されたり、そのような配管へと施工現場において付け替えられたりされるため、スラリー、粉体、腐食性材料等といった多様な種類の改良材が供給されるものとなり、更に、作業効率の向上も期待されるものである。
【0016】
加えて、本項に記載の攪拌装置は、配管が取り付けられる際に、改良材及び/又はエアが吐出される吐出口の位置が調整可能なものである。すなわち、吐出口の位置は、一対の攪拌翼の近傍に改良材及び/又はエアを供給するような任意の位置に調整され、例えば、ロッド部の延在方向と平行な方向に関して、一対の攪拌翼よりも取付部側の位置や、一対の攪拌翼よりもロッド部の先端側の位置等に調整される。このような吐出口の位置調整は、配管の長さ調整や配管を延ばす方向の調整等により実現すればよい。これにより、地盤の質等の状況に応じた適切な位置に、改良材やエアが吐出されることとなる。更に、改良材とエアとの双方を供給可能な構成である場合は、改良材に加え必要に応じてエアが供給されるようになるため、地盤形成土と改良材のみではなく、更にそこにエアが混合攪拌される。これにより、エアが攪拌されない場合と比較して、造成される改良体の重量が軽くなると共に内圧が小さくなるため、攪拌効率が向上され、又、排泥が円滑に行われるものである。なお、エアのみを供給可能な構成は、例えば、攪拌装置を引き抜く際や回転させる際に、配管から何も供給しないと真空状態になる虞があるため、これを回避するために配管からエアを供給する際等に使用される。
【0017】
(5)上記(3)(4)項において、外周に螺旋状にガイド板が設けられた直管状をなし、前記重機から供給される動力を利用して軸回転可能なスパイラル管が、その先端を前記一対の攪拌翼の上方近傍に向ける態様で、前記ロッド部の少なくとも一部に沿って取り付けられる攪拌装置(請求項3)。
本項に記載の攪拌装置は、更にスパイラル管を含み、このスパイラル管は、外周に螺旋状のガイド板を有する直管状をなしており、重機から供給される動力を利用して軸回転可能なものである。このようなスパイラル管が、その先端を一対の攪拌翼の上方近傍に向けるようにして、ロッド部の少なくとも一部に沿って取り付けられる。
【0018】
ここで、セメントスラリー等の改良材を供給しながら地盤内で混合攪拌を行う際、供給された改良材の体積分の一部に相当する混合物(地盤形成土と改良材との混合物)等は、地表へと排出されるが、残りの体積分の影響による圧力が、側方へ地盤を押し込むことによって、近接構造物等を変位させる虞があった。そこで、本項に記載の攪拌装置は、改良材を供給しながら地盤を混合攪拌する間に、上記のような構造のスパイラル管を、ガイド板がロッド部の先端と反対側(地表側)に向かって回転する方向に軸回転させる。これにより、改良材の供給によって増大した内圧が、攪拌翼の上方近傍から地表へ向けてスムーズに排出されるため、近接構造物等の側方変位が抑止されるものとなる。
【0019】
(6)上記(3)から(5)項において、前記一対の攪拌翼は、各々の回転軸と前記ロッド部の延在方向との間で成される角度が、前記ロッド部の先端側へ向けて90°よりも小さくなるように僅かに傾斜した状態で、前記ロッド部を挟んで互いに反対向きに取り付けられ、又、前記複数の切削刃として、前記ロッド部の先端の側方向中心の直下を掘削及び攪拌するための、着脱可能な先端切削刃を含む攪拌装置(請求項4)。
本項に記載の攪拌装置は、一対の攪拌翼が、ロッド部の先端に互いに反対向きに取り付けられ、このとき、攪拌翼の各々の回転軸とロッド部の延在方向との間で成される角度が、ロッド部の先端側へ向けて90°よりも小さくなるように、僅かに傾斜した状態で取り付けられる。換言すれば、攪拌翼の各々は、回転軸と平行な方向に関して、ロッド部に取り付けられた側の端部よりもその反対側の端部が、ロッド部の先端寄りに位置するように、僅かに傾斜して取り付けられる。
【0020】
更に、本項に記載の攪拌装置は、一対の攪拌翼の各々が、複数の切削刃として、ロッド部の先端の側方向中心の直下を掘削及び攪拌するための、着脱可能な先端切削刃を含んでいる。すなわち、攪拌翼が傾斜して取り付けられていない場合は、ロッド部先端の側方向中心の直下を掘削するように一部の切削刃を取り付けると、攪拌翼が回転したときにその切削刃がロッド部に干渉してしまうため、実質的に利用できなかった。そこで、上述したように攪拌翼が傾斜して取り付けられた上で、上記のような先端切削刃を含むことで、先端切削刃がロッド部に干渉することなく、従来は届かなかったロッド部先端の側方向中心の直下が、先端切削刃により掘削及び攪拌されるようになる。これにより、特に施工対象が硬質地盤である場合に、ロッド部先端の直下が効率よく掘削及び攪拌され、攪拌不足の発生が抑制されるものである。
【0021】
(7)上記(3)から(6)項において、前記一対の攪拌翼が回転したときに、各攪拌翼において該攪拌翼の回転軸と平行な方向について異なる位置で回転する、2つ以上の前記切削刃の間へ向かって突出するように、前記ロッド部に対して着脱可能に取り付けられる、複数の突出部を含む攪拌装置(請求項5)。
本項に記載の攪拌装置は、更に複数の突出部を含み、これら複数の突出部は、一対の攪拌翼が回転したときに、攪拌翼の各々においてその攪拌翼の回転軸と平行な方向について異なる位置で回転する、2つ以上の切削刃の間へ向かって突出するように、ロッド部に対して着脱可能に取り付けられるものである。すなわち、突出部の各々は、回転する攪拌翼から相対的に視たときに、切削刃の間を通って攪拌翼の周りを回転する状態になる。これにより、特に粘土質の地盤を攪拌する場合に、切削刃の間に地盤形成土が付着することが防止されるものとなる。更に、切削刃と突出部との相乗作用により、地盤の攪拌効率が向上されるものである。
【0022】
(8)上記(1)から(7)項において、前記重機から供給される動力を利用して、前記ロッド部の、前記取付部による取り付け位置から先端までの長さを伸張させるための伸張機構を有する攪拌装置。
本項に記載の攪拌装置は、更に伸張機構を含み、この伸張機構は、重機から供給される動力を利用して、ロッド部の、取付部による取り付け位置から先端までの長さを伸張させるものである。このため、ロッド部を伸張させない状態で地盤を掘削及び攪拌した後に、伸張機構によってロッド部を伸張させた状態で再び地盤を掘削及び攪拌することにより、重機の移動や延長ロッドの装着等を行うことなく、施工範囲が拡大されるものである。
【0023】
(9)上記(3)から(8)項において、前記重機が油圧ショベルである攪拌装置(請求項6)。
本項に記載の攪拌装置は、取り付け先の重機が油圧ショベルであることで、主に浅層の地盤を対象とした施工で多く用いられるようになり、又、油圧ショベルは小回りが利くため、様々な条件の現場での施工に対応するものとなる。
【0024】
(10)上記(3)から(8)項において、前記重機がリーダ付油圧式大口径削孔機である攪拌装置(請求項7)。
本項に記載の攪拌装置は、取り付け先の重機がリーダ付油圧式大口径削孔機であることで、改良対象地盤の深度に応じたロッド長の選択や延長ロッドの着脱を行うことなく、最大深度に対応した長さのロッド部を使用して、様々な深度での施工に対応するものとなる。更に、リーダ付油圧式大口径削孔機のリーダが攪拌装置のガイドとして作用し、鉛直方向の施工精度の向上が期待されるものである。
【0025】
(11)重機の作業機に取り付けられ、改良材及び/又はエアを供給しながら地盤を攪拌する攪拌装置を利用して、地盤を改良する機械攪拌工法であって、前記攪拌装置は、ロッド部と、前記重機から供給される動力を利用して回転しながら、外周に設けられた複数の切削刃によって地盤を攪拌し、その回転軸が前記ロッド部の延在方向と直交或いは略直交するように前記ロッド部の先端に取り付けられた一対の攪拌翼と、前記重機から供給される動力を利用して、前記ロッド部の中途部分から先端までを屈折させる屈折機構と、を含み、前記重機の前方において前記ロッド部の先端が下方を向きつつ、前記一対の攪拌翼が前記重機の側方向の左側及び右側に位置するように、前記攪拌装置を前記作業機へ取り付け、地盤中に支障物がある場合に、前記屈折機構により、前記ロッド部の中途部分から先端までを、前記ロッド部の延在方向に対して前記重機側へ屈折させた状態で、前記支障物を避けながら地盤を攪拌することを特徴とする機械攪拌工法。
【0026】
(12)上記(11)項において、前記攪拌装置は、前記重機から供給される動力を利用して、前記ロッド部の非屈折状態での延在方向と平行な軸を回転軸として、前記ロッド部を左回り及び右回りの夫々で少なくとも最大で90°軸回転させるための軸回転機構を含み、少なくとも、施工範囲の、前記重機の側方向に位置する端部を施工する際に、前記軸回転機構によって前記ロッド部を軸回転させた状態で地盤を攪拌する機械攪拌工法。
(13)上記(12)項において、前記攪拌装置は、前記重機から供給される動力を利用して、前記一対の攪拌翼を回転させるための回転駆動部を、前記ロッド部の先端に攪拌翼毎に別個で備えると共に、前記回転駆動部の各々に、前記攪拌翼の回転方向、回転数及び回転トルクを制御可能な回転制御機構を具備するものであり、前記軸回転機構により前記ロッド部を軸回転させる際に、該軸回転を補助する方向に前記一対の攪拌翼を回転させるように、前記回転制御機構の各々を制御する機械攪拌工法(請求項8)。
(11)から(13)項に記載の機械攪拌工法は、各々、上記(1)から(3)項の攪拌装置を用いて実行されることで、上記(1)から(3)項の攪拌装置に対応する同等の作用を奏するものである。
【0027】
(14)上記(13)項において、前記屈折機構により前記ロッド部を屈折させた状態又は屈折させない状態で、前記軸回転機構により前記ロッド部を左回り及び右回りに交互に軸回転させて揺動させながら、かつ、前記回転制御機構により前記一対の攪拌翼の各々の回転方向及び回転数を変化させながら、地盤を攪拌する機械攪拌工法(請求項9)。
【0028】
本項に記載の機械攪拌工法は、攪拌装置が備える屈折機構及び軸回転機構によるロッド部の動作制御と、回転制御機構による攪拌翼の制御とを組み合わせて、地盤の攪拌を行うものである。具体的には、屈折機構によりロッド部を屈折させた状態又は屈折させない状態で、軸回転機構によりロッド部を左回り及び右回りに交互に軸回転させて、例えば180°(左回り90°+右回り90°)揺動させながら、かつ、回転制御機構により攪拌翼の各々の回転方向及び回転数を変化させながら、地盤を攪拌するものである。この際、ロッド部の屈折の有無や屈折角度の大きさ、ロッド部の揺動回転角度の大きさ、攪拌翼の回転方向及び回転数は、地盤の状態や攪拌位置等の施工状況に応じて任意に設定される。これにより、重機の位置を変える必要なく、攪拌される地盤の範囲が増大するため、作業効率がより一層向上されるものである。
【0029】
(15)上記(11)から(14)項において、前記一対の攪拌翼の近傍に前記改良材及び/又はエアを供給するための配管を、前記ロッド部の少なくとも一部に沿って該ロッド部の外側に着脱可能に、かつ、前記配管の吐出口の位置を調整可能に、1本又は2本取り付ける機械攪拌工法。
(16)上記(11)から(15)項において、外周に螺旋状にガイド板が設けられた直管状をなし、前記重機から供給される動力を利用して軸回転可能なスパイラル管を、その先端が前記一対の攪拌翼の上方近傍に向くように、前記ロッド部の少なくとも一部に沿って取り付け、前記改良材を供給しつつ、前記ガイド板が前記ロッド部の先端と反対側に向かって回転する方向に前記スパイラル管を軸回転させながら、地盤を攪拌する機械攪拌工法。
【0030】
(17)上記(11)から(16)項において、前記攪拌装置の前記一対の攪拌翼を、各々の回転軸と前記ロッド部の延在方向との間で成される角度が、前記ロッド部の先端側へ向けて90°よりも小さくなるように僅かに傾斜した状態で、前記ロッド部を挟んで互いに反対向きに取り付けると共に、前記一対の攪拌翼の各々に、前記複数の切削刃として、前記ロッド部の先端の側方向中心の直下を掘削及び攪拌するための先端切削刃を、着脱可能に取り付ける機械攪拌工法。
(18)上記(11)から(17)項において、前記一対の攪拌翼が回転したときに、各攪拌翼において該攪拌翼の回転軸と平行な方向について異なる位置で回転する、2つ以上の前記切削刃の間へ向かって突出するように、複数の突出部を前記ロッド部に対して着脱可能に取り付ける機械攪拌工法。
そして、(15)から(18)項に記載の機械攪拌工法は、各々、上記(4)から(7)項の攪拌装置を用いて実行されることで、上記(4)から(7)項の攪拌装置に対応する同等の作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明は上記のような構成であるため、機械攪拌工法における重機の移動頻度を抑制することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置の正面図である。
【
図2】
図1の攪拌装置の側面図であり、(a)はロッド部が屈折していない状態、(b)はロッド部が屈折した状態を示している。
【
図3】
図2と吐出口の位置が異なる配管の一例を示す概略図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置を具備する油圧ショベルによる施工イメージ図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置を具備する油圧ショベルの油圧制御イメージを概略的に示すブロック図である
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係る攪拌装置を具備するリーダ付油圧式大口径削孔機を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1及び
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10の構成を模式的に示している。図示のように、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、ロッド部12、一対の攪拌翼14(14A、14B)、取付部30、配管32、エア配管33、複数の突出部34、屈折機構40、軸回転機構46、スパイラル管52、及び、伸張機構58を含んでいる。ロッド部12は、攪拌装置10の本体部分を構成するものであり、中空の略直管状をなし、その外側や内側に様々な部材が取り付けられている。
【0034】
一対の攪拌翼14は、ロッド部12の先端に取り付けられており、
図1の例では、一方の攪拌翼14Aが図中左側に、他方の攪拌翼14Bが図中右側に位置するように、ロッド部12の先端部12aを挟んで互いに反対向きに取り付けられている。これら一対の攪拌翼14A、14Bの各々は、外周に複数の切削刃16が設けられており、後述する回転駆動部20によって回転されるようになっている。又、一対の攪拌翼14A、14Bは、各々の回転軸18がロッド部12の延在方向(
図1及び
図2における上下方向)と直交或いは略直交するように、ロッド部12の先端部12aに取り付けられている。
図1の例では、各々の回転軸18とロッド部12の延在方向との間で成される角度αが、ロッド部12の先端側(図中下側)へ向けて90°よりも小さくなるように、僅かに傾斜した状態になっている。例えば、回転軸18とロッド部12の延在方向との間で成される角度αは、これに限定されるものではないが、90°よりも5°程度小さくなっている。
【0035】
一対の攪拌翼14A、14Bの各々に設けられた複数の切削刃16には、複数の先端切削刃17が含まれている。これらの先端切削刃17は、ロッド部12の先端部12aの、側方向(
図1における左右方向)中心の直下を掘削及び攪拌するためのものであり、
図1で確認できるように、各攪拌翼14の回転軸18と平行な方向に関して、複数の切削刃16の中で最も先端部12a寄りの位置に設けられている。又、先端切削刃17は、攪拌翼14の回転により、
図1における上側の位置にあるときにロッド部12に干渉しないように、かつ、
図1における下側の位置にあるときに異なる攪拌翼14に設けられた先端切削刃17同士が干渉しないように、適切な角度及び長さで設けられている。更に、これらの先端切削刃17は、攪拌翼14の各々に対して着脱可能に取り付けられており、必要に応じて取り付け及び取り外しされるようになっている。なお、
図1では、先端切削刃17を含み、切削刃16の形状を簡略化して図示している。
【0036】
上述した回転駆動部20は、ロッド部12の先端で攪拌翼14に内蔵されるようにして、一対の攪拌翼14毎に別個に設けられており、本実施例では、一方の攪拌翼14Aを回転させる第1攪拌翼用油圧モータ20Aと、もう一方の攪拌翼14Bを回転させる第2攪拌翼用油圧モータ20Bとで構成されている。第1攪拌翼用油圧モータ20A及び第2攪拌翼用油圧モータ20Bは、重機70(
図4参照)から供給される動力(本実施例では油圧)を利用して、一対の攪拌翼14A、14Bを回転させるものであり、ロッド部12の内部を通して油圧が供給されるようになっている。又、第1攪拌翼用油圧モータ20A及び第2攪拌翼用油圧モータ20Bは、夫々、回転制御機構22を具備しており、この回転制御機構22によって、各攪拌翼14の回転方向、回転数及び回転トルク等が制御される。
【0037】
更に、
図1及び
図2の例では、回転駆動部20の各々に回転補助制御部62が備えられている。これらの回転補助制御部62は、後述する軸回転機構46によりロッド部12が軸回転される際に、この軸回転を補助する方向に一対の攪拌翼14を回転させるように、回転制御機構22の各々を制御するものである。この制御の具体的な内容については、軸回転機構46と併せて後ほど説明する。なお、回転補助制御部62は、回転制御機構22を制御可能な位置であればその設置位置は任意であり、例えば、ロッド部12の内部に設置されていてもよく、重機70に設置されていてもよい。
上述したような構成により、攪拌装置10を用いた施工時に、回転制御機構22の制御を受けた油圧モータ20A、20B(回転駆動部20)によって一対の攪拌翼14が回転され、攪拌翼14の外周に沿って回転移動する複数の切削刃16により、地盤G(
図4参照)が攪拌されることになる。なお、
図2では、回転移動している複数の切削刃16を、簡略的に円形で図示している。
【0038】
図1を参照して、複数の突出部34は、一対の攪拌翼14が回転したときに、各攪拌翼14においてその攪拌翼14の回転軸18と平行な方向について異なる位置で回転する、2つ以上の切削刃16の間へ向かって突出するように、ロッド部12に取り付けられるものである。
図1の例では、まず一方の攪拌翼14Aから確認すると、攪拌翼14Aの外周の図中上側に図示されている4つの切削刃16のうち、図中左寄りで隣接する3つの切削刃16間の各々に向かって突出するように、2つの突出部34が支持部材36を介してロッド部12に固定されている。同様に、もう一方の攪拌翼14Bを確認すると、攪拌翼14Bの外周の図中上側に図示されている4つの切削刃16のうち、図中右寄りで隣接する3つの切削刃16間の各々に向かって突出するように、2つの突出部34が支持部材36を介してロッド部12に固定されている。これらの突出部34は、例えば棒状や板状であってよく、その材質は、剛性が高いものやある程度撓るようなもの、例えば鋼製ワイヤ等であってもよい。又、複数の突出部34は、支持部材36に対して、或いは支持部材36と共にロッド部12に対して、着脱可能に取り付けられており、必要に応じて取り付け及び取り外しされるようになっている。なお、
図2では、複数の突出部34や支持部材36の図示を省略している。
【0039】
図2を参照して、配管32は、一対の攪拌翼14A、14Bの近傍に、地盤改良のための改良材を供給するためのものであり、本実施例ではロッド部12の外側の、前後方向後方側(
図2における右側)に取り付けられている。更に、配管32は、ロッド部12に対して着脱可能に、ロッド部12の一部に沿って取り付けられている。なお、
図2では、便宜上、図示を控えているが、配管32の取り付け方法は、ロッド部12に対して着脱可能なものであれば、任意の方法が採用できる。又、
図2において、配管32は、改良材の吐出口32aとなる一方の端部(図中下方の端部)までの、ロッド部12に沿った一部のみが図示されており、実際には、配管32のもう一方の端部が、重機70やその近傍等に設置される改良材の供給元まで延びている。
【0040】
ここで、配管32は、改良材を吐出する吐出口32aの位置が調整可能になっており、例えば
図3には、吐出口32aの位置が
図2と異なる位置に調整された状態の配管32を図示している。なお、
図3では攪拌翼14の図示を省略すると共に、ロッド部12を簡略化して図示している。
図3に示される配管32は、
図2の例では吐出口32aだった部位を接続部32bとして、ロッド部12の先端部12aに沿って長さが延長されており、吐出口32aが先端部12aの図中下方側に位置している。又、配管32の一部が、例えば鋼製のカバー38により覆われている。なお、配管32の位置は、ロッド部12の一部に沿って取り付けられていれば任意であり、ロッド部12の側方側(
図1における左側又は右側)や前方側(
図2及び
図3における左側)に取り付けられてもよい。又、後述する屈折機構40によるロッド部12の屈折に対応するために、配管32の一部がフレキシブルな材料により形成されていてもよい。
【0041】
図2に戻り、エア配管33は、一対の攪拌翼14A、14Bの近傍にエア(空気)を供給するためのものであり、
図2の例では配管32と平行に、ロッド部12の外側の
図2における右側に取り付けられている。配管32と同様に、エア配管33は、ロッド部12に対して着脱可能に、ロッド部12の一部に沿って取り付けられており、その取り付け方法は、ロッド部12に対して着脱可能なものであれば、任意の方法が採用できる。又、
図2において、エア配管33は、エアの吐出口33aとなる一方の端部(図中下方の端部)までの、ロッド部12に沿った一部のみが図示されており、実際には、エア配管33のもう一方の端部が、重機70やその近傍等に設置されるエアの供給元まで延びている。更に、エア配管33は、この点も配管32と同様に、吐出口33aの位置が調整可能になっており、状況に応じて吐出口33aの位置が設定される。
【0042】
上記のようなエア配管33の位置は、ロッド部12の一部に沿って取り付けられていれば任意であり、ロッド部12の側方側(
図1における左側又は右側)や前方側(
図2における左側)に取り付けられてもよい。又、後述する屈折機構40によるロッド部12の屈折に対応するために、エア配管33の一部がフレキシブルな材料により形成されていてもよい。
なお、本実施例の攪拌装置10は、改良材を供給する配管32とエアを供給するエア配管33とを、1本ずつ具備する構成であるが、これらのいずれか一方を具備する構成であってもよく、配管32を2本又はエア配管33を2本具備する構成であってもよい。更に、改良材とエアとを合流させて同時に供給する配管を具備する構成であってもよく、そのような配管を2本備えていてもよい。或いは、改良材及びエアを同時に供給する配管と、配管32又は配管33とのいずれか一方とを、同時に具備する構成であってもよい。
【0043】
図1及び
図2に戻り、スパイラル管52は、外周に螺旋状にガイド板54が設けられた直管状をなしており、
図1及び
図2における下方側の先端が、一対の攪拌翼14A、14Bの図中上方近傍に達するように、本実施例ではロッド部12の前方側(
図2における左側)に、ロッド部12に沿って取り付けられている。又、スパイラル管52は、重機70から供給される動力(本実施例では油圧)を利用して軸回転するようになっており、本実施例では、スパイラル管52の図中上端側を保持するように設置された、油圧式のスパイラル管軸回転用モータ56によって軸回転される。なお、スパイラル管52を軸回転させる方法や、軸回転可能にロッド部12に取り付ける方法は、本実施例に限定されることなく別の方法であってもよい。
【0044】
屈折機構40は、重機70から供給される動力(本実施例では油圧)を利用して、ロッド部12の中途部分から先端までを屈折させるものである。本実施例において、屈折機構40は、
図2(a)に示すように、ロッド部12の内部に設置されたロッド屈折用シリンダ42と、ロッド部12の中途部分において、それよりも図中上方の部位と下方の部位とをピン接続するピン44とを含んでいる。
図2(a)の状態では、ロッド屈折用シリンダ42が伸張してロッド部12が真直ぐになっている。これに対し、
図2(b)には、ロッド屈折用シリンダ42が縮退することで、ロッド部12のピン接続部分から先端までが、ピン44を軸として僅かに回動し、ロッド部12の延在方向(図中上下方向)に対して図中右側へ屈折された状態を示している。なお、
図2(b)では、便宜上、ロッド屈折用シリンダ42及びピン44の図示を省略している。又、屈折機構40は、ロッド屈折用シリンダ42及びピン44を含む構成に限定されず、別の構成であってもよい。
【0045】
軸回転機構46は、重機70から供給される動力(本実施例では油圧)を利用して、ロッド部12の非屈折状態での延在方向(図中上下方向)と平行な軸を回転軸として、ロッド部12を左回り及び右回りの夫々で軸回転させるものである。本実施例において、軸回転機構46は、
図1に示すように、ロッド部12の側方向(図中左右方向)両側に配置された、ロッド回転用第1シリンダ48とロッド回転用第2シリンダ50とを含んでいる。ロッド回転用第1シリンダ48及びロッド回転用第2シリンダ50は、これらの伸縮動作を組み合わせることによって、取付部30に対してロッド部12を軸回転させるように、ロッド部12及び取付部30の双方に接続されている。
【0046】
図1及び
図2には、ロッド部12が軸回転されていない基準状態を示しており、この状態から、ロッド回転用第1シリンダ48及びロッド回転用第2シリンダ50の伸縮動作の組み合わせにより、本実施例では左回り及び右回りの夫々で最大で90°、ロッド部12を軸回転させるようになっている。なお、軸回転機構46によるロッド部12の最大回転角度は、90°に限定されるものではなく、90°より大きくても小さくてもよい。又、軸回転機構46は、ロッド回転用第1シリンダ48及びロッド回転用第2シリンダ50を含む構成に限定されることはなく、他の構成であってもよい。
【0047】
ここで、回転補助制御部62によるロッド部12の軸回転の補助方法について説明する。上述したように、回転補助制御部62は、軸回転機構46によってロッド部12が軸回転される際に、この軸回転を補助する方向に一対の攪拌翼14が回転されるように、回転制御機構22を制御するものである。例えば、軸回転機構46によりロッド部12が平面視で右回りに軸回転される際、回転補助制御部62は、一方の攪拌翼14Aが
図1における左側から視て左回りに回転し、他方の攪拌翼14Bが
図1における右側から視て左回りに回転するように、回転制御機構22の各々を制御する。又、軸回転機構46によりロッド部12が平面視で左回りに軸回転される際、回転補助制御部62は、一方の攪拌翼14Aが
図1における左側から視て右回りに回転し、他方の攪拌翼14Bが
図1における右側から視て右回りに回転するように、回転制御機構22の各々を制御する。これらの何れの場合であっても、一対の攪拌翼14A及び14Bは、同一方向から視たときに互いに反対方向に回転されることになる。なお、このような回転補助制御部62を具備しない構成であってもよく、この場合は、軸回転機構46によりロッド部12を軸回転させる際に、重機70のオペレータ室74(
図4参照)からの操作によって、ロッド部12の軸回転を補助する上記のような方向に一対の攪拌翼14A及び14Bを回転させるように、回転制御機構22の各々を制御してもよい。
【0048】
伸張機構58は、重機70から供給される動力(本実施例では油圧)を利用して、ロッド部12の長さを伸張させるものであり、本実施例では、取付部30の前方側(
図2における左側)に配置されたロッド伸張用シリンダ60を含んでいる。ロッド伸張用シリンダ60は、その縮退動作によって、取付部30から先端までのロッド部12の長さを伸張させるように、ロッド部12及び取付部30の双方に接続されている。
図1及び
図2には、ロッド伸張用シリンダ60が伸張してロッド部12が伸張されていない標準状態を示しており、この状態からロッド伸張用シリンダ60が縮退すると、その縮退した長さの分だけロッド部12が伸張するようになっている。なお、伸張機構58の構成は本実施例の構成に限定されるものではなく、別の構成であってもよい。
【0049】
一方、取付部30は、上記のような構成のロッド部12を、
図4に示すように、本実施形態における重機70としての油圧ショベル70Aの、作業機72に対して取り付けるためのものである。より詳しくは、取付部30は、油圧ショベル70Aの前方(図中左側)においてロッド部12の先端が下方を向き、かつ、一対の攪拌翼14A、14Bが、油圧ショベル70Aの側方向の左側及び右側(紙面と直交する方向の奥側及び手前側)に位置するように、ロッド部12を作業機72に取り付ける。更に、取付部30は、
図1及び
図2を参照して、軸回転機構46により軸回転可能、かつ、伸張機構58により伸張可能に、ロッド部12を支持している。
【0050】
図1~
図4を参照して、上述したような構成を有する本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、
図4に示すように油圧ショベル70Aに取り付けられた状態で、以下のように動作する。すなわち、回転駆動部20により回転される一対の攪拌翼14A、14Bによって、地盤Gが掘削されると共に、配管32から供給される改良材と、エア配管33から供給されるエアと、地盤Gの形成土とが混合攪拌される。このとき、一対の攪拌翼14A、14Bにより掘削及び攪拌される位置は、油圧ショベル70Aの作業機72の操作によって制御され、一対の攪拌翼14A、14Bの回転方向、回転速度、回転トルク等は、回転制御機構22によって制御される。又、配管32からの改良材の供給と共に、スパイラル管52の外周に設けられたガイド板54が図中上方に向かって回転する方向に、スパイラル管52がスパイラル管軸回転用モータ56によって軸回転される。
【0051】
更に、必要に応じて、屈折機構40によるロッド部12の油圧ショベル70A側への屈折、軸回転機構46によるロッド部12の軸回転、及び/又は、伸張機構58によるロッド部12の伸張が行われる。この際、ロッド部12の屈折角度、ロッド部12の軸回転角度、ロッド部12の伸張長さは、夫々の最大量までの間の任意の角度或いは長さに設定される。加えて、施工時に用いられる改良材には、セメントスラリー等のスラリー、セメント等の粉体、或いは、腐食性材料といったものの中から、施工条件に応じた適切な改良材が選択される。更に、様々な材質及び配管径を有する複数の配管32の中から、選択された改良材の供給に適した材質で形成されると共に、施工条件に適した配管径を有する配管32が選択され、ロッド部12に取り付けられて使用される。
【0052】
ここで、回転駆動部20を構成する第1攪拌翼用油圧モータ20A及び第2攪拌翼用油圧モータ20B、屈折機構40を構成するロッド屈折用シリンダ42、軸回転機構46を構成するロッド回転用第1シリンダ48及びロッド回転用第2シリンダ50、伸張機構58を構成するロッド伸張用シリンダ60、並びに、スパイラル管軸回転用モータ56は、上述したように、何れも、重機70から供給される油圧によって駆動されるものである。
図5には、攪拌装置10を具備する重機70としての油圧ショベル70Aの、油圧制御イメージを概略的に示している。図示のように、油圧ショベル70Aは、油圧切替制御部80を有しており、この油圧切替制御部80によって、油圧の供給先や供給量が制御されるようになっている。
【0053】
油圧の供給先には、上述した第1攪拌翼用油圧モータ20A、第2攪拌翼用油圧モータ20B、ロッド屈折用シリンダ42、ロッド回転用第1シリンダ48、ロッド回転用第2シリンダ50、ロッド伸張用シリンダ60、スパイラル管軸回転用モータ56に加えて、油圧ショベル駆動系82が含まれている。この油圧ショベル駆動系82は、重機70が本来から備えている駆動部位を示しており、作業機72の動作、クローラの回転、及び旋回動作等を行うための各油圧アクチュエータが含まれる。油圧切替制御部80は、重機70のオペレータ室74(
図4参照)からの操作を受けて制御され、油圧ショベル駆動系82に含まれる各駆動部位の動作を含み、ロッド部12の伸張、軸回転、屈折、一対の攪拌翼14の回転、及び、スパイラル管52の軸回転の全操作が、オペレータ室74から行われることになる。
【0054】
さて、上記構成をなす本発明の第1の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、
図1及び
図2に示すように、ロッド部12と、このロッド部12の先端に取り付けられた一対の攪拌翼14(14A、14B)と、ロッド部12を重機70の作業機72(
図4参照)に取り付けるための取付部30とを含んでいる。一対の攪拌翼14A、14Bの各々は、重機70から供給される動力によって回転するものであり、回転しながら外周に設けられた複数の切削刃16によって地盤G(
図4参照)を攪拌する。
【0055】
又、一対の攪拌翼14A、14Bは、夫々の回転軸18がロッド部12の延在方向と直交或いは略直交するように、ロッド部12の先端に取り付けられる。これにより、ロッド部12の先端が向く方向に、攪拌翼14の外周に沿って回転移動する複数の切削刃16が向けられることになる。更に、ロッド部12は、
図4で確認できるように、重機70の前方においてロッド部12の先端が下方を向き、かつ、一対の攪拌翼14が重機70の側方向の左側及び右側に位置するように、取付部30によって作業機72に対して取り付けられる。このため、攪拌翼14の複数の切削刃16は、主に下方へ向けて使用され、このような一対の攪拌翼14によって地盤Gが掘削されながら、地盤形成土と改良材及び/又はエアとが混合攪拌される。
【0056】
更に、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、
図2に示すように、ロッド屈折用シリンダ42を含む屈折機構40を備えている。この屈折機構40は、重機70から供給される動力を利用して、ロッド部12の中途部分から先端までを、
図2(b)に示すように、ロッド部12の延在方向に対して重機70側(
図2における右側)へ屈折させるものである。これにより、ロッド部12の先端が、ロッド部12の延在方向だけでなく、ロッド部12が屈折した重機70側の方向にも向けられるため、重機70の移動を伴わずして、掘削や攪拌の方向を切り替えることができる。特に、地盤G中に配管等の支障物が存在する場合でも、重機70を移動させることなく、屈折したロッド部12によって支障物を避けながら、支障物の下方等を攪拌することができる。このため、施工中の重機70の移動頻度を抑制することができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0057】
又、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、
図1及び
図2に示すように、更に、ロッド回転用第1シリンダ48及びロッド回転用第2シリンダ50を含む軸回転機構46を備えている。この軸回転機構46は、重機70から供給される動力を利用して、ロッド部12の非屈折状態での延在方向と平行な軸を回転軸として、ロッド部12を軸回転させるものである。この軸回転機構46によるロッド部12の軸回転は、左回り及び右回りの夫々で少なくとも最大で90°、すなわち、作業機72の正面方向(
図2における左方向)を基準とした少なくとも180°の範囲内で回転される。
【0058】
ここで、
図4を参照して、攪拌装置10を用いて地盤Gを改良する際に、その施工範囲(改良体)の端部を平面的に形成するためには、攪拌翼14の取り付け方向を考慮すると、通常、改良体の平面に対して略直交する向きに重機70を配置する必要がある。しかしながら、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、上述したように、軸回転機構46によりロッド部12が軸回転されるため、施工範囲の、重機70の正面方向やその反対の手前方向(図中左右方向)に位置する平面的な端部のみではなく、重機70の側方向(
図4における紙面と直交する方向)に位置する平面的な端部の施工にも対応することができる。これにより、重機70を移動させることなく、施工範囲の様々な方向に位置する平面的な端部を施工することができるため、これによっても重機70の移動頻度を抑制することができ、作業効率をより一層向上することが可能となる。更に、施工範囲の平面的な端部を施工するタイミング以外でも、例えば、施工の仕上げ等のタイミングで地盤Gを攪拌する際に、軸回転機構46によりロッド部12を左回りと右回りとに交互に軸回転させて揺動させてもよい。このようにすることで、ロッド部12を揺動させない場合よりも、同じ軌道でロッド部12の先端を移動させたときに攪拌される範囲が広がるため、施工効率を向上させることができる。
【0059】
又、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、
図1に示すように、重機70から供給される動力によって一対の攪拌翼14を回転させるための回転駆動部20を、ロッド部12の先端に攪拌翼14毎に別個で具備し、更に、各々の回転駆動部20に、攪拌翼14の回転方向、回転数及び回転トルクを制御可能な回転制御機構22を備えたものである。これにより、例えば、一対の攪拌翼14を同方向に回転させた場合は、回転に抵抗する力によって意図しない方向に攪拌翼14が進み、随処に攪拌不足が生じてしまうことがあるが、一対の攪拌翼14を互いに反対方向に回転させることで、攪拌翼14の回転に抵抗する力が相殺され、攪拌翼14の進む方向が安定するため、攪拌不足の発生を抑制することができる。更に、攪拌翼14が意図しない方向に進んだ場合でも、それまでとは反対方向に攪拌翼14を回転させることによって方向修正が容易になるため、施工時間のロスを低減することができる。又、回転トルク等の制御によって、地盤Gへの押込み力に対する先端荷重の制御を行うことができるため、孔曲がりやそれによる攪拌不足の発生を抑制することが可能となる。
【0060】
加えて、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、軸回転機構46によりロッド部12が軸回転される際に、この軸回転を補助する方向に一対の攪拌翼14を回転させるように、回転制御機構22の各々を制御する回転補助制御部62を含むものである。ここで、回転補助制御部62による制御を受けた一対の攪拌翼14の回転方向は、通常、攪拌翼14同士で反対方向になる。これにより、特に、上述したようにロッド部12を揺動させるようにして軸回転させる場合に、その軸回転の方向に合わせて一対の攪拌翼14の回転方向を切り替えることで、ロッド部12の軸回転や軸回転方向の切り替えをスムーズに行うことができるため、作業効率を向上させることができる。
【0061】
更に、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、
図2に示すように、地盤改良用の改良材(又は改良材及びエアの双方)を一対の攪拌翼14A、14Bの近傍に供給するための配管32と、一対の攪拌翼14A、14Bの近傍にエアを供給するためのエア配管33とが、ロッド部12の少なくとも一部に沿ってロッド部12の外側に着脱可能に取り付けられるものである。ここで、従来の攪拌装置は、ロッド部の内部に改良材供給用の配管が設置されたものが多く、配管の付け替え等に対応していなかったため、予め設置された配管が対応し得る改良材のみしか供給できなかった。特に、従来の配管は鋼材で作られていたため、スラリーや粉体専用として用いられ、腐食性材料の供給が困難であった。これに対し、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、改良材供給用の配管32が、ロッド部12の外側に着脱可能に取り付けられるため、必要に応じて配管32の付け替えを行うことができる。これにより、適切な材質や配管径を有する配管32を予め選択したり、そのような配管32へと施工現場において付け替えたりすることができるため、スラリー、粉体、腐食性材料等といった多様な種類の改良材を供給することが可能となり、更に、作業効率の向上も期待することができる。
【0062】
加えて、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、配管32及びエア配管33が取り付けられる際に、改良材及び/又はエアが吐出される吐出口32a、33aの位置が調整可能なものである。すなわち、吐出口32a、33aの位置は、一対の攪拌翼14の近傍に改良材及び/又はエアを供給するような任意の位置に調整され、例えば、ロッド部12の延在方向と平行な方向に関して、
図2に示すように、一対の攪拌翼14よりも取付部30側(図中上側)の位置や、
図3に示すように、ロッド部12の先端部12aの先端側(図中下側)の位置等に調整される。これにより、地盤Gの質等の状況に応じた適切な位置に、改良材やエアを吐出することが可能となる。更に、改良材とエアとの双方を供給可能な構成であることで、改良材に加え必要に応じてエアを供給することができるため、地盤形成土と改良材のみではなく、更にそこにエアを混合攪拌することができる。これにより、エアが攪拌されない場合と比較して、造成される改良体の重量が軽くなると共に内圧が小さくなるため、攪拌効率を向上させることができ、又、排泥を円滑に行うことが可能となる。
【0063】
又、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、
図1及び
図2に示すように、更にスパイラル管52を含み、このスパイラル管52は、外周に螺旋状のガイド板54を有する直管状をなしており、重機70から供給される動力を利用して、スパイラル管軸回転用モータ56によって軸回転可能なものである。このようなスパイラル管52が、その先端を一対の攪拌翼14A、14Bの上方近傍に向けるようにして、ロッド部12の少なくとも一部に沿って取り付けられる。ここで、セメントスラリー等の改良材を供給しながら地盤G内で混合攪拌を行う際、供給された改良材の体積分の一部に相当する混合物(地盤形成土と改良材との混合物)等は、地表へと排出されるが、残りの体積分の影響による圧力が、側方へ地盤Gを押し込むことによって、近接構造物等を変位させる虞があった。そこで、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、改良材を供給しながら地盤Gを混合攪拌する間に、上記のような構造のスパイラル管52を、ガイド板54がロッド部12の先端と反対側(地表側)に向かって回転する方向に軸回転させる。これにより、改良材の供給によって増大した内圧を、攪拌翼14の上方近傍から地表へ向けてスムーズに排出することができるため、近接構造物等の側方変位を抑止することが可能となる。
【0064】
更に、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、一対の攪拌翼14A、14Bが、ロッド部12の先端に互いに反対向きに取り付けられる。このとき、
図1で確認できるように、攪拌翼14の各々の回転軸18とロッド部12の延在方向との間で成される角度αが、ロッド部12の先端側(図中下側)へ向けて90°よりも小さくなるように、僅かに傾斜した状態で取り付けられる。換言すれば、攪拌翼14A、14Bの各々は、回転軸18と平行な方向に関して、ロッド部12の先端部12aに取り付けられた側の端部よりもその反対側の端部が、ロッド部12の先端寄りに位置するように、僅かに傾斜して取り付けられる。更に、一対の攪拌翼14A、14Bの各々は、複数の切削刃16として、ロッド部12の先端の側方向中心の直下を掘削及び攪拌するための、着脱可能な先端切削刃17を含んでいる。
【0065】
すなわち、攪拌翼14が傾斜して取り付けられていない場合は、ロッド部12先端の側方向中心の直下を掘削するように一部の切削刃16を取り付けると、攪拌翼14が回転したときにその切削刃16がロッド部12に干渉してしまうため、実質的に利用できなかった。そこで、上述したように攪拌翼14が傾斜して取り付けられた上で、上記のような先端切削刃17を含むことで、先端切削刃17がロッド部12に干渉することなく、従来は届かなかったロッド部12先端の側方向中心の直下を、先端切削刃17により掘削及び攪拌することができる。これにより、特に施工対象が硬質地盤であっても、押込み力が有効に作用してロッド部12先端の直下を効率よく掘削及び攪拌することができ、攪拌不足の発生を抑制することが可能となる。
【0066】
又、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、更に複数の突出部34を含み、これら複数の突出部34は、一対の攪拌翼14が回転したときに、攪拌翼14の各々においてその攪拌翼14の回転軸18と平行な方向について異なる位置で回転する、2つ以上の切削刃16の間へ向かって突出するように、ロッド部12に対して着脱可能に取り付けられるものである。すなわち、突出部34の各々は、回転する攪拌翼14から相対的に視たときに、切削刃16の間を通って攪拌翼14の周りを回転する状態になる。これにより、特に粘土質の地盤Gを攪拌する場合に、切削刃16の間に地盤形成土が付着することを防止することができる。更に、切削刃16と突出部34との相乗作用により、地盤Gの攪拌効率を向上することもできる。
【0067】
又、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、更に、ロッド伸張用シリンダ60を有する伸張機構58を含み、この伸張機構58は、重機70から供給される動力を利用して、ロッド部12の、取付部30による取り付け位置から先端までの長さを伸張させるものである。このため、
図4に示すように、ロッド部12を伸張させない状態で地盤Gを掘削及び攪拌(
図4の細かいハッチング部分参照)した後に、伸張機構58によってロッド部12を伸張させた状態で再び地盤Gを掘削及び攪拌(
図4の粗いハッチング部分参照)することにより、重機70の移動や延長ロッドの装着等を行うことなく、施工範囲を拡大することができる。
しかも、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10は、取り付け先の重機70が油圧ショベル70Aであることで、主に浅層の地盤Gを対象とした施工で多く用いることができ、又、油圧ショベル70Aは小回りが利くため、様々な条件の現場での施工に対応することが可能となる。
【0068】
続いて、
図6には、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌装置10´を示している。なお、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌装置10´について、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10との相違部分のみ説明をすることとし、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10と同様の部分の構成や作用効果については、説明を省略する。
図示のように、本発明の第2の実施の形態に係る攪拌装置10´は、重機70としての、リーダ付油圧式大口径削孔機70Bに装着されて使用されるものである。このとき、攪拌装置10´は、リーダ付油圧式大口径削孔機70Bの作業機72のリーダ76に沿って、上下方向に移動するように取り付けられる。又、詳しい説明は控えるが、攪拌装置10´は、本発明の第1の実施の形態に係る攪拌装置10と同様に、個別に回転制御される一対の攪拌翼14、着脱可能かつ吐出口32aの位置が調整可能な配管32、着脱可能かつ吐出口33aの位置が調整可能なエア配管33、複数の突出部34、ロッド部12を屈折させるための屈折機構40、ロッド部12を軸回転させるための軸回転機構46、及び、軸回転可能なスパイラル管52等を備えている。なお、ロッド部12は、施工範囲の最大深度に対応した長さを有することが好ましい。
【0069】
本発明の第2の実施の形態に係る攪拌装置10´は、上述したように、取り付け先の重機70がリーダ付油圧式大口径削孔機70Bであることで、改良対象地盤の深度に応じたロッド長の選択や延長ロッドの着脱を行うことなく、最大深度に対応した長さのロッド部12を使用して、様々な深度での施工に対応することができる。更に、リーダ付油圧式大口径削孔機70Bのリーダ76が攪拌装置10´のガイドとして作用するため、鉛直方向の施工精度の向上を期待することができる。
他方、本発明の実施の形態に係る機械攪拌工法は、上述したような本発明の第1及び第2の実施の形態に係る攪拌装置10、10´を用いて実行されることで、攪拌装置10、10´に対応する同等の作用効果を奏することができる。
【0070】
特に、本発明の実施の形態に係る機械攪拌工法は、攪拌装置10、10´が備える屈折機構40及び軸回転機構46によるロッド部12の動作制御と、回転制御機構22による攪拌翼14の制御とを組み合わせて、様々な方法で地盤Gの攪拌を行うことができる。具体的には、例えば、屈折機構40によりロッド部12を屈折させた状態又は屈折させない状態で、軸回転機構46によりロッド部12を左回り及び右回りに交互に軸回転させて、例えば180°(左回り90°+右回り90°)揺動させながら、かつ、回転制御機構22により攪拌翼14の各々の回転方向及び回転数を変化させながら、地盤Gを攪拌するものである。この際、ロッド部12の屈折の有無や屈折角度の大きさ、ロッド部12の揺動回転角度の大きさ、攪拌翼14の回転方向及び回転数は、地盤Gの状態や攪拌位置等の施工状況に応じて任意に設定することができる。これにより、重機70の位置を変える必要なく、攪拌される地盤Gの範囲が増大するため、作業効率をより一層向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
10、10´:攪拌装置、12:ロッド部、14(14A、14B):一対の攪拌翼、16:切削刃、17:先端切削刃、18:回転軸、30:取付部、32:配管、32a:吐出口、33:エア配管、33a:吐出口、34:突出部、40:屈折機構、46:軸回転機構、52:スパイラル管、54:ガイド板、62:回転補助制御部、70:重機、70A:油圧ショベル、70B:リーダ付油圧式大口径削孔機、72:作業機、G:地盤